JP3855177B2 - 再結晶化によるダイヤモンド単結晶の製造方法 - Google Patents

再結晶化によるダイヤモンド単結晶の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、温度差育成法を利用してダイヤモンド単結晶を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ダイヤモンド単結晶の製造方法においては、専ら、如何にして炭素原料を大型の結晶に育成するかを課題として研究開発が進められてきた。ダイヤモンドの製造方法として、安定な高温高圧条件のもとで、鉄族元素やこれらの合金を溶媒とし、溶媒に溶解させた炭素を低温部分に置かれたダイヤモンドの種結晶に接触させ、種結晶を中心に単結晶を育成する方法があり、この方法は、一般に温度差育成法としてダイヤモンド製造技術の分野ではよく知られている。
【0003】
温度差育成法は、溶媒を挾んでその下部に種結晶,上部に炭素原料を配置し、炭素原料と種結晶との温度条件を異ならせ、炭素原料側が種結晶側より数10℃高温になるように炭素原料と種結晶の加熱温度を設定してダイヤモンドを製造する方法である。温度差育成法によれば、種結晶からの溶媒への炭素の溶解度に比して高温の炭素原料から溶媒への炭素の溶解度が高いため、炭素原料から溶媒への炭素の溶解が進行し、溶媒に溶けた原料炭素が種結晶側に輸送され、種結晶を核として新たな結晶が成長し、大型の結晶に育成することができる。
【0004】
温度差育成法を用いてダイヤモンド単結晶を育成するには、炭素原料と種結晶との温度を制御するほかにも、種々の要因を制御する必要があり、とりわけ、種結晶を保護することが重要である。種結晶を核として結晶の成長が開始される以前、あるいは溶媒に原料炭素が飽和する前に種結晶が溶媒に完全に溶解してしまうと、結晶成長のための核となる起点をなくしてしまうことになり、種結晶から結晶を成長させることができない。
【0005】
この問題を解決する方法として溶媒が原料炭素の炭素で飽和されるまでの間、種結晶と溶媒との間を遮断層によって隔離し、種結晶の溶解を抑制するという技術がある。
【0006】
特公昭59−6808号には、実質的なダイヤモンド成長パターンが発現するまでは種結晶表面およびその付近における触媒兼溶媒物質の作用を阻止すれば宝石級の大きさのダイヤモンドの成長を妨げる自発的な核生成および種結晶の侵食が最小限に抑えられるとして、触媒兼溶媒物質塊と種結晶との間に核生成抑制用又は隔離用遮断層あるいはその両方を挿入することが記載されている。
【0007】
この先行例において、核生成抑制用遮断層は好ましくは、コバルト,鉄,マンガン,チタン,クロム,タングステン,パナジウム,ニオブ,タンタル,ジルコニウム,以上の金属の合金,天然雲母,多結晶質の高密度アルミナ,粉末アルミナ,石英,石英ガラス,六方晶系の窒化ホウ素結晶,立方晶系の窒化ホウ素結晶,ウルツ鉱型構造の窒化ホウ素結晶,白金族金属の1員で保護された炭化ケイ素などから構成される。
【0008】
隔離用遮断層は好ましくは、白金,モリブデン,チタン,タンタル,タングステン,イリジウム,オスミウム,ロジウム,パラジウム,パナジウム,ルテニウム,クロム,ハフニウム,レニウム,ニオブ,ジルコニウム、以上の金属の合金などから構成される。もし核生成抑制用遮断層が併用されるならば、隔離用遮断層は核生成抑制用遮断層と異なる物質から成ることが好ましい。と説明している。この先行例では、ダイヤモンド単結晶は溶媒層の中で育成されるために、溶媒の底部に核が発生しやすく、これが原因となって、種結晶上の成長が阻害されたり、いくつもの核から結晶が成長するため、成長した結晶が相互に干渉しあって不整な形態の結晶が得られやすい。核生成抑制遮断層は、種結晶以外の箇所で成長がおこらないようにするために選択されるものであり、この先行例には上記目的を達成するための好適な材料が開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記遮断層には、溶媒物質塊よりも高い温度下で融解する物質が選定されるが、処理時の高温でその一部が融解して成長ダイヤモンドに影響を与えるのではないかと思われる。また、この先行例には、遮断層に針金を埋め込み、これを溶解させて炭素に富んだ溶融触媒兼溶媒金属をダイヤモンドポケットに流通させてダイヤモンドを成長させる例が記載されているが、遮断層を構成する物質は溶媒金属と相互溶解するために、溶媒金属成分からなる針金部分が正確に成長部分となって遮断層をつらぬく好適な種結晶を得るのは実際上は困難である。
【0010】
実際に発明者が行った実験によれば、温度差育成法を用いてダイヤモンド単結晶を育成したときに、多くの場合、種結晶付近に包有物(インクルージョン)が生じ、また、結晶のうめ残しなどの欠陥が生ずることがわかった。その原因は必ずしも明らかではないが、遮断層の使用によって種結晶の溶解を防止することができるものの、種結晶の表面を荒くし、初期の結晶成長が均等に起らないためであると考えられる。
【0011】
本発明の目的は、原料ダイヤモンド塊を溶解処理と再結晶化処理により不純物濃度や欠陥濃度を十分制御したダイヤモンド単結晶を製造する方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明によるダイヤモンド単結晶の製造方法においては、セル内配置工程と、溶解処理工程と、再結晶化処理工程とを順に行う再結晶化によるダイヤモンド単結晶の製造方法であって、
前記セル内配置工程は、中性物質中に、少なくとも単結晶ダイヤモンドを一部に含む原料ダイヤモンド塊を埋め込み、前記原料ダイヤモンド塊の一部を前記中性物質から露出させて溶媒と直接接するように配置する工程であり、
前記溶解処理工程は、前記単結晶ダイヤモンドを一部残して前記原料ダイヤモンド塊の炭素成分を溶媒中に溶解させる工程であり、
前記再結晶化処理工程は、前記溶解処理工程によって残された前記単結晶ダイヤモンドを種結晶として、前記中性物質内で、前記溶解処理工程によって溶融された前記原料ダイヤモンド塊の炭素成分を、前記種結晶表面上に再結晶化させてダイヤモンド単結晶を育成する工程である。
【0013】
また、前記原料ダイヤモンド塊は、前記単結晶ダイヤモンドのみからなるものである。
【0014】
また、前記原料ダイヤモンド塊は、前記単結晶ダイヤモンドに炭素原料が積層されたものであり、
前記炭素原料は、粉末ダイヤモンド,ダイヤモンド焼結体,黒鉛,非ダイヤモンド炭素の少なくとも一つ又は二以上を組み合わせたものであり、
前記溶解処理工程は、前記炭素原料のすべてを溶解し、前記単結晶ダイヤモンドの少なくとも一部を未溶解で残すものである。
【0015】
また、前記単結晶ダイヤモンドあるいは前記炭素原料のうちの少なくとも1つは、炭素の特定質量数成分を高純度に含むものである。
【0016】
また、前記中性物質は、ダイヤモンド単結晶の育成条件の下で溶媒,炭素のいずれにも反応しない固体物質である。
【0017】
また、前記溶解処理工程は、溶媒組成、原料ダイヤモンド塊の構成,形態,溶解条件によって決定される溶解および再結晶化温度領域の溶解温度に一定時間保持して行うものであり、
前記再結晶化処理工程は、前記温度領域の範囲内で前記溶解処理温度より低温に保持して行うものである。
【0018】
また、前記溶解処理工程前記再結晶化処理工程とは、溶媒組成,原料ダイヤモンド塊の構成,形態,溶解条件によって決定される溶解および再結晶化温度領域内の溶解温度に原料ダイヤモンド塊をさらし、それを部分的に溶解し、これに続きダイヤモンド単結晶の成長を自発的に進行させるものである。
【0019】
また、 前記再結晶化処理工程は、溶解処理前の原料ダイヤモンド塊と実質的に同一の大きさ,形態を持つダイヤモンド単結晶を形成させる処理であって、前記ダイヤモンド単結晶は、欠陥濃度、不純物濃度が前記原料ダイヤモンド塊とは異なる結晶である。
【0022】
本発明において、原料ダイヤモンド塊には、原料ダイヤモンド塊のすべてが単結晶ダイヤモンドであるもの、単結晶ダイヤモンドと、炭素原料とを積層したものを使用できる。炭素原料は粉末ダイヤモンド,ダイヤモンド焼結体のほか、黒鉛,非ダイヤモンド炭素を使用できる。粉末ダイヤモンド,黒鉛,非ダイヤモンド炭素は粉末であっても予め成形体に固形化されているものであってもよい。炭素原料は、その1種類又は2種類以上を選定して単結晶ダイヤモンドに積層する。2種類以上の炭素原料を選定使用する場合、それらを重ねても、粉末として混合してもよい。再結晶化処理で一体となったダイヤモンドを得るためには、溶解処理において積層されたすべての炭素原料は完全に溶解されなければならない。なお、原料ダイヤモンド塊の種結晶と再結晶化処理によって育成されるダイヤモンドは単結晶のダイヤモンドである。本発明においては、前者を単結晶ダイヤモンド,後者をダイヤモンド単結晶と表現して両者を表現上区別している。
【0023】
再結晶化処理温度は、溶解処理温度よりもわずかに低い温度であれば進行するから、超高圧でダイヤモンド単結晶を育成する装置に固有の温度分布によって、自然に再結晶処理が進行する。それ故、実際には溶解温度で一定時間保持すれば、実質的に再結晶化が進行する。再結晶化処理速度を調節する目的で、溶媒に対して温度差育成法と同じように別な部分から炭素を溶媒に供給することも可能である。
【0024】
溶媒には、炭素を溶解してダイヤモンドとして析出する既知の溶媒ならどれでも選択できる。代表的な溶媒としては、Fe,Co,Niおよびそれらの合金を主成分とするものがある。
【0025】
原料ダイヤモンド塊を埋め込む中性物質は溶媒,炭素のいずれともダイヤモンドの育成条件のもとで反応しない固体物質であって、食塩,フッ化カルシウム,酸化マグネシウム,アルミナ,マグネシア、その他溶媒と反応しないセラミックス物質が選択できる。
【0026】
【発明の実施の形態】
発明者は、単結晶ダイヤモンドを中性物質に埋め込み、中性物質より一部が露出している単結晶ダイヤモンド表面と、溶媒との境界に遮断層を置かないでダイヤモンドが安定な圧力条件、たとえば6GPaにおいて種々温度を変えて実験したところ次のような知見を得た。
(1)単結晶ダイヤモンドはダイヤモンド単結晶を育成できる温度圧力条件下で溶解するが、その程度は温度によって異なる。
(2)低温度では、単結晶ダイヤモンドの溶解は少ないが、成長したダイヤモンド単結晶の表面が粗くなる。
(3)高温度では単結晶ダイヤモンドの溶解は速やかに起こり、単結晶ダイヤモンドは消失する。単結晶ダイヤモンドとは別のところからいくつかのダイヤモンドが不規則に成長することがある。
(4)前記(2)と(3)の温度領域の中間領域に単結晶ダイヤモンドが一部分だけ溶解し、溶解されなかった部分の表面が非常に平滑となる温度領域が存在する。この領域を本発明では溶解および再結晶化温度領域とよぶ。
【0027】
(5)前記の一部分だけ単結晶ダイヤモンドが溶解する場合は、残りの単結晶ダイヤモンドを核として溶解した部分を再び埋めるように新しいダイヤモンド単結晶が成長する。この新しいダイヤモンドが成長する再結晶化温度は、実際は(4)に記載した溶解温度より低温度であるほうが成長が速やかに起こるが、溶解温度と再結晶化温度が非常に近接しているので、実質的に温度を下げないでも再結晶による成長は進行する。それゆえ、溶解および再結晶化温度領域の範囲内の温度に設定されていれば、原料ダイヤモンド塊の溶解とそれにひきつづくダイヤモンド単結晶の再結晶化が自づから進行する。
(6)前記の新しく成長したダイヤモンド単結晶の方位は単結晶ダイヤモンドと完全に一致する。すなわち、単結晶ダイヤモンドとエピタキシャルな関係にある新しいダイヤモンド単結晶が成長する。
(7)前記の単結晶ダイヤモンドと新しく成長したダイヤモンド単結晶の総量は、もとの単結晶ダイヤモンドとほぼ同じで、形も同じである。
(8)前記の単結晶ダイヤモンドとダイヤモンド単結晶は、もともと中性物質に埋められていた部分のダイヤモンドが再結晶化した状況に対応している。
【0028】
本発明は、上記知見に基づいて以下のような条件のもとでダイヤモンドの再結晶化を行うものである。
【0029】
本発明において、温度差育成法に使用する種結晶に相当するものを原料ダイヤモンド塊という。原料ダイヤモンド塊は、その溶解後においてもなお一部を残留させる必要があり、残留する部分は、単結晶でなければならない。溶解する部分は、単結晶ダイヤモンドでもよいが、必ずしも単結晶ダイヤモンドでなくても溶解処理によって全量が溶解しさえすれば、粉末ダイヤモンド,ダイヤモンド焼結体,黒鉛,その他非ダイヤモンド炭素を炭素原料として使用できる。
また、これらの多様な原料ダイヤモンド塊の単結晶ダイヤモンド部分を含む全ての部分あるいは単結晶ダイヤモンドに炭素原料として積層させて溶解させるべき粉末ダイヤモンド,ダイヤモンド焼結体,黒鉛,その他非ダイヤモンド炭素が特定の炭素の質量数成分を高純度に含有する場合は再結晶化処理によって質量数的に高純度なダイヤモンド単結晶が得られる。
【0030】
図1にセル1内の試料の配置例を示す。図1において、原料ダイヤモンド塊2は、その大部分を中性物質3に埋め込み、その一部を中性物質3より露出させて溶媒4と直接接するように配置する。
【0032】
限られた空間内において、溶媒4の量を少なくすれば、原料ダイヤモンド塊2の大きさは相対的に大きくなる。セル1を炉内に設置し、溶解および再結晶化温度領域の比較的高温度に位置する溶解温度に試料を一定時間保持する。
【0033】
溶解処理によって、単結晶ダイヤモンドの少なくとも一部分を種結晶5として残し、大部分の原料ダイヤモンド塊2を溶解させる。原料ダイヤモンド塊2の溶解により生じた炭素は、溶媒4に溶解する。炭素を含む溶媒液相を図2に示す。この溶媒は、原料ダイヤモンド塊2の溶解によって中性物質3に形成された空洞内を満たし、基本的には原料ダイヤモンド塊2の形状を象った液相となる。
【0034】
溶解処理に引き続く再結晶化処理では、残留種結晶5を核として溶媒に溶解した原料ダイヤモンド塊2の炭素成分が析出し、ダイヤモンド単結晶6が成長する。炭素を含む溶媒液相から原料ダイヤモンド塊2の残留種結晶5の単結晶ダイヤモンドの層上にダイヤモンド単結晶が析出してゆく機構は正確には判明しないが、溶媒4と種結晶表面との温度差が非常に少ないことから、準安定状態で溶媒の液相に過剰に溶解した炭素が析出することによるものと考えられる。実際に、図3に示すように時間の経過とともに残留種結晶5の単結晶ダイヤモンドに対し、エピタキシャルの関係にあるダイヤモンド単結晶6が析出する。図4は、本発明方法によって製造したダイヤモンド単結晶の構造の一例を示す図である。
【0035】
中性物質3に埋め込まれた原料ダイヤモンド塊2は、溶解処理によってその大部分が溶解し、再結晶化処理では原料ダイヤモンド塊2に残された残留単結晶ダイヤモンド部分である種結晶5からダイヤモンドがエピタキシャル成長し、全体として元の原料ダイヤモンド塊の形状を象った再結晶ダイヤモンド7が形成される。溶解処理では、原料ダイヤモンド塊の大部分は、溶媒に置き換えられ、再結晶化処理では、溶媒の形成領域は次第に減少する。この例では、溶媒4が再結晶ダイヤモンド7の先端に付着して残留している。
【0036】
本発明は、基本的には温度差成長法の原理を利用して結晶成長させる方法であるが、本発明においては、溶媒に一部を接触させて中性物質に埋め込まれた原料ダイヤモンド塊の一部を溶媒に溶解し、その後再結晶化してダイヤモンド単結晶を成長させるものであり、基本的には、原料ダイヤモンド塊上に置かれた溶媒中で結晶を育成するものではない。
【0037】
原料ダイヤモンド塊の一部である単結晶層を完全に溶解しない溶解および再結晶化温度領域の範囲は、溶媒の種類,組成によって変化するうえ、圧力によっても範囲が異なる。それらを全て具体的な数値で表すのは、そもそも圧力温度をどのような尺度を基準にしているかによって異なるので、客観性がない。なお、本実施例の圧力は図5に示すようにNiを溶媒としたときのダイヤモンドの合成領域の最低条件を5.4GPa,1384℃とし、それを基準に相対的に決定した圧力温度の値である。それに基づいた溶解および再結晶化温度領域を図5に示した。
【0038】
図5中、A,B,Cは、それぞれ溶媒A,B,Cにおける原料ダイヤモンド塊が溶解する最低温度を表わし、a,b,cは、それぞれ選定された溶媒A,B,Cを使用したときに決定される溶解および再結晶化温度領域を示している。なお、これらA,B,Cは、Fe64−Ni34%(インバー合金)、Fe50−Co50%合金、純Niに対応した実験値である。ダイヤモンド単結晶を育成できる溶媒の組成は広範囲であるから、それらの溶解および再結晶化温度領域はそれらの組成に応じて異なっていることは理解されるべきである。
【0039】
また、溶解および再結晶化温度領域は、同一溶媒であっても原料ダイヤモンド塊の大きさ,処理時間などで異なるなど複雑であるから、概念的に示すところの温度範囲である。本発明にいう溶解および再結晶化温度領域は、溶媒の組成だけでは決定できず、原料ダイヤモンド塊の状態、大きさが異なると溶解速度も異なる。したがって、溶解および再結晶化温度領域に関しては、数値的に何度と何度の間と記述するよりは、実際に原料ダイヤモンド塊の内の単結晶ダイヤモンドの一部分が残存する温度範囲と考えるべきである。
【0040】
【実施例】
以下に本発明の実施例を説明する。
【0041】
(実施例1)図1に示す試料セルにおいて、底面の大きさが約5mm、厚さ約4mmのインクルージョンを多く含む単結晶ダイヤモンドを原料ダイヤモンド塊として使用し、それを約8mm径,厚さ4mmの中性物質である食塩成形体に埋め込み、(100)面を8mm径で厚さ2mmのFe50wt%−Co50wt%溶媒と接触するように配置して、約6.2GPa、1370℃に1時間保持して溶解処理を行い、再結晶化処理として続いて12時間同じ温度に保持したところ、約1mmの単結晶層を残してその上に約3mmの新たなダイヤモンド単結晶が析出した。なお、再結晶ダイヤモンドは、インクルージョンがほとんどない均質なダイヤモンド単結晶であった。
【0042】
(実施例2)実施例1とほぼ同じ単結晶ダイヤモンドを原料ダイヤモンド塊とし、溶媒にFe66wt%−Ni34wt%を用い、約5.8GPa,1300℃で20時間保持すること以外は実施例1と同様の条件を選択して処理したところ、約0.7mmの単結晶ダイヤモンドの上に約3.2mmの均質なダイヤモンド単結晶が得られた。
【0043】
(実施例3)実施例1とほぼ同じ原料ダイヤモンド塊を使用し、溶媒を純Niとし、約6.3GPa,1420℃で24時間保持すること以外は実施例1同様の条件で処理したところ、約0.4mmの単結晶ダイヤモンドの上に約3.4mmのインクルージョンがほとんどない均質なダイヤモンド単結晶が得られた。
【0044】
(実施例4)実施例1と同じ試料セルを用い、原料ダイヤモンド塊として底面が約4mmで厚さ約2mmの単結晶に粉末ダイヤモンドを4mmの厚さに乗せ、これらを食塩成形体に埋めて、粉末ダイヤモンドとNi溶媒を接触させた。約6GPa,1440℃で溶解処理を2時間行い、1420℃で34時間再結晶化処理を行った。その結果、約1.3mmの残留した単結晶ダイヤモンドの上に、約2mmの新しいダイヤモンド単結晶が再結晶化していた。
【0045】
(実施例5)図1に示す試料セル内に、底面の大きさが約5mm、厚さ約4mmの合成単結晶ダイヤモンドに約5mm径,約4mm厚さにホウ素を含有する粉末ダイヤモンドを積層し、それらが8mm径,8mm厚さの食塩成形体に埋まるようにし、粉末ダイヤモンド部分をFe50wt%−Co50wt%溶媒と接するように置き、約6.4GPa,1380℃で2時間保持して溶解処理を行い、続いて1360℃で24時間保持して再結晶化処理を行い、冷却除圧した。取り出した試料は約3mm厚さの単結晶ダイヤモンドに新たに約2.4mm厚さの再結晶化した青色のダイヤモンド単結晶が成長していて、その部分は半導体的な導電性を示した。
【0046】
(実施例6)図1に示す試料セル内に、底面が約3mm厚さが約1.7mmの単結晶ダイヤモンドと直径約3mm、厚さ約3mmの高純度黒鉛成形体を積層させて実施例5と同様のセルに仕込み、実施例5で示すものと同じ溶媒を使用し、ほぼ同じ条件で溶解,再結晶処理を行ったところ、あらかじめ仕込んだ単結晶ダイヤモンドの厚さは約1mmに減少し、その上に約1.2mmの新しいダイヤモンド単結晶が成長していた。
【0047】
(実施例7)実施例6とほぼ同様の大きさの単結晶ダイヤモンドに直径が約3mm厚さが約3mmの非ダイヤモンド炭素粉末成形体を積層させた。この炭素粉末成形体は質量数13の炭素が99.9%以上含有する非晶質炭素を真空中2400℃で2時間以上処理して、黒鉛成分の割合をあらかじめ増加させたものである。これを実施例5,6と同様のセルに仕込み、これらと同じ溶媒を使用し、ほぼ同様な条件で溶解,再結晶処理を行ったところ、あらかじめ仕込んだ単結晶ダイヤモンドの厚さは約1mmに減少し、その上に約0.9mmの新しいダイヤモンド単結晶が成長していた。
【0048】
【発明の効果】
本発明のダイヤモンド単結晶の製造方法によれば、原料ダイヤモンド塊の種類を選択することにより、非常に多種類のダイヤモンド単結晶の合成が可能となり、使用する試料セルの容量に対し、相対的に大径のダイヤモンド単結晶を合成することができるなど利点は多い。すなわち、
(1)原料ダイヤモンド塊の溶解する部分のダイヤモンドが高純度でたとえば窒素の含有量が非常に少なければ、再結晶化したダイヤモンド単結晶も高純度である。原料ダイヤモンド塊のすべてが、あるいは種結晶として残す単結晶ダイヤモンド又は、炭素原料として単結晶ダイヤモンドに積層して溶解させるべく配置する粉末ダイヤモンド,ダイヤモンド焼結体,黒鉛,その他の非ダイヤモンド炭素が炭素の特定質量数成分からみて高純度であれば、同じく質量数として高純度のダイヤモンド単結晶が得られる。
(2)溶解処理によって溶解するダイヤモンドが半導体ダイヤモンドなら再結晶したダイヤモンド単結晶も半導体である半導体結晶が得られる。
(3)原料ダイヤモンド塊を選択すれば、少なくとも2種類のダイヤモンド単結晶の平滑な接合面が得られる。
(4)ダイヤモンド単結晶の形態が温度差育成法よりも自由に選択できる。
などの効果がある。本発明方法によって得られたダイヤモンド単結晶は、切削工具,ダイス,ボンディングツール,レーザなどの光学窓,半導体等への利用が大いに期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法による試料配置の要領を示す図である。
【図2】溶解処理時の試料の変化を示す図である。
【図3】再結晶化処理によるダイヤモンド単結晶の成長の様子を示す図である。
【図4】本発明方法によって得られたダイヤモンド単結晶構造の一例を示す図である。
【図5】再結晶化温度領域の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 セル
2 原料ダイヤモンド塊
3 中性物質
4 溶媒
5 種結晶
6 ダイヤモンド単結晶
7 再結晶ダイヤモンド

Claims (8)

  1. セル内配置工程と、溶解処理工程と、再結晶化処理工程とを順に行う再結晶化によるダイヤモンド単結晶の製造方法であって、
    前記セル内配置工程は、中性物質中に、少なくとも単結晶ダイヤモンドを一部に含む原料ダイヤモンド塊を埋め込み、前記原料ダイヤモンド塊の一部を前記中性物質から露出させて溶媒と直接接するように配置する工程であり、
    前記溶解処理工程は、前記単結晶ダイヤモンドを一部残して前記原料ダイヤモンド塊の炭素成分を溶媒中に溶解させる工程であり、
    前記再結晶化処理工程は、前記溶解処理工程によって残された前記単結晶ダイヤモンドを種結晶として、前記中性物質内で、前記溶解処理工程によって溶融された前記原料ダイヤモンド塊の炭素成分を、前記種結晶表面上に再結晶化させてダイヤモンド単結晶を育成する工程であることを特徴とする再結晶化によるダイヤモンド単結晶の製造方法。
  2. 前記原料ダイヤモンド塊は、前記単結晶ダイヤモンドのみからなるものであることを特徴とする請求項1に記載の再結晶化によるダイヤモンド単結晶の製造方法。
  3. 前記原料ダイヤモンド塊は、前記単結晶ダイヤモンドに炭素原料が積層されたものであり、
    前記炭素原料は、粉末ダイヤモンド,ダイヤモンド焼結体,黒鉛,非ダイヤモンド炭素の少なくとも一つ又は二以上を組み合わせたものであり、
    前記溶解処理工程は、前記炭素原料のすべてを溶解し、前記単結晶ダイヤモンドの少なくとも一部を未溶解で残すものであることを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド単結晶の製造方法。
  4. 前記単結晶ダイヤモンドあるいは前記炭素原料のうちの少なくとも1つは、炭素の特定質量数成分を高純度に含むものであることを特徴とする請求項2又は3のいずれか一つに記載のダイヤモンド単結晶の製造方法。
  5. 前記中性物質は、ダイヤモンド単結晶の育成条件の下で溶媒,炭素のいずれにも反応しない固体物質であることを特徴とする請求項1,2,3又は4のいずれか一つに記載の再結晶化によるダイヤモンド単結晶の製造方法。
  6. 前記溶解処理工程は、溶媒組成、原料ダイヤモンド塊の構成,形態,溶解条件によって決定される溶解および再結晶化温度領域の溶解温度に一定時間保持して行うものであり、
    前記再結晶化処理工程は、前記温度領域の範囲内で前記溶解処理温度より低温に保持して行うものであることを特徴とする請求項1,2,3,4又は5のいずれか一つに記載のダイヤモンド単結晶の製造方法。
  7. 前記溶解処理工程前記再結晶化処理工程とは、溶媒組成,原料ダイヤモンド塊の構成,形態,溶解条件によって決定される溶解および再結晶化温度領域内の溶解温度に原料ダイヤモンド塊をさらし、それを部分的に溶解し、これに続きダイヤモンド単結晶の成長を自発的に進行させるものであることを特徴とする請求項1,2,3,4又は5のいずれか一つに記載のダイヤモンド単結晶の製造方法。
  8. 前記再結晶化処理工程は、溶解処理前の原料ダイヤモンド塊と実質的に同一の大きさ,形態を持つダイヤモンド単結晶を形成させる処理であって、前記ダイヤモンド単結晶は、欠陥濃度、不純物濃度が前記原料ダイヤモンド塊とは異なる結晶であることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6又は7のいずれか一つに記載のダイヤモンド単結晶の製造方法。
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