JP3851262B2 - 免疫学的抗原検出定量法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は抗原抗体反応を利用した抗原検出技術に係わり、特に加工食品中に含まれるアレルゲンをはじめとする抗原を短時間で精度良く容易に検出、定量することのできる免疫学的抗原検出定量法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、アトピー性皮膚炎に代表されるアレルギー症状を誘発するアレルゲンを含んだ食品の摂取による健康危害が増大する中、オボアルブミンやオボムコイドといったアレルゲンを含む卵をはじめ、乳、小麦、蕎麦、落花生を原材料として使用した食品についてはその表示が義務化され、そのほかアワビやエビなど19品目についてはその表示が奨励された。このような食品に対する安全指向の高まりを受け、食品関連業界などでは従来に増して食品中の成分を精度良く検出、定量することが要求されている。
【0003】
ここに、アレルゲンや血中微量成分などの抗原又は抗体を検出、定量する方法として、抗原抗体反応を利用するイムノアッセイが良く知られる。イムノアッセイには、放射性物質を標識した抗原又は抗体を用いるラジオイムノアッセイ(RIA)をはじめ、その発展系として抗原又は抗体に酵素を結合させるエンザイムイムノアッセイ(EIA)などがある。
【0004】
このうち、安全性の点から放射性物質の標識を用いないEIAが一般に広く利用されるが、これには非標識抗原と標識抗原を競合的に抗体と反応させる競合法ほか、ELISA(Enzyme-linked immunosorbent assay)に代表される非競合法とがある。尚、酵素標識に代えて蛍光物質を用いるなどの例もあるが、非競合法には固相担体に固定化した抗体に抗原を反応させたのち標識抗体を反応させるサンドイッチ法の原理が利用される(特許文献1、特許文献2)。
【0005】
サンドイッチ法の原理によるELISAを説明すると、図9において11は隔壁により区画された各々が独立したウェルであり、その底部にはポリスチレンなどで成る固相担体12が設けられる。
【0006】
特に、固相担体12には、特定の抗体(非標識のキャプチャー抗体)が化学的結合により予め固定化されている(図10A参照)。ここに、その抗体に対する抗原を含む一定量の試料(検体を遠心後の上澄液)を各ウェル内に分注することにより抗体に抗原Mを結合し(図10B参照)、次いで抗原に対する抗体(酵素Eにより標識された標識抗体)を結合させ(図10C参照)、これに基質を加えて呈色させる(図10D参照)。そして、その吸光度を標準曲線と対比することにより、抗原量を定量する。
【特許文献1】
特公平2−39747号公報
【特許文献2】
特公平4−21818号公報
【発明が解決しようとする課題】
然し乍ら、上記のような従来法に用いるアッセイプレートの固相担体には、特定の抗原に対する特定の抗体が固定化されているだけなので、加工食品中の個々の原材料を特定するには、固相担体に固定された抗体の種類が異なる高価なアッセイプレートを複数枚用い、一回に数時間を要する測定を繰り返し行わねばならない。
【0007】
しかも、加工食品は衛生上あるいは調理上の目的で加熱処理が施されるので、検出対象とする抗原(アレルゲンその他のタンパク質など)が担体上の抗体と良好に反応するような性状で存在するとは限らない。例えば、卵や牛乳を多く含む生地を高温で処理したパンケーキや小麦を主原料とする油揚げ麺といった食品では、熱変性したタンパク質がコロイド状の不溶性抗原として液相中に分散する。同様に、水溶性のタンパク質でも、S-S結合やイオン結合などにより分子構造が大型化して不溶化する。
【0008】
よって、従来は食品中の特定抗原の有無を検出する場合、検体である加工食品をホモジナイザーにより破壊するのみならず、これによって得たホモジネート(懸濁液)を遠心分離し、その上澄み液を試料として測定に用いている。しかし、遠心分離を行う検体調製には時間が掛かるばかりでなく、これによって得た試料中には検出されるべき抗原の一部が可溶性成分として僅かに抽出されるだけなので、抗原抗体反応が良好に行われたとしても検出される抗原量は低い値となる。
【0009】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的は加工食品中に含まれる多数のアレルゲンなどでも時間を掛けずに可及的低コストで高精度に検出、定量できるようにすることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するため、不溶性抗原と可溶性抗原とが混在する加工食品のホモジネートを試料とし、その試料を透水性担体に通し、これによって前記不溶性抗原と可溶性抗原とを前記透水性担体に吸着せしめた後、その透水性担体に吸着された複数種の抗原に対し、複数種の抗体にそれぞれ標識物質として別々の蛍光物質を結合させた複数種の標識抗体を接触せしめて抗原抗体反応を行わせ、その抗原抗体反応により特定の標識抗体が結合した抗原を該抗原に結合した標識抗体の標識物質である蛍光物質の蛍光強度から定量することを特徴とする。
【0011】
又、透水性担体に吸着された複数種の抗原に複数種の標識抗体を接触させる前に、抗原が吸着されていない透水性担体の部位にスキンミルク、ゼラチン、動物血清由来成分、又は合成高分子から成るブロッキング液を含浸せしめて透水性担体への標識抗体の非特異的吸着を阻止することを特徴とする。
【0012】
更に、透水性担体として、孔径0.01〜20.0μ、好ましくは0.02〜0.8μの濾材を用いることを特徴とする。
【0013】
尚、濾材は目的とする不溶性抗原、可溶性抗原の全てを吸着させるために種々の材質及び孔径の組み合わせが可能であり、その材質としては、セルロース混合エステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリビニリデンフロライド、ポリカーボネートフィルム、ポリエーテルスルホン、ポリビニールクロライド、セルロース、セルロースアセテート、グラスファイバー、ポリスチレン、アクリルなどがある。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の適用例を詳しく説明する。図1は本発明に適用するアッセイプレートを部分的に破断して示した平面図であり、図2にはその部分拡大断面を示す。これらの図で明らかなように、このアッセイプレートは試料の注入部として縦横に配列する個々に独立した筒状のウェル1を形成し、その各ウェルの底部には試料に含まれる抗原を捕集するための透水性担体2(メンブレンフィルター)が設けられる。抗原とは抗体と結合する物質であり、これにはアレルゲン、核タンパク質(核酸)、糖タンパク質、リポタンパク質、インスリンなどのホルモン、ウィルス、細菌、グルカゴン(ペプチド)、及びハプテンなどが含まれ、そのほかダニや花粉なども係る抗原になり得るが、本発明は特にアレルギー性タンパク質、それも加工食品中におけるアレルゲンの有無を検出し、これを定量する一助となる。これには、先ず加工食品をフードカッターなどにより破砕し、これに約等量の抽出用緩衝液を加えて破砕物の組織や細胞をホモジナイザーで破壊する。そして、これにより得られたホモジネート(懸濁液)を試料とし、この試料をアッセイプレートの各ウェル1内に一定量ずつ注入する。尚、抽出用緩衝液としては、リン酸塩、ホウ酸塩、クエン酸塩、炭酸塩、尿素などの溶液を用いることができる。
【0015】
ここに、試料中には加工食品の原材料成分が混和状態で存在するが、検出対象とするアレルゲンなどの抗原の多くは熱変性によりS-S結合、イオン結合、水素結合、疎水結合、又は脂質との結合などにより分子構造が大型化したコロイド状の不溶性成分(懸濁粒子)として液相中に分散し、一部は懸濁粒子より小さな可溶性成分として溶解している。
【0016】
そして、本発明によれば、各ウェル1内に注入した試料から不溶性抗原と可溶性抗原の双方を捕集するべく、透水性担体2として不溶性抗原と可溶性抗原を共に吸着することのできる三次元連続網目構造を有する繊維質又は微細多孔質の薄膜状部材が選ばれる。これには孔径0.01〜20.0μ、好ましくは0.02〜0.8μの濾材(半透膜)を用いることができる。その種の透水性担体2に試料中の不溶性抗原と可溶性抗原を吸着させるには、各ウェル1内に試料を注入せしめたアッセイプレートを例えば図3に示すような吸気装置(本例において日本ミリポア株式会社製バキュームマニホールド)の台座3上に載せ、その台座に接続する吸気源V(真空ポンプなど)により台座内の空気を吸引する。すると、その吸引力(負圧力)により、各ウェル内の試料のうち分子の小さい水などの溶媒が透水性担体を透過してウェル内から除去される一方、高分子の不溶性抗原及び可溶性抗原が透水性担体の物理的吸着作用によってこれに捕捉される。勿論、透水性担体には目的とする抗原のみならず、不要な物質も吸着されるが、それら不要物質は標識抗体の使用によるその後の抗原抗体反応操作により目的とする抗原と識別することができる。
【0017】
上記の抗原抗体反応操作は透水性担体への抗原の吸着直後に行っても良いが、好ましくは透水性担体への抗原の吸着後、各ウェル内にブロッキング液を注入してこれを抗原が吸着されていない透水性担体の部位に含浸せしめる。このブロッキング液は吸着物の存在しない透水性担体の空き領域を埋め、抗原抗体反応に供する標識抗体が透水性担体へ非特異的に吸着するのを防止するものであり、これにはスキンミルク、ゼラチン、動物血清由来成分、又はエチレングリコールなどの合成高分子(ポリマー)を好適に用いることができる。尚、透水性担体へのブロッキング液の含浸は、図3のような吸気装置による吸引力により行われ、これによりブロッキング液中の溶質成分fが透水性担体2の空き領域に吸着する(図4参照)。
【0018】
そこで、各ウェル内に特定の標識抗体を注入するのであり、これによればその標識抗体が透水性担体に非特異的に吸着せずして透水性担体に吸着した抗原にのみ接触する。尚、透水性担体に多種類の抗原が吸着している場合でも、特定の標識抗体はこれに対する特定の抗原に結合する。而して、所定の反応時間(約30分)を置き、図3のような吸気装置を用いて透水性担体の底部から標識抗体の水分を吸引除去した後、透水性担体に吸着された抗原と非結合の標識抗体を洗浄操作によって各ウェル内から除去し、抗原との結合によって透水性担体上に残った特定の標識抗体から特定の抗原を検出、定量することができる。因に、上記の洗浄操作は所定の洗浄液(界面活性剤等の水溶液)をウェルに注入し、これを図3のような吸引装置によりウェル内から吸い出すという操作を複数回(本例において5回)繰り返すことにより達成される。
【0019】
ここに、標識抗体とは標識物質により標識された抗体、換言すると特定の標識物質を結合した抗体であり、これには検出定量すべき抗原の種類に応じ、例えば卵アレルゲンの定量では抗オボアルブミン抗体、抗オボムコイド抗体、抗リゾチーム抗体、抗オボトランスフェリン抗体、牛乳アレルゲンの定量では抗カゼイン抗体、抗β-ラクトグロブリン抗体、抗ラクトアルブミン抗体、小麦アレルゲンの定量では抗グリアジン抗体、抗α-アミラーゼインヒビター抗体が用いられる。又、標識物質としては、フルオレセイン、イソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネートなどの蛍光物質を用いることができる。
【0020】
以上のような標識抗体はモノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でも良いが、好ましくは上記したものの中から選択される複数種の混合抗体とし、これを透水性担体に吸着された複数種の抗原にそれぞれ同時に結合させるようにすると良い。例えば、卵由来のアレルゲン抗原(例えば、オボアルブミンとオボムコイド)に対する抗オボアルブミン抗体と抗オボムコイド抗体との混合抗体を用い、それらに別々の標識物質(例えば、一方の抗体に赤色の蛍光を発する蛍光物質、他方の抗体に青色の蛍光を発する蛍光物質)を結合させる。これによれば、例えば一方のオボアルブミンの全ての抗原決定基(エピトープ)が熱変性によって失活してその定量が不能な場合でも、他方のオボムコイドに抗オボムコイド抗体が結合するので、その標識とした蛍光物質の蛍光強度から抗原(オボムコイド)を検出、定量することができることは勿論、オボムコイドの検出によって試料とした加工食品に原材料として卵が使用されていると判定できる。
【0021】
又、その他の例として、乳由来の抗原(例えば、β-ラクトグロブリン)に対する抗β-ラクトグロブリン抗体と、小麦由来の抗原(例えば、グリアジン)に対する抗グリアジン抗体との混合抗体を用い、それらに別々の標識物質(例えば、一方の抗体に赤色の蛍光を発する蛍光物質、他方の抗体に青色の蛍光を発する蛍光物質)を結合させる。これによれば、加工食品中の原材料に異なる複数種の抗原(本例においてβ-ラクトグロブリンとグリアジン)が含まれていても、一つの透水性担体、アッセイプレートによりそれらを同時に検出定量することができる。
【0022】
尚、標識物質として蛍光物質を用いた場合には、その蛍光強度を、蛍光光度計などを用いて測定する。
【0023】
そして、その測定値(蛍光強度)を標準曲線に照らして抗原を定量することができる。標準曲線とは、既知の抗原溶液を試料とし、これに特定の標識抗体を反応させて試料濃度別に蛍光強度を測定することにより得られるものであり、これは直交座標系に試料濃度に対応する蛍光強度をプロットしてグラフ化されるか、又はコンピュータに蓄積されて各種抗原を定量するための尺度とされる。
【0024】
(試験例)
鶏卵を10mg秤量し、これに10mlの抽出用緩衝液を加えてホモジナイザーにより3000rpmで3分間ホモジナイズし、これを2つに分け、その一方を95℃で3分間加熱して加熱試料Aとし、他方を非加熱試料Bとした。又、双方の試料A,Bをそれぞれ希釈用緩衝液により希釈し、それぞれ濃度が異なる3つの試料A1,A2,A3、及びB1,B2,B3を調製した。その一覧を下表1に示す(ここでの希釈はオボアルブミンの含有量が異なる加工食品を想定しての擬似検体を作成するための操作であり、実際の試料調製では行わない)。一方、標準溶液(既知抗原)としてオボアルブミン溶液(100ng/ml)を用い、これを希釈用緩衝液による希釈で濃度100%、50%、25%、12.5%、6.25%に調製した。
【0025】
【表1】
そして、透水性担体として孔径0.45μのセルロース混合エステルから成るメンブレンフィルター(日本ミリポア株式会社製MAHA-N45-10)を各ウェル(8×12)の底部に設けたアッセイプレートを用い、その各ウェル内に濃度が異なる5つの標準溶液、並びに希釈用緩衝液でそれぞれ10倍に希釈した試料A1〜A3、試料B1〜B3を0.2mlずつ注入し、そのアッセイプレートを振盪機に掛けた後に37℃下で30分間静置した。その後、吸気装置により各ウェル内の水分が空になるまでその底部から一斉に吸液し、次いで各ウェル内にブロッキング液を0.3mlずつ注入した。これを室温(20〜25℃下)で20分間静置した後、吸気装置によって各ウェル内の水分が空になるまでその底部から一斉に吸液し、次いで各ウェル内を洗浄液で満たし、これを吸気装置で底部から吸い出す洗浄操作を5回繰り返して行った。
【0026】
次に、標識抗体(フルオレセイン標識ウサギIgG抗オボアルブミン)溶液を各ウェル内に0.2mlずつ注入し、これを37℃下で30分静置した後、吸気装置により各ウェル内の水分が空になるまでその底部から一斉に吸液し、次いで上記と同じ洗浄操作を5回繰り返し行った。
【0027】
その後、蛍光光度計(TECAN社製Spectra Fluor Plus)により各ウェル毎に蛍光強度を測定し、先ず標準溶液の各濃度と蛍光強度の相関を示す標準曲線を回帰分析によって作成した(図5参照)。そして、各試料A1〜A3、及びB1〜B3の蛍光強度を図5の標準曲線又はその回帰曲線式に当てはめて対応する濃度を導き出し、これに各試料A1〜A3、B1〜B3の希釈倍率(10倍)を乗じることにより、それら各試料のオボアルブミン濃度を定量した。その結果を図6に示す(3回の測定による平均値)。
【0028】
図6から明らかなように、加熱試料と非加熱試料では同濃度の試料同士の間に大きな差異は認められない。よって、加熱、非加熱に拘わらず透水性担体に不溶性オボアルブミンと可溶性オボアルブミンの熱変性による失活以外の全てが吸着して良好な抗原抗体反応が行われたと言える。この事は、体内に経口摂取される全ての不溶性オボアルブミン量をインビトロで定量できたと言える(人が食べる加工食品を丸ごと測定するための試料となるので測定結果の信頼性が高い)。尚、本試験に用いた試薬の一覧を表2に示す。
【0029】
【表2】
(比較試験)
上記の加熱試料A1〜A3を従来の検体処理法に則って遠心分離機により20分間遠心分離し、その上澄み液をそれぞれ比較試料Z1〜Z3とした。そして、従来法のELISA(サンドイッチ法)に則って、各ウェル(8×12)の底部に抗オボアルブミン抗体が固定化されたポリスチレン製の固相担体を備えたアッセイプレートを用い、その各ウェル内に希釈用緩衝液でそれぞれ10倍に希釈した試料Z1〜Z3、並びに濃度調整したオボアルブミンの標準溶液を0.1mlずつ注入し、そのアッセイプレートを振盪機に掛けた後に室温下で1時間静置した。その後、各ウェル内の抗体と未反応の抗原を含んだ試料Z1〜Z3、並び各標準溶液を捨て、次いで各ウェル内を洗浄液で満たし、これを排出する洗浄操作を6回繰り返して行った。
【0030】
次に、標識抗体(酵素標識抗オボアルブミン抗体)溶液を各ウェル内に0.1mlずつ注入し、これを室温下で30分静置した後、未反応標識抗体溶液を捨て、次いで上記と同じ洗浄操作を6回繰り返し行った。次いで、酵素基質を各ウェル内に0.1mlずつ注入し、これを室温下で10分間静置した後、反応停止液を各ウェル内に0.1mlずつ注入した。
【0031】
その後、吸光光度計により各ウェル毎に吸光度を測定し、各試料Z1〜Z3の吸光度を図7の標準曲線(上記各標準溶液の吸光度に基づき作成したもの)、又はその回帰曲線式に当てはめて対応する濃度を導き出し、これに各試料Z1〜Z3の希釈倍率(10倍)を乗じることにより、それら各試料のオボアルブミン濃度を定量した。その結果を試料A1〜A3の測定結果と対比して図8に示す(3回の測定による平均値)。
【0032】
図8から明らかなように、従来法では低濃度のオボアルブミンが定量され、特に高濃度の試料A1,Z1の対比によれば、本発明に係る方法と従来法で測定結果に9倍近い差があり、本発明の優位性は歴然である。
【0033】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば不溶性抗原と可溶性抗原を透水性担体に吸着させるようにしていることから、従来のように目的とする抗原を固相担体に固定化した抗体に好適に結合させるべく、試料を遠心分離するという操作が不要となり、このため時間短縮を図れる上、可溶性抗原のみを測定系に供する従来法に比べて抗原の検出、定量精度を大幅に向上させることができる。
【0034】
又、従来のように特定の抗体を固定化した担体を使用しないので、抗原の検出、定量に掛かるコストを大幅に削減することができ、しかも透水性担体に吸着した多種類の抗原を一つの透水性担体で同時に検出することができる。
【0035】
更に、透水性担体に吸着した抗原に特定の標識抗体を結合させる前に、抗原が吸着されていない透水性担体の部位にブロッキング液を含浸せしめて透水性担体への標識抗体の非特異的吸着を阻止するようにしていることから、透水性担体への標識抗体の吸着による擬陽性を起こさない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に用いる透水性担体を備えたアッセイプレートを部分的に破断して示した平面図
【図2】 同アッセイプレートの部分拡大断面図
【図3】 吸気装置の使用態様を示した概略図
【図4】 透水性担体にブロッキング液を含浸した状態を示す説明図
【図5】 標準曲線を示すグラフ。
【図6】 本発明に係る方法で検出した抗原の濃度を示す図
【図7】 従来法により得た標準曲線を示すグラフ。
【図8】 本発明と従来法による抗原の検出濃度を示す比較図
【図9】 従来のELISAで使用するアッセイプレートの部分拡大断面図
【図10】 従来のELISA原理図
【符号の説明】
1 ウェル
2 透水性担体
Claims (3)
- 不溶性抗原と可溶性抗原とが混在する加工食品のホモジネートを試料とし、その試料を透水性担体に通し、これによって前記不溶性抗原と可溶性抗原とを前記透水性担体に吸着せしめた後、その透水性担体に吸着された複数種の抗原に対し、複数種の抗体にそれぞれ標識物質として別々の蛍光物質を結合させた複数種の標識抗体を接触せしめて抗原抗体反応を行わせ、その抗原抗体反応により特定の標識抗体が結合した抗原を該抗原に結合した標識抗体の標識物質である蛍光物質の蛍光強度から定量することを特徴とする免疫学的抗原検出定量法。
- 透水性担体に吸着された複数種の抗原に複数種の標識抗体を接触させる前に、抗原が吸着されていない透水性担体の部位にスキンミルク、ゼラチン、動物血清由来成分、又は合成高分子から成るブロッキング液を含浸せしめて透水性担体への標識抗体の非特異的吸着を阻止することを特徴とする請求項1記載の免疫学的抗原検出定量法。
- 透水性担体として、孔径0.01〜20.0μの濾材を用いる請求項1、又は2記載の免疫学的抗原検出定量法。
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