JP3850186B2 - 夜間視力計 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、運転適性検査などで使用される夜間視力計に関する。
【0002】
【従来技術】
被検眼に明順応をさせた後、夜間を想定した暗い視野内に視標を呈示し、被検者が判別可能であった視標視力を計測、又は視標が判別できるまでの時間を計測する夜間視力計が知られている。この夜間視力検査時における呈示視標の輝度については、判別可能であった視標視力を計測するタイプのものでは0.5cd/m2程度であり、視標が判別できるまでの時間を計測するタイプのものでは0.15cd/m2程度の視標輝度が低い状態で呈示される。
【0003】
また、夜間視力を評価する上では、通常視力との関係を考慮する必要があるので、同時に、通常の明るさで視標を呈示して判別可能な最高視力値を検査できるように構成されている。この通常視力検査時における呈示視標の輝度については、250cd/m2程度で行われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このように夜間視力検査時と通常視力検査時では、同じ視標を呈示する場合においても視標輝度に1000倍もの差がある。従来、視標光源にタングステンランプやハロゲンランプが使用されていたが、この種のランプの光量調整では色温度の違いが発生し、1つの光源で10倍以上の差のある明るさに設定することが困難であった。そのため、視標に必要な明るさの数だけランプ光源を準備する共に、ハーフミラーを介して視標を照明する構成としたり、フィルタで光量を調整する構成としていたので、構成が複雑でコスト高になるという問題があった。
【0005】
また、ハロゲンランプ等では発熱量が多くなる。この対応として、外部カバーに熱が伝わらないようにランプ光源回りのスペースを大きく設けたり、放熱機構を設けたりする必要があったので、装置が複雑化及び大型化するという欠点があった。
【0006】
本発明は、上記従来装置の欠点に鑑み、装置構成の簡素化、装置の小型化が可能で、経済的にも有利な夜間視力計を提供することを技術課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0008】
(1) 通常の明るさ空間で視標を呈示したときの視力を計測する通常視力検査手段と、被検眼に明順応をさせた後、暗い視野内に薄暗い輝度で視標を呈示し、視標を判別するまでの時間を計測する夜間視力検査手段とを備える夜間視力計において、前記視標を照明する視標光源を共通の白色LEDとすると共に、視力測定の種類の信号に基づいて白色LEDの調光回路を介して発光光量を調整し、通常視力測定時には通常視力測定に適した高輝度な視標を呈示するのに必要な発光量で白色LEDを発光させ、夜間視力測定時には夜間視力測定に適した低輝度な視標を呈示するのに必要な発光量で白色LEDを発光させる制御手段と、を備えることを特徴とする。
(2) (1)の夜間視力計は、さらに被検眼に眩光を与える光源を持つと共に、前記制御手段は、眩光下視力測定時には、夜間視力測定時及び通常視力測定時とは異なり眩光下視力測定に適した輝度の視標を呈示するのに必要な発光量で白色LEDを発光させることを特徴とする。
(3) (1)の夜間視力計において、前記制御手段は夜間視力測定時には夜間視力測定に適した低輝度な視標を呈示するのに必要な発光量で白色LEDを発光させるとともに、明順応後に第1の低輝度で視標を呈示している所定の時間内に被検者の応答信号が入力されないときは、白色LEDの発光量を増大させて明順応直後の視標の輝度よりも高い輝度とすることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る夜間視力計の外観を示した図である。
【0012】
1は装置本体であり、装置本体1の上部には被検者が装置の筐体内部に呈示される視標を覗き込むための双眼の検査窓2(2R,2L)が設けられており、装置本体1の側面には各種のスイッチを持つ操作パネル3、プリンタ8が配置されている。また、装置本体1の下部の前側には、本体内部に呈示された視標に対して被検者がその方向を応答するためのジョイスティック(レバー)5、視標を判読できたことを応答する時等に使用するボタン4が設けられている。6は自動検査モード時におけるスタートスイッチ、9は音声ガイドの指示が出力されるスピーカである。
【0013】
図2は装置内部の配置される光学系を側面から見たときの概略図であり、制御系の構成も共に図示している。また、図3は装置内部の光学系を上部から見たときの概略図である。
【0014】
左右の検査窓2R,2Lにはそれぞれレンズ10R,10Lが配置され、後方の視標窓15R,15Lにそれぞれ切替え配置される検査視標が被検眼ER,ELから見かけ上5mの検査距離にされる。左右の光路は中央に仕切り板を持つ筒状の内部カバー11R,11Lによって区分けされ、左右眼が視標を見る視野空間が個別に確保されている。この内部カバー11R,11Lは共に同一形状で、検査窓2R,2Lのそれぞれの中心軸01R,01L(レンズ10R,10Lのそれぞれの光軸)を中心にして左右の内壁面が対称に形成されており、後方の視標窓15R,15Lも同一位置に設けられている。したがって、左右両眼で検査窓2R,2Lを介して内部を観察したときには、左右眼単独で内部を観察したときと同様に、2つの視標窓15R,15Lは融像して1つに見えると共に、内部カバー11R,11Lも左右の壁が同じ状態で1つの空間として観察される。このため、被検者は光学的に遠方距離(5m)に置かれる検査視標を違和感なく見ることができる。
【0015】
視標窓15R,15Lに検査視標を切替え配置する視標呈示部20は、1枚の視標ディスク板21と、視標ディスク板21を回転駆動するためのパルスモータ22と、視標ディスク板21上の視標を照明する視標光源としての白色LED24R,24Lからなる。LEDは発熱が少なく、ハロゲンランプ等に比べて遥かに寿命が長いので、長期間の装置の使用においても光源の交換を殆ど必要としない。
【0016】
視標ディスク板21は透光性を持つガラス基板からなり、その基板上には視力値0.1〜1.0、1.2、1.5の12段階でそれぞれ左右上下の4方向のランドルト環視標が遮光性を持つクロムコートにて形成されている。この検査視標は、対となる右眼呈示用と左眼呈示用の同一視標を左右眼に同時に呈示できるように、2つの視標窓15R,15Lの位置関係に対応させ形成されている。また、視標ディスク板21上には検査視標の他、夜間視力検査における明順応時に視標窓15R,15Lを遮蔽するための遮蔽板が設けられている。
【0017】
視標ディスク板21上の視標はモータ22の回転により対となる同一のものが視標窓15R,15Lに配置され、各視標はLED24R,24Lにより照明される。通常視力測定時はLED24R,24Lの点灯により250cd/m2程度の輝度で検査視標が呈示され、視力回復時間測定時にはLED24R,24Lの光量を落とすことにより通常は0.15cd/m2程度の薄暗い輝度にされて検査視標が呈示される。LED24R,24Lの光量調整は、制御部30からの指示に従って調光回路25による供給電流の制御によって行われる。
【0018】
また、内部カバー11R,11Lの内面にはつや消しの白塗装が施されており、通常視力測定時には照明光源12R,12Lが点灯され、夜間視力検査のための明順応時には照明光源13R,13Lが点灯され、それぞれ所定の明るさに照明される。これらの光源はその照明光が直接被検眼に入射しない位置に置かれている。また、各視標窓15R,15Lの左右には、眩光下視力測定時等に点灯させる光源14(車両ヘッドランプ相当の輝度を持つ)がそれぞれ配置されている。この光源にも前述と同様に白色LEDを用いることができる。眩光下視力測定は光源14を点灯することにより、夜間の車の運転時に対向車の前照灯などによる眩しさを受けたときの視力の影響を検査する。
【0019】
図2において、30は装置全体を制御する制御部であり、各光源、パルスモータ22、スピーカ9に接続された音声ガイド発生部31、応答ボタン4、ジョイスティック5、操作パネル3等の他、検査プログラムを記憶したメモリ33が接続されている。
【0020】
次に、以上のような構成を備える装置の動作を説明する。なお、本装置には手動モード、自動モード(音声ガイドに従って被検者がジョイスティック5等を操作することで検査プログラムが進められるモード)、半自動モード(自動モードに対して被検者の口頭による応答内容を検者が入力することにより検査プログラムが進められるモード)の3つの検査モードが用意されており、操作パネル3のモード選択スイッチ40により何れかを選択することができる。以下では自動モードによる検査を説明する。自動モードは通常視力測定(5m視力測定)、視力回復時間測定(夜間視力検査)、眩光下視力測定が順次進められるようにプログラムされており、測定眼は予めスイッチ部41により検者が指定をしておく。測定眼は右、左、及び両眼の指定ができる。ここでは両眼が指定されているものとする。
【0021】
被検者がスタートスイッチ6を押すことにより、まず通常視力測定が開始される。制御部30は光源12R,12Lを点灯して内部カバー11R,11Lの空間を25cd/m2の輝度にする。また、パルスモータ22の駆動を制御すると共に、調光回路25を介してLED24R,24Lの点灯を制御し、視標窓15R,15Lに視力値0.5の視標を250cd/m2程度の輝度で呈示する。
【0022】
通常視力測定に際しては、音声ガイドにより視標方向が判別できたら被検者はジョイスティック5をその方向に倒すように指示される。被検者が視標の判別結果をジョイスティック5で応答すると、制御部30によりその正誤が判定される。応答が正しければ、一段階上げられた視力値の視標が呈示され、誤りであれば一段階下げられた視力値の視標が呈示される。一段階上げて誤答もしくは判別できなくなった場合(判読不能の場合は応答ボタン4を押してもらう)には視力値を見えていた段階まで戻し、さらに視標方向を変えて検査を続ける。制御部30による正誤の判定により、同一視力視標で2回以上正答があれば、その視力があるものとして視力値が判定される。
【0023】
続いて視力回復時間測定のプログラムが実行される(図4、図5のフローチャートを参照)。音声ガイドにより、ランプが点灯して30秒間明るくなる旨がアナウンスされた後、光源13R,13Lが点灯されて被検眼が見る視野空間が照明され、被検眼に明順応させる時間計測が開始される。この間、視標窓15R,15Lには視標ディスク板21に設けられた遮蔽板が置かれる。
【0024】
明順応時間の終了に近づくと、音声ガイドにより「暗くなった後、視標が見えたら直ぐに輪の切れた方向にレバーを倒して下さい」という旨のアナウンスがされる。明順応時間の終了後、光源13R,13Lが消灯されるとともに視標窓15R,15Lには視力値0.2の視標が置かれ、その視標はLED24R,24Lによって0.15cd/m2程度の薄暗い輝度で呈示される。制御部30は視標呈示開始からの時間を計測しており、ジョイスティック5による判読結果の応答入力をチェックする。ここで、60秒経過しても応答入力がない時(応答が誤りであった場合も同様)、視標輝度が最初の2倍の明るさ(0.30cd/m2程度)にアップされる。さらに70秒経過しても応答入力が無い時は、最初の3倍の明るさ(0.45cd/m2程度)に視標輝度がアップされ、80秒経過後は最初の4倍の視標輝度にアップされる。このように60秒経過した後は、単に測定終了とする時間を延ばすだけでなく、10秒経過する毎に順次視標輝度をアップさせていくことにより、最初の視標輝度では応答ができなかった被検者であっても、視標を視認できる可能性が高くなる。90秒経過したときは測定結果を「90秒経過」とし、測定が終了される。
【0025】
ジョイスティック5による応答入力があると、制御部30によりその正誤が判別される。応答が誤りで、それが1回目のときは(連続して2回誤りでないときは)、呈示する検査視標の方向が変更された後、さらに「輪の切れた方向にレバーを倒して下さい」という旨のアナウンスがされ、測定が継続される。応答が誤りのときは、視標の視認が確実にできていないので、測定結果と扱わないものとする。そして、再び応答入力があり、その応答が2回連続して誤りのときは、自動的に明順応からの再測定が行われる。なお、再測定は1回までとしてあり、再測定を行っても応答が2回連続して誤りの場合には測定が中止され、視力回復時間の測定自体が終了とされる。
【0026】
ジョイスティック5による応答入力が正答と判定され、それが1回目のときは(連続して2回の正答でないときは)、上記と同様に呈示する検査視標の方向が変更された後、「輪の切れた方向にレバーを倒して下さい」という旨のアナウンスがされる。そして、次の応答入力が再び正答で、かつそれが前の正答の応答から5秒以内であったときは、2回連続した正答となり、被検者は視標が視認できているものと判断できるので、連続した初めの応答時の計測時間が測定結果(視力回復時間)とされる。ここで、前の正答の応答から5秒経過した場合は、前の正答は信頼性が薄いことになるので(つまり、前の応答時に確かに視標が視認できていれば、次の呈示視標の応答は速く行えるはずであるので)、2回連続した正答とせずに前の応答は誤りとして扱い、今回の正答の時間を1回目の正答時間とする。
【0027】
以上のようにして、2回連続した正答があったときに、その初めの応答時間を視力回復時間とすることにより、測定結果の信頼性を向上することができる。また、1回の誤答では(連続した2回の誤答でないときは)そのまま測定が継続されるので、無用に再測定を行わなくて済む。
【0028】
視力回復時間の測定が終了すると、次に眩光下視力測定が行われる。音声ガイドにより被検者は視標を注視して呈示視標の方向を応答するように指示された後、視標窓15R,15Lの両側の光源14が点灯される。視標窓15R,15Lには視力値0.5の視標(又は通常視力測定で最終的に判定された視力値を持つ視標)が、LED24R,24Lによって10cd/m2程度の輝度で呈示される。そして、通常視力測定と同様に応答内容の正誤が制御部30によって判定される。その結果によって次の呈示視標が決定され、同一視力視標で2回以上正答があれば、その視力があるものとして視力値が判定される。
【0029】
検査が終了すると、プリンタ8から各測定結果、各測定の判定結果、総合指導内容が自動的に印字出力される。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、視標光源として白色LEDを使用し、このLEDへの電流の制御することにより、色温度の問題がなく、1つの光源で10倍以上の輝度差を含む複数の明るさを設定することができる。これにより、光源の個数や余分な光学素子を省いて構成を簡素化できる共に、保守性の向上を図ることができる。また、視標光源からの発熱量の削減ができ、コンパクトな装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る夜間視力計の外観を示した図である。
【図2】装置内部の配置される光学系を側面から見たときの概略と、制御系の概略を示した図である。
【図3】装置内部の光学系を上部から見たときの概略図である。
【図4】視力回復時間の測定を説明するフローチャートを示した図である。
【図5】視力回復時間の測定を説明するフローチャートを示した図である。
【符号の説明】
1 装置本体
2R,2L 検査窓
11R,11L 内部カバー
14 光源
15R,15L 視標窓
20 視標呈示部
21 視標ディスク板
24R,24L LED
25 調光回路
30 制御部
Claims (3)
- 通常の明るさ空間で視標を呈示したときの視力を計測する通常視力検査手段と、被検眼に明順応をさせた後、暗い視野内に薄暗い輝度で視標を呈示し、視標を判別するまでの時間を計測する夜間視力検査手段とを備える夜間視力計において、前記視標を照明する視標光源を共通の白色LEDとすると共に、視力測定の種類の信号に基づいて白色LEDの調光回路を介して発光光量を調整し、通常視力測定時には通常視力測定に適した高輝度な視標を呈示するのに必要な発光量で白色LEDを発光させ、夜間視力測定時には夜間視力測定に適した低輝度な視標を呈示するのに必要な発光量で白色LEDを発光させる制御手段と、を備えることを特徴とする夜間視力計。
- 請求項1の夜間視力計は、さらに被検眼に眩光を与える光源を持つと共に、前記制御手段は、眩光下視力測定時には、夜間視力測定時及び通常視力測定時とは異なり眩光下視力測定に適した輝度の視標を呈示するのに必要な発光量で白色LEDを発光させることを特徴とする夜間視力計。
- 請求項1の夜間視力計において、前記制御手段は夜間視力測定時には夜間視力測定に適した低輝度な視標を呈示するのに必要な発光量で白色LEDを発光させるとともに、明順応後に第1の低輝度で視標を呈示している所定の時間内に被検者の応答信号が入力されないときは、白色LEDの発光量を増大させて明順応直後の視標の輝度よりも高い輝度とすることを特徴とする夜間視力計。
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