JP3853886B2 - 木目導管断面パターンの修正装置 - Google Patents
木目導管断面パターンの修正装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建材の印刷などに利用されている木目導管断面パターンの修正装置に関し、特に、天然木の切断面に現れる断面パターンにおいて、複数の導管断面パターンの融合により生じる融合パターンを、単一の導管断面パターンに修正するための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
天然木の肌合いを表現した壁紙等の化粧シートは、建築材料、家具、弱電機器のキャビネット等の表面化粧材として広く利用されている。通常、このような化粧シートの表面には、天然木を模した種々の模様が形成される。天然木の切断面に現れる代表的な木目模様は、導管断面パターンの模様である。この導管断面パターンは、主として植物としての生理作用を営むために不可欠な導管を切断することによって得られるパターンであり、切断された導管部分が木目導管溝として木材の表面に現れたものである。天然木の肌合いを人工的に表現するためには、天然の木材の表面に存在する木目導管溝をできるだけ忠実に再現することが重要である。このため、一般的な壁紙などの製造工程では、この導管断面パターンの模様を平面的に印刷したり、あるいはエンボス版を用いて凹凸状に賦形したりしている。
【0003】
壁紙の表面に形成された木目導管断面パターンが、できるだけ天然の模様に見えるようにするためには、刷版もしくはエンボス版上に形成する導管断面パターンを、天然木の断面に形成された実際の木目導管溝に基づいて作成すればよい。このため、通常は、天然の木材の表面に現れた木目模様のパターンを写真撮影の方法などにより抽出し、この抽出したパターンに基づいて刷版もしくはエンボス版を作成するという方法が採られている。もともと天然の素材をモチーフとして用いているため、壁紙などに再現された模様は、天然の木目に近いものになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、できるだけ天然の木目に近い木目導管溝模様を得るためには、天然の木材の表面に現れた木目模様のパターンを写真撮影の方法などによって抽出する方法が採られる。ところが、このような方法で抽出したパターンには、必ずしも単一の導管断面のパターンのみが含まれているわけではなく、2つ、あるいはそれ以上の導管断面の融合パターンが含まれていることが多い。すなわち、2つ以上の導管断面が平面的に一部重なると、両者の図形論理和に相当する融合パターンが生じることになる。このような融合パターンが生じる原因としては、天然木の中に、もともと2つ以上の導管が融合して存在していたという原因も考えられるが、パターンを抽出したり、加工したりする工程で近接していた導管溝模様が融合してしまったという原因も考えられる。たとえば、天然の木材の表面を写真撮影する場合、表面にいわゆる「めどめ」処理を施すことになるが、この「めどめ」処理に起因して、隣接する導管溝模様が融合した状態でパターンの取り込みが行われてしまうこともある。あるいは、意匠性を向上させるために施したデフォルメ処理により、このような融合が起こる場合も考えられる。
【0005】
このように、天然木を利用して取り込んだ木目導管断面のパターン内に、2つ以上の導管断面が融合した融合パターンが含まれていると、木目模様のシャープな風合いや自然な感触が損なわれるため、好ましくない。そこで従来は、必要に応じて、熟練した職人が手作業で融合パターン部分を修正する処理を施していたが、多大な労力と時間を要する作業となっていた。
【0006】
そこで本発明は、木目導管断面パターンの融合部分を自動的に修正することができる修正装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
(1) 本発明の第1の態様は、木目導管断面パターンの修正装置において、
天然木の切断面に現れる導管断面パターンを示す画像データを、導管断面パターンの内部を示す第1の画素値をもつ画素と導管断面パターンの外部を示す第2の画素値をもつ画素とからなり、XY二次元座標系に配置された画素配列として取り込む画像入力手段と、
この画像データを構成する画素配列上に、X軸に平行な多数の画素行を定義し、各画素行の上で第1の画素値を有する連続画素からなる水平線分を認識し、互いに連結する水平線分によって構成される領域を1つの閉領域として認識し、同一の画素行に複数の水平線分を有する閉領域を、融合図形として検出する融合図形検出手段と、
Y軸方向に関して水平線分の数が変化する画素行が領域の境界辺となるように、1つの融合図形を複数の領域に分割し、各分割領域の一対の境界辺の中点を結ぶ部分方向ベクトルviを定義し、各部分方向ベクトルviの単純和もしくは加重和として代表方向ベクトルVを定義する融合図形解析手段と、
単一の導管断面パターンとして用いるのに適したモデル図形を用意し、代表方向ベクトルVに基づいてこのモデル図形の向きを修正し、修正後のモデル図形を互いに離隔させた状態で複数配置することにより、融合図形を置換する融合図形置換手段と、
この置換により得られる画像データを出力する画像出力手段と、
を設けたものである。
【0011】
(2) 本発明の第2の態様は、上述の第1の態様に係る木目導管断面パターンの修正装置において、
融合図形置換手段が、XY二次元座標系に配置された画素配列としてモデル図形を用意し、このモデル図形をX軸に平行な複数の水平線分に分解し、個々の水平線分をX軸方向に所定画素分だけシフトさせることによりせん断変形を行い、代表方向ベクトルVに沿った向きに修正するようにしたものである。
【0013】
(3) 本発明の第3の態様は、上述の第1または第2の態様に係る木目導管断面パターンの修正装置において、
融合図形解析手段が、個々の融合図形について、その融合図形を構成する導管断面パターンの数を示す導管数Nおよび融合図形の総面積Sを特性として求め、
融合図形置換手段が、モデル図形をその面積の平均がほぼS/Nになるように修正し、この修正後のN個のモデル図形によって置換を行うようにしたものである。
【0014】
(4) 本発明の第4の態様は、上述の第3の態様に係る木目導管断面パターンの修正装置において、
融合図形解析手段が、1つの融合図形において、同一の画素行に存在する水平線分の数の最大値を導管数Nと定義するようにしたものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
§1. 天然木の導管断面パターン
はじめに、天然木の導管断面パターンのもつ性質について簡単に説明しておく。図1に、ごく一般的な天然木から切り出した材木板を示す。このような材木板の表面には、通常、木目模様に沿って細かな木目導管断面パターンが現れる。たとえば、図1に小さな円で囲って示した円形部分領域Uを拡大してみると、図2に示すような、楕円パターンPの集合によって木目模様が構成されていることがわかる。このような楕円パターンPは、木目導管断面パターン、すなわち天然木に存在する導管の断面として得られるパターンである。この木目導管断面パターンが細長いほぼ楕円状のパターンになることを、図3のモデルで示そう。ここでは、天然木に存在する導管Tが完全な円筒形状をしているものとして説明を行うことにする。この導管Tは、植物の生命維持に必要な物質の流通路として利用される管であり、植物の成長方向に沿って伸びている。すなわち、天然木の場合は幹に沿った方向に伸びていることになる。このような天然木から材木板を切り出す場合、通常は、より面積の広い板が取れるように幹に沿った方向に切断することになる。このため、導管Tの長手方向軸と切断面Cとは、図3に示すように、鋭角をなすのが一般的である。したがって、切断面Cに現れる導管Tの切り口、すなわち、木目導管断面パターンは、図3の上方に示すように、細長い楕円パターンPになる。
【0016】
ところで、図2に示した複数の楕円パターンPは、いずれもほぼ長手方向Lの方向に沿って細長い楕円になっている。これは、天然木の内部に存在する導管Tが、いずれも木の成長方向に向かって伸びているため、近接する楕円パターンPはいずれも向きがほぼ同じになるためである。したがって、図1に示すような材木板全体についても、表面に存在する多数の楕円パターンにほぼ共通した長手方向L(この例の場合は、図の左右に伸びる方向)を定めることができる。
【0017】
さて、このような楕円状の木目導管断面パターンは、あくまでも切断面C上に現れた断面パターンであって、実際の木目導管溝の切り口の部分の形状にすぎない。材木板の表面部分に形成された実際の木目導管溝は、深さのある凹状の溝である。参考までに、この導管溝の深さがどのような分布になるかを検討してみる。いま、図3に示すモデルにおいて、導管Tについての3つの横断面C1,C2,C3を考えてみる。図3の下方に示す3つの楕円C1,C2,C3は、各横断面位置での断面図である。ここで、水平の破線Cは、切断面Cの位置を示しており、その下のハッチング部分が、切断面Cの下方に得られる材木板に形成される導管溝Gの内部領域を示している。このモデルから明らかなように、実際の導管溝Gの深さは、図の右側が最も浅く、図の左側が最も深くなる。しかも、右から左へゆくにしたがって、深さは徐々に深くなり、深度は右から左へと単調に増加することになる。また、楕円パターンPの短軸方向に関する深度分布は円弧状になる。
【0018】
なお、上述のモデルでは、導管Tを単純な円筒形状のものとして取り扱ったが、実際の導管は、幾何学的に完全な円筒形状をしているものは希であり、自然界のものであるため当然いびつな形状をしているのが普通である。中には、円筒形状(円柱形状)というよりは、根元から梢にゆくにしたがってなだらかに傾斜した円錐形状に近いものもある。したがって、実際の木目導管断面パターンは、幾何学的に完全な楕円ではなく、多少いびつな形状をしていることになる。
【0019】
壁紙などに木目導管断面パターンの模様を施す場合、通常は、図1に示すような天然木の材木板の表面に現れた模様を、写真撮影などの手法を経て、デジタル画像データの形式でコンピュータに取り込み、必要に応じて画像処理(いわゆるレタッチ処理)を施した後に、この画像データに基づいて印刷版やエンボス版を作成することになる。このとき、コンピュータ内に取り込んだ導管断面パターンには、既に述べたように、融合パターンが含まれている。たとえば、図2に示す例では、パターンP1は単一の導管を切断することによって得られる単一の導管断面パターンであるが、パターンP2およびP3は互いに平面的に重なり合っており、両者が一体となって融合パターンP23を形成している。このような融合パターンP23は、もともと天然木の中に、2本の導管が融合しているような箇所があり、このような導管の融合箇所について切断を行ったために生じる場合もあるし、実際の天然木では2本が融合していなくても、2つの導管断面パターンが非常に接近していたときに、写真撮影などの光学的処理やレタッチなどの画像処理を施す段階で両者が融合してしまう場合もある。このような融合パターンP23の存在は、意匠性を低下させる要因となり好ましくない。本発明に係る修正装置は、このような融合パターンP23を分離して、平面的に離隔した2つの導管断面パターンに修正する処理を行うためのものである。
【0020】
§2. 本発明に係る修正装置の基本構成
図4は、本発明に係る木目導管断面パターンの修正装置の基本構成を示すブロック図である。この修正装置は、画像入力手段10、融合図形検出手段20、融合図形解析手段30、融合図形置換手段40、画像出力手段50によって構成されている。これらの各手段は、実際にはコンピュータおよびその周辺機器を用いて実現されるが、ここでは、説明の便宜上、それぞれの機能に着目して、上述の5つの構成要素に分けて考えることにする。以下、各構成要素を順に説明する。
【0021】
§3. 画像入力手段10
画像入力手段10は、天然木の切断面に現れる導管断面パターンを、導管断面パターンの内部を示す第1の画素値と、導管断面パターンの外部を示す第2の画素値と、をもった画像データとして取り込む機能を有し、具体的には、コンピュータ本体、記憶装置、スキャナ装置などのハードウエアと、これらを動作させる画像入力用のソフトウエアなどによって構成される。図1に示すような天然木の材木板の表面を写真撮影した場合、この写真に基づく画像をスキャナ装置を介してコンピュータに取り込むことになる。もちろん、スキャナ装置の代わりにデジタルカメラやビデオカメラなどを用い、材木板の画像を直接コンピュータに取り込むようにしてもかまわない。
【0022】
ここでは、便宜上、図5に示すような画像が、画像入力手段10によってデジタル画像データとして取り込まれたものとして、以下の説明を行うことにする。この図5に示す画像は、3つの導管断面パターンP1,P2,P3のみを有するが、実際には、より多数の導管断面パターンが散在した画像が取り込まれることになる。一般的なスキャナ装置などで画像を入力すると、通常は、ラスター形式の画像データとして、この画像がコンピュータ内に取り込まれることになる。すなわち、XY二次元座標系に配置された画素配列として画像が表現されることになる。図5に示す例では、図の横方向にX軸、縦方向にY軸が定義されており、このXY二次元座標系上に縦横に配置された多数の画素によって、各導管断面パターンP1〜P3が表現されていることになる。
【0023】
本発明では、各画素について、導管断面パターンの内部を示す第1の画素値か、導管断面パターンの外部を示す第2の画素値か、のいずれかの画素値が定義されていれば足り、画像入力手段10は、二値画像データの形式で画像入力を行う機能をもっていればよい。たとえば、図5にハッチングを施して示した各導管断面パターンP1〜P3の内部の領域に位置する画素は画素値「1」をもち、パターン外部の背景に相当する領域に位置する画素は画素値「0」をもつ。もちろん、二値画像を入力する代わりに、多数の画素値をもった階調画像として画像入力を行ってもよいし、各色ごとに多数の画素値をもったカラー画像として画像入力を行ってもよいが、本発明を実施する上では二値画像が用意できれば十分である。
【0024】
なお、後の処理を容易にするために、木目導管断面パターンの長手方向Lが、画素の配列方向に揃うようにして画像入力を行うのが好ましい。図5に示す例では、各導管断面パターンP1〜P3の長手方向LがY軸方向に一致するような形で画像入力が行われている。もちろん、実際の導管断面パターンP1〜P3はいずれもいびつな楕円形状をしており、その長手方向は、必ずしも共通ではない。しかしながら、導管は植物の生理作用に必要な管であり、いずれもほぼ植物の成長方向に向かって伸びているため、天然木の材木板などから抽出したパターンであれば、多数の導管断面パターンの長手方向はほぼ共通した方向になる。そこで、画像入力手段10を用いた入力作業を行う際に、作業者は目測で長手方向Lを決定し(長手方向Lは、厳密に定義する必要はなく、肉眼で観察したときに、多くの導管断面パターンが向いていると把握できる方向を、長手方向Lと定義すればよい)、この長手方向Lが画素の配列方向に向くようにして入力を行えばよい。
【0025】
たとえば、スキャナ装置を用いた入力を行うのであれば、目測で得た長手方向Lが、スキャナ装置の画像入力面の縁に沿うような向きで入力作業を行えばよい。もちろん、長手方向Lの向きを、後のソフトウエア処理で修正することも可能である。たとえば、入力した画像をディスプレイ装置などに表示し、この画像を必要な角度だけ回転させる処理を行い、長手方向Lを画素の配列方向に向けるような修正を行えばよい。ただ、無駄な作業を省く上では、画像入力手段10による入力時に、できるだけ向きを揃えるようにするのが好ましい。
【0026】
なお、実用上は、この画像入力手段10に、雑音処理機能を付加しておくのが好ましい。図5に示す画像には、何ら雑音成分は含まれていないが、実際の天然木の材木板などから入力した画像には、種々の雑音が含まれていることが多い。たとえば、図6に示す画像では、導管断面パターンP3に、いわゆる「画素抜け」と呼ばれている雑音P0(本来であれば、パターン内部を示す画素値「1」をとるべき画素が、背景部を示す画素値「0」をとった場合に生じる)が含まれており、また、これとは逆に、いわゆる「汚れ」と呼ばれている雑音P4(本来であれば、背景部を示す画素値「0」をとるべき画素が、パターン内部を示す画素値「1」をとった場合に生じる)も含まれている。後の処理を有効に行うためには、画像入力手段10に、雑音処理機能を付加しておき、この画像入力段階で雑音除去を行っておくのが好ましい。デジタル画像に対する雑音除去処理の方法としては、種々の方法が公知であるため、ここでは詳しい説明は省略する(たとえば、特開平8−212333号公報参照)。
【0027】
§4. 融合図形検出手段20
画像入力手段10によって入力した画像が、図5に示すように、すべて単一の導管断面パターンから構成されている場合には、本発明に係る修正装置による修正は必要ないが、実際には、たとえば、図7に示すように、隣接する導管断面パターンP2,P3が融合することにより融合パターンP23が形成される場合がある。本発明に係る修正装置は、この図7に示すような融合パターンP23を、互いに離隔したパターンP2,P3に置換し、図5に示すような木目導管断面パターンを得る機能を有する。
【0028】
融合図形検出手段20は、画像入力手段10によって入力した画像データに基いて、第1の画素値を有する連続した領域をそれぞれ個々の閉領域として認識し、認識した個々の閉領域のうち、複数の導管断面パターンが融合してなる閉領域を、融合図形として検出する処理を行う。たとえば、画像入力手段10によって図7に示すような画像データが入力された場合、第1の画素値(この例の場合、画素値「1」)を有する連続した領域として、2つの閉領域が認識される。すなわち、第1の閉領域は、図のパターンP1を構成する閉領域であり、第2の閉領域は、図のパターンP23を構成する閉領域である。そして、これら2つの閉領域のうち、パターンP23が融合図形として検出されることになる。
【0029】
融合図形検出手段20において行われる上述の検出処理の手順を、図8の流れ図を参照しながら説明する。まず、ステップS11において、閉領域の認識処理が行われる。図7に示すような画像について、第1の閉領域P1と第2の閉領域P23とをそれぞれ認識するためには、具体的には次のような処理を行えばよい。既に述べたように、画像入力手段10によって入力した画像は、XY二次元座標系に配置された画素配列として表現されている。そこで、まず、X軸に平行な多数の画素行を定義し、各画素行の上で第1の画素値をもった連続画素からなる水平線分を認識する。そして、互いに連結する水平線分によって構成される領域を1つの閉領域として認識すればよい。
【0030】
たとえば、図9に示すように、10×10の画素配列で表現された画像を考える。ここで、図に黒い画素(画素値「1」)で示される部分が導管断面パターン内部に相当し、図に白い画素(画素値「0」)で示される部分が背景部分に相当するものとしよう。もちろん、人間の脳は、このような画像に基づいて、2つの閉領域(中央に位置する大きな閉領域F1と、右端に位置する小さな閉領域F2)を認識できる。融合図形検出手段20は、次のような手法で、この2つの閉領域の認識を行っている。
【0031】
まず、図9の画素配列上で、X軸に平行な10本の画素行を定義し、各画素行の上で、画素値「1(黒)」をもった一連の連続画素列を「水平線分」として定義する。たとえば、第1の水平線分は、第0の画素行上に配置された2つの画素から構成されている。図では、各水平線分の左端位置に、水平線分を示す番号を記してある。この例では、第1の水平線分〜第16の水平線分まで、合計16の水平線分が定義されることになる。結局、各水平線分は、線分ID(この例では、1〜16の番号),垂直位置(Y軸座標位置),水平始点(水平線分の左端の画素のX軸座標位置),水平終点(水平線分の右端の画素のX軸座標位置)を特定する図10のようなテーブルで定義される。こうして複数の水平線分が定義されたら、互いに連結する水平線分によって構成される領域を1つの閉領域として認識すればよい。たとえば、第2の水平線分と第4の水平線分とは互いに連結しており、第4の水平線分と第6の水平線分も互いに連結している。こうして、互いに連結する水平線分をグループ化すれば、第1の閉領域F1と第2の閉領域F2とを認識することができる。
【0032】
なお、この処理において、「連結関係にある」とは、「平面上において連結している」ことを意味し、この実施例では、具体的には、「水平線分を構成するいずれかの画素の上下左右に隣接する位置に、閉領域を構成するいずれかの画素が存在する」場合に、「当該水平線分と当該閉領域とは連結関係にある」と判断している。もちろん、上下左右だけでなく、斜めを含めた8つの位置に存在する場合に「連結関係にある」と判断してもかまわない。
【0033】
こうして、図8のステップS11において、各閉領域の認識が完了したら、続くステップS12において、1つの閉領域を抽出し、ステップS13において、この抽出した閉領域の最初の行を走査する。そして、ステップS14において、走査した行中に水平線分は1つのみかを判断する。1つのみの場合には、ステップS15を経て、ステップS16へと移行し、次の行の走査を行ってから再びステップS14の判断を行う。こうして、第1行から最終行まで走査した結果、いずれの行にも水平線分が1つしか存在しない場合には、ステップS17において、この抽出した閉領域を単一図形と判定する。逆に、いずれかの行において、水平線分が複数存在すると判断された場合には、ステップS14からステップS18へと分岐し、この抽出した閉領域を融合図形と判定する。同様の処理を、ステップS19を介して、全閉領域について実施すれば、融合図形の検出処理は完了である。
【0034】
上述の処理を、図9に示す具体的な画像について実施してみよう。既に述べたように、この図9の画像に対して、ステップS11の処理を実行することにより、2つの閉領域F1,F2が認識されることになる。そこで、続くステップS12において、第1の閉領域F1が抽出されたものとしよう。この場合、ステップS13では、図9の第0の画素行が走査され、閉領域F1を構成する水平線分としては、第1の水平線分が1つだけ存在することが確認される。そこで、ステップS14からステップS15を経て、ステップS16において、次の第1の画素行が走査される。すると、閉領域F1を構成する水平線分として、第2の水平線分および第3の水平線分が存在することが確認される。そこで、ステップS14からステップS18へと分岐し、この閉領域F1は融合図形と判定される。更に、ステップS19からステップS12へと戻り、第2の閉領域F2が抽出される。この場合、ステップS13では、図9の第4の画素行が走査され、閉領域F2を構成する水平線分としては、第9の水平線分が1つだけ存在することが確認される。そこで、ステップS14からステップS15を経て、ステップS16において、次の第5の画素行が走査される。そして、閉領域F2を構成する水平線分としては、第11の水平線分が1つだけ存在することが確認される。そこで、ステップS14からステップS15を経てステップS17へと分岐し、この閉領域F2は単一図形と判定される。以上で全閉領域の抽出が完了し、図8の手順は終了する。
【0035】
要するに、融合図形検出手段20は、互いに連結する水平線分によって構成される領域を1つの閉領域として認識し、同一の画素行に複数の水平線分を有する閉領域を融合図形として検出する処理を行うことになる。図9に示す画像に対してこの処理を実行すれば、上述のような手順により、閉領域F1が融合図形として検出される。同様に、図7に示す画像に対してこの処理を実行すれば、閉領域P23が融合図形として検出されることになる。なお、図7に示す閉領域P23は、2つの導管断面パターンP2,P3が融合した結果として得られる融合図形であるが、上述の手法によれば、3つ以上の導管断面パターンが融合した結果として得られる融合図形も同様に検出することが可能である。
【0036】
§5. 融合図形解析手段30
融合図形検出手段20によって融合図形が検出されると、融合図形解析手段30によって、検出された各融合図形に対する解析が行われる。既に述べたように、融合図形は、複数の単一導管断面パターンに置換されることになるが、全くランダムに定義した導管断面パターンを用いて置換することは好ましくない。これは、天然木の導管が自然の流れをもって分布しているため、全くランダムな置換を行うと、木目模様の全体的な流れの中で違和感を生じさせてしまうためである。したがって、できる限り、融合前の状態を反映した置換が行われるのが好ましい。融合図形解析手段30は、融合図形を解析して、この融合図形のもっている特性を求める処理を行う機能を有しており、後述する融合図形置換手段40では、この解析によって得られた特性に基づいて、できるだけ違和感の生じないような導管断面パターンを用いた置換が行われることになる。
【0037】
本実施形態では、融合図形から得られる特性として、構成要素となる導管断面パターンの数(導管数N)と、これら複数の導管断面パターンの長手方向の代表的な向きを示す代表方向ベクトルVと、融合図形の総面積S(「総」の意味は、構成要素となる複数の導管断面パターンそれぞれの面積の総和の意味である)と、を求めている。たとえば、図11(a) に示すような融合図形Fが融合図形検出手段20によって検出されたとすると、この融合図形Fについては、導管数N=2、総面積S(図のハッチング部分の面積)、そして図11(b) に示すような代表方向ベクトルV、が求められることになる。ここで、総面積Sは融合図形を構成する画素の数として容易に求めることができるが、導管数Nおよび代表方向ベクトルVは、何らかのアルゴリズムに基づいて定義する必要がある。以下、この定義方法の一例を示す。
【0038】
まず、導管数Nであるが、たとえば、図11(a) に示すような融合図形Fが提示された場合、人間の脳であれば、これが2本の導管の融合によって生じた図形であると直感的に認識することができ、導管数N=2と認識することができる。もっとも、この認識が必ずしも正しい認識であるとは限らず、場合によっては、3つの導管断面パターンの融合によって、図11(a) に示すような融合図形Fが生じることもありうる。ただ、本発明を実施する上では、導管数の認識に誤りが生じたとしても、重大な問題にはならない。融合図形Fの導管数がN=2と認識された場合には、この融合図形Fが2つの離隔した導管断面パターンによって置換され、N=3と認識された場合には、3つの離隔した導管断面パターンによって置換されることになるが、いずれの場合も大きな問題は生じない。
【0039】
そこで、本実施形態では、次のような非常に単純なアルゴリズムにより、融合図形の導管数Nを決定している。すなわち、同一の画素行に存在する水平線分の数の最大値を導管数Nと定義するのである。たとえば、図9に示す閉領域F1(融合図形)の場合、第0の画素行には、水平線分が1つだけ存在し(水平線分ID:1)、第1の画素行には、水平線分が2つ存在し(水平線分ID:2,3)、第2の画素行にも、水平線分が2つ存在し(水平線分ID:4,5)、…、以下同様に、水平線分が1つだけ存在する画素行と、水平線分が2つ存在する画素行とが現れる。したがって、同一の画素行に存在する水平線分の数の最大値は2ということになる(別言すれば、水平線分が3つ以上存在する画素行は存在しない)。よって、この図9に示す融合図形F1については、導管数N=2と定義することができる。
【0040】
なお、このような単純なアルゴリズムで導管数Nを決定する場合、画像にいわゆる「画素抜け」や「汚れ」が存在すると、適切な導管数Nを求めることができなくなるので、§3で述べたように、画像入力手段10における画像入力時に、雑音除去処理を施しておくのが好ましい。
【0041】
一方、代表方向ベクトルVを求めるアルゴリズムは、もう少し複雑である。図12は、この代表方向ベクトルVを求める手順を示す流れ図である。上述したように、代表方向ベクトルVは、融合図形を構成している複数の導管断面パターンの長手方向の代表的な向き(平均的な向き)を示すベクトルである。このような代表方向ベクトルVを一義的に定義するために、融合図形を複数の領域に分割し、各分割領域ごとにそれぞれ部分方向ベクトルviを定義し、各部分方向ベクトルviの単純和もしくは加重和として代表方向ベクトルVを定義するという手法を採る。
【0042】
まず、ステップS21において、融合図形の分割を行う。本実施形態では、融合図形を構成する水平線分の数が変化する画素行が領域の境界辺となるような分割を行っている。たとえば、図9に示す融合図形F1に対して、このような分割処理を行うと、まず、第0の画素行(水平線分数:1)と第1の画素行(水平線分数:2)との間に分割線が引かれる。また、第3の画素行(水平線分数:2)と第4の画素行(水平線分数:1)との間に分割線が引かれる。更に、第7の画素行(水平線分数:1)と第8の画素行(水平線分数:2)との間に分割線が引かれ、第8の画素行(水平線分数:2)と第9の画素行(水平線分数:1)との間に分割線が引かれる。かくして、この融合図形F1は、第1の分割領域(水平線分ID:1)、第2の分割領域(水平線分ID:2,4,6)、第3の分割領域(水平線分ID:3,5,7)、第4の分割領域(水平線分ID:8,10,12,13)、第5の分割領域(水平線分ID:14)、第6の分割領域(水平線分ID:15)、第7の分割領域(水平線分ID:16)に分割されることになる。この手法を、図11(a) に示す融合図形Fに適用すると、結局、図13に示すような7つの分割領域f1〜f7が形成されることになる。
【0043】
続く、ステップS22では、各分割領域について、部分方向ベクトルを定義する。具体的には、この実施形態では、各分割領域f1〜f7の一対の境界辺(図13に示す例では、各分割領域の上辺および下辺)の中点を結ぶベクトルとして、部分方向ベクトルviを定義している。図14には、このようにして定義した部分方向ベクトルv1〜v7を示す。要するに、この部分方向ベクトルv1〜v7は、融合図形Fの各部分における導管断面パターンとしての流れの方向を示すものであり、必ずしも、各分割領域の長手方向そのものを示すものではない(たとえば、図14に示す部分方向ベクトルv1は、図13に示す分割領域f1についてのベクトルであるが、分割領域f1自身の長手方向とは一致していない)。
【0044】
最後に、ステップS23において、個々の部分方向ベクトルに基づいて、融合図形全体についての代表方向ベクトルVを定義する。n個の部分方向ベクトルv1〜vnに基づいて、代表方向ベクトルVを定義する方法としては、
V = Σ i=1〜n vi
なる式により、単純ベクトル和をとることもできるし、個々の分割領域f1〜fnの面積S1〜Snを考慮して、
V = Σ i=1〜n (Si*vi/|vi|)
なる式により、面積による加重和をとることもできる。図11(b) は、上述のような手順により、同図(a) に示されている融合図形Fについて定義した代表方向ベクトルVを示す。
【0045】
なお、融合図形の分割方法は、上述の方法に限定されるものではなく、この他の方法を採ることも可能である。たとえば、図13に示すように7つの分割領域f1〜f7を形成する代わりに、図15に示すように5つの分割領域f1〜f5を形成することもできる。このような分割を行うには、たとえば、画素行を上から順に走査してゆき、水平線分数が変化し、かつ、その位置においてパターンの分岐もしくは融合が生じている場合には、そこに分割線を定義する、というアルゴリズムに基づいた処理を行えばよい。図15に示す融合図形Fについて画素行を上から下へ向かって順に走査してゆき、上述の処理を行えば、位置y1では、水平線分数が1から2に変化しているが、パターンの分岐や融合は生じていない。よって、位置y1は分割線にはならない。一方、位置y2では、水平線分数が2から1に変化し、かつ、パターンの融合が生じているため、位置y2は分割線になる。同じく、位置y3では、水平線分数が1から2に変化し、かつ、パターンの分岐が生じているため、位置y3は分割線となり、位置y4では、水平線分数が2から1に変化しているが、パターンの分岐や融合は生じていないため、位置y4は分割線にはならない。かくして、位置y2,y3を分割線として、5つの分割領域f1〜f5が形成されることになる。図16は、このような分割領域f1〜f5について求められた部分方向ベクトルv1〜v5と、これらに基づいて定義された代表方向ベクトルVを示している。
【0046】
§6. 融合図形置換手段40
これまでの処理により、画像入力手段10によって入力した画像の中から融合図形が検出され、各融合図形についての特性(導管数N,代表方向ベクトルV,融合図形の総面積S)が求められたことになる。融合図形置換手段40は、この特性を考慮して、各融合図形を複数の導管断面パターンに置換する処理を実行する。融合図形置換手段40内には、単一の導管断面パターンとして用いるのに適したモデル図形が用意されている。融合図形置換手段40は、このモデル図形を、各融合図形ごとの特性に適合するように修正し、修正後のモデル図形を互いに離隔させた状態で複数配置することにより、融合図形を置換する処理を行うことになる。
【0047】
1つの融合図形をいくつのモデル図形で置換するかは、その融合図形について求められた導管数Nによって定められる。たとえば、図11(a) に示す融合図形Fの場合、導管数N=2であるので、2つのモデル図形によって置換されることになる。また、融合図形の置換に用いるモデル図形に対してどのような修正を施すかは、その融合図形について求められた代表方向ベクトルVおよび総面積Sによって定められる。基本的には、置換に用いるモデル図形が、代表方向ベクトルVに沿った方向を向くように、向きの修正が行われるとともに、N個のモデル図形の面積の総和が融合図形の総面積にほぼ等しくなるように、面積の修正(大きさ・形状の修正)が行われることになる。
【0048】
図17は、融合図形置換手段40において行われる融合図形置換処理の手順を示す流れ図である。まず、ステップS31において、モデル図形が用意される。このモデル図形は、単一の導管断面パターンとして用いるのに適した図形であればどのようなものでもかまわない。図18(a) に示すモデル図形M1は、幾何学的な楕円形状のものであり、コンピュータにより発生させたものである。一方、図18(b) に示すモデル図形M2は、画像入力手段10から入力した画像の中から、モデル図形として利用するのに適した単一の導管断面パターンを抽出して利用したものである。なお、この実施形態では、XY二次元座標系に配置された画素配列としてモデル図形を用意しており、その長手方向はY軸方向に一致するようにしている。また、こうして用意したモデル図形について、長手方向の長さLmと、面積Smとを予め求めてある。
【0049】
続くステップS32において、置換対象となる融合図形を1つ抽出し、ステップS33において、この抽出した融合図形についての特性を認識する。すなわち、抽出した融合図形について、融合図形解析手段30によって求められた導管数N,融合図形の総面積S,代表方向ベクトルVがデータとして用意されることになる。
【0050】
そして、ステップS34において、用意したモデル図形の面積の修正(大きさ・形状の修正)が行われる。この面積の修正を行う基本的な意図は、置換前の図形と置換後の図形との面積をほぼ同じにし、置換による違和感を低減することにある。そこで、まず、
ΣLi = Lm*S/Sm
なる演算によって、モデル図形の合計長ΣLiを求める。たとえば、図18(a) に示すモデル図形M1を縦方向のみに引き伸し、長さがΣLiになるように変形すると、この変形後のモデル図形M1の面積は、融合図形の総面積Sに等しくなる。ただし、実際には、N個のモデル図形による置換を行うので、1個のモデル図形の長さLiは、
Li = ΣLi / N
なる式によりN等分すればよい。図19に示す2つのモデル図形M11,M12は、図18(a) に示すモデル図形M1に対して、上述のような修正を施して得られたモデル図形である。両モデル図形M11,M12は、いずれも面積がS/2の合同な図形であり、互いに所定間隔をおいて配置されている。なお、複数のモデル図形の相互の間隔は、予め定めておいた一定間隔とすることもできるし、置換対象となる融合図形のX軸方向の幅を考慮して定めた所定の間隔とすることもできる。
【0051】
なお、上述の例では、N個のモデル図形を、その面積がS/Nになるように修正し、全く合同のモデル図形を得ているが、必ずしもN個のモデル図形すべてを合同にする必要はない。要するに、各モデル図形の面積の平均がほぼS/Nになるように面積の修正を行えば足り、図19において、モデル図形M11とM12との間に多少の大きさの相違をもたせるようにしてもかまわない。また、上述の例では、もともとのモデル図形を、縦方向にのみ変形させて面積の修正を行っているが、横方向への変形、あるいは縦横両方向への変形によって面積の修正を行うことも可能である。
【0052】
こうして面積の修正がなされた複数のモデル図形に対して、ステップS35において、向きの修正が行われる。この向きの修正を行う基本的な意図は、置換により模様全体としての流れに違和感が生じないようにすることにあり、モデル図形の長手方向が、置換対象となる融合図形の代表方向ベクトルVの方向を向くようにすればよい。図20は、図形を回転させる処理を行うことにより、図19に示す2つのモデル図形M11,M12の向きを修正した例である。この修正により、モデル図形M11,M12の長手方向は、いずれも代表方向ベクトルVを向くことになる。
【0053】
なお、この実施形態では、前述したように、XY二次元座標系に配置された画素配列としてモデル図形を用意しているため、ステップS35における向きの修正は、図形を回転させる方法を採るよりも、図形をせん断変形させる方法を採った方が演算処理が簡単になる。すなわち、図21(a) に示すように、面積の修正が完了したモデル図形をX軸に平行な複数の水平線分に分解し、個々の水平線分をX軸方向に所定画素分だけシフトさせることによりせん断変形を行えば、同図(b) に示すように、代表方向ベクトルVに沿った向きに修正することが可能になる。
【0054】
こうして、モデル図形に対する面積および向きの修正が完了したら、ステップS36において、この修正したモデル図形による置換処理を実行する。すなわち、置換対象となる融合図形を消去し、かわりに、修正した複数のモデル図形を配置する処理が行われる。モデル図形の配置位置は、融合図形の位置に基づいて適宜決定すればよい。たとえば、融合図形の重心位置と、複数のモデル図形の重心位置とが一致するような配置を行えばよい。
【0055】
以上の置換処理が、ステップS37を経て、全融合図形が置換されるまで繰り返し実行される。
【0056】
§7. 画像出力手段50
上述した置換処理が完了すると、画像入力手段10で入力した画像に含まれていた融合図形は、それぞれ複数の単一の導管断面パターンに置換されることになる。そこで、最後に、この置換後の画像が、画像出力手段50から出力される。画像は使用目的に応じた形式で出力されるので、画像出力手段50としては、画像の使用目的に応じて、出力スキャナ装置、刷版装置、あるいは外部記憶装置などを用いればよい。
【0057】
【実施例】
<融合図形解析手段の実施例>
図22および図23は、融合図形解析手段30における代表方向ベクトルVを定義する処理手順の実施例を示す流れ図であり、図12に示した手順を具体的に実施する際の詳細な手順が示されている。
【0058】
まず、ステップS41において、解析対象となる融合図形を入力する。ここで、変数nlは、この融合図形の長手方向の画素行数(長さ)である。ステップS42では、1行目に現れる水平線分数pnsegが変数として記憶され、ステップS43では、代表方向ベクトルのx成分およびy成分を求めるための累積値を示すパラメータxsumおよびysumが初期値0に設定される。続くステップS44では、変数ilが初期値2に、変数precが初期値1に設定される。ここで、変数ilは、現在の着目行を示すポインタであり、変数precは、水平線分数が第何行目から変化していないかを記憶するポインタである。
【0059】
次のステップS45では、現在の着目行である第il行目に現れる水平線分数を、変数nsegに格納する。そして、ステップS46において、nseg=pnsegであるか否かが判断され、両者が等しければ、ステップS47へと進み、着目行ilが1だけ更新され、ステップS48を経てステップS45からの処理が繰り返し実行される。ステップS46において、nseg=pnsegではないと判断された場合は、水平線分数に変化が生じたことになり、図23に示すサブルーチンが実行される。
【0060】
図23に示すサブルーチンは、第prec行から第(il−1)行までを、pnseg個の分割領域として認識し、方向ベクトルを算出する処理である。まず、ステップS51において、第prec行目から第(il−1)行目の区間に現れるpnseg個の領域に共通なy方向のサイズ(il−prec)を変数ydiffに格納する。続いて、ステップS52において、変数ipを初期値1に設定する。この変数ipは、この区間、すなわち、第prec行目から第(il−1)行目の区間での着目すべき分割領域のID番号である。
【0061】
ステップS53では、この区間の第ip番目の分割領域のx方向の中心変位量が変数xdiffに格納される。ここで、中心変位量とは、この分割領域の下端の中心位置と上端の中心位置とのx方向に関する変位量である。結局、この第ip番目の分割領域についての部分方向ベクトルは、(xdiff,ydiff)で表されることになる。ステップS54では、代表方向ベクトルのx成分およびy成分を求めるための累積値を示すパラメータxsumおよびysumの値が更新される。すなわち、これまでの累積値xsum,ysumに、現在着目中の分割領域についての部分方向ベクトルが加算される。このとき、部分方向ベクトルの長さによる重み付けを行うために、右辺第2項に、ydiffとの積をとった値をもってきている。
【0062】
続いて、ステップS55において、変数ipを1だけ増加させ、着目すべき部分領域を次の部分領域に更新する。そして、ステップS56を経て、ステップS53へと戻り、同様の処理を繰り返し実行する。ステップS56において、ip>pnsegと判断された場合には、もはやこの区間には未着目の部分領域が存在しないので、ステップS57へと進み、水平線分数を示す変数pnsegおよび区間の開始位置を示す変数precを更新し、もとのルーチンへと復帰する。すなわち、図22のステップS47へと復帰することになる。
【0063】
こうして、ステップS45〜S47の処理が繰り返し実行され、ステップS48において、il>nlと判断された場合には、全画素行についての処理が完了したことになるので、もう一度だけ、図23に示すサブルーチンを実行し、最後の区間についての部分方向ベクトルの算出および累積処理を実行する。最後に、ステップS49において、累積値(xsum,ysum)を出力すれば、この累積値は、この融合図形についての代表方向ベクトルVを示すものになる。
【0064】
<具体的な修正処理結果を示す実施例>
最後に、本発明に係る木目導管断面パターンの修正装置を用いた具体的な修正処理結果を実施例として示しておく。図24は、画像入力手段10によって取り込んだ修正前の画像を示す。この例では、図の横方向に長手方向Lが定義されている。このような画像に対して、融合図形検出手段20による検出処理を実施すると、図25に線で囲った部分が融合図形として検出され、これらの融合図形に対して、融合図形解析手段30による解析処理が実行されることになり、最後に、融合図形置換手段40による置換処理が実行されることになる。図26は、図25に線で囲った融合図形を消去した状態の画像を示す。置換処理を実行すると、このように消去された融合図形に代わって、所定のモデル図形が配置されることになる。図27は、置換処理が完了した状態の画像を示す。画像出力手段50によって出力される画像は、この図27に示す画像になる。図24に示す修正前の画像と、図27に示す修正後の画像とを比較すると、修正により意匠性が向上していることがわかる。
【0065】
【発明の効果】
以上のとおり本発明に係る木目導管断面パターンの修正装置によれば、木目の導管断面パターンの融合部分を自動的に修正することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的な天然木の材木板上に現れる木目導管断面パターンの一例を示す図である。
【図2】図1に示すパターンの円形部分領域U内の拡大図である。
【図3】一般的な天然木を切断したときに得られる導管溝の深さ分布を求めるための幾何学モデルを説明する図である。
【図4】本発明に係る木目導管断面パターンの修正装置の基本構成を示すブロック図である。
【図5】図4に示す装置の画像入力手段10によって入力された木目導管断面パターンの画像の一例を示す図である。
【図6】図5に示す画像に雑音が含まれている例を示す図である。
【図7】図5に示す画像に融合パターンP23が含まれている例を示す図である。
【図8】図4に示す装置の融合図形検出手段20によって行われる融合図形検出処理の手順を示す流れ図である。
【図9】図8に示す手順におけるステップS11の閉領域認識処理の対象となる画像の一例を、画素レベルで表現した図である。
【図10】図9に示す画像について認識された水平線分を特定する情報を示す図表である。
【図11】図4に示す装置の融合図形解析手段30によって行われる融合図形解析処理の対象となる融合図形の一例およびこの融合図形Fについて求められた代表方向ベクトルVを示す図である。
【図12】図4に示す装置の融合図形解析手段30において、代表方向ベクトルVを定義する手順を示す流れ図である。
【図13】図12に示す手順におけるステップS21によって行われた分割処理の一例を示す図である。
【図14】図13に示す分割領域f1〜f7について求められた部分方向ベクトルv1〜v7および代表方向ベクトルVを示す図である。
【図15】図12に示す手順におけるステップS21によって行われた分割処理の別な一例を示す図である。
【図16】図15に示す分割領域f1〜f5について求められた部分方向ベクトルv1〜v5および代表方向ベクトルVを示す図である。
【図17】図4に示す装置の融合図形置換手段40によって行われる融合図形置換処理の手順を示す流れ図である。
【図18】図17に示す手順におけるステップS31で用意されるモデル図形の例を示す図である。
【図19】図17に示す手順におけるステップS34で面積が修正されたモデル図形の例を示す図である。
【図20】図17に示す手順におけるステップS35で向きが修正されたモデル図形の例を示す図である。
【図21】モデル図形の向きをせん断変形によって修正する概念を示す図である。
【図22】融合図形解析手段30における代表方向ベクトルVを定義する処理手順の実施例を示す流れ図である。
【図23】図22に示す手順におけるサブルーチンの手順を示す流れ図である。
【図24】本発明に係る修正装置の画像入力手段によって取り込んだ修正前の画像を示す図である。
【図25】図24に示す画像について検出された融合図形を示す図である。
【図26】図25に示す融合図形を消去した状態を示す図である。
【図27】図25に示す融合図形をモデル図形によって置換した状態を示す図である。
【符号の説明】
10…画像入力手段
20…融合図形検出手段
30…融合図形解析手段
40…融合図形置換手段
50…画像出力手段
C,C1,C2,C3…切断面
F…融合図形
f1〜f7…部分領域
F1…閉領域(融合図形)
F2…閉領域(非融合図形)
G…木目導管溝
L…木目導管断面パターンの長手方向
Lm…モデル図形の長手方向の長さ
M1,M2…モデル図形
M11,M12…修正されたモデル図形
P0…画素抜け
P,P1,P2,P3…導管断面パターン(楕円パターン)
P4…汚れ
P23…融合パターン
T…導管
U…天然木の材木板の拡大部分
v1〜v7…部分方向ベクトル
V…代表方向ベクトル
y1〜y4…y方向の位置
Claims (4)
- 天然木の切断面に現れる導管断面パターンを示す画像データを、導管断面パターンの内部を示す第1の画素値をもつ画素と導管断面パターンの外部を示す第2の画素値をもつ画素とからなり、XY二次元座標系に配置された画素配列として取り込む画像入力手段と、
前記画像データを構成する画素配列上に、X軸に平行な多数の画素行を定義し、各画素行の上で第1の画素値を有する連続画素からなる水平線分を認識し、互いに連結する水平線分によって構成される領域を1つの閉領域として認識し、同一の画素行に複数の水平線分を有する閉領域を、融合図形として検出する融合図形検出手段と、
Y軸方向に関して水平線分の数が変化する画素行が領域の境界辺となるように、1つの融合図形を複数の領域に分割し、各分割領域の一対の境界辺の中点を結ぶ部分方向ベクトルviを定義し、各部分方向ベクトルviの単純和もしくは加重和として代表方向ベクトルVを定義する融合図形解析手段と、
単一の導管断面パターンとして用いるのに適したモデル図形を用意し、前記代表方向ベクトルVに基づいて前記モデル図形の向きを修正し、修正後のモデル図形を互いに離隔させた状態で複数配置することにより、前記融合図形を置換する融合図形置換手段と、
前記置換により得られる画像データを出力する画像出力手段と、
を備えることを特徴とする木目導管断面パターンの修正装置。 - 請求項1に記載の修正装置において、
融合図形置換手段が、XY二次元座標系に配置された画素配列としてモデル図形を用意し、このモデル図形をX軸に平行な複数の水平線分に分解し、個々の水平線分をX軸方向に所定画素分だけシフトさせることによりせん断変形を行い、代表方向ベクトルVに沿った向きに修正することを特徴とする木目導管断面パターンの修正装置。 - 請求項1または2に記載の修正装置において、
融合図形解析手段が、個々の融合図形について、その融合図形を構成する導管断面パターンの数を示す導管数Nおよび融合図形の総面積Sを特性として求め、
融合図形置換手段が、モデル図形をその面積の平均がほぼS/Nになるように修正し、この修正後のN個のモデル図形によって置換を行うことを特徴とする木目導管断面パターンの修正装置。 - 請求項3に記載の修正装置において、
融合図形解析手段が、1つの融合図形において、同一の画素行に存在する水平線分の数の最大値を、当該融合図形の導管数Nと定義することを特徴とする木目導管断面パターンの修正装置。
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