JP3852556B2 - 膜厚測定方法およびその方法を用いた膜厚センサ - Google Patents
膜厚測定方法およびその方法を用いた膜厚センサ Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、基板上に形成された薄膜の厚みを光の干渉を利用して測定する方法およびその方法を用いた膜厚センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
薄膜が形成された基板に光を照射すると、前記薄膜の表面で反射する光と、薄膜と基板との境界面で反射する光とが干渉する。この干渉光の強度は、薄膜の厚みによって異なり、また同じ基板であっても、その基板に照射する光の波長によって干渉光の強度が変化することが知られている。
【0003】
従来の膜厚センサは、上記の原理に基づき、所定の波長域に分布する光を発光する光源から基板に光を照射するとともに、その基板からの反射光を所定波長単位毎に分光して複数の受光素子により受光した後、各受光素子からの出力信号をディジタル変換して波長単位毎の光の強度を示すスペクトルを作成し、このデータをコンピュータに取り込んで処理することにより、前記基板上の薄膜の厚みを求めるようにしている。また測定対象の基板によっては、反射光に代えて薄膜および基板本体を透過した光により膜厚を計測する場合もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この種の膜厚センサが測定対象とするワークは多岐にわたるが、これらワークの基板や薄膜における反射率や透過率は種毎に異なるため、前記受光素子の出力信号のレベルやレベル変化の度合もワーク毎に異なるものとなる。
【0005】
たとえば反射率の高いシリコン基板は、膜が形成されると、光の干渉によって反射率が下がるが、SiO2膜のように、基板に対し屈折率の差が大きい膜が形成された場合、波長単位で大きく変動する反射光が得られる。他方、ガラス基板では、膜の形成されていない状態下での反射率はきわめて低く、また基板に対し屈折率の差が小さい膜が形成されると、波長単位の反射光強度の変動は緩やかになる。このように同じ条件で光を照射しても、反射光の強度やスペクトルの分布状態は、ワークによって大きく異なるものとなる。
【0006】
ところで実際の基板について、前記反射光または透過光のスペクトルを精度良く取り出すには、受光素子からの出力(以下、「受光出力」という。)のレベルがA/D変換のためのダイナミックレンジに適合するように、光源の投光パワーや受光素子の出力感度などを調整する必要がある。
しかしながらこの調整を、前記シリコン基板のような反射率の大きいワークを基準に行うと、ガラス基板のような反射率が小さいワークについては、スペクトルを精度良く取り出すのに必要なレベルの受光出力を得るのが困難となる。他方、反射率の小さいワークを基準にして前記投光パワーや受光感度の設定を行うと、反射率やスペクトルの変動度合が大きいワークについての受光出力が飽和してしまい、膜厚の測定が不可能となる。
このため従来では、ワーク毎に、投受光部の環境を手動設定しているが、この種の設定は、試行錯誤で行われるため、多大な労力を要する。さらに設定の都度、その設定値がばらつき、またオペレータによってもばらつきが生じるので、常にワークに合わせた最適な設定が行われているとは限らず、測定精度が低下するという問題がある。
【0007】
この発明は上記問題点に着目してなされたもので、測定対象の基板およびその基板上の薄膜の光学特性に応じて、各受光素子より膜厚を測定するのに最適な受光出力が得られるような調整を自動的に行うこと、ならびにその調整によって高精度の膜厚測定を行うことを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明では、所定の波長域に分布する光を基板に照射し、その照射光に対する基板からの反射光または透過光を所定波長単位に分光して複数の受光素子により受光し、各受光素子からの出力信号の特性に基づき基板の薄膜の厚みを測定する処理において、各受光素子に既知の特性をもつ光を受光させるレファレンス基板についての前記光の既知の特性と、各受光素子が測定対象の基板より受光する光の理論上の特性との関係を、前記測定対象の基板およびその膜の光学特性に基づき特定するステップと、前記レファレンス基板に前記波長域の光を照射しつつ、この照射光に対する各受光素子の出力信号のレベルがレファレンス基板と測定対象の基板との間の前記光の特性の関係に基づく所定のレベルになるように、照射光の強度および受光感度の少なくとも一方を調整するステップとを実行するようにした。
【0009】
ここでいう「レファレンス基板」とは、一般に、表面に薄膜が形成されていない基板であって、基板の屈折率,吸収係数などの光学定数が既知であることにより基板への照射光に対する反射光や透過光の特性を定められる基板をいう。通常、レファレンス基板には、測定対象の基板と同一材質の基板が設定されるが、測定対象とは異なる材質の基板や膜の形成された基板であっても、光照射時の反射光や透過光の特性が既知であれば、レファレンス基板として使用することができる。
【0010】
「光の特性」とは、光の照射に対し、各受光素子が受光する基板からの反射光または透過光の特徴のことであり、具体的には、各波長単位の反射光または透過光の強度または反射率,透過率の分布状態を示すスペクトル(以下、単に「スペクトル」という。)として示される。
【0011】
「レファレンス基板についての光の既知の特性」とは、レファレンス基板に光を照射したときに受光素子に与えられる光の持つ既知の特性であり、「各受光素子が測定対象の基板より受光する光の理論上の特性」とは、測定対象の基板より受光素子に与えられる光について基板の材質,薄膜の厚みの想定値などから推測した特性と言い換えることができる。これらの特性の関係としては、測定対象の基板のスペクトルがレファレンス基板のスペクトルより高い位置に表れる場合、測定対象の基板のスペクトルがレファレンス基板のスペクトルより低い位置に表れる場合、および両スペクトルを示す曲線が交わる場合、の3通りの関係を考えることができる。
【0012】
上記の方法によれば、前記レファレンス基板に光を照射したときに得られる受光出力は、レファレンス基板の既知のスペクトルに対応したものとなるはずである。したがってこの既知のスペクトルと前記測定対象の基板の理論上のスペクトルとの関係に基づき、受光出力が所定の電圧レベルになるように照射光の強度および受光感度の少なくとも一方を調整することにより、測定処理時に、測定対象の基板からの光の特性を精度良く示した受光出力を得ることが可能となる。
なお照射光の強度の調整とは、光源への駆動信号のレベル調整を意味するほか、LEDやレーザーダイオードのような光源を用いる場合の光源への駆動パルス幅の調整を意味する。また受光感度の調整とは、受光素子における受光時間や出力ゲインなどの調整を意味する。
【0013】
たとえば測定対象の基板のスペクトルがレファレンス基板のスペクトルよりも低い位置に表れると考えられる場合は、レファレンス基板により得られる受光出力の電圧レベルを前記したディジタル変換のためのダイナミックレンジの最大値付近になるように照射光の強度および受光感度の少なくとも一方を調整すれば、測定処理時には、基板からの光の特性を示すスペクトルを飽和させずに取り出すことができる。また測定対象の基板のスペクトルがレファレンス基板のスペクトルよりも高い位置に表れると考えられる場合は、レファレンス基板により得られる受光出力の電圧レベルが前記ダイナミックレンジの最小値付近になるように照射光の強度および受光感度の少なくとも一方を調整することにより、測定処理時に、基板からの光の特性を示すスペクトルをダイナミックレンジ内に確実に入れることができる。
【0014】
さらに測定対象の基板のスペクトルとレファレンス基板のスペクトルとの大小関係が波長によって変動する場合(すなわち各スペクトルの曲線に交わりが生じる場合)であれば、たとえば測定対象の基板の理論上のスペクトルの変動幅をダイナミックレンジの幅に対応させ、前記各スペクトルが交わる位置に対応するダイナミックレンジ内のレベルを特定し、このレベル付近に前記レファレンス基板により得られる受光出力の電圧レベルを設定することにより、測定処理時の基板からの光の特性を示すスペクトルを前記ダイナミックレンジ内に入れることが可能である。
【0015】
なお通常、基板に照射する光の波長分布にはばらつきがあるから、レファレンス基板により得られる受光出力にも、この光源のばらつきが加味される。したがって実際の調整処理においては、前記レファレンス基板と測定対象の基板との間の受光信号の関係に応じて、受光出力の最大レベルまたは最小レベルを用いての調整を行うのが望ましい。
【0016】
つぎにこの発明にかかる膜厚センサは、測定対象の基板に所定の波長域に分布する光を照射するための投光手段と、測定対象の基板からの反射光を分光する分光素子、およびこの分光素子により所定波長単位に分けられた反射光を受光するための複数個の受光素子とを具備する受光手段と、前記受光素子の出力電圧のレベルを調整する調整手段と、前記調整手段による調整が完了した後に、前記投光手段からの光を測定対象の基板に照射した状態下で各受光素子からの出力信号を取り込んで、これら出力信号の特性に基づき前記基板の薄膜の厚みを測定する測定手段とを具備し、さらに前記調整手段が、前記測定対象の基板およびその膜の光学特性に関するデータを入力する手段と、前記入力されたデータに基づき、各受光素子に既知の特性をもつ光を受光させるレファレンス基板についての前記既知の光の特性と、各受光素子が前記測定対象の基板から受光する光の理論上の特性との関係を特定する手段とを具備し、前記レファレンス基板に前記光源からの光を照射した状態下において、前記受光素子の出力信号のレベルが前記レファレンス基板と測定対象の基板との間の光の関係に基づく所定のレベルになるように調整するように構成される。
【0017】
上記構成において、「測定対象の基板およびその膜の光学特性に関するデータ」とは、基板および膜の屈折率や吸収係数などの光学定数を示す数値のほか、この数値を特定可能なデータ(たとえば基板および膜の材質、種類など)であってもよい。
【0018】
調整手段は、この入力データにより、測定対象の基板について得られる理論上のスペクトルがレファレンス基板により得られる既知のスペクトルに対してどのような関係を持つかを特定した上で、その関係に基づき、レファレンス基板について得られる受光出力を調整する。
なおこの調整は、投光手段の出力パワーの調整、受光素子の感度調整(受光素子の駆動タイミングや受光時間の調整を意味する。)、受光出力のゲインの調整の少なくともいずれか、またはこれらの調整方法を組み合わせて実施されるものである。このように複数種の方法を選択または組み合わせることによって、調整方向や調整量に応じて細かい調整を行うことが可能となる。
【0019】
上記の膜厚センサによれば、光学系の調整処理において、オペレータが測定対象の基板およびその膜の光学特性に関するデータを入力した上で、レファレンス基板を測定位置に導入して投光手段より光を照射すると、受光素子の出力信号のレベルが前記測定対象の基板の反射光特性を精度良く抽出できるレベルになるような調整が自動的に行われて、測定処理が可能となる。したがって計測対象の基板が代わっても、簡単かつ迅速に光学系を調整して測定処理に最適な受光出力を得ることができ、調整作業にかかる労力を大幅に軽減し、かつ測定精度を向上することが可能となる。
【0020】
さらに好ましい態様によれば、前記測定手段は、前記受光素子が測定対象の基板から受光した光の特性と、前記受光素子がレファレンス基板から受光する光の既知の特性と、前記レファレンス基板を用いて調整が完了した時点で受光素子がレファレンス基板により受光した光の特性とを用いて、前記投光手段からの光に対し受光素子が測定対象の基板から受光した光の比率を波長毎に算出し、その算出結果を用いて測定対象の基板の膜厚を特定するように構成される。
【0021】
前記したように基板への照射光は、波長によってばらつきが生じていると考えられるから、測定によって受光素子に受光される光からは、照射光の特性による影響を受けたスペクトルが生成されると考えられる。これに対し、受光素子の受光する光についての理論上のスペクトルは、基板に対し波長単位毎に均一な光が照射された場合に受光される光の受光比率(照射光に対する受光素子に入射する光の比率をいう。)を表すものとなる。
上記の測定手段の構成によれば、受光出力の調整が完了した状態下において受光素子が測定対象の基板から受光した照射光の特性を含む光と、同様の条件でレファレンス基板から受光した照射光の特性を含む光と、レファレンス基板より受光する光の理論上の特性とを用いて、基板に均一な光が照射された場合の受光比率が求められるので、たとえば、この算出された受光比率を各種膜厚の基板により得られる受光比率の理論値を示すモデルデータと順に比較したり、算出された受光比率によるスペクトルから極大値または極小値を抽出してその値を所定の演算式にあてはめることにより、測定対象の基板の膜厚を精度良く求めることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の一実施例にかかる膜厚センサの外観を示す。
この膜厚センサは、センサヘッド1とコントローラ2とを光ファイバケーブル3により接続して成る。コントローラ1には、後記する投光部5,受光部6,制御回路7など(いずれも図4に示す。)が組み込まれている。光ファイバケーブル3は、投光用の光ファイバと受光用の光ファイバとがそれぞれ複数本束ねられたもので、所定位置において投光用の光ファイバを集めたケーブル3aと受光用の光ファイバを集めたケーブル3bとに分けられて、コントローラ2に接続される。
【0023】
前記センサヘッド1は、円筒状のケース体内に対物レンズ1a(図4に示す。)などを組み込んで成るもので、測定対象の基板8に対し所定距離だけ上方位置において、レンズ面を基板表面に対向させた状態で設置される。前記投光部5からの光は、光ファイバケーブル3aを介してセンサヘッド1より基板表面に照射され、その照射光に対する基板からの反射光が、センサヘッド1より光ファイバケーブル3bを介して受光部6に導かれる。さらに受光部6からの出力は制御回路7に取り込まれ、前記基板上の薄膜の厚みの測定処理に用いられる。
【0024】
なお、図中の4は、外部機器であるパーソナルコンピュータであって、コントローラ2の制御回路7にケーブル接続される。このパーソナルコンピュータ4は、測定対象の基板8に関する設定データを入力したり、コントローラ2から膜厚の計測結果を受け取って表示する用途で用いられる。
【0025】
図2は、上記膜厚センサの投光部5に使用される光源10の構成を示す。
この光源10には、出力波長の特性が異なる3個のLED11,12,13と、透過特性の異なる2個のダイクロイックミラー14,15と、集光用のレンズ16とが組み込まれる。各LED11〜13には、それぞれ赤色光発光用、白色発光用、青色発光用のLED(以下、「赤色LED11」,「白色LED12」,「青色LED13」という。)が用いられる。
【0026】
赤色LED11は、レンズ16の面に対して所定距離だけ離れた位置に、光軸をレンズ中心に合わせた状態で設置される。この赤色LED11とレンズ16との間には、前記2つのダイクロイックミラー14,15が、それぞれ前記赤色LED11の光軸に対し鏡面を45度傾斜させた状態で所定間隔を隔てて設置される。さらに前記白色,青色の各LED12,13は、それぞれダイクロイックミラー14,15の鏡面に対し45度の角度を持ち、かつ前記赤色LED11の光軸に直交するように光軸を合わせた状態で設置される。
なお光源10には、このほか、各LED11〜13の出力パワーを個別に制御するための駆動回路17,18,19が組み込まれる。
【0027】
この実施例の白色LED12には、LEDチップに蛍光塗料を添加した樹脂モールドを施した光源(例えば日亜化学製のNSPW500)が用いられる。このLED12は、約420〜700nmの波長域に分布し、かつ470nm付近に第1のピークが、560nm付近に第2のピークが出現するような出力波長特性を具備する。また青色LED13には、470nm付近に出力パワーのピークが出現するような出力波長特性を有する光源(例えば日亜化学製のNSPB500)が、赤色LED11には、680nm付近に出力パワーのピークが出現するような出力波長特性を有する光源(例えば松下電器産業製のLN124W)が、それぞれ用いられる。
【0028】
赤色LED11と白色LED12との光軸が交わる位置に設置される第1のダイクロイックミラー14には、600nm以前の光に対する透過率が0に近似し、かつ700nm以降の波長域の光に対する透過率が1に近似する透過特性を具備するものが用いられる。また赤色LED11と青色LED13との光軸が交わる位置に配置される第2のダイクロイックミラー15には、470nm以前の光に対する透過率が0に近似し、かつ520nm以降の波長域の光に対する透過率が1に近似するような透過特性を具備するものが用いられる。
【0029】
図3は、前記ダイクロイックミラー14,15の光の透過特性と、これらダイクロイックミラー14,15と各LED11,12,13からの出射光とによって実現する出力パワーの特性との関係を示す。
赤色LED11から出射した各波長の光のうち600nmより後の波長域の光は、第1,第2の各ダイクロイックミラー14,15を順に通過してレンズ16に導かれる。白色LED12から出射した光については、600nmより前の波長域の光が第1のダイクロイックミラー14で反射することによってレンズ16の方へと進むが、つぎに第2のダイクロイックミラー15により前記470nm付近より前の波長域の光が遮光されるため、前記第1のピークの光が取り除かれ、560nm付近の第2のピークを含む光がレンズ16に導かれる。
【0030】
青色LED13から出射した光については、470nmより前の前記ピークを含む光が第2のダイクロイックミラー15で反射して、レンズ16へと導かれる。なお各ダイクロイックミラー14,15を透過または反射して、レンズ16以外の方向に導かれた光は、図示しない光吸収体により吸収される。
【0031】
よって、赤色LED11からは、680nm付近をピークとして600〜700nmの波長域付近に分布する光が、白色LED12からは、560nm付近をピークとして約500〜600nmの波長域付近に分布する光が、青色LED13からは470nm付近をピークとして約420〜500nmの波長域付近に分布する光が、それぞれ取り出されてレンズ16により集光され、測定処理用の光として出射される。
なおこの実施例では、前記各駆動回路17,18,19により各LED11,12,13の出力パワーを個別に調整することにより、図3に示すように、各LED11,12,13から取り出された3つのピークを等しいレベルに合わせて、広い波長域において安定した出力パワーを確保するようにしている。
【0032】
図4は、前記膜厚センサの具体的な構成である。図中、5は投光部,6は受光部,7は制御回路であって、いずれも前記コントローラ2内に組み込まれる。
投光部5は、前記した構成の光源10により成るもので、約420〜700nmの波長域に分布する光を発光する。この光は光ファイバケーブル3aを介してセンサヘッド1の先端から基板8の表面に照射される。この光は、基板本体8b上の薄膜8aの表面および薄膜8aと基板本体8bとの境界面において反射するもので、その反射光はセンサヘッド1に入射した後に、光ファイバケーブル3bを介して受光部6に導かれる。
【0033】
受光部6は、光学多層膜を用いた分光フィルタ20と、ラインCCD21(複数のCCDを一次元配列したもの)とにより構成される。前記反射光は、分光フィルタ20により波長単位に分光された後、分光された各光がラインCCD21の各CCDに取り込まれて波長単位の反射光の強度が取り出される。
【0034】
制御回路7は、マイクロコンピュータを主体とする制御部22に、A/D変換部23,投光量調整部24,受光感度調整部25,表示制御部26,入出力部27などが接続されて成る。
A/D変換部23は、ラインCCD21の各CCDからの受光出力を抽出してディジタル変換することにより、前記波長単位毎の反射光の強度分布(以下、「反射光スペクトル」という。)を示す受光データを作成する。制御部23はこの受光データを取り込んで、後記する方法による膜厚測定処理を実行する。
【0035】
入出力部27は、前記パーソナルコンピュータ4から、測定対象の基板8の基板本体8bや薄膜8aについて、材質、光学定数などの設定データを取り込んだり、膜厚の測定結果を装置外部に出力するためのものである。表示制御部26は、前記パーソナルコンピュータ4に対し、前記測定結果などの表示用データを与えることにより、ディスプレイ画面上でのデータ表示を行わせる。
【0036】
投光量調整部24は、前記投光部5の各LED11,12,13に対する駆動回路17,18,19を制御して発光パルス間隔を調整することにより、投光部5の出力レベルを調整する。受光感度調整部25は、ラインCCD21のシャッタ時間間隔を制御したり、ラインCCD21とA/D変換部23との間の増幅回路28のゲインを調整することにより、受光感度を調整する。なおこの実施例では、これら調整部24,25を、制御部22の指令に応じて作動させることにより、ラインCCD21からの受光出力のレベルを最適なレベルに設定するための調整処理を自動化するようにしている。(詳細は後記する。)
【0037】
上記構成の膜厚センサでは、測定対象の基板8の種類に応じて前記各調整部24,25によりラインCCD21の出力レベルを自動調整した後、膜厚測定処理を開始する。この測定処理において、制御部22は、薄膜の厚みが所定値に想定されたときの理論上の反射スペクトルを示すデータを所定数の膜厚毎に設定した後、これら理論上の反射スペクトルと前記A/D変換部23から入力された受光データの示す反射スペクトルとを順に比較する方法(カーブフィッティング法)により、薄膜の厚みを特定する。
【0038】
基板上の薄膜の厚みをd,屈折率をnとすると、薄膜に波長λの光が入射したときの入射光に対する干渉光の割合(反射率)Rは、つぎの(1)式で示すことができる。前記理論上の反射スペクトルは、膜厚dを所定単位Δdずつ変化させながら、各膜厚dにつき、それぞれ波長単位毎につぎの(1)式を用いて反射率Rの理論値を求めることにより得られるものである。
R=1−A/{B+C×cos[(4π/λ)×n×d]} ・・・(1)
(A,B,Cは、基板,薄膜の屈折率により求められる定数である。)
【0039】
図5は、前記カーブフィッティング法の原理を示す。
図中、Sは、実測の受光データが示す反射スペクトルである。R1〜R5は膜厚毎に前記(1)式により得られた理論上の反射スペクトル(以下、「理論曲線」という。)であって、膜厚によって光の干渉の度合が変化するという現象を反映してそれぞれ異なる分布形状をとる。
カーブフィッティング法では、実測の受光データについて各理論曲線に対する最小自乗誤差を順に求めることにより、前記受光データに最も近い形状の理論曲線を特定し、その理論曲線に対応する膜厚d(図示例では1000nm)を、測定対象の薄膜の厚みとする。
【0040】
つぎに前記した受光出力の調整処理について詳細を説明する。
既に述べたように、受光データの示す反射スペクトルは、基板本体8bや薄膜8aの反射率や光の吸収率などの光学特性によって変化する。この実施例では、測定処理に先立ち、これらの光学特性が既知であるレファレンス基板を用いてラインCCD21の受光出力を自動調整し、膜厚の測定に最適な環境を設定するようにしている。
【0041】
いまこのレファレンス基板の実測において得られた波長λにおける受光データをS(0,λ)とすると、このS(0,λ)はつぎの(2)式で表すことができる。
S(0,λ)=P0(λ)×R(0,λ)×F ・・・(2)
【0042】
上記(2)式において、R(0,λ)は、前記レファレンス基板の光学特性に基づく理論上の反射率(波長λの入射光に対する反射率)であり、P0(λ)は投光部5における波長λの光の出力パワー、Fは受光部6の受光感度である。この関係は、測定対象の基板についても同様であり、P0(λ)およびFは、最適な受光データを得るためのパラメータとなる。
上記パラメータのうち投光パワーP0(λ)は、投光部5の前記波長λに対応するLEDの発光量を制御することによって調整することができる。また受光感度Fは、前記ラインCCDのシャッタ時間やCCDの受光出力を増幅するためのゲイン設定によって調整することができる。
【0043】
図6は、CCDのシャッタ時間の制御による受光感度の調整により受光出力を調整する方法を示す。図中の(a),(b),(c)は、前記投光部5の各LED11,12,13の発光タイミングであって、それぞれ所定のデューティ比の駆動パルスが設定されている。(d)は初期状態でのCCDの駆動タイミングであって、各LED11,12,13の発光タイミングに同期する時間間隔t毎に蓄積電荷を放出するように設定されている。
【0044】
図6の(e)は、前記(d)のタイミングでCCDを駆動したときの受光出力の電圧レベルである。このように受光出力のレベルが目標とする基準のレベル域に到達していない場合、その下の(f)に示すように、CCDのシャッタ時間を初期状態の所定倍(図示例では3倍)に設定して入射光量を増やすことで対応する。
図6のgは、前記fのタイミングによる受光出力であって、前記基準のレベル域内に到達した受光出力が得られている。
【0045】
なお投光部5の出力パワーの調整は、調整対象のLEDへの駆動パルス幅を変更することによって行われる。例えば駆動パルス幅を初期状態より長くすれば、波長λにおける出力パワーは増大し、その結果、CCDに入射する波長λの反射光のパワーが大きくなるので、受光出力がおのずと高められる。
【0046】
この実施例では、つぎに述べる原理に基づき、前記レファレンス基板により得られた受光出力のピーク値または最小値が所定のレベルになるように、前記ラインCCD21のシャッタ時間やLED11,12,13の駆動パルス幅、前記増幅回路のゲイン28などを調整する。なお投光パワー、CCDのシャッタ時間、出力ゲインのいずれを調整するかは、調整の方向や大きさによって種々選択可能であり、複数の方法を組み合わせて調整が行われる場合もある。
【0047】
ここでこの実施例における調整方法の原理を説明する。
前記レファレンス基板には、通常、測定対象の基板と同一種類の薄膜が形成されていない基板が用いられる。このレファレンス基板については、その基板の光学特性に基づき、あらかじめ各波長単位毎の反射率を求めることができるので、そのデータによって理論上の反射スペクトル(理想曲線)を設定することができる。またレファレンス基板による実測の受光データの示す反射スペクトルは、前記(2)式に示すとおり、理想曲線と同形状になるはずである。
【0048】
さらに測定対象の薄膜の形成された基板についても、その膜厚が所定値であると仮定すれば、薄膜や基板の光学特性を前記(1)式にあてはめることによって理想曲線を設定することができるから、測定対象の基板の理想曲線が前記レファレンス基板の理想曲線に対し、どのような関係にあるかを求めることができる。
【0049】
図7(1)は、SiO2膜が形成されたシリコン基板を測定対象とする場合に、膜のないレファレンス基板の理想曲線R0と、所定の厚みdの膜が形成された基板の理想曲線Rdとの関係を示す。なおこれら理想曲線R0,Rdは、波長単位毎の反射率曲線として表される。
シリコン基板は反射率が高いため、膜の形成された基板では、膜のない状態下よりも反射率が低下するが、基板本体と薄膜との屈折率の差が大きいため、光の干渉の変動の度合が大きくなり、振幅の大きな理論曲線Rdが得られる。なお図示例では、理論曲線Rdの一例として膜厚が500nmの場合の理想曲線を示しているが、他の膜厚の基板についても、レファレンス基板の理想曲線R0に対する位置関係は、図示例と同様である。
【0050】
図7(2)は、ITO膜が形成されたガラス基板を測定対象とする場合に、膜のないレファレンス基板の理論曲線R0と、所定の厚みdの膜が形成された基板の理論曲線Rdとの関係を示す。なお理想曲線Rdとしては、前記図7(1)のシリコン基板と同様に膜厚が500nmの場合の曲線を示している。
ガラス基板は透過性が高いため、膜のない状態下での反射率は、前記シリコン基板に比べ、はるかに小さくなる。膜が形成された基板では、レファレンス基板よりも反射率が高くなるが、基板本体と膜との間の屈折率の差が小さいため、波長単位毎の反射率の変動は、緩やかになる。なおガラス基板においても、膜厚が500nm以外の基板の理想曲線とレファレンス基板の理想曲線R0との関係は、図示例と同様になる。
【0051】
したがってレファレンス基板と測定対象の基板との各理論曲線R0,Rdが前記図7(1)のような関係にある場合には、レファレンス基板により得られる受光出力のレベルをA/D変換のダイナミックレンジの上限値ADmaxに合わせるようにすれば、測定処理時の受光レベルを前記上限値ADmaxから飽和しないレベルに設定することができる。またこの場合、投光パワーや受光感度を下げる方向への調整が行われることによって受光出力の変動幅が強調されるのが抑えられ、測定処理時の受光出力の大きな変動をダイナミックレンジ内に入れ込むことが可能となる。
【0052】
他方、レファレンス基板と測定対象の基板とが前記図7(2)のような関係にあるときは、レファレンス基板により得られる受光出力のレベルをA/D変換のダイナミックレンジの下限値ADminに合わせることにより、測定処理時の受光レベルが、前記下限値ADminより下に落ち込まないようにすることができる。またこの場合、投光パワーや受光感度を上げる方向への調整を行うことによって受光出力の変動幅が強調されるようになり、測定処理時の受光出力の緩やかな変動をダイナミックレンジ内で強調することができる。
【0053】
ところで前記図7(1)(2)に示した各理論曲線R0,Rdは、いずれも波長単位毎に一定の強度の光が与えられたことを前提とするものである。しかしながらこの実施例の膜厚センサでは、前記した構成の光源10により、図8に示すような特性を持つ光を基板に照射しているため、レファレンス基板による受光出力は、前記理論曲線R0に光源10の発光スペクトルの特性を加味した曲線に近い反射スペクトルを示すようになる。このためこの実施例では、レファレンス基板による測定処理において得られた受光出力のうち、図8の3つのピークP1,P2,P3に対応する最大のレベル、または受光出力の最小のレベルを用いた調整を行うようにしている。
【0054】
図9は、前記図7(1)のシリコン基板について受光出力を調整した例を示す。なお、図中の(A)は、前記図7(1)と同様の理論曲線R0,Rdを示したグラフであり、(B)は、調整処理後に計測される受光出力の概略形状を示したグラフである。
【0055】
上記図9(B)において、S0は、レファレンス基板についての調整処理後の受光出力であって、前記図8の投光部5の出力特性を反映した反射スペクトルが表れている。またSdは、左側の理想曲線Rdに対応させて、前記膜厚500nmの基板を測定した場合の受光出力を示す。
【0056】
この例の場合、理論上は、前記理論曲線R0に対応する波長単位の電圧レベルをそれぞれ前記A/D変換の上限値ADmaxに合わせることになるが、処理の上では、レファレンス基板により得られる受光出力のピーク値(前記投光部5からの光の3つのピークP1,P2,P3に対応して出現する。)が理論曲線R0の本来のレベルを表すものとして、これらピークのレベルを上限値ADmaxに合わせるように調整する。このような調整により、測定対象の基板について、図示のように、A/D変換のダイナミックレンジ内に適切な大きさで現れる受光出力Sdを得ることができる。
【0057】
図10は、前記図7(2)のガラス基板について受光出力を調整した例を示す。この場合、理論上は、前記理論曲線R0に対応する波長単位の電圧レベルをそれぞれ前記A/D変換の下限値ADminに合わせることになるが、処理の上では、レファレンス基板により得られる受光出力の最小レベルが理論曲線R0の本来のレベルを表すものとして、この最小レベルを下限値ADminに合わせるような調整が行われる。
このような調整により、測定対象の基板について、図示のように、A/D変換のダイナミックレンジ内に入り、かつ強度の変動の幅が強調された受光出力Sdを得ることができる。
【0058】
なおレファレンス基板は、測定対象の基板と同一材質のものに限らず、光学特性が既知の基板であり、その基板による理論曲線と測定対象の基板における理論曲線との関係が特定できるような基板を、レファレンス基板としてもよい。
図11は、SiO2膜の形成されたシリコン基板を測定対象とする場合に、クロム基板をレファレンス基板として受光出力の調整を行った例を示す。この場合、(A)のグラフに示すように、測定対象の基板の理論曲線Rdはレファレンス基板の理論曲線R0に対し、複数位置で交叉するような関係にある。
【0059】
このような関係が成立する場合、測定対象の基板の実測データをA/D変換のダイナミックレンジに収めるためには、前記レファレンス基板により得た実測の受光レベルを前記上限値ADmaxと下限値ADminとの間の所定位置に設定することになる。
【0060】
図示例では、理論上のデータに基づき、測定対象の基板の理論曲線Rdの変動幅がダイナミックレンジに対応するものと想定し、このダイナミックレンジ内において、前記理論曲線R0とRdとの交点に対応する電圧レベルLに、前記レファレンス基板の受光出力のピークを合わせている。このような調整により、測定対象の基板について、図示のように、前記基準の電圧レベルLより高くなることはあっても、A/D変換の上限値ADmaxを上回ることがなく、また下限値ADminを下回ることのない適正な受光出力Sdを得ることができる。
なお上記方法においては、膜厚dが想定できる最大値をとる場合の理想曲線Rdを用いて基準の電圧レベルLを設定するのが望ましい。
【0061】
図12は、上記膜厚センサによる一連の測定処理の手順を示す。なお各手順のうち、点線の矩形枠の手順(ST1,ST3,ST7)には、オペレータの操作が介在する。
まず最初のST1では、レファレンス基板、測定対象の基板について、屈折率,吸収係数などの光学定数を入力する。(測定対象の基板については、基板本体および薄膜の双方について入力する。)
【0062】
なお、上記のデータ入力は、オペレータが前記パーソナルコンピュータ4を用いて行うものであり、通常は実際の定数を示す数値が手入力される。ただしパーソナルコンピュータ4またはコントローラ2の制御部22に、基板の種類毎の光学定数を記憶したテーブルを設定しておき、ユーザーが基板の種類を指定することにより前記テーブルから対応する数値を呼び出して入力することも可能である。
【0063】
つぎのST2では、前記入力データに基づき、レファレンス基板の理論曲線R0,および測定対象の基板の理論曲線Rdを構成するディジタルデータR(0,λ),R(d,λ)(各波長λ毎の反射率を示すデータ)を作成する。(以下、理論曲線データR(0,λ),R(d,λ)という。)
なお測定対象の基板の理論曲線データR(d,λ)は、膜厚毎に作成され、後の膜厚測定のためにテーブル化されてメモリ内に保存される。
【0064】
つぎのST3で、オペレータが前記レファレンス基板を測定位置に設置し、測定開始操作を行うと、投光部5より光が照射されて計測処理が開始される。受光部6からの受光出力はA/D変換された後に制御部22に取り込まれる。
制御部22は、この計測処理において、理論曲線データR(0,λ),R(d,λ)の関係を前記図9〜11に示した原理にあてはめて、受光データの最大値または最小値が所定のレベルを示すようになるまで、投光量調整部24や受光感度調整部25による調整処理を行う(ST4)。これによりラインCCD21の受光出力のレベルが最適なレベルに調整されると、ST5が「YES」となり、つぎのST6で、この状態下の受光出力を表す受光データS(0,λ)をメモリに記憶し、しかる後に膜厚の測定処理に移行する。
【0065】
まずST7では、オペレータの測定開始操作に応じて測定対象の基板を導入して、投光部5より光を照射する。受光部6からの受光出力はA/D変換された後に制御部22に取り込まれる。
なお、ここで得られた受光出力は、レファレンス基板における受光出力と同様に投光部5の出力特性の影響を受けているので、つぎのST8で、受光出力より得た測定データS(d,λ)を理論曲線R(d、λ)との比較が可能なデータS´(d,λ)に補正する。この補正データS´(d,λ)は、前記レファレンス基板の理想曲線データR(0,λ)と受光データS(0,λ)とを用いて、つぎの(3)式により求められるもので、波長λ毎の計測された反射率を表すデータである。
S´(d,λ)=R(0,λ)・S(d,λ)/S(0,λ) ・・・(3)
【0066】
このようにして実測の反射率S´(d,λ)が求められると、ST9に進み、このS´(d,λ)と前記メモリに記憶した各理想曲線データR(d,λ)との最小自乗誤差を順に求め、その結果に基づき、測定対象の基板における膜厚を特定する。その特定結果は、前記入出力部27や表示制御部26を介して外部に出力される(ST10)。
以下ST7〜10の手順を繰り返すことにより、基板が供給される都度、膜厚の測定処理を行う。最後の基板の処理が終了すると、ST11が「YES」となって、一連の手順を終了する。
【0067】
上記の手順によれば、オペレータは受光出力の調整処理時に、ST1でデータ入力を行い、ST3でレファレンス基板を測定位置に設定して測定開始操作を行うだけで良くなり、その後は膜厚の測定に最適な受光レベルへの調整が自動的に行われる。
なお続けて別の種類の基板を測定する場合は、再度ST1の手順から順に各手順を実行することにより、測定対象の基板に応じた受光出力レベルに調整された後に、測定処理が行われる。
【0068】
最後に、上記実施例においては基板からの反射光を用いて膜厚を測定するようにしているが、基板からの透過光を用いて膜厚を測定する場合についても、同様の方法により膜厚の測定に最適な受光レベルへの調整を行うことが可能である。
【0069】
【発明の効果】
この発明によれば、測定対象の基板およびその膜の光学特性に関するデータに基づき、レファレンス基板に光を照射したときに得られる受光素子の出力電圧レベルが自動的に調整されて、測定対象の基板の膜厚を測定するのに最適な環境が設定されるので、調整作業にかかるオペレータの労力を大幅に軽減することができ、また膜厚を高精度で測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例にかかる膜厚センサの外観を示す図である。
【図2】図1の膜厚センサの投光部に使用される光源の構成を示す図である。
【図3】光源の出力特性とダイクロイックミラーの透過特性との関係を示すグラフである。
【図4】膜厚センサの構成を示す概念図である。
【図5】カーブフィッティング法の原理を説明する図である。
【図6】受光出力の調整方法を説明するためのタイミングチャートである。
【図7】レファレンス基板と測定対象の基板との理想曲線の関係を示すグラフである。
【図8】光源の特性を示す図である。
【図9】理想曲線および受光出力調整後の受光出力の関係を示す図である。
【図10】理想曲線および受光出力調整後の受光出力の関係を示す図である。
【図11】理想曲線および受光出力調整後の受光出力の関係を示す図である。
【図12】受光出力の調整および膜厚測定の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
5 投光部
6 受光部
8 基板
8a 薄膜
20 分光フィルタ
21 ラインCCD
22 制御部
23 A/D変換部
24 投光量調整部
25 受光感度調整部
【発明の属する技術分野】
この発明は、基板上に形成された薄膜の厚みを光の干渉を利用して測定する方法およびその方法を用いた膜厚センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
薄膜が形成された基板に光を照射すると、前記薄膜の表面で反射する光と、薄膜と基板との境界面で反射する光とが干渉する。この干渉光の強度は、薄膜の厚みによって異なり、また同じ基板であっても、その基板に照射する光の波長によって干渉光の強度が変化することが知られている。
【0003】
従来の膜厚センサは、上記の原理に基づき、所定の波長域に分布する光を発光する光源から基板に光を照射するとともに、その基板からの反射光を所定波長単位毎に分光して複数の受光素子により受光した後、各受光素子からの出力信号をディジタル変換して波長単位毎の光の強度を示すスペクトルを作成し、このデータをコンピュータに取り込んで処理することにより、前記基板上の薄膜の厚みを求めるようにしている。また測定対象の基板によっては、反射光に代えて薄膜および基板本体を透過した光により膜厚を計測する場合もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この種の膜厚センサが測定対象とするワークは多岐にわたるが、これらワークの基板や薄膜における反射率や透過率は種毎に異なるため、前記受光素子の出力信号のレベルやレベル変化の度合もワーク毎に異なるものとなる。
【0005】
たとえば反射率の高いシリコン基板は、膜が形成されると、光の干渉によって反射率が下がるが、SiO2膜のように、基板に対し屈折率の差が大きい膜が形成された場合、波長単位で大きく変動する反射光が得られる。他方、ガラス基板では、膜の形成されていない状態下での反射率はきわめて低く、また基板に対し屈折率の差が小さい膜が形成されると、波長単位の反射光強度の変動は緩やかになる。このように同じ条件で光を照射しても、反射光の強度やスペクトルの分布状態は、ワークによって大きく異なるものとなる。
【0006】
ところで実際の基板について、前記反射光または透過光のスペクトルを精度良く取り出すには、受光素子からの出力(以下、「受光出力」という。)のレベルがA/D変換のためのダイナミックレンジに適合するように、光源の投光パワーや受光素子の出力感度などを調整する必要がある。
しかしながらこの調整を、前記シリコン基板のような反射率の大きいワークを基準に行うと、ガラス基板のような反射率が小さいワークについては、スペクトルを精度良く取り出すのに必要なレベルの受光出力を得るのが困難となる。他方、反射率の小さいワークを基準にして前記投光パワーや受光感度の設定を行うと、反射率やスペクトルの変動度合が大きいワークについての受光出力が飽和してしまい、膜厚の測定が不可能となる。
このため従来では、ワーク毎に、投受光部の環境を手動設定しているが、この種の設定は、試行錯誤で行われるため、多大な労力を要する。さらに設定の都度、その設定値がばらつき、またオペレータによってもばらつきが生じるので、常にワークに合わせた最適な設定が行われているとは限らず、測定精度が低下するという問題がある。
【0007】
この発明は上記問題点に着目してなされたもので、測定対象の基板およびその基板上の薄膜の光学特性に応じて、各受光素子より膜厚を測定するのに最適な受光出力が得られるような調整を自動的に行うこと、ならびにその調整によって高精度の膜厚測定を行うことを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明では、所定の波長域に分布する光を基板に照射し、その照射光に対する基板からの反射光または透過光を所定波長単位に分光して複数の受光素子により受光し、各受光素子からの出力信号の特性に基づき基板の薄膜の厚みを測定する処理において、各受光素子に既知の特性をもつ光を受光させるレファレンス基板についての前記光の既知の特性と、各受光素子が測定対象の基板より受光する光の理論上の特性との関係を、前記測定対象の基板およびその膜の光学特性に基づき特定するステップと、前記レファレンス基板に前記波長域の光を照射しつつ、この照射光に対する各受光素子の出力信号のレベルがレファレンス基板と測定対象の基板との間の前記光の特性の関係に基づく所定のレベルになるように、照射光の強度および受光感度の少なくとも一方を調整するステップとを実行するようにした。
【0009】
ここでいう「レファレンス基板」とは、一般に、表面に薄膜が形成されていない基板であって、基板の屈折率,吸収係数などの光学定数が既知であることにより基板への照射光に対する反射光や透過光の特性を定められる基板をいう。通常、レファレンス基板には、測定対象の基板と同一材質の基板が設定されるが、測定対象とは異なる材質の基板や膜の形成された基板であっても、光照射時の反射光や透過光の特性が既知であれば、レファレンス基板として使用することができる。
【0010】
「光の特性」とは、光の照射に対し、各受光素子が受光する基板からの反射光または透過光の特徴のことであり、具体的には、各波長単位の反射光または透過光の強度または反射率,透過率の分布状態を示すスペクトル(以下、単に「スペクトル」という。)として示される。
【0011】
「レファレンス基板についての光の既知の特性」とは、レファレンス基板に光を照射したときに受光素子に与えられる光の持つ既知の特性であり、「各受光素子が測定対象の基板より受光する光の理論上の特性」とは、測定対象の基板より受光素子に与えられる光について基板の材質,薄膜の厚みの想定値などから推測した特性と言い換えることができる。これらの特性の関係としては、測定対象の基板のスペクトルがレファレンス基板のスペクトルより高い位置に表れる場合、測定対象の基板のスペクトルがレファレンス基板のスペクトルより低い位置に表れる場合、および両スペクトルを示す曲線が交わる場合、の3通りの関係を考えることができる。
【0012】
上記の方法によれば、前記レファレンス基板に光を照射したときに得られる受光出力は、レファレンス基板の既知のスペクトルに対応したものとなるはずである。したがってこの既知のスペクトルと前記測定対象の基板の理論上のスペクトルとの関係に基づき、受光出力が所定の電圧レベルになるように照射光の強度および受光感度の少なくとも一方を調整することにより、測定処理時に、測定対象の基板からの光の特性を精度良く示した受光出力を得ることが可能となる。
なお照射光の強度の調整とは、光源への駆動信号のレベル調整を意味するほか、LEDやレーザーダイオードのような光源を用いる場合の光源への駆動パルス幅の調整を意味する。また受光感度の調整とは、受光素子における受光時間や出力ゲインなどの調整を意味する。
【0013】
たとえば測定対象の基板のスペクトルがレファレンス基板のスペクトルよりも低い位置に表れると考えられる場合は、レファレンス基板により得られる受光出力の電圧レベルを前記したディジタル変換のためのダイナミックレンジの最大値付近になるように照射光の強度および受光感度の少なくとも一方を調整すれば、測定処理時には、基板からの光の特性を示すスペクトルを飽和させずに取り出すことができる。また測定対象の基板のスペクトルがレファレンス基板のスペクトルよりも高い位置に表れると考えられる場合は、レファレンス基板により得られる受光出力の電圧レベルが前記ダイナミックレンジの最小値付近になるように照射光の強度および受光感度の少なくとも一方を調整することにより、測定処理時に、基板からの光の特性を示すスペクトルをダイナミックレンジ内に確実に入れることができる。
【0014】
さらに測定対象の基板のスペクトルとレファレンス基板のスペクトルとの大小関係が波長によって変動する場合(すなわち各スペクトルの曲線に交わりが生じる場合)であれば、たとえば測定対象の基板の理論上のスペクトルの変動幅をダイナミックレンジの幅に対応させ、前記各スペクトルが交わる位置に対応するダイナミックレンジ内のレベルを特定し、このレベル付近に前記レファレンス基板により得られる受光出力の電圧レベルを設定することにより、測定処理時の基板からの光の特性を示すスペクトルを前記ダイナミックレンジ内に入れることが可能である。
【0015】
なお通常、基板に照射する光の波長分布にはばらつきがあるから、レファレンス基板により得られる受光出力にも、この光源のばらつきが加味される。したがって実際の調整処理においては、前記レファレンス基板と測定対象の基板との間の受光信号の関係に応じて、受光出力の最大レベルまたは最小レベルを用いての調整を行うのが望ましい。
【0016】
つぎにこの発明にかかる膜厚センサは、測定対象の基板に所定の波長域に分布する光を照射するための投光手段と、測定対象の基板からの反射光を分光する分光素子、およびこの分光素子により所定波長単位に分けられた反射光を受光するための複数個の受光素子とを具備する受光手段と、前記受光素子の出力電圧のレベルを調整する調整手段と、前記調整手段による調整が完了した後に、前記投光手段からの光を測定対象の基板に照射した状態下で各受光素子からの出力信号を取り込んで、これら出力信号の特性に基づき前記基板の薄膜の厚みを測定する測定手段とを具備し、さらに前記調整手段が、前記測定対象の基板およびその膜の光学特性に関するデータを入力する手段と、前記入力されたデータに基づき、各受光素子に既知の特性をもつ光を受光させるレファレンス基板についての前記既知の光の特性と、各受光素子が前記測定対象の基板から受光する光の理論上の特性との関係を特定する手段とを具備し、前記レファレンス基板に前記光源からの光を照射した状態下において、前記受光素子の出力信号のレベルが前記レファレンス基板と測定対象の基板との間の光の関係に基づく所定のレベルになるように調整するように構成される。
【0017】
上記構成において、「測定対象の基板およびその膜の光学特性に関するデータ」とは、基板および膜の屈折率や吸収係数などの光学定数を示す数値のほか、この数値を特定可能なデータ(たとえば基板および膜の材質、種類など)であってもよい。
【0018】
調整手段は、この入力データにより、測定対象の基板について得られる理論上のスペクトルがレファレンス基板により得られる既知のスペクトルに対してどのような関係を持つかを特定した上で、その関係に基づき、レファレンス基板について得られる受光出力を調整する。
なおこの調整は、投光手段の出力パワーの調整、受光素子の感度調整(受光素子の駆動タイミングや受光時間の調整を意味する。)、受光出力のゲインの調整の少なくともいずれか、またはこれらの調整方法を組み合わせて実施されるものである。このように複数種の方法を選択または組み合わせることによって、調整方向や調整量に応じて細かい調整を行うことが可能となる。
【0019】
上記の膜厚センサによれば、光学系の調整処理において、オペレータが測定対象の基板およびその膜の光学特性に関するデータを入力した上で、レファレンス基板を測定位置に導入して投光手段より光を照射すると、受光素子の出力信号のレベルが前記測定対象の基板の反射光特性を精度良く抽出できるレベルになるような調整が自動的に行われて、測定処理が可能となる。したがって計測対象の基板が代わっても、簡単かつ迅速に光学系を調整して測定処理に最適な受光出力を得ることができ、調整作業にかかる労力を大幅に軽減し、かつ測定精度を向上することが可能となる。
【0020】
さらに好ましい態様によれば、前記測定手段は、前記受光素子が測定対象の基板から受光した光の特性と、前記受光素子がレファレンス基板から受光する光の既知の特性と、前記レファレンス基板を用いて調整が完了した時点で受光素子がレファレンス基板により受光した光の特性とを用いて、前記投光手段からの光に対し受光素子が測定対象の基板から受光した光の比率を波長毎に算出し、その算出結果を用いて測定対象の基板の膜厚を特定するように構成される。
【0021】
前記したように基板への照射光は、波長によってばらつきが生じていると考えられるから、測定によって受光素子に受光される光からは、照射光の特性による影響を受けたスペクトルが生成されると考えられる。これに対し、受光素子の受光する光についての理論上のスペクトルは、基板に対し波長単位毎に均一な光が照射された場合に受光される光の受光比率(照射光に対する受光素子に入射する光の比率をいう。)を表すものとなる。
上記の測定手段の構成によれば、受光出力の調整が完了した状態下において受光素子が測定対象の基板から受光した照射光の特性を含む光と、同様の条件でレファレンス基板から受光した照射光の特性を含む光と、レファレンス基板より受光する光の理論上の特性とを用いて、基板に均一な光が照射された場合の受光比率が求められるので、たとえば、この算出された受光比率を各種膜厚の基板により得られる受光比率の理論値を示すモデルデータと順に比較したり、算出された受光比率によるスペクトルから極大値または極小値を抽出してその値を所定の演算式にあてはめることにより、測定対象の基板の膜厚を精度良く求めることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の一実施例にかかる膜厚センサの外観を示す。
この膜厚センサは、センサヘッド1とコントローラ2とを光ファイバケーブル3により接続して成る。コントローラ1には、後記する投光部5,受光部6,制御回路7など(いずれも図4に示す。)が組み込まれている。光ファイバケーブル3は、投光用の光ファイバと受光用の光ファイバとがそれぞれ複数本束ねられたもので、所定位置において投光用の光ファイバを集めたケーブル3aと受光用の光ファイバを集めたケーブル3bとに分けられて、コントローラ2に接続される。
【0023】
前記センサヘッド1は、円筒状のケース体内に対物レンズ1a(図4に示す。)などを組み込んで成るもので、測定対象の基板8に対し所定距離だけ上方位置において、レンズ面を基板表面に対向させた状態で設置される。前記投光部5からの光は、光ファイバケーブル3aを介してセンサヘッド1より基板表面に照射され、その照射光に対する基板からの反射光が、センサヘッド1より光ファイバケーブル3bを介して受光部6に導かれる。さらに受光部6からの出力は制御回路7に取り込まれ、前記基板上の薄膜の厚みの測定処理に用いられる。
【0024】
なお、図中の4は、外部機器であるパーソナルコンピュータであって、コントローラ2の制御回路7にケーブル接続される。このパーソナルコンピュータ4は、測定対象の基板8に関する設定データを入力したり、コントローラ2から膜厚の計測結果を受け取って表示する用途で用いられる。
【0025】
図2は、上記膜厚センサの投光部5に使用される光源10の構成を示す。
この光源10には、出力波長の特性が異なる3個のLED11,12,13と、透過特性の異なる2個のダイクロイックミラー14,15と、集光用のレンズ16とが組み込まれる。各LED11〜13には、それぞれ赤色光発光用、白色発光用、青色発光用のLED(以下、「赤色LED11」,「白色LED12」,「青色LED13」という。)が用いられる。
【0026】
赤色LED11は、レンズ16の面に対して所定距離だけ離れた位置に、光軸をレンズ中心に合わせた状態で設置される。この赤色LED11とレンズ16との間には、前記2つのダイクロイックミラー14,15が、それぞれ前記赤色LED11の光軸に対し鏡面を45度傾斜させた状態で所定間隔を隔てて設置される。さらに前記白色,青色の各LED12,13は、それぞれダイクロイックミラー14,15の鏡面に対し45度の角度を持ち、かつ前記赤色LED11の光軸に直交するように光軸を合わせた状態で設置される。
なお光源10には、このほか、各LED11〜13の出力パワーを個別に制御するための駆動回路17,18,19が組み込まれる。
【0027】
この実施例の白色LED12には、LEDチップに蛍光塗料を添加した樹脂モールドを施した光源(例えば日亜化学製のNSPW500)が用いられる。このLED12は、約420〜700nmの波長域に分布し、かつ470nm付近に第1のピークが、560nm付近に第2のピークが出現するような出力波長特性を具備する。また青色LED13には、470nm付近に出力パワーのピークが出現するような出力波長特性を有する光源(例えば日亜化学製のNSPB500)が、赤色LED11には、680nm付近に出力パワーのピークが出現するような出力波長特性を有する光源(例えば松下電器産業製のLN124W)が、それぞれ用いられる。
【0028】
赤色LED11と白色LED12との光軸が交わる位置に設置される第1のダイクロイックミラー14には、600nm以前の光に対する透過率が0に近似し、かつ700nm以降の波長域の光に対する透過率が1に近似する透過特性を具備するものが用いられる。また赤色LED11と青色LED13との光軸が交わる位置に配置される第2のダイクロイックミラー15には、470nm以前の光に対する透過率が0に近似し、かつ520nm以降の波長域の光に対する透過率が1に近似するような透過特性を具備するものが用いられる。
【0029】
図3は、前記ダイクロイックミラー14,15の光の透過特性と、これらダイクロイックミラー14,15と各LED11,12,13からの出射光とによって実現する出力パワーの特性との関係を示す。
赤色LED11から出射した各波長の光のうち600nmより後の波長域の光は、第1,第2の各ダイクロイックミラー14,15を順に通過してレンズ16に導かれる。白色LED12から出射した光については、600nmより前の波長域の光が第1のダイクロイックミラー14で反射することによってレンズ16の方へと進むが、つぎに第2のダイクロイックミラー15により前記470nm付近より前の波長域の光が遮光されるため、前記第1のピークの光が取り除かれ、560nm付近の第2のピークを含む光がレンズ16に導かれる。
【0030】
青色LED13から出射した光については、470nmより前の前記ピークを含む光が第2のダイクロイックミラー15で反射して、レンズ16へと導かれる。なお各ダイクロイックミラー14,15を透過または反射して、レンズ16以外の方向に導かれた光は、図示しない光吸収体により吸収される。
【0031】
よって、赤色LED11からは、680nm付近をピークとして600〜700nmの波長域付近に分布する光が、白色LED12からは、560nm付近をピークとして約500〜600nmの波長域付近に分布する光が、青色LED13からは470nm付近をピークとして約420〜500nmの波長域付近に分布する光が、それぞれ取り出されてレンズ16により集光され、測定処理用の光として出射される。
なおこの実施例では、前記各駆動回路17,18,19により各LED11,12,13の出力パワーを個別に調整することにより、図3に示すように、各LED11,12,13から取り出された3つのピークを等しいレベルに合わせて、広い波長域において安定した出力パワーを確保するようにしている。
【0032】
図4は、前記膜厚センサの具体的な構成である。図中、5は投光部,6は受光部,7は制御回路であって、いずれも前記コントローラ2内に組み込まれる。
投光部5は、前記した構成の光源10により成るもので、約420〜700nmの波長域に分布する光を発光する。この光は光ファイバケーブル3aを介してセンサヘッド1の先端から基板8の表面に照射される。この光は、基板本体8b上の薄膜8aの表面および薄膜8aと基板本体8bとの境界面において反射するもので、その反射光はセンサヘッド1に入射した後に、光ファイバケーブル3bを介して受光部6に導かれる。
【0033】
受光部6は、光学多層膜を用いた分光フィルタ20と、ラインCCD21(複数のCCDを一次元配列したもの)とにより構成される。前記反射光は、分光フィルタ20により波長単位に分光された後、分光された各光がラインCCD21の各CCDに取り込まれて波長単位の反射光の強度が取り出される。
【0034】
制御回路7は、マイクロコンピュータを主体とする制御部22に、A/D変換部23,投光量調整部24,受光感度調整部25,表示制御部26,入出力部27などが接続されて成る。
A/D変換部23は、ラインCCD21の各CCDからの受光出力を抽出してディジタル変換することにより、前記波長単位毎の反射光の強度分布(以下、「反射光スペクトル」という。)を示す受光データを作成する。制御部23はこの受光データを取り込んで、後記する方法による膜厚測定処理を実行する。
【0035】
入出力部27は、前記パーソナルコンピュータ4から、測定対象の基板8の基板本体8bや薄膜8aについて、材質、光学定数などの設定データを取り込んだり、膜厚の測定結果を装置外部に出力するためのものである。表示制御部26は、前記パーソナルコンピュータ4に対し、前記測定結果などの表示用データを与えることにより、ディスプレイ画面上でのデータ表示を行わせる。
【0036】
投光量調整部24は、前記投光部5の各LED11,12,13に対する駆動回路17,18,19を制御して発光パルス間隔を調整することにより、投光部5の出力レベルを調整する。受光感度調整部25は、ラインCCD21のシャッタ時間間隔を制御したり、ラインCCD21とA/D変換部23との間の増幅回路28のゲインを調整することにより、受光感度を調整する。なおこの実施例では、これら調整部24,25を、制御部22の指令に応じて作動させることにより、ラインCCD21からの受光出力のレベルを最適なレベルに設定するための調整処理を自動化するようにしている。(詳細は後記する。)
【0037】
上記構成の膜厚センサでは、測定対象の基板8の種類に応じて前記各調整部24,25によりラインCCD21の出力レベルを自動調整した後、膜厚測定処理を開始する。この測定処理において、制御部22は、薄膜の厚みが所定値に想定されたときの理論上の反射スペクトルを示すデータを所定数の膜厚毎に設定した後、これら理論上の反射スペクトルと前記A/D変換部23から入力された受光データの示す反射スペクトルとを順に比較する方法(カーブフィッティング法)により、薄膜の厚みを特定する。
【0038】
基板上の薄膜の厚みをd,屈折率をnとすると、薄膜に波長λの光が入射したときの入射光に対する干渉光の割合(反射率)Rは、つぎの(1)式で示すことができる。前記理論上の反射スペクトルは、膜厚dを所定単位Δdずつ変化させながら、各膜厚dにつき、それぞれ波長単位毎につぎの(1)式を用いて反射率Rの理論値を求めることにより得られるものである。
R=1−A/{B+C×cos[(4π/λ)×n×d]} ・・・(1)
(A,B,Cは、基板,薄膜の屈折率により求められる定数である。)
【0039】
図5は、前記カーブフィッティング法の原理を示す。
図中、Sは、実測の受光データが示す反射スペクトルである。R1〜R5は膜厚毎に前記(1)式により得られた理論上の反射スペクトル(以下、「理論曲線」という。)であって、膜厚によって光の干渉の度合が変化するという現象を反映してそれぞれ異なる分布形状をとる。
カーブフィッティング法では、実測の受光データについて各理論曲線に対する最小自乗誤差を順に求めることにより、前記受光データに最も近い形状の理論曲線を特定し、その理論曲線に対応する膜厚d(図示例では1000nm)を、測定対象の薄膜の厚みとする。
【0040】
つぎに前記した受光出力の調整処理について詳細を説明する。
既に述べたように、受光データの示す反射スペクトルは、基板本体8bや薄膜8aの反射率や光の吸収率などの光学特性によって変化する。この実施例では、測定処理に先立ち、これらの光学特性が既知であるレファレンス基板を用いてラインCCD21の受光出力を自動調整し、膜厚の測定に最適な環境を設定するようにしている。
【0041】
いまこのレファレンス基板の実測において得られた波長λにおける受光データをS(0,λ)とすると、このS(0,λ)はつぎの(2)式で表すことができる。
S(0,λ)=P0(λ)×R(0,λ)×F ・・・(2)
【0042】
上記(2)式において、R(0,λ)は、前記レファレンス基板の光学特性に基づく理論上の反射率(波長λの入射光に対する反射率)であり、P0(λ)は投光部5における波長λの光の出力パワー、Fは受光部6の受光感度である。この関係は、測定対象の基板についても同様であり、P0(λ)およびFは、最適な受光データを得るためのパラメータとなる。
上記パラメータのうち投光パワーP0(λ)は、投光部5の前記波長λに対応するLEDの発光量を制御することによって調整することができる。また受光感度Fは、前記ラインCCDのシャッタ時間やCCDの受光出力を増幅するためのゲイン設定によって調整することができる。
【0043】
図6は、CCDのシャッタ時間の制御による受光感度の調整により受光出力を調整する方法を示す。図中の(a),(b),(c)は、前記投光部5の各LED11,12,13の発光タイミングであって、それぞれ所定のデューティ比の駆動パルスが設定されている。(d)は初期状態でのCCDの駆動タイミングであって、各LED11,12,13の発光タイミングに同期する時間間隔t毎に蓄積電荷を放出するように設定されている。
【0044】
図6の(e)は、前記(d)のタイミングでCCDを駆動したときの受光出力の電圧レベルである。このように受光出力のレベルが目標とする基準のレベル域に到達していない場合、その下の(f)に示すように、CCDのシャッタ時間を初期状態の所定倍(図示例では3倍)に設定して入射光量を増やすことで対応する。
図6のgは、前記fのタイミングによる受光出力であって、前記基準のレベル域内に到達した受光出力が得られている。
【0045】
なお投光部5の出力パワーの調整は、調整対象のLEDへの駆動パルス幅を変更することによって行われる。例えば駆動パルス幅を初期状態より長くすれば、波長λにおける出力パワーは増大し、その結果、CCDに入射する波長λの反射光のパワーが大きくなるので、受光出力がおのずと高められる。
【0046】
この実施例では、つぎに述べる原理に基づき、前記レファレンス基板により得られた受光出力のピーク値または最小値が所定のレベルになるように、前記ラインCCD21のシャッタ時間やLED11,12,13の駆動パルス幅、前記増幅回路のゲイン28などを調整する。なお投光パワー、CCDのシャッタ時間、出力ゲインのいずれを調整するかは、調整の方向や大きさによって種々選択可能であり、複数の方法を組み合わせて調整が行われる場合もある。
【0047】
ここでこの実施例における調整方法の原理を説明する。
前記レファレンス基板には、通常、測定対象の基板と同一種類の薄膜が形成されていない基板が用いられる。このレファレンス基板については、その基板の光学特性に基づき、あらかじめ各波長単位毎の反射率を求めることができるので、そのデータによって理論上の反射スペクトル(理想曲線)を設定することができる。またレファレンス基板による実測の受光データの示す反射スペクトルは、前記(2)式に示すとおり、理想曲線と同形状になるはずである。
【0048】
さらに測定対象の薄膜の形成された基板についても、その膜厚が所定値であると仮定すれば、薄膜や基板の光学特性を前記(1)式にあてはめることによって理想曲線を設定することができるから、測定対象の基板の理想曲線が前記レファレンス基板の理想曲線に対し、どのような関係にあるかを求めることができる。
【0049】
図7(1)は、SiO2膜が形成されたシリコン基板を測定対象とする場合に、膜のないレファレンス基板の理想曲線R0と、所定の厚みdの膜が形成された基板の理想曲線Rdとの関係を示す。なおこれら理想曲線R0,Rdは、波長単位毎の反射率曲線として表される。
シリコン基板は反射率が高いため、膜の形成された基板では、膜のない状態下よりも反射率が低下するが、基板本体と薄膜との屈折率の差が大きいため、光の干渉の変動の度合が大きくなり、振幅の大きな理論曲線Rdが得られる。なお図示例では、理論曲線Rdの一例として膜厚が500nmの場合の理想曲線を示しているが、他の膜厚の基板についても、レファレンス基板の理想曲線R0に対する位置関係は、図示例と同様である。
【0050】
図7(2)は、ITO膜が形成されたガラス基板を測定対象とする場合に、膜のないレファレンス基板の理論曲線R0と、所定の厚みdの膜が形成された基板の理論曲線Rdとの関係を示す。なお理想曲線Rdとしては、前記図7(1)のシリコン基板と同様に膜厚が500nmの場合の曲線を示している。
ガラス基板は透過性が高いため、膜のない状態下での反射率は、前記シリコン基板に比べ、はるかに小さくなる。膜が形成された基板では、レファレンス基板よりも反射率が高くなるが、基板本体と膜との間の屈折率の差が小さいため、波長単位毎の反射率の変動は、緩やかになる。なおガラス基板においても、膜厚が500nm以外の基板の理想曲線とレファレンス基板の理想曲線R0との関係は、図示例と同様になる。
【0051】
したがってレファレンス基板と測定対象の基板との各理論曲線R0,Rdが前記図7(1)のような関係にある場合には、レファレンス基板により得られる受光出力のレベルをA/D変換のダイナミックレンジの上限値ADmaxに合わせるようにすれば、測定処理時の受光レベルを前記上限値ADmaxから飽和しないレベルに設定することができる。またこの場合、投光パワーや受光感度を下げる方向への調整が行われることによって受光出力の変動幅が強調されるのが抑えられ、測定処理時の受光出力の大きな変動をダイナミックレンジ内に入れ込むことが可能となる。
【0052】
他方、レファレンス基板と測定対象の基板とが前記図7(2)のような関係にあるときは、レファレンス基板により得られる受光出力のレベルをA/D変換のダイナミックレンジの下限値ADminに合わせることにより、測定処理時の受光レベルが、前記下限値ADminより下に落ち込まないようにすることができる。またこの場合、投光パワーや受光感度を上げる方向への調整を行うことによって受光出力の変動幅が強調されるようになり、測定処理時の受光出力の緩やかな変動をダイナミックレンジ内で強調することができる。
【0053】
ところで前記図7(1)(2)に示した各理論曲線R0,Rdは、いずれも波長単位毎に一定の強度の光が与えられたことを前提とするものである。しかしながらこの実施例の膜厚センサでは、前記した構成の光源10により、図8に示すような特性を持つ光を基板に照射しているため、レファレンス基板による受光出力は、前記理論曲線R0に光源10の発光スペクトルの特性を加味した曲線に近い反射スペクトルを示すようになる。このためこの実施例では、レファレンス基板による測定処理において得られた受光出力のうち、図8の3つのピークP1,P2,P3に対応する最大のレベル、または受光出力の最小のレベルを用いた調整を行うようにしている。
【0054】
図9は、前記図7(1)のシリコン基板について受光出力を調整した例を示す。なお、図中の(A)は、前記図7(1)と同様の理論曲線R0,Rdを示したグラフであり、(B)は、調整処理後に計測される受光出力の概略形状を示したグラフである。
【0055】
上記図9(B)において、S0は、レファレンス基板についての調整処理後の受光出力であって、前記図8の投光部5の出力特性を反映した反射スペクトルが表れている。またSdは、左側の理想曲線Rdに対応させて、前記膜厚500nmの基板を測定した場合の受光出力を示す。
【0056】
この例の場合、理論上は、前記理論曲線R0に対応する波長単位の電圧レベルをそれぞれ前記A/D変換の上限値ADmaxに合わせることになるが、処理の上では、レファレンス基板により得られる受光出力のピーク値(前記投光部5からの光の3つのピークP1,P2,P3に対応して出現する。)が理論曲線R0の本来のレベルを表すものとして、これらピークのレベルを上限値ADmaxに合わせるように調整する。このような調整により、測定対象の基板について、図示のように、A/D変換のダイナミックレンジ内に適切な大きさで現れる受光出力Sdを得ることができる。
【0057】
図10は、前記図7(2)のガラス基板について受光出力を調整した例を示す。この場合、理論上は、前記理論曲線R0に対応する波長単位の電圧レベルをそれぞれ前記A/D変換の下限値ADminに合わせることになるが、処理の上では、レファレンス基板により得られる受光出力の最小レベルが理論曲線R0の本来のレベルを表すものとして、この最小レベルを下限値ADminに合わせるような調整が行われる。
このような調整により、測定対象の基板について、図示のように、A/D変換のダイナミックレンジ内に入り、かつ強度の変動の幅が強調された受光出力Sdを得ることができる。
【0058】
なおレファレンス基板は、測定対象の基板と同一材質のものに限らず、光学特性が既知の基板であり、その基板による理論曲線と測定対象の基板における理論曲線との関係が特定できるような基板を、レファレンス基板としてもよい。
図11は、SiO2膜の形成されたシリコン基板を測定対象とする場合に、クロム基板をレファレンス基板として受光出力の調整を行った例を示す。この場合、(A)のグラフに示すように、測定対象の基板の理論曲線Rdはレファレンス基板の理論曲線R0に対し、複数位置で交叉するような関係にある。
【0059】
このような関係が成立する場合、測定対象の基板の実測データをA/D変換のダイナミックレンジに収めるためには、前記レファレンス基板により得た実測の受光レベルを前記上限値ADmaxと下限値ADminとの間の所定位置に設定することになる。
【0060】
図示例では、理論上のデータに基づき、測定対象の基板の理論曲線Rdの変動幅がダイナミックレンジに対応するものと想定し、このダイナミックレンジ内において、前記理論曲線R0とRdとの交点に対応する電圧レベルLに、前記レファレンス基板の受光出力のピークを合わせている。このような調整により、測定対象の基板について、図示のように、前記基準の電圧レベルLより高くなることはあっても、A/D変換の上限値ADmaxを上回ることがなく、また下限値ADminを下回ることのない適正な受光出力Sdを得ることができる。
なお上記方法においては、膜厚dが想定できる最大値をとる場合の理想曲線Rdを用いて基準の電圧レベルLを設定するのが望ましい。
【0061】
図12は、上記膜厚センサによる一連の測定処理の手順を示す。なお各手順のうち、点線の矩形枠の手順(ST1,ST3,ST7)には、オペレータの操作が介在する。
まず最初のST1では、レファレンス基板、測定対象の基板について、屈折率,吸収係数などの光学定数を入力する。(測定対象の基板については、基板本体および薄膜の双方について入力する。)
【0062】
なお、上記のデータ入力は、オペレータが前記パーソナルコンピュータ4を用いて行うものであり、通常は実際の定数を示す数値が手入力される。ただしパーソナルコンピュータ4またはコントローラ2の制御部22に、基板の種類毎の光学定数を記憶したテーブルを設定しておき、ユーザーが基板の種類を指定することにより前記テーブルから対応する数値を呼び出して入力することも可能である。
【0063】
つぎのST2では、前記入力データに基づき、レファレンス基板の理論曲線R0,および測定対象の基板の理論曲線Rdを構成するディジタルデータR(0,λ),R(d,λ)(各波長λ毎の反射率を示すデータ)を作成する。(以下、理論曲線データR(0,λ),R(d,λ)という。)
なお測定対象の基板の理論曲線データR(d,λ)は、膜厚毎に作成され、後の膜厚測定のためにテーブル化されてメモリ内に保存される。
【0064】
つぎのST3で、オペレータが前記レファレンス基板を測定位置に設置し、測定開始操作を行うと、投光部5より光が照射されて計測処理が開始される。受光部6からの受光出力はA/D変換された後に制御部22に取り込まれる。
制御部22は、この計測処理において、理論曲線データR(0,λ),R(d,λ)の関係を前記図9〜11に示した原理にあてはめて、受光データの最大値または最小値が所定のレベルを示すようになるまで、投光量調整部24や受光感度調整部25による調整処理を行う(ST4)。これによりラインCCD21の受光出力のレベルが最適なレベルに調整されると、ST5が「YES」となり、つぎのST6で、この状態下の受光出力を表す受光データS(0,λ)をメモリに記憶し、しかる後に膜厚の測定処理に移行する。
【0065】
まずST7では、オペレータの測定開始操作に応じて測定対象の基板を導入して、投光部5より光を照射する。受光部6からの受光出力はA/D変換された後に制御部22に取り込まれる。
なお、ここで得られた受光出力は、レファレンス基板における受光出力と同様に投光部5の出力特性の影響を受けているので、つぎのST8で、受光出力より得た測定データS(d,λ)を理論曲線R(d、λ)との比較が可能なデータS´(d,λ)に補正する。この補正データS´(d,λ)は、前記レファレンス基板の理想曲線データR(0,λ)と受光データS(0,λ)とを用いて、つぎの(3)式により求められるもので、波長λ毎の計測された反射率を表すデータである。
S´(d,λ)=R(0,λ)・S(d,λ)/S(0,λ) ・・・(3)
【0066】
このようにして実測の反射率S´(d,λ)が求められると、ST9に進み、このS´(d,λ)と前記メモリに記憶した各理想曲線データR(d,λ)との最小自乗誤差を順に求め、その結果に基づき、測定対象の基板における膜厚を特定する。その特定結果は、前記入出力部27や表示制御部26を介して外部に出力される(ST10)。
以下ST7〜10の手順を繰り返すことにより、基板が供給される都度、膜厚の測定処理を行う。最後の基板の処理が終了すると、ST11が「YES」となって、一連の手順を終了する。
【0067】
上記の手順によれば、オペレータは受光出力の調整処理時に、ST1でデータ入力を行い、ST3でレファレンス基板を測定位置に設定して測定開始操作を行うだけで良くなり、その後は膜厚の測定に最適な受光レベルへの調整が自動的に行われる。
なお続けて別の種類の基板を測定する場合は、再度ST1の手順から順に各手順を実行することにより、測定対象の基板に応じた受光出力レベルに調整された後に、測定処理が行われる。
【0068】
最後に、上記実施例においては基板からの反射光を用いて膜厚を測定するようにしているが、基板からの透過光を用いて膜厚を測定する場合についても、同様の方法により膜厚の測定に最適な受光レベルへの調整を行うことが可能である。
【0069】
【発明の効果】
この発明によれば、測定対象の基板およびその膜の光学特性に関するデータに基づき、レファレンス基板に光を照射したときに得られる受光素子の出力電圧レベルが自動的に調整されて、測定対象の基板の膜厚を測定するのに最適な環境が設定されるので、調整作業にかかるオペレータの労力を大幅に軽減することができ、また膜厚を高精度で測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例にかかる膜厚センサの外観を示す図である。
【図2】図1の膜厚センサの投光部に使用される光源の構成を示す図である。
【図3】光源の出力特性とダイクロイックミラーの透過特性との関係を示すグラフである。
【図4】膜厚センサの構成を示す概念図である。
【図5】カーブフィッティング法の原理を説明する図である。
【図6】受光出力の調整方法を説明するためのタイミングチャートである。
【図7】レファレンス基板と測定対象の基板との理想曲線の関係を示すグラフである。
【図8】光源の特性を示す図である。
【図9】理想曲線および受光出力調整後の受光出力の関係を示す図である。
【図10】理想曲線および受光出力調整後の受光出力の関係を示す図である。
【図11】理想曲線および受光出力調整後の受光出力の関係を示す図である。
【図12】受光出力の調整および膜厚測定の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
5 投光部
6 受光部
8 基板
8a 薄膜
20 分光フィルタ
21 ラインCCD
22 制御部
23 A/D変換部
24 投光量調整部
25 受光感度調整部
Claims (7)
- 表面に薄膜が形成された基板に所定の波長域に分布する光を照射するとともに、前記基板からの反射光または透過光を所定波長単位に分光して複数の受光素子により受光し、各受光素子からの出力信号の特性に基づき前記基板の薄膜の厚みを測定する方法において、
各受光素子に既知の特性をもつ光を受光させるレファレンス基板についての前記光の既知の特性と各受光素子が測定対象の基板より受光する光の理論上の特性との関係を、前記測定対象の基板およびその膜の光学特性に基づき特定するステップと、
前記レファレンス基板に前記波長域の光を照射しつつ、この照射光に対する各受光素子の出力信号のレベルがレファレンス基板と測定対象の基板との間の前記光の特性の関係に基づく所定のレベルになるように、前記照射光の強度および受光感度の少なくとも一方を調整するステップとを、前記測定処理に先立ち実行することを特徴とする膜厚測定方法。 - 測定対象の基板に所定の波長域に分布する光を照射するための投光手段と、
測定対象の基板からの反射光または透過光を分光する分光素子と、この分光素子により所定波長単位に分けられた光を受光するための複数個の受光素子とを具備する受光手段と、
前記受光素子の出力信号のレベルを調整する調整手段と、
前記調整手段による調整が完了した後に、前記投光手段からの光を測定対象の基板に照射した状態下で各受光素子の出力信号を取り込んで、これら出力信号の特性に基づき前記基板の薄膜の厚みを測定する測定手段とを具備する膜厚センサにおいて、
前記調整手段は、
前記測定対象の基板およびその膜の光学特性に関するデータを入力する手段と、前記入力されたデータに基づき、各受光素子に既知の特性をもつ光を受光させるレファレンス基板についての前記光の既知の特性と各受光素子が前記測定対象の基板から受光する光の理論上の特性との関係を特定する手段とを具備し、前記レファレンス基板に前記光源からの光を照射した状態下において、前記受光素子の出力信号のレベルが前記レファレンス基板と測定対象の基板との間の前記光の特性の関係に基づく所定のレベルになるように調整することを特徴とする膜厚センサ。 - 前記調整手段は、投光手段の出力パワーの調整、受光素子の感度調整、受光出力のゲイン調整のうちの少なくともいずれかを用いて前記受光素子の出力レベルを調整する請求項2に記載された膜厚センサ。
- 前記調整手段は、前記光の特性の関係として、前記測定対象の基板に対する光の理論上の反射率がレファレンス基板に対する光の既知の反射率よりも低いという関係を特定したとき、前記レファレンス基板に光を照射した状態下での受光素子の出力信号の最大レベルが測定のためのダイナミックレンジの上限値付近に対応するように調整する請求項2に記載された膜厚センサ。
- 前記調整手段は、前記光の特性の関係として、前記測定対象の基板に対する光の理論上の反射率がレファレンス基板に対する光の既知の反射率よりも高いという関係を特定したとき、前記レファレンス基板に光を照射した状態下での受光素子の出力信号の最小レベルが測定のためのダイナミックレンジの下限値付近に対応するように調整する請求項2に記載された膜厚センサ。
- 前記調整手段は、前記光の特性の関係として、前記測定対象の基板に対する光の理論上の反射率とレファレンス基板に対する光の既知の反射率との大小関係が波長によって変動するという関係を特定したとき、前記レファレンス基板に光を照射した状態下での受光素子の出力信号の最大レベルが測定のためのダイナミックレンジ内の所定位置に対応するように調整する請求項2に記載された膜厚センサ。
- 前記測定手段は、前記受光素子が測定対象の基板から受光した光の特性と、前記受光素子がレファレンス基板から受光する光の既知の特性と、前記レファレンス基板を用いて調整が完了した時点で受光素子がレファレンス基板により受光した光の特性とを用いて、前記投光手段からの光に対し受光素子が測定対象の基板から受光した光の比率を波長毎に算出し、その算出結果を用いて測定対象の基板の膜厚を特定する請求項2に記載された膜厚センサ。
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