JP3851374B2 - パーマロイの磁性焼鈍用分離板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はパーマロイ(軟質磁性Ni−Fe合金)の板の、あるいはその加工されたコアの磁性焼鈍方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
パーマロイは高透磁率を有し、いわゆる弱電用を中心とした変圧器、小型モータ、磁気ヘッドなどの磁芯(コア)材料ならびに計器、磁気発生源の遮蔽ケース、磁気遮蔽ルーム等の磁気遮蔽材料として大量に用いられている。パーマロイは最終的な使用形状に加工(スリット、シヤ切断、打ち抜き、曲げ、絞りなど)された後、非酸化性雰囲気中または真空中で930℃〜1200℃の温度の加熱を行なって、不純物ならびに内部歪を除去する、いわゆる磁性焼鈍を経て初めて所期の高透磁率機能を発揮する。
【0003】
かかる磁性焼鈍を行なうさい、処理能率上から加工材を積層または山積みにして炉に入れることが多いが、加工材間さらには金属容器と接する個所がそのままでは高熱のために焼き付いてしまう。そのため加工材にアルミナとかマグネシアなどのセラミックス微粉を塗布したり、あるいはアルミナ等のセラミックス薄板を介在させるなどして焼き付きを防止している。
【0004】
磁気遮蔽ルーム用素材以外の場合の被焼鈍材11のサイズは、一般に長辺が数mm〜100mmと小型な場合が多いので、図6のごとくアルミナ製薄板分離板12またはアルミナ微粉を敷いた容器13などに互いに重ならないように被焼鈍材11を設置するとか、アルミナ微粉などの中に埋めるなどして磁性焼鈍されている。あるいは、図7に示すようにあらかじめ被焼鈍材11にアルミナ微粉を塗布して置き山積みする場合もあり、その時裸の金属容器13との間の融着を防ぐためアルミナ製薄板分離板12を敷くなどする。図8に示すのは、計器の磁気遮蔽ケースの場合の例で、被焼鈍材14をアルミナなどの分離板15の上に多数並べたものを段重ねし、台座プレート3に設置して焼鈍炉に入れる。
【0005】
他方、最近需要が急増している磁気遮蔽ルーム用素材板の場合のサイズは、上記の場合と異なって、通常は幅300mm〜400mm、長さ600mm〜1000mmなどと一般に大きく使用枚数も多い。図9はかかる大サイズ板の焼鈍例で、(a)は正面図、(b)はこれのA−A断面矢視図である。これは被焼鈍材1の間にアルミナ製薄板分離板16を敷くものであって、平坦性が必要となるので、黒鉛などからなる台座プレート3上に設置し、かつ押さえ板4を乗せる。またこの場合、アルミナ製薄板分離板16に代えてアルミナなどのセラミックス微粉を配置することもある。なお後から説明する図1(a)、図3ないし図5についても同様であるが、図9(a)においては板などの厚みを誇張して模式的に記載している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、かかる従来法で用いられているアルミナ製薄板分離板は高価な上に破損し易い。しかも面積の大きいものは入手困難で、厚さ1mm×100mm角程度の定形品が通常使用される。したがって、特に上記の磁気遮蔽ルーム用素材板のように大きい面積を有する被焼鈍板の各層間に設置する場合には、数百枚以上ものアルミナ製薄板分離板が必要となる。この場合これらを配置する労力も大きく、特に被焼鈍板の初期形状がかなり良くないと、配置途中でこれら分離板位置がずれ、重なり合うなどして焼鈍後の被焼鈍板の平坦性を損なうなどの原因となる。このため施工のさいに歪を生じて磁性が劣化するのみならず、さらに突き合わせ不整合部で磁束が漏洩し磁気遮蔽効果を低下させる原因となる。また、かかるセラミックスのみからなる分離板では、熱伝導が悪く温度むらの原因となって製品の磁気特性を阻害し易い。
【0007】
一方、被焼鈍材へのセラミックス微粉の塗布は極めて煩雑かつ時間を要するものであるうえ、製品の平坦性確保上必要な均一な厚みに塗布するのが困難である。また焼鈍中に板周辺部の塗粉が脱落し易く、焼鈍の生産効率のうえからは積み厚を大きくせざるを得ないが、その結果層間に大きな面圧がかかり融着が生じ易いことなどの欠点を有する。本発明は上記の従来技術の問題点を解決する経済的で作業効率の優れた焼鈍分離板を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記課題を解決するものであって、Siを0.5重量%〜3.5重量%含む板厚0.03mm〜5mmの珪素鋼板の両表面に、厚み0.5μm〜50μmのフォルステライト(2MgO・SiO2 )からなる被膜を形成せしめたことを特徴とするパーマロイの磁性焼鈍用分離板である。ここにおいて、両表面のフォルステライト被膜の上に、さらに耐熱性セラミックス微粉を付着させたことも特徴とする。またさらに一方向性珪素鋼板であって、表面被膜としてフォルステライト被膜のみを有することを特徴とする上記のパーマロイの磁性焼鈍用分離板である。また上記のパーマロイの磁性焼鈍用分離板であって、スリット状の切れ込みを複数入れたこと、または波状に曲げたことも特徴とする。
【0009】
また、Siを0.5重量%〜3.5重量%含む板厚0.03mm〜5mmの珪素鋼板を弱酸化性雰囲気中で700℃〜900℃に加熱し、両表面にファイヤライト(Fe2 SiO4 )層を形成せしめ、前記表面にMgOあるいはMg(OH)2 を塗布して積層したものを、水素気流中で1000℃〜1250℃に加熱することにより前記ファイヤライト層をフォルステライト層に変換することを特徴とするパーマロイの磁性焼鈍用分離板の製造方法である。またここにおいて、水素気流中で加熱したのち残存しているMgOをそのまま珪素鋼板表面に付着させたことを特徴とするパーマロイの磁性焼鈍用分離板の製造方法である。またさらに、表面被膜としてフォルステライト被膜の上に燐酸塩を主成分とする2次被膜が塗布されている一方向性珪素鋼板の製品に対して、2次被膜の除去処理をおこなってフォルステライト層のみの被膜を有する珪素鋼板とすることを特徴とするパーマロイの磁性焼鈍用分離板の製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明者らは前記のような従来技術の問題点を解決すべく検討を行なった。その結果、まず安価と言う点からアルミナなどのセラミックス板に代え、鉄鋼からなる板をベースとして用いることを考えた。その場合、面積などサイズの自由度が激増し、破損の問題も無くなる。また、熱伝導の観点からの改善も期待できる。
【0011】
かかる鉄鋼からなる板に焼鈍分離性を持たせる方法について種々検討の結果、表面にセラミックス層を形成させれば良いことが判明した。鉄鋼の表面にセラミックスの層を形成させる方法は各種考えられるが、セラミックス自体最高1200℃に達するパーマロイの焼鈍温度に耐えうるものでなければならない。したがってたとえば琺瑯のような低融点のものは使用できないことは当然である。また、セラミックスの層自体パーマロイ中に拡散して磁気的性質を害するようなものを含んではならない。アルミナのような高融点のセラミックスの層を鉄鋼の表面に形成させる手段としてはプラズマ溶射法が知られているが、大量の焼鈍分離板の両面に溶射を行なうのは手間がかかり、コスト的に不利である。
【0012】
そこで珪素鋼板の中のSiと表面に塗布したMgOとの化学反応によって形成されるガラス質の被膜を利用することを検討した。すなわちこれは以下のような過程で形成されるものである。まず、Siを含有させた鋼板を弱酸化性雰囲気、たとえば水蒸気を含ませた水蒸気流中で700℃〜900℃で加熱し、表面にファイヤライト(Fe2 SiO4 )層を形成せしめる。その表面にMgOあるいはMg(OH)2 を塗布した後に積層して、水素気流中1100℃〜1250℃で加熱する。その後表面に残留したMgO粉を水洗により除去して得られた表面は、ファイヤライト層であった部分が、図2に断面の模式図を示すごとくフォルステライト(2MgO・SiO2 )酸化物層8に変化する。フォルステライトは鋼板7の表面に密着した層を形成し、かかる鋼板は焼鈍分離性に優れていることを見いだした。なお前記の残留したMgO粉はそのままでも焼鈍分離板として使用するには差し支えないのであえて落とさないでもよい。
【0013】
詳細に検討実験を行なった結果、出発鋼板のSi含有量が0.5重量%より少ないとフォルステライト層が形成し難く、また3.5重量%より多いと鋼板が硬くなって加工性が悪くなるので、Si含有量は0.5重量%〜3.5重量%に規定した。また、フォルステライトの厚みが0.5μmより薄い場合には焼鈍分離材としての融着防止性が劣化し易く、50μmより厚い層を形成させるには長時間を要して経済的でないので、フォルステライトの厚みは片面0.5μm〜50μmがよい。
【0014】
また、前記の被膜の形成工程において、フォルステライト層の厚みは途中で形成されるファイヤライト層の厚みとほぼ同じなので、ファイヤライト層の厚みは0.5μm〜50μmとするのが好ましい。このようなファイヤライト層の厚みは珪素鋼板を水蒸気を含有した水素ガスまたは水蒸気を含有した水素ガスと窒素ガスとの混合ガス中で加熱するに当り、時間をたとえば数十秒から数十分の間で調整することにより調節できる。また、かかるファイヤライト層は700℃より低温では形成に長時間を要し、900℃より高温では別の酸化物も形成されて最終のファイヤライト形成を劣化させるので、加熱範囲は700℃〜900℃がよい。
【0015】
また、フォルステライト層を形成させるための熱処理温度が1000℃より低い時には長時間を要し、一方1250℃以上の場合には形成されたフォルステライトが還元されて層が薄くなることがあるので、1000℃〜1250℃が好ましい。この熱処理の時間としては上記温度範囲にある時間として数十分から数時間程度保持し、十分にフォルステライト被膜形成の反応を進行させることが望ましい。
【0016】
また、上記の方法で得られた各種板厚の焼鈍分離板を実際に使用してみたところ、板厚が0.03mmより薄い時には剛性が少ないので取扱い上トラブルが生じ易く、5mmより厚い時には重量が大きく取扱いが困難な上に熱容量が大きく不経済となる。したがって焼鈍分離板の板厚は0.03mm〜5mmの範囲が好ましい。
【0017】
ところで、電力用の変圧器のコアに用いられる市販の方向性珪素鋼板(方向性電磁鋼板)は3重量%のSiを含有した板厚0.2mm〜0.35mmの鋼板で、しかも両表面には2〜4μmのフォルステライト被膜(1次被膜)を有し、さらにその上層には通常燐酸塩を含有する絶縁被膜(2次被膜)を有している。この製品を分離板として用いると、融着防止の機能はあるものの、2次被膜中の燐が被焼鈍材に入りこみ、磁性を劣化させる。しかしかかる製品の2次被膜は、事前に加熱焼鈍を行なって焼失させるとか、加熱した酸あるいはアルカリ水溶液中で溶失させれば良好な焼鈍分離板として使用できるので板厚が上記範囲のもので良ければ流用が可能である。もちろん2次被膜を塗布しないものを入手して使用するのが好ましいことは言うまでもない。
【0018】
本発明による上記の焼鈍分離板の融着性防止機能は極めて良好で、従来法のセラミックス板と同等であり、図1および図3ないし図5に示した焼鈍分離板2として用いられる。しかも安価で破損がほとんどなく、希望の形状に調整が利くなどの利点があることはいうまでもない。すなわち図1は被焼鈍材1が大サイズの板の場合であって、(a)は正面図、(b)はこれのA−A断面矢視図である。被焼鈍材1と本発明の焼鈍分離板2とを交互に重ねた状態で、黒鉛などからなる台座プレート3上に設置し、かつ押さえ板4を乗せて平坦性を確保する。図9に示した従来の方法における多数のアルミナ製薄板分離板16を配置する労力を大幅に削減できる。
【0019】
図3は比較的小さい被焼鈍材9に適用した例であるが、本発明の焼鈍分離板2を使用すればこのような場合においても効率よく磁性焼鈍が可能である。また図4は被焼鈍材1と本発明の焼鈍分離板2との寸法が合わないときの焼鈍方法を示しており、被焼鈍材と同じ厚みのダミー支持板5を使用する。これにより焼鈍分離板の寸法が大きいときにこれの変形を防止し、繰り返し使用が可能になる。図5も被焼鈍材1と本発明の焼鈍分離板2との寸法が合わないときの焼鈍方法であるが、上記とは逆に被溶接材1の方が大きい場合であって、サイズ調整用焼鈍分離板6を各種用意しておいてこれを使用すればよい。
【0020】
ところで磁性焼鈍には被焼鈍材の中の不純物を雰囲気中に放出して除去する役割がある。図1に示した例のように被焼鈍材、焼鈍分離板の双方が大きいサイズの場合には板中央部での通気性が悪く純化が劣る場合がある。そのときには焼鈍分離板のフォルステライト被膜の上にさらに耐熱性セラミックス微粉を付着させればかかる問題は軽減される。フォルステライト被膜の表面には微細な凹凸があって、かかるセラミックス微粉が載りやすくかつ脱落しにくい。セラミックスの微粉としてはアルミナ、マグネシアなどが入手が容易であって、用途に応じてその量、サイズを調節すればよい。なお前記した焼鈍分離板の製造方法において、フォルステライト被膜形成のための水素気流中での焼鈍の後、残留したマグネシア粉はそのままであえて落とさないでもよいと述べたが、これにより上記目的に役立てることができる。
【0021】
また上記の通気性確保の手段として図10の(a)や(b)に示したように焼鈍分離板21にスリット状の切れ込み18を複数入れることもでき、上記のセラミックス微粉を使用する場合に比較してより確実な効果を得ることができる。また図11のように焼鈍分離板22を波状に曲げることにより通気性を確保することもできる。本発明の焼鈍分離板はこれらの例のようにパーマロイの磁性焼鈍における使用状況に応じて2次的な加工を施すことは自由であって、これも本発明の範囲内のものである。たとえば図12に示すような円筒状の被焼鈍材19を焼鈍するに当たって、円筒状に曲げた本発明の焼鈍分離板20を挿入することにより焼鈍中の変形を防止できる。
【0022】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
実施例1
Siを3.1重量%を含有する板厚0.5mmの珪素鋼板を、水蒸気を含む水素気流中で830℃、5minの加熱を行なった。この段階で材質調査を行なったところ、両表面にはそれぞれ3μmのファイヤライト層が形成されていることが確認された。別途、マグネシア(MgO)微粉末に純水を加え良く攪拌した。このマグネシア・水スラリーを前記の珪素鋼板に塗布し、乾燥後に積層した。これを炉に入れ、水素気流中1100℃で10hrの加熱焼鈍を行なった。炉から取り出した板の表面には、反応残余マグネシアがあったので水洗いして除去した。かくして得られた珪素鋼板を材質調査を行なったところ、両表面にはそれぞれ2.5μmのフォルステライト層が形成されていることが確認された。
【0023】
このようにして製造した焼鈍分離板を切断曲げ加工して図6に示した金網製容器13を内張りした。別途、EIコアに打ち抜いたPB級パーマロイの被焼鈍材11を図6のごとく配置し、かつその上に別の焼鈍分離板を敷きパーマロイコアを配置するやり方で、ひとつの容器内に30層配置した。この容器で磁性焼鈍を行なったが、融着は全く生じず被焼鈍材の磁性も従来法と同等であった。従来は数量の多い被焼鈍材を処理しようとすると図7の方法になり、裸の金属板にアルミナ粉を撒くなどの方法によっていたので最終的に除粉工程が必要であったり、容器に入る被焼鈍材の個数も小量であったが、本発明の焼鈍分離板を使用することにより生産性が大幅に改善された。
【0024】
実施例2
Siを2.5重量%を含有する板厚0.03mmの珪素鋼板を実施例1と同様の方法で処理し、両表面にそれぞれ4μmのフォルステライト層を持った薄手の焼鈍分離板を得た。パーマロイPCからなる板厚0.5mm、幅300mm、長さ600mmの磁気遮蔽ルーム用素材板の磁性焼鈍にあたり、かかる被焼鈍板を前記焼鈍分離板を用いて図5の方式で積層した。この時の積み厚は被焼鈍材と分離板の合計で60mm程であった。磁性焼鈍後、融着は無く平坦性もよいものが得られた。厚み1mmのアルミナ製薄板分離板16を用いた図9の従来法に比し、積層の時間、積層枚数の点で生産性が大幅に向上し、仕上がり板の平坦性も良いことから磁気遮蔽効果もより良い結果が得られた。
【0025】
実施例3
表面被膜としてフォルステライト被膜(1次被膜)の上に燐酸塩を含有する絶縁被膜(2次被膜)が塗布されている板厚0.23mmの、広く市販されている一方向性珪素鋼板(Si:3.3重量%)を複数枚入手し、二つのグループに分けた。一つのグループについては、1150℃、3時間の真空焼鈍を施し2次被膜を除去した。他のグループについては、加熱したアルカリ水溶液中に浸漬することにより2次被膜を除去した。これらの処理を行なった後の1次被膜層の厚みは1μm〜5μmであった。実施例2の薄手の焼鈍分離板の代わりに、かくして得られた焼鈍分離板を使用したところ、実施例2と同様の良好な結果が得られた。
【0026】
実施例4
通常の一方向性珪素鋼板(Si:2.8重量%)の製造工程途中のもので、2次被膜塗布を未だ行わないものを入手した。この板厚は0.35mm、1次被膜層の厚みは2μm〜3μmであった。これを図11の形状(深さ10mm、谷部の角度50°)に加工して、幅30cm、長さ60cmの蛇腹状の焼鈍分離板22とした。これを図8に示すような磁気遮蔽ケースの被焼鈍材14の分離板として用い、磁性焼鈍に供した。この分離板は強度の割りには熱容量が小さく生産性の良い磁性焼鈍ができた。
【0027】
実施例5
Siを3重量%を含有する板厚5mmの珪素鋼薄板を実施例1と同様の方法で処理し、両表面にそれぞれ10μmのフォルステライト層を持った焼鈍分離板を得た。パーマロイPBからなる板厚0.4mm、内径150mm、長さ600mmの円筒状の磁気遮蔽筒の磁性焼鈍にあたり、図12のごとくかかる焼鈍分離板を円筒状の被焼鈍材19に内接するサイズに曲げ成形し、内接したまま焼鈍した。その結果、形状の良い焼鈍ずみの円筒材が得られた。このように、本発明の焼鈍分離板は被焼鈍材の熱だれ防止材の材料としても有効である。
【0028】
【発明の効果】
本発明による焼鈍分離板は大きな寸法のものが比較的安価に容易に得られ、パーマロイの磁性焼鈍に使用することにより磁性焼鈍を経済的かつ効率よく行なうことができる。特に大型磁気遮蔽ルーム用板材の焼鈍に際しては形状、平坦性の優れた焼鈍材を得るのに著しい効果が得られる。また本発明の焼鈍分離板は切断、曲げなどの加工が自由にできるので、被焼鈍材の形状など要求に応じて2次加工して使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の焼鈍分離板の使用方法の例を示す図であって、(a)は正面図、(b)はこれのA−A断面矢視図
【図2】本発明の焼鈍分離板の板厚断面を示す図
【図3】本発明の焼鈍分離板の使用方法の例を示す断面図
【図4】本発明の焼鈍分離板の使用方法の例を示す断面図
【図5】本発明の焼鈍分離板の使用方法の例を示す断面図
【図6】パーマロイの磁性焼鈍の一般的方法の例を示す図
【図7】パーマロイの磁性焼鈍の一般的方法の例を示す図
【図8】パーマロイの磁性焼鈍の一般的方法の例を示す図
【図9】パーマロイの磁性焼鈍の一般的方法の例を示す図であって、(a)は正面図、(b)はこれのA−A断面矢視図
【図10】(a)、(b)はそれぞれ本発明の焼鈍分離板を2次加工した例を示す図
【図11】本発明の焼鈍分離板を2次加工した例を示す図
【図12】本発明の焼鈍分離板を2次加工した例を示す図
【符号の説明】
1 被焼鈍材
2 焼鈍分離板
3 台座プレート
4 押さえ板
5 ダミー支持板
6 サイズ調整用焼鈍分離板
7 鋼板
8 フォルステライト酸化物層
9、11 被焼鈍材
12 アルミナ製薄板分離板
13 容器
14 被焼鈍材
15 分離板
16 アルミナ製薄板分離板
18 スリット状の切れ込み
19 円筒状の被焼鈍材
20 円筒状に曲げた焼鈍分離板
21、22 焼鈍分離板
【発明の属する技術分野】
本発明はパーマロイ(軟質磁性Ni−Fe合金)の板の、あるいはその加工されたコアの磁性焼鈍方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
パーマロイは高透磁率を有し、いわゆる弱電用を中心とした変圧器、小型モータ、磁気ヘッドなどの磁芯(コア)材料ならびに計器、磁気発生源の遮蔽ケース、磁気遮蔽ルーム等の磁気遮蔽材料として大量に用いられている。パーマロイは最終的な使用形状に加工(スリット、シヤ切断、打ち抜き、曲げ、絞りなど)された後、非酸化性雰囲気中または真空中で930℃〜1200℃の温度の加熱を行なって、不純物ならびに内部歪を除去する、いわゆる磁性焼鈍を経て初めて所期の高透磁率機能を発揮する。
【0003】
かかる磁性焼鈍を行なうさい、処理能率上から加工材を積層または山積みにして炉に入れることが多いが、加工材間さらには金属容器と接する個所がそのままでは高熱のために焼き付いてしまう。そのため加工材にアルミナとかマグネシアなどのセラミックス微粉を塗布したり、あるいはアルミナ等のセラミックス薄板を介在させるなどして焼き付きを防止している。
【0004】
磁気遮蔽ルーム用素材以外の場合の被焼鈍材11のサイズは、一般に長辺が数mm〜100mmと小型な場合が多いので、図6のごとくアルミナ製薄板分離板12またはアルミナ微粉を敷いた容器13などに互いに重ならないように被焼鈍材11を設置するとか、アルミナ微粉などの中に埋めるなどして磁性焼鈍されている。あるいは、図7に示すようにあらかじめ被焼鈍材11にアルミナ微粉を塗布して置き山積みする場合もあり、その時裸の金属容器13との間の融着を防ぐためアルミナ製薄板分離板12を敷くなどする。図8に示すのは、計器の磁気遮蔽ケースの場合の例で、被焼鈍材14をアルミナなどの分離板15の上に多数並べたものを段重ねし、台座プレート3に設置して焼鈍炉に入れる。
【0005】
他方、最近需要が急増している磁気遮蔽ルーム用素材板の場合のサイズは、上記の場合と異なって、通常は幅300mm〜400mm、長さ600mm〜1000mmなどと一般に大きく使用枚数も多い。図9はかかる大サイズ板の焼鈍例で、(a)は正面図、(b)はこれのA−A断面矢視図である。これは被焼鈍材1の間にアルミナ製薄板分離板16を敷くものであって、平坦性が必要となるので、黒鉛などからなる台座プレート3上に設置し、かつ押さえ板4を乗せる。またこの場合、アルミナ製薄板分離板16に代えてアルミナなどのセラミックス微粉を配置することもある。なお後から説明する図1(a)、図3ないし図5についても同様であるが、図9(a)においては板などの厚みを誇張して模式的に記載している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、かかる従来法で用いられているアルミナ製薄板分離板は高価な上に破損し易い。しかも面積の大きいものは入手困難で、厚さ1mm×100mm角程度の定形品が通常使用される。したがって、特に上記の磁気遮蔽ルーム用素材板のように大きい面積を有する被焼鈍板の各層間に設置する場合には、数百枚以上ものアルミナ製薄板分離板が必要となる。この場合これらを配置する労力も大きく、特に被焼鈍板の初期形状がかなり良くないと、配置途中でこれら分離板位置がずれ、重なり合うなどして焼鈍後の被焼鈍板の平坦性を損なうなどの原因となる。このため施工のさいに歪を生じて磁性が劣化するのみならず、さらに突き合わせ不整合部で磁束が漏洩し磁気遮蔽効果を低下させる原因となる。また、かかるセラミックスのみからなる分離板では、熱伝導が悪く温度むらの原因となって製品の磁気特性を阻害し易い。
【0007】
一方、被焼鈍材へのセラミックス微粉の塗布は極めて煩雑かつ時間を要するものであるうえ、製品の平坦性確保上必要な均一な厚みに塗布するのが困難である。また焼鈍中に板周辺部の塗粉が脱落し易く、焼鈍の生産効率のうえからは積み厚を大きくせざるを得ないが、その結果層間に大きな面圧がかかり融着が生じ易いことなどの欠点を有する。本発明は上記の従来技術の問題点を解決する経済的で作業効率の優れた焼鈍分離板を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記課題を解決するものであって、Siを0.5重量%〜3.5重量%含む板厚0.03mm〜5mmの珪素鋼板の両表面に、厚み0.5μm〜50μmのフォルステライト(2MgO・SiO2 )からなる被膜を形成せしめたことを特徴とするパーマロイの磁性焼鈍用分離板である。ここにおいて、両表面のフォルステライト被膜の上に、さらに耐熱性セラミックス微粉を付着させたことも特徴とする。またさらに一方向性珪素鋼板であって、表面被膜としてフォルステライト被膜のみを有することを特徴とする上記のパーマロイの磁性焼鈍用分離板である。また上記のパーマロイの磁性焼鈍用分離板であって、スリット状の切れ込みを複数入れたこと、または波状に曲げたことも特徴とする。
【0009】
また、Siを0.5重量%〜3.5重量%含む板厚0.03mm〜5mmの珪素鋼板を弱酸化性雰囲気中で700℃〜900℃に加熱し、両表面にファイヤライト(Fe2 SiO4 )層を形成せしめ、前記表面にMgOあるいはMg(OH)2 を塗布して積層したものを、水素気流中で1000℃〜1250℃に加熱することにより前記ファイヤライト層をフォルステライト層に変換することを特徴とするパーマロイの磁性焼鈍用分離板の製造方法である。またここにおいて、水素気流中で加熱したのち残存しているMgOをそのまま珪素鋼板表面に付着させたことを特徴とするパーマロイの磁性焼鈍用分離板の製造方法である。またさらに、表面被膜としてフォルステライト被膜の上に燐酸塩を主成分とする2次被膜が塗布されている一方向性珪素鋼板の製品に対して、2次被膜の除去処理をおこなってフォルステライト層のみの被膜を有する珪素鋼板とすることを特徴とするパーマロイの磁性焼鈍用分離板の製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明者らは前記のような従来技術の問題点を解決すべく検討を行なった。その結果、まず安価と言う点からアルミナなどのセラミックス板に代え、鉄鋼からなる板をベースとして用いることを考えた。その場合、面積などサイズの自由度が激増し、破損の問題も無くなる。また、熱伝導の観点からの改善も期待できる。
【0011】
かかる鉄鋼からなる板に焼鈍分離性を持たせる方法について種々検討の結果、表面にセラミックス層を形成させれば良いことが判明した。鉄鋼の表面にセラミックスの層を形成させる方法は各種考えられるが、セラミックス自体最高1200℃に達するパーマロイの焼鈍温度に耐えうるものでなければならない。したがってたとえば琺瑯のような低融点のものは使用できないことは当然である。また、セラミックスの層自体パーマロイ中に拡散して磁気的性質を害するようなものを含んではならない。アルミナのような高融点のセラミックスの層を鉄鋼の表面に形成させる手段としてはプラズマ溶射法が知られているが、大量の焼鈍分離板の両面に溶射を行なうのは手間がかかり、コスト的に不利である。
【0012】
そこで珪素鋼板の中のSiと表面に塗布したMgOとの化学反応によって形成されるガラス質の被膜を利用することを検討した。すなわちこれは以下のような過程で形成されるものである。まず、Siを含有させた鋼板を弱酸化性雰囲気、たとえば水蒸気を含ませた水蒸気流中で700℃〜900℃で加熱し、表面にファイヤライト(Fe2 SiO4 )層を形成せしめる。その表面にMgOあるいはMg(OH)2 を塗布した後に積層して、水素気流中1100℃〜1250℃で加熱する。その後表面に残留したMgO粉を水洗により除去して得られた表面は、ファイヤライト層であった部分が、図2に断面の模式図を示すごとくフォルステライト(2MgO・SiO2 )酸化物層8に変化する。フォルステライトは鋼板7の表面に密着した層を形成し、かかる鋼板は焼鈍分離性に優れていることを見いだした。なお前記の残留したMgO粉はそのままでも焼鈍分離板として使用するには差し支えないのであえて落とさないでもよい。
【0013】
詳細に検討実験を行なった結果、出発鋼板のSi含有量が0.5重量%より少ないとフォルステライト層が形成し難く、また3.5重量%より多いと鋼板が硬くなって加工性が悪くなるので、Si含有量は0.5重量%〜3.5重量%に規定した。また、フォルステライトの厚みが0.5μmより薄い場合には焼鈍分離材としての融着防止性が劣化し易く、50μmより厚い層を形成させるには長時間を要して経済的でないので、フォルステライトの厚みは片面0.5μm〜50μmがよい。
【0014】
また、前記の被膜の形成工程において、フォルステライト層の厚みは途中で形成されるファイヤライト層の厚みとほぼ同じなので、ファイヤライト層の厚みは0.5μm〜50μmとするのが好ましい。このようなファイヤライト層の厚みは珪素鋼板を水蒸気を含有した水素ガスまたは水蒸気を含有した水素ガスと窒素ガスとの混合ガス中で加熱するに当り、時間をたとえば数十秒から数十分の間で調整することにより調節できる。また、かかるファイヤライト層は700℃より低温では形成に長時間を要し、900℃より高温では別の酸化物も形成されて最終のファイヤライト形成を劣化させるので、加熱範囲は700℃〜900℃がよい。
【0015】
また、フォルステライト層を形成させるための熱処理温度が1000℃より低い時には長時間を要し、一方1250℃以上の場合には形成されたフォルステライトが還元されて層が薄くなることがあるので、1000℃〜1250℃が好ましい。この熱処理の時間としては上記温度範囲にある時間として数十分から数時間程度保持し、十分にフォルステライト被膜形成の反応を進行させることが望ましい。
【0016】
また、上記の方法で得られた各種板厚の焼鈍分離板を実際に使用してみたところ、板厚が0.03mmより薄い時には剛性が少ないので取扱い上トラブルが生じ易く、5mmより厚い時には重量が大きく取扱いが困難な上に熱容量が大きく不経済となる。したがって焼鈍分離板の板厚は0.03mm〜5mmの範囲が好ましい。
【0017】
ところで、電力用の変圧器のコアに用いられる市販の方向性珪素鋼板(方向性電磁鋼板)は3重量%のSiを含有した板厚0.2mm〜0.35mmの鋼板で、しかも両表面には2〜4μmのフォルステライト被膜(1次被膜)を有し、さらにその上層には通常燐酸塩を含有する絶縁被膜(2次被膜)を有している。この製品を分離板として用いると、融着防止の機能はあるものの、2次被膜中の燐が被焼鈍材に入りこみ、磁性を劣化させる。しかしかかる製品の2次被膜は、事前に加熱焼鈍を行なって焼失させるとか、加熱した酸あるいはアルカリ水溶液中で溶失させれば良好な焼鈍分離板として使用できるので板厚が上記範囲のもので良ければ流用が可能である。もちろん2次被膜を塗布しないものを入手して使用するのが好ましいことは言うまでもない。
【0018】
本発明による上記の焼鈍分離板の融着性防止機能は極めて良好で、従来法のセラミックス板と同等であり、図1および図3ないし図5に示した焼鈍分離板2として用いられる。しかも安価で破損がほとんどなく、希望の形状に調整が利くなどの利点があることはいうまでもない。すなわち図1は被焼鈍材1が大サイズの板の場合であって、(a)は正面図、(b)はこれのA−A断面矢視図である。被焼鈍材1と本発明の焼鈍分離板2とを交互に重ねた状態で、黒鉛などからなる台座プレート3上に設置し、かつ押さえ板4を乗せて平坦性を確保する。図9に示した従来の方法における多数のアルミナ製薄板分離板16を配置する労力を大幅に削減できる。
【0019】
図3は比較的小さい被焼鈍材9に適用した例であるが、本発明の焼鈍分離板2を使用すればこのような場合においても効率よく磁性焼鈍が可能である。また図4は被焼鈍材1と本発明の焼鈍分離板2との寸法が合わないときの焼鈍方法を示しており、被焼鈍材と同じ厚みのダミー支持板5を使用する。これにより焼鈍分離板の寸法が大きいときにこれの変形を防止し、繰り返し使用が可能になる。図5も被焼鈍材1と本発明の焼鈍分離板2との寸法が合わないときの焼鈍方法であるが、上記とは逆に被溶接材1の方が大きい場合であって、サイズ調整用焼鈍分離板6を各種用意しておいてこれを使用すればよい。
【0020】
ところで磁性焼鈍には被焼鈍材の中の不純物を雰囲気中に放出して除去する役割がある。図1に示した例のように被焼鈍材、焼鈍分離板の双方が大きいサイズの場合には板中央部での通気性が悪く純化が劣る場合がある。そのときには焼鈍分離板のフォルステライト被膜の上にさらに耐熱性セラミックス微粉を付着させればかかる問題は軽減される。フォルステライト被膜の表面には微細な凹凸があって、かかるセラミックス微粉が載りやすくかつ脱落しにくい。セラミックスの微粉としてはアルミナ、マグネシアなどが入手が容易であって、用途に応じてその量、サイズを調節すればよい。なお前記した焼鈍分離板の製造方法において、フォルステライト被膜形成のための水素気流中での焼鈍の後、残留したマグネシア粉はそのままであえて落とさないでもよいと述べたが、これにより上記目的に役立てることができる。
【0021】
また上記の通気性確保の手段として図10の(a)や(b)に示したように焼鈍分離板21にスリット状の切れ込み18を複数入れることもでき、上記のセラミックス微粉を使用する場合に比較してより確実な効果を得ることができる。また図11のように焼鈍分離板22を波状に曲げることにより通気性を確保することもできる。本発明の焼鈍分離板はこれらの例のようにパーマロイの磁性焼鈍における使用状況に応じて2次的な加工を施すことは自由であって、これも本発明の範囲内のものである。たとえば図12に示すような円筒状の被焼鈍材19を焼鈍するに当たって、円筒状に曲げた本発明の焼鈍分離板20を挿入することにより焼鈍中の変形を防止できる。
【0022】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
実施例1
Siを3.1重量%を含有する板厚0.5mmの珪素鋼板を、水蒸気を含む水素気流中で830℃、5minの加熱を行なった。この段階で材質調査を行なったところ、両表面にはそれぞれ3μmのファイヤライト層が形成されていることが確認された。別途、マグネシア(MgO)微粉末に純水を加え良く攪拌した。このマグネシア・水スラリーを前記の珪素鋼板に塗布し、乾燥後に積層した。これを炉に入れ、水素気流中1100℃で10hrの加熱焼鈍を行なった。炉から取り出した板の表面には、反応残余マグネシアがあったので水洗いして除去した。かくして得られた珪素鋼板を材質調査を行なったところ、両表面にはそれぞれ2.5μmのフォルステライト層が形成されていることが確認された。
【0023】
このようにして製造した焼鈍分離板を切断曲げ加工して図6に示した金網製容器13を内張りした。別途、EIコアに打ち抜いたPB級パーマロイの被焼鈍材11を図6のごとく配置し、かつその上に別の焼鈍分離板を敷きパーマロイコアを配置するやり方で、ひとつの容器内に30層配置した。この容器で磁性焼鈍を行なったが、融着は全く生じず被焼鈍材の磁性も従来法と同等であった。従来は数量の多い被焼鈍材を処理しようとすると図7の方法になり、裸の金属板にアルミナ粉を撒くなどの方法によっていたので最終的に除粉工程が必要であったり、容器に入る被焼鈍材の個数も小量であったが、本発明の焼鈍分離板を使用することにより生産性が大幅に改善された。
【0024】
実施例2
Siを2.5重量%を含有する板厚0.03mmの珪素鋼板を実施例1と同様の方法で処理し、両表面にそれぞれ4μmのフォルステライト層を持った薄手の焼鈍分離板を得た。パーマロイPCからなる板厚0.5mm、幅300mm、長さ600mmの磁気遮蔽ルーム用素材板の磁性焼鈍にあたり、かかる被焼鈍板を前記焼鈍分離板を用いて図5の方式で積層した。この時の積み厚は被焼鈍材と分離板の合計で60mm程であった。磁性焼鈍後、融着は無く平坦性もよいものが得られた。厚み1mmのアルミナ製薄板分離板16を用いた図9の従来法に比し、積層の時間、積層枚数の点で生産性が大幅に向上し、仕上がり板の平坦性も良いことから磁気遮蔽効果もより良い結果が得られた。
【0025】
実施例3
表面被膜としてフォルステライト被膜(1次被膜)の上に燐酸塩を含有する絶縁被膜(2次被膜)が塗布されている板厚0.23mmの、広く市販されている一方向性珪素鋼板(Si:3.3重量%)を複数枚入手し、二つのグループに分けた。一つのグループについては、1150℃、3時間の真空焼鈍を施し2次被膜を除去した。他のグループについては、加熱したアルカリ水溶液中に浸漬することにより2次被膜を除去した。これらの処理を行なった後の1次被膜層の厚みは1μm〜5μmであった。実施例2の薄手の焼鈍分離板の代わりに、かくして得られた焼鈍分離板を使用したところ、実施例2と同様の良好な結果が得られた。
【0026】
実施例4
通常の一方向性珪素鋼板(Si:2.8重量%)の製造工程途中のもので、2次被膜塗布を未だ行わないものを入手した。この板厚は0.35mm、1次被膜層の厚みは2μm〜3μmであった。これを図11の形状(深さ10mm、谷部の角度50°)に加工して、幅30cm、長さ60cmの蛇腹状の焼鈍分離板22とした。これを図8に示すような磁気遮蔽ケースの被焼鈍材14の分離板として用い、磁性焼鈍に供した。この分離板は強度の割りには熱容量が小さく生産性の良い磁性焼鈍ができた。
【0027】
実施例5
Siを3重量%を含有する板厚5mmの珪素鋼薄板を実施例1と同様の方法で処理し、両表面にそれぞれ10μmのフォルステライト層を持った焼鈍分離板を得た。パーマロイPBからなる板厚0.4mm、内径150mm、長さ600mmの円筒状の磁気遮蔽筒の磁性焼鈍にあたり、図12のごとくかかる焼鈍分離板を円筒状の被焼鈍材19に内接するサイズに曲げ成形し、内接したまま焼鈍した。その結果、形状の良い焼鈍ずみの円筒材が得られた。このように、本発明の焼鈍分離板は被焼鈍材の熱だれ防止材の材料としても有効である。
【0028】
【発明の効果】
本発明による焼鈍分離板は大きな寸法のものが比較的安価に容易に得られ、パーマロイの磁性焼鈍に使用することにより磁性焼鈍を経済的かつ効率よく行なうことができる。特に大型磁気遮蔽ルーム用板材の焼鈍に際しては形状、平坦性の優れた焼鈍材を得るのに著しい効果が得られる。また本発明の焼鈍分離板は切断、曲げなどの加工が自由にできるので、被焼鈍材の形状など要求に応じて2次加工して使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の焼鈍分離板の使用方法の例を示す図であって、(a)は正面図、(b)はこれのA−A断面矢視図
【図2】本発明の焼鈍分離板の板厚断面を示す図
【図3】本発明の焼鈍分離板の使用方法の例を示す断面図
【図4】本発明の焼鈍分離板の使用方法の例を示す断面図
【図5】本発明の焼鈍分離板の使用方法の例を示す断面図
【図6】パーマロイの磁性焼鈍の一般的方法の例を示す図
【図7】パーマロイの磁性焼鈍の一般的方法の例を示す図
【図8】パーマロイの磁性焼鈍の一般的方法の例を示す図
【図9】パーマロイの磁性焼鈍の一般的方法の例を示す図であって、(a)は正面図、(b)はこれのA−A断面矢視図
【図10】(a)、(b)はそれぞれ本発明の焼鈍分離板を2次加工した例を示す図
【図11】本発明の焼鈍分離板を2次加工した例を示す図
【図12】本発明の焼鈍分離板を2次加工した例を示す図
【符号の説明】
1 被焼鈍材
2 焼鈍分離板
3 台座プレート
4 押さえ板
5 ダミー支持板
6 サイズ調整用焼鈍分離板
7 鋼板
8 フォルステライト酸化物層
9、11 被焼鈍材
12 アルミナ製薄板分離板
13 容器
14 被焼鈍材
15 分離板
16 アルミナ製薄板分離板
18 スリット状の切れ込み
19 円筒状の被焼鈍材
20 円筒状に曲げた焼鈍分離板
21、22 焼鈍分離板
Claims (8)
- Siを0.5重量%〜3.5重量%含む板厚0.03mm〜5mmの珪素鋼板の両表面に、厚み0.5μm〜50μmのフォルステライト(2MgO・SiO2 )からなる被膜を形成せしめたことを特徴とするパーマロイの磁性焼鈍用分離板。
- 両表面のフォルステライト被膜の上に、さらに耐熱性セラミックス微粉を付着させたことを特徴とする請求項1記載のパーマロイの磁性焼鈍用分離板。
- 一方向性珪素鋼板であって、表面被膜としてフォルステライト被膜のみを有することを特徴とする請求項1記載のパーマロイの磁性焼鈍用分離板。
- スリット状の切れ込みを複数入れたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のパーマロイの磁性焼鈍用分離板。
- 波状に曲げたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のパーマロイの磁性焼鈍用分離板。
- Siを0.5重量%〜3.5重量%含む板厚0.03mm〜5mmの珪素鋼板を弱酸化性雰囲気中で700℃〜900℃に加熱し、両表面にファイヤライト(Fe2 SiO4 )層を形成せしめ、前記表面にMgOあるいはMg(OH)2 を塗布して積層したものを、水素気流中で1000℃〜1250℃に加熱することにより前記ファイヤライト層をフォルステライト層に変換することを特徴とするパーマロイの磁性焼鈍用分離板の製造方法。
- 水素気流中で加熱したのち残存しているMgOをそのまま珪素鋼板表面に付着させたことを特徴とする請求項6記載のパーマロイの磁性焼鈍用分離板の製造方法。
- 表面被膜としてフォルステライト被膜の上に燐酸塩を主成分とする2次被膜が塗布されている一方向性珪素鋼板の製品に対して、2次被膜の除去処理をおこなってフォルステライト層のみの被膜を有する珪素鋼板とすることを特徴とするパーマロイの磁性焼鈍用分離板の製造方法。
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