JP3848596B2 - リニアモータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リニアモータに関する。特にリニアモータにおけるギャップ部を形成する磁極若しくは歯の形状に特徴を有するリニアモータに関する。
【0002】
【従来の技術】
リニアモータにおけるコギングトルクは、ギャップを形成する固定子とスライダ(可動子)に設けられた磁極と該磁極と対向して設けられた歯の形状によって決まる。コギングトルクを減少させるため磁極又は歯の形状を特別な形としたものが種々提案されている。
【0003】
図11は、従来の界磁磁極を永久磁石で構成した固定子又はスライダの構成の説明図である。鉄等の磁性材料で構成されたプレート10上に相互に略平行に複数の永久磁石1が並置されて固定子又はスライダが構成されている。モータとしてのギャップを構成する面(反プレート側)の形状は、この図11に示す例ではフラットに形成され、固定子とスライダの相対移動方向に平行な線方向にこの永久磁石1を切断した断面形状のギャップ側の外形形状が直線31で形成されている。
【0004】
図12は、他の従来例の磁極形状の例である。この図12で示す例では、プレート10上に並置された永久磁石1を固定子とスライダの相対移動方向に切断した断面形状のギャップ側の外形形状は円弧形状32とされている。
図13は、同様に、永久磁石1の断面形状のギャップ側の外形形状が放物線形状33とされた従来例であり、図14は、双曲線形状34とした従来例である。上述したように、磁極の形状をいろいろと変更し、コギングトルクを減少させる試みが多くなされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、従来のリニアモータと比較しコギングトルクを小さいものにしたリニアモータを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のリニアモータは、ギャップ部を構成する磁極またはそれに対向する歯の一方若しくは両方のギャップ対向面の外形形状を、双曲線関数で表される形状を主体として構成する。具体的にはギャップ対向面の外形形状の全部または1部、又は中央付近を、双曲線関数で表される形状とする。
【0007】
前記双曲線関数は、磁極またはそれに対向する歯の中心軸上のある点からの距離をR、前記線とのなす角をθとしたとき、
R=A−B*(eC θ+e-C θ)
(ただし、A,B,Cは定数,eは自然対数の底または定数)
とする。又は、磁極またはそれに対向する歯の中心軸をX軸、該X軸と直交する軸をY軸とし、このX軸とY軸との交点を原点としたXY座標系において、前記双曲線関数を、
X=A−B*(eCY+e-CY)
(ただし、A,B,Cは定数,eは自然対数の底または定数)
とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の第1の実施形態の永久磁石で界磁磁極を構成する固定子又はスライダ(可動子)の説明図である。
鉄等の磁性材料で構成されたプレート10上に相互に略平行に、磁極を構成する複数の永久磁石1が並置されて固定子又はスライダは構成されている。永久磁石1のギャップを構成する側(反プレート側)の形状がこの実施形態では双曲線関数で表される形状20に形成されている。
【0010】
すなわち、永久磁石1が複数平行に配設された方向である、固定子とスライダ(可動子)が相対移動する方向(図1で左右方向)と並行な線で、永久磁石1を切断したときの断面形状において、ギャップ側(反プレート側)の輪郭外形形状が双曲線関数で表される形状20に形成されている。
【0011】
この双曲線関数の形状20は、磁極を構成する永久磁石1の中心軸(永久磁石1の前記断面形状における中心を通る、図1における1点破線で示すX軸)上のある点からの距離をR、前記中心線とのなす角をθとしたとき、次の1式の前記双曲線関数で表される形状である。
R=A−B*(eC θ+e-C θ) …(1)
なお、A,B,Cは定数,eは自然対数の底または定数である。
【0012】
また、前記中心軸をX軸、該X軸と直交する軸をY軸(固定子とスライダが相対移動する方向で、永久磁石1の断面方向)とし、このX軸とY軸との交点を原点としたXY座標系において、永久磁石1の断面外形形状を次の2式で示される双曲線関数で表される形状20とする。
X=A−B*(eCY+e-CY) …(2)
なお、A,B,Cは定数,eは自然対数の底または定数である。
上記2式から明らかのように、Y=0のときX=A−2Bとなる。すなわち、中心軸であるX軸線上に永久磁石1の頂点があり、この頂点より(A−2B)の位置がこのXY座標系の原点である。
【0013】
永久磁石1のギャップに対向する側の全面にわたって、上述した1式、2式の関数で示される双曲線関数で表される形状20としてもよいが、永久磁石1の対向する側形状の中央付近だけでもよい。すなわち上記X軸で表される永久磁石の中心軸の両側の中央部付近だけ、双曲線関数で表される形状20としても、後述するように、コギングトルクを減少させることができる。
【0014】
図2は、本発明の永久磁石で界磁磁極を構成する固定子又はスライダ(可動子)の第2の実施形態の説明図である。この第2の実施形態は図1に示した第1の実施形態と比較し、永久磁石1の上にコア2が接合され、このコア2の外形形状が上述した双曲線関数で表される形状20に形成されている点である。他は第1の実施形態と同一である。
【0015】
図3は、永久磁石で界磁磁極を構成する固定子又はスライダ(可動子)の第3の実施形態の説明図である。第1の実施形態と相違する点は、磁極を構成する永久磁石1がコア2で覆われ、このコア2のギャップ側の外形形状が双曲線関数で表される形状20に形成されている点である。他は第1の実施形態と同一である。
【0016】
図4は、このリニアモータをリラクタンス型モータで形成する場合の第4の実施形態であり、電力が供給されない非コイル側(二次側)の固定子又はスライダ(可動子)の歯の形状を説明する説明図である。なお、リニアモータを構成する固定子又はスライダ(可動子)において、以下、電力が供給される側を一次側、供給されない側を二次側と呼ぶ。
【0017】
リラクタンス型モータの場合、二次側はコアによる歯3が形成される。この第4の実施形態のリニアモータにおいては、このコアで形成された歯3の外形形状を上述したような双曲線関数で表される形状20に形成するものである。すなわち、第1の実施形態において、永久磁石1の形状と第4の実施形態のコアの歯の形状はほぼ同一であり、永久磁石1かコアかの違いである。
【0018】
上述した第1〜第4の実施形態において、磁極(永久磁石1)又は歯3のギャップに対向する面の全領域を双曲線関数で表される形状20としても、また、中央付近だけでも双曲線関数の形状20とすることによって、コギングトルクを減少させることができる。
【0019】
図5〜図8に示す実施形態は、モータのギャップに対面する磁極又は歯の外形形状を三角関数余弦の逆数で表される形状とするものである。上述した第1〜第4の実施形態では、モータのギャップに対面する磁極又は歯の外形形状を、上述した1式又は2式で表されるような双曲線関数で表される形状としたものである。この図5〜図8に示す第5〜第6の実施形態では、この外形形状を双曲線関数で表される形状に代えて三角関数余弦の逆数の関数で表される形状とするものである。
【0020】
図5に示す第5の実施形態は、磁極を構成する永久磁石1の外形形状を三角関数余弦の逆数で表される形状21としたもので、この点が図1に示した第1の実施形態と相違するのみで、他は第1の実施形態と同一である。永久磁石1の中心軸(永久磁石1を固定子とスライダの相対移動方向と平行な線(Y軸)で切断したときの断面形状において、該断面形状の中心を通る、図5における1点破線で示すX軸)上のある点からの距離をR、前記中心線とのなす角をθとしたとき、次の3式の三角関数余弦の逆数の関数で表される外形形状21とする。
R=A−B/cos(Cθ) …(3)
なお、A,B,Cは定数である。
【0021】
また、前記中心軸をX軸、永久磁石1の切断方向をY軸とし、このX軸とY軸との交点を原点としたXY座標系において、三角関数余弦の逆数を用いた4式で表される形状を永久磁石のギャップ側の外形形状21とする。
X=A−B/cos(CY) …(4)
なお、A,B,Cは定数である。また、Y=0でX=A−Bとなり、この位置が最大値であることから、永久磁石1の頂点から中心軸(X軸)に沿ってA−Bの位置が、このXY座標系の原点となる。
【0022】
図6に示す第6の実施形態は、永久磁石1の上にコア2を接合したもので、図2に示した第2の実施形態と相違する点は、コア2のギャップ側の外形形状が双曲線関数で表される形状から、前記3式、4式で示される三角関数余弦の逆数を用いた形状に代わった点である他は第2の実施形態と同一である。
【0023】
図7に示す第7の実施形態は、永久磁石1をコア2で覆ったもので、図3に示した第3の実施形態と相違する点は、コア2のギャップ側の外形形状が双曲線関数の形状から、前記3式、4式で示される三角関数余弦の逆数の関数で表される形状に代わった点である。他は第3の実施形態と同一である。
【0024】
図8に示す第8の実施形態は、図4に示した第4の実施形態と同様に、リラクタンス型モータを形成するリニアモータの二次側の固定子又はスライダの説明図である。この第8の実施形態と図4に示す第4の実施形態の差異は、コアで形成された歯4のギャップ側の外形形状が、前記3式、4式で示される三角関数余弦の逆数の関数で表される形状21で形成されている点である。他は第4の実施形態と同一である。
【0025】
上述した磁極の外形形状を双曲線関数で表される形状20又は三角関数余弦の逆数の関数で表される形状21を加工する場合、双曲線関数で表される形状20又は三角関数余弦の逆数の関数で表される形状21に対して、これら形状上の点列を直線又は曲線で結んだ形状として加工されることになる。また、図2〜図4、図6〜図8で示す実施形態のように、双曲線関数の関数で表される形状20又は三角関数余弦の逆数の関数で表される形状21をコアで形成する場合には、積層する各薄鋼板の形を積層したとき前記形状20又は形状21になるように形成しておく。
【0026】
この図5〜図8に示した実施形態においても、磁極(永久磁石1)又は歯4は、ギャップに対向する側の全面にわたって、上述した3式、4式の関数で示される三角関数余弦の逆数の関数で表される形状21としてもよく、中央部付近だけでもよい。すなわち図5に表した中心軸(X軸)の両側の中央部だけ、三角関数余弦の逆数を用いた形状21としても、コギングトルクを減少させることができる。
【0027】
本発明の効果をみるために、磁極又は歯の外形形状が直線、円弧、放物線、双曲線の従来技術と、本発明の外形形状が双曲線関数で表される図1で示される実施形態の形状のもの、三角関数余弦の逆数の関数で表される図5で示される実施形態の形状のものを比較実験した。
【0028】
リニアモータのモデル例は、図9に示すように、プレート10上に永久磁石1を並列に配置した二次側を固定子50とし、一次側の電力が供給されるコイル側をスライダ60とした。図9において、一次側のスライダ60は、コイルが巻かれるコアの歯40の形状を示しコイルは図示していない。
【0029】
永久磁石(磁極)1の奥行き(図1、図5、図11〜図13において紙面垂直な方向)は一定とし、スライダ60と固定子50の永久磁石1の頂点間のギャップが一定(プレート2から永久磁石1の最大高さ一定)、永久磁石1の体積一定とした。ただし、図11に示す永久磁石の断面のギャップ側外形形状が直線のものはギャップのみ一定とした。この磁極(永久磁石)の形状の比較を図10に示す。この図10に示すように、外側から順に、三角関数余弦の逆数の形状、双曲線関数の形状、円弧形状、放物線形状(破線)、双曲線形状である。円弧形状と放物線形状(破線)はほとんど重なっている。
コギングトルクを測定した結果は次の通りである。コギングトルクのNは力の単位のニュートン、率は、双曲線関数の形状を基準にしたものである。
【0030】
以上の通り、磁極の外形形状を三角関数余弦の逆数の関数で表される形状で構成したときが最小のコギングトルクとなり、次に双曲線関数で表されるの形状としたときが、コギングトルクが少ない。
【0031】
なお上述したように、磁極又は歯を固定子とスライダの相対移動方向と平行な線方向に切断した断面のギャップに対向する側の外形形状を、対向する側全領域にわたって、三角関数余弦の逆数の形状、又は双曲線関数の形状としてもよいが、周辺部は影響が少ないことから、中央部、すなわち、磁極又は歯の頂点付近を三角関数余弦の逆数の形状、又は双曲線関数の形状とするだけでも、同様な効果を得ることができる。
【0032】
また上述した実施形態では、二次側の磁極又は歯の外形形状を三角関数余弦の逆数の形状、又は双曲線関数の形状とする例を述べたが、一次側の歯又は磁極の外形形状を同様に三角関数余弦の逆数の形状又は双曲線関数の形状とすることによって、同様な効果を奏することができる。このとき、2時側の磁極又は歯は、図11に示すような直線形状でよい。さらに、一次側、二次側両方の磁極又は歯の外形形状を三角関数余弦の逆数の関数で表される形状又は双曲線関数で表される形状とするようにしてもよい。
【0033】
【発明の効果】
本発明のリニアモータは従来のリニアモータと比較し、コギングトルクを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の永久磁石で磁極を構成する固定子又はスライダの説明図である。
【図2】本発明の第2の実施形態の永久磁石で磁極を構成する固定子又はスライダの説明図である。
【図3】本発明の第3の実施形態の永久磁石で磁極を構成する固定子又はスライダの説明図である。
【図4】本発明の第4の実施形態のリラクタンスでリニアモータを形成するときの非励磁側の固定子又はスライダの説明図である。
【図5】本発明の第5の実施形態の永久磁石で磁極を構成する固定子又はスライダの説明図である。
【図6】本発明の第6の実施形態の永久磁石で磁極を構成する固定子又はスライダの説明図である。
【図7】本発明の第7の実施形態の永久磁石で磁極を構成する固定子又はスライダの説明図である。
【図8】本発明の第8の実施形態のリラクタンスでリニアモータを形成するときの非励磁側の固定子又はスライダの説明図である。
【図9】本発明のリニアモータと従来のリニアモータで発生するコギングトルクを比較するためのリニアモータのモデル例の構成を示す図である。
【図10】磁極の外形形状の比較例である。
【図11】磁極の断面外形形状が直線である従来のリニアモータの固定子又はスライダの説明図である。
【図12】磁極の断面外形形状が円弧である従来のリニアモータの固定子又はスライダの説明図である。
【図13】磁極の断面外形形状が放物線である従来のリニアモータの固定子又はスライダの説明図である。
【図14】磁極の断面外形形状が双曲線である従来のリニアモータの固定子又はスライダの説明図である。
【符号の説明】
1 永久磁石(磁極)
2 コア
3、4 歯
10 プレート
20 双曲線関数の形状
21 三角関数余弦の逆数で表される形状
31 直線形状
32 円弧形状
33 放物線形状
34 双曲線形状
40 歯
50 固定子
60 スライダ
Claims (5)
- ギャップ部を構成する磁極またはそれに対向する歯の一方若しくは両方のギャップ対向面の外形形状を、双曲線関数で表される形状を主体として構成することを特徴とするリニアモータ。
- ギャップ部を構成する磁極またはそれに対向する歯の一方若しくは両方のギャップ対向面の外形形状の全部または1部を、双曲線関数で表される形状としたことを特徴とするリニアモータ。
- ギャップ部を構成する磁極またはそれに対向する歯の一方若しくは両方のギャップ対向面の外形形状の少なくとも中央付近を、双曲線関数で表される形状としたことを特徴とするリニアモータ。
- 磁極またはそれに対向する歯の中心軸上のある点からの距離をR、前記線とのなす角をθとしたとき、前記双曲線関数を、
R=A−B*(eC θ+e-C θ)
(ただし、A,B,Cは定数,eは自然対数の底または定数)
とした請求項1乃至3の内のいずれかの1項記載のリニアモータ。 - 磁極またはそれに対向する歯の中心軸をX軸、該X軸と直交する軸をY軸とし、このX軸とY軸との交点を原点としたXY座標系において、前記双曲線関数を、
X=A−B*(eCY+e-CY)
(ただし、A,B,Cは定数,eは自然対数の底または定数)
とした請求項1乃至3の内のいずれかの1項記載のリニアモータ。
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