JP3848396B2 - 内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents

内燃機関の燃料噴射制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の実施の形態】
この発明は内燃機関の燃料噴射制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の燃料噴射制御ないし空燃比制御においては一般にPID制御則が用いられ、目標値と制御量(制御対象出力)との偏差にP項(比例項)、I項(積分項)およびD項(微分項)を乗じてフィードバック補正係数(フィードバックゲイン)を求めているが、近時は、例えば特開平4−209940号公報記載のの技術の如く、現代制御理論を用いてフィードバック補正係数を求めることも提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、車両走行において一旦アクセルペダルが戻されて減速し、フューエルカットされてオープンループ制御に移行した後、ほどなくアクセルペダルが再び踏まれて加速する、即ち、フィードバック制御に復帰することは、しばしば経験される。このような場合にはフィードバック制御からオープンループ制御に移行した後、短時間でフィードバック制御に復帰することになり、フィードバック制御に復帰した時点で再びフィードバック補正係数を算出することになる。
【0004】
そのフィードバック補正係数を例えば適応制御器を用いて算出する場合、適応制御器はPID制御器に比して応答性が高いものの、フィードバック制御に復帰した後の補正係数を適切に設定しないと制御量が安定するまでかえって時間のかかる恐れがある。
【0005】
従って、この発明の目的は、フィードバック制御からオープンループ制御に移行した後、短時間でフィードバック制御に復帰するような走行状態においても、フィードバック補正係数を最適に設定することができ、よって制御量が安定するまで時間を要するなどの不都合が生じないようにした内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1項にあっては、内燃機関の排気する排気空燃比を含む運転状態を検出する運転状態検出手段と、前記内燃機関の供給燃料量を決定する供給燃料量決定手段と、所定周期ごとに複数の制御要素からなる適応パラメータを調整するパラメータ調整機構を有すると共に、前記供給燃料量を操作量として前記検出された排気空燃比が目標空燃比に一致するように、前記パラメータ調整機構で調整された適応パラメータを用いてフィードバック補正係数を算出する適応制御器を備えたフィードバック補正係数算出手段と、検出された運転状態に応じてフィードバック制御を行う領域か否かを判別する判別手段と、およびフィードバック制御を行う領域と判別されるとき、前記フィードバック補正係数に基づいて前記供給燃料量を補正する供給燃料量補正手段とを備えると共に、前記フィードバック補正係数算出手段は、運転状態が前記フィードバック制御を行う領域外に移行したとき、前記適応制御器のパラメータ調整機構が調整する複数の制御要素からなる適応パラメータを含む前記移行の前の最後の前記適応制御器の内部変数をホールドする如く構成した。
【0008】
請求項項にあっては、前記ホールドする適応制御器の内部変数は、前記フィードバック補正係数を含む如く構成した。
【0009】
請求項項にあっては、前記ホールドする適応制御器の内部変数は、前記検出される空燃比を含む如く構成した。
【0010】
請求項4項にあっては、前記ホールドする適応制御器の内部変数は、前記適応パラメータの調整速度を決定するゲイン行列を含む如く構成した。
【0011】
請求項項にあっては、前記フィードバック補正係数算出手段は、運転状態が前記フィードバック制御を行う領域外に移行したときからの経過期間を計測する手段を備え、計測した経過期間が所定期間より大きいとき、ホールドした前記適応制御器の内部変数を前記検出された運転状態に基づいて前記内燃機関の運転領域ごとに予め設定された値に変更する如く構成した。
【0012】
【作用】
請求項1項にあっては、所定周期ごとに複数の制御要素からなる適応パラメータを調整するパラメータ調整機構を有すると共に、前記供給燃料量を操作量として前記検出された排気空燃比が目標空燃比に一致するように、前記パラメータ調整機構で調整された適応パラメータを用いてフィードバック補正係数を算出する適応制御器を備えたフィードバック補正係数算出手段と、検出された運転状態に応じてフィードバック制御を行う領域か否かを判別する判別手段と、およびフィードバック制御を行う領域と判別されるとき、前記フィードバック補正係数に基づいて前記供給燃料量を補正する供給燃料量補正手段とを備えると共に、前記フィードバック補正係数算出手段は、運転状態が前記フィードバック制御を行う領域外に移行したとき、前記適応制御器のパラメータ調整機構が調整する複数の制御要素からなる適応パラメータを含む前記移行の前の最後の前記適応制御器の内部変数をホールドする如く構成したので、フィードバック制御からオープンループ制御に移行した後、短時間でフィードバック制御に復帰するような走行状態においてはホールドした内部変数に基づいてフィードバック補正係数を求めることで適応制御の連続性を保ちつつ適応制御を実行することができ、フィードバック補正係数を最適に算出することができ、よって制御量が安定するまで時間を要するなどの不都合が生じることがない。また、前記した適応制御器がフィードバック補正係数を算出するのに重要であると共に、収束までに時間を要する適応パラメータをホールドすることで、演算再開時にその適応パラメータが最適な制御性を示すまでの時間が大幅に短縮され、収束性、制御性を向上させることができる。
【0013】
制御性の向上について更に敷衍すると、供給燃料量を操作量として検出された排気空燃比が目標空燃比に一致するように適応制御器を用いてフィードバック補正係数を算出することから、制御対象が状態によって変化する場合でも収束速度を自動的に調整することとなり、制御量が目標値へ速やかに収束して収束性が向上する。
【0014】
また操作量に外乱が加わって制御量が目標値からずれた場合も、適応制御器が制御対象の変化として動作することにより、制御量が目標値に一致するようにフィードバック補正係数が決定されるので、外乱に対するロバスト性も向上する。尚、フィードバック補正係数は操作量に乗算されるものであっても加算されるものであっても良い。
【0016】
請求項項にあっては、前記ホールドする適応制御器の内部変数は、前記フィードバック補正係数を含む如く構成したので、請求項1項で述べた作用、効果に加えて、フィードバック補正係数をホールドしない場合にはフューエルカット中に1.0となり、演算再開時にフィードバック補正係数の過去値はそれから開始することになるが、ホールド値から演算を再開することで、より制御性を向上させることができる。
【0017】
請求項項にあっては、前記ホールドする適応制御器の内部変数は、前記検出される空燃比を含む如く構成したので、請求項1項で述べた作用、効果に加えて、ホールド値から演算を再開することで、より制御性を向上させることができる。
【0018】
請求項4項にあっては、前記ホールドする適応制御器の内部変数は、前記適応パラメータの調整速度を決定するゲイン行列を含む如く構成したので、請求項1項で述べた作用、効果に加えて、適応制御器に固定ゲインアルゴリズム以外のアルゴリズムを用いた場合、演算再開時ゲイン行列を所定値、例えば初期値にしたとき、ゲイン行列自体が最適な値に収束するまでに時間を要し、その間の制御性が悪化するが、内部変数をホールドすることでゲイン行列自体が最適な値に収束するまでの時間を大幅に短縮でき、制御性を向上させることができる。
【0019】
請求項項にあっては、前記フィードバック補正係数算出手段は、運転状態が前記フィードバック制御を行う領域外に移行したときからの経過期間を計測する手段を備え、計測した経過期間が所定期間より大きいとき、ホールドした前記適応制御器の内部変数を前記検出された運転状態に基づいて前記内燃機関の運転領域ごとに予め設定された値に変更する如く構成したので、請求項1項で述べた作用、効果に加えて、経過期間が大きいときは、ホールドした値を所定値、例えば初期値に変更することから、復帰の前後の内燃機関の運転状態が大きく変化しているような場合に不適切なフィードバック補正係数を算出する不都合がなく、また所定値、例えば初期値に戻すことで、復帰後のフィードバック補正係数の算出も容易となる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に即してこの発明の実施の形態を説明する。
【0021】
図1はこの発明に係る内燃機関の燃料噴射制御装置を示す全体図である。
【0022】
図において、符号10はOHC直列4気筒の内燃機関を示しており、吸気管12の先端に配置されたエアクリーナ14から導入された吸気は、スロットル弁16でその流量を調節されつつサージタンク18と吸気マニホルド20を経て、2個の吸気弁(図示せず)を介して第1から第4気筒へと流入される。各気筒の吸気弁(図示せず)の付近にはインジェクタ22が設けられて燃料を噴射する。噴射されて吸気と一体となった混合気は、各気筒内で図示しない点火プラグで点火されて燃焼してピストン(図示せず)を駆動する。
【0023】
燃焼後の排気ガスは、2個の排気弁(図示せず)を介して排気マニホルド24に排出され、排気管26を経て触媒装置(三元触媒)28で浄化されて機関外に排出される。上記で、スロットル弁16はアクセルペダル(図示せず)とは機械的に切り離され、パルスモータMを介してアクセルペダルの踏み込み量および運転状態に応じた開度に制御される。また、吸気管12には、スロットル弁16の配置位置付近にそれをバイパスするバイパス路32が設けられる。
【0024】
内燃機関10には、排気ガスを還流路121を介して吸気側に還流させる排気還流機構100が設けられると共に、吸気系と燃料タンク36との間も接続され、キャニスタ・パージ機構200が設けられるが、その機構は本願の要旨と直接の関連を有しないので、説明は省略する。
【0025】
更に、内燃機関10は、いわゆる可変バルブタイミング機構300(図1にV/T と示す)を備える。可変バルブタイミング機構300は例えば、特開平2−275,043号公報に記載されており、機関回転数Neおよび吸気圧力Pbなどの運転状態に応じて機関のバルブタイミングV/T を図2に示す2種のタイミング特性LoV/T, HiV/Tの間で切り換える。但し、それ自体は公知な機構なので、これ以上の説明は省略する。尚、このバルブタイミング特性の切り換えには、2個の吸気弁の一方を休止する動作を含む。
【0026】
図1において内燃機関10のディストリビュータ(図示せず)内にはピストン(図示せず)のクランク角度位置を検出するクランク角センサ40が設けられると共に、スロットル弁16の開度を検出するスロットル開度センサ42、スロットル弁16下流の吸気圧力Pb を絶対圧力で検出する絶対圧センサ44も設けられる。
【0027】
また、内燃機関10の適宜位置には大気圧Pa を検出する大気圧センサ46が設けられ、スロットル弁16の上流側には吸入空気の温度を検出する吸気温センサ48が設けられると共に、機関の適宜位置には機関冷却水温を検出する水温センサ50が設けられる。また、油圧を介して可変バルブタイミング機構300の選択するバルブタイミング特性を検出するバルブタイミング(V/T )センサ52(図1で図示省略)も設けられる。更に、排気系において、排気マニホルド24の下流で触媒装置28の上流側の排気系集合部には、広域空燃比センサ54が設けられる。これらセンサ出力は、制御ユニット34に送られる。
【0028】
図3は制御ユニット34の詳細を示すブロック図である。広域空燃比センサ54の出力は検出回路62に入力され、そこで適宜な線型化処理が行われてリーンからリッチにわたる広い範囲において排気ガス中の酸素濃度に比例したリニアな特性からなる検出信号を出力する(以下、この広域空燃比センサを「LAFセンサ」と呼ぶ)。
【0029】
検出回路62の出力は、マルチプレクサ66およびA/D変換回路68を介してCPU内に入力される。CPUはCPUコア70、ROM72、RAM74を備え、検出回路62の出力は所定のクランク角度(例えば15度)ごとにA/D変換され、RAM74内のバッファの1つに順次格納される。またスロットル開度センサ42などのアナログセンサ出力も同様にマルチプレクサ66およびA/D変換回路68を介してCPU内に取り込まれ、RAM74に格納される。
【0030】
またクランク角センサ40の出力は波形整形回路76で波形整形された後、カウンタ78で出力値がカウントされ、カウント値はCPU内に入力される。CPUにおいてCPUコア70は、ROM72に格納された命令に従って後述の如く制御値を演算し、駆動回路82を介して各気筒のインジェクタ22を駆動する。更に、CPUコア70は、駆動回路84,86,88を介して電磁弁90(2次空気量を調節するバイパス路32の開閉)、および排気還流制御用電磁弁122ならびにキャニスタ・パージ制御用電磁弁225を駆動する。
【0031】
図4はこの発明に係る制御装置の動作を示すフロー・チャートである。尚、図4のプログラムは所定クランク角度で起動される。
【0032】
図示の装置にあっては図5ブロック図に示す如く、供給燃料量(図に基本噴射量Timと示す)を操作量として検出された排気空燃比(図にKACT(k) と示す)が目標空燃比(図にKCMD(k) と示す)に一致するように第1の漸化式形式の制御則(STR型の適応制御器。図にSTRコントローラと示す)を用いて第1のフィードバック補正係数(図にKSTR(k) と示す)を算出する第1の算出手段を設けた。
【0033】
それと共に、前記供給燃料量を操作量として検出された排気空燃比KACTが目標値KCMDに一致するように、応答性において前記第1の制御則より劣る第2の制御則、より具体的にはPID制御則からなるPIDコントローラ(図にPIDと示す)を用いて第2のフィードバック補正係数KLAF(k) を算出する第2の算出手段を設け、後述の如く検出された運転状態に応じて前記第1の算出手段と前記第2の算出手段の出力のいずれかを選択し、それに基づいて前記供給燃料量Timを補正して出力噴射量Tout を求める如く構成した。
【0034】
以下説明すると、先ずS10において検出した機関回転数Neおよび吸気圧力Pb などを読み出し、S12に進んでクランキングか否か判断し、否定されるときはS14に進んでフューエルカットか否か判断する。フューエルカットは、所定の運転状態、例えばスロットル弁開度が全閉位置にあり、かつ機関回転数が所定値以上であるときに行われ、燃料供給が停止されて噴射量はオープンループで制御される。
【0035】
S14でフューエルカットではないと判断されたときはS16に進み、検出した機関回転数Neと吸気圧力Pbとからマップを検索して基本燃料噴射量Timを算出する。次いでS18に進んでLAFセンサ54の活性化が完了したか否か判定する。これは例えば、LAFセンサ54の出力電圧とその中心電圧との差を所定値(例えば0.4v)と比較し、差が所定値より小さいとき活性化が完了したと判定することで行う。
【0036】
活性化が完了したと判断されるときはS20に進んでLAFセンサ検出値(センサ出力)を読み込み、S22に進んで検出値から検出空燃比KACT(k)(k:離散系のサンプル時刻)を求め、次いでS24に進んでフィードバック補正係数KFB を演算する。
【0037】
図6はその作業を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【0038】
以下説明すると、S100でフィードバック制御領域か否か判断する。これは図示しない別ルーチンで行われるが、端的に言えば、前記したオープンループ制御時にないときフィードバック制御領域とされる。そしてS100で肯定されるときはS102に進んでPID制御則を用いてフィードバック補正係数KLAFを演算する。以下、この補正係数を「PID補正係数」と称する。
【0039】
以下、このPID制御則によるフィードバック補正係数KLAFについて説明すると、先ず、目標空燃比KCMD(k-d’) と検出空燃比KACTの制御偏差DKAF(k) を
DKAF(k) =KCMD(k-d’) −KACT(k)
と求める。上記でKCMD(k-d’): 目標空燃比(ここでd’はKCMDがKACTに反映されるまでの無駄時間を示し、よって無駄時間制御周期前の目標空燃比を意味する)、KACT(k) :検出空燃比(今回制御周期の)を示す。尚、演算の便宜のため、空燃比は目標値KCMDも検出値KACTも、実際には、当量比、即ち、Mst/M=1/λで示している(Mst:理論空燃比、M=A/F(A:空気消費量、F:燃料消費量)、λ:空気過剰率)。
【0040】
次いで、それに所定の係数を乗じてP項KLAFP(k)、I項KLAFI(k)、およびD項KLAFD(k)を
P項:KLAFP(k)=DKAF(k) ×KP
I項:KLAFI(k)=KLAFI(k-1)+DKAF(k) ×KI
D項:KLAFD(k)=(DKAF(k) −DKAF(k-1) )×KD
と求める。
【0041】
このようにP項は偏差に比例ゲインKPを乗じて求め、I項は偏差に積分ゲインKIを乗じて得た値をフィードバック補正係数のI項の前回値KLAFI(k-1)に加算して求め、D項は偏差の今回値DKAF(k) と前回値DKAF(k-1) の差に微分ゲインKDを乗じて求める。尚、各ゲインKP,KI,KDは、機関回転数と機関負荷に応じて求められ、より具体的にはマップを用いて機関回転数Neと吸気圧力Pbとから検索できるように設定しておく。最後に、よって得た値を
KLAF(k) =KLAFP(k)+KLAFI(k)+KLAFD(k)
と合算してPID制御則によるフィードバック補正係数の今回値KLAF(k) とする。尚、この場合、乗算補正によるフィードバック補正係数とするため、オフセット分である1.0はI項KLAFI(k)に含まれているものとする(即ち、I項KLAFI(k)の初期値は1.0とする)。
【0042】
図6フロー・チャートにおいては次いでS104に進んで適応制御則を用いてフィードバック補正係数KSTRを算出する。以下、この補正係数を「適応補正係数」と言う。
【0043】
以下これについて説明すると、先に図5に示した適応制御器は、本出願人が先に提案した適応制御技術を前提とする。それはSTR(セルフチューニングレギュレータ)コントローラからなる適応制御器とその適応(制御)パラメータ(ベクトル)を調整する適応(制御)パラメータ調整機構とからなり、STRコントローラは、燃料噴射量制御のフィードバック系の目標値と制御量(プラント出力)を入力し、適応パラメータ調整機構によって同定された係数ベクトルを受け取って出力を算出する。
【0044】
このような適応制御において、適応制御の調整則(機構)の一つに、I.D.ランダウらの提案したパラメータ調整則がある。この手法は、適応制御システムを線形ブロックと非線形ブロックとから構成される等価フィードバック系に変換し、非線形ブロックについては入出力に関するポポフの積分不等式が成立し、線形ブロックは強正実となるように調整則を決めることによって、適応制御システムの安定を保証する手法である。即ち、ランダウらの提案したパラメータ調整則においては、漸化式形式で表される調整則(適応則)が、上記したポポフの超安定論ないしはリヤプノフの直接法の少なくともいづれかを用いることでその安定性を保証している。
【0045】
この手法は、例えば「コンピュートロール」(コロナ社刊)No.27,28頁〜41頁、ないしは「自動制御ハンドブック」(オーム社刊)703頁〜707頁、" A Survey of Model Reference Adaptive Techniques - Theory and Ap-plications" I.D. LANDAU 「Automatica」Vol. 10, pp. 353-379, 1974、"Uni- fication of Discrete Time Explicit Model Reference Adaptive ControlDesigns" I.D.LANDAU ほか「Automatica」Vol. 17, No. 4, pp. 593-611, 1981 、および" Combining Model Reference Adaptive Controllers and Stochastic Self-tuning Regulators" I.D. LANDAU 「Automatica」Vol. 18, No. 1, pp. 77-84, 1982 に記載されているように、公知技術となっている。
【0046】
図示例の適応制御技術では、このランダウらの調整則を用いた。以下説明すると、ランダウらの調整則では、離散系の制御対象の伝達関数B(Z-1)/A(Z-1) の分母分子の多項式を数1および数2のようにおいたとき、パラメータ調整機構が同定する適応パラメータθハット(k) は、数3のようにベクトル(転置ベクトル)で示される。またパラメータ調整機構への入力ζ(k) は、数4のように定められる。ここでは、m=1、n=1、d=3の場合、即ち、1次系で3制御サイクル分の無駄時間を持つプラントを例にとった。
【0047】
【数1】
Figure 0003848396
【0048】
【数2】
Figure 0003848396
【0049】
【数3】
Figure 0003848396
【0050】
【数4】
Figure 0003848396
【0051】
ここで、数3に示される適応パラメータθハットは、ゲインを決定するスカラ量b0 ハット-1(k) 、操作量を用いて表現される制御要素BR ハット(Z-1, k)および制御量を用いて表現される制御要素Sハット(Z -1, k)からなり、それぞれ数5から数7のように表される。
【0052】
【数5】
Figure 0003848396
【0053】
【数6】
Figure 0003848396
【0054】
【数7】
Figure 0003848396
【0055】
パラメータ調整機構はこれらのスカラ量や制御要素の各係数を同定・推定し、前記した数3に示す適応パラメータθハットとして、STRコントローラに送る。パラメータ調整機構は、プラントの操作量u(i)および制御量y(j)(i,jは過去値を含む)を用いて目標値と制御量との偏差が零となるように適応パラメータθハットを算出する。適応パラメータθハットは、具体的には数8のように計算される。数8で、Γ(k) は適応パラメータの同定・推定速度を決定するゲイン行列(m+n+d次)、eアスタリスク(k) は同定・推定誤差を示す信号で、それぞれ数9および数10のような漸化式で表される。尚、数10においてD(z-1)は設計者が与える所望の漸近安定な多項式であり、この例では1に設定した。
【0056】
【数8】
Figure 0003848396
【0057】
【数9】
Figure 0003848396
【0058】
【数10】
Figure 0003848396
【0059】
また数9中のλ1(k) ,λ2(k) の選び方により、種々の具体的なアルゴリズムが与えられる。例えば、λ1(k) =1,λ2(k) =λ(0<λ<2)とすると漸減ゲインアルゴリズム(λ=1の場合には最小自乗法)、λ1(k) =λ1(0<λ1<1),λ2(k) =λ2(0<λ2<λ)とすると可変ゲインアルゴリズム(λ2=1の場合には重み付き最小自乗法)、λ1(k) /λ2(k) =σとおき、λ3が数11のように表されるとき、λ1(k) =λ3(k) とおくと固定トレースアルゴリズムとなる。また、λ1(k) =1,λ2(k) =0のとき固定ゲインアルゴリズムとなる。この場合は数9から明らかな如く、Γ(k) =Γ(k-1) となり、よってΓ(k) =Γの固定値となる。燃料噴射ないし空燃比などの時変プラントには、漸減ゲインアルゴリズム、可変ゲインアルゴリズム、固定ゲインアルゴリズム、および固定トレースアルゴリズムのいずれもが適している。尚、数11においてtrΓ(0) はΓの初期値のトレースである。
【0060】
【数11】
Figure 0003848396
【0061】
ここで、図5にあっては、前記したSTRコントローラ(適応制御器)と適応パラメータ調整機構とは燃料噴射量演算系の外におかれ、検出空燃比KACT(k) が目標空燃比KCMD(k-d’) (ここでd’は前述の如くKCMDがKACTに反映されるまでの無駄時間)に適応的に一致するように動作してフィードバック補正係数KSTR(k) を演算する。即ち、STRコントローラは、適応パラメータ調整機構によって適応的に同定された係数ベクトルθハット(k) を受け取って目標空燃比KCMD(k-d’)に一致するようにフィードバック補償器を形成する。演算されたフィードバック補正係数KSTR(k) は基本噴射量Timに乗算され、補正された燃料噴射量が出力燃料噴射量Tout(k)として制御プラント(内燃機関)に供給される。
【0062】
このように、適応補正係数KSTR(k) および検出空燃比KACT(k) が求められて適応パラメータ調整機構に入力され、そこで適応パラメータθハット(k) が算出されてSTRコントローラに入力される。STRコントローラには入力として目標空燃比KCMD(k) が与えられ、検出空燃比KACT(k) が目標空燃比KCMD(k-d')に一致するように漸化式を用いて適応補正係数KSTR(k) を算出する。
【0063】
適応補正係数KSTR(k) は、具体的には数12に示すように求められる。
【0064】
【数12】
Figure 0003848396
【0065】
前述の如く、検出空燃比KACT(k) と目標空燃比KCMD(k) とは、図6フロー・チャートのS102で先に説明したPID制御則による制御器(PID)にも入力され、排気系集合部の検出空燃比KACT(k) と目標空燃比KCMD(k-d')との偏差を解消すべくPID制御則に基づいてPID補正係数KLAF(k) が算出される。適応制御則による適応補正係数KSTRとPID制御則によるPID補正係数KLAFは、図5の切換機構400を介していずれか一方が燃料噴射量の演算に用いられる。
【0066】
ここで、STRコントローラとPIDコントローラの平行演算について説明を補足すると、数6ないし数10に示した適応パラメータ調整機構は、中間変数ζ(k-d) 、即ち、u(k) =KSTR(k) およびy(k) =KACT(k) の現在値と過去値をひとまとめにしたベクトルを入力し、その因果関係から適応パラメータθハット(k) を算出している。ここで用いるu(k) は、実際に燃料噴射量演算に用いるフィードバック補正係数である。次回の制御サイクルで適応制御を行わずにPID制御を行う状態では、このフィードバック補正係数にPID補正係数KLAFを用いる。
【0067】
ここで、PID制御を行っている場合に、適応パラメータ調整機構に入力するu(k) を適応補正係数KSTR(k) からKLAF(k) に置換して適応パラメータ調整機構に入力しても、燃料噴射制御に用いたフィードバック補正係数に応じた制御出力、即ち、KACT(k+d')が出力されるため、入出力の因果関係が成立し、適応パラメータ調整機構は適応パラメータθハット(k) を発散させることなく、演算できる。
【0068】
このとき、数12にこのθハット(k) を入力すると、KSTR(k) が演算される。このKSTR(k) の演算は、KSTR(k-i) =KLAF(k-i) と置換して演算したKSTR(k) でも良い(i=1,2,3)。
【0069】
このように、PIDコントローラが動作しているときも適応補正係数KSTRは演算可能であり、そのときのPID補正係数KLAFと適応補正係数KSTRは略一致する。また、それによってPID補正係数KLAFから適応補正係数KSTRに切り換える際に、PID補正係数KLAFと適応補正係数KSTRとは近似した値となり、円滑な切り換えとなる。
【0070】
図6フロー・チャートに戻ると、次いでS106に進んで高応答のフィードバック補正係数(適応補正係数KSTR)と低応答のフィードバック(PID補正係数KLAF)のうち、いずれを用いてフィードバック制御を実行すべき領域なのか判別する。
【0071】
図7はその領域判別作業を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【0072】
以下説明すると、先ずS400において前回、即ち、図4フロー・チャートの前回起動時(前回制御周期)にオープンループで制御されていたか否か判断する。ここで、肯定されたときはS402に進み、低応答のフィードバック補正係数(PID補正係数KLAF)を用いてフィードバック制御を行うべき領域(以下「低応答フィードバック領域」と言う)とする。
【0073】
これは、オープンループ制御からの突入時は前述したような理由から高応答のフィードバック制御を行わない方が良いためである。尚、オープンループ制御からの突入時に所定期間、例えば5TDC、低応答フィードバック制御を行っても良く、その場合はS400の後にその期間であれば継続的にS402に進むような判断ステップを設ければ良い。また、後述するように、オープンループ制御の制御期間が所定期間よりも短いような場合は、オープンループ制御からの突入時においても高応答の制御が可能である。従って、そのような場合は、S400のステップを省略しても良い
【0074】
S400で否定されるときはS404に進んで検出した機関冷却水温Twが所定値TWSTRON 未満か否か判断する。ここで、所定値TWSTRON は比較的低水温に設定され、検出した機関冷却水温Twが所定値TWSTRON 未満と判断されるときはS402に進んで低応答フィードバック領域とする。これは、低水温時には燃焼が安定せず、失火などを生じる危険があって安定した検出値KACTが得られないからである。尚、図示は省略するが、水温が異常に高いときも同様の理由から低応答フィードバック領域とする。
【0075】
S404で検出した機関冷却水温Twが所定値TWSTRON 未満ではないと判断されるときはS406に進み、検出した機関回転数Neが所定値NESTRLMT以上か否か判断する。ここで、所定値NESTRLMTは比較的高回転数であり、S406で検出した機関回転数Neが所定値NESTRLMT以上と判断されるときはS402に進んで低応答フィードバック領域とする。これは、高回転時は演算時間が不足しがちであると共に、燃焼も安定しないからである。
【0076】
S406で検出した機関回転数Neが所定値NESTRLMT以上ではないと判断されるときはS408に進んでアイドル時にあるか否か判断し、肯定されるときはS402に進んで低応答フィードバック領域とする。これは、アイドル時は運転状態がほぼ安定しており、適応制御則のような高いゲインを必要としないからである。
【0077】
S408でアイドル時ではないと判断されるときはS410に進んで低負荷域にあるか否か判断し、肯定されるときはS402に進んで低応答フィードバック領域とする。これは、低負荷域では燃焼が安定しないためである。
【0078】
S410で低負荷域にはないと判断されるときはS412に進んで可変バルブタイミング機構においてHi V/T(高速側のバルブタイミング)が選択されているか否か判断し、肯定されるときはS402に進んで低応答フィードバック領域とする。これは、高速側のバルブタイミングが選択されているときはバルブタイミングのオーバラップ量が大きいため、吸気が排気弁を通過して逃げる、いわゆる吸気の吹き抜けと言う現象が生じる恐れがあり、安定した検出値KACTを期待し得ないからである。また、高回転時にはLAFセンサの検出遅れも無視し難くなる。
【0079】
尚、ここで高速側のバルブタイミングが選択されているか否かの判断は、実際に高速側のバルブタイミングが選択されているか否かを判断するのみならず、図示しない可変バルブタイミング機構の制御ユニットで低速側から高速側への切り換え指令がなされているか否かをも適宜なフラグを参照することで行う。即ち、バルブタイミングの変更は全ての気筒について同時に行われるとは限らず、過渡状態などでは気筒間でバルブタイミングが一時的に異なる場合が生じるからである。換言すれば、バルブタイミングの高速側への切り換え時にあっては、低応答フィードバック領域と判断されてPID補正係数を用いてフィードバック制御がなされたのを確認した上で、可変バルブタイミング機構の制御ユニットでは高速側への切り換えを行うようにする。
【0080】
S412で否定されるときはS414以降に進み、検出した空燃比KACTが所定値a未満か否か判断し、肯定されるときはS402に進むと共に、否定されるときはS416に進んで検出した空燃比KACTが所定値bより大きいか否か判断し、肯定されるときはS402に進むと共に、否定されたときはS418に進んで高応答のフィードバック補正係数(適応補正係数KSTR)を用いてフィードバック制御を行うべき領域(以下「高応答フィードバック領域」と言う)とする。即ち、空燃比がリーンもしくはリッチのときは適応制御のような高応答の制御は行わない方が良いため、所定値a,bを適宜設定することで、その判別をするようにした。尚、この作業は、検出空燃比に代えて目標空燃比を比較しても良い。
【0081】
図6フロー・チャートに戻ると、次いでS108に進んで高応答フィードバック領域か否か判断し、肯定されるときはS110に進んで適応補正係数KSTRをフィードバック補正係数KFB とし、S112に進んでフィードバック補正係数KFB をI項KLAFI とする。次いでS114に進んで適応補正係数KSTRで噴射量補正がなされることからフラグFKSTRのビットを1にセットする。
【0082】
他方、S108で高応答フィードバック領域ではないと判断されるときはS116に進んでPID補正係数KLAFをフィードバック補正係数KFB とし、S118に進んでフィードバック補正係数KFB をプラント入力u(k) とし、STRコントローラに入力する(図5に示す)。これは、STR領域ではないときもSTRコントローラは演算を継続することから、PID補正係数KLAFを演算に使用させるためである。次いでS120に進んでフラグFKSTRのビットを0にリセットする。
【0083】
またS100でフィードバック領域ではないと判断されるときはS122に進んでフィードバック領域ではなくなってから所定期間が経過したか否か判断し、否定されるときはS124に進んでI項の前回値KLAFI(k-1)を今回値KLAFとし、即ち、I項をホールドし、S126に進んで同様に、適応制御器の内部変数(中間変数)を前回値、即ち、適応制御時の最後の値をホールドする。
【0084】
尚、上記でPID補正係数KLAFは、I項が書き替えられたとき、それを用いて算出される。その理由は、次回の制御サイクルで適応補正係数KSTRからPID補正係数KLAFに切り換えられるときはI項(積分項)が急激に変化する可能性があるが、このように適応補正係数KSTRの値を用いてPID補正係数KLAFのI項の初期値を決定することにより、適応補正係数とPID補正係数の段差を小さく止めることができ、制御量の急変を防止して制御の安定性を確保することができるからである。
【0085】
ここで、プラント入力u(k) は図5に示す如く、ζの演算に用いられるが、そのとき現在値u(k) のみならず、その過去値u(k-1) なども用いられる。従って、S126のu(k-i) のiは、その現在値および過去値を総称する意味で用い、S126ではu(k) ,u(k-1) ,u(k-2) ,u(k-3) 、より正確にはu(k-1) ,u(k-2) ,u(k-3) ,u(k-4) をホールドすることを意味する。尚、適応パラメータθハットとゲイン行列Γは、単に前回値をホールドする。尚、図示は省略したが、KSTR,KACTも適応制御時の最後の値をホールドする。尚、KACTと入力u(k-i) をひとまとめにしてζとしてホールドさせても良いことは言うまでもない。
【0086】
次いで、S128に進んでフィードバック補正係数KFB の値を1.0とする。即ち、フィードバック制御を行わないこととし、S130に進んでフラグFKSTRのビットを0にリセットする。
【0087】
他方、S122でフィードバック領域ではなくなってから所定期間が経過したと判断されるときはS132に進んでI項KLAFI の値を1.0(初期値)とし、S134に進んでプラント入力u(k-i) 、適応パラメータθハット(k-1) およびゲイン行列Γ(k-1) の値を所定値、例えば初期値とする。ここで、プラント入力uについて初期値はより具体的には、u(k) =u(k-1) =u(k-2) =u(k-3) =1とおく。
【0088】
これについて説明すると、一旦アクセルペダルが戻されて減速し、フューエルカットされてオープンループ制御に移行した後、ほどなくアクセルペダルが再び踏まれて加速する、即ち、フィードバック制御に復帰することは、しばしば経験される。このように短時間で再びフィードバック制御に復帰するときは、STRコントローラの非作動領域前後の内燃機関の状態がほとんど変化せず、過去の燃焼履歴との因果関係が当然成立しているからである。
【0089】
従って、このような一過性の領域の変更の場合には適応制御器の内部変数をホールドすることで適応制御の連続性が保たれ、初期状態などに不要に戻ることなく、適応制御が実行されて制御安定性が向上する。その意味で、S122で述べた所定期間は過去の燃焼履歴との因果関係が成立する範囲の期間に設定する。尚、ここで「期間」なる語を使用したのは、時間により計測する範囲のみならず、制御周期数(燃焼サイクル数、TDC数などのカウントにより計測する範囲をも含ませるためである。
【0090】
他方、所定期間以上の時間が経過したときは、適応制御非作動領域前後の内燃機関の状態が大きく変化していることが予想されるため、S134で内部変数を所定値、例えば初期値に戻すようにした。尚、θハット(k-1) の初期値およびu(k) (=KSTR(k) )を内燃機関の運転領域ごとにメモリに格納しておき、その値を用いてθハット(k-1) およびζ(k-d) の過去値としても良い。そうすることによって、適応制御再開時の制御性をさらに向上させることができる。更には、θハット(k) を運転領域ごとに学習しても良い。
【0091】
図4フロー・チャートに戻ると、次いでS26に進んで基本燃料噴射量Timに、目標空燃比補正係数KCMDM (目標空燃比KCMD(当量比)に吸入空気の充填効率補正を施して得る値)と求めたフィードバック補正係数KFB と各種補正係数KTOTALとを乗算して補正すると共に、加算項TTOTALを加算して補正し、先に述べたように出力燃料噴射量Tout を決定する。次いでS28に進んで出力燃料噴射量Tout を操作量としてインジェクタ22に出力する。
【0092】
ここで、各種補正係数KTOTALは水温補正など乗算で行う各種の補正係数の積算値を意味し、加算項TTOTALは気圧補正など加算値で行う補正係数の合算値を示す(但し、インジェクタの無効時間などは出力燃料噴射量Tout の出力時に別途加算されるので、これに含まれない)。
【0093】
尚、S18で否定されたときは空燃比がオープンループ制御となるので、S30に進んでフィードバック補正係数KFB の値を1.0とし、S26に進んで出力燃料噴射量Tout を求める。またS12でクランキングと判断されたときはS32に進んでクランキング時の燃料噴射量Ticr を検索し、S34に進んで検索値に基づいて始動モードの式に従って出力燃料噴射量Tout を算出すると共に、S14でフューエルカットと判断されたときは、S36に進んで出力燃料噴射量Tout を零とする。
【0094】
この実施の形態は上記の如く、一旦アクセルペダルが戻されて減速し、フューエルカットされてオープンループ制御に移行した後、ほどなくアクセルペダルが再び踏まれて加速するような一過性の領域の変更の場合には適応制御器の内部変数をホールドするようにしたので、適応制御の連続性を保つことができ、初期状態などに不要に戻ることなく、適応制御を実行することができて制御安定性を向上させることができる。
【0095】
他方、所定期間以上の時間が経過したときは、適応制御非作動領域前後の内燃機関の状態が大きく変化していることが予想されるため、S134で内部変数を所定値、例えば初期値に戻すようにしたので、不適切なフィードバック補正係数を算出する恐れがなく、また所定値に戻すことで算出も容易となり、適応制御再開時の制御性をさらに向上させることができる。
【0096】
更に、STRコントローラを用いた高応答の適応補正係数とPIDコントローラを用いた低応答のPID補正係数の2種のフィードバック補正係数を用い、フューエルカットから復帰するときなど、空燃比のオープンループ制御が終了してフィードバック制御が再開された場合、空燃比センサの活性化が確認されてからしばらくはPID制御則に基づいてフィードバック補正係数を決定するようにしたので、供給された燃料が燃焼するまでに時間を要する、ないしはセンサ自体が検出遅れを有することから検出された空燃比と実際の空燃比との間に比較的大きい差があるとき、高応答の適応制御則によるフィードバック補正係数を用いることがなく、結果として図8に示す如く、制御量を不安定にして、制御の安定性を低下させることがない。
【0097】
他方、検出値が安定したときは、高応答の適応制御則によるフィードバック補正係数を用いて目標空燃比と検出空燃比との制御偏差を一気に吸収させるべく動作させ、制御の収束性を向上させることができる。特に、実施の形態においてはフィードバック補正係数が基本値に乗算されて操作量が決定されるように制御の収束性が向上させられているので、一層好適に制御の安定性と収束性とをバランスさせることができる。
【0098】
更に、STRコントローラとPIDコントローラとを平行して動作させ、適応補正係数KSTRとPID補正係数KLAFとをその内部要素を互いに置換させながら平行して演算するようにしたので、適応補正係数KSTRからPID補正係数KLAFへの、ないしはその逆の切り換えを一層滑らかに行うことができる。また、その切り換えも任意のタイミングで行うことができて一層適切に切り換えることができると共に、切り換え時の空燃比のスパイクなどが発生することがなく、燃料噴射ないし空燃比の制御性を向上させることができる。
【0099】
尚、この実施の形態においては、適応制御則を用いた高応答の適応補正係数とPID制御則を用いた低応答のPID補正係数の2種のフィードバック補正係数を用い、そのいずれかに基づいて燃料量を補正するようにしたが、この構成は必須ではなく、フィードバック補正係数として適応制御による演算制御則に基づく適応補正係数KSTRのみを求める構成にも妥当する。
【0100】
また、この実施の形態においては、所定期間以上の時間が経過したときは、内部変数を所定値に戻すようにすると共に、所定値の例として初期値を挙げたが、それに限られるものでない。
【0101】
また上記実施の形態においてPID制御の例を示したが、各ゲインKP, KI, KDを適宜設定することで、PI制御とすることも、I項のみによる制御とすることも自由である。即ち、ここで言うPID制御は、その一部のゲイン項を有すれば成立する。
【0102】
また上記実施の形態では目標値を空燃比としたが、燃料噴射量そのものを目標値としても良い。
【0103】
また上記実施の形態においてフィードバック補正係数KSTRないしKLAFを乗算係数(項)として求めたが、加算項であっても良い。
【0104】
また上記実施の形態において適応制御器としてSTRを例にとって説明したが、MRACS(モデル規範型適応制御)を用いても良い。
【0105】
また上記実施の形態では排気系集合部に設けた単一の空燃比センサの出力を用いているが、それに限られるものではなく、気筒毎に空燃比センサを設けて検出した空燃比から気筒ごとに空燃比フィードバック制御を行っても良い。
【0106】
【発明の効果】
請求項1項にあっては、フィードバック制御からオープンループ制御に移行した後、短時間でフィードバック制御に復帰するような走行状態においてはホールドした内部変数に基づいてフィードバック補正係数を求めることで適応制御の連続性を保ちつつ適応制御を実行することができ、フィードバック補正係数を最適に算出することができ、よって制御量が安定するまで時間を要するなどの不都合が生じることがない。また、前記した適応制御器がフィードバック補正係数を算出するのに重要であると共に、収束までに時間を要する適応パラメータをホールドすることで、演算再開時にその適応パラメータが最適な制御性を示すまでの時間が大幅に短縮され、収束性、制御性を向上させることができる。
【0108】
請求項項にあっては、請求項1項で述べた作用、効果に加えて、フィードバック補正係数をホールドしない場合にはフューエルカット中に1.0となり、演算再開時にフィードバック補正係数の過去値はそれから開始することになるが、ホールド値から演算を再開することで、より制御性を向上させることが可能となる。
【0109】
請求項項にあっては、請求項1項で述べた作用、効果に加えて、ホールド値から演算を再開することで、より制御性を向上させることができる。
【0110】
請求項項にあっては、請求項1項で述べた作用、効果に加えて、適応制御器に固定ゲインアルゴリズム以外のアルゴリズムを用いた場合、演算再開時ゲイン行列を所定値、例えば初期値にしたとき、ゲイン行列自体が最適な値に収束するまでに時間を要し、その間の制御性が悪化するが、内部変数をホールドすることでゲイン行列自体が最適な値に収束するまでの時間を大幅に短縮でき、制御性を向上させることができる。
【0111】
請求項項にあっては、請求項1項で述べた作用、効果に加えて、経過期間が大きいときは、ホールドした値を所定値、例えば初期値に変更することから、復帰の前後の内燃機関の運転状態が大きく変化しているような場合に不適切なフィードバック補正係数を算出する不都合がなく、また所定値、例えば初期値に戻すことで、復帰後のフィードバック補正係数の算出も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る内燃機関の燃料噴射制御装置を全体的に示す概略図である。
【図2】図1の内燃機関に設けられた可変バルブタイミング機構のバルブタイミング特性を示す特性図である。
【図3】図1の装置の制御ユニットの構成を詳細に示すブロック図である。
【図4】図1の装置の動作を示すフロー・チャートである。
【図5】図1の装置の動作を機能的に示すブロック図である。
【図6】図3フロー・チャートのフィードバック補正係数KFB の演算作業を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【図7】図6フロー・チャートのフィードバック領域の判別作業を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【図8】フューエルカットから燃料供給を再開したときの空燃比の検出遅れを示すタイミング・チャートである。
【符号の説明】
10 内燃機関
22 インジェクタ
34 制御ユニット
54 広域空燃比センサ(LAFセンサ)

Claims (5)

  1. a.内燃機関の排気する排気空燃比を含む運転状態を検出する運転状態検出手段と、
    b.前記内燃機関の供給燃料量を決定する供給燃料量決定手段と、
    c.所定周期ごとに複数の制御要素からなる適応パラメータを調整するパラメータ調整機構を有すると共に、前記供給燃料量を操作量として前記検出された排気空燃比が目標空燃比に一致するように、前記パラメータ調整機構で調整された適応パラメータを用いてフィードバック補正係数を算出する適応制御器を備えたフィードバック補正係数算出手段と、
    d.検出された運転状態に応じてフィードバック制御を行う領域か否かを判別する判別手段と、
    および
    e.フィードバック制御を行う領域と判別されるとき、前記フィードバック補正係数に基づいて前記供給燃料量を補正する供給燃料量補正手段と、
    を備えると共に、前記フィードバック補正係数算出手段は、運転状態が前記フィードバック制御を行う領域外に移行したとき、前記適応制御器のパラメータ調整機構が調整する複数の制御要素からなる適応パラメータを含む前記移行の前の最後の前記適応制御器の内部変数をホールドすることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
  2. 前記ホールドする適応制御器の内部変数は、前記フィードバック補正係数を含むことを特徴とする請求項1項記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
  3. 前記ホールドする適応制御器の内部変数は、前記検出される空燃比を含むことを特徴とする請求項1項記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
  4. 前記ホールドする適応制御器の内部変数は、前記適応パラメータの調整速度を決定するゲイン行列を含むことを特徴とする請求項1項記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
  5. 前記フィードバック補正係数算出手段は、運転状態が前記フィードバック制御を行う領域外に移行したときからの経過期間を計測する手段を備え、計測した経過期間が所定期間より大きいとき、ホールドした前記適応制御器の内部変数を前記検出された運転状態に基づいて前記内燃機関の運転領域ごとに予め設定された値に変更することを特徴とする請求項1項ないし4項のいずれかに記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
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