JP3851536B2 - 平版印刷版の製版方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、平版印刷版の製版方法に関するものである。より詳しくは、印刷汚れがなく、かつ耐刷性の優れた印刷版の作製が可能であり、また現像液の安全性、現像特性に対する経時的安定性および廃液が環境へおよぼす影響を改善する平版印刷版の製版方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より広く用いられているネガ型感光性平版印刷版は、親水処理されたアルミニウム板上にジアゾ樹脂が設けられたものであったので、現像液には有機溶剤を使用せざるを得ず、現像廃液の処理やその環境への影響が懸念されている。またポジ型感光性平版印刷版の感光層には、オルソキノンジアジド化合物がノボラック樹脂と併用されており、現像液にはノボラック樹脂を溶解可能なアルカリ性の珪酸塩水溶液が用いられている。しかし、ノボラック樹脂を溶解可能なpHは13程度で、このような高pH現像液は、皮膚や粘膜に付着した場合の刺激性が強く、取り扱いには十分な注意を必要とした。
【0003】
一方、従来より、アルミニウム板支持体上に光重合型感光性平版印刷版の感光層を有する平版印刷版の現像液としては、アルカリ金属の珪酸塩、燐酸塩、炭酸塩、水酸化物等、および有機アミン化合物等の水溶液が提案されている。
例えば、特開平8−248643号公報では12以上の高pHで珪酸アルカリ塩と両性界面活性剤を含む現像液が、特開平11−65129号公報ではSiO2/M2O(Mはアルカリ金属)が規定されたpH12以下の珪酸アルカリ珪酸塩を含む現像液が開示されている。前者は取り扱い上の問題の他に、画像部が現像液の高pHのため現像によりダメージを受けやすい等、後者は使用中の僅かな現像液のpH低下により、珪酸塩がゲル化、不溶化してしまう問題があった。
【0004】
珪酸アルカリ塩を用いない現像液としては、特開昭61−109052号公報に、アルカリ試薬、錯化剤、アニオン界面活性剤、乳化剤、n−アルカン酸等からなる現像液、西ドイツ特許第1984605号にアルカリ剤、錯化剤、アニオン界面活性剤、アミルアルコール、N−アルコキシアミン類を含んだ現像液が開示されているが、高pHまたは有機溶剤含有のため、画像部のダメージが大きく、十分な、耐刷等の印刷性能を得るのに問題があった。
【0005】
比較的低pH(pH12以下)で珪酸アルカリを含まない現像液としては、特開2000−81711号公報にアニオン界面活性剤を含む水酸化カリウム水溶液、特開平11−65126号公報にpH8.5〜11.5のアルカリ金属の炭酸塩水溶液が開示されている。
このような比較的低pHでの現像の問題としては、基本的に光重合型感光層の溶解力が乏しいため、例えば、経時した版材で、十分に現像が進まないため残膜が生じる等の問題があった。これらの問題を解決するためには、版材感光層中の高分子結合剤の酸価を高くして現像性を稼ぐ、または酸基を有するモノマーの併用等の工夫が必要であり、この様な高酸価バインダーを使用した場合には、印刷の途中でインキが着かなくなる問題(ブラインディング)等、印刷上の問題が発生しやすかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、上記従来における諸問題を解決することであり、すなわち、環境、安全上好ましい比較的低pHのアルカリ現像液を用い、安定的に、非画像部は良好な現像性を有し、印刷での汚れがなく、かつ画像部に対して現像でのダメージが少なく強固な画像強度が得られ、さらに詳しくは、安定的に高い耐刷性を実現可能な平版印刷版の製版方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の目的を達成すべく、鋭意研究した結果、アルカリ水溶液に、特定の構造のノニオン系界面活性剤を含有し、珪酸塩を含有しない現像液を用いることにより、光重合型感光層の未露光部の溶解速度が上がり、逆に露光部の光重合による架橋した部分は現像液の浸透が抑制されることを見出した。
また感光層成分のモノマー成分が、ウレタンアクリレートやN−置換アクリルアミドのような、分子中に窒素原子およびエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の場合、特に、上記効果が著しく、耐刷性が極めて高い平版印刷版になることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)アルミニウム支持体上に、窒素原子およびエチレン性不飽和二重結合を有する化合物と、光重合開始剤と、高分子結合剤とを含有する光重合型感光性組成物からなる感光層を有する感光性平版印刷版を、画像露光した後、1)無機のアルカリ剤と、2)ポリオキシアルキレンエーテル基を有するノニオン系界面活性剤とを含有し、3)珪酸塩を含有しない現像液で現像することを特徴とする平版印刷版の製版方法。
(2)上記現像液のpHが10.0〜12.5であることを特徴とする(1)記載の平版印刷版の製版方法。
(3)上記高分子結合剤が、ウレタン樹脂であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の平版印刷版の製版方法。
【0008】
本発明の平版印刷版の製版方法によれば、現像液の経時や繰り返しの使用による現像特性の低下が抑えられると共に、非画像部に対し良好な現像性を有し印刷での汚れがなく、かつ画像部に対して現像でのダメージが少なく強固な画像強度が得られる。
さらに、本発明の平版印刷版の製版方法により、印刷汚れがなく、かつ耐刷性の優れた印刷版の作製が可能であり、また現像液のpHが比較的低いため、安全上好ましく、現像液の廃液が環境へおよぼす影響を改善することが可能である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明の平版印刷版の製版方法について詳細に説明する。
先ず、本発明の平版印刷版の製版方法の特徴であり、本発明の製版方法に用いられるに新規な現像液について説明する。
本発明の現像液は少なくとも(1)無機のアルカリ剤と、(2)ポリオキシアルキレンエーテル基を有するノニオン系界面活性剤とを含有するアルカリ水溶液である。
【0010】
本発明の(1)無機のアルカリ剤としては、例えば、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、硼酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、および同リチウムなどが挙げられる。
またアルカリ濃度の微少な調整、感光層の溶解性の補助の目的で、補足的に有機アルカリ剤を併用してもよい。有機アルカリ剤としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどを挙げることができる。
【0011】
これらのアルカリ剤は単独もしくは2種以上を組み合わせて用いられる。
アルカリ剤の量としては、現像液のpHが9〜13.5の範囲、導電率が2〜40mS/cmの範囲になるように使用され、好ましい範囲としてはpH10.0〜12.5、導電率3〜30mS/cmの範囲、更に好ましくは5〜20mS/cmの範囲である。
現像液のpHが前記範囲を下回ると、画像形成ができなくなり、上回ると過現像になったり、露光部の現像でのダメージが強くなる。
導電率が前記範囲を下回ると、通常、アルミニウム板支持体表面の感光性組成物の溶出が困難となり、印刷で汚れをともなってしまう。また前期範囲を上回ると、塩濃度が高いため、感光層の溶出速度が極端に遅くなり、未露光部に残膜が生じる。
【0012】
また本発明の現像液には、(2)ポリオキシアルキレンエーテル基を有するノニオン界面活性剤を含有することが必須であり、この界面活性剤添加により、未露光部の感光層の溶解促進、露光部への現像液の浸透性の低減が可能となった。ポリオキシアルキレンエーテル基を含有する界面活性剤としては、下記一般式(I)の構造を有する物が好適に使用される。
【0013】
R1−O−(R2−O)nH (I)
【0014】
(I)式中、R1は置換基を有しても良い炭素数3〜15のアルキル基、置換基を有しても良い炭素数6〜15の芳香族炭化水素基、または置換基を有しても良い炭素数4〜15の複素芳香族環基(該置換基としては炭素数1〜20のアルキル基、Br、Cl、I等のハロゲン原子、炭素数6〜15の芳香族炭化水素基、炭素数7〜17のアラルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシ−カルボニル基、炭素数2〜15のアシル基が挙げられる。)を示し、R2は置換基を有しても良い炭素数1〜100のアルキレン基(該置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15の芳香族炭化水素基が挙げられる)を示し、nは1〜100の整数を表す。
【0015】
また(I)式の(R2−O)nの部分は、上記範囲であれば、2種、または3種の基であっても良い。具体的にはエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基、エチレンオキシ基とイソプロピレンオキシ基、エチレンオキシ基とブチレンオキシ基、エチレンオキシ基とイソブチレンオキシ基等の組み合わせのランダムまたはブロック状に連なったものが挙げられる。
本発明において、ポリオキシアルキレンエーテル基を有する界面活性剤は、単独または複合系で使用され、現像液中、1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%添加することが効果的である。
添加量が少ないと現像性の低下が、逆に多すぎると現像のダメージが強くなり、印刷版の耐刷性を低下させてしまう。
【0016】
またさらに以下に記す、その他の界面活性剤を加えてもよい。
その他の界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレンステアレート等のポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等のソルビタンアルキルエステル類、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレート等のモノグリセリドアルキルエステル類等のノニオン界面活性剤:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ペンチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ヘキシルナフタレンスルホン酸ナトリウム、オクチルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩類、ドデシルスルホン酸ソーダ等のアルキルスルホン酸塩類、ジラウリルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸エステル塩類等のアニオン界面活性剤:ラウリルベタイン、ステアリルベタイン等のアルキルベタイン類、アミノ酸類等の両性界面活性剤が使用可能であるが、特に好ましいのはアルキルナフタレンスルホン酸塩類等のアニオン界面活性剤である。
これら界面活性剤は単独、もしくは組み合わせて使用することが出来る。また、これら界面活性剤の現像液中における含有量は有効成分換算(固形分換算)で0.1〜20重量%が好ましい。
【0017】
本発明の現像液には上記の成分の他に、必要に応じて以下の様な成分を併用することができる。例えば安息香酸、フタル酸、p−エチル安息香酸、p−n−プロピル安息香酸、p−イソプロピル安息香酸、p−n−ブチル安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、p−2−ヒドロキシエチル安息香酸、デカン酸、サリチル酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等の有機カルボン酸;イソプロピルアルコール、ヘンジルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、プロピレングリコール、ジアセトンアルコール等の有機溶剤;この他、キレート剤、還元剤、染料、顔料、硬水軟化剤、防腐剤、消泡剤等が挙げられる。
【0018】
次に、本発明に用いる感光性平版印刷版について説明する。
本発明に用いる感光性平版印刷版の感光層を構成する光重合型感光性組成物は、窒素原子およびエチレン性不飽和二重結合を有する化合物、光重合開始剤(以下単に、光開始剤ともいう)、高分子結合剤を必須成分とし、必要に応じ、着色剤、可塑剤、熱重合禁止剤等の種々の化合物を併用することができる。
【0019】
エチレン性不飽和化合物とは、光重合型感光性組成物が活性光線の照射を受けた時、光重合開始剤の作用により付加重合し、架橋、硬化するようなエチレン性不飽和結合を有する化合物であり、本発明では分子中に窒素原子を有するものが使用される。
付加重合可能なエチレン性二重結合を含む化合物は、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物の中から任意に選択することができる。
例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはこれらの混合物ならびにこれらの共重合体などの化学的形態をもつものである。
【0020】
窒素原子を有するエチレン性不飽和化合物としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)のアミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基や、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類との付加反応物も好適に使用される。また、イソシアナート基を有する、不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する単官能もしくは多官能のアミン類との置換反応物も好適である。また上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0021】
特に好ましい少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物は、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物である。
【0022】
そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(2)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH2=C(R)COOCH2CH(R')OH (2)
(ただし、RおよびR'はHあるいはCH3を示す。)
【0023】
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタン(メタ)アクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類を挙げることでき、特に好ましい具体例としては次のような化合物を挙げることできる。(1)群のポリイソシアネート化合物と(2)群のアルコール化合物との反応生成物である。
【0024】
【化1】
【0025】
【化2】
【0026】
【化3】
【0027】
【化4】
【0028】
【化5】
【0029】
更に具体的には、次の化合物がそれらに相当する。東亜合成(株)社製ウレタンアクリレートM−1100,M−1200,M−1210,M−1300、ダイセル・ユーシービー(株)社製ウレタンアクリレートEB210、EB4827、EB6700、EB220、MORTON THIOKOL Inc製UVITHANE−782,UVITHANE−783,UVITHANE−788,UVITHANE−893,根上工業(株)社製アートレジンUN−9000EP、アートレジンUN−9200A、アートレジンUN−900H、アートレジンUN−1255、アートレジンUN−5000、アートレジンUN−2111A、アートレジンUN−2500、アートレジンUN−3320HA、アートレジンUN−3320HB、アートレジンUN−3320HC、アートレジンUN−3320HS、アートレジンUN−6060P、アートレジンUN−6060PTM、アートレジンSH−380G、アートレジンSH−500、アートレジンSH−9832、新中村化学(株)社製NKオリゴU−4H、NKオリゴU−4HA、NKオリゴU−4P、NKオリゴU−4PA、NKオリゴU−4TX、NXオリゴU−4TXA、NEオリゴU−6LHA、NKオリゴU−6LPA−N、NKオリゴU−6LTXA、NKオリゴUA−6ELP、NKオリゴUA−6ELH、NKオリゴUA−6ELTX、NKオリゴUA−6PLP、NKオリゴU−6ELP、NKオリゴU−6ELH、NKオリゴU−8MDA、NKオリゴU−8MD、NKオリゴU−12LMA、NKオリゴU−12LM、NKオリゴU−6HA、NKオリゴU−108A、NKオリゴU−1084A、NKオリゴU−200AX、NKオリゴU−122A、NKオリゴU−340A、NKオリゴU−324A、NKオリゴUA−100、共栄社化学(株)社製AH−600、AT−600、UA−306H、AI−600、UA−101T、UA−101I、UA−101H、UA−306T、UA−306I、UF−8001、UF−8003等を挙げることができる。
【0030】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0031】
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726号記載のシクロヘキシレン構造を有すものを挙げることができる。
【0032】
本発明に使用される窒素原子を含有するエチレン性不飽和化合物としては西ドイツ特許A2064079号、同2361041号および同2822190号等に記載されているモノイソシアネートまたはジイソシアネートと多価アルコールの部分エステルの反応生成物も有利に使用される。
また分子構造の中に、複素環の構成員となってもよいチオ基、ウレイド基、アミノ基、ウレタン基,具体的にはトリエタノールアミノ基、トリフェニルアミノ基、チオウレア基、イミダゾール基、オキサゾール基、チアゾール基、N−フェニルグリシンおよびアスコルビン酸基等の光酸化性基を含有する不飽和化合物も好適に使用される。この種な化合物の例としては、欧州特許A−287818号、同353389号、および同384,735号各明細書に記載されている。そこに記載されている化合物の中で好ましいものは、第3アミノ基、ウレイド基、ウレタン基を含むものである。
これらの窒素原子を含む不飽和化合物は単独または複合して使用することが可能であり、また後述の多価アルコールと不飽和カルボン酸とのエステルのモノマー等、公知の不飽和化合物を混用してもかまわない。
【0033】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0034】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタアクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0035】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラクロトネート等がある。
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
【0036】
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートをあげることができる。さらに日本接着協会誌Vol.20、No.7、300〜308ぺージ(1984年)に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
なお、これらエチレン性不飽和化合物の使用量は、感光層全成分の5〜80重量%、好ましくは30〜70重量%の範囲で使用される。
【0037】
また本発明の感光性平版印刷版の感光層に含有させる光重合開始剤としては、使用する光源の波長により、特許、文献等で公知である種々の光開始剤、あるいは2種以上の光開始剤の併用系(光開始系)を適宜選択して用いることができる。以下に具体例を列挙するがこれらに制限されるものではない。
400nm以上の可視光線、Arレーザー、半導体レーザーの第2高調波、SHG−YAGレーザーを光源とする場合にも、種々の光開始系が提案されており、例えば、米国特許第2,850,445号に記載のある種の光還元性染料、例えばローズベンガル、エオシン、エリスロシンなど、あるいは、染料と開始剤との組み合わせによる系、例えば、染料とアミンの複合開始系(特公昭44−20189号)、ヘキサアリールビイミダゾールとラジカル発生剤と染料との併用系(特公昭45−37377号)、ヘキサアリールビイミダゾールとp−ジアルキルアミノベンジリデンケトンの系(特公昭47−2528号、特開昭54−155292号)、環状シス−α−ジカルボニル化合物と染料の系(特開昭48−84183号)、環状トリアジンとメロシアニン色素の系(特開昭54−151024号)、3−ケトクマリンと活性剤の系(特開昭52−112681号、特開昭58−15503号)、ビイミダゾール、スチレン誘導体、チオールの系(特開昭59−140203号)、有機過酸化物と色素の系(特開昭59−1504号、特開昭59−140203号、特開昭59−189340号、特開昭62−174203号、特公昭62−1641号、米国特許第4766055号)、染料と活性ハロゲン化合物の系(特開昭63−258903号、特開平2−63054号など)染料とボレート化合物の系(特開昭62−143044号、特開昭62−150242号、特開昭64−13140号、特開昭64−13141号、特開昭64−13142号、特開昭64−13143号、特開昭64−13144号、特開昭64−17048号、特開平1−229003号、特開平1−298348号、特開平1−138204号など)ローダニン環を有する色素とラジカル発生剤の系(特開平2−179643号、特開平2−244050号)、チタノセンと3−ケトクマリン色素の系(特開昭63−221110号)、チタノセンとキサンテン色素さらにアミノ基あるいはウレタン基を含む付加重合可能なエチレン性不飽和化合物を組み合わせた系(特開平4−221958号、特開平4−219756号)、チタノセンと特定のメロシアニン色素の系(特開平6−295061号)、チタノセンとベンゾピラン環を有する色素の系(特開平8−334897号)等をあげることができる。
【0038】
また、最近400〜410nmの波長のレーザー(バイオレットレーザー)が開発され、それに感応する450nm以下の波長に高感度を示す光開始系が開発されており、これらの光開始系も使用される。
例えば、カチオン色素/ボレート系(特開平11−84647)、メロシアニン色素/チタノセン系(特開2000−147763)、カルバゾール型色素/チタノセン系(特願平11−221480)等を挙げることができる。
本発明においては特にチタノセン化合物を用いた系が、感度の点で優れており好ましい。
【0039】
チタノセン化合物としては、種々のものを用いることができるが、例えば、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号各公報に記載されている各種チタノセン化合物から適宜選んで用いることができる。さらに具体的には、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)−フェニ−1−イル等を挙げることができる。
更に上記光開始剤に必要に応じ、2−メルカプトベンズチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール等のチオール化合物、N−フェニルグリシン、N,N−ジアルキルアミノ芳香族アルキルエステル等のアミン化合物等の水素供与性化合物を加えることにより更に光開始能力が高められることが知られている。
これらの光重合開始剤(系)の使用量はエチレン性不飽和化合物100重量部に対し、0.05〜100重量部、好ましくは0.1〜70重量部、更に好ましくは0.2〜50重量部の範囲で用いられる。
【0040】
本発明の感光性平版印刷版の感光層に用いられる高分子結合剤としては、該組成物の皮膜形成剤としてだけでなく、アルカリ現像液に溶解する必要があるため、アルカリ水に可溶性または膨潤性である有機高分子重合体が使用される。
この様な有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸基を有する付加重合体、例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号に記載されているもの、すなわち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等がある。
【0041】
また同様に側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体がある。この外に水酸基を有する付加重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。特にこれらの中で〔ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体及び〔アリル(メタ)アクリレート(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体が好適である。この他に水溶性有機高分子として、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また硬化皮膜の強度を上げるためにアルコール可溶性ポリアミドや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。
また特公平7−120040号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号、特開平11−352691に記載のポリウレタン樹脂も本発明の用途には有用である。
【0042】
これら高分子重合体は側鎖にラジカル反応性基を導入することにより硬化皮膜の強度を向上させることができる。付加重合反応し得る官能基としてエチレン性不飽和結合基、アミノ基、エポキシ基等が、又光照射によりラジカルになり得る官能基としてはメルカプト基、チオール基、ハロゲン原子、トリアジン構造、オニウム塩構造等が、又極性基としてカルボキシル基、イミド基等が挙げられる。上記付加重合反応し得る官能基としては、アクリル基、メタクリル基、アリル基、スチリル基などエチレン性不飽和結合基が特に好ましいが、又アミノ基、ヒドロキシ基、ホスホン酸基、燐酸基、カルバモイル基、イソシアネート基、ウレイド基、ウレイレン基、スルフォン酸基、アンモニオ基から選ばれる官能基も有用である。
【0043】
組成物の現像性を維持するためには、本発明の高分子結合剤は適当な分子量、酸価を有することが好ましく、重量平均分子量で5000〜30万、酸価20〜200の高分子重合体が有効に使用される。
これらの有機高分子重合体は全組成中に任意な量を混和させることができる。しかし90重量%を超える場合には形成される画像強度等の点で好ましい結果を与えない。好ましくは10〜90%、より好ましくは30〜80%である。また光重合可能なエチレン性不飽和化合物と有機高分子重合体は、重量比で1/9〜9/1の範囲とするのが好ましい。より好ましい範囲は2/8〜8/2てあり、更に好ましくは3/7〜7/3である。
【0044】
また、本発明においては以上の基本成分の他に感光性組成物の製造中あるいは保存中において重合可能なエチレン性不飽和化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合禁止剤としてはハロイドキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン第一セリウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等があげられる。熱重合禁止剤の添加量は、感光層の固形分に対して約0.01%〜約5%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感光層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、感光層の固形分に対して約0.5%〜約10%が好ましい。
【0045】
更に感光層の着色を目的として、着色剤を添加してもよい。着色剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料(C.I.Pigment Blue 15:3、15:4、15:6など)、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料がある。染料および顔料の添加量は全組成物の約0.5%〜約20%が好ましい。
加えて、硬化皮膜の物性を改良するために、無機充填剤やジオクチルフタレート、ジメチルフタレート、トリクレジルホスフェート等の可塑剤等の添加剤を加えてもよい。
これらの添加量は全組成物の10%以下が好ましい。
【0046】
本発明の感光性平版印刷版の感光層組成物を後述の支持体上に塗布する際には種々の有機溶剤に溶かして使用に供される。ここで使用する溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート−3−メトキシプロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどがある。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。そして、塗布溶液中の固形分の濃度は1〜50重量%が適当である。
【0047】
本発明の感光性平版印刷版の感光層における光重合性組成物には、塗布面質を向上するために界面活性剤を添加することができる。
感光層の被覆量は乾燥後の重量で約0.1g/m2〜約10g/m2の範囲が適当である。より好ましくは0.3〜5g/m2である。更に好ましくは0.5〜3g/m2である。
【0048】
また、通常、前記感光層の上には、酸素の重合禁止作用を防止するために酸素遮断性の保護層(オーバーコート層)が設けられる。
酸素遮断性保護層に含まれる水溶性ビニル重合体としては、ポリビニルアルコール、およびその部分エステル、エーテル、およびアセタール、またはそれらに必要な水溶性を有せしめるような実質的量の未置換ビニルアルコール単位を含有する共重合体(ポリビニルアセタール)があげられる。ポリビニルアルコールとしては、鹸化度が71〜100モル%であり、重合度が300〜2400の範囲のものがあげられる。具体的には株式会社クラレ製PVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等があげられる。上記の共重合体としては、鹸化度が88〜100モル%の範囲であるポリビニルアセテートクロロアセテートまたはプロピオネート、ポリビニルホルマールおよびポリビニルアセタールおよびそれらの共重合体があげられる。その他有用な重合体としてはポリビニルピロリドン、ゼラチンおよびアラビアゴムがあげられ、これらは単独または、併用して用いても良い。
【0049】
本発明の感光性平版印刷版において酸素遮断性保護層を塗布する際用いる溶媒としては、純水が好ましいが、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類を純水と混合しても良い。そして塗布溶液中の固形分の濃度は1〜20重量%が適当である。
本発明の上記酸素遮断性保護層にはさらに塗布性を向上させるための界面活性剤、皮膜の物性を改良するための水溶性の可塑剤等の公知の添加剤を加えても良い。
水溶性の可塑剤としてはたとえばプロピオンアミド、シクロヘキサンジオール、グリセリン、ソルビトール等がある。また、水溶性の(メタ)アクリル系ポリマーなどを添加しても良い。
その被服量は乾燥後の重量で約0.1g/m2〜約15g/m2の範囲が適当である。より好ましくは1.0g/m2〜約5.0g/m2である。
【0050】
次に、本発明の感光性平版印刷版の支持体について説明する。
本発明にて用いられるアルミニウム支持体は、寸度的に安定なアルミニウムまたはその合金(例えば珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケルとの合金)、またはアルミニウム、アルミニウム合金がラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムまたは紙を意味し、通常その厚さは0.05mm〜1mm程度である。また特開昭48−18327号に記載の複合シートも使用することができる。
【0051】
本発明のアルミ支持体は適宜、後述の基板表面処理が施される。
(砂目立て処理)
砂目立て処理方法は、特開昭56−28893号に開示されているような機械的砂目立て、化学的エッチング、電解グレインなどがある。さらに塩酸または硝酸電解液中で電気化学的に砂目立てする電気化学的砂目立て方法、及びアルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立てするボールグレイン法、ナイロンブラシと研磨剤で表面を砂目立てするブラシグレイン法のような機械的砂目立て法を用いることができ、上記砂目立て方法を単独あるいは組み合わせて用いることもできる。
その中でも本発明に有用に使用される表面粗さを作る方法は、塩酸または硝酸電解液中で化学的に砂目たてする電気化学的方法であり、適する電流密度は100C/dm2〜400C/dm2の範囲である。さらに具体的には、0.1〜50%の塩酸または硝酸を含む電解液中、温度20〜100℃、時間1秒〜30分、電流密度100C/dm2〜400C/dm2の条件で電解を行うことが好ましい。
【0052】
このように砂目立て処理したアルミニウム支持体は、酸またはアルカリにより化学的にエッチングされる。酸をエッチング剤として用いる場合は、微細構造を破壊するのに時間がかかり、工業的に本発明を適用するに際しては不利であるが、アルカリをエッチング剤として用いることにより改善できる。
本発明において好適に用いられるアルカリ剤は、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、リン酸ソーダ、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を用い、濃度と温度の好ましい範囲はそれぞれ1〜50%、20〜100℃であり、Alの溶解量が5〜20g/m3となるような条件が好ましい。
エッチングのあと表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗いが行われる。用いられる酸は硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ酸、ホウフッ化水素酸等が用いられる。特に電気化学的粗面化処理後のスマット除去処理方法としては、好ましくは特開昭53−12739号公報に記載されているような50〜90℃の温度の15〜65重量%の硫酸と接触させる方法及び特公昭48−28123号公報に記載されているアルカリエッチングする方法が挙げられる。
なお、本発明で有効に用いられるAl支持体の表面粗さ(Ra)は0.3〜0.7μmである。
【0053】
(陽極酸化処理)
以上のようにして処理されたアルミニウム支持体は、さらに陽極酸化処理が施される。
陽極酸化処理はこの分野で従来より行われている方法で行うことができる。具体的には、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルフォン酸等あるいはこれらの二種以上を組み合わせて水溶液または非水溶液中でアルミニウムに直流または交流を流すとアルミニウム支持体表面に陽極酸化皮膜を形成することができる。
陽極酸化処理の条件は使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液の濃度が1〜80%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60アンペア/dm2、電圧1〜100V、電解時間10〜100秒の範囲が適当である。
【0054】
これらの陽極酸化処理のうちでも特に英国特許第1,412,768号明細書に記載されている、硫酸中で高電流密度で陽極酸化する方法及び米国特許第3,511,661号明細書に記載されているリン酸を電解浴として陽極酸化する方法が好ましい。
本発明においては、陽極酸化皮膜は1〜10g/m2であることが好ましく、1g/m2以下であると版に傷が入りやすく、10g/m2以上は製造に多大な電力が必要となり、経済的に不利である。好ましくは、1.5〜7g/m2である。更に好ましくは、2〜5g/m2である。
【0055】
更に、本発明においては、砂目立て処理及び陽極酸化後、アルミニウム支持体に封孔処理を施してもかまわない。かかる封孔処理は、熱水又は無機塩または有機塩を含む熱水溶液への基板の浸漬ならびに水蒸気浴などによって行われる。また本発明のアルミニウム支持体にはアルカリ金属珪酸塩によるシリケート処理又はシリケート処理以外の処理、たとえば弗化ジルコニウム酸カリウム、燐酸塩等の水溶液への浸漬処理などの表面処理がなされてもかまわない。
【0056】
上記の如く表面処理を施されたアルミニウム支持体上に、前記の光重合性組成物からなる感光層を形成することで、本発明の感光性平版印刷版を作製するが、感光層を塗設する前に必要に応じて有機または無機の下塗り層が設けられてもかまわない。
【0057】
本発明の感光性平版印刷版における前記感光層を、例えば、カーボンアーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、タングステンランプ、ハロゲンランプ、ヘリウムカドミニウムレーザー、アルゴンイオンレーザー、FD・YAGレーザー、ヘリウムネオンレーザー、半導体レーザー(350nm〜600nm)等の従来公知の活性光線で画像露光した後、現像処理することにより、アルミニウム板支持体表面に画像を形成することができる。
画像露光後、現像までの間に、光重合型感光層の硬化率を高める目的で50℃〜150℃の温度で1秒、5分の時間の加熱プロセスを設けることを行っても良い。
【0058】
また、本発明の感光性平版印刷版の感光層の上には、前述したように、通常、酸素遮断性を有するオーバーコート層が設けてあり、本発明の現像液を用いて、オーバーコート層の除去と感光層未露光部の除去を同時に行う方法、または、水、温水でオーバーコート層を先に除外し、その後未露光部の感光層を現像で除去する方法が知られている。これらの水または温水には特開平10−10754号に記載の防腐剤等、特開平8−278636号記載の有機溶剤等を含有させることができる。
【0059】
本発明における感光性平版印刷版の前記現像液による現像は、常法に従って、0〜60℃、好ましくは15〜40℃程度の温度で、例えば、露光処理した感光性平版印刷版を現像液に浸漬してブラシで擦る等により行う。
さらに自動現像機を用いて現像処理を行う場合、処理量に応じて現像液が疲労してくるので、補充液または新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させても良い。
このようにして現像処理された感光性平版印刷版は特開昭54−8002号、同55−115045号、同59−58431号等の各公報に記載されているように、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体等を含む不感脂化液で後処理される。本発明の感光性平版印刷版の後処理にはこれらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
上記の様な処理により得られた印刷版は特開2000−89478号に記載の方法による後露光処理やバーニングなどの加熱処理により、耐刷性を向上させることができる。
このような処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0060】
【実施例】
以下に本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、勿論本発明の範囲はこれらによって限定されるものではない。
〔実施例1〕
厚さ0.30mmの材質1Sのアルミニウム板を8号ナイロンブラシと800メッシュのパミストンの水懸濁液を用い、その表面を砂目立てした後、よく水で洗浄した。10%水酸化ナトリウムに70℃で60秒間浸漬してエッチングした後、流水で水洗後、20%HNO3で中和洗浄、水洗した。これをVA=12.7Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて1%硝酸水溶液中で300クーロン/dm2の陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。その表面粗さを測定したところ0.45μm(Ra表示)であった。ひきつづいて30%のH2SO4水溶液中に浸漬し、55℃で2分間デスマットした後、33℃、20%H2SO4水溶液中で、砂目立てした面に陰極を配置して、電流密度5A/dm2において50秒間陽極酸化したところ厚さが2.7g/m2であった。
このように処理されたアルミニウム板上に、下記組成の高感度光重合性組成物1を乾燥塗布重量が1.5g/m2となるように塗布し、100℃で1分間乾燥させ、感光層を形成した。
【0061】
(光重合性組成物1)
エチレン性不飽和結合含有化合物(A1) 1.5重量部
線状有機高分子重合体(B1) 2.0重量部
増感剤(C1) 0.15重量部
光開始剤(D1) 0.2重量部
ε−フタロシアニン(F1)分散物 0.02重量部
フッ素系ノニオン界面活性剤メガファックF177 0.03重量部
(大日本インキ化学工業(株)製)
メチルエチルケトン 9.0重量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 7.5重量部
トルエン 11.0重量部
【0062】
【化6】
【0063】
上記のように形成された感光層上にポリビニルアルコール(ケン化度98モル%、重合度500)の3重量%の水溶液を乾燥塗布重量が2.5g/m2となるように塗布し、120℃で3分間乾燥させ、感光性平版印刷版を得た。
【0064】
この感光性平版印刷版をFD・YAGレーザー(CSI社製プレートジェット4)で100μJ/cm2の露光量で、4000dpiにて175線/インチの条件で、ベタ画像と1〜99%の網点画像(1%刻み)を走査露光した後、現像液1およびフイニッシングガム液FP−2W(富士写真フイルム製)を仕込んだ自動現像機(富士写真フイルム製LP−850P2)で標準処理を行った。プレヒートの条件は版面到達温度が100℃、現像液温は30℃、現像液への浸漬時間は約15秒であった。
現像液1は下記組成よりなり、pHは25℃で11.5、導電率は5mS/cmであった。
【0065】
(現像液1の組成)
水酸化カリウム 0.15g
ポリオキシエチレンフェニルエーテル(n=13) 5.0g
キレスト400(キレート剤) 0.1g
水 94.75g
【0066】
〔実施例2〜5〕
実施例1の現像液を表1に示した現像液に変更し、それ以外は全て実施例1と同じ方法で平版印刷版を製版した。
【0067】
【表1】
【0068】
〔実施例6〜9〕
実施例1のエチレン性不飽和結合含有化合物(A1)、線状有機高分子重合体(B1)を下記表2の様に変更し、それ以外は全て実施例1と同じ方法で平版印刷版を製版した。
【0069】
【表2】
【0070】
〔比較例1〕
実施例1の現像液1に対し、ポリオキシエチレンフェニルエーテルを除いた組成物を現像液として用い、それ以外は全て実施例1と同様の方法で平版印刷版を製版した。
【0071】
〔比較例2〕
実施例1の現像液1に対し、アルカリ金属珪酸塩を含む現像液として富士写真フイルム(株)製LP−D現像液を水で10倍に希釈した溶液を現像液として用い、それ以外は全て実施例1と同様な方法で平版印刷版を製版した。このときの現像液のpHは12.8で導電率は32mS/cmであった。
【0072】
〔比較例3〕
実施例1のエチレン性不飽和結合含有化合物(A1)をA2に変更し、それ以外は全て実施例1同様な方法で平版印刷版を製版した。
【0073】
【化7】
【0074】
上記の実施例1〜9、比較例1〜3の製版方法で得られた平版印刷版について現像性、耐刷性、印刷汚れについて評価した。現像性は現像処理後の版面を目視で観察し感光層残膜の有無および残膜の程度により判断した。耐刷性はマン・ローランド社製R201型印刷機で、大日本インキ社製GEOS G墨(N)を使用して印刷し、3%の網点が版飛びを起した印刷枚数を評価した。印刷汚れ性は三菱重工製ダイヤIF2型印刷機で、大日本インキ社製GEOS G紅(S)を使用して印刷し、非画像部のインキ汚れを目視で評価した。これらの結果を表3に示す。
【0075】
【表3】
【0076】
表3から明らかなように、本発明に係る各実施例の平版印刷版は、それぞれ満足すべき結果を得たが、各比較例の平版印刷版は何らかの評価結果において不満足なものであった。
【0077】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の平版印刷版の製版方法は光重合型組成物からなる感光層を有する感光性平版印刷版と、比較的pHが低いアルカリ水溶液に、特定の構造のノニオン系界面活性剤を含有させた現像液を使用することにより、現像性が良好で印刷汚れがなく、かつ耐刷性の優れた平版印刷版の作製が可能である。また現像液の経時的安定性が優れ、現像液のpHが比較的低いため、安全上好ましく、現像廃液の環境への影響も改善できる効果を奏する。
Claims (3)
- アルミニウム支持体上に、窒素原子およびエチレン性不飽和二重結合を有する化合物と、光重合開始剤と、高分子結合剤とを含有する光重合型感光性組成物からなる感光層を有する感光性平版印刷版を、画像露光した後、(1)無機のアルカリ剤と、(2)ポリオキシアルキレンエーテル基を有するノニオン系界面活性剤とを含有し、(3)珪酸塩を含有しない現像液で現像することを特徴とする平版印刷版の製版方法。
- 上記現像液のpHが10.0〜12.5であることを特徴とする請求項1記載の平版印刷版の製版方法。
- 上記高分子結合剤が、ウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の平版印刷版の製版方法。
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