JP3852571B2 - 空気調和機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、冷媒再熱除湿運転を可能とする空気調和機の、特に天井埋め込み形空気調和機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図9は特開平11−248290号公報に記載された従来の空気調和機であり、室内熱交換器を分割し、その一部21、24を室内空気の加熱用に、残りの部分22、23を室内空気の冷却用としている。室外機から供給された比較的高温高圧の冷媒は加熱用熱交換器部21、24に流入し、室内空気を加熱した後、減圧装置で低圧低温となって冷却用熱交換器部22、23に流入して室内空気を冷却除湿する。この冷却用熱交換器部で冷却除湿された室内空気は、室内機内部の送風機部および吹き出し部において加熱用熱交換器部で加熱された空気と混合されるので、温度が上昇し、吸い込み温度に近い温度となって室内機から吹き出される。このとき、冷却用熱交換器部で室内空気に含まれる水分が凝縮され、ドレン水となって室外へ排出されるので、室内空気の温度をほとんど低下させることなく室内空気を除湿することができる。
【0003】
上記のように構成された従来の空気調和機においては、室内機の形態は壁掛け形であり、室内機に吸い込まれた室内空気は熱交換器を通過した後、送風機を通過して室内へ吹き出される構成となっている。このため、室内空気の湿度が高い場合には、冷却用熱交換器部と加熱用熱交換器部との境界部分を通過した加熱も冷却もされていない室内空気や加熱用熱交換器部の比較的低温部分であまり加熱されていない室内空気は、冷却用熱交換器部で冷却除湿された室内空気によって冷却され、水分過飽和状態となる。この過飽和状態の空気が送風機に衝突すると過飽和状態が解除されて水分が送風機に凝縮し、室内機の吹き出し口から露が滴下することがあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように従来の空気調和機においては、室内機内部で過飽和状態の空気が送風機に衝突するため過飽和状態が解除されやすく室内機からの水たれを発生しやすいという問題点があった。この発明は、かかる課題を解決するためになされたもので、室内機に吸い込まれた空気は送風機を通過した後、熱交換器を通過するよう構成することによって、室内空気の湿度が高い場合等において、室内熱交換器の加熱部と冷却部の境界付近を通過した加熱も冷却もされていない室内空気や加熱用熱交換器部の比較的低温部分であまり加熱されていない室内空気が、冷却用熱交換器部で冷却除湿された室内空気によって冷却され、水分過飽和状態となっても過飽和解除しにくく室内機から水たれしにくい空気調和機を提供することを目的とする。また、空気調和機が設置された室内形状や熱負荷の条件に対応できるとともに、使用者の所望する快適な空調を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る空気調和機は、少なくとも熱交換器と送風機を有した本体と、前記本体の送風機により吸込口から吸い込まれた空気が前記送風機から前記熱交換器を通過して吹出口へ流通する風路と、前記熱交換器を熱的に分割するとともに、前記風路の空気流れに対して直交または傾斜して前記風路内の上下方向に配設する加熱用熱交換器および冷却用熱交換器と、を備え、前記熱交換器を構成する前記加熱用熱交換器と前記冷却用熱交換器との接続配管に第2の減圧装置を有し、圧縮機、室外熱交換器、第1の減圧装置と接続して蒸気圧縮機式冷凍サイクルを成して冷凍再熱除湿運転を可能とするとともに、除湿運転時に、前記熱交換器を通過した温度が異なる空気が前記吹出口から層状に吹き出されるものである。
【0006】
本発明の請求項2に係る空気調和機は、前記加熱用熱交換器を前記冷却用熱交換器の上方に配設したものである。
【0007】
本発明の請求項3に係る空気調和機は、前記本体が天井埋め込み形室内機である。
【0008】
本発明の請求項4に係る空気調和機は、前記本体の室内機に複数個の吹出口を有し、前記吹出口に設けた風向を変更する風向ベーンを独立して制御できるように個別に駆動装置を備えたものである。
【0009】
本発明の請求項5に係る空気調和機は、前記吹出口の近傍に前記風向ベーンの設定状態を表示する表示部を設けたものである。
【0010】
本発明の請求項6に係る空気調和機は、前記本体室内機の吸込側風路に湿度センサを有し、室内空気の相対湿度を表示する相対湿度表示手段をリモートコントローラに設けたものである。
【0011】
本発明の請求項7に係る空気調和機は、前記本体室内機の吸込側風路に湿度センサを有し、使用者が所望する室内空気の相対湿度を設定できる相対湿度設定手段をリモートコントローラに設けたものである。
【0012】
本発明の請求項8に係る空気調和機は、前記加熱用熱交換器と第2の減圧装置との間の配管と前記冷却用熱交換器の他端配管とを第1の電磁弁を介して接続し、さらに前記冷却用熱交換器と第2の減圧装置との間の配管と前記加熱用熱交換器の他端配管とを第2の電磁弁を介して接続し、通常冷房運転時または暖房運転時は前記第1および第2の電磁弁は開状態とし、除湿運転時は前記第1および第2の電磁弁はともに閉状態とするものである。
【0013】
本発明の請求項9に係る空気調和機は、R32を50%以上含む冷媒を用いたものである。
【0014】
本発明の請求項10に係る空気調和機は、前記圧縮機の最大回転数を通常冷房運転時よりも前記冷媒再熱除湿運転時に小さく設定したものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1および図2はこの発明の実施の形態1に係る空気調和機を示す図であり、図1は空気調和機室内機の断面図、図2は空気調和機の冷媒回路図である。図1において、1は室内機本体外郭、2は化粧パネル、3は加熱用熱交換器部、4は冷却用熱交換器部、5は室内空気を加熱用熱交換器部3および冷却用熱交換器部4に送り込む送風機、6は送風機モータ、7は室内空気の吸込みグリルおよび吸込口、8は除湿後の空気を噴出す吹出口、9は吹き出し風向を制御する風向ベーン、10は室内空気の凝縮した水分を受けるドレンパンである。
【0016】
また、図2において、11は圧縮機、12は四方弁、13は室外熱交換器、14は第1の減圧装置、15は余剰冷媒を溜めるレシーバ、16は第3の減圧装置、20はレシーバ内に挿入された吸入配管であり、これらを順次接続して室外機である22内の冷媒回路を構成している。さらに、17は第2の減圧装置、18は第1の電磁弁、19は第2の電磁弁であり、加熱用熱交換器部3および冷却用熱交換器部4を含めて室内機である21内の冷媒回路を構成している。室内機21内の冷媒回路は、加熱用熱交換器部3の一端と冷却用熱交換器部4の一端とを第2の減圧装置17を介して接続している。それとともに、加熱用熱交換器部3と第2の減圧装置17との間の配管と冷却用熱交換器部4の他端とを第1の電磁弁18を介して接続し、さらに冷却用熱交換器部4と第2の減圧装置17との間の配管と加熱用熱交換器部3の他端とを第2の電磁弁19を介して接続している。これら室外機22と室内機21とは、加熱用熱交換器部3と第3の減圧装置16との間、および冷却用熱交換器部4と四方弁12との間をそれぞれ接続することによって冷凍サイクルを構成している。
【0017】
次に、このように構成された空気調和機においてその動作を説明する。
まず、通常冷房運転時について説明する。室内機21内の第1および第2の電磁弁18および19はともに開けられている。圧縮機11より高温高圧のガス冷媒が吐出し、四方弁12を通って室外熱交換器13に入る。このガス冷媒は室外熱交換器13により外気と熱交換されて液状の冷媒となり第1の減圧装置14に入る。この第1の減圧装置14に入った冷媒は減圧され、乾き度概略0.1程度の高温二相冷媒となってレシーバ15に入る。レシーバ15に入った低乾き度の高温二相冷媒は、レシーバ15の中に設置された吸入配管20の内部を流れる低温低圧の冷媒により、飽和液状態まで冷却されて、レシーバ15を流出する。
【0018】
レシーバ15を流出した飽和液冷媒は、第3の減圧装置16によって乾き度概略0.2〜0.3程度の低温低圧の二相冷媒となり室内熱交換器である加熱用熱交換器部3および第2の電磁弁19を通過して冷却用熱交換器部4に入る。この低温低圧の二相冷媒は、室内熱交換器3および4により室内の空気と熱交換されて蒸発し、乾き度概略0.9〜1.0の低温低圧の二相冷媒となる。加熱用熱交換器部3を出た低温低圧の二相冷媒は第1の電磁弁18を通過して冷却用熱交換器部4を出た低温低圧の二相冷媒と合流した後、四方弁12を介してレシーバ15の内部に設置された吸入配管20の内部を通過する。このとき、吸入配管20に入った高乾き度の低温低圧の二相冷媒は、前述したようにレシーバ15を流れる高温高圧の二相冷媒と熱交換されて低圧の過熱ガス冷媒となり、圧縮機11に吸入される。この時、冷媒循環中に発生した余剰冷媒は飽和液冷媒としてレシーバ15内に貯留される。
【0019】
つぎに、暖房運転時について説明する。室内機21内の第1および第2の電磁弁18および19は通常冷房運転と同様、ともに開けられている。圧縮機11より高温高圧のガス冷媒が吐出し、四方弁12を通って室内熱交換器である冷却用熱交換器部4および第1の電磁弁18を通過して加熱用熱交換器部3に入る。このガス冷媒は室内熱交換器3および4により室内空気と熱交換されて液状の冷媒となり、冷却用熱交換器部4を出た冷媒は第2の電磁弁19を介して加熱用熱交換器部3を出た冷媒と合流して第3の減圧装置16に入る。この第3の減圧装置16に入った冷媒は減圧され、乾き度概略0.1程度の高温二相冷媒となってレシーバ15に入る。レシーバ15に入った低乾き度の高温二相冷媒は、レシーバ15の中に設置された吸入配管20の内部を流れる低温低圧の冷媒により、飽和液状態まで冷却されて、レシーバ15を流出する。
【0020】
レシーバ15を流出した飽和液冷媒は、第1の減圧装置14によって乾き度概略0.2〜0.3程度の低温低圧の二相冷媒となり室外熱交換器13に入る。この低温低圧の二相冷媒は、室外熱交換器13により室外空気と熱交換されて蒸発し、乾き度概略0.9〜1.0の低温低圧の二相冷媒となり、四方弁12を介してレシーバ15の内部に設置された吸入配管20の内部を通過する。このとき、吸入配管20に入った高乾き度の低温低圧の二相冷媒は、前述したようにレシーバ15を流れる高温高圧の二相冷媒と熱交換されて低圧の過熱ガス冷媒となり、圧縮機11に吸入される。この時、冷媒循環中に発生した余剰冷媒は飽和液冷媒としてレシーバ15内に貯留される。
【0021】
つぎに、除湿運転時について説明する。室内機21内の第1および第2の電磁弁18および19はともに閉じられている。また、第1および第3の減圧装置はともにその開度が最大に開けられている。圧縮機11より高温高圧のガス冷媒が吐出し、四方弁12を通って室外熱交換器13に入る。このガス冷媒は室外熱交換器13により外気と熱交換されて乾き度概略0.1程度の高温高圧二相冷媒となり第1の減圧装置14に入る。この第1の減圧装置14は開度が最大になっているので冷媒はほとんど減圧されず、乾き度概略0.1程度の高温二相冷媒のままレシーバ15に入る。レシーバ15に入った低乾き度の高温二相冷媒は、レシーバ15の中に設置された吸入配管20の内部を流れる低温低圧の冷媒により、飽和液状態まで冷却されて、レシーバ15から流出する。
【0022】
レシーバ15から流出した飽和液冷媒は、第3の減圧装置16でもほとんど減圧されることなく室内熱交換器である加熱用熱交換器部3に流入する。ここで、室内機に吸い込まれた室内空気の一部と熱交換して高圧低温の液冷媒となった後、第2の減圧装置17で低温低圧の二相冷媒になる。この低温低圧の二相冷媒は、冷却用熱交換器部4に流入し、室内機に吸い込まれた室内空気の残りと熱交換して蒸発し、乾き度概略0.9〜1.0の低温低圧の二相冷媒となる。冷却用熱交換器部4を出た低温低圧の二相冷媒は四方弁12を介してレシーバ15の内部に設置された吸入配管20の内部を通過する。このとき、吸入配管20に入った高乾き度の低温低圧の二相冷媒は、前述したようにレシーバ15を流れる高温高圧の二相冷媒と熱交換されて低圧の過熱ガス冷媒となり、圧縮機11に吸入される。この時、冷媒循環中に発生した余剰冷媒は飽和液冷媒としてレシーバ15内に貯留される。
【0023】
室内機では、図1および図4に示すように、加熱用熱交換器部3および冷却用熱交換器部4が送風機5の吹き出し側に風路内の空気流れに略直交するように設置されており、送風機5によって吸込みグリルおよび吸込口7より吸い込まれた室内空気が送風機5を通過した後、加熱用熱交換器部3および冷却用熱交換器部4を通過する。加熱用熱交換器部3および冷却用熱交換器部4は、前者が上、後者が下に位置するように配置されているので、図3の空気線図に示すように、加熱用熱交換器部3を通過した空気は、絶対湿度は変わらず温度のみ上昇して吹き出し側に流出し(図3の□印)、冷却用熱交換器部4を通過した空気は、温度が低下するとともに絶対湿度も低下して吹き出し側に流出する(図3の◇印)。これらの空気は吹出口を出た後、室内で徐々に混合されて温度が吸い込み温度に近く低湿の空気(図3の☆印)となる。
【0024】
図4に示すように、本発明の空気調和機は、室内熱交換器を出た空気が層状に吹き出される構造となっているため、加熱用熱交換器部3と冷却用熱交換器部4との境界部分を通過して加熱も冷却もされなかった空気が、室内熱交換器の吹き出し側で冷却用熱交換器部4を通過して冷却された空気と混合して過飽和状態になることがなく、過飽和となっても過飽和状態を解除する衝撃を与えるものが吹き出し側には存在しないので、吹き出し口から水たれを起こすことはなく信頼性の高い空気調和機を得ることができる。
また、本実施の形態1に示す空気調和機の天井埋込形室内機は天井内側に室内機本体を配設し、吸込口および吹出口を有した化粧パネルが本体の下部つまり天井面の室内側に取り付けられる形態であり、空調する室内空気は上部ほど温度が高く、絶対湿度も高くなるため、このような天井埋込形室内機や天井吊形室内機のように天井付近に室内機が設置されるタイプのものの方が、室内の湿度除去が効率的かつ除湿量も多くなり快適空調が得られるという効果がある。
【0025】
ここで、加熱用熱交換器部3と冷却用熱交換器部4は、前者が上、後者が下である理由を説明する。冷却用熱交換器部4では、室内空気が除湿されるため、熱交換器表面には結露水が溜まり、重力によって下へ流れ落ちる。ここで、仮に、加熱用熱交換器部3が冷却用熱交換器部4の下に位置していると、室内空気から凝縮した水分からなる結露水が加熱用熱交換器部3に流下して加熱されるため、再び蒸発して室内へ放出されてしまうことになるので室内を除湿することができなくなる。したがって、加熱用熱交換器部3と冷却用熱交換器部4は、前者が上、後者が下であることが望ましい。
しかし、これらの位置関係が逆になる場合には、冷却用熱交換器部4から流下した結露水が加熱用熱交換器部3にかからないような排水設備を冷却用熱交換器部4の下部に設置すればよい。
また、冷却用熱交換器部4を室内空気流れの上流側に、一方、加熱用熱交換器部3を室内空気流れの下流側に設置すれば、冷却除湿された空気全体を均一に再加熱することができるので、より露飛びを発生しにくくなって望ましい。
【0026】
除湿運転中の圧縮機の最大回転数は、通常冷房運転時の最大回転数よりも小さく設定しておくことが望ましい。なぜなら、除湿運転中は室内熱交換器を分割して使用するため、蒸発器となる冷却用熱交換器部4の伝熱面積が冷房運転時の室内熱交換器の伝熱面積よりも小さくなってしまうので、圧縮機運転回転数を冷房並みにしてしまうと、蒸発温度が低下して0℃以下となり、室内熱交換器の冷却用熱交換器部4およびドレンパン10が凍結し、室内への水たれの原因となることがあるためである。したがって、冷却用熱交換器部4の冷媒入口近傍の配管表面に温度センサを設置して除湿運転中の蒸発温度を検出し、この値が常に0℃以上となるように圧縮機の回転数を制御するとなおよい。
【0027】
さらに、本実施の形態の空気調和機は、冷凍サイクルの循環冷媒にR32、R410A(R32:R125=50:50の混合冷媒)、CO2など、従来の冷媒R22に比べて、同一温度における冷媒の飽和蒸気密度がより大きい冷媒を使用すると良い。図2に示すように、室内熱交換器が除湿運転用に分割されているため、通常冷房運転時には、加熱用熱交換器部3を出た蒸気冷媒が電磁弁18を通過して冷却用熱交換器部4を出た蒸気冷媒と合流するので、加熱用熱交換器部3の蒸発温度が冷却用熱交換器部4の蒸発温度よりもどうしても電磁弁18の圧力損失分だけ高くなる。そのため、飽和蒸気密度が比較的大きいR32、R410A、CO2などの冷媒を用いた方が、R22、R407C、R134aなどの冷媒を用いるよりも電磁弁18の開口部面積を小さく設計できるので、比較的小型、安価に冷媒再熱除湿運転を実施することができる。
なお、冷媒R32は若干の燃焼性を有するので、R32単体での使用に安全性上の問題がある場合は、R125などの消火剤としての冷媒を50%以下混合した冷媒を用いても良い。
【0028】
また、圧縮機の潤滑用冷凍機油は、冷媒に相溶性のものや非相溶性のものを用いることができる。冷媒をR410Aとした場合、相溶性の冷凍機油としてはエステル油やエーテル油、非相溶性の冷凍機油としては鉱物油、アルキルベンゼン油やハードアルキルベンゼン油などを利用することができる。冷媒に相溶性の冷凍機油を用いれば、圧縮機から冷媒回路中への油持ち出し量が冷媒循環量の2,3%と多少多くても、図2のようなレシーバ回路を用いれば冷媒回路中の油滞留量を比較的少なく保つことができ、冷媒回路および圧縮機の信頼性を維持することができる。一方、非相溶性の冷凍機油を用いる場合には、圧縮機から冷媒回路中への油持ち出し量を0.1%程度に抑えないと、蒸発能力が大きく低下することが知られており、この場合、圧縮機吐出側に油分離器を設置して冷媒と油を分離し、分離した油は圧縮機の吸入側へ減圧して戻す回路を設けるなどの工夫が必要となる。
【0029】
また、上述の空気調和機室内機では天井埋め込み形室内機として説明してきたが、この形態に限るものではなく、図5に示すような天井吊形でも良い。図5は一般的に天井下面に吊り下げ設置される天井吊形室内機の断面図である。なお、図中、図1と同一または相当部分は同一符号を付け、その説明は省略する。室内空気は内設された送風機5により本体下面の吸込口から室内機本体へ流入し、送風機5の上流側に配設された加熱用熱交換器3および冷却用熱交換器4へ流れ通過して熱交換し、そして吹出口から室内へ吹出される。この天井吊形室内機では、室内機本体の高さを出きるだけ低くするために、前記熱交換器を室内機風路において斜めに傾けて配設している。図5に示すように、送風機5から吹出し側に設けたドレンパン上の下側に冷却用熱交換器4を、そしてその上部に熱的に分離された加熱用熱交換器3を全体が傾斜する形状で上下に配置している。これにより、送風機5から吹出された空気が広く熱交換器を通過し、その際、過熱用熱交換器3を通過した温められた空気と、冷却用熱交換器4を通過した冷却除湿された空気がそれぞれ層状に室内機風路を流れ吹出口から室内へ出て室内空気を空調する。
なお、ここでは天井吊形室内機を例に別形態の説明をしたが、床置き形や壁掛け形であっても送風機を通過してから熱交換器へ室内空気が流入するような形態の空気調和機であればどのような形態のものであっても良く同様の効果が得られる。
【0030】
以上のように、本実施の形態によれば、室内空気の温度を低下させることなく湿度のみ低下させることができるので、室温を比較的高く保ったままでも快適な室内環境を提供することができ、長時間室内に居る人と外部から入ってきたばかりの人が混在する店舗や、冷え性の人、老人、乳幼児など冷房の冷気に弱い人が多く居る施設等の空調に最適な空気調和機を提供することができるとともに、水たれを発生することもない信頼性の高い空気調和機を提供することができる。
【0031】
実施の形態2.
図6および図7はこの発明の実施の形態2に係る空気調和機を示す図である。図6は空気調和機の断面図、図7は空気調和機のリモコンである。図6において、31は室内吸い込み空気の温度を検出する温度センサ、32は室内吸い込み空気の湿度を検出する湿度センサであり、図1と同一または相当部分には同一符号を付けている。また、図7において、40はリモートコントローラ(以下リモコンという)、41は室内空気の温度を設定する温度設定手段、42は室内空気の湿度を設定する湿度設定手段、43は運転モード設定手段であり、51は空気調和機を運転しているときの室内空気温度の表示部、52は空気調和機を運転しているときの室内空気相対湿度の表示部、53は室内空気温度設定値の表示部、54は室内空気相対湿度設定値の表示部である。
【0032】
つぎに動作について説明する。この発明の空気調和機を使用するユーザは、まず、リモコン40を用いて運転モードを設定する。ここで、冷房あるいは除湿の運転モードが設定された場合において、室内空気温度の表示部51および室内空気相対湿度の表示部52にそれぞれ現在の室内空気の温度および相対湿度が表示される。これらの表示により、使用者の体感による温度および湿度とセンサによる検知温度および検知相対湿度との差を把握して、希望する最適空調への制御操作が容易になる。これを基に、ユーザは所望の室内空気温度および室内空気相対湿度をリモコン40の温度設定手段41および湿度設定手段42を操作して設定する。このとき、室内空気温度設定値の表示部53および室内空気相対湿度の表示部54にこれら設定値が表示されるので、この値を読むことによってユーザは自分の設定した温度および相対湿度を確認することができる。
【0033】
このようにして、室内空気温度および相対湿度が設定されると、その情報がリモコン40から室内機内の制御装置へと送信される。本体室内機では、吸込口グリルの本体室内機側風路に取り付けられた温度センサ31で室内機が吸い込む室内空気の温度を、また、同様に吸込口グリル内側の風路に取り付けられた湿度センサ32で室内機が吸い込む室内空気の相対湿度を検出する。室内機内の制御装置では、リモコンから送信されてきた設定温度および設定湿度と検出した室内空気温度および相対湿度をそれぞれ比較して、それぞれの設定値との差のデータを基に室内機の送風機回転数および吹き出し風向ベーンと、室外機の圧縮機運転容量、室外送風機回転数、第1および第2の減圧装置の冷媒流路開度を制御するとともに、室内空気の温度および相対湿度の検出値をリモコン40へ送信する。
【0034】
具体的には、冷房運転モードにおいて設定温度<吸い込み温度の場合、冷媒回路は冷房回路とし、吸い込み温度と設定温度との差△T[deg]に応じた圧縮機回転数で運転する。室外送風機回転数は、圧縮機回転数または室外熱交換器での冷媒の凝縮温度に応じて制御され、圧縮機回転数が増加すれば室外送風機の回転数も増加させ、圧縮機回転数が減少すれば室外送風機の回転数も減少させる。または、凝縮温度が低くなれば室外送風機の回転数を減少させ、凝縮温度が高くなれば室外送風機の回転数を増加させる。第1の減圧装置は凝縮器である室外熱交換器の出口冷媒の過冷却度があらかじめ設定されている値に近づくよう制御する。第2の減圧装置は、蒸発器である室内熱交換器の出口冷媒の過熱度があらかじめ設定されている値に近づくように制御する。あるいは、第1および第2の減圧装置は、それぞれ圧縮機吐出冷媒温度があらかじめ設定されている値に近づくように制御する。室内送風機の回転数は、あらかじめ設定されている値に制御されるか、△Tに応じた値に制御される。また、室内機の吹き出し風向ベーンはあらかじめ設定されている位置に制御されるか、△Tに応じた位置に制御される。
【0035】
つぎに、吸い込み温度が設定温度にほぼ到達し、かつ、設定相対湿度<吸い込み空気相対湿度である場合、冷媒回路を自動的に冷媒再熱除湿回路に切り換える。吸い込み相対湿度と設定相対湿度との差△RH[%]に応じた圧縮機回転数で運転する。室外送風機回転数は、室内の吸い込み空気温度が上昇すれば減少させ、室内の吸い込み空気温度が低下すれば増加させる。
【0036】
以上のように、この実施の形態によれば、室内空気の温度および相対湿度を共にリモコンによってユーザが好みの値に設定できるので、長時間室内に居る人と外部から入ってきたばかりの人が混在する店舗や、冷え性の人、老人、乳幼児など冷房の冷気に弱い人が多く居る施設等の空調に最適な空気調和機を提供することができる。
【0037】
実施の形態3.
実施の形態2.では、ユーザが好みの温度および相対湿度を設定できるようにした例を説明したが、
どのような温度および相対湿度に設定したら最も快適かは一般にはなかなか分からない。そこで、本実施の形態では、リモコンの運転モード切り換え設定手段のひとつにあらかじめ設定されている温度および相対湿度に制御する運転モード、たとえば「おまかせ冷房」モードが設定できるようにしておく。
具体的には、運転モード切り換えボタンを押すごとに、送風→おまかせ冷房→冷房→除湿→暖房→送風のように運転モードが切り換えられるようにしておく。おまかせ冷房運転モードの場合の設定値は、たとえば、温度27℃、相対湿度50%としておけば、ユーザに温度設定および湿度設定の手をわずらわせることなく簡単に老若男女すべての人が快適な室内環境を提供することができる。
【0038】
実施の形態4.
実施の形態1.において、再熱除湿運転時に室内機からの吹き出し空気温度が吸い込み空気温度に近くなることを説明したが、本実施の形態では、より快適な室内環境を得るために4方向の吹き出し風向ベーンを個別に駆動制御する方法について説明する。
図8に、本実施の形態に係る天井埋め込み形空気調和機の化粧パネルを示す。図8の(a)は化粧パネルの裏面図、(b)は化粧パネルの表面図である。図において、60は化粧パネル本体、61a乃至61dは吹出口、62a乃至62dは風向ベーン、63a乃至63dは風向ベーンの角度を制御する駆動装置であるベーンモータであり、各風向ベーンに1個ずつ独立して設置されている。また、64a乃至64dは、たとえばLEDなどによる操作対象ベーン表示装置である。
【0039】
以上の構成において、リモコンで操作対象ベーン選択ボタン(図示せず)を押すたびに、化粧パネル上の操作対象ベーン表示装置がひとつずつ順番に点灯し、どのベーンを対象として風向を調節しようとしているかが一目で分かるようになっている。所望のベーンが操作対象となったら、風向ベーンで所望の角度にベーンを操作することができる。したがって、たとえば外気温度の放射や隙間風、日光の影響を受けやすい窓際(ペリメータゾーン)に向かっている吹出口の風向ベーンは、冷房または除湿の吹き出し空気が直接人体に当たるように下向き加減に設定し、その他、室内奥側(インテリアゾーン)に向かっている吹出口の風向ベーンは、冷房または除湿の吹き出し空気が直接人体に当たらないように上向き加減に設定するとよい。
【0040】
また、特に再熱除湿運転時には、たとえば順番に4方向の吹き出し風向ベーンを下向きに遥動させれば、吹き出し空気は湿度は低いが温度が比較的室温に近いため、冷風感を感じることなく体表面からの水分蒸散を適度に促進させるので、より健康的で快適な環境を得ることができる。
【0041】
【発明の効果】
以上のように本発明の請求項1に係る空気調和機は、少なくとも熱交換器と送風機を有した本体と、前記本体の送風機により吸込口から吸い込まれた空気が前記送風機から前記熱交換器を通過して吹出口へ流通する風路と、前記熱交換器を熱的に分割するとともに、前記風路の空気流れに対して直交または傾斜して前記風路内の上下方向に配設する加熱用熱交換器および冷却用熱交換器と、を備え、前記熱交換器を構成する前記加熱用熱交換器と前記冷却用熱交換器との接続配管に第2の減圧装置を有し、圧縮機、室外熱交換器、第1の減圧装置と接続して蒸気圧縮機式冷凍サイクルを成して冷凍再熱除湿運転を可能とするとともに、除湿運転時に、前記熱交換器を通過した温度が異なる空気が前記吹出口から層状に吹き出されるので、室内空気の温度を低下させることなく湿度のみ低下させることができるので、室温を比較的高く保ったままでも快適な室内環境を提供することができるとともに、加熱用熱交換器と冷却用熱交換器との境界部分を通過して加熱も冷却もされなかった空気が過飽和状態になることがなく、吹出口から水たれを発生することがない信頼性の高い空気調和機を提供えきる効果が得られる。
【0042】
また、本発明の請求項2に係る空気調和機は、前記加熱用熱交換器を前記冷却用熱交換器の上方に配設したので、冷却用熱交換器により室内空気が除湿されて発生した結露水を重力方向へ流下することにより、加熱用熱交換器から加熱されて再び蒸発して室内へ放出されることがなく除湿効果が得られる。
【0043】
また、本発明の請求項3に係る空気調和機は、前記本体が天井埋め込み形室内機であるので、室内空気の湿度除去が効率的かつ除湿量も多くなる効果が得られる。
【0044】
また、本発明の請求項4に係る空気調和機は、前記本体の室内機に複数個の吹出口を有し、前記吹出口に設けた風向を変更する風向ベーンを独立して制御できるように個別に駆動装置を備えたので、本発明の空気調和機が設置されている部屋の形状や不均一な空調負荷に対応した細かな空調制御が可能となる効果が得られる。
【0045】
また、本発明の請求項5に係る空気調和機は、前記吹出口の近傍に前記風向ベーンの設定状態を表示する表示部を設けたので、空調負荷の状態に合った本体室内機の各吹出口の風向ベーンをリモコンにより個々に調整して快適な空調を創出することができる効果が得られる。
【0046】
また、本発明の請求項6に係る空気調和機は、前記本体室内機の吸込側風路に湿度センサを有し、室内空気の相対湿度を表示する相対湿度表示手段をリモートコントローラに設けたので、使用者の体感による相対湿度とセンサによる検知相対湿度との差を把握でき、所望する最適空調への制御操作が容易となる。
【0047】
また、本発明の請求項7に係る空気調和機は、前記本体室内機の吸込側風路に湿度センサを有し、使用者が所望する室内空気の相対湿度を設定できる相対湿度設定手段をリモートコントローラに設けたので、使用者がリモコンにより好みの値に設定でき、様々な居住者の好みに合った最適な空調を提供できる効果が得られる。
【0048】
また、本発明の請求項8に係る空気調和機は、前記加熱用熱交換器と第2の減圧装置との間の配管と前記冷却用熱交換器の他端配管とを第1の電磁弁を介して接続し、さらに前記冷却用熱交換器と第2の減圧装置との間の配管と前記加熱用熱交換器の他端配管とを第2の電磁弁を介して接続し、通常冷房運転時または暖房運転時は前記第1および第2の電磁弁は開状態とし、除湿運転時は前記第1および第2の電磁弁はともに閉状態とするので、通常の冷房運転また暖房運転を行うとともに、除湿運転により、室内空気の温度を低下させることなく湿度のみ低下させることができるので、室温を比較的高く保ったままでも快適な室内環境を提供することができる効果が得られる。
【0049】
また、本発明の請求項9に係る空気調和機は、R32を50%以上含む冷媒を用いたので、従来の冷媒R22に比べて同一温度における冷媒の飽和蒸気密度がより大きく、それにより蒸気冷媒が通過する電磁弁の開口部面積を小さく設計でき、装置の小型化および低コスト化を図ることが可能となる。
【0050】
また、本発明の請求項10に係る空気調和機は、前記圧縮機の最大回転数を通常冷房運転時よりも前記冷媒再熱除湿運転時に小さく設定したので、室内熱交換器の冷却用熱交換器およびドレンパンが凍結することがなく、室内への水たれを防止できる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1に係る空気調和機の断面図である。
【図2】 本発明の実施の形態1に係る空気調和機の冷媒回路図である。
【図3】 本発明の実施の形態1係り、空気線図である。
【図4】 本発明の実施の形態1に係る空気調和機内の空気の流れを説明する図である。
【図5】 本発明の実施の形態1に係る別の空気調和機の断面図である。
【図6】 本発明の実施の形態2に係る空気調和機の断面図である。
【図7】 本発明の実施の形態2に係る空気調和機のリモコンである。
【図8】 本発明の実施の形態4に係る空気調和機の化粧パネルの(a)裏面図、(b)表面図である。
【図9】 従来の空気調和機の断面図である。
【符号の説明】
1 室内機本体外郭、2 化粧パネル、3 加熱用熱交換器部、4 冷却用熱交換器部、5 送風機、6 送風機モータ、7 吸込みグリルおよび吸込口、8吹出口、9 風向ベーン、10 ドレンパン、11 圧縮機、12 四方弁、13 室外熱交換器、14 第1の減圧装置、15 レシーバ、16 第3の減圧装置、17 第2の減圧装置、18 第1の電磁弁、19 第2の電磁弁、20 吸入配管、21 室内機、22 室外機、31 温度センサ、32 湿度センサ、40 リモコン、41 温度設定手段、42 湿度設定手段、43 運転モード設定手段、51 室内空気温度の表示部、52 室内空気相対湿度の表示部、53 温度設定値の表示部、54 相対湿度設定値の表示部、60 化粧パネル本体、61a〜61d 吹出口、62a〜62d 風向ベーン、63a〜63d ベーンモータ、64a〜64d ベーン表示装置。

Claims (10)

  1. 少なくとも熱交換器と送風機を有した本体と、前記本体の送風機により吸込口から吸い込まれた空気が前記送風機から前記熱交換器を通過して吹出口へ流通する風路と、前記熱交換器を熱的に分割するとともに、前記風路の空気流れに対して直交または傾斜して前記風路内の上下方向に配設する加熱用熱交換器および冷却用熱交換器と、を備え、前記熱交換器を構成する前記加熱用熱交換器と前記冷却用熱交換器との接続配管に第2の減圧装置を有し、圧縮機、室外熱交換器、第1の減圧装置と接続して蒸気圧縮機式冷凍サイクルを成して冷凍再熱除湿運転を可能とするとともに、除湿運転時に、前記熱交換器を通過した温度が異なる空気が前記吹出口から層状に吹き出されることを特徴とする空気調和機。
  2. 前記加熱用熱交換器を前記冷却用熱交換器の上方に配設したことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
  3. 前記本体は天井埋め込み形室内機であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空気調和機。
  4. 前記本体の室内機に複数個の吹出口を有し、前記吹出口に設けた風向を変更する風向ベーンを独立して制御できるように個別に駆動装置を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の空気調和機。
  5. 前記吹出口の近傍に前記風向ベーンの設定状態を表示する表示部を設けたことを特徴とする請求項4に記載の空気調和機。
  6. 前記本体室内機の吸込側風路に湿度センサを有し、室内空気の相対湿度を表示する相対湿度表示手段をリモートコントローラに設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の空気調和機。
  7. 前記本体室内機の吸込側風路に湿度センサを有し、使用者が所望する室内空気の相対湿度を設定できる相対湿度設定手段をリモートコントローラに設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の空気調和機。
  8. 前記加熱用熱交換器と第2の減圧装置との間の配管と前記冷却用熱交換器の他端配管とを第1の電磁弁を介して接続し、さらに前記冷却用熱交換器と第2の減圧装置との間の配管と前記加熱用熱交換器の他端配管とを第2の電磁弁を介して接続し、通常冷房運転時または暖房運転時は前記第1および第2の電磁弁は開状態とし、除湿運転時は前記第1および第2の電磁弁はともに閉状態とすることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
  9. R32を50%以上含む冷媒を用いたことを特徴とする請求項8に記載の空気調和機。
  10. 前記圧縮機の最大回転数を通常冷房運転時よりも前記冷媒再熱除湿運転時に小さくしたことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の空気調和機。
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