JP3849422B2 - 筒内噴射式火花点火内燃機関 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、筒内噴射式火花点火内燃機関に関する。
【0002】
【従来の技術】
気筒内へ直接的に燃料を噴射する燃料噴射弁を具備する筒内噴射式火花点火内燃機関は、圧縮行程後半に燃料を噴射することにより、点火時点において着火性の良好な可燃混合気を点火プラグ近傍だけに形成し、気筒内全体としてリーンな混合気を燃焼可能な成層燃焼を実現するものである。
【0003】
こうして、成層燃焼は燃料消費率の低減に有効であるが、圧縮行程において噴射された燃料を点火までの比較的短い時間で気化させなければならず、一般的な筒内噴射式火花点火内燃機関では、多量の燃料を必要とする機関高負荷時には成層燃焼を断念し、吸気行程で燃料を噴射することにより、点火時点において気筒内に均質混合気を形成する均質燃焼を実施するようになっている。
【0004】
このように、一般的な筒内噴射式火花点火内燃機関では、成層燃焼と均質燃焼とが切り換えて実施される。良好な均質燃焼を実現するためには、吸気行程において気筒内に強い吸気流を生成することが必要である。強い吸気流は、噴射燃料を十分に攪拌し、気筒内に良好な均質混合気を形成することを可能とすると共に、点火時点においても吸気流による乱れを気筒内に持続させ、燃焼速度を早めることを可能とする。
【0005】
しかしながら、吸気行程において強い吸気流を気筒内に生成して、点火まで気筒内に乱れを持続させると、成層燃焼時において、この乱れが、点火プラグ近傍への可燃混合気の形成を阻害したり、また、点火プラグ近傍に形成された可燃混合気を点火以前に分散させたりして、良好な成層燃焼を実現不可能とする。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、成層燃焼と均質燃焼とを切り換えて実施する筒内噴射式火花点火内燃機関において、均質燃焼時には吸気行程における強い吸気流を気筒内に確実に生成し、成層燃焼時にはこのような強い吸気流を気筒内に生成しないようにして、均質燃焼及び成層燃焼をいずれも良好なものとすることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明による請求項1に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関は、点火プラグと、気筒内へ直接的に燃料を噴射する燃料噴射弁とを具備して成層燃焼と均質燃焼とを切り換えて実施する筒内噴射式火花点火内燃機関において、吸気ポートの気筒内開口の実質的な面積を変化させることを可能とする開口面積可変手段を具備し、前記成層燃焼時には前記開口面積可変手段によって前記気筒内開口の実質的な面積をほぼ最大とし、前記均質燃焼時には前記開口面積可変手段によって前記気筒内開口の実質的な面積を設定面積へ減少させ、前記開口面積可変手段は、前記気筒内開口回りの一部分に形成されたマスク壁と、吸気弁のリフト量可変機構とを具備し、前記成層燃焼時には前記リフト量可変機構によって前記吸気弁が前記マスク壁を超えるように開弁させられて前記気筒内開口の実質的な面積をほぼ最大とし、前記均質燃焼時には前記リフト量可変機構によって前記吸気弁が前記マスク壁を越えないように開弁させられて前記気筒内開口の実質的な面積を前記設定面積へ減少させることを特徴とする。
【0008】
また、本発明による請求項2に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関は、請求項1に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関において、前記均質燃焼時でも多量の吸入空気量が必要な時には、前記開口面積可変手段によって前記気筒内開口の実質的な面積を前記設定面積より増大することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明による筒内噴射式火花点火内燃機関の第一実施形態を示す概略縦断面図である。同図において、1は吸気ポート、2は排気ポートである。吸気ポート1は吸気弁3を介して、排気ポート2は排気弁4を介して、それぞれ気筒内へ通じている。5はピストンであり、6は気筒上部略中心に配置された点火プラグであり、7は気筒上部周囲から気筒内へ直接的に燃料を噴射する燃料噴射弁である。燃料噴射弁7は、燃料のベーパを防止するために、燃焼室内において吸気流により比較的低温度となる吸気ポート1側に配置されている。
【0012】
図2はピストン5の平面図である。図1及び2に示すように、ピストン5頂面には、凹状のキャビティ8が形成されている。キャビティ8は、ピストン5頂面の燃料噴射弁7側に偏在している。燃料噴射弁7は、スリット状の噴孔を有し、燃料を厚さの薄い扇状に噴射するものである。成層燃焼を実施するためには、図1及び2に示すように、圧縮行程末期において燃料をピストン5頂面に形成されたキャビティ8内へ噴射する。斜線で示す噴射直後の燃料は液状であるが、キャビティ8の底壁8aに沿って進行してキャビティ8の燃料噴射弁に対向する対向側壁8bによって点火プラグ6近傍に導かれるまでに気化し、点火時点においては、ドットで示す着火性の良好な可燃混合気となる。こうして、点火プラグ6近傍だけに可燃混合気を形成することにより、気筒内全体としてはリーンな混合気を燃焼可能とする成層燃焼を実現することが意図されている。
【0013】
厚さの薄い扇状の燃料噴霧は、キャビティ8の底壁8aに沿って進行する際に幅方向に拡がるために、キャビティ8の底壁8aの広範囲部分から良好に熱を吸収することができる。キャビティ8の底壁8a上を幅方向に拡がった燃料において、燃料中央部は、キャビティ8の対向側壁8bによって上方向に向かう速度成分が付与され点火プラグ6近傍へ向かい、燃料両側部は、ピストン平面視において円弧状とされたキャビティ8の対向側壁8bに対してそれぞれ鋭角に衝突して、上方向へ向かう速度成分が付与されると共に中央方向へ向かう速度成分も付与され、点火プラグ6近傍へ向かう。
【0014】
こうして、厚さの薄い扇状の燃料噴霧は、従来の円錐状の燃料噴霧に比較して、点火プラグ6近傍に気化程度の良好な一塊の可燃混合気を形成することができる。それにより、成層燃焼時の燃料噴射量を増加させることが可能となり、燃料消費率の低い成層燃焼を高負荷側へ拡大することができる。しかしながら、本発明は、このような扇状の燃料噴霧を実現する燃料噴射弁を必須の構成要素として有するものではなく、円錐状又は柱状等の燃料噴霧を実現する燃料噴射弁も使用可能である。
【0015】
扇状の燃料噴霧によっても、機関高負荷時となって多量の燃料が必要とされる時には、圧縮行程末期だけで燃料を噴射することが難しくなり、吸気行程で燃料を噴射して均質燃焼が実施される。
【0016】
良好な成層燃焼を実現するためには、点火時点において、点火プラグ6近傍に可燃混合気を維持することが必要である。一般的に、吸気行程において吸気弁3が開弁されると、吸気は吸気ポート1の気筒内開口周囲全体から気筒内へ導入される。それにより、吸気ポート1の気筒内開口における排気ポート2側からは、主にシリンダボアの排気ポート2側を下降して吸気ポート1側を上昇するように気筒内を縦方向に旋回しようとする吸気流が発生すると共に、吸気ポート1の気筒内開口における反排気ポート側からは、主にシリンダボアの吸気ポート1側を下降して排気ポート2側を上昇するように気筒内を縦方向に旋回しようとする吸気流が発生し、これら二つの吸気流は気筒内で互いに衝突する。また、気筒内へ吸気を導入するための吸気ポート1における気筒内開口の実質的な面積は比較的大きくなるために、気筒内へ導入される際の吸気流速は全体的に遅くなる。
【0017】
こうして、前述の二つの吸気流は弱いものであるために、互いに衝突することによって吸気行程中に容易に消滅し、少なくとも圧縮行程後半に気筒内には乱れが持続していることはなく、気筒内の乱れによって成層燃焼時の可燃混合気が点火プラグ6近傍に形成されることを阻害したり、点火プラグ6近傍に形成された可燃混合気が点火以前に分散させられるようなことはない。こうして、良好な成層燃焼を実現することができる。
【0018】
しかしながら、こうして気筒内開口の実質的な面積をほぼ最大として吸気を導入すると、前述したように吸気行程において気筒内には強い吸気流が存在せず、均質燃焼時に燃料噴射弁7から噴射された燃料が吸気流によって十分に攪拌されて気筒内全体に分散することがないために、良好な均質混合気を形成することができなくなる。
【0019】
本実施形態は、成層燃焼及び均質燃焼をいずれも良好にすることを意図するものである。本実施形態において、吸気弁3は、通常のカムによって駆動させられるのではなく、例えば、電磁式又は油圧式のアクチュエータ10によって駆動させられるようになっており、このアクチュエータ10は作動ストロークを容易に変化させることができるものである。排気弁4は通常のカムによって駆動させるようにしても良いが、吸気弁3のためのアクチュエータ10と同様なアクチュエータ11によって駆動させられるようになっている。特に、吸気弁3のアクチュエータ10は、図3に一点鎖線で示すように、吸気弁3の大きなリフト量を実現する第一作動位置と、図3に実線で示すように、吸気弁3の小さなリフト量を実現する第二作動位置との少なくとも二段階の作動が可能となっている。
【0020】
また、図1及び3に示すように、吸気ポート1の気筒内開口回りにおける排気ポート反対側部分には、下方向に突出するマスク壁9が形成されている。前述したアクチュエータ10の第一作動位置では、大きなリフト量によって、図3に示すように、吸気弁3がマスク壁9を超えるように開弁させられる。それにより、吸気ポート1の気筒内開口の吸気導入に関する実質的な面積は最大となる。また、前述したアクチュエータ10の第二作動位置では、小さなリフト量によって、図3に示すように、吸気弁3がマスク壁9を超えないように開弁させられる。それにより、吸気ポート1の気筒内開口の吸気導入に関する実質的な面積は、マスク壁9によって覆われていない設定面積となる。
【0021】
図4は、このような吸気弁1のリフト量を切り換えるためのマップである。このマップにおいて、運転領域は、機関回転数と機関負荷とによって三つの領域A,B,Cに分割されている。運転領域Aは、機関回転数と機関負荷とがいずれも比較的低い運転領域であり、前述した成層燃焼を実施する領域である。この運転領域Aでは、アクチュエータ10は第一作動位置とされる。それにより、吸気弁3は、マスク壁9を超えて開弁させられ、吸気ポート1の気筒内開口の面積は最大とされるために、前述した一般的な場合と同様に、気筒内へ導入される吸気流速は全体的に遅くなると共に、主に生成される二つの吸気流(図3に一点鎖線で示す)は気筒内を縦方向に旋回する際に互いに衝突して容易に消滅するために、圧縮行程において可燃混合気に悪影響を与えることはなく、良好な成層燃焼が実現される。
【0022】
また、運転領域Bは、機関回転数と機関負荷とがいずれも比較的高い運転領域であり、この時の比較的多い必要燃料量を圧縮行程後半だけで噴射することは困難となるために、前述した均質燃焼を実施する領域である。この運転領域Bでは、アクチュエータ10は第二作動位置とされる。それにより、吸気弁3は、マスク壁9を超えないように開弁させられ、吸気ポート1の気筒内開口の面積は設定面積へ減少させられる。それにより、気筒内へ導入される吸気流速は速くなると共に、図3に実線で示すように、主に生成される吸気流は、シリンダボアの排気ポート2側を下降してシリンダボアの吸気ポート1側を上昇するように旋回するものだけである。こうして、吸気行程において気筒内には一方向の強い吸気流によって縦方向に旋回する渦が形成され、吸気行程中に噴射された燃料を十分に攪拌して気筒内全体に分散させ、良好な均質混合気を形成することが可能となる。また、この強い吸気渦は、圧縮行程においても気筒内を旋回し続け、点火時点において気筒内に乱れをもたらすために、均質燃焼の燃焼速度を速めることも可能とする。こうして、良好な均質燃焼が実現される。冷却水温が低い時には、気筒内での燃料気化が悪化するために、均質燃焼運転領域Bを低回転低負荷側へ拡大しても良い。それにより、比較的必要燃料量が多い成層燃焼領域は均質燃焼領域とされ、強い吸気流による良好な均質燃焼が実施される。
【0023】
運転領域Cは、運転領域Bよりさらに機関回転数及び機関負荷が高い領域であり、均質燃焼を実施する領域であるが、多量の吸気が必要である。この運転領域Cにおいて、アクチュエータ10を第二作動位置とすると、吸気ポート1の気筒内開口の実質的な面積が小さ過ぎて、吸気不足が発生してしまう。それにより、アクチュエータ10は第一作動位置とされ、吸気弁3がマスク壁9を超えるように開弁させられ、吸気ポート1の気筒内開口の面積を最大として吸気不足を防止するようになっている。この運転領域では、多量の吸気が気筒内へ導入されるために、成層燃焼時に比較して吸気流速は大きくなり、吸気行程において成層燃焼時よりは強い乱れを気筒内に生成することができる。それにより、噴射燃料を十分に攪拌して良好な均質混合気を形成することが可能である。
【0024】
本実施形態では、アクチュエータ10は、吸気弁1のリフト量を二段階に可変とするものとしたが、吸気弁3がマスク壁9を僅かに超えるように開弁させられる吸気弁3の中間リフト量を実現可能とすれば、前述の運転領域Cにおいて、この中間リフト量で吸気弁3を開弁させるようにしても良い。こうすることにより、吸気ポート1の気筒内開口の面積は、運転領域Bにおける設定面積より増大させられ、吸気不足を解消することができる。この時、気筒内には主に前述の二つの吸気流が生成されるが、シリンダボアの吸気ポート1側を下降して排気ポート2側を上昇して旋回しようとする吸気流は、速い流速を有するものの絶対量が少なく、絶対量の多い反対方向の吸気流に取り込まれ、結果的には、シリンダボアの排気ポート2側を下降して吸気ポート1側を上昇する旋回流だが形成される。この旋回流によって、良好な均質混合気の形成だけでなく、点火時点の気筒内乱れによる燃焼速度の向上も実現することが可能となる。
【0025】
本実施形態において、マスク壁は、吸気ポート1の気筒内開口回りにおける排気ポート反対側部分に設けたが、これは本発明を限定するものではなく、図5に示すように、マスク壁9’を吸気ポートの気筒内開口回りにおける排気ポート側部分に設けるようにしても良い。このようなマスク壁9’によっても吸気弁3がマスク壁9’を超えるように開弁させられれば、前述同様に気筒内には強い吸気流の渦が生成されることはなく、良好な成層燃焼を実現可能である。
【0026】
一方、吸気弁3がマスク壁9’を超えないように開弁させられれば、前述とは逆に気筒内にはシリンダボアの吸気ポート側を下降して排気ポート側を上昇する強い縦旋回流が生成され、良好な均質燃焼を実現可能である。高回転高負荷運転領域Cでは、前述同様に、気筒内開口の面積を最大としても良く、また、気筒内開口の面積を通常均質燃焼時の設定面積より増大させるようにしても良く、それにより、吸気不足が発生することはなく、良好な均質燃焼を実現可能である。
【0027】
また、図6に示すように、又は、図6に示すのとは反対のように、吸気ポートの気筒内開口回りにおける排気ポート側と吸気ポート側とのそれぞれ略半分を取り囲むようにマスク壁9”を設けるようにしても良い。このようなマスク壁9”によっても吸気弁3がマスク壁9”を超えるように開弁させられれば、前述同様に気筒内には強い吸気流の渦が生成されることはなく、良好な成層燃焼を実現可能である。
【0028】
一方、吸気弁3がマスク壁9”を超えないように開弁させられれば、特に気筒内を旋回する吸気流は生成されないが、高速の吸気流が気筒内へ導入されることにより気筒内には強い乱れがもたらされ、噴射燃料が十分に攪拌されることによって十分に均質化された均質混合気が形成され、良好な均質燃焼を実現することができる。高回転高負荷運転領域Cでは、前述同様に、気筒内開口の面積を最大としても良く、また、気筒内開口の面積を通常均質燃焼時の設定面積より増大させるようにしても良く、それにより、吸気不足が発生することはなく、良好な均質燃焼を実現可能である。
【0029】
図7は、本発明による筒内噴射式火花点火内燃機関の第二実施形態を示す概略縦断面図である。第一実施形態との違いについてのみ以下に説明する。本実施形態において、吸気ポート1は、気筒内開口近傍から上流長手方向に延在する隔壁20によって、排気ポート2側の第一長手方向部分1aと、反排気ポート2側の第二長手方向部分1bとに二分割されている。また、シリンダヘッドに接続される吸気ポート延長部21も隔壁によって同様に二分割され、第二長手方向部分1bの延長部分には、この延長部分を閉鎖可能な吸気制御弁23が配置されている。この吸気制御弁23は、ステップモータ等のアクチュエータによって駆動されるものである。
【0030】
隔壁20は、吸気ポート1の気筒内開口近傍から延在するものであるために、吸気弁3の開閉時に接触を防止するための切り欠きが形成されている。吸気弁3及び排気弁4は、通常のカムによって駆動され、特にリフト量は可変となってはいない。
【0031】
このように構成された本実施形態において、吸気制御弁23は、図4に示すマップの成層燃焼運転領域Aにおいて、全開されて吸気ポート1の第二長手方向部分1bを開放する。それにより、吸気ポート1の気筒内開口の面積は最大となり、第一実施形態で説明したと同様に、気筒内に強い吸気流が発生することはなく、良好な成層燃焼を実現可能である。
【0032】
一方、均質燃焼運転領域Bにおいては、吸気制御弁23は閉弁される。それにより、吸気は吸気ポート1の第一長手方向部分1aからのみ気筒内へ導入され、これは、吸気ポート1の気筒内開口の実質的な面積を設定面積へ減少させることとなる。それにより、吸気は、第一実施形態の図3において説明したように、実線で示す一方向の高速吸気流として気筒内へ導入され、シリンダボアの排気ポート側を下降して吸気ポート側を上昇する強い縦旋回流を形成する。それにより、第一実施形態で説明したと同様に、良好な均質燃焼が実現される。
【0033】
多量の吸気が必要な均質燃焼運転領域Cにおいては、吸気制御弁23を全開して吸気ポート1の気筒内開口の実質的な面積を最大とすれば、第一長手方向部分1a及び第二長手方向部分1bの両方を使用して吸気が気筒内へ導入され、吸気不足が発生することは防止される。この時、第一長手方向部分1a及び第二長手方向部分1bのそれぞれから気筒内へ導入される吸気流は、吸気量の増大によって比較的流速が速くなるために、気筒内には乱れがもたらされ、良好な均質混合気を形成することが可能となる。
【0034】
また、この均質燃焼運転領域Cにおいて、吸気制御弁23を半開するようにしても良い。こうすることにより、吸気ポート1の気筒内開口の面積は、通常の均質燃焼時における設定面積より増大し、吸気は第一長手方向部分1a及び第二長手方向部分1bのいずれからも気筒内へ導入され、吸気不足を解消することができることに加えて、第二長手方向部分1bから気筒内へ導入される吸気流は、流速が速いが絶対量が少ないために、第一長手方向部分1aから気筒内へ導入される多量の吸気流に取り込まれ、結果的には、シリンダボアの排気ポート側を下降して吸気ポート側を上昇する縦旋回流が形成される。それにより、さらに良好な均質混合気を形成することができると共に、点火時点において気筒内に乱れを持続させて燃焼速度を速めることも可能となる。
【0035】
本実施形態において、均質燃焼時に強い吸気流を発生されるための第一長手方向部分1aは、略半円形断面としたが、断面積を減少させることなく吸気流れをさらに滑らかにして吸気流を強めるために、長円形又は楕円形断面としても良い。また本実施形態では、隔壁20によって吸気ポート1を排気ポート側の第一長手方向部分1aと、反排気ポート側の第二長手方向部分1bとに二分割して、第二長手方向部分1bを吸気制御弁23によって閉鎖可能としたが、これは本発明を限定するものではなく、第二長手方向部分1bに代えて第一長手方向部分1aを吸気制御弁によって閉鎖可能としても良い。このような構成では、前述同様な吸気制御弁の開閉制御によって各運転領域で図5に示す第一実施形態の変形例と同様な吸気流を生成することができ、成層燃焼及び均質燃焼をいずれも良好なものとすることができる。
【0036】
また、第二実施形態では、横方向の隔壁20によって吸気ポート1を長手方向に二分割したが、縦方向の隔壁によって吸気ポート1を二分割するようにしても良い。こうして分割された二つの長手方向部分の一方を吸気制御弁によって閉鎖可能とすることにより、図6に示す第一実施形態の変形例と同様な吸気流を生成することができ、成層燃焼及び均質燃焼をいずれも良好なものにすることができる。第二実施形態を含めて、このように長手方向に二分割された吸気ポート1をさらに長手方向に分割するのは自由である。
【0037】
【発明の効果】
このように本発明による筒内噴射式火花点火内燃機関によれば、点火プラグと、気筒内へ直接的に燃料を噴射する燃料噴射弁とを具備して成層燃焼と均質燃焼とを切り換えて実施する筒内噴射式火花点火内燃機関において、吸気ポートの気筒内開口の実質的な面積を変化させることを可能とする開口面積可変手段を具備し、成層燃焼時には開口面積可変手段によって気筒内開口の実質的な面積をほぼ最大とし、均質燃焼時には開口面積可変手段によって気筒内開口の実質的な面積を設定面積へ減少させ、開口面積可変手段は、気筒内開口回りの一部分に形成されたマスク壁と、吸気弁のリフト量可変機構とを具備し、成層燃焼時にはリフト量可変機構によって吸気弁がマスク壁を超えるように開弁させられて気筒内開口の実質的な面積をほぼ最大とし、均質燃焼時にはリフト量可変機構によって吸気弁がマスク壁を越えないように開弁させられて気筒内開口の実質的な面積を設定面積へ減少させるようになっている。それにより、成層燃焼時には、吸気量も比較的少ないことも相まって、最大面積とされた吸気ポートの気筒内開口を介して気筒内へ導入される吸気流は全体的に遅くなり、吸気行程において気筒内に強い乱れは発生せず、良好な成層燃焼を実現することができる。一方、均質燃焼時には、吸気ポートの気筒内開口の面積は設定面積へ減少させられるために、この気筒内開口を介して気筒内へ導入される吸気流は速いものとなり、吸気行程において気筒内に強い乱れをもたらすために、噴射燃料を十分に攪拌して十分に均質化された均質混合気を気筒内に形成することができ、良好な均質燃焼を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による筒内噴射式火花点火内燃機関の第一実施形態を示す概略縦断面図である。
【図2】図1の筒内噴射式火花点火内燃機関のピストン平面図である。
【図3】図1の筒内噴射式火花点火内燃機関における吸気弁の可変リフトを説明する図である。
【図4】吸気弁の可変リフト制御及び吸気制御弁の開閉制御に使用するマップである。
【図5】図1の筒内噴射式火花点火内燃機関の変形例を示すシリンダヘッド底面図である。
【図6】図1の筒内噴射式火花点火内燃機関のもう一つの変形例を示すシリンダヘッド底面図である。
【図7】本発明による筒内噴射式火花点火内燃機関の第二実施形態を示す概略縦断面図である。
【符号の説明】
1…吸気ポート
2…排気ポート
3…吸気弁
4…排気弁
5…ピストン
6…点火プラグ
7…燃料噴射弁
10,11…アクチュエータ
20…隔壁
23…吸気制御弁
Claims (2)
- 点火プラグと、気筒内へ直接的に燃料を噴射する燃料噴射弁とを具備して成層燃焼と均質燃焼とを切り換えて実施する筒内噴射式火花点火内燃機関において、吸気ポートの気筒内開口の実質的な面積を変化させることを可能とする開口面積可変手段を具備し、前記成層燃焼時には前記開口面積可変手段によって前記気筒内開口の実質的な面積をほぼ最大とし、前記均質燃焼時には前記開口面積可変手段によって前記気筒内開口の実質的な面積を設定面積へ減少させ、前記開口面積可変手段は、前記気筒内開口回りの一部分に形成されたマスク壁と、吸気弁のリフト量可変機構とを具備し、前記成層燃焼時には前記リフト量可変機構によって前記吸気弁が前記マスク壁を超えるように開弁させられて前記気筒内開口の実質的な面積をほぼ最大とし、前記均質燃焼時には前記リフト量可変機構によって前記吸気弁が前記マスク壁を越えないように開弁させられて前記気筒内開口の実質的な面積を前記設定面積へ減少させることを特徴とする筒内噴射式火花点火内燃機関。
- 前記均質燃焼時でも多量の吸入空気量が必要な時には、前記開口面積可変手段によって前記気筒内開口の実質的な面積を前記設定面積より増大することを特徴とする請求項1に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関。
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