JP3853438B2 - 窒化珪素焼結体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、1200〜1400℃の高温でも、強度、ヤング率等の機械的性質や耐酸化性に優れ、かつ原料を超微粉とする必要がない窒化珪素焼結体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
窒化珪素は耐熱、耐熱衝撃などの熱的性質、耐摩耗、強度、破壊靱性などの機械的性質に優れた材料であり、エンジン部品や切削工具など幅広い用途が期待されている。特に最近では、自動車エンジンやガスタービンなどの高温構造部材としての用途が注目を集めており、1300℃前後における強度、耐熱性、耐酸化性等についてより高い信頼性が要求されてきている。
これに対し現状の窒化珪素の高温特性は、1100〜1200℃が限界であり、上記用途の仕様を満足するまでには至っていない。
【0003】
すなわち、例えば、高温においては、製造方法にもよるが1100〜1200℃で急激な強度低下を生じるのが一般的である。一部、反応焼結窒化珪素のように1400℃まで強度が一定で、高い耐熱性を有するものもあるが、これらは多孔質材で強度などの機械的性質に劣るため、上記用途では対象とならない。
【0004】
また、現状の窒化珪素は、一般的に1000℃程度までは優れた耐酸化性を示すが、これを超えると酸化増量が著しく、例えば1300℃以上では200時間で1mg/cm2 の酸化増量を示す。
【0005】
このように高温特性が低下する大きな要因としては、焼結助剤の存在が挙げられる。すなわち、元来、窒化珪素は極めて難焼結性の材料であり、これを半ば強制的に焼結させるために焼結助剤を多量に添加しなければならないからである。この焼結助剤が焼結温度の上昇に伴い結晶粒界に液相を形成することで焼結が助長され、緻密化し各種特性が向上するわけである。しかし一旦形成された液相は、焼結耐製造時の冷却段階でガラス相として固定されるため、高温において使用する場合、このガラス相が塑性流動を起こし強度の低下を招くこととなる。また、こういった焼結助剤添加に伴う液相焼結では、いわゆる粒成長が避けられず、出発原料粒度に比し焼結体の結晶粒度が大きく成長するため、高温特性はもとより室温特性の低下ももたらされる。
【0006】
一方、高温においては、酸化の進行によって焼結助剤が表面に拡散するため焼結助剤の添加量が多いほど耐酸化性が低下する。さらにこの表面酸化皮膜への拡散により、焼結体マトリクス中には助剤拡散後の空隙が形成される。従って、助剤添加量が増すほど各種高温特性が低下するなどの悪影響がもたらされることとなる。
【0007】
そこで、助剤添加量を減らして緻密な焼結体を作製する技術が各種検討されており、一つの手段として、原料粉末を超微粉にし焼結性を高める方法が挙げられる。この方法によれば、平均粒度が1〜2μmの窒化珪素粉末において、緻密化に必要な焼結助剤量が3重量%以上であったものが、サブミクロン粉末では1重量%以下で十分緻密な焼結体が得られることが確認されている(F.S.Galasso and R.D.Veltri,Comm.Am.Ceram.Soc.,Jun.C-15,1981)。
【0008】
このような超微粒子原料の使用により、焼結助剤の使用量を低減し、耐酸化性を飛躍的に向上させることができるが、それでも1350℃下では90時間で1.5mg/cm2 と上記用途に使用するには特性的にまだ十分な域に達しているとは言えない。また、窒化珪素を始め種々のセラミックス、金属などを超微粒子化し物理・化学特性を飛躍的に向上せしめることは広く知られているところであるが、問題はむしろ如何にして超微粒子を量産するかという点に有り、現状では超微粒子の製造はコスト高を招くため工業的に極めて不利な方法と言える。
【0009】
さらに別の手段として、ホットプレス、HIP、超高圧ホットプレスなど助剤の力に頼らず外圧により焼結を助長する方法が従来から行われてきている。これらの手段の有効性も広く知られているところであるが、現状では焼結助剤を飛躍的に減ずるまでには至っていない。また、これらの手段は、高価な装置、ハンドリングの悪さ、生産性の低さなど製造方法が工業的に有利でない欠点を有し、上記の超微粒子同様、工業的レベルで用いるには余りにも問題が多い。またもし仮に、超微粒子原料が安価に量産でき、かつこれを用いて焼結助剤添加量の低減を図ったとしても、既存の焼結法では窒化珪素焼結体における結晶粒の大幅な粗大化を招くことになり、結果として高温特性の向上は望めない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、原料粉末を超微粉化する必要がなく、焼結助剤を無添加又はごく少量の添加とすることができ、かつ高温特性に優れた窒化珪素焼結体及びこの工業的に有利な製造法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
斯かる実状に鑑み本発明者らは鋭意研究を行ったところ、放電プラズマ焼結法等の加圧・通電加熱焼結法により得られ、焼結体中の焼結助剤の量が3重量%以下であり、焼結体の相対密度が97%以上であり、かつ焼結体中に占めるα窒化珪素の割合が30体積%未満である窒化珪素焼結体が、従来品からは考えられない優れた高温強度、高温ヤング率、高温での耐酸化性を有することを見出し本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、焼結体中の焼結助剤の量が3重量%以下となる量の焼結助剤を原料に添加し、真空雰囲気下、加圧・通電加熱焼結法により、温度1300〜1800℃の範囲で、焼結温度(℃)×焼結時間(秒)/焼結体の体積( cm 3 )が350,000(℃・ sec / cm 3 )以下の条件で焼結を行うことを特徴とする、相対密度が97%以上であり、かつ焼結体中に占めるα窒化珪素の割合が30体積%未満である窒化珪素焼結体の製造方法を提供するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の窒化珪素焼結体の原料となる窒化珪素粉末の粒径は、特に限定されず通常工業的レベルで市販されている窒化珪素粉末であれば、超微粒子でなくとも使用できるが、通常平均粒径が0.2〜30μmの範囲にあるもの、さらに0.3〜30μmの範囲にあるもの特に0.3〜1μmの範囲にあるものが好ましい。
【0015】
また本発明の焼結体中の焼結助剤の量は3重量%以内であり、この量を超えるとガラス相の影響が顕在化し、高温での強度、ヤング率、耐酸化性が低下するため好ましくない。焼結助剤の量は、窒化珪素粉末の平均粒度との関係で定めるとよい。すなわち、平均粒度が小さければ焼結性の向上により焼結助剤量は低減され、粒度が大きければ助剤の量を増やさざるを得ない。しかし、通常工業的レベルで市販されている窒化珪素粉末であれば、特別な制約がなく上記の範囲で用いることができる。
また窒化珪素の焼結助剤としてはMg、Y、Al、Zr、Ceなどの酸化物や窒化物、あるいはこれらの混合物などが用いられ、当然これら焼結助剤の種類によっても添加量は異なってくるものであるが、3重量%以下であれば何れのものも問題無く用いることができる。高温特性を向上させるための、好ましい焼結助剤添加量の範囲は、0.01〜3重量%であり、より好ましくは0.05〜3重量%であり、特に好ましくは0.05〜2重量%である。
【0016】
また本発明の焼結体は、焼結体の相対密度が97%以上であることが必要であり、より好ましくは99%以上である。97%未満の場合、強度など機械的性質の低下が著しいため用いることができない。
【0017】
さらに、窒化珪素焼結体中に占めるα窒化珪素の割合は、30体積%未満であることが肝要であり、好ましくは20%未満、さらに好ましくは10%未満である。窒化珪素焼結体の機械的性質は、β型針状あるいは柱状結晶の絡み合い構造により向上するものであり、これ以上の場合には強度などの機械的性質に優れる焼結体を得ることができない。
【0018】
本発明の窒化珪素焼結体は、加圧・通電加熱焼結法、例えば放電プラズマ焼結法(SPS)又はプラズマ活性化焼結法(PAS)等により、製造することが最も好ましい。それは次の理由による。
すなわち、焼成体製造において、焼結時の温度が高いほど、かつ焼結時間が長いほど、助剤が結晶粒界に形成するガラス相は厚くなり、また粒成長も顕在化するため高温特性に悪影響を及ぼすようになる。換言すれば低温でかつ短時間の焼結であれば仮に焼結助剤が添加されていてもガラス相の影響、粒成長を低減することが可能となる。従って熱効率の悪い従来の外部加熱では焼結助剤に起因するガラス相の生成、粒成長を抑制するには限界があり、従来法では実質的には焼結助剤量の低減が不可能であった。
これに対し、加圧・通電加熱焼結法によれば、原料粉末内部からの発熱により急速昇温、短時間焼結が可能となり、ガラス相、粒成長の影響が著しく抑制されること、さらには焼結助剤無添加ないしは極めて少量の助剤量であっても緻密な窒化珪素焼結体を得ることができる。
【0019】
加圧・通電加熱焼結が窒化珪素の焼結に対し効果的に作用するプロセスについて、放電プラズマ焼結法を例にとり説明する。放電プラズマ焼結法は、直流電圧のオン/オフ比を任意に変えることが可能な特殊電源装置を用い、発生した直流パルス電圧をダイス中の原料粉末に対して負荷するものである。直流電圧がオンのときに粉体は急激に体積膨張し、逆にオフのときには体積収縮するため、オン/オフ繰り返しにより原料粉末表面に付着していた酸化皮膜などの不純物は脱離し、原料粉末表面がクリーニングされるため、極めて活性化された状態となる。次いで、通電により発生したジュール熱と粉体間に発生した火花放電による自己発熱作用とにより、焼結助剤が軟化温度に到達する。
さらに、この焼結助剤がオン/オフパルス通電に伴う電界効果により極めて高速・短時間で、活性化された窒化珪素粉末の表面に体積拡散・表面拡散・粒界拡散していく。
【0020】
以上のプロセスにより得られた窒化珪素焼結体のEPMAによる分析では、焼結体の結晶粒界におけるガラス相の厚さが極めて薄く、かつその膜厚が均一であること、さらにはα窒化珪素粉末を出発原料にした場合、転移後の針状β窒化珪素結晶において、短軸径の粒成長が全く認められないないしは極めて僅かであることが確認されている。
従って、放電プラズマ焼結法による窒化珪素焼結体は、焼結時間が非常に短く、結晶粒界の焼結助剤のコーティング層が極めて薄く・均一であり、粒成長が伴わない、結果として従来法と比べ短時間・極微量助剤添加で緻密な焼結体となるものと考えられる。
【0021】
加圧・通電加熱焼結法においての焼結条件は、1300〜1800℃の範囲で、焼結温度(℃)×焼結時間(sec)/焼結体の体積(cm3)が350,000(℃・sec/cm3)以下とすることが好ましい。この温度範囲以外では、焼結体が緻密化せず焼結助剤を増やさざるを得なくなるか、あるいは逆に緻密化はするが粒成長を起こす、もしくは結晶粒界のガラス相が厚くなることで高温特性に劣るものとなることがある。また、この温度範囲内であったとしても、焼結温度(℃)×焼結時間(sec)/焼結体の体積(cm3)が上記条件の範囲外の場合、上と同様、緻密化しないかあるいは緻密化はするが粒成長を起こす、もしくは結晶粒界のガラス相が厚くなることで高温特性に劣るものとなることがあり、好ましくない。
【0022】
また本発明の窒化珪素焼結体は、1200〜1400℃において、その温度における強度が室温強度の75%以上(強度低下率25%未満)、ヤング率が60%以上(低下率40%未満)、高温酸化重量増(mg/cm2)が0.03√t(ここでtは時間:hr)以下といった三条件の少なくとも一つ以上を満たすものであることが好ましい。
【0023】
高温強度のみを考えた場合、窒化珪素焼結体よりは炭化珪素焼結体の方が強度低下が少なく、高温においてより安定している。しかし、強度の絶対値は窒化珪素の方が大きいため、高温での強度低下が少なければ、自動車エンジンやガスタービンなどの用途に用いることが可能となる。すなわち、1200〜1400℃の温度における強度低下率が25%以下であれば炭化珪素以上の強度となり、上記用途に好ましく使用することができる。1200〜1400℃の温度におけるヤング率の低下率が40%未満の場合も、同様の理由に因る。
【0024】
さらに、高温酸化重量増(mg/cm2)が0.03√t(ここでtは時間:hr)以下のものであれば、長期間にわたって高温において使用することが可能となる。これを超える場合、高温酸化による酸化皮膜が厚くなるため、例えば自動車エンジンのように昇降温を繰り返す用途においては、形成されたクリストバライト相の熱膨張係数が大きいことに起因して剥離が生じるため、酸化に対する保護膜効果が失われることとなり、ますます耐酸化性が低下することとなる。また、既述の空隙形成を考慮した場合、酸化増量がこれ以上では、強度の低下が著しく高温構造部材として用いることが不可能となることがある。
【0025】
また本発明の窒化珪素焼結体は、1200〜1400℃において、その温度における強度の90%以下の応力では塑性流動を示さないものが好ましい。セラミックスは一般には、金属のような塑性変形を殆ど示さない線形弾性材料であるが、高温においてはガラス相の軟化により僅かに塑性変形を示すようになる。塑性変形を示すこと自体は、不安定破壊の防止につながり構造物の安全性を高めることになるが、その塑性変形量は所詮金属に比較できるものではなく圧倒的に小さい。しかも比較的低応力レベルから塑性流動が生じるため、高温において安定であるというセラミックスの最大の利点そのものが損なわれかねない。本発明の窒化珪素焼結体は、焼結助剤の量、空隙率、強度、ヤング率などを最適に制御することで、1200〜1400℃において、その温度における強度の90%以下の応力では塑性流動が起きず、上記のような問題を含まないものとすることができる。
【0026】
また本発明になる窒化珪素焼結体の製造法によれば、出発原料として粒度Dμm以下のα窒化珪素粉末を用いた場合、焼結後のβ窒化珪素針状結晶の短軸径が1.0〜1.5D、長軸径が1.5〜6.0Dとなる。窒化珪素の場合、αからβへの転移に伴い針状・柱状結晶への形態変化が生じるが、この際、β窒化珪素の結晶粒度が大きくなると各種物理特性が大きく低下するため、粒成長が抑制されることが重要である。しかし、セラミックス材料一般に、焼結時に既述のような液相焼結を伴うため、出発原料粒度に比し焼結後の焼結体の結晶粒度が著しく大きくなるのが一般である。ここでは、加圧・通電加熱焼結により、出発原料である粒度Dμm以下のα窒化珪素粉末が、焼結後の転移したβ窒化珪素の状態において短軸径が1.0〜1.5D、長軸径が1.5〜6.0Dと、長軸方向は成長するが短軸方向への粒成長が極めて少ない、好ましくは全くしないことで、各種の特性を飛躍的に向上させることができる。
【0027】
【実施例】
以下に実施例を挙げてこの発明を説明する。
【0028】
実施例1〜12
窒化珪素粉末として、平均粒径1.01μmの市販品を用いた(電気化学工業製:SN−9S)。このものは、不純物としてFe2300ppm、Al 1500ppm、Ca1600ppm、Mg1000ppm 以下、C0.2%、酸素1.9%を含むα分率91%の窒化珪素である。
【0029】
この窒化珪素粉末に焼結助剤として、酸化イットリウム(Y)又は酸化アルミニウム(A)を所定量(表1)添加し、ナイロンポット、直径10mmの窒化珪素ボール、溶媒としてエタノールを用いた湿式ボールミルで混合した。粉量100g、ポット容積500ml、エタノール400mlとし、ボールを嵩で容積の三分の一程度充填し72時間混合した。この混合による窒化珪素粉末の平均粒径の変化はほとんど認められなかった。なお、混合時間が1時間、12時間と短い場合、助剤添加量が少量のため均一分散がなされず良好な結果が得られないことを確認してある。混合終了後、60℃の乾燥器中で乾燥し、得られた凝集体を乳鉢で解砕した。
【0030】
得られた粉体を下パンチャーがセットされているダイスに充填した後、上パンチャーをセットして粉を挟み、さらに上下にパンチを挿入し油圧ジャッキで約100kgf の予備加圧を行った。なお、パンチ・ダイス・パンチャーの材質はグラファイトであり(東洋炭素製)、ダイス、パンチャーの寸法は、ダイス外径126mm、内径50.4mm、高さ70mm、パンチャー外径50mm、板厚35mmである。さらに、焼結体の離型性を確保するため、原料粉と接触しているダイスの内壁及び上下パンチャー面には、それぞれ0.2mm厚のカーボンシートを設置した。
【0031】
以上の前処理の後、パンチ、ダイスごとに放電プラズマ焼結機(住友石炭鉱業製、SPS−7.40)にセットし焼結を行った。本装置は、縦一軸方向の加圧機構を有する本体と水冷却部内臓の特殊通電機構、水冷真空チャンバー、真空・大気・ガス雰囲気制御機構、真空排気装置、特殊DCパルス焼結電源、冷却水制御ユニット、位置計測機構、変位量計測装置、温度計測装置及びこれらを制御する操作制御盤から成っている。以上の装置を用い、真空雰囲気下において所定の圧力をかけながら、70℃毎分で昇温し、所定の温度で所定時間保持した後、冷却し500℃で大気開放した。諸条件は表1に示す通りである。
焼結終了後、得られた直径50mm、板厚10mmの焼結体を10×10×0.5mmに加工し、アルキメデス法による密度の算出、強度、ヤング率、酸化試験を行った。結果を表1に示す。
【0032】
強度、ヤング率の測定は、小型パンチ試験法(斎藤雅弘、高橋秀明、川崎亮、渡辺龍三、日本機械学会論文集(A編)、Vol.57、p522(1991))に基づいて、所定の温度下で行った。昇温は20℃毎分で、20分所定の温度に保持した後試験を開始した。
酸化試験は、1400℃の大気炉中に試験片をセットし、270時間までの重量増加を測定した。
また、焼結体中のα窒化珪素の割合、α分率は粉末X線回折装置を用い、回折線の強度比から算出した(Giuseppe Pezzotti、日本セラミックス協会誌、Vol. 101、No.8、p882(1993))。
【0033】
表1に示すように本発明のものは、いずれも従来に無い高い特性を示した。なお、これらのものをSEMにより組織観察したところ、αからβの転移に伴う形態変化が認められ針状をなしており、かついずれのものもその短軸径は出発原料の1.0〜1.5倍、長軸径は1.5〜6.0倍の範囲内であり、長軸方向へは成長するが短軸方向への粒成長が極めて少ないものであった。
【0034】
実施例13〜18
焼結助剤として、酸化イットリウム0.1重量%と酸化アルミニウム1重量%(実施例13)、同0.6重量%と同1重量%(実施例14)、同1.5重量%と同1.5重量%(実施例15〜18)を用いた。その他の条件は表1に示す通りである。
表1に示すように本発明のものは、いずれも従来に無い高い特性を示し、かつ短軸方向への粒成長も実施例1〜12同様1.5倍以下であった。
【0035】
実施例19〜20
実施例15〜18と同様の配合で、グラファイトダイスを変更して、それぞれ直径100mm、板厚20mmと直径200mm、板厚30mmの窒化珪素焼結体を作製した。試験条件は表1に示す通りである。
【0036】
実施例21
窒化珪素粉末として、平均粒径0.5μmの市販品(宇部興産(株)SN−E10)を用いた。その他の条件は実施例1〜12と同様である。
【0037】
比較例1〜3
焼結法としてホットプレスを用い、焼結助剤10重量%、焼結温度を1600、1700、1800℃、加圧力を50MPa で直径50mm、板厚10mmの焼結体を得た(表1)。比較例のものは密度が低いか又はβ化率が低く、実施例のものに比し特性の劣るものであった。
なお、焼結助剤10重量%未満では、これらの特性はさらに低下するものであった。特に、実施例と同様の焼結助剤3重量%以下では、焼結体が緻密化せず作製が不可能であった。
【0038】
比較例4
焼結法として1MPa の窒素雰囲気下における無加圧焼結を行い、保持時間を240分としたこと以外は、比較例3と同様にして焼結体を得た(表1)。このものは、密度が低いか又はβ化率が低く、実施例のものに比し特性の劣るものであった。
なお、焼結助剤10重量%未満では、これらの特性はさらに低下するものであった。特に、実施例と同様の焼結助剤3重量%以下では、焼結体が緻密化せず作製が不可能であった。
【0039】
実施例22〜27
実施例4、11、13のものについて表2に示す試験温度下で各種高温特性を評価した。これらのものは、高温強度、高温ヤング率、塑性変形開始応力、耐酸化性などいずれの面でも優れた特性を発揮した。
【0040】
比較例5〜6
焼結助剤を酸化イットリウム5重量%、酸化アルミニウム5重量%とした以外は実施例5と同様にして得た焼結体について実施例22〜27と同様の評価を行った。これらのものは、1400℃では何れの特性にも劣るものであった(表2)。
【0041】
比較例7〜9
比較例3のものについて実施例22〜27と同様の評価を行った。これらのもは、1400℃下では何れの特性にも劣るものであった(表2)。
【0042】
比較例10〜12
比較例4のものについて実施例22〜27と同様の評価を行った。これらのものは、1400℃下では何れの特性にも劣るものであった(表2)。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【発明の効果】
本発明の窒化珪素焼結体は、高温において、強度、ヤング率、耐酸化性に優れ、塑性変形も少なく、かつ原料は超微粉体を用いる必要がない。
Claims (3)
- 焼結体中の焼結助剤の量が3重量%以下となる量の焼結助剤を原料に添加し、真空雰囲気下、加圧・通電加熱焼結法により、温度1300〜1800℃の範囲で、焼結温度(℃)×焼結時間(秒)/焼結体の体積( cm 3 )が350,000(℃・ sec / cm 3 )以下の条件で焼結を行うことを特徴とする、相対密度が97%以上であり、かつ焼結体中に占めるα窒化珪素の割合が30体積%未満である窒化珪素焼結体の製造方法。
- 出発原料の窒化珪素粉末の平均粒径が0.2〜30μmである請求項1記載の製造方法。
- 加圧・通電加熱焼結法が放電プラズマ法又はプラズマ活性焼結法である請求項 1 又は2記載の製造方法。
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