JP3849849B2 - 指紋照合装置およびそのプリズム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は指紋照合装置およびそのプリズムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
指紋照合装置は、種々の分野で本人確認のための一手法として広く利用されており、あらかじめ本人の指紋が電子情報として記憶されている。指紋照合に際しては、プリズム等の透明部材に形成された指紋照合面に押しつけられた指先の指紋を光学的に読み取って、読み取った指紋を電気信号に変換し、この変換された電気信号を上記記憶されている電子情報と比較することによりにより、本人であるか否かの判別が行われる。照合面にタッチされた指先の指紋読取のために、光源からの検知光が照合面に照射されて、この照合面からの反射光が撮像手段に入射されることになる。
【0003】
照合面には、他人の指紋を金属、紙、プラスチック等の適宜の部材に転写して、転写した指紋を利用して本人でないにもかかわらず本人であるかのように偽装することが考えられる。このような偽装防止のために、照合面に生体であることを検知する電極膜を形成することも提案されている(例えば特開2000−98048号公報、特開平10−165382号公報、特開平9−46205号公報)。
【0004】
指先がタッチされる照合面を構成するため、マイクロプリズムアレイと呼ばれる全体的に薄板状のものがある。このものは、薄い透明板材の裏面側に、小さい透明な2等辺3角形状を多数並べて構成したもの、つまり極めて薄いプリズムを多数並べた構造のもので、肉眼では単なる一枚の平板状の板材として把握される。
【0005】
マイクロプリズムアレイは、照合面を含むプリズムを平板状に薄く形成するという利点を有する反面、薄いために、マイクロプリズムアレイを通過する光の減衰度合いが弱く、また、入射/屈折して出射まで進む距離も短いため、基本的に外乱光に弱くなってしまうという問題がある。すなわち、照合面にタッチした指先の周囲から差し込む光量が大きい外乱光が、マイクロプリズムアレイをほとんど直進して通過し、縮小光学系第1レンズに入射し結果的にCCDを飽和させてしまい、良好な指紋画像が取得できない。太陽光等の外乱光は、指紋照合装置光源に比べてかなり光量が大きいため、マイクロプリズムアレイのような、外乱光エネルギーのレンズ入射効率が良いものにおいては、シャッター速度UPと寿命実用限度内光源輝度アップにより「指紋パターンを構成する反射光>>外乱光」とすることはできない。指紋照合装置を、例えば自動車における乗車許可用として使用する等屋外で使用する場合は、太陽光の影響を大きく受け照合できない場合が多発する。
【0006】
一方、照合面を、例えば三角プリズムの所定面に形成したものもある(例えばPCT/US99/17844の国際公開公報参照)。すなわち、断面三角形とされたプリズムのうち、所定の頂角と対向する対向面を照合面とし、この照合面を交差する2つの側面の一方を、光源からの検知光が入射される入射面とし、他方の側面を照合面からの反射光が出射される出射面とするものがある。
【0007】
断面三角形のプリズムに照合面を構成するものにあっては、照合面から入射される外乱光は、プリズム照合面に入射/屈折して長い距離を移動しなければならないので、プリズムから出射した外乱光は、縮小用光学系第1レンズから大きくそれる。その結果、プリズムから出射され縮小用光学系第1レンズに入射する外乱光光量は、マイクロプリズムアレイの場合よりもかなり小さくなる。その結果、シャッター速度UPと寿命実用限度内の装置光源輝度アップにより「外乱光<<指紋パターンを構成する反射光」の関係を実現でき、外乱光によるCCDの電荷飽和は抑えられる。このようなプリズムは、通常、光学ガラスを加工することにより形成されて、全体的な外観形状は三角柱構造となる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、外乱光の悪影響を低減させてシャッター速度を速くするという観点から、断面略三角形のプリズムを利用するのが好ましいものとなる。しかしながら、従来のこのようなプリズムを利用した指紋照合装置にあっては、プリズムの形状設定等を指紋照合装置に最適な構造として設定したものとはなっておらず、この点において改善の予知がある。
【0009】
この改善が望まれる点について詳述すると、まず、プリズムをケース等に対して精度良く位置決めすることが、光学系全体としての精度を高めて、指紋照合判定を精度よく行う上で重要となる。しかしながら、従来のプリズムは、ケース等に対する位置決めのために特別の形状等を採択する等の工夫をしておらず、この点において対策が望まれることになる。
【0010】
次に、プリズムは通常ケース内に収納されて、プリズムの照合面はケースに形成された開口部に位置されることになる。この場合、少なくともケースの肉厚の分だけ、照合面がケース表面から低い位置となる。つまり、照合面の周囲には、少なくともケースの肉厚に相当する段差面が位置することになる。このような段差面が存在すると、爪が長い者が照合面にタッチしようとすると、爪先が開口部の周縁部に当接して、指先が照合面に対してしっかりと密着させることが難しくなる。照合面に対する指先の密着性が悪くなると、指紋照合判定を精度よく行うことが困難になる。このような事態を解消するために、照合面の面積を大きく、特にタッチされる指の長手方向に長くなるように照合面を形成することが考えられるが、この場合は、照合面からの外乱光の入射量が多くなり、照合面を大きくするには限界がある。
【0011】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、プリズムのケース等に対する組付性を良好なものとすることができ、しかも照合面に対する指先の密着性も良好に確保できるようにした指紋照合装置およびそのプリズムを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明における指紋照合装置にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
光源(例えば図2の光源11)からの検知光を指先(例えば図2の指先Y)がタッチされる照合面(例えば図2の照合面13a)で反射させて撮像手段(例えば図2のCCD18)に入射させるようにした指紋照合装置において、
開口部(例えば図2の開口部3)が形成された所定面(例えば図2のケースKの前面部2b)と、
前記所定面の裏面側に配設され、光学プラスチックによって断面略3角形に形成されたプリズム(例えば図2のプリズム13)と、
を有し、
前記プリズムのうち所定の頂角と対向する対向面が、前記開口部に位置される前記照合面(例えば図2の照合面13a)とされており、
前記プリズムのうち前記所定の頂角を挟む2つの側面のうち一方の側面が、前記光源からの検知光が入射される入射面(例えば図2の入射面13c)とされると共に、他方の側面が前記照合面で反射された検知光が出射される出射面(例えば図2の出射面13d)とされ、
前記照合面の周囲には、フランジ面(例えば図2のフランジ面13f)が形成されており、
前記照合面は、前記フランジ面を前記所定面の裏面側に位置させた組付状態で、前記所定面の表面とほぼ面一となるように、前記フランジ面よりも若干高くなるように突出形成され、
前記開口部の内周面形状と前記照合面の外周面形状とが、ほぼ楕円形とされ、かつ、ほぼ合同形状の関係となるように形成されている、
ようにしてある。
【0013】
上記解決手法によれば、フランジ面そのものは指紋照合のための光学系に必要な機能部ではないので、フランジ面を利用して、所定面に対する位置決めや取付けを容易かつ精度よく行うことができる。また、照合面の周囲には、照合面側へ突出する段差部分が存在しないので、爪の長い者が照合面にタッチしても、長い爪にぶつかる障害物がなく、照合面への指先の密着性を常に良好に確保されることになる。勿論、開口部に対して突起物となる照合面をがたつきなく嵌合させる構造とすることにより、照合面の周囲方向の位置決めを精度よく行うことが可能となる。勿論、プラスチックにより形成するので、形状設定の自由度は光学ガラスで形成する場合よりもはるかに高いものとなり、かつコスト的にも有利となる。
さらに、開口部の内周面形状と照合面の外周面形状とをほぼ合同形状の関係とすることにより、照合面の周囲からの外乱光の入射という事態を防止あるいは抑制する上で好ましいものとなる。
また、照合面に指先をタッチしとき、タッチ部分の形状は通常ほぼ楕円形状となるので、照合面をほぼ楕円形とすることにより、照合面の面積を極力小さいものとして照合面からの外乱光の入射を極力抑制する上で好ましいものとなる。
【0014】
頂角が90度の2等辺3角形を想定したときに、前記照合面が前記90度の頂角に対向する辺に沿う面となるように設定され、前記入射面と出射面とが互いに90度の角度をなす辺に沿う面となるように設定されている、ようにすることができる。
【0015】
前記所定面が、ケース(例えば図2のケースK)の一部の面(例えば図2の前面部2b)によって構成され、
前記プリズムと撮像手段との間に、プリズムからの検知光を縮小させて前記撮像手段に入射させると共にその光軸が1直線となるように設定された縮小用の光学系(例えば図2のレンズ14〜16)が配設され、
前記ケース内に、前記プリズムと光源と撮像手段と縮小用の光学系とが配設され、
前記ケースが前記光軸線に対して傾斜された傾斜面(例えば図2のケースKの前面部2b)を有して、前記傾斜面に前記開口部が形成されており、
前記プリズムが、その入射面が前記光軸に対して平行な状態でかつその出射面が前記光軸と直交する状態で、前記照合面が前記開口部に位置されており、
前記光源が、プリズムの近傍でかつ前記入射面に対向させて位置されている、
ようにすることができる。この場合、光源から撮像手段に到るまでの一連の光学系をケース内に1セット化して収納することができる。特に、プリズムから撮像手段を結ぶ方向に細長い構造とする場合に好適となる。
【0016】
前記開口部の内周縁部には、前記照合面との間をシールする環状のシール部材(例えば図11のシール部材30)が配設されている、ようにすることができる。この場合、ケース内への塵埃等の侵入が防止される他、屋外に露出して使用される場合には、雨水の浸入をも防止することができる。また、照合面の周囲より外乱光が不用意に撮像手段に入力されてしまう事態を防止する上でも好ましいものとなる。
【0019】
前記照合面とフランジ面との段差部分の側面形状が、前記フランジ面に向かうにつれて徐々に広がるようにテーパ面(例えば図2のテーパ面13g)とされている、ようにすることができる。この場合、フランジ面から直角に照合面を立ち上げる場合に比して、プリズムを成形し易いものとなる。
【0020】
前記照合面に、生体検知用の電極膜(例えば図5の電極41、42)が形成され、
前記電極膜が、前記テーパ面に沿った後前記フランジ面に伸びるように形成されている、ようにすることができる。これにより、電極膜を部分的にきつく折曲させることなく、配設することが可能となる。
【0021】
前記目的を達成するため、本発明における指紋照合装置用のプリズムにあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項7に記載のように、
光学プラスチックによって断面略三角形に形成されて、所定の頂角に対向する対向面と前記所定の頂角を挟む2つの側面とを有し、
前記対向面が指先(例えば図2の指先Y)がタッチされる照合面(例えば図2の照合面13a)とされ、
前記2つの側面のうち一方の側面が、光源からの検知光が入射される入射面(例えば図2の入射面13c)とされると共に、他方の側面が前記照合面で反射された検知光が出射される出射面(例えば図2の出射面13d))とされ、
前記照合面の周囲には、フランジ面(例えば図2の13f)が形成されており、
前記照合面が前記フランジ面よりも若干高くなるように突出形成され、
前記照合面の形状がほぼ楕円形とされている、
ようにしてある。
【0022】
前記照合面とフランジ面との段差部分の外周面形状が、照合面に向かうにつれて徐々に細幅となるようにテーパ面(例えば図2のテーパ面13g)とされている、ようにすることができる。
【0023】
なお、以下の実施形態においては、指紋照合面に生体検知用の電極膜を形成するようにしてあるが、この電極膜は存在しないものであってもよい。
【0024】
【発明の実施の形態】
図1、図2において、指紋照合装置のケースKは、底板1と上蓋2とを有する。上蓋2は、ケースKの上面部2a、前面部2b、後面部2c、左右の側面部2dを有し、底板1に対して着脱自在として一体化されている。
【0025】
ケースK内には、基板10、LEDを利用して構成された光源11、拡散板12、プリズム13、第1レンズ14、第2、第3のレンズ15、16、CCDカバーガラス17、CCD18、アイリス19等が装備されている。CCD18は、CMOSイメージャとすることもできる。
【0026】
上記基板10は、底板1に沿って当該底板10に固定されている。上記光源11と拡散板12とプリズム13とは、第1保持体21を利用して一体的に組み付けられた状態で、底板1の所定位置に固定されている。上蓋2の前面部2bには、プリズム13に対応した位置において開口部3が形成されている。プリズム13の所定面が開口部3を施蓋するようにケースKの外部に臨んでおり、この所定面が指先Yがタッチされる指紋照合面13aとされている。なお、指紋照合面13aつまり上蓋2の前面部2bは、指先Yがタッチし易くなるように底板1に対して傾斜されている。上記第1保持体21は、プリズム13への入射光量が極力多くなるように、リフレクタ(反射板)の機能を有するようにその内面が白色とされている。
【0027】
プリズム13からの反射光は、第1レンズ14、アイリス19、第2レンズ15、第3レンズ16を経ることによりほぼ平行光線とされて、最終的にCCD18に入力される。CCD18に入力された反射光は電気信号に変換され、この電気信号は、基板10を介して、ケーブル23、コネクタ24を介して、パーソナルコンピュータ等の処理装置に供給される。
【0028】
前記各レンズ14〜16、カバーガラス17およびCCD18は、第2保持体22に保持されている。ただし、第2レンズ15、第3レンズ16は、第3保持体20を介して第2保持体22に保持されている。図2に示される光源11から撮像手段としてのCCD18に到る光学経路が、わかりやすく図3に示される。この図3において、光源11で発光された検知光は、拡散板12によって均一に拡散されてプリズム13に入力される。プリズム13に入力された検知光は、指紋照合面13aにタッチされた指先Yで反射された反射光となるが、この反射光は指紋形状に応じたものとなる。
【0029】
第1レンズ14は、入射面14a、出射面14bがそれぞれ凸となった両面凸レンズとされている。また、第2レンズ14と第3レンズ15とは共働して1つのレンズ群を構成すべく互いに近接配置されて、第1レンズ14とは離れた位置でかつカバーガラス17に近い位置に配設されている。
【0030】
第2レンズ15は、入射面15aが平坦面とされ、出射面15bのみが凸となった片面凸レンズとされている。第3レンズ16は、入射面16aのみが凸とされて、出射面16bは平坦面とされた片面凸レンズとされている。そして、片面凸レンズとされた第2レンズ15と第3レンズ16とは、その凸面同士が向き合う状態で近接配置されている。
【0031】
照合面13aの延長線E1と、レンズ15、16からなる1つのレンズ群の主面(第3レンズ16の主面)の延長線E2と、CCD18における撮像面の延長線E3とは、1つの点Pで交差するように設定されている(シャインプループの条件の完全な成立)。なお、シャインプループの条件を完全に満足させるまでには到らないがほぼ満足できるように、延長線E1とE2とE3とがほぼ1点で交差するように設定してもよい。
【0032】
第1レンズ14の各凸面14a、14bの曲率半径は互いに等しく設定されている。第2レンズ15は、第1レンズ14に対して、凸面14bの焦点位置よりも遠い位置に設定されている。第2レンズ15の凸面15bの曲率半径と、第3レンズ16の凸面16aの曲率半径とは、互いに等しくなるように設定されている。そして、第3レンズ16を通過した反射光は、光軸に対してほぼ平行となるように設定されている(実施形態では完全平行に設定)。
【0033】
図2、図3および前述の説明から明らかなように、照合面13aからの反射光が各レンズ14、15、16を経てCCD18に到るまでの光学経路は、一直線とされている。また、照合面13aの面積よりもCCD18の撮像面積の方が小さくされて、レンズ14〜16は画像縮小用とされている。
【0034】
ここで、照合面13aとCCD18における撮像面との光軸方向長さとなる共役長さは、同じ画質を得るのに、4fレンズ系の場合に112mmであったものが、図3の実施形態のものでは55mmにすることができた。
【0035】
次に、プリズム13に着目してその詳細について、図4〜図8をも参照しつつ説明する。まず、プリズム13は、光学プラスチックを例えば射出成形することにより、例えば図4に示すような形状に形成されている。プリズム13は、その指紋照合13aに後述のように膜形成が行われているが、この膜は薄いので、実質的に図4に示されるプリズム形状は、光学プラスチックからなるプリズム本体31の形状そのものと考えることができる。
【0036】
プリズムつまりプリズム本体31は、光学経路を考えたときに、断面略3角形とされて、2等辺頂角を有するブロック状とされている。実施形態では、2等辺直角3角形を想定したとき、所定の頂角としての90度の角度部分に対向する対向面が、照合面13aとされる、また、90度の頂角を挟む2つの側面13c、13dのうち、一方の側面13cが、光源11からの検知光が入射される入射面とされ、他方の面13dが出射面とされる。入射面13cと出射面13dとは、互いに90度の角度をなすことになり、照合面13aに対してはそれぞれ45度の角度をなしている。
【0037】
レンズ14〜16等の光軸に対して、照合面13aは45度の角度をなし、入射面13cは平行であり、出射面13dは直交している。そして、所定の頂角としての90度の角度部分は、先端が鋭利とされることなく、照合面13aと平行な平坦な特定面13eとして形成されている。
【0038】
照合面13aは、ほぼ楕円形とされているが、これは、指先Yがタッチされたときに、タッチされる部分の軌跡がほぼ楕円形になることを考慮したものである。照合面13aの形状は、楕円形以外の任意の形状とすることもできるが、タッチされる指の方向に細長くなるようにし、しかも少なくとも指の先端側となる端部形状は、指の先端形状に合わせて丸く湾曲された形状に設定するのが好ましい。勿論、このような好ましい形状設定は、照合面13aに指先Yがタッチされた状態で、外乱光が指先Yの周囲から照合面13aに極力入射されないようにするためである。
【0039】
前記フランジ部13bの上面(表面)つまり照合面13a側となる面が、フランジ面13fとされる。このフランジ面13fは、照合面13aの全周囲に存在されている。照合面13aは、フランジ面13fから若干高くなるように突出形成されているが、この突出高さは、開口部3の周縁部におけるケースKの肉厚とほぼ同じとなるように形成されている。そして、照合面13aの形状がほぼ楕円形とされている関係上、フランジ面13fからは、照合面13aを構成するためにほぼ楕円柱状の突起部つまり段差部分が形成されることになる。このほぼ楕円柱状の突起部つまり段差部分の側面の形状が、フランジ面13fに向かうにつれて徐々に広がるようにテーパ面13gとされている。
【0040】
照合面13aの外周面形状がほぼ楕円形に形成されているのに伴って、開口部3の内周面形状も、ほぼ楕円形に形成されている。開口部3の内周面形状は、照合面13aの外周面形状に対応して適宜設定されるが、この両者の形状は互いにがたつきなく嵌合できるようにほぼ合同形状としておくのが好ましい。
【0041】
プリズム13でケースKの開口部3を塞いだとき、フランジ部13bが開口部3の内方周縁部の内面に当接されると共に、指紋照合面13aが開口部3の周縁部にあるケースKの外面とほぼ面一となるようにされる。必要に応じて、別途ねじ等の固定具をフランジ部13bに対して作用させて、プリズム13をより一層しっかりとケースKに対して固定することも可能である。
【0042】
プリズム本体31を光学プラスチックによって射出成形するとき、図6に示すように、金型のパーティングラインが符号αで示され、このラインαはフランジ部13bの上面高さ位置となるように設定されている。そして、プラスチックの金型内への流入方向(ゲートの位置)が、フランジ部13bに沿って設けられている。イジェクタピン29(図8破線で示し、図6矢印βでイジェクト方向を示す)は、プリズムの頂角部分とフランジ部13bの位置に対応して設けられている。
【0043】
プリズム本体31のうち指紋照合面13aを有する面には、膜が成形されている。この膜は、生体検知膜としての電極膜32と、その保護膜としてハードコート33との2種類とされている。図5の平面図では、電極膜32の存在を明確に示すために電極膜32部分に右上がりのハッチングを施してあり、同様にハードコート33の存在を明確に示すためにハードコート33部分に右下がりのハッチングを施してある。
【0044】
まず、電極膜32は、互いに近接配置された第1電極41と第2電極42とからなり、例えばITO膜等によって透明膜として形成されている。各電極膜41と42とは、ほぼ楕円形状とされた指紋照合面13aの長円方向の中心部分が境界となるようにほぼ左右対称形状に形成されて、それぞれフランジ部13bまで延設されている。そして各電極41、42には、リード線(平衡線)43あるいは44がハンダ付けされている。このハンダ付けに際しては、ハンダ材として、通常のハンダ材にZn、Sb,Ti,Si,Al,Cuなどを添加した低融点金属酸化物用ハンダ材を用い、超音波ハンダ装置によるハンダ付けを行うことによって、プラスチックからなるプリズム本体31へのダメージを防止することができる。電極膜32がITO膜のようにハンダ材の構成物質であるSn等を含むものであれば、中間層にNi/Ni−Cu合金/Cr等のバリア膜を設けて移行現象による変質を防止するのが好ましい。
【0045】
プリズム本体31のうち、指紋照合面13aが形成されている側の面は、その全面積に渡ってハードコート33が施されている。ハードコート33は、無孔質で透明とされている。このようなハードコート33は、例えばシリコン系塗料、アクリル系塗料またはウレタン系塗料を、UV硬化または加熱硬化させることによって形成することができる。あるいは、この他、透明保護膜材要求性質として適当なものを用いることができる。このようなハードコート33は、電極膜32を全体的に被覆しているのみならず、電極膜32の全周囲にも位置されている。このハードコート33は、リード線43、44のハンダ付け部分をも被覆している。
【0046】
ハードコート33そのものは、金属やプラスチックへの密着性が極めて良好なので、電極膜32のプリズム本体31からの剥離が確実に防止される。また、プリズム本体31と電極膜32とハードコート33との間には大きな線膨張の相違がないので、温度変化に伴うクラック発生ということも防止される。ハードコート33は無孔質であるので、溶剤等がハードコート33を通して電極膜32やプリズム本体31と電極膜32との境界面に到達することもなく、電極膜32の保護がより一層確実に行われる。勿論、ハードコート33は、繰り返しの指先タッチ等によっても摩耗や損傷を受けることもなく、長期に渡って電極膜32の保護機能を持続することができる。
【0047】
ハードコート33に要求される特性として、前述のように無孔質で透明であること(光透過率が70%以上であることが好ましい)に加えて、次のような条件を満足することが好ましいものである。すなわち、電極膜32との関係上、比誘電率が6以下であることが好ましく、厚みは70μm以下であることが好ましい。また、幅広い温度環境下で使用する場合(例えば自動車に使用の場合)、耐熱性(85度C以上)や耐寒性(−45度C以下)も考慮することが好ましい。
【0048】
実施形態では、光学プラスチックからなるプリズム本体31をJSR製ARTON(120度Cの耐熱性、吸水率1%以下、比誘電率4以下)で製作してある。また、電極膜32をITO膜として、膜厚1.5μm以下に形成してある。ハードコート33としては、三菱レーヨン製のUV硬化型アクLリル系ハードコート塗料(製品番号UR−1104)を用い、スプレー塗装で厚さ15μmにコントロールした。なお、厚さコントロールには、スプレー塗装以外にスピンコートを用いることもできる。このようにして形成したプリズム13を、−45度Cと80度Cとの間での温度変化を250サイクル与えた後、85度Cの高温で500時間放置した後の状態において、プリズム本体31、電極膜32およびハードコート33には、クラック発生や剥離等の異常はなんら発生しなかった。
【0049】
前述した電極膜32は、どのように呼称しようが、指先Y等の生体がタッチされたときにその電磁気的特性が変化するものであれば、適宜の構成とすることができる。すなわち、生体がタッチされたときに電気抵抗値や電気容量値の一方または両方が変化して、この変化が、生体以外の物質(例えば紙、金属、プラスチック等)をタッチしたときとは大きく相違するものであればよい。このための電極膜32は、前述した公報記載の各種の構造のものをも利用することができるが、一例として、図9に電極膜32を含む生体検知のための等価回路例を示してある。
【0050】
図9において、判別回路45とセンサヘッド回路46とが平衡線47により接続される。センサヘッド回路47のうち少なくとも電極41、42部分が指紋照合面32に電極膜32として構成されるものである。
【0051】
基本的に、発振部51からの高周波が、マッチングトランス52の一次側に与えられる。電極41と42に生体がタッチされない状態では、マッチングトランス52の2次側はオープン状態であるが、電極41と42とに指先Yが触れることにより、図8のような等価回路がマッチングトランス52の2次側に接続された状態となる。指が電極41と42とにタッチされたときのトランス52の2次側をみたインピーダンスがマッチングのとれるものとなるように設定されている。電極41と42とが生体によって結合されたとき、発振部51からの高周波がマッチングトランス52で反射されて、この反射波が検知部53によって検知され、検知された反射波が生体に相当するものであるが否かが判定部54で判定されて、この判定結果が判別回路45から出力される。
【0052】
勿論、生体であることが検出され、かつ指紋照合面13aにタッチされた指先Yの指紋があらかじめ記憶されている正当なものであるときの両方の条件を満足したときに、最終的に本人であると確認されることになる。なお、図8の例では、電気抵抗値Rの変化と電気容量値C2、C4の両方の変化でもって生体であるか否かの検知を行うので、生体でないものを誤って生体であると波判別してしまう事態を防止して検知精度を向上させる上で好ましい例となっている。
【0053】
電極膜32およびハードコート33は、照合面13aは勿論のこと、フランジ面13fに跨がっても形成されている。このため、段差のある照合面13aとフランジ面13fとの間を、前述のように滑らかにテーパ面13gとして形成しておくことにより、電極膜32はハードコート33が部分的に大きく折曲されることがなくなる。
【0054】
図9と図10は、電極41,42の他の構成例を表している。図5の例においては、電極41,42が指紋照合面13aの内部の面の一部を占有する大きさとされているが、図9の例においては、ほぼ全体を占有する大きさとされている。また、図10の例においては、指紋照合面13aの内側だけでなく、外側にも電極41,42が配置されている。
【0055】
図10、図11は、本発明の別の実施形態を示すものであり、開口部3部分のシール性を高めるようにした例を示す。すなわち、弾性部材からなるリング状のシール部材30が別途用いられ、このシール部材30が、突起状の照合面13aの周囲に嵌合された状態とされる。ケースKへの組付状態において、シール部材30は、開口部3の内周縁部とフランジ面13fとで挟持された状態とされて、この部分のシールを行う。シール部材30を構成する材質としては適宜のものを用いることが可能であるが、実施形態では独立気泡を有するスポンジによって形成してある。
【0056】
図12、図13は、電極41、42の他の構成例を示している。図12の例では、図5の例に比して、照合面13aのほぼ全体を占有する大きさとされている。また、図13の例においては、照合面13aの内側だけでなく、外側にも電極41、42が形成されている。いずれにしても図14に原理的に示されているように、電極41と電極42の間には、クリアランスGが形成されている。このクリアランスGの値が0でない限り、指紋の識別が可能である。
【0057】
図15は、アイリス19の第2レンズ15と第3レンズ16に対する具体的な配置の例を表している。また、図13は、そのアイリス19だけの構成を表している。これらの図に示されるように、アイリス19には孔19aが形成されており、入射された光を絞り込むようになされている。
【0058】
もちろん、アイリス19は、図17と図18に示されるように、原理的には、光を遮断する部分(孔19aでない部分)と光を透過させる部分(孔19a)とを有していればよく、その形状は、図17に示されるように、4角形状であっても、図18に示されるように、円盤状であってもよい。アイリス19は、第1レンズ14の焦点近傍に配置される。
【0059】
【発明の効果】
本発明は、基本的に外乱光に強い構造としつつ、ケース等への組付を容易かつ精度よく行うことが可能となる。また、照合面への指先の密着性を高める上で好ましいものとなる。勿論、プリズムそのものの製造が容易でありかつ形状設定の自由度が極めて高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用された指紋照合装置の一例を示す全体斜視図。
【図2】図1に示す装置の拡大側面断面図。
【図3】図2に装備された指紋照合用の光学系を示す図。
【図4】指紋照合面を有するプリズムの一例を示す斜視図。
【図5】指紋照合面に形成された電極膜とハードコートとを示す平面図。
【図6】図5のX6−X6線相当断面図。
【図7】図5のX7−X7線相当断面図。
【図8】図図6の下面図。
【図9】電極膜を利用して生体検知を行うための等価回路例を示す図。
【図10】シール部材の一例を示す斜視図。
【図11】図10のシール部材によってシールされている様子を示す要部側面断面図。
【図12】電極の他の構成を示す平面図。
【図13】電極のさらに他の構成を示す平面図。
【図14】電極の電気的な構成の原理を示す図。
【図15】アイリスの具体的な配置の位置を示す断面図。
【図16】アイリスの構成を示す断面図。
【図17】アイリスの原理的構成を示す斜視図。
【図18】アイリスの他の原理的構成を示す斜視図。
【符号の説明】
K:ケース
Y:指先
3:開口部
11:光源
13:プリズム
13a:照合面
13b:フランジ部
13c:入射面
13d:出射面
13e:特定面(平坦面)
13f:フランジ面
13g:テーパ面
14:第1レンズ
15:第2レンズ
16:第3レンズ
18:CCD(撮像手段)
30:シール部材
Claims (8)
- 光源からの検知光を指先がタッチされる照合面で反射させて撮像手段に入射させるようにした指紋照合装置において、
開口部が形成された所定面と、
前記所定面の裏面側に配設され、光学プラスチックによって断面略3角形に形成されたプリズムと、
を有し、
前記プリズムのうち所定の頂角と対向する対向面が、前記開口部に位置される前記照合面とされており、
前記プリズムのうち前記所定の頂角を挟む2つの側面のうち一方の側面が、前記光源からの検知光が入射される入射面とされると共に、他方の側面が前記照合面で反射された検知光が出射される出射面とされ、
前記照合面の周囲には、フランジ面が形成されており、
前記照合面は、前記フランジ面を前記所定面の裏面側に位置させた組付状態で、前記所定面の表面とほぼ面一となるように、前記フランジ面よりも若干高くなるように突出形成され、
前記開口部の内周面形状と前記照合面の外周面形状とが、ほぼ楕円形とされ、かつ、ほぼ合同形状の関係となるように形成されている、
ことを特徴とする指紋照合装置。 - 頂角が90度の2等辺3角形を想定したときに、前記照合面が前記90度の頂角に対向する辺に沿う面となるように設定され、前記入射面と出射面とが互いに90度の角度をなす辺に沿う面となるように設定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の指紋照合装置。 - 前記所定面が、ケースの一部の面によって構成され、
前記プリズムと撮像手段との間に、プリズムからの検知光を縮小させて前記撮像手段に入射させると共にその光軸が1直線となるように設定された縮小用の光学系が配設され、
前記ケース内に、前記プリズムと光源と撮像手段と縮小用の光学系とが配設され、
前記ケースが前記光軸線に対して傾斜された傾斜面を有して、前記傾斜面に前記開口部が形成されており、
前記プリズムが、その入射面が前記光軸に対して平行な状態でかつその出射面が前記光軸と直交する状態で、前記照合面が前記開口部に位置されており、
前記光源が、プリズムの近傍でかつ前記入射面に対向させて位置されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の指紋照合装置。 - 前記開口部の内周縁部には、前記照合面との間をシールする環状のシール部材が配設されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の指紋照合装置。 - 前記照合面とフランジ面との段差部分の側面形状が、前記フランジ面に向かうにつれて徐々に広がるようにテーパ面とされている、
ことを特徴とする請求項1に記載の指紋照合装置。 - 前記照合面に、生体検知用の電極膜が形成され、
前記電極膜が、前記テーパ面に沿った後前記フランジ面に伸びるように形成されている、
ことを特徴とする請求項5に記載の指紋照合装置。 - 光学プラスチックによって断面略三角形に形成されて、所定の頂角に対向する対向面と前記所定の頂角を挟む2つの側面とを有し、
前記対向面が指先がタッチされる照合面とされ、
前記2つの側面のうち一方の側面が、光源からの検知光が入射される入射面とされると共に、他方の側面が前記照合面で反射された検知光が出射される出射面とされ、
前記照合面の周囲には、フランジ面が形成されており、
前記照合面が前記フランジ面よりも若干高くなるように突出形成され、
前記照合面の形状がほぼ楕円形とされている、
ことを特徴とする指紋照合装置用のプリズム。 - 前記照合面とフランジ面との段差部分の外周面形状が、照合面に向かうにつれて徐々に細幅となるようにテーパ面とされている、
ことを特徴とする請求項7に記載の指紋照合装置用のプリズム。
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