JP3849189B2 - 線状加熱による金属板の曲げ加工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は船舶、橋梁、その他の金属製構造物の曲面状部材を平板状の素材あるいはプレス等の一次加工を施された初期形状から目的曲面形状へ仕上げるために用いる線状加熱による金属板の曲げ加工方法に関するもので、特に、静止型加熱器を用いたステップ線状加熱による金属板の曲げ加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に船舶、橋梁等に用いられる金属板の曲げ加工を行う場合は、線状加熱により行われている場合が多い。この線状加熱による曲げ加工は、平板状素材あるいはプレスで一次加工された形状の金属板の所定の位置に線状加熱を施し、生じた塑性歪による板の面内収縮や角変形を利用して目的とする三次元形状を作り出すものである。
【0003】
上記線状加熱による曲げ加工では、面内収縮量や角変形量が線状加熱の加熱位置、方向、加熱条件によって決定されるため、これらの加熱位置、方向、加熱条件が重要である。
【0004】
これまでの加工現場では、初期形状から目的形状へ強制変形させる計算によって得られる目的固有歪分布に着目した理論的なアプローチに基づく技術は存在せず、複数個の曲げ型板を金属板上に仮配置することで目的形状とのずれを検知しながら熟練者の勘や技能によって加熱位置、方向、加熱条件を決めているのが実状である。
【0005】
しかしながら、近年では、これら熟練者の高齢化とこれに伴う作業従事者の減少等の問題が顕著になって来ている。
【0006】
そのため、従来、かかる状況に鑑み、熟練を要する線状加熱作業を特別な技能を要せずに実施できて処理能力を向上させることができるような線状加熱による板の曲げ加工方法が提案され且つ特許出願されている(特願平3−237948号)。
【0007】
上記従来提案された方法は、有限要素法(FEM)の弾性解析に基づいて線状加熱線の位置、方向及び生成固有歪(集中的な歪分布)を決定するようにしたもので、図16に示す如く、先ず、初期形状と最終成形形状に関する幾何学情報のインプット(ステップI)をした後、初期形状に対応したFEMのメッシュ分割を行う(ステップII)。次いで、初期形状から最終形状まで強制的に弾性変形させ、その過程で生じる歪を計算した後、計算された歪を面内成分と、曲げ成分に分離し、それぞれの主歪分布をグラフィック画面に表示する(ステップIII )。次に、面内の歪分布に注目し、圧縮の主歪が大きい領域を加熱領域に選び、加熱の方向は主歪の方向に直角の方向とし(ステップIV)、又、曲げ歪の分布に注目し、曲げ歪の絶対値が大きい領域を加熱領域に加え、加熱の方向は歪の絶対値が最大である主方向に直角の方向とする(ステップV)。
【0008】
次に、生成すべき固有歪の大きさを決めるために、加熱領域に属する要素の剛性を残りの部分よりも小さくした強制変形FEM弾性解析を再度実施し、加熱領域に集中した歪の値から生成固有歪の値を算定する(ステップVI)。しかる後に、これらの計算に基づき線状加熱を施して固有歪を発生させることによって所定の最終形状に加工する(ステップVII )ものである。
【0009】
しかし、上記従来提案され且つ出願されている方法の場合、線状加熱による板の曲げ加工が容易に行えるため、熟練者の勘に頼らなくても実施可能という利点があるが、
▲1▼ 加熱方法の策定において、ステップIVとステップVで目的固有歪を純粋な面内成分と曲げ成分とに分離することによって加熱線の方向や生成固有歪の大きさを近似的に定めているので、現実に用いられるガス炎や高周波誘導加熱による加熱器によっては、純粋な面内収縮や曲げを達成することは不可能であり、どのような加熱条件を選定したとしても必ず一定比率の面内歪成分と曲げ歪成分の両者を含んでいる。そのために、面内成分優位と曲げ成分優位の2つの加熱条件を選定したとしても正しい加熱線方向や目的固有歪状態を実現することが難しいと考えられる。
▲2▼ 図17の(イ)から(ロ)のように強制変形FEM弾性解析を行う場合には、一般に、目的固有歪の面内成分は、図17(ハ)に示すように収縮歪だけでなく、伸び歪も現われることがある。又、固有歪の大きさを決めるための加熱部の剛性を低くした強制変形FEM弾性解析においても同様に伸び歪が表われることがある。線状加熱による曲げ加工は、加熱部に生ずる圧縮塑性歪を利用して加工する方法であり、図17(ハ)の下部に見られる伸び歪(←→印)を付与することができない。よって、目的形状に線状加熱だけによって加工することができるためには、上記のFEM計算結果がすべて収縮歪(→←印)となっていなければならない。同図17(ハ)において少なくとも伸び歪の部分に限定して、あるいは、全体として一様な収縮歪を加える必要がある。このことは、目的形状を縮めること、あるいは初期形状を大きくすることに対応している。同様に、ある量の曲げ歪を片側からの加熱によって達成するためには、ある程度の面内縮みが伴うことは避けられない。これらの余分の収縮によって、仕上った目的形状は面内の寸法不足となる。このことは定性的には従来から知られているが、これらを定量的に補償することが出来ないので、現状では予め経験則に基づいた十分な余裕をとっておいた上で、最終的な切り揃えの余分の作業や、場合によっては寸法不足を生じるおそれが考えられる。
▲3▼ 線状加熱を行った場合には、加熱線と直角方向の収縮歪だけでなく、加熱線方向の収縮歪も割合は少ないが必ず伴うことがよく知られており、両方向の生成固有歪を考慮した上で目的固有歪分布を正確に実現させることが難しいと考えられる。
▲4▼ 又、加熱条件と生成固有歪との定量的関係については、最近提案され出願された方法では言及されていないので、現状の現場技術である、曲げ型板と初期形状から経験と勘で推測される各部必要変形量を発生させるであろう加熱条件を、経験をベースに選択し実施する方法が採用されているが、多段の推測を経験と勘をベースに積み重ねる結果として、難しいこと、誤差、バラツキが大きいこと、出来る人が限られること、習得に時間がかかること、等の問題がある。
【0010】
そのため、近年、上述した従来提案され且つ出願されている線状加熱による板の曲げ加工方法を更に進めて上述した問題点をなくし、目的形状が与えられると素人でも実施できると共に、希望する加熱条件だけで目的固有歪を実現できるようにしようとするため、金属板を初期形状から最終の目的形状に曲げ加工するために、先ず、初期形状と目的形状の幾何学情報をインプットし、初期形状に基づいて有限要素法のメッシュ分割を行って、その分割形状を目的形状の上に写像し、次いで、初期形状から目的形状まで強制的に変形させて目的固有歪分布を計算し、得られた目的固有歪分布を複数の加熱線の配置あるいは加熱条件の調整によって生成される生成固有歪で表現し、このとき実験的、解析的あるいは相似則を導入することによって求められた加熱装置と被加工材の組合わせに対する加熱条件と生成固有歪との定量的関係を用い、次に、各要素について加熱強度の組合せと加熱方向、加熱線間隔を求めて指示又は表示した後、金属板の曲げ加工を行うようにするもの、更には、金属板の曲げ加工を行う前に、加熱条件が与えられたときに求められた生成固有歪を初期形状に付与することによって曲がり形状の確認のための弾性シミュレーションを行うようにするものが提案されている(特願平5−246170号)。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、近年提案された上記出願のものでは、小領域での目的固有歪を実現するのに2組(4本)の加熱線組合わせを必要とするものであり、又、縦収縮、縦曲がりの効果の算入の可能性は示されているが、その具体的手順や応用例の開示にまでは至っておらず、更に、残留応力の影響は考慮されていなかった。
【0012】
そこで、本発明は、被加工板の各位置又は部分領域内において板の上下面での必要歪量(目的固有歪)を達成するための1組(2本)の加熱線組合わせを定めると共に、加工精度を向上させ、更に、残留応力の影響を加味した線状加熱による金属板の曲げ加工方法を提供しようとするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、金属板を初期形状から最終の目的形状に曲げ加工するために、先ず、初期形状と目的形状の幾何学情報をインプットし、初期形状に基づいて有限要素法のメッシュ分割を行って、その分割形状を目的形状の上に写像し、次いで、初期形状から目的形状まで強制的に変形させて目的固有歪分布を計算し、得られた目的固有歪分布を複数の加熱線の配置及び縦収縮、縦曲がりを考慮した加熱条件の調整によって生成される生成固有歪で表現し、このとき実験的、解析的あるいは相似則を導入することによって求められた加熱装置と被加工材の組合わせに対するデータベースの加熱条件と生成固有歪との定量的関係を基本として、これに残留応力の影響を加味してデータを修正し、次に、各要素について加熱強度の組合せと加熱方向、加熱線間隔を求めて表示した後、加熱条件が与えられたときに求められた生成固有歪を初期形状に付与することによって曲がり形状の確認と残留応力の弾性シミュレーションを行った上で、全加熱線について金属板の曲げ加工を行った後、金属板の曲がり形状を計測してデータを分析すると共に、目的形状からの差を求め、その差をなくすように残留応力の影響を考慮して加熱条件や加熱方案を出した上で加熱を繰り返すようにする方法とし、又、全加熱終了後に計測形状と目的形状との差を求めて、その差をなくすようにデータベースを修正するようにする。
【0014】
縦収縮、縦曲がりを考慮し、残留応力の影響を考慮して加熱条件を求めるので、加工精度を向上できる。
【0015】
更に、加熱途中で曲げ形状を計測してデータの分析を行い、目的形状との差があると、データベースの修正を行ったり、残留応力の影響を考慮して目的形状との差をなくすように加熱条件を変更し、この変更した加熱条件で次の部分加熱を行い、部分加熱が終了した後に同様にデータベースの修正等を行って、加熱を繰り返すようにしてもよい。
【0016】
このような反復修正加熱を行えば、加工精度をより向上できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0018】
図1は本発明の実施の一形態を示すもので、任意の周辺形状をした平板あるいは任意曲面を初期形状とする鋼板あるいは鋼以外の金属板を、目的形状(別の任意の周辺形状及び曲面形状)に曲げ加工する本発明の方法を示すフローチャートである。先ず、はじめに初期形状と目的形状に関する幾何学情報のインプット(ステップ1)をした後、金属板Pの初期形状に基づいて図2(イ)の如く、有限要素法(FEM)のメッシュ分割を行い(ステップ2)、その分割形状を、初期形状を目的形状に写像する適切な写像方法によって図2(ロ)に示すように金属板Pの目的形状の上に写像(ステップ3)する。次いで、初期形状における各要素節点位置を目的形状における対応する各要素節点位置にFEM計算によって強制的に弾性変形させ、各要素内での歪分布(目的固有歪分布)を計算する(ステップ4)。このとき、強制的に変形させるときの写像法の適切な選択により、加工法に適合した目的固有歪分布が得られ、写像法と加工法に付随した縮み代を定めることが可能となる。
【0019】
次に、加熱方法の策定として、上記ステップ4で求められた要素内での目的固有歪分布を2本の加熱線の適当な配置あるいは加熱条件の調整によって生成される集中的な歪分布(生成固有歪)で近似的に表現する(ステップ5)ようにする。この場合、上記ステップ5で目的固有歪分布を実現する際に、与えられた加熱器(ガス炎、高周波誘導加熱器、レーザ光等)と被加工材の組合わせに対して、加熱条件(単位時間当りの入熱量、加熱時間等)と生成固有歪との定量的関係が必要となるので、この関係をデータベースで求めておくようにする(ステップ6)。この加熱条件と生成固有歪との定量的関係は、一般には単一加熱線のような基本的な加熱による加熱実験を行って収縮量や角変形を直接的に測定するか、あるいは熱弾塑性FEM解析により入熱条件(入熱分布又は時系列的に変化する温度分布)を与えたときの金属板上の生成固有歪を計算するか、更には予め系統的な実験や解析を行っておき、それらの結果を相似則を導入したデータベースの形に整理することによって得られる。更に、上記データベースで求めた加熱条件と生成固有歪との定量的関係に、残留応力の影響を加味したデータ修正をステップ7で行うようにする。
【0020】
次に、上記各要素について物理的に妥当な結果が得られるような加熱線の配置(位置、間隔、方向)を表示し、加熱条件を明記する加熱線表示(ステップ8)をした後、ステップ5とステップ6とステップ7で求め、ステップ8で表示した加熱方案での全加熱線による生成固有歪を初期形状に付与することによって、曲がり形状と残留応力の弾性シミュレーションを行い形状の確認と残留応力計算を行う(ステップ9)。しかる後、ステップ5、6、7、8で定められた加熱方案に従って全部の加熱線について、手動あるいはNC制御の加熱器を用いた線状加熱を行う(ステップ10)。
【0021】
更に、上記のようにして定められた加熱方法で全加熱線について曲げ加工を実施した後、形状を計測(ステップ11)し、しかる後、データを分析して目的形状との差を求め、ステップ7の残留応力の影響を考慮して目的形状との差がなくなるように、加熱条件や加熱方案を出した上で、ステップ1に戻して計測形状を初期形状に置き換えるようにして引き続き加熱を繰り返すようにする反復修正加熱を行うようにし(ステップ12)、誤差がなくなれば終了する。
【0022】
上記ステップ1からステップ12までの手順に従い金属板に生成固有歪を与えることによって目的形状に曲げ加工することができるようにする。
【0023】
以下、詳述する。
【0024】
ステップ1〜ステップ3は、図16のステップI、IIに相当するものである。
【0025】
ステップ4では強制的に変形させるときの写像法の適切な選択により加工法に適した目的固有歪分布が得られ、写像法と加工法に付随した縮み代を定めることができるが、以下、付与すべき固有歪分布の計算について説明する。図3に示した曲面を対象にして目的の形状を得るために必要な固有歪の分布を計算する一つの方法として、弾性大撓みFEM解析による方法がある。平板から曲面を成形するためには、何等かの方法で所定の曲げ歪と面内歪を与える必要があり、曲げ歪に注目すると図4に示すような分布であり、面内歪に注目すると図5に示すような分布であり、このような図4及び図5に示すような固有歪を平板に与えることができれば、目的の曲面が得られる。しかし、線状加熱は加熱部に残留する圧縮歪を利用して板を曲げる加工法であるため、加熱によって面内伸びを与えることができない。この観点からすると、図4及び図5に示された固有歪は明らかに引張の成分を含んでいるので、線状加熱では実現できない固有歪分布ということになる。
【0026】
この問題は、以下に示すような、面内収縮歪を付加するという操作によって解消することができる。
【0027】
すなわち、
1) 曲げ歪を得るための加熱であっても副次的な面内収縮が生じるので、実際の加熱ではこれに対する補正分も含めた面内補正歪を与える必要がある。i番目の要素に対して、次式で定義される指標値Cx i 、Cy i を考える。
【0028】
Cx i =εmx i +|εbx i | (1)
Cy i =εmy i +|εby i |
ここで、εmx i 、εmy i 、εbx i 、εby i は図4及び図5に示したFEMで計算したi番目の要素の曲げ歪及び面内歪成分の値を表わす。若し、Cx i 、Cy i がすべての要素について負であれば、線状加熱のみによって曲げ加工が可能となる。
2) すべての要素についてのCx i 、Cy i をそれぞれ計算し、まず、図4及び図5の縦方向すなわちy方向の要素の列ごとにCx i の最大値を求め、それらをΔεmx j , max (j =1〜m )とする。このj 列の最大値Δεmx j , max をj 列のすべての要素の面内固有歪のx成分に対する修正量として採用する。次に、横方向すなわちx方向の要素の行ごとにCy i の最大値を求め、それらをΔεmy k , max (k =1〜n )とする。このΔεmy k , max をk 行のすべての要素の面内固有歪のy成分に対する修正量として採用する。
3) 各列(j =1〜m 列)のすべてのx方向固有歪成分εx i から各列の修正量Δεmx j , max をそれぞれ差引き、各行(k =1〜n 行)のすべてのy方向固有歪成分εy i から各行の修正量Δεmy k , max をそれぞれ差引く。すなわち、新しい面内固有歪成分εmx i´、εmy i´は次式で表わされる。
【0029】
εmx i´=εmx i −Δεmx j , max (i=1〜m ×n ,j=1 〜m) (3)
εmy i´=εmy i −Δεmy k , max (i=1〜m ×n ,k=1 〜n)
より簡便な方法として、面内固有歪成分の修正量を、要素の列あるいは要素の行ごとの最大値Δεmx j , max 、Δεmy k , max でなく、すべての要素についてのCx i 、Cy i の最大値Cx , max 、Cy , max として1律の修正量としてもよい。
4) 上記のように(3) 式で修正されたεmx i´、εmy i´と当初求めたままの面内剪断歪及び曲げ歪γmxy i 、εbx i 、εby i 、γbxy i とを合わせると、線状加熱で平板に付与すべき固有歪分布となる。一方、これらの6成分を用いると、板の上下面での歪成分εux i´、εuy i´、γuxy i 、εlx i´、εly i´、γlxy i が次のように表わされる。
【0030】
εux i´=(εmx i´+εbx i )/2 (4)
εlx i´=(εmx i´−εbx i )/2
εuy i´=(εmy i´+εby i )/2
εly i´=(εmy i´−εby i )/2
γuxy i =(γmxy i +γbxy i )/2
γlxy i =(γmxy i −γbxy i )/2
上式の左辺における添字u、lはそれぞれ上面、下面を意味するものであり、ダッシュ記号は右辺におけると同様に縮み代修正を行った後の量であることを示す。一方、曲げ歪成分は、目的とする曲面の曲率により面内歪とは無関係に一意的に定まるので、面内固有歪の修正Δεmx、Δεmyにともない再度FEM計算を実行する必要はない。
【0031】
次に、ステップ6の加熱条件と生成固有歪との定量的関係を求める要素変形データベースについて説明する。
【0032】
一般に、加熱条件が与えられると、これによって生じる固有変形が決まる。そこで、標準的な加熱条件の下で得られる単一加熱線による固有変形量を基本変形量と呼ぶことにする。
【0033】
図6に示すようなステップ加熱法の場合には、十分に広い板の中央部を、長さlH の線状静止熱源で一定時間加熱し冷却した後に板に残留する固有変形を加熱線長lH にわたって平均した板上下面における横収縮量δuT、δlTと縦収縮量δuL、δlLを基本変形量として採用する。これらの基本変形量を用いると、平均横収縮量δmT、平均縦収縮量δmL、横曲がり量δbT、縦曲がり量δbL及び横曲がり成分比αT 、縦曲がり成分比αL は次式で表わされる。
【0034】
δmT=(δuT+δlT)/2
δbT=(δuT−δlT)/2
αT =(δuT−δlT)/(δuT+δlT)
δmL=(δuL+δlL)/2
δbL=(δuL−δlL)/2
αL =(δuL−δlL)/(δuL+δlL)
一方、指定された加熱条件に対する基本変形量を算定するためには、
(i) 実際に加熱実験を行って収縮量や角変形を直接的に測定すること、
(ii)指定された条件での温度と変形のシミュレーション解析を実行し、得られた変形量を直接用いること、
(iii) 予め系統的な実験や解析を行っておき、それらの結果を相似則を導入したデータベースの形に整理して蓄えておくこと、
等の方法が考えられる。本実施の形態では、ステップ加熱法を用い、(i) の方法で基本変形量を決定した。この方法で基本変形量を求めるには、加熱部に比べて周囲からの拘束が大きいために、加熱しただけでは変形が陽な形に表れにくい。そのため基本変形量を適切に把握するには、加熱部周囲の拘束を解放した上で変形を測定する必要があるので、本発明では、加熱部周囲の拘束を解放して変形を測定する手法で求めた。
【0035】
上記ステップ6で求めた加熱条件と生成固有歪との定量的関係に、更にステップ7で残留応力の影響を加味したデータ修正を行うようにする。すなわち、変形に影響を与え、加工精度を損う要因である残留応力の効果を取り入れるようにするために、ステップ9で反復繰り返し前の前回の加熱による残留応力状態を弾性シミュレーション解析によって算定し、更に、残留応力が存在する状態での要素加熱実験を行い、要素変形を与える残留応力の影響を調べて、ステップ7に送りデータ修正を行う。
【0036】
次に、ステップ5の加熱方法を策定する場合、目的固有歪を実現するために、前記のように求められた各要素の位置で線状加熱により与えられるべき歪成分(εux i´、εuy i´、γuxy i 、εlx i´、εly i´、γlxy i )を要素内の複数(2本)の加熱線の適当な配置あるいは縦収縮、縦曲がりを考慮した加熱条件の調整によって近似的に実現する方法を考える。ここでは、図7に示された加熱法を想定する。すなわち、板Pの各要素を1組(2つの加熱条件:添字1、2で表す)の加熱線で加熱する。図7において、2つの加熱条件における加熱面の組み合わせは、上下面で4通りある。したがって、未知数はそれぞれの加熱条件により与えるべき基本変形量(δmT1 、αT1、δmL1 、αL1、δmT2 、αT2、δmL2 、αL2)、加熱線の間隔(d1 、d2 )、加熱線の方向(θ1 、θ2 )と加熱面であり、未知数の総数は14個となる。
【0037】
これらの未知数と、既に値が定まっている板Pに付与すべき固有歪との関係は、
β1 =δmL1 /δmT1
β2 =δmL2 /δmT2
ζ1 =δbL1 /δbT1
ζ2 =δbL2 /δbT2
とおくと、以下の式で与えられる。
【0038】
εxu=−δmT1 /d1 (1+J1 αT1)sin2 θ1 −δmT1 /d1 (β1 +J1 ζ1 αT1)cos2 θ1 −δmT2 /d2 (1+J2 αT2)sin2 θ2 −δmT2 /d2 (β2 +J2 ζ2 αT2)cos2 θ2
εyu=−δmT1 /d1 (1+J1 αT1)cos2 θ1 −δmT1 /d1 (β1 +J1 ζ1 αT1)sin2 θ1 −δmT2 /d2 (1+J2 αT2)cos2 θ2 −δmT2 /d2 (β2 +J2 ζ2 αT2)sin2 θ2
γxyu =+δmT1 /d1 (1+J1 αT1)sin 2θ1 −δmT1 /d1 (β1 +J1 ζ1 αT1)sin 2θ1 +δmT2 /d2 (1+J2 αT2)sin 2θ2 −δmT2 /d2 (β2 +J2 ζ2 αT2)sin 2θ2
εxl=−δmT1 /d1 (1-J1 αT1)sin2 θ1 −δmT1 /d1 (β1 -J1 ζ1 αT1)cos2 θ1 −δmT2 /d2 (1-J2 αT2)sin2 θ2 −δmT2 /d2 (β2 -J2 ζ2 αT2)cos2 θ2
εyl=−δmT1 /d1 (1-J1 αT1)cos2 θ1 −δmT1 /d1 (β1 -J1 ζ1 αT1)sin2 θ1 −δmT2 /d2 (1-J2 αT2)cos2 θ2 −δmT2 /d2 (β2 -J2 ζ2 αT2)sin2 θ2
γxyl =+δmT1 /d1 (1-J1 αT1)sin 2θ1 −δmT1 /d1 (β1 -J1 ζ1 αT1)sin 2θ1 +δmT2 /d2 (1-J2 αT2)sin 2θ2 −δmT2 /d2 (β2 -J2 ζ2 αT2)sin 2θ2
ここで J1 、 J2 はそれぞれの加熱条件の加熱面を表し、加熱面が上面の時+1、下面の時−1の値をとる定数とする。いま、加熱時間を独立変数とする基本変形量(δmT、αT 、β、ζ)のデータベースが与えられているとすると、式中の8個の変数δmT1 /d1 、αT1、β1 、ζ1 、δmT2 /d2 、αT2、β2 、ζ2 のうち、4個(δmT1 /d1 、αT1、δmT2 /d2 、αT2)が定まれば、データベースの加熱時間−基本変形量の関係から8個すべてが決定される。したがって、上記の条件式は、6個の未知数(δmT1 /d1 、αT1、θ1 、δmT2 /d2 、αT2、θ2 )から成る6個の条件式を、 J1 、 J2 の組み合わせにより、4組並べたのと同じになる。しかし実際には、
(a) 加熱により伸びは生じない。
(b) 加熱表面の方が加熱裏面より収縮量が大きい。
という条件を考慮すると、4組の条件式のうち1組の式からしか物理的に妥当な解は得られず、その式の J1 、 J2 の値からそれぞれの加熱条件における加熱面が決定される。後述の確認試験において目標形状とした図3で示す曲面について、各要素における加熱方法を求めた結果の一部を表1に示す。これは、加熱源として高周波誘導加熱機を用いたデータベースから算出したものである。また、これは計算を簡単にするために、β1 、β2 、ζ1 、ζ2 を定数(β1 ,β2 =0.3、ζ1 =0.2、ζ2 =0.1)として計算したものである。
【0039】
【表1】
表1に示された情報をもとに鋼板の上下面に対して縦収縮、縦曲がりを考慮した具体的な加熱線を表示した結果を図8(イ)(ロ)に示す。
【0040】
上記のようにしてステップ5、ステップ6、ステップ7で求められた加熱方法により金属板を曲げ加工すると、目的形状に曲げ加工することができることになる。因に、図9は、横収縮、横曲がりだけを考慮した加熱条件の場合に四隅を合わせたときの目的形状に対する形状確認計算結果のずれを示しているが、縦収縮、縦曲がりを考慮した加熱条件を入れると、図10のようにずれのないものになった。又、必要に応じて上記ステップ5、ステップ6、ステップ7で求められた加熱方法での加熱による生成固有歪をステップ9で初期形状に付与させ、曲がり形状と残留応力の弾性シミュレーションを行って、形状の確認と残留応力計算を行うようにする。ここで求めた残留応力の値をステップ7に入れてデータ修正を行わせるようにする。
【0041】
以上のように具体的な加熱線や加熱条件と最終的な変形形状の確認、残留応力が計算により得られるので、その得られた計算で平板を加熱器を用いて線状加熱する。
【0042】
全加熱線について線状加熱が実施されて全加熱が終了すると、板の曲がり形状を計測して、データを分析すると共に、ステップ7の残留応力の影響を考慮して、上記目的形状との差をなくすように加熱条件や加熱方案を出した上でステップ1に戻して引続き加熱を繰り返す反復修正加熱を行わせるようにする。
【0043】
次に、図11は本発明の他の実施の形態を示すフローチャートで、図1に示した実施の形態と同様のステップ加熱で金属板の曲げ加工をする方法において、反復修正加熱のやり方を変えたものである。
【0044】
すなわち、図1に示す実施の形態の場合は、全加熱線について線状加熱を実施し終えた後に、形状計測を行って、計測形状が目的形状と差があるかを見て、差があれば、ステップ7の残留応力の影響を考慮して、目的形状との差をなくすようにステップ1に戻して反復修正加熱を行うようにすることに代えて、全加熱終了後に曲がり形状を計測し、データ分析をすることによりステップ6のデータベースを修正すると共に、ステップ7の残留応力の影響を考慮して、目的形状との差をなくすように、加熱条件や加熱方案を出した上で引き続き加熱を繰り返すようにしたものである。
【0045】
又、図12は本発明の更に他の実施の形態を示すもので、ステップ12の反復修正加熱のやり方を変えたものである。
【0046】
すなわち、ステップ10で線状加熱を行うときに、何本かの加熱線の加熱が終了した時点、すなわち、100本加熱の場合に、先ず、30本の加熱が終了した時点で加熱作業を中断して、加熱が終了した部分の曲がり形状を計測し、そのときの計測形状と目的形状(計画形状)との差を求め、差があると、その差を見てステップ6のデータベースの見直し(データベースの修正)を行うと共にステップ7の残留応力を考慮して目的形状との差をなくすように加熱条件を変更(修正)するようにし、かかる変更した加熱条件をステップ9に入れて次の30本という部分的な加熱線の加熱を行うようにする。
【0047】
次の段階での部分加熱が終了すると、再び曲がり形状を計測して目的形状との差を求め、差があると、ステップ6のデータベースの見直しを行うと共に、ステップ9で計算により求めた残留応力をもとに加熱条件の修正を行い、該修正した加熱条件をステップ9に入れるようにする。
【0048】
このようにして部分的な加熱を行ってリアルタイムでデータの修正を行うことにより予定の加熱線の加熱がすべて終了すると、金属板の曲がり形状を計測し、データを分析して、ステップ1へ戻し反復修正加熱を行うようにする。
【0049】
【実施例】
本発明者等が残留応力の影響について調べるために行った実験結果を説明する。
【0050】
ステップ加熱法(高周波誘導加熱コイルを静止させた状態で加熱線を配置する)では、加熱線同士の間隔が近接しているため、予め加熱している場所又はその近くを加熱した場合は、先行加熱による残留応力のために最初に加熱した場合と同じ量の固有歪の重ね合わせにならないことが予想される。これについて次の実験により調べた。
(1) 残留応力の計測
1本の静止加熱によりどれくらいの残留応力が生じるのかを調べた。試験片の形状及び残留応力計測位置を図13に示す。図13中、○印は計測点を示す。計測方法は、歪ゲージによる応力弛緩法を用いた。ゲージ長1mmの歪ゲージを用い、応力解放については鋸による一次切断の後、約30mm角の大きさに細断した。測定結果を図14(イ)(ロ)に示す。図14(イ)に示す如く、試験片表面では加熱線方向(x方向)に38kg/mm2 、加熱線と直角方向(y方向)に21kg/mm2 程度の大きな残留応力が存在していることがわかる。
(2) 多重加熱実験
ステップ加熱法の加熱方案において生じる代表的な3種類のパターンについて検討した。ここでは先行加熱がある場合、すなわち、残留応力が存在する場所を加熱したときの影響について比較的短い時間の加熱実験により検討した。
【0051】
先行加熱のパターンとして、図15(イ)の基本加熱に対して次の3種類(図15(ロ)(ハ)(ニ)参照)を採用した。
▲1▼重ね加熱:一度加熱した場所と同じ場所を再度加熱する場合(図15(ロ))。
▲2▼横並び加熱:加熱線と直角方向に見たとき、両側を既に加熱されている間を加熱する場合(図15(ハ))。
▲3▼縦並び加熱:加熱線方向に見たとき、前後を既に加熱されている間を加熱する場合(図15(ニ))。
【0052】
図15において、斜線を付したところが加熱するところであり、白抜きのところは既に加熱されているところを示している。
【0053】
高周波誘導加熱の出力は、約37KW、加熱時間はすべて15秒間とした。なお、平板の中央を一本加熱する場合を基本加熱とし、これと比較することとした。
【0054】
実験方法は、試験片表裏の最後に加熱する加熱線をはさんで標点距離100mmの位置にコンタクトボールを打ち込んでおき、それぞれ加熱する前後で標点距離を計測しておき、その差より収縮量を測定した。また、最終的には周辺の拘束を解放して、固有変形量を抽出するために短冊状に鋸切断を行ってデータを採取した。
【0055】
実験結果について、計測した加熱面の横収縮量δu と裏面の横収縮量δl を、面内収縮量δm と曲げ成分δb で整理したものを表2に示す。
【0056】
【表2】
ここで、δm =(δu +δl )/2,δb =(δu +δl )/2である。
▲1▼重ね加熱の場合、基本加熱に対してδm で0.22倍、δb で0.11倍となり、単純な重ね合わせとはならない。これは、(1) 残留応力の計測からわかるように、加熱線と直角方向には引張りの残留応力が存在しているため、2本目の加熱は1本目の加熱程収縮しなかったものと考えられる。
▲2▼横並び加熱の場合、最終加熱後にも伸びが生じるという結果が得られた。両側の加熱線により、加熱線と直角方向にかなり大きな引張りの残留応力が存在しており、加熱による収縮力よりも勝っていたものと考えられる。
▲3▼縦並び加熱の場合、基本加熱に対してδm で1.14倍、δb で1.30倍の結果が得られている。加熱部外側では加熱線と直角方向に圧縮の残留応力が存在していることが予想され、この影響が働いていると思われる。
【0057】
【発明の効果】
以上述べた如く、本発明の線状加熱による金属板の曲げ加工方法によれば、次の如き優れた効果を奏し得る。
(i) 各要素内での目的固有歪分布を計算して、求められた要素内での目的固有歪分布を、複数の加熱線の適当な配置あるいは加熱条件の調整によって表現するようにしているので、一般には、目的形状あるいは目的固有歪から加熱方法を定める場合、通常は逆問題となり、種々の加熱方法を与えた時の変形状態あるいは生成固有歪のデータを予め十分多く蓄えておいた上で、その中から最も目的に合う加熱方法を探し出すという手順をとらねばならないが、この点本発明によれば、目的形状が与えられたならば、図1に示すフローに従って曲げ加工方法を素人でも見つけ出せるという効果を有する。
(ii)具体的な加熱条件によって発生する固有歪は、曲げ成分と面内成分を同時に含むため、必要とする生成固有歪を得る(すなわち、曲げ成分と面内成分のそれぞれを求める値に合致させる)には、結果を知って原因を求める逆問題を解かねばならないという問題があり、この問題を解くに当ってはどのような変形、すなわち、生成固有歪を要求されても、必ず対応する効率のよい加熱条件を取り出せる必要があるが、本発明では、加熱条件と生成固有歪との定量的関係が広い範囲にわたって与えられるので、生成固有歪が与えられたときの適切な加熱条件が求められて最適加熱装置を設計できる。
(iii) 目的固有歪を実現するための加熱線を2本とし、加熱条件に縦収縮、縦曲がりを考慮したものとすることにより、曲げ加工に必要な加熱線の本数を大幅に減らすことができて、加熱方案及びその算出手順が簡単になると共に、金属板曲げ加工の精度を向上できる。
(iv)上記(iii) に加えて、残留応力の影響を考慮してデータ修正したり、反復修正加熱を行わせることにより完全自動化が期待できる。
(v) 部分加熱終了後又は全加熱終了後に曲がり形状を計測してデータを分析すると共に、データを修正したり、残留応力の影響を考慮して加熱条件を変更して引き続き加熱を繰り返すことにより、より精度の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法の実施の形態を示すフローチャートである。
【図2】初期形状から目的形状への写像と強制変形を示すもので、(イ)はFEMメッシュ分割の図、(ロ)は目的形状の上に写像した状態図である。
【図3】目的とする曲面の形状を示す一例図である。
【図4】平板を目的の曲面形状に強制的に撓ませるときに生じる歪として求められる曲げ歪分布のベクトル図である。
【図5】平板を目的の曲面形状に強制的に撓ませるときに生じる歪として求められる面内歪分布のベクトル図である。
【図6】ステップ加熱法による加熱要領の一例図である。
【図7】ステップ5で要素内の目的固有歪分布を実現するときの加熱法である板の上面を加熱する場合の加熱線を示す図である。
【図8】板の上下面に対して具体的な加熱線を表示した結果を示すもので、(イ)は板上面の加熱線表示を示す図、(ロ)は板下面の加熱線表示を示す図である。
【図9】横収縮歪、横曲がりだけを考慮して加熱した場合に四隅を合わせたときに離れた位置でのずれを示す図である。
【図10】図9において縦収縮、縦曲がりを考慮したときのずれのない状態を示す図である。
【図11】本発明の方法の他の形態について示すフローチャートである。
【図12】本発明の方法の更に他の形態について示すフローチャートである。
【図13】試験片形状と残留応力計測位置を示す図である。
【図14】残留応力の計測結果を示すもので、(イ)は表面について、(ロ)は裏面について示す図である。
【図15】多重加熱実験の加熱パターンを示すもので、(イ)は基本加熱の図、(ロ)は重ね加熱の図、(ハ)は横並び加熱の図、(ニ)は縦並び加熱の図である。
【図16】従来の線状加熱による板の曲げ加工方法の例を示すフローチャートである。
【図17】初期形状から目的形状に強制変形させたときの面内歪成分を示すもので、(イ)は初期形状を示す図、(ロ)は目的形状を示す図、(ハ)は面内主歪ベクトル図である。
【符号の説明】
1 ステップ1
2 ステップ2
3 ステップ3
4 ステップ4
5 ステップ5
6 ステップ6
7 ステップ7
8 ステップ8
9 ステップ9
10 ステップ10
11 ステップ11
12 ステップ12
P 金属板
Claims (3)
- 金属板を初期形状から最終の目的形状に曲げ加工するために、先ず、初期形状と目的形状の幾何学情報をインプットし、初期形状に基づいて有限要素法のメッシュ分割を行って、その分割形状を目的形状の上に写像し、次いで、初期形状から目的形状まで強制的に変形させて目的固有歪分布を計算し、得られた目的固有歪分布を複数の加熱線の配置及び縦収縮、縦曲がりを考慮した加熱条件の調整によって生成される生成固有歪で表現し、このとき実験的、解析的あるいは相似則を導入することによって求められた加熱装置と被加工材の組合わせに対するデータベースの加熱条件と生成固有歪との定量的関係を基本として、これに残留応力の影響を加味してデータを修正し、次に、各要素について加熱強度の組合せと加熱方向、加熱線間隔を求めて表示した後、加熱条件が与えられたときに求められた生成固有歪を初期形状に付与することによって曲がり形状の確認と残留応力の弾性シミュレーションを行った上で、全加熱線について金属板の曲げ加工を行った後、金属板の曲がり形状を計測してデータを分析すると共に、目的形状からの差を求め、その差をなくすように残留応力の影響を考慮して加熱条件や加熱方案を出した上で加熱を繰り返すようにすることを特徴とする線状加熱による金属板の曲げ加工方法。
- 全加熱線について加熱終了後に、データを分析することによってデータベースを修正するようにする請求項1記載の線状加熱による金属板の曲げ加工方法。
- 金属板を初期形状から最終の目的形状に曲げ加工するために、先ず、初期形状と目的形状の幾何学情報をインプットし、初期形状に基づいて有限要素法のメッシュ分割を行って、その分割形状を目的形状の上に写像し、次いで、初期形状から目的形状まで強制的に変形させて目的固有歪分布を計算し、得られた目的固有歪分布を複数の加熱線の配置及び縦収縮、縦曲がりを考慮した加熱条件の調整によって生成される生成固有歪で表現し、このとき実験的、解析的あるいは相似則を導入することによって求められた加熱装置と被加工材の組合わせに対するデータベースの加熱条件と生成固有歪との定量的関係を基本として、これに残留応力の影響を加味してデータを修正し、次に、各要素について加熱強度の組合せと加熱方向、加熱線間隔を求めて表示した後、上記求めた加熱条件での加熱途中あるいは全加熱線による生成固有歪を求めて、この求められた生成固有歪を初期形状に付与することによって曲がり形状の確認と残留応力の弾性シミュレーションを行った上で、金属板の一部分について曲げ加工を行った後、その部分の金属板の曲がり形状を計測して目的形状との差を求め、差があると、その差をなくすように、データベースの見直しと残留応力を考慮して加熱条件を変更するようにし、該変更した加熱条件で次の部分の加熱線について曲げ加工を行った後、同様に部分加熱部の曲がり形状を計測して目的形状との差を求めるようにして差があると、差をなくすような加熱条件を出して繰り返し曲げ加工を実施するようにし、全加熱線の加熱が終了した後、曲がり形状を計測して、該計測形状を初期形状に置き換えるようにして反復修正加熱を行うようにすることを特徴とする線状加熱による金属板の曲げ加工方法。
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