JPH08232723A - 内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents

内燃機関の燃料噴射制御装置

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JPH08232723A
JPH08232723A JP35404695A JP35404695A JPH08232723A JP H08232723 A JPH08232723 A JP H08232723A JP 35404695 A JP35404695 A JP 35404695A JP 35404695 A JP35404695 A JP 35404695A JP H08232723 A JPH08232723 A JP H08232723A
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秀隆 牧
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修介 赤崎
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祐介 長谷川
Isao Komoriya
勲 小森谷
Yoichi Nishimura
要一 西村
Toshiaki Hirota
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 空燃比の挙動を動的に補償することができ、
空燃比を目標値に瞬時に合致させる。 【解決手段】 触媒装置の上下流に広域空燃比センサと
2 センサを備え、広域空燃比センサの検出空燃比が目
標空燃比に一致するように燃料噴射補正量を算出する適
応制御器を備えると共に、O2 センサの検出値に基づ
き、触媒ウインドウで空燃比を微小制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は内燃機関の燃料噴
射制御装置に関し、より具体的には触媒ウインドウで目
標空燃比を補正し、触媒装置のO2 ストレージ効果を向
上させて一層良好な触媒浄化率を達成するようにしたも
のに関する。
【0002】
【従来の技術】内燃機関の燃料噴射制御装置において
は、排気系に設けた触媒装置の浄化率が理論空燃比付近
で最大となることから、排気系に酸素濃度センサを設け
て空燃比が理論空燃比になるように燃料噴射量をフィー
ドバック制御することが知られている。
【0003】更に、近時、特開平3−185244号公
報記載の技術のように、触媒の上流に第1の酸素濃度セ
ンサ(広域空燃比センサ)を配置すると共に、下流に第
2の酸素濃度センサ(O2 センサ)を配置し、第2のセ
ンサ出力に応じて触媒ウインドウで最適な浄化率となる
ように目標空燃比を設定し、該目標空燃比と前記第1の
センサ出力とに応じて燃料噴射量を制御する技術も提案
されている。この従来技術においては、制御対象をモデ
ル化し、最適レギュレータを設計して燃料噴射量を制御
している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記し
た従来技術においては、目標空燃比の変化をフィードバ
ック制御によって目標値に追従する構成としているが、
内燃機関の経時変化や固体バラツキに起因する動特性の
変化に追従できないため、最適な制御性能が得られない
不都合があった。これは、上記した従来技術にあって
は、空燃比の挙動が適応的に補償されていないことに起
因する。
【0005】従って、この発明の目的は従来技術の上記
した欠点を解消し、空燃比の挙動を適応的に補償するこ
とによって、第2の空燃比検出手段の出力に基づいて決
定される目標値に瞬時に空燃比を合致させるように燃料
噴射を制御する内燃機関の燃料噴射制御装置を提供する
ことにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、請求項1項にあっては、内燃機関の燃料噴射量を
制御する燃料噴射量制御手段と、前記内燃機関の排気系
に触媒装置の上流に配置され、前記内燃機関が排出する
排気ガスの空燃比を検出する第1の空燃比検出手段と、
前記第1の空燃比検出手段の検出した空燃比が目標空燃
比に一致するように燃料噴射補正量を算出する燃料噴射
補正量算出手段と、および前記触媒装置の下流に配置さ
れ、前記触媒を通過する排気ガスの空燃比を検出する第
2の空燃比検出手段と、を有する内燃機関の燃料噴射制
御装置において、前記燃料噴射補正量算出手段は、前記
第1の空燃比検出手段の検出した空燃比が目標空燃比に
一致するように燃料噴射補正量を算出する適応制御器
と、前記適応制御器に入力する適応パラメータを調整す
る適応パラメータ調整機構と、および前記第2の空燃比
検出手段の検出する空燃比に応じて前記目標空燃比を補
正する補正手段と、を備える如く構成した。
【0007】請求項2項にあっては、前記触媒装置は多
段の触媒床を有すると共に、前記第2の空燃比検出手段
は前記多段に構成された触媒床の間に配置される如く構
成した。
【0008】請求項3項にあっては、前記第1の空燃比
検出手段にフィルタ手段を接続する如く構成した。
【0009】請求項4項にあっては、前記第2の空燃比
検出手段にフィルタ手段を接続する如く構成した。
【0010】請求項5項にあっては、前記フィルタ手段
がローパスフィルタである如く構成した。
【0011】
【作用】請求項1項の内燃機関の燃料噴射制御装置にお
いては、燃料噴射補正量算出手段は、第1の空燃比検出
手段の検出した空燃比が目標空燃比に一致するように燃
料噴射補正量を算出する適応制御器と、前記適応制御器
に入力する適応パラメータを調整する適応パラメータ調
整機構と、および第2の空燃比検出手段の検出する空燃
比に応じて前記目標空燃比を補正する補正手段とを備え
る如く構成したので、内燃機関の経時変化や固体バラツ
キに起因する空燃比の動的な挙動を適応的に補償するこ
とができ、第2の空燃比検出手段の検出する空燃比に基
づいて決定される目標値に、瞬時に空燃比を合致させる
ことができる。
【0012】ここで「適応制御器」は、制御対象物(内
燃機関)の動的な挙動を考慮した制御器であり、実施の
形態にあっては、制御対象物の動的な挙動を補償するた
めに、漸化式形式により記述された制御器からなる。よ
り具体的には、STR型であることから、前記制御器の
入力に漸化式形式の適応パラメータ調整機構を備えた適
応制御器と定義できる。
【0013】請求項2項にあっては、前記触媒装置は多
段の触媒床を有すると共に、前記第2の空燃比検出手段
は前記多段に構成された触媒床の間に配置される如く構
成したので、触媒装置の下流に配置する場合に比して、
出力が反転する時間が短くなって、検出精度、ひいては
制御精度が向上する。また、このように構成することに
より、前記触媒装置の容量を大きくしても、検出精度、
ひいては制御精度が低下することがない。
【0014】請求項3項にあっては、前記第1の空燃比
検出手段にフィルタ手段を接続する如く構成したので、
フィルタの周波数特性を適宜選択することにより、ノイ
ズを除去することができ、検出精度が上がって制御性が
向上する。
【0015】請求項4項にあっては、前記第2の空燃比
検出手段にフィルタ手段を接続する如く構成したので、
フィルタの周波数特性を適宜選択することにより、応答
時間を最適にすることができ、検出精度が上がって制御
性が向上する。
【0016】請求項5項にあっては、前記フィルタ手段
がローパスフィルタである如く構成如く構成したので、
フィルタの周波数特性を最適になってノイズを確実に除
去することができる、ないしは応答時間を最適にするこ
とができ、検出精度が上がって制御性が向上する。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、添付図面に即してこの出願
に係る内燃機関の燃料噴射制御装置の実施の形態を説明
する。
【0018】図1はその装置を概略的に示す全体図であ
る。
【0019】図において、符号10はOHC直列4気筒
の内燃機関を示しており、吸気管12の先端に配置され
たエアクリーナ14から導入された吸気は、スロットル
弁16でその流量を調節されつつサージタンク18と吸
気マニホルド20を経て、2個の吸気弁(図示せず)を
介して第1から第4気筒へと流入される。各気筒の吸気
弁(図示せず)の付近にはインジェクタ22が設けられ
て燃料を噴射する。噴射されて吸気と一体となった混合
気は、各気筒内で図示しない点火プラグで点火されて燃
焼してピストン(図示せず)を駆動する。
【0020】燃焼後の排気ガスは、2個の排気弁(図示
せず)を介して排気マニホルド24に排出され、排気管
26を経て第1の触媒装置(三元触媒)28と第2の触
媒装置(三元触媒)30とで浄化されて機関外に排出さ
れる。上記で、スロットル弁16はアクセルペダル(図
示せず)とは機械的に切り離され、パルスモータMを介
してアクセルペダルの踏み込み量および運転状態に応じ
た開度に制御される。また、吸気管12には、スロット
ル弁16の配置位置付近にそれをバイパスするバイパス
路32が設けられる。
【0021】ここで、内燃機関10には、排気ガスを吸
気側に還流させる排気還流機構100が設けられる。
【0022】図2を参照して説明すると、排気還流機構
100の排気還流路121は、一端121aが排気管2
6の第1の触媒装置28(図2に図示省略)の上流側
に、他端121bが吸気管12のスロットル弁16(図
2で図示省略)の下流側に連通する。この排気還流路1
21の途中には、排気還流量を調節する排気還流弁(還
流ガス制御弁)122および容積室121cが、設けら
れる。この排気還流弁122はソレノイド122aを有
する電磁弁であり、ソレノイド122aは後述する制御
ユニット(ECU)34に接続され、制御ユニット34
からの出力によってその弁開度をリニアに変化させる。
排気還流弁122には、その弁開度を検出するリフトセ
ンサ123が設けられ、その出力は制御ユニット34に
送出される。
【0023】更に、内燃機関10の吸気系と燃料タンク
36との間も接続され、キャニスタ・パージ機構200
が設けられる。
【0024】キャニスタ・パージ機構200は図3に示
す如く、密閉された燃料タンク36の上部と吸気管12
のスロットル弁16の下流側との間に構成された、蒸気
供給通路221、吸着剤231を内蔵するキャニスタ2
23、及びパージ通路224からなる。蒸気供給通路2
21の途中には2ウェイバルブ222が装着され、パー
ジ通路224の途中にはパージ制御弁225、パージ通
路224を流れる燃料蒸気を含む混合気の流量を検出す
る流量計226、および該混合気中のHC濃度を検出す
るHC濃度センサ227が設けられる。パージ制御弁
(電磁弁)225は後述の如く制御ユニット34に接続
され、それからの信号に応じて制御されて開弁量をリニ
アに変化させる。
【0025】このキャニスタ・パージ機構によれば、燃
料タンク36内で発生した燃料蒸気(燃料ベーパ)は、
所定の設定量に達すると2ウェイバルブ222の正圧バ
ルブを押し開き、キャニスタ223に流入し、吸着剤2
31によって吸着され貯蔵される。制御ユニット34か
らのオンオフ制御信号のデューティ比に応じた開弁量だ
けパージ制御弁225が開弁されると、キャニスタ22
3に一時貯えられていた蒸発燃料は、吸入管12内の負
圧により、外気取込口232から吸入された外気と共に
パージ制御弁225を経て吸気管12へ吸引され、各気
筒へ送られる。また外気などで燃料タンク36が冷却さ
れて燃料タンク内の負圧が増すと、2ウェイバルブ22
2の負圧バルブが開弁し、キャニスタ223に一時貯え
られていた蒸発燃料は燃料タンク36へ戻される。
【0026】更に、内燃機関10は、いわゆる可変バル
ブタイミング機構300(図1にV/T と示す)を備え
る。可変バルブタイミング機構300は例えば、特開平
2−275043号公報に記載されており、機関回転数
Neおよび吸気圧力Pbなどの運転状態に応じて機関の
バルブタイミングV/T を図4に示す2種のタイミング特
性LoV/T, HiV/Tの間で切り換える。但し、それ自体は公
知な機構なので、説明は省略する。尚、このバルブタイ
ミング特性の切り換えには、2個の吸気弁の一方を休止
する動作を含む。
【0027】図1に示す如く、内燃機関10のディスト
リビュータ(図示せず)内にはピストン(図示せず)の
クランク角度位置を検出するクランク角センサ40が設
けられると共に、スロットル弁16の開度を検出するス
ロットル開度センサ42、スロットル弁16下流の吸気
圧力Pbを絶対圧力で検出する絶対圧センサ44も設け
られる。また、内燃機関10の適宜位置には大気圧Pa
を検出する大気圧センサ46が設けられ、スロットル弁
16の上流側には吸入空気の温度を検出する吸気温セン
サ48が設けられると共に、機関の適宜位置には機関冷
却水温を検出する水温センサ50が設けられる。また、
油圧を介して可変バルブタイミング機構300の選択バ
ルブタイミング特性を検出するバルブタイミング(V/T
)センサ52(図1で図示省略)も設けられる。
【0028】更に、排気系において、排気マニホルド2
4の下流側で第1の触媒装置28の上流側の排気系集合
部には、第1の空燃比検出手段として広域空燃比センサ
54が設けられると共に、その下流側には第2の空燃比
検出手段としてO2 センサ56が設けられる。ここで、
第1の触媒装置28の容量は1リットル程度とすると共
に、第2の触媒装置30の容量は1.7リットル程度と
する。尚、これら触媒装置28,30の容量は、当該触
媒装置の浄化性能、昇温特性を考慮し、それぞれ最適な
容量に設定される。
【0029】ここで、第1の触媒装置28は図5に示す
如く、多段の、図示例の場合には2段の触媒床(CAT
床)(担体)から構成し、O2 センサ56は第1と第2
のCAT床の間に配置する構成としても良い。その場
合、第1のCAT床の容量は1リットル程度、第2のC
AT床の容量も1リットル程度とする。その結果、図5
に示した第1の触媒装置28全体としては2リットル程
度の容量を有するが、O2 センサを上記の位置に設ける
ことで、実質的には容量1リットル程度の触媒装置の下
流にO2 センサを設けることと同じになり、その出力が
反転する時間が、容量2リットルの触媒装置の下流に設
けた場合に比して短くなる。従って、そのO2 センサ5
6の出力に基づいて後述の如く触媒ウインドウでの空燃
比の微小制御(この明細書ではこれを「MIDO2
御」と呼ぶ)を行う際の制御精度が向上する。
【0030】また、広域空燃比センサ54の次段にはフ
ィルタ58が接続される。また、O2 センサ56の次段
にも第2のフィルタ60が接続される。これらセンサ出
力およびフィルタ出力は、制御ユニット34に送られ
る。
【0031】図6は制御ユニット34の詳細を示すブロ
ック図である。広域空燃比センサ54の出力は第1の検
出回路62に入力され、そこで適宜な線型化処理が行わ
れてリーンからリッチにわたる広い範囲において排気ガ
ス中の酸素濃度に比例したリニアな特性からなる検出信
号を出力する(以下、この広域空燃比センサを「LAF
センサ」と呼ぶ)。また、O2 センサ56の出力は第2
の検出回路64に入力され、図7に示す如く、内燃機関
10に供給された混合気の空燃比が理論空燃比(λ=
1)に対してリッチかリーンかを示す検出信号を出力す
る。
【0032】第1の検出回路62の出力は、マルチプレ
クサ66およびA/D変換回路68を介してCPU内に
入力される。CPUはCPUコア70、ROM72、R
AM74を備え、第1の検出回路62の出力はより詳し
くは、所定のクランク角度(例えば15度)ごとにA/
D変換され、RAM74内のバッファの1つに順次格納
される。12個のバッファには後で図47に示すよう
に、0から11までのNo.が付される。また、第2の
検出回路64の出力およびスロットル開度センサ42な
どのアナログセンサ出力も同様にマルチプレクサ66お
よびA/D変換回路68を介してCPU内に取り込ま
れ、RAM74に格納される。
【0033】またクランク角センサ40の出力は波形整
形回路76で波形整形された後、カウンタ78で出力値
がカウントされ、カウント値はCPU内に入力される。
CPUにおいてCPUコア70は、ROM72に格納さ
れた命令に従って後述の如く制御値を演算し、駆動回路
82を介して各気筒のインジェクタ22を駆動する。更
に、CPUコア70は、駆動回路84,86,88を介
して電磁弁90(2次空気量を調節するバイパス路32
の開閉)、および前記した排気還流制御用電磁弁122
ならびにキャニスタ・パージ制御用電磁弁225を駆動
する。尚、図6でリフトセンサ123、流量計226お
よびHC濃度センサ227の図示は省略した。
【0034】図8は、実施の形態に係る燃料噴射制御装
置の動作を説明する機能ブロック図である。
【0035】図示の如く、実施の形態に係る燃料噴射制
御装置においては、単一のLAFセンサ54の出力から
各気筒の空燃比を推定するオブザーバ(図にOBSVと示
す)を備えると共に、LAFセンサ54の出力をフィル
タ92を介して入力する適応制御器(Self Tuning Regu
lator 型の適応制御器。図にSTR と示す)を備える。
【0036】また、O2 センサ56の出力VO2M はフィ
ルタ60を介して目標空燃比補正ブロック(図にKCM
D補正と示す)に入力され、O2 センサの目標値(Vre
fM)との差に応じて目標空燃比補正係数KCMDM が求めら
れる。他方、後述の如く、スロットル弁の有効開口面積
の変化に基づいて基本燃料噴射量TiM-Fが算出され、目
標空燃比補正係数KCMDM は、後述するEGRないしキャ
ニスタ・パージ補正係数などを含む各種補正係数KTOTAL
と共に、基本燃料噴射量TiM-Fに乗算(図中で加え合わ
せ点に代えて乗算記号を用いたのはそれを示す)されて
それを補正し、要求燃料噴射量Tcyl が求められる。
【0037】また、補正された目標空燃比KCMDは適応制
御器STRおよびPID制御器(図にPIDと示す)に
入力され、後述の如くLAFセンサ出力との差に応じて
フィードバック補正係数KSTRないしはKLAFが求められ、
切換スイッチ(図に切換SWと示す)を介して運転状態
に応じていずれかが要求燃料噴射量Tcyl に乗算され、
出力燃料噴射量Tout が決定される。出力燃料噴射量T
out には後述の如く付着補正がなされ、内燃機関10に
供給される。
【0038】即ち、上記でLAFセンサ54の出力に基
づいて空燃比が目標空燃比に制御されると共に、目標値
の近傍、いわゆる触媒ウィンドウ付近では前記したMI
DO2 制御がなされる訳である。これについて更に説明
すると、触媒装置の働きとしてややリーンな排気ガス通
過時にO2 をストレージするO2 ストレージ効果がある
が、触媒装置でO2 が飽和すれば浄化率が低下するた
め、その際にはややリッチな排気ガスを供給してO2
解放させる必要がある。O2 の解放が終了したところで
再びややリーンな排気ガスを送り、この動作を繰り返す
ことで、触媒装置の浄化率を最大にすることができる。
MIDO2 制御はこれを意図する。
【0039】MIDO2 制御において浄化率を更に向上
させるためには、触媒装置後のO2センサ56の出力反
転からできるだけ短時間に目標通りの空燃比に触媒装置
前の空燃比を合わせること、即ち、検出空燃比KACTが目
標空燃比KCMDとなることが必要であるが、フィードフォ
ワード系で演算された燃料噴射量に目標空燃比補正係数
KCMDM を乗算するだけでは、機関の応答遅れがあるた
め、目標空燃比KCMDがなまされた検出空燃比KACTとなっ
てしまう。
【0040】それを改善するために、目標空燃比KCMDか
ら検出空燃比KACTの応答を動的に補償、具体的には目標
空燃比KCMDを動的に補償した補正係数KSTR(適応制御器
STR出力)を乗算するようにした。こうすることによ
り、検出空燃比KACTが目標空燃比KCMDに速やかに収束
し、触媒浄化率を向上させることができる。尚、この明
細書で空燃比は目標値KCMDも実際値(検出値)KACTも実
際は当量比、即ち、Mst/M=1/λで示している(M
st:理論空燃比、M=A/F (A:空気消費量、F:燃料
消費量)、λ:空気過剰率)。
【0041】ここで、フィルタについて説明を補足す
る。
【0042】図示の装置の場合、単一のセンサ出力を用
いて複数の制御方式を並列に備える多重フィードバック
構成となっている。より具体的には、多重フィードバッ
クおよび複数の制御手法を切り換える構成となっている
ことから、制御方式に応じてフィルタの遮断周波数特性
を設定するようにした。
【0043】具体的には、LAFセンサ54の出力は、
100%応答に対して約400msの時間を要する。し
かし、そのままでは高周波成分のノイズが多く、制御性
が悪化する。そこで、500Hzのローパスフィルタを
通すと、有害な高周波成分ノイズが除去できると共に、
応答特性の悪化もほとんど見られないことが判明した。
そこで、フィルタ周波数を4Hzまで下げたところ、更
に高周波ノイズが大幅に低減した。また、100%応答
に要する時間も安定した。しかし、その場合の応答特性
は、フィルタを通さない場合ないしは500Hzのロー
パスフィルタを通す場合に比べて、多少遅くなり、10
0%応答に対して約400ms以上の時間を要した。
【0044】上記から、実施の形態の場合、フィルタ5
8は500Hzの遮断周波数特性を備えたローパスフィ
ルタとすると共に、オブザーバへの入力には500Hz
のローパスフィルタ58の出力をそのまま用いる。これ
はオブザーバ自体は検出空燃比KACTを目標空燃比KCMDへ
収束させるような制御は行っておらず、オブザーバで推
定された各気筒の空燃比からPID制御器によって各気
筒間の空燃比のばらつきを吸収するような構成となって
いるため、センサの応答時間があまり安定していない場
合でも、推定結果にそれほど大きな影響を及ぼすことが
なく、むしろ応答時間が早い方が制御性が向上するから
である。
【0045】他方、適応制御器STR入力前に接続する
フィルタ92(図8のみ示す)は4Hzの遮断周波数特
性を備えたローパスフィルタとする。即ち、STRのよ
うにデッドビート制御を行うものは、検出された空燃比
に対して忠実に遅れを補償するように作動することか
ら、検出空燃比のノイズや応答時間が変化すると、制御
性能自体に影響する。そのために、フィルタ92は4H
zの遮断周波数特性を備えたローパスフィルタとする。
尚、PID制御器の入力前に接続されるフィルタ93は
応答時間を重視し、遮断周波数特性においてフィルタ9
2と同一かそれ以上、実施の形態の場合には200Hz
とした。また、O2 センサ56に接続されるフィルタ6
0の場合、O2 センサの特性上、その応答時間が本来的
にLAFセンサのそれに比べて非常に高いため、160
0Hz程度の遮断周波数特性を備えたローパスフィルタ
を用いる。
【0046】以下、図8ブロック図を参照して出願に係
る装置の動作を説明する。
【0047】先ず、基本燃料噴射量TiM-Fを算出する。
【0048】これは前記した如く、スロットル弁の有効
開口面積の変化に基づき、過渡運転状態を含む全ての運
転状態にわたって最適に基本(要求)燃料噴射量を決定
できるようにした。
【0049】図9は基本燃料噴射量TiM-Fの算出作業を
示すフロー・チャートであり、図10は図9フロー・チ
ャートの演算を説明するブロック図であるが、同図を参
照して説明する前に、この手法が前提とする流体力学モ
デルの考えを用いてモデルを近似する手法によってスロ
ットル通過空気量およびシリンダ流入空気量を推定する
手法について述べる。尚、その詳細は本出願人が先に提
案した特願平6−197,238号に記載されているの
で、以下簡単に説明する。
【0050】即ち、図11に示すように、スロットル開
度θTHから予め設定した特性に従ってスロットルの投影
面積(吸気管長手方向へのスロットルの投影面積)Sを
求める。他方、図12に示すようにスロットル開度θTH
と吸気圧力Pbについて予め設定した別の特性に従って
係数C(流量係数αと気体の膨張補正係数εの積)を求
め、両者を乗じてスロットルの有効開口面積Aを求め
る。尚、いわゆるスロットル全開領域ではスロットルが
絞りではなくなるため、機関回転数ごとにスロットル全
開領域を臨界値として求めておき、検出したスロットル
開度がそれを超えたときは、臨界値をスロットル開度と
する。また、これについては気圧補正を行うが、その説
明は省略する。
【0051】次いで、気体の状態方程式に基づく数1に
示す式からチャンバ内空気量Gb を求め、チャンバ圧力
変化ΔPから数2の式に従って今回チャンバに充填され
た空気量ΔGb を求める。今回チャンバに充填された空
気量は当然ながら気筒燃焼室に吸入されないものとすれ
ば、単位時間ΔT当たりの気筒吸入空気量Gc は、数3
に示す式のように表すことができる。尚、ここで「チャ
ンバ」は、いわゆるサージタンク相当部位のみならず、
スロットル下流から吸気ポートに至る間の全ての部位を
意味する。また「チャンバ」は、実際にチャンバとして
働く実効容積を意味する。尚、この明細書でkはサンプ
リング時刻を示す。
【0052】
【数1】
【0053】
【数2】
【0054】
【数3】
【0055】他方、前記したROM72には図13にそ
の特性を示すように、定常運転状態時の燃料噴射量Tim
apを、いわゆるスピードデンシティ方式に基づいて機関
回転数Ne と吸気圧力Pb とから検索できるように予め
設定してマップ化して格納しておく。また、燃料噴射量
Timapは機関回転数Ne と吸気圧力Pb に応じて決定さ
れる目標空燃比KCMDに応じて設定されることから、図1
4にその特性を示すように目標空燃比KCMD、より具体的
にはその基本値KBS も、機関回転数Neと吸気圧力Pb
とから検索自在に予めマップ化して格納しておく。但
し、目標空燃比による燃料噴射量Timapの修正はMID
2 制御と関係するので、ここでは修正は行わない。M
IDO2 制御を含めた目標空燃比による修正については
後述する。尚、燃料噴射量Timapは、直接的にはインジ
ェクタ22の開弁時間を単位として設定する。
【0056】ここで、そのマップを検索して得られる燃
料噴射量Timapと前記したスロットル通過空気量Gthと
の関係に着目すると、定常運転状態時のある条件下(機
関回転数Ne1と吸気圧力Pb1によって規定する)におい
て、マップ検索によって決定した燃料噴射量Timap1 は
数4に示す通りとなる。
【0057】
【数4】
【0058】ここで、スロットルの有効開口面積の変化
に応じて定常時のスロットル通過空気量から過渡運転状
態時のスロットル通過空気量を表現することができる。
具体的には、定常時のスロットル弁の有効開口面積と過
渡時のスロットル弁の有効開口面積の比を用いることに
よって表現することができる。このことは、前出の特願
平6−197,238号に詳しい。
【0059】即ち、現在のスロットル弁の有効開口面積
をAとし、定常運転状態のスロットル弁の有効開口面積
をA1とすると、定常運転状態のスロットル弁の有効開
口面積A1は、現在のスロットル弁の有効開口面積Aの
1次遅れとして把握できるのではないかと推定され、シ
ミュレーションを通じて検証したところ、図15に示す
ように、それを確認することができた。即ち、Aの1次
遅れを「ADELAY 」と呼ぶと、A1とADELAY は、ほぼ
同様の値となっていることが分かる。従って、流体力学
モデルの考え方を用いてモデルを近似すると、A/「そ
の1次遅れ」を用いれば良い。図16に示す如く、過渡
運転状態ではスロットルが開かれた瞬間、スロットル前
後の差圧が大きいため、スロットル通過空気量が一気に
流れ、次第に定常状態に落ちつくが、その過渡運転状態
のスロットル通過空気量Gthを、この比A/ADELAY で
表現できると考えた。この比は、図17の下部に示すよ
うに、定常運転状態時では一致して1となる。以下、こ
の比を「RATIO-A 」と呼ぶ。
【0060】更に、スロットルの有効開口面積とスロッ
トル開度θTHとの関係に着目すると、有効開口面積はス
ロットル開度に大きく依存することから、図17に示す
如く、有効開口面積はスロットル開度の変化にほぼ追随
して変化する筈である。そうであれば、前記したスロッ
トル開度の1次遅れ値は、現象的には有効開口面積の1
次遅れにほぼ等価的に対応する筈である。そこで、図1
0に示すように、スロットル開度の1次遅れ値から有効
開口面積(1次遅れ値)ADELAY を算出するようにした
(尚、図10において(1−B)/(z−B)は離散系
の伝達関数で1次遅れを意味する)。
【0061】即ち、スロットル開度θTHから予め設定し
た特性に従ってスロットル投影面積Sを求めると共に、
スロットル開度1次遅れ値θTH-Dと吸気圧力Pbとから
図12に示した如き特性に従って係数Cを求め、次いで
両者の積を求めて有効開口面積(1次遅れ値)ADELAY
を算出するようにした。更に、チャンバ充填空気量ΔG
b の吸入空気量への反映遅れを解消するために、値ΔG
b の1次遅れも用いることとした。
【0062】更に、検討したところ、スロットル通過空
気量Gthとチャンバ充填空気量ΔGb とを個々に求める
必要はなく、チャンバ充填空気量ΔGb をスロットル通
過空気量Gthから算出することで、気筒吸入空気量Gc
が、スロットル通過空気量Gthのみから算出できた。こ
れによって、構成が簡易になると共に、演算量も削減で
きた。即ち、数1において単位時間ΔT当たりの気筒吸
入空気量Gc は、数5のように表すことができるが、こ
れは数6および数7と等価である。数6および数7を伝
達関数形式で表すと数8が導かれる。即ち、数8に示す
如く、吸入空気量Gc は、スロットル通過空気量Gthの
1次遅れ値から求めることができる。これをブロック図
で示すと、図18のようになる。尚、図18において伝
達関数は図10のそれとは異なるため、それを示す意味
で(1−B’)/(z−B’)とダッシュを付した。
【0063】
【数5】
【0064】
【数6】
【0065】
【数7】
【0066】
【数8】
【0067】従って、基本燃料噴射量TiM-Fは、 TiM-F=マップ検索燃料噴射量TiM×実スロットル有効
開口面積/吸気圧力Pbとスロットル開度の一次遅れ値
θTH-Dにより求まるスロットル有効開口面積 =マップ検索燃料噴射量TiM×RATIO-A で求めるようにした。
【0068】以上を前提として、図9フロー・チャート
を参照してこの制御装置の動作を説明する。
【0069】先ずS10において検出した機関回転数N
e、吸気圧力Pb 、スロットル開度θTH、気圧Pa、機
関冷却水温Twなどを読み込む。尚、スロットル開度θ
THはアイドル運転状態のスロットル全閉開度を学習し、
その値を基準として検出された値を用いる。
【0070】続いて、S12に進んで機関がクランキン
グ(始動)中か否か判断し、否定されるときはS14に
進んでフューエルカットか否か判断し、同様に否定され
るときはS16に進み、機関回転数Neと吸気圧力Pb
とからROM72に格納した図13にその特性を示すマ
ップを検索して燃料噴射量TiM(定常運転状態時の燃料
噴射量Timap)を求める。尚、求めた燃料噴射量TiMに
は次いで気圧補正などを必要に応じて適宜加えるが、そ
の補正自体はこの発明の要旨とするところではないの
で、詳細な説明を省略する。次いでS18に進んで検出
したスロットル開度の1次遅れ値θTH-Dを演算する。
【0071】続いてS22に進んでスロットル開度θTH
と吸気圧力Pbより現在のスロットルの有効開口面積A
を算出する。次いでS24に進んでスロットル開度1次
遅れ値θTH-Dと吸気圧力Pbよりスロットルの有効開口
面積の1次遅れ値ADELAY を算出する。
【0072】次いで、S26に進んでRATIO-A を RATIO-A =(A+ABYPASS)/(A+ABYPASS)DELAY なる式から算出する。尚、値ABYPASSは、バイパス路3
2などスロットル弁16を通過しないで燃焼室に吸入さ
れる空気量(図10に「リフト量」として示す)を意味
し、正確に燃料噴射量を決定するためにはこの空気量を
も勘案する必要があるため、それに対応する値を所定の
特性に従ってスロットル開度ABYPASSに換算して求めて
おいて有効開口面積Aに加算すると共に、その和(A+
ABYPASS)とその1次近似値(「(A+ABYPASS)DELA
Y 」と呼ぶ) の比を求め、それをRATIO-A とする。
【0073】このように、分子、分母の双方に加算する
結果、スロットル弁を通過しないで燃焼室に吸入される
空気量の計測に誤りがあっても、決定される燃料噴射量
への影響度が小さくなる。続いて、S28に進んで燃料
噴射量TiMにRATIO-A を乗じてスロットル通過空気量に
相当する基本燃料噴射量TiM-Fを算出する。尚、S12
でクランキング中と判断されたときはS30に進んで水
温Tw から所定のテーブル(図示省略)を検索してクラ
ンキング時の燃料噴射量Ticr を算出し、S32で始動
モードの式(説明省略)に基づいて燃料噴射量TiM-Fを
決定すると共に、S14でフューエル・カットと判断さ
れたときはS34に進んで燃料噴射量TiM-Fを零にす
る。
【0074】上記した基本燃料噴射量TiM-Fの算出手法
は、簡易なアルゴリズムによって定常運転状態から過渡
運転状態までを表現することができ、定常運転状態時の
燃料噴射量をマップ検索によってある程度保証すること
ができると同時に、複雑な演算を必要とせずに燃料噴射
量を最適に決定することができる。しかも、定常運転状
態と過渡運転状態とでモデル式の持ち替えが要らず、1
つの式で全ての運転状態を表現することができるため、
一般に切り換え点の近傍で見られるような制御の不連続
を生じることがない。また空気の挙動を良く表現できた
ため、制御性や制御精度を向上させることができる。
【0075】図8ブロック図に戻ると、次いでEGR補
正係数KEGR、キャニスタパージ補正係数KPUGを含む各種
補正係数KTOTALを算出する。
【0076】先ず、EGR補正係数について説明する。
【0077】排気還流量は内燃機関の燃料噴射量を制御
するときに外乱となることから、排気還流率ないし排気
還流量を精度良く推定する必要がある。尚、ここで「排
気還流率」は、排気ガス/吸入空気の体積比ないしは重
量比を意味する。
【0078】図19は、その排気還流率の推定動作を説
明するフロー・チャートである。
【0079】同図の説明に入る前に、図20以下を参照
して実施の形態に係る排気還流率の推定動作のアルゴリ
ズムを説明する。
【0080】排気還流弁を通過するガス量は、弁単体と
してみると、弁の開口面積と弁前後の圧力比、即ち、流
量特性(設計諸元)によって決定される。即ち、弁の開
口面積、即ち、リフト量と、弁の上下流圧力の比から求
められると考えられる。実機においても図20に示すよ
うに、還流ガス量は、弁のリフト量と、大気圧Paと吸
気管12の吸気圧力Pbとの比を求めることにより、あ
る程度まで推定可能と考えられる(実際には排気圧力や
排気温度により流量特性が若干変化するが、その特性の
変化は後述の如くガス量割合を用いることでかなりの程
度まで吸収できると考えられる)。
【0081】そこで、先ずこの点に着目し、流量特性に
基づいて還流率を求めるようにした。尚、開口面積をリ
フト量から求めているが、これはリフト量が開口面積に
対応する構造の弁を使用したためである。従って、リニ
ヤソレノイドなど別の構造のものを使用するときは、別
のパラメータから開口面積を求めることになる。
【0082】ところで、還流率には定常時の還流率と過
渡時の還流率とがあるが、そのうち定常時の還流率とは
リフト指令値が実リフトと等しい状態の値であり、過渡
時の還流率とは図21に示すように、リフト指令値が実
リフトと等しくない状態の値である。そして、この発明
に係るアルゴリズムでは、過渡時の差異は、図20に示
すように、還流率がそれに対応するガス量割合分だけ、
定常時の還流率からずれることによって生じた、と考え
た。
【0083】具体的には、定常時では リフト指令値=実リフト、ガス量割合=1 即ち、 還流率=定常時の還流率 過渡時では リフト指令値≠実リフト、ガス量割合≠1 即ち、 還流率=定常時の還流率(マップ検索値)×ガス量割合 となる。
【0084】このように、両ガス量の割合を定常時の還
流率に乗じることで、燃焼室に流入する正味還流率が求
められると考えた。式で示すと、以下の如くになる。 正味還流率=(定常時の還流率)×(実リフトと弁前後
の圧力比より求まるガス量QACT)/(リフト指令値と弁
前後の圧力比より求まるガス量QCMD)
【0085】ここで、定常時の還流率は、還流率補正係
数を求め、それを1から減算することで求める。即ち、
定常時の還流率補正係数をKEGRMAP と称すると、 定常時の還流率=(1−KEGRMAP ) で求める。尚、この明細書では定常時の還流率ないし定
常時の還流率補正係数を基本排気還流率ないし基本排気
還流率補正係数とも称する。また、定常時の還流率補正
係数KEGRMAP は、機関回転数Neと吸気圧力Pbとから
予め実験で求めて図22に示すようにマップとして設定
しておき、それを検索して求めるようにした。
【0086】ところで、排気還流制御においては、機関
回転数と機関負荷などから排気還流弁のリフト指令値を
決定して行うが、図21に示すように、指令値に対して
実リフト(リフト検出値)は遅れを持つ。更に、その開
弁動作に応じて還流ガスが燃焼室に流入するにも遅れが
ある。
【0087】そこで、本出願人は先に特願平6−10
0,557号において、前記した式、正味還流率=(定
常時の還流率)×(実リフトと弁前後の圧力比より求ま
るガス量QACT)/(リフト指令値と弁前後の圧力比より
求まるガス量QCMD)、で正味還流率を求める手法を示し
たが、そこで還流ガスの流入遅れは一次遅れの考え方を
用いていた。ここでは、無駄時間の考え方を用いると、
排気還流弁を通過した還流ガスは、ある無駄時間が経過
した後に、一度に燃焼室に流入するとみなすことができ
る。そこで、所定の周期ごとに前記した正味還流率を算
出して記憶手段に格納しておくと共に、無駄時間に相当
する過去の周期の算出値をもって真に燃焼室に流入した
排気ガスの還流率とみなすようにした。
【0088】以下、実施の形態に係る装置の動作を図1
9フロー・チャートに従って説明する。尚、このプログ
ラムは各TDC位置で起動される。
【0089】先ずS200で機関回転数Ne、吸気圧力
Pb、大気圧Pa、実リフトLACT(リフトセンサ1
23の出力)などを読み込み、S202に進んで機関回
転数Neと吸気圧力Pbとからリフト指令値LCMDを検索
する。ここでリフト指令値LCMDは、図23に示す如く、
予め特性を定めて設定しておいたマップを検索して求め
る。
【0090】続いてS204に進んで機関回転数Neと
吸気圧力Pbとから前記した図22に示すマップを検索
して基本排気還流率補正係数KEGRMAP を求める。次いで
S206に進んで検出した実リフトLACTが零ではないこ
とを確認し、即ち、排気還流弁122が開弁しているこ
とを確認してS208に進み、検索したリフト指令値LC
MDを所定の下限値LCMDLL(微小値)と比較する。
【0091】S208で検索値が下限値以下ではないと
判断されるときはS210に進み、そこで吸気圧力Pb
と大気圧Paとの比Pb/Paを求め、それと検索した
リフト指令値LCMDとから、図20に示す特性をマップ化
したもの(図示せず)を検索してガス量QCMDを求める。
これは先の数式に言う「リフト指令値と弁前後の圧力比
より求まるガス量」である。
【0092】続いてS212に進み、検出した実リフト
LACTと同様の比Pb/Paとから同様に図20に示す特
性をマップ化したもの(図示せず)を検索してガス量QA
CTを求める。これは先の数式で言う「実リフトと弁前後
の圧力比より求まるガス量」に相当する。
【0093】続いてS214に進んで検索した基本排気
還流率補正係数KEGRMAP を1から減算して得た値を定常
還流率(基本排気還流率ないし定常時の還流率)とす
る。ここで、定常時の還流率とは前記の如く、排気還流
動作が安定している際の還流率、即ち、排気還流動作が
開始される、ないしは停止される際などの過渡的な状態
にないときの還流率を意味する。
【0094】続いてS216に進み、図示の如く、定常
還流率に値QACT,QCMD の比QACT/QCMD を乗じて正味還流
率を求める。続いて、S218に進んで排気還流率に対
する燃料噴射補正係数KEGRN を演算する。図24はその
作業を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【0095】同図に従って説明すると、S300におい
て正味還流率(図19のS216で求めたもの)を1か
ら減算し、その値を排気還流率に対する燃料噴射補正係
数KEGRN とする。続いてS302に進み、算出した排気
還流率に対する燃料噴射補正係数KEGRN をリングバッフ
ァに格納(記憶)する。図25はそのリングバッファの
構成を示す説明図であり、制御ユニット34のRAM7
4内に設けられる。リングバッファは図示の如く、n個
のアドレスを有し、各アドレスは0からnまでの番号が
付される。そして図19(および図24)フロー・チャ
ートがTDCで起動されて燃料噴射補正係数KEGRN が算
出される度に、図において上方から順次格納(更新)さ
れる。
【0096】続いてS304に進み、検出した機関回転
数Neと機関負荷、例えば吸気圧力Pbとからマップを
検索して無駄時間τを検索する。図26はその特性を示
す説明図である。即ち、前記した無駄時間は排気還流弁
を通過した還流ガスが燃焼室に流入するまでの遅れ時間
を示すが、それは機関回転数および機関負荷、例えば吸
気圧力などに応じて変わるものである。ここで、無駄時
間τは、より具体的には前記したバッファ番号で示され
る。
【0097】続いてS306に進み、検索した無駄時間
τ(より具体的にはバッファ番号)に基づき、相当する
アドレスに格納された算出値(排気還流率に対する燃料
噴射補正係数KEGRN )を読み出す。即ち、図27に示す
ように、現在時点がAであるとき、例えば12回前の算
出値を選択し、それを今回の排気還流率に対する燃料噴
射補正係数KEGRN とする。
【0098】これを排気還流弁の動作から見ると、12
回前の排気還流率に対する燃料噴射補正係数KEGRN は
1.0であり、そのことは排気還流弁が閉じられていた
ことを意味する。その後に排気還流率に対する燃料噴射
補正係数KEGRN は例えば0.99,0.98などと徐々
に小さくなり、換言すれば排気還流弁が開けられて現在
時点Aに至っているが、図示例の場合、現在時点では、
還流ガスは未だ燃焼室に流入していないと判断し、従っ
て燃料噴射の減少補正を行わないようにする。
【0099】同時に、決定した排気還流率に対する燃料
噴射補正係数KEGRN に基づいて燃料噴射量を補正する。
この燃料噴射量の補正は後述の、機関回転数と機関負荷
とから求めた基本燃料噴射量TiM-Fに排気還流率に対す
る燃料噴射補正係数KEGRN を乗じて要求燃料噴射量Tcy
l を求めることで行う。
【0100】尚、図19フロー・チャートにおいて、S
206で実リフトLACTが零と判断されるときは排気還流
は行われていないが、排気還流率に対する燃料噴射補正
係数KEGRN は無駄時間τが経過した後の値から決定され
るため、S220を経てS214以降に進んで正味還流
率と排気還流率に対する燃料噴射補正係数KEGRN を算出
する。この場合、S216で正味還流率は0に、図24
フロー・チャートのS300で排気還流率に対する燃料
噴射補正係数KEGRN は1.0に決定される。
【0101】また、S208でリフト指令値LCMDが下限
値LCMDLL以下と判断されるときはS222に進み、リフ
ト指令値LCMDは前回値LCMDk-1 をそのまま保持する(簡
略化のため、この明細書では今回値にkを付すのは省略
した)。
【0102】これは、排気還流を実行する領域から実行
しない領域へ移行した際、リフト指令値LCMDが零になっ
ても、排気還流弁122の動特性に遅れがあるため、実
リフトLACTは直ちに零にならないことから、リフト指令
値LCMDが下限値(閾値)LCMDLL以下の場合にはリフト指
令値LCMDを前回値LCMDk-1 (前回制御サイクル時k-1の
ときの値)にホールドするようにした。この前回値ホー
ルドは、S206で実リフトLACTが零になったことが確
認されるまで行われる。
【0103】また、リフト指令値LCMDが下限値LCMDLL以
下のときはリフト指令値LCMDが零である場合もあり、そ
の際にはS210でのQCMD検索値も零となってS216
の演算で零割りが生じて演算不能となる。しかし、上記
の如く前回値をホールドすることにより、演算不能とな
る恐れはない。尚、下限値LCMDLLは微小値としたが、零
でも良い。
【0104】続いてS224に進み、基本排気還流率補
正係数KEGRMAP のマップ検索値(S204で検索)を前
回検索値KEGRMAPk-1に置き換える。これは、S202で
検索されたリフト指令値LCMDが下限値以下と判断される
運転状態においては、S204で検索される基本排気還
流率補正係数KEGRMAP が、この実施の形態で予定する特
性では1に設定されるため、S214の演算において定
常還流率が0となる恐れがあるからである。
【0105】上記の如く、検出された機関回転数および
機関負荷、例えば吸気圧力と排気還流弁の作動状態とか
ら前記排気還流弁を通過して燃焼室に流入する排気ガス
の正味還流率を演算周期ごとに算出し、それに基づいて
排気還流率に対する燃料噴射補正係数を演算周期ごとに
順次算出して記憶しておくと共に、排気ガスが排気還流
弁を通過して燃焼室に流入するまでの無駄時間を求め、
無駄時間に相当する演算周期の算出値を選択し、それを
現在の演算周期での排気還流率に対する燃料噴射補正係
数とみなすようにしたので、複雑な計算や不確定な演算
要素を極力低減することができ、簡易な構成でありなが
ら、燃焼室に流入する排気ガスの還流率を精度良く求め
て燃料噴射量を精度良く補正することができる。尚、上
記において、KEGRN に代えて正味還流率をリングバッフ
ァに格納しても良く、更には無駄時間τを固定値として
も良い。尚、その詳細は本出願人が先に提案した特願平
6−294,014号に述べられているので、これ以上
の説明は省略する。
【0106】次いで、キャニスタ・パージ補正係数KPUG
(パージ質量に応じた)について説明する。
【0107】キャニスタ・パージ時には、キャニスタ2
23から燃料分を含んだガスが吸気系に吸引されるた
め、空燃比がリッチ側にずれる。このずれは後でフィー
ドバック系にて補正される。しかし、キャニスタ・パー
ジ時には空燃比がリッチ側にずれることが予め予想され
るため、パージ質量に応じた減量補正量をKPUGとして予
め補正しておけば、フィードバック系の補正量が減少す
る、即ち、フィードバック系の負荷が低減されるため、
外乱に対する安定性や追従性が向上する。
【0108】補正手法としては、流入するキャニスタ・
パージの流量と濃度とから、キャニスタ・パージ中の燃
料量を算出する手法、ないしは空燃比センサの目標空燃
比に対する偏差からパージ質量に応じた補正係数KPUGを
求める手法が考えられる。以下に、前者の手法に基づい
てキャニスタ・パージ補正係数KPUGを算出する例を述べ
る。
【0109】図28はその算出手法を示すフロー・チャ
ートである。
【0110】先ず、S400で前記流量計226を介し
てキャニスタ・パージの流量を検出し、S402で前記
HC濃度センサ227を介してその濃度を検出する。次
いでS404で検出した流量と濃度とから、キャニスタ
・パージによる流入燃料量(質量)を算出する。次いで
S406に進んで算出した流入燃料量をガソリン燃料量
に変換する。即ち、キャニスタ・パージ中の燃料成分
は、ガソリンの軽質分であるブタンがほとんどである。
ブタンとガソリンとでは理論空燃比が異なるため、ここ
でガソリン相当量に変換する。次いでS408に進み、
前記したマップ検索燃料噴射量TiMに目標空燃比を乗算
して気筒吸入空気量Gc を求め、それと変換されたガソ
リン量とから、パージ質量に応じた補正係数KPUGを算出
する。
【0111】尚、パージ制御弁225の制御は、図示し
ないプログラムにより、予め定められた機関回転数と機
関負荷などの運転状態に応じて目標キャニスタ・パージ
量を満足するように行われる。尚、言うまでもなく、キ
ャニスタ・パージが実行されないときは、パージ質量に
応じた補正係数KPUGは1となる。
【0112】上記において、先に目標のパージ質量に応
じた補正係数KPUG、例えば0.95を設定し、その値に
見合うようにパージ制御弁を制御しても良い。更には前
記した如く、空燃比センサの目標空燃比に対する偏差か
らパージ質量に応じた補正係数KPUGを求めても良い。ま
た気筒吸入空気量Gc は、機関回転数と機関負荷とから
マップ値として設定しておいても良い。更には、S40
6で求めたガソリン燃料量を要求燃料噴射量Tcyl から
減算しても良い。
【0113】その他、補正係数KTOTALには、水温による
補正係数や吸気温による補正係数があるが、それらは公
知であるので、説明を省略する。かく求めた排気還流率
に対する燃料噴射補正係数KEGRN,パージ質量に応じたKP
UGなどを合算してKTOTALとして基本燃料噴射量TiM-Fに
乗算してそれを補正する。
【0114】次いで目標空燃比KCMDおよび目標空燃比補
正係数KCMDM を算出する。
【0115】図29はその算出作業を示すフロー・チャ
ートである。
【0116】先ず、S500において前記した基本値KB
S を検索する。これは機関回転数Neと吸気圧力Pbと
から図14に示したマップを検索して求める。尚、その
マップにはアイドル時の基本値も含まれる。また、機関
の低負荷時に機関へ供給する空燃比を大きく(当量比で
言えば小さく)して燃費特性を向上させる、いわゆるリ
ーンバーン機関にあっては、リーンバーン用の基本値も
含まれる。
【0117】次いでS502に進み、適宜なタイマの値
を参照して機関始動後のリーンバーン制御が実行されて
いるか否か判別する。実施の形態に係る内燃機関10に
は可変バルブタイミング機構が設けられていることか
ら、吸気弁の一方の動作を休止させることで始動後の所
定期間は、目標空燃比を理論空燃比よりややリーン側に
設定するリーンバーン制御を行っている。即ち、始動後
の触媒装置が未だ活性化していない間に空燃比をリッチ
化することでHCが増える不都合を回避している。
【0118】通常の2個の吸気弁を有した機関では、こ
のように機関始動後に目標空燃比をリーン側に設定する
と、機関の燃焼が不安定となり、失火などが起きる場合
もある。しかし、実施の形態に係る可変バルブタイミン
グ機構を備えた機関にあっては、吸気弁の一方を休止さ
せることで、燃焼室内の吸入空気にいわゆるスワールと
呼ばれる渦ができ、機関の始動直後であっても安定した
燃焼が得られるため、始動直後でもリーン化が可能とな
る。そこでタイマ値からその期間にあるか否か判別し、
それに応じてリーン補正係数を算出する。この値は例え
ばリーンバーン制御期間にあれば0.89、ないときは
1.0と算出される。
【0119】次いでS504に進み、スロットル開度が
全開(WOT)であるか否か判断し、判断結果に応じて
全開増量補正値を算出する。次いでS506に進み、水
温Twが高いか否か判断し、判断結果に応じて増量補正
係数KTWOT を演算する。この値には、高水温時の機関保
護のための補正係数も含まれる。
【0120】次いでS508に進んで基本値KBS に求め
た補正係数を乗算して基本値KBS を補正すると共に、目
標空燃比KCMDを決定する。これは、補正した基本値KBS
に基づき、図7に示す如く、理論空燃比近傍のO2 セン
サ56の出力が線形特性を備える範囲(縦軸に破線で示
す)において、空燃比の微小制御(前記したMIDO2
制御)のためのウインドウ(以下DKCMD-OFFSETと称す
る)を設定し、そのウインドウ値DKCMD-OFFSETを補正し
た基本値KBS に加算することで行う。即ち、目標空燃比
KCMDを以下の如く決定する。 KCMD=KBS +DKCMD-OFFSET
【0121】次いでS510に進んで求めた目標空燃比
KCMD(k) (k:時刻)のリミット処理を行う。次いでS
512に進んで算出した目標空燃比KCMD(k) が1ないし
その付近の値にあるか否か判断し、肯定されるときはS
514に進んでO2 センサ56の活性化判断を行う。こ
れは図示しない別ルーチンで実行され、O2 センサ56
の出力電圧の変化を検出することで行う。次いでS51
6に進んでMIDO2制御用のDKCMD の演算を行う。こ
れは第1の触媒装置28下流(図5に示す触媒装置28
の場合は第1のCAT床の下流)のO2 センサ56の出
力より上流側のLAFセンサ54の目標空燃比KCMD(k)
を可変とする作業を意味する。詳しくは図7に示す如
く、所定の比較電圧VrefMとO2 センサ56の出力電圧
VO2M の偏差にPID制御則を用いて値DKCMD を算出す
ることで行う。尚、比較電圧VrefMは、大気圧Pa、水
温Tw、排気ボリューム(機関回転数Neおよび吸気圧
力Pbより求めることが可能)などに応じて求める。
【0122】尚、前記したウインドウ値DKCMD-OFFSET
は、第1、第2の触媒装置28,30が最適な浄化率を
維持するために加えるオフセット値である。これは触媒
装置の特性により異なることから、図示例の第1の触媒
装置28の特性を勘案して決定する。また経年劣化によ
っても変化することから、値DKCMD の毎回の算出値を用
いて加重平均により学習する。具体的には、 DKCMD-OFFSET(k) =W×DKCMD +(1−W)×DKCMD-OF
FSET(k-1) で求める。ここで、W:重み係数、k:時刻である。即
ち、目標空燃比KCMDを値DKCMD-OFFSETの前回算出値で学
習演算することにより、経年劣化の影響を受けることな
く、浄化率が最適となる空燃比にフィードバック制御す
ることができる。尚、この学習は、機関回転数Neおよ
び吸気圧力Pbなどから運転状態を領域毎に分けて行っ
ても良い。
【0123】次いでS518に進み、算出した値DKCMD
(k)を加算して目標空燃比KCMD(k) を更新し、S520
に進んで図30にその特性を示すテーブルを目標空燃比
KCMD(k) で検索し、補正係数KETCを求める。これは、気
化熱で吸入空気の充填効率が相違するのを補償するため
である。具体的には、求めた補正係数KETCを用いてKCMD
(k) を図示の如く補正し、目標空燃比補正係数KCMDM(k)
を算出する。即ち、この制御においては目標空燃比を当
量比で示すと共に、それに充填効率補正を施した値KCMD
M を目標空燃比補正係数とする。尚、S512で否定さ
れるときは、制御すべき目標空燃比KCMDが理論空燃比に
対して大きくずれているときであり、例えばリーンバー
ン運転時であり、MIDO2 制御を行う必要がないこと
から、直ちにS520にジャンプする。最後にS522
で目標空燃比補正係数KCMDM(k)のリミット処理を行って
終わる。
【0124】図8ブロック図に示す如く、かく求めた目
標空燃比補正係数KCMDM と各種補正係数合算値KTOTALは
基本燃料噴射量TiM-Fに乗じられ、要求燃料噴射量Tcy
l が算出される。
【0125】続いて、KSTRなどのフィードバック補正係
数を算出するが、その説明に入る前に、ここでLAFセ
ンサ出力のサンプリングおよびオブザーバについて説明
する。尚、そのサンプリング動作ブロックを図8で「Se
l-V 」と示す。
【0126】内燃機関において排気ガスは排気行程で排
出されることから、多気筒内燃機関の排気系集合部にお
いて空燃比の挙動をみると、明らかにTDCに同期して
いる。従って、内燃機関の排気系にLAFセンサ54を
設けて空燃比をサンプリングするときもTDCに同期し
て行う必要があるが、検出出力を処理する制御ユニット
(ECU)34のサンプルタイミングによっては空燃比
の挙動を正確に捉えられない場合が生じる。即ち、例え
ば、TDCに対して排気系集合部の空燃比が図31のよ
うであるとき、制御ユニットで認識する空燃比は図32
に示す如く、サンプルタイミングによっては全く違った
値となる。この場合、実際の空燃比センサの出力変化を
可能な限り正確に把握できる位置でサンプリングするの
が望ましい。
【0127】更に、空燃比の変化は排気ガスのセンサま
での到達時間やセンサの反応時間によっても相違する。
その中、センサまでの到達時間は排気ガス圧力、排気ガ
スボリュームなどに依存して変化する。更に、TDCに
同期してサンプリングすることはクランク角度に基づい
てサンプリングすることになるので、必然的に機関回転
数の影響を受けざるを得ない。このように、空燃比の検
出は機関の運転状態に依存するところが大きい。そのた
めに従来技術、例えば特開平1−313,644号公報
記載の技術においては所定クランク角度毎に検出の適否
を判定しているが、構成が複雑であって演算時間が長く
なるため高回転域では対応しきれなくなる恐れがあると
共に、検出を決定した時点で空燃比センサの出力の変局
点を徒過してしまう不都合も生じる。
【0128】図33は、そのLAFセンサのサンプリン
グ動作を示すフロー・チャートであるが、空燃比の検出
精度は特に前記したオブザーバの推定精度と密接な関連
を有するので、同図の説明に入る前に、ここでオブザー
バによる空燃比推定について簡単に説明する。
【0129】先ず、1個のLAFセンサの出力から各気
筒の空燃比を精度良く分離抽出するためには、LAFセ
ンサの検出応答遅れを正確に解明する必要がある。そこ
で、この遅れを1次遅れ系と擬似的にモデル化し、図3
4に示す如きモデルを作成した。ここでLAF:LAF
センサ出力、A/F:入力A/F、とすると、その状態
方程式は下記の数9で示すことができる。
【0130】
【数9】
【0131】これを周期ΔTで離散化すると、数10で
示すようになる。図35は数10をブロック線図で表し
たものである。
【0132】
【数10】
【0133】従って、数10を用いることによってセン
サ出力より真の空燃比を求めることができる。即ち、数
10を変形すれば数11に示すようになるので、時刻k
のときの値から時刻k−1のときの値を数12のように
逆算することができる。
【0134】
【数11】
【0135】
【数12】
【0136】具体的には数10をZ変換を用いて伝達関
数で示せば数13の如くになるので、その逆伝達関数を
今回のLAFセンサ出力LAFに乗じることによって前
回の入力空燃比をリアルタイムに推定することができ
る。図36にそのリアルタイムのA/F推定器のブロッ
ク線図を示す。
【0137】
【数13】
【0138】続いて、上記の如く求めた真の空燃比に基
づいて各気筒の空燃比を分離抽出する手法について説明
すると、先願でも述べたように、排気系の集合部の空燃
比を各気筒の空燃比の時間的な寄与度を考慮した加重平
均であると考え、時刻kのときの値を、数14のように
表した。尚、F(燃料量)を制御量としたため、ここで
は『燃空比F/A』を用いているが、後の説明において
は理解の便宜のため、支障ない限り「空燃比」を用い
る。尚、空燃比(ないしは燃空比)は、先に数13で求
めた応答遅れを補正した真の値を意味する。
【0139】
【数14】
【0140】即ち、集合部の空燃比は、気筒ごとの過去
の燃焼履歴に重みCn(例えば直近に燃焼した気筒は4
0%、その前が30%...など)を乗じたものの合算
で表した。このモデルをブロック線図であらわすと、図
37のようになる。
【0141】また、その状態方程式は数15のようにな
る。
【0142】
【数15】
【0143】また集合部の空燃比をy(k) とおくと、出
力方程式は数16のように表すことができる。
【0144】
【数16】
【0145】上記において、u(k) は観測不可能のた
め、この状態方程式からオブザーバを設計してもx(k)
は観測することができない。そこで4TDC前(即ち、
同一気筒)の空燃比は急激に変化しない定常運転状態に
あると仮定してx(k+1 )=x(k-3) とすると、数17
のようになる。
【0146】
【数17】
【0147】ここで、上記の如く求めたモデルについて
シミュレーション結果を示す。図38は4気筒内燃機関
について3気筒の空燃比を14.7にし、1気筒だけ1
2.0にして燃料を供給した場合を示す。図39はその
ときの集合部の空燃比を上記モデルで求めたものを示
す。同図においてはステップ状の出力が得られている
が、ここで更にLAFセンサの応答遅れを考慮すると、
センサ出力は図40に「モデル出力値」と示すようにな
まされた波形となる。図中「実測値」は同じ場合のLA
Fセンサ出力の実測値であるが、これと比較し、上記モ
デルが多気筒内燃機関の排気系を良くモデル化している
ことを検証している。
【0148】よって、数18で示される状態方程式と出
力方程式にてx(k) を観察する通常のカルマンフィルタ
の問題に帰着する。その荷重行列Q,Rを数19のよう
においてリカッチの方程式を解くと、ゲイン行列Kは数
20のようになる。
【0149】
【数18】
【0150】
【数19】
【0151】
【数20】
【0152】これよりA−KCを求めると、数21のよ
うになる。
【0153】
【数21】
【0154】一般的なオブザーバの構成は図41に示さ
れるようになるが、今回のモデルでは入力u(k) がない
ので、図42に示すようにy(k) のみを入力とする構成
となり、これを数式で表すと数22のようになる。
【0155】
【数22】
【0156】ここでy(k) を入力とするオブザーバ、即
ちカルマンフィルタのシステム行列は数23のように表
される。
【0157】
【数23】
【0158】今回のモデルで、リカッチ方程式の荷重配
分Rの要素:Qの要素=1:1のとき、カルマンフィル
タのシステム行列Sは、数24で与えられる。
【0159】
【数24】
【0160】図43に上記したモデルとオブザーバを組
み合わせたものを示す。シミュレーション結果は先の出
願に示されているので省略するが、これにより集合部空
燃比より各気筒の空燃比を的確に抽出することができ
る。
【0161】オブザーバによって集合部空燃比より各気
筒空燃比を推定することができたことから、PIDなど
の制御則を用いて空燃比を気筒別に制御することが可能
となる。具体的には、図44に示すように、センサ出力
(集合部A/F、即ち、検出空燃比KACT)と各気筒の気
筒別フィードバック補正係数の過去値とからPID制御
則を用いて集合部フィードバック補正係数KLAFを求める
と共に、オブザーバが推定する気筒ごとの推定#nA/F
から気筒毎のフィードバック補正係数#nKLAF(n:気
筒)を求める。気筒毎のフィードバック補正係数#nKL
AFはより具体的には、集合部A/F、即ち、KACTを気筒
毎のフィードバック補正係数#nKLAFの全気筒について
の平均値の前回演算値で除算(加え合わせ点に代えて除
算記号を用いたのはそれを示す)して求めた目標値とオ
ブザーバ推定値#nA/F との偏差を解消するようにPI
D則を用いて求める。
【0162】これにより、各気筒の空燃比は集合部空燃
比に収束し、集合部空燃比は目標空燃比に収束すること
となって、結果的に全ての気筒の空燃比が目標空燃比に
収束する。ここで、各気筒の燃料噴射量#nTout (イ
ンジェクタの開弁時間で規定される)は、 #nTout =Tcyl ×#nKLAF×KLAF で求められる(n:気筒)。尚、かかる制御の詳細は本
出願人が先に提案した特願平5−251138号に述べ
られているので、これ以上の説明は省略する。
【0163】ここで、図33フロー・チャートに戻って
LAFセンサ出力のサンプリングを説明する。尚、この
プログラムはTDC位置で起動される。
【0164】図33フロー・チャートを参照して以下説
明する。先ずS600において機関回転数Ne、吸気圧
力Pb、バルブタイミングV/T を読み出し、S604,
S606に進んでHiV/T ないしLoV/T 用のタイミン
グマップ(後述)を検索し、S608に進んでHiV/T
およびLoV/T 用のオブザーバ演算に用いるセンサ出力
のサンプリングを行う。具体的には、機関回転数Neお
よび吸気圧力Pbからタイミングマップを検索して前記
した12個のバッファのいずれかをそのNo.で選択
し、そこに記憶されているサンプリング値を選択する。
【0165】図45はそのタイミングマップの特性を示
す説明図であり、図示の如く特性は、機関回転数Neが
低くないしは吸気圧力(負荷)Pbが高いほど早いクラ
ンク角度でサンプリングされた値を選択するように設定
される。ここで、「早い」とは前のTDC位置により近
い位置でサンプリングされた値(換言すれば古い値)を
意味する。逆に、機関回転数Neが高くないしは吸気圧
力Pbが低いほど遅いクランク角度、即ち、後のTDC
位置に近いクランク角度でサンプリングされた値(換言
すれば新しい値)を選択するように設定する。
【0166】即ち、LAFセンサ出力は図32に示した
ように、実際の空燃比の変局点に可能な限り近い位置で
サンプリングするのが最良であるが、その変局点、例え
ば最初のピーク値は、センサの反応時間を一定と仮定す
れば、図46に示すように、機関回転数が低くなるほど
早いクランク角度で生じる。また、負荷が高いほど排気
ガス圧力や排気ガスボリュームが増加し、従って排気ガ
スの流速が増してセンサへの到達時間が早まるものと予
想される。その意味から、サンプルタイミングを図45
に示すように設定した。
【0167】更に、バルブタイミングに関しては、機関
回転数の任意の値Ne1をLo側についてNe1-Lo 、Hi
側についてNe1-Hi とし、吸気圧力についてもその任意
の値をLo側についてPb1-Lo 、Hi側についてPb1-H
i とすると、マップ特性は、 Pb1-Lo >Pb1-Hi Ne1-Lo >Ne1-Hi とする。即ち、HiV/T にあっては排気弁の開き時点が
LoV/T のそれより早いため、機関回転数ないし吸気圧
力の値が同一であれば、早期のサンプリング値を選択す
るように、マップ特性が設定される。
【0168】次いでS610に進んでオブザーバ行列の
演算をHiV/T について行い、続いてS612に進んで
同様の演算をLoV/T について行う。続いてS614に
進んで再びバルブタイミングを判断し、判断結果に応じ
てS616,S618に進んで演算結果を選択して終わ
る。
【0169】即ち、バルブタイミングの切り換えに伴っ
て空燃比の集合部の挙動も変わるため、オブザーバ行列
を変更する必要が生じる。しかし、各気筒の空燃比の推
定は瞬時に行えるものではなく、各気筒の空燃比推定演
算が収束し終わるまでに演算数回を要するため、バルブ
タイミングの変更前のオブザーバ行列を用いた演算と変
更後のオブザーバ行列を用いた演算とをオーバーラップ
して行っておき、もしバルブタイミングの変更が行われ
たとしても、S614で変更後のバルブタイミングに応
じて選択できるようにした。尚、各気筒が推定された後
は、先に述べたように、目標値との偏差を解消するよう
にフィードバック補正係数が求められて噴射量が決定さ
れる。
【0170】この構成により、空燃比の検出精度を向上
させることができる。即ち、図47に示す如く、比較的
短い間隔でサンプリングすることから、サンプリング値
はセンサ出力をほぼ忠実に反映すると共に、その比較的
短い間隔でサンプリングされた値をバッファ群に順次記
憶しておき、機関回転数と吸気圧力(負荷)に応じてセ
ンサ出力の変局点を予測してバッファ群の中からそれに
対応する値を所定クランク角度において選択するように
した。この後、オブザーバ演算が行われて各気筒空燃比
が推定され、図44で説明したように、空燃比の気筒別
のフィードバック制御が行われる。
【0171】従って、図47下部に示すように、CPU
コア70はセンサ出力の最大値と最小値を正確に認識す
ることができる。従って、この構成により前記したオブ
ザーバを用いて各気筒の空燃比を推定するときも、実際
の空燃比の挙動に近似する値を使用することができてオ
ブザーバの推定精度が向上し、結果として図44に関し
て述べた気筒別の空燃比フィードバック制御を行うとき
の精度も向上する。
【0172】尚、センサ出力サンプリングに関しては、
実際にバルブタイミングがどちらの特性にあるか否か判
断せず、Lo,Hi両方の特性について行い、その後に
初めて特性を判断するようにしても良い。また、LAF
センサの反応時間はセンサが検出しようとする混合気の
空燃比がリーンであると、リッチのときに比し、短くな
ることから、検出すべき空燃比がリーンのときは、より
早期のクランク角度で検出されたサンプリング値を選択
することが望ましい。また、内燃機関を搭載した車両が
高地を走行するときは大気圧が低下して排圧が低下する
ことから、排気ガスのセンサまでの到達時間が、低地の
場合に比し、短くなるため、高度が増加するにつれてよ
り早期のクランク角度で検出されたサンプリング値を選
択することが望ましい。また、LAFセンサが劣化する
と応答性が低下し、反応時間が長くなるため、劣化度合
いが進むほど、後期のクランク角度で検出したサンプリ
ング値を選択することが望ましい。但し、その詳細は、
本出願人が先に提案した特願平6−243,277号に
詳細に記載されているので、これ以上の説明は省略す
る。
【0173】続いて、KSTRなどのフィードバック補正係
数の算出について説明する。
【0174】内燃機関の空燃比制御においては、図44
で示したように一般にPIDコントローラが用いられ、
目標値と操作量(制御対象出力)との偏差に比例項、積
分項および微分項を乗じてフィードバック補正係数を求
めているが、近時は現代制御理論を用いてフィードバッ
ク補正係数を求めることも提案されている。
【0175】そして、先に述べたように、この出願にお
いてもMIDO2 制御において、フィードフォワード系
で演算された燃料噴射量に目標空燃比補正係数KCMDM を
乗算するだけでは機関の応答遅れがあることから、目標
空燃比KCMDがなまされた検出空燃比KACTとなってしまう
ため、目標空燃比KCMDから検出空燃比KACTの応答を動的
に補償する意図で、図44で示した集合部フィードバッ
ク補正係数KLAFに代え、適応制御器STRを用いてフィ
ードバック補正係数KSTRを求め、フィードフォワード系
で演算された燃料噴射量に乗算するようにした。
【0176】ところで、適応制御器のように現代制御理
論を用いてフィードバック補正係数を決定すると、制御
の応答性が比較的高いことから、運転状態によっては却
って制御量が発振し、制御の安定性が低下する場合があ
る。また、車両走行のクルーズ時など所定の運転状態に
おいては燃料供給が停止(フューエルカット)され、図
48に示すように、フューエルカットの間は空燃比はオ
ープンループ(O/L)制御される。
【0177】そして、例えば理論空燃比となるべく燃料
供給が再開されると、予め実験で求めた特性に従ってフ
ィードフォワード系で燃料供給量が決定され、供給され
る。その結果、真の空燃比はリーン側から14.7に急
変する。しかしながら、供給された燃料が燃焼して空燃
比センサ配置位置まで到達するのにある程度の時間を要
し、空燃比センサ自体も検出遅れを有する。そのため、
検出空燃比は実際の空燃比通りにはならず、同図に破線
で示すような値となり、比較的大きな差を生じる。
【0178】このとき、適応制御則に基づいてフィード
バック補正係数を決定すると、適応制御器STRは、目
標値と検出値の偏差を一挙に解消すべくゲインKSTRを決
定する。しかし、この差はセンサの検出遅れなどに起因
するものであり、検出値は真の空燃比を示すものではな
い。それにもかかわらず、適応制御器はこの比較的大き
な差を一挙に吸収しようとすることから、図48に示す
如く、KSTRが大きく発振し、その結果制御量も発振して
制御の安定性が低下する。
【0179】このような不都合が生じるのは、フューエ
ルカットからの復帰時だけに止まるものではない。全開
増量制御からフィードバック制御に復帰するとき、ない
しリーンバーン制御から理論空燃比制御に復帰するとき
も同様である。更には、目標空燃比を意図的に振幅させ
るパータベーション制御から一定した目標空燃比への制
御に切り換えるときも同じである。換言すれば、目標空
燃比が大きく変動するとき、共通して生じる問題であ
る。
【0180】従って、適応制御則およびPID制御則な
どを用いてフィードバック補正係数を決定し、運転状態
に応じて適宜切り換えることが望ましい。しかしなが
ら、異なる制御則に基づいて決定されたフィードバック
補正係数を切り換えるときは、それぞれの特性が異なる
ことから、補正係数に段差が生じて操作量が急変し、制
御量が不安定となって制御の安定性が低下する恐れがあ
る。
【0181】従って、実施の形態においては、適応制御
則およびPID制御則などを用いてフィードバック補正
係数を決定し、運転状態に応じて適宜切り換えると共
に、その切り換えを滑らかに行い、補正係数に段差が生
じて操作量が急変して制御量が不安定となるのを防止
し、よって制御の安定性が低下することがないようにし
た。
【0182】図49はKSTRなどの演算作業を示すフロー
・チャートであるが、理解の便宜のため、図50を参照
して前出の適応制御器STRについて説明する。適応制
御器はより具体的には図示の如く、STRコントローラ
(STR CONTROLLER) と適応パラメータ調整機構(『パラ
メータ調整機構』とも言う)からなる。
【0183】前記の如く、先ずフィードフォワード系で
要求燃料噴射量Tcyl が演算され、演算された要求燃料
噴射量Tcyl に基づき、後で述べるように出力燃料噴射
量Tout が決定され、制御プラント(内燃機関10)に
燃料噴射弁22を介して送られる。フィードバック系の
目標空燃比KCMD(k) と制御量(検出空燃比)KACT(k)
(制御プラント出力y(k) )はSTRコントローラに入
力され、STRコントローラは漸化式を用いてフィード
バック補正係数KSTR(k) を算出する。即ち、STRコン
トローラは、パラメータ調整機構によって同定された係
数ベクトルθハット(k) を受け取ってフィードバック補
償器を形成する。
【0184】適応制御の調整則(機構)の一つに、I.
D.ランダウらの提案したパラメータ調整則がある。こ
の手法は、適応制御システムを線形ブロックと非線形ブ
ロックとから構成される等価フィードバック系に変換
し、非線形ブロックについては入出力に関するポポフの
積分不等式が成立し、線形ブロックは強正実となるよう
に調整則を決めることによって、適応制御システムの安
定を保証する手法である。即ち、ランダウらの提案した
パラメータ調整則においては、漸化式形式で表される調
整則(適応則)が、上記したポポフの超安定論ないしは
リヤプノフの直接法の少なくともいづれかを用いること
でその安定性を保証している。
【0185】この手法は、例えば「コンピュートロー
ル」(コロナ社刊)No.27,28頁〜41頁、ない
しは「自動制御ハンドブック」(オーム社刊)703頁
〜707頁、" A Survey of Model Reference Adaptive
Techniques - Theory and Ap-plication" I.D. LANDAU
「Automatica」Vol. 10, pp. 353-379, 1974、"Unifi-c
ation of Discrete Time Explicit Model Reference A
daptive ControlDesigns" I.D.LANDAU ほか「Automatic
a」Vol. 17, No. 4, pp. 593-611, 1981、および" Comb
ining Model Reference Adaptive Controllers and Sto
chasticSelf-tuning Regulators" I.D. LANDAU 「Autom
atica」Vol. 18, No. 1, pp. 77-84, 1982 に記載され
ているように、公知技術となっている。
【0186】図示例の適応制御技術では、このランダウ
らの調整則を用いた。以下説明すると、ランダウらの調
整則では、離散系の制御対象の伝達関数B(Z-1)/A
(Z-1) の分母分子の多項式を数25および数26のよう
においたとき、パラメータ調整機構が同定する適応パラ
メータθハット(k) は、数27のようにベクトル(転置
ベクトル)で示される。またパラメータ調整機構への入
力ζ(k) は、数28のように定められる。ここでは、m
=1、n=1、d=3の場合、即ち、1次系で3制御サ
イクル分の無駄時間を持つプラントを例にとった。
【0187】
【数25】
【0188】
【数26】
【0189】
【数27】
【0190】
【数28】
【0191】ここで、数27に示される適応パラメータ
θハットは、ゲインを決定するスカラ量b0 ハット
-1(k) 、操作量を用いて表現される制御要素BR ハット
(Z-1, k)および制御量を用いて表現される制御要素S
(Z -1, k)からなり、それぞれ数29から数31のよう
に表される。
【0192】
【数29】
【0193】
【数30】
【0194】
【数31】
【0195】パラメータ調整機構はこれらのスカラ量や
制御要素の各係数を同定・推定し、前記した数26に示
す適応パラメータθハットとして、STRコントローラ
に送る。パラメータ調整機構は、プラントの操作量u
(i)および制御量y(j)(i,jは過去値を含む)
を用いて目標値と制御量との偏差が零となるように適応
パラメータθハットを算出する。適応パラメータθハッ
トは、具体的には数32のように計算される。数32
で、Γ(k) は適応パラメータの同定・推定速度を決定す
るゲイン行列(m+n+d次)、eアスタリスク(k) は
同定・推定誤差を示す信号で、それぞれ数33および数
34のような漸化式で表される。
【0196】
【数32】
【0197】
【数33】
【0198】
【数34】
【0199】また数33中のλ1(k) ,λ2(k) の選び
方により、種々の具体的なアルゴリズムが与えられる。
例えば、λ1(k) =1,λ2(k) =λ(0<λ<2)と
すると漸減ゲインアルゴリズム(λ=1の場合には最小
自乗法)、λ1(k) =λ1(0<λ1<1),λ2(k)
=λ2(0<λ2<λ)とすると可変ゲインアルゴリズ
ム(λ2=1の場合には重み付き最小自乗法)、λ1
(k) /λ2(k) =σとおき、λ3が数35のように表さ
れるとき、λ1(k) =λ3とおくと固定トレースアルゴ
リズムとなる。また、λ1(k) =1,λ2(k) =0のと
き固定ゲインアルゴリズムとなる。この場合は数33か
ら明らかな如く、Γ(k) =Γ(k-1) となり、よってΓ
(k) =Γの固定値となる。燃料噴射ないし空燃比などの
時変プラントには、漸減ゲインアルゴリズム、可変ゲイ
ンアルゴリズム、固定ゲインアルゴリズム、および固定
トレースアルゴリズムのいずれもが適している。
【0200】
【数35】
【0201】上記から明らかな如く、この適応制御器
は、制御対象物(内燃機関)の動的な挙動を考慮した漸
化式形式の制御器であり、詳しくは、制御対象物の動的
な挙動を補償するために、漸化式形式により記述された
制御器である。より詳しくは、STR型であることか
ら、前記制御器の入力に漸化式形式の適応パラメータ調
整機構を備えた適応制御器と定義することができる。
【0202】ここで、フィードバック補正係数KSTR(k)
は、具体的には数36に示すように求められる。
【0203】
【数36】
【0204】求めた適応制御則によるフィードバック補
正係数KSTRはフィードバック補正係数KFB として要求燃
料噴射量Tcyl に乗算され、出力燃料噴射量Tout (操
作量)が決定されて制御プラントに入力される。即ち、
出力燃料噴射量Tout は、図8ブロック図に示す如く
(および図50ブロック図に一部示す如く)、 Tout =Tcyl ×KTOTAL×KCMDM ×KFB +TTOTAL で決定される。尚、出力燃料噴射量Tout にはPID制
御則による気筒ごとのフィードバック補正係数#nKLAF
も乗算されるが、それについては先に図44に関して説
明した。また、上記で、TTOTALは気圧補正などの加算項
で行う各種の補正値の合計値を示す(但し、インジェク
タの無効時間は出力燃料噴射量Tout の出力時に別途加
算されるので、これには含まれない)。
【0205】図50(および図8)で特徴的なことは、
先ずSTRコントローラを燃料噴射量演算系の外にお
き、目標値を燃料噴射量ではなく、空燃比としたことで
ある。即ち、操作量は燃料噴射量で示され、よって排気
系に生じた検出空燃比と目標空燃比とが一致するように
パラメータ調整機構が動作してフィードバック補正係数
KSTRを決定し、外乱へのロバスト性を向上させた点であ
る。但し、この点は本出願人が先に提案した出願(特願
平6−66,594号)に述べられているので、詳細な
説明は省略する。
【0206】特徴の第2の点は、フィードバック補正係
数が基本値に乗算されて操作量が決定される点である。
これにより、制御の収束性が格段に向上する。他方、そ
の構成により、操作量が適切でないと、制御量が発振し
やすい欠点も有する。特徴の第3の点は、STRコント
ローラと共に、従来的なPID制御器(PIDコントロ
ーラと示す)を設け、PID制御則によってフィードバ
ック補正係数KLAFを決定し、切換機構を介してフィード
バック補正係数の最終値KFB としてKSTRないしKLAFのい
ずれかを選択するようにしたことである。
【0207】尚、PIDコントローラによる、即ち、P
ID制御則によるフィードバック補正係数KLAFは以下の
通り演算される。先ず、目標空燃比補正係数KCMDと検出
空燃比KACTの制御偏差DKAFを DKAF(k) =KCMD(k-d) −KACT(k) と求める(ここでdは実際に噴射された燃料がLAFセ
ンサで検出されるまでの無駄時間に相当する)。この明
細書で(k) は時刻(演算ないし制御周期)を示し、より
具体的にはプログラム起動時刻を示すので、上記でKCMD
(k-d) :目標空燃比(無駄時間前の制御周期の)、KACT
(k) :検出空燃比(今回制御周期の)を示す。
【0208】次いで、それに所定の係数を乗じてP項KL
AFP(k)、I項KLAFI(k)、およびD項KLAFD(k)を P項:KLAFP(k)=DKAF(k) ×KP I項:KLAFI(k)=KLAFI(k-1)+DKAF(k) ×KI D項:KLAFD(k)=(DKAF(k)−DKAF(k-1) ×KD と求める。このようにP項は偏差に比例ゲインKPを乗じ
て求め、I項は偏差に積分ゲインKIを乗じて得た値をフ
ィードバック補正係数の前回値KLAFI (k-1) に加算して
求め、D項は偏差の今回値DKAF(k) と前回値DKAF(k-1)
の差に微分ゲインKDを乗じて求める。尚、各ゲインKP,K
I,KDは、機関回転数と機関負荷に応じて求められ、より
具体的にはマップを用いて機関回転数Neと吸気圧力P
bとから検索できるように設定される。
【0209】最後に、よって得た値を KLAF(k) =KLAFP(k)+KLAFI(k)+KLAFD(k) と合算してPID制御則によるフィードバック補正係数
の今回値KLAF(k) とする。この場合、乗算補正によるフ
ィードバック補正係数とするため、オフセット分である
1.0はI項KLAFI (k) に含まれているものとする(即
ち、I項KLAFI の初期値は1.0とする)。PIDコン
トローラによるフィードバック補正係数が選択されると
き、STRコントローラは、そのフィードバック補正係
数KSTRが1(初期状態)で停止するように、適応パラメ
ータをホールドする。
【0210】以上を前提として、図49フロー・チャー
トを参照してフィードバック補正係数の演算について説
明する。尚、図49のプログラムは所定クランク角度で
起動される。
【0211】先ずS700において検出した機関回転数
Neおよび吸気圧力Pbなどを読み出し、S704に進
んでフューエルカットか否か判断する。フューエルカッ
トは、所定の運転状態、例えばスロットル開度が全閉位
置にあり、かつ機関回転数が所定値以上であるときに行
われ、燃料供給が停止されると共に、空燃比もオープン
ループで制御される。
【0212】S704でフューエルカットではないと判
断されたときはS706に進み、前記した要求燃料噴射
量Tcyl を読み出し、S708に進んでLAFセンサ5
4の活性化が完了したか否か判定する。これは例えば、
LAFセンサ54のセンサセル電圧(基準電圧)が所定
値(例えば1.0V)より小さいとき活性化が完了した
と判定することで行う。
【0213】S708で活性化が完了したと判断される
ときはS710に進み、フィードバック制御領域である
か否か判断する。これは開示しない別ルーチンで行わ
れ、例えば全開増量時や高回転時、またはEGRなどの
影響により運転状態が急変したときなどはオープンルー
プで制御される。
【0214】S710で肯定されるときは続いてS71
2に進み、検出した排気空燃比を読み込み、S714に
進んで検出した排気空燃比から検出空燃比KACT(k) を求
め、S716に進んでフィードバック補正係数の最終値
KFB を求める。
【0215】図51はその作業を示すサブルーチン・フ
ロー・チャートである。
【0216】同図に従って説明すると、S800で前回
(前回の制御ないし演算周期、即ち、前回プログラム起
動時刻)にオープンループ制御であったか否か判定す
る。前回フューエルカットなどのオープンループ制御に
あったときは肯定されてS802に進み、そこでカウン
タ値Cを0にリセットし、S804に進んでフラグFKST
R のビットを0にリセットし、S806に進んでフィー
ドバック補正係数の最終値KFB を演算する。尚、S80
4でフラグFKSTR のビットを0にリセットすることは、
フィードバック補正係数がPID制御則で決定されるべ
きことを意味する。また後述の如く、フラグFKSTR のビ
ットが1にセットされるときは、フィードバック補正係
数が適応制御則で決定されるべきことを意味する。
【0217】図52はフィードバック補正項KFB 演算の
具体的な作業を示すサブルーチン・フロー・チャートで
ある。以下説明すると、S900でそのフラグFKSTR の
ビットが1にセットされているか、即ち、STR(コン
トローラ)作動領域にあるか否か判断する。このフラグ
は図51フロー・チャートのS804において0にリセ
ットされていることから、このステップの判断は否定さ
れ、S902に進んで前回フラグFKSTR のビットが1に
セットされていたか、即ち、前回STR(コントロー
ラ)作動領域にあったか否か判断する。
【0218】ここでの判断も当然否定され、S904に
進んでPIDコントローラによるPID制御則に基づい
てフィードバック補正係数KLAF(k) を前述の如く演算す
る、より正確にはPIDコントローラが演算したフィー
ドバック補正係数KLAF(k) を選択する。続いて図51フ
ロー・チャートに戻り、S808に進んでKLAF(k) をKF
B とする。
【0219】図51フロー・チャートの説明を続ける
と、S800で前回オープンループ制御ではない、即
ち、オープンループ制御からフィードバック制御に復帰
していると判断されるときは、S810に進んで目標空
燃比の無駄時間前の値KCMD(k-d)と今回値KCMD(k) の差D
KCMD を求め、基準値DKCMDrefと比較する。そして、差D
KCMD が基準値DKCMDrefを超えると判断されるとき、S
802以降に進んでPID制御則によってフィードバッ
ク補正係数を演算する。これは、目標空燃比の変化が大
きいときは、フューエルカットの復帰の場合と同様、空
燃比センサの検出遅れなどから、必ずしも検出値が真の
値を指すとは言い難く、同様に制御量が不安定となる可
能性があるからである。目標空燃比の変化が大きい場合
の例としては、例えば全開増量から復帰するとき、リー
ンバーン制御(例えば空燃比=20:1かそれよりリー
ンであるとき)から理論空燃比制御に復帰するとき、目
標空燃比を振幅させるパータベーション制御から目標空
燃比一定とする理論空燃比制御に復帰するとき、などが
挙げることができる。
【0220】他方、S810で差DKCMD が基準値DKCMDr
ef以下と判断されるときはS812に進んでカウンタ値
Cをインクリメントし、S814に進んで検出水温Tw
を所定値TWSTR.ONと比較し、所定値を下回ると判断され
るときはS804以降に進んでPID制御則によってフ
ィードバック補正係数を演算する。これは、低水温時に
は燃焼が安定せず、失火などが生じる恐れがあって、安
定した検出値KACTが得られないからである。尚、水温が
異常に高いときも、同様の理由からPID制御則によっ
てフィードバック補正係数を演算する。
【0221】S814で検出水温が所定値以上と判断さ
れるときはS816に進んで検出機関回転数Neを所定
値NESTRLMTと比較し、所定値以上と判断されるときはS
804以降に進んでPID制御則によってフィードバッ
ク補正係数を演算する。これは、高回転時に演算時間が
不足しがちであると共に、燃焼も安定しないからであ
る。
【0222】S816で検出機関回転数が所定値未満と
判断されるときはS818に進み、どちらのバルブタイ
ミング特性が選択されているか否か判断し、HiV/T 側
の特性が選択されていると判断されるときはS804以
降に進んでPID制御則によってフィードバック補正係
数を演算する。これは、HiV/T 側の特性が選択されて
いるときはバルブタイミングのオーバラップ量が大きい
ため、吸気が排気弁を通過して逃げる、いわゆる吸気の
吹き抜けと言う現象が生じるおそれがあり、安定した検
出値KACTを期待し得ないからである。
【0223】S818でLoV/T 側(2個のバルブの内
の1個の休止状態を含む)と判断されるときはS820
に進んでアイドル領域にあるか否か判断し、肯定される
ときはS804以降に進んでPID制御則によってフィ
ードバック補正係数を演算する。これは、アイドル時は
運転状態がほぼ安定しており、STR制御則のような高
いゲインを必要としないためである。またアイドル時は
機関回転数を一定に保つように、エレクトリックエアコ
ントロールバルブ、いわゆるEACVを使用して吸入空
気量を制御することから、その吸入空気量制御と空燃比
フィードバック制御とが干渉する恐れもあり、その意味
でもPID制御則に基づいてゲインを比較的低くするよ
うにした。
【0224】S820でアイドル領域にないと判断され
るときはS822に進んで検出吸気圧力Pbが低負荷側
の値か否か判断し、低負荷側の値と判断されるときはS
804以降に進んでPID制御則によってフィードバッ
ク補正係数を演算する。これも、燃焼が安定しないため
である。
【0225】S822で低負荷ではないと判断されると
きはS824に進み、カウンタ値Cを所定値、例えば5
と比較する。そしてカウンタ値Cが所定値以下と判断さ
れる限りはS804,S806,S900,S902
(S916),S904,S808と進んで前記と同様
にPIDコントローラが演算するフィードバック補正係
数KLAF(k) を選択する。
【0226】即ち、図48においてフューエルカットが
終了してオープンループ制御からフィードバック制御に
復帰した時刻T1(図51で触れたカウンタ値C=1)
から時刻T2(カウンタ値C=5)までの期間にあって
は、フィードバック補正係数は、PIDコントローラが
決定するPID制御則による値KLAFとする。このPID
制御則によるフィードバック補正係数KLAFは、STRコ
ントローラによるフィードバック補正係数KSTRと異な
り、目標値と検出値との制御偏差DKAFを一気に吸収しよ
うとはせず、比較的緩慢に吸収する特性を備える。
【0227】従って、図48に示すような供給再開され
た燃料の燃焼が完了するまでの遅れと空燃比センサの検
出遅れとから、差が比較的大きいときも、補正係数はS
TRコントローラによるときのように不安定となること
がなく、それによって制御量(プラント出力)が不安定
となることがない。ここで、所定値を5、換言すれば5
制御周期としたのは、この期間で上記した燃焼遅れ、検
出遅れを吸収できると考えたためである。尚、この期間
(所定値)は、排気ガス輸送遅れパラメータである機関
回転数、機関負荷などから決定しても良く、例えば機関
回転数と吸気圧力に応じて排気ガス輸送遅れパラメータ
が小さいときは所定値を小さく、排気ガス輸送遅れパラ
メータが大きいときは所定値を大きく設定するようにし
ても良い。
【0228】図51フロー・チャートの説明に戻ると、
S824でカウンタ値Cが所定値を超える、即ち、6以
上と判断されるときはS826に進んで前記フラグFKST
R のビットを1にセットし、S828に進んで再び図5
2フロー・チャートに従ってフィードバック補正係数の
最終値KFB を演算する。この場合、図52フロー・チャ
ートにおいてS900の判断は肯定されてS906に進
み、前回フラグFKSTRのビットが0にリセットされてい
たか、即ち、前回PID作動領域であったか否か判断す
る。
【0229】カウンタ値が所定値を超えて初めてである
ときこの判断は肯定され、S908に進んで検出空燃比
KACT(k) を下限値a、例えば0.8と比較する。そして
検出空燃比が下限値以上と判断されるとS910に進
み、検出空燃比を上限値b、例えば1.2と比較し、そ
れ以下と判断されるとき、S912を経てS914に進
み、STRコントローラを用いてフィードバック補正係
数KSTR(k) を演算、より正確にはSTRコントローラが
演算したフィードバック補正係数KSTR(k) を選択する。
【0230】換言すれば、S908で検出空燃比が下限
値aを下回る、ないしはS910で検出空燃比が上限値
bを超えると判断されるときは、S904に進んでPI
D制御に基づいてフィードバック補正係数を演算する。
即ち、PID制御からSTR(適応)制御への切り換え
は、STRコントローラの作動領域で、かつ検出空燃比
KACTが1付近の値となったときに行うようにした。これ
により、PID制御からSTR(適応)制御への切り換
えを滑らかに行うことができ、制御量の発振を防止する
ことができる。
【0231】そして、S910で検出空燃比KACT(k) が
上限値b以下と判断されるときはS912に進み、ST
Rコントローラにおいて前記したゲインを決定するスカ
ラ量b0 を図示の如くPID制御によるフィードバック
補正係数の前回値KLAF(k-1)で除算した値とし、S91
4に進んでSTRコントローラによるフィードバック補
正係数KSTR(k) を求める。
【0232】即ち、STRコントローラによるフィード
バック補正係数KSTR(k) は、本来的には前述の如く、数
36のように求めるが、S906で肯定されてS908
以降に進むとき、前回制御周期ではフィードバック補正
係数がPID制御に基づいて決定されている。そして、
図50の構成において、PID制御によりフィードバッ
ク補正係数が決定されているとき、STRコントローラ
は前述の如く、フィードバック補正係数KSTRを1として
停止している。言い換えれば、STRコントローラで用
いる適応パラメータ(ベクトル)θハット(k) は、KSTR
=1.0となる組み合わせとなっている。従って、フィ
ードバック補正係数KSTRを再びSTRコントローラで決
定するとき、KSTRの値が1から大きく外れると、制御量
が不安定になる。そこで、KSTRが1.0(初期値)ある
いは1.0近傍となるようにホールドされている適応パ
ラメータθハット(k) の中のゲインを決定するスカラ量
0 をPID制御によるフィードバック補正係数の前回
値で除算しておくと、例えば適応パラメータの組み合わ
せがKSTR=1.0となるようにされている場合、数37
に示すように、第1項が1となっていることから、第2
項KLAF(k-1) の値が今回の補正係数KSTR(k) となる。こ
れにより、S908,S910で検出値KACTを1ないし
その近傍の値としたことに加えて、PID制御からST
R制御への切り換えを一層滑らかに行うことができる。
【0233】
【数37】
【0234】尚、図52フロー・チャートの説明を補足
すると、S902で前回STR(コントローラ)作動領
域と判断されたときはS916に進んでSTRコントロ
ーラによるフィードバック補正係数の前回値KSTR(k-1)
を、I項の前回値KLAFI(k-1)とする。その結果、S90
4でKLAF(k) を演算するとき、そのI項であるKLAFI
は、 KLAFI(k)=KSTR(k-1) +DKAF(k) ×KI となり、求めたI項をP項とD項に加算してKLAF(k) を
求めることになる。
【0235】即ち、適応制御からPID制御に切り換え
られてフィードバック補正係数が演算されるときは積分
項が急激に変化する可能性があるが、このようにKSTRの
値を用いてPID制御補正係数の初期値を決定すること
により、補正係数KSTR(k-1)と補正係数KLAF(k) との差
を小さく止めることができ、それによってSTR制御か
らPID制御に切り換えるときも、フィードバック補正
係数の値の差を小さくして滑らかに連続させることがで
き、制御量の急変を防止することができる。
【0236】尚、図52フロー・チャートにおいて、S
900でSTR(コントローラ)作動領域と判断され、
S906でも前回PID作動領域ではないと判断された
ときは、S914に進んでSTRコントローラに基づい
てフィードバック補正係数KSTR(k) が演算されるが、そ
れは数36のように算出されることは先に述べた通りで
ある。
【0237】図51フロー・チャートに戻ると、次いで
S830に進み、図52フロー・チャートで求めた補正
係数がKSTRか否か確認し、肯定されるときS832に進
んで適応補正係数KSTRと1.0との差(1−KSTR(k) )
を求め、その絶対値を所定のスレッシュホールド値KSTR
ref と比較する。
【0238】即ち、フィードバック補正係数の変動が激
しいときは制御量も急変することになり、制御の安定性
が低下する。そこで、求めたフィードバック補正係数の
1.0との差の絶対値をスレッシュホールド値と比較
し、それを超えるときはS804に進み、PID制御に
基づいてフィードバック補正係数を決定し直すようにし
た。これによって、制御量が急変することがなく、安定
した制御を実現することができる。この場合フィードバ
ック補正係数の1.0との差の絶対値で比較したが、ス
レッシュホールド値KSTRref は図53に示すように、フ
ィードバック補正係数の1.0を境とする大小側で別々
に設定しても良い。尚、S832で求めたフィードバッ
ク補正係数KSTR(k) の絶対値がスレッシュホールド値を
超えないときは、S834に進んでSTRコントローラ
による値をフィードバック補正係数KFB とする。また、
S830で否定されるときはS836に進んでフラグFK
STRのビットを0にリセットし、S838に進んでPI
Dコントローラによる値をフィードバック補正係数の最
終値KFB とする。
【0239】図49フロー・チャートに戻ると、次いで
S718に進んで求めたフィードバック補正係数の最終
値KFB などを要求燃料噴射量Tcyl に乗算すると共に、
加算値TTOTALを加算して出力燃料噴射量Tout を決定す
る。次いでS720に進んで吸気管壁面付着補正を行い
(後述)、S722に進んで出力燃料噴射量Tout(n)を
操作量としてインジェクタ22に出力する。ここでnは
気筒を意味し、このように出力燃料噴射量Tout は最終
的には気筒ごとに決定する。
【0240】尚、S704でフューエルカットと判断さ
れたときは、S728に進んで出力燃料噴射量Tout を
零とする。またS708ないしS710で否定されたと
きは空燃比がオープンループ制御となるので、S722
に進んでフィードバック補正係数の最終値KFB の値を
1.0としS718に進んで出力燃料噴射量Tout を求
める。S704で肯定されるときもオープンループ制御
となり、出力燃料噴射量Tout は所定値とされる(S7
28)。
【0241】上記においてはフューエルカットから復帰
するときなどの空燃比のオープンループ制御が終了して
フィードバック制御が再開された場合、所定期間はPI
D制御則に基づいてフィードバック補正係数を決定する
ようにしたので、供給された燃料が燃焼するまでに時間
を要することから、ないしはセンサ自体が検出遅れを有
することから、検出された空燃比と実際の空燃比との間
に比較的大きい差があるとき、STRコントローラによ
るフィードバック補正係数を用いることがなく、結果と
して制御量(空燃比)を不安定にして、制御の安定性を
低下させることがない。
【0242】他方、その期間を所定の値としたので、検
出値が安定したときは、STRコントローラによるフィ
ードバック補正係数を用いて目標空燃比と検出空燃比と
の制御偏差を一気に吸収させるべく動作させ、制御の収
束性を向上させることができる。特に、実施の形態にお
いてはフィードバック補正係数が基本値に乗算されて操
作量が決定されるように制御の収束性が向上させられて
いるので、一層好適に制御の安定性と収束性とをバラン
スさせることができる。尚、LAFセンサ54が活性化
した直後も検出される空燃比が安定しないため、LAF
センサ54が活性化してから所定期間はPID制御則に
基づいてフィードバック補正係数を決定するようにして
も良い。
【0243】更に、目標空燃比の変動が大きいときは、
所定期間が経過してもPID制御に基づいてフィードバ
ック補正係数を決定するようにしたので、フューエルカ
ットに止まらず、全開増量などのオープンループ制御か
らの復帰などに際しても、制御の安定性と収束性とを最
適にバランスさせることができる。また、STRコント
ローラによるフィードバック補正係数が不安定になると
きは、PID制御則に基づいてフィードバック補正係数
を決定するようにしたので、一層最適に制御の安定性と
収束性とをバランスさせることができる。
【0244】特に、STR制御からPID制御に移行す
るとき、STRコントローラによるフィードバック補正
係数を用いてその要素の少なくとも一部、即ち、I項を
算出するようにしたので、その切り換えが滑らかにな
り、補正係数に段差が生じて操作量が急変して制御量が
発振するのを効果的に防止することができる。よって制
御の安定性が低下するのを効果的に防止することができ
る。
【0245】更に、PID制御からSTR制御に復帰す
る際、検出値KACTが1ないしその近傍にあるときを選ぶ
と共に、適応制御則(STRコントローラ)によるフィ
ードバック補正係数の最初の値がPID制御則によるフ
ィードバック補正係数とほぼ同一であるようにしたの
で、PID制御からSTR制御に切り換えるときも、そ
の切り換えを滑らかに行うことができる。それにより、
補正係数に段差が生じて操作量が急変して制御量が不安
定になるのを効果的に防止することができ、よって制御
の安定性が低下するのを効果的に防止することができ
る。
【0246】ここで、出力燃料噴射量Tout の吸気管壁
面付着補正を説明する。尚、前記の如く、吸気管壁面付
着補正は気筒ごとになされ、気筒番号n(n=1,2,
3,4)が付されて特定される。
【0247】付着パラメータの変化に即応するために、
壁面付着プラントの前に、それと逆の伝達関数を持つ壁
面付着補正補償器を直列に挿入する。この壁面付着補正
補償器の付着パラメータは、予め機関運転状態との対応
関係に基づいて決定したマップにより検索する。
【0248】もし壁面付着補正補償器の持つ付着パラメ
ータと実機の持つ真の付着パラメータとが等しければ、
両者は外から見ると伝達関数が1となり、即ちプラント
と補償器の伝達関数の積が1となり、目標気筒吸入燃料
量=気筒実吸入燃料量となるので、完全な補正が行われ
るはずである。
【0249】上記を前提として、図49フロー・チャー
トのS720の出力燃料噴射量Tout の壁面付着補正作
業について、図54に示すそのサブルーチン・フロー・
チャートを参照して説明する。尚、本ルーチンはTDC
信号に同期して行われ、全気筒分の出力燃料噴射量Tou
t (n) を求めるまで、気筒数分だけ実行される。また、
図中の(k-1) は先に述べたように当該気筒nに対する前
回の演算値を示すが、今回演算値について(k) の付記は
省略した。
【0250】先ずS1000において各種パラメータを
読み込み、S1002に進んで直接率Aと持ち去り率B
を求める。これは、図55にその特性を示すマップを機
関回転数Neと吸気圧力Pbとから検索することで行
う。尚、このマップは可変バルブタイミング機構のバル
ブタイミング特性に応じて別々に設定されており、現在
選択されているバルブタイミング特性に対応するマップ
を検索して行う。同時に図56にその特性を示すテーブ
ルを検出水温Twから検索して補正係数KATW,KBTW を求
め、マップ検索値に乗じて補正する。尚、図示はしない
が、同様のその他の補正係数KA,KB をEGRないしキャ
ニスタ・パージの実行の有無、および目標空燃比KCMDの
大きさに従って求める。具体的には以下の如くになる。 Ae=A×KATW×KA Be=B×KBTW×KB 補正後の直接率AをAe、持ち去り率BをBeとする。
【0251】続いてS1004に進んでフューエルカッ
トか否か判断し、否定されるときはS1006に進んで
図示の如く出力燃料噴射量Tout を補正し、気筒毎の出
力燃料噴射量Tout(n)-Fを求めると共に、肯定されると
きはS1008に進んで気筒毎の出力燃料噴射量Tout
(n)-Fを零とする。ここで、値TWP(n)は、吸気管付着燃
料量である。
【0252】図57は、吸気管付着燃料量TWP (n) を算
出するフロー・チャートであり、所定クランク角度で起
動される。
【0253】先ず、S1100で今回のプログラム起動
が燃料噴射量Tout の演算開始からいずれかの気筒の燃
料噴射終了までの期間(以下「噴射制御期間」という)
内にあるか否か判断し、肯定されるときはS1102に
進んで当該気筒の付着燃料量の演算の終了を示す第1の
フラグFCTWP (n) のビットを0に設定し、付着燃料量の
演算を許可してプログラムを終了する。S1100で否
定されたときS1104に進んで前記第1のフラグFCTW
P (n) のビットが1であるか否か判断し、肯定されると
きは当該気筒の付着燃料量の演算はすでに終了している
ので、S1106に進むと共に、否定されたときはS1
108に進んでフューエルカットか否かを判断する。
【0254】S1108で否定されたときはS1110
に進んで図示の如く吸気管付着燃料量TWP (n) を算出す
る。ここでTWP (k-1) はTWP (k) の前回値である。ま
た、右辺の第1項は、前回付着していた燃料のうち、今
回も持ち去られずに残った燃料量を意味し、右辺の第2
項は今回噴射された燃料のうち、新たに吸気管に付着し
た燃料量を意味する。続いてS1112に進んで付着燃
料量が零であることを示す第2のフラグFTWPR (n) のビ
ットを0に設定し、S1106に進んで第1のフラグFC
TWP (n) のビットを1に設定してプログラムを終了す
る。
【0255】S1108でフューエルカットと判断され
たときはS1114に進んで残存する付着燃料量が零で
あることを示す第2のフラグFTWPR (n) のビットが1で
あるか否か判断し、肯定されたときは付着燃料量が零
(TWP (n) =0)であるためS1106に進むと共に、
否定されたときはS1116に進んで図示の式から付着
燃料量TWP (n) を算出する。ここで、図示の式は、S1
110の式から右辺第2項を削除したものに相当する。
これは、フューエルカット中であり、新たに付着する燃
料はないからである。
【0256】続いてS1118に進み、TWP (n) 値が微
小所定値TWPLG より大きいか否か判断し、肯定されると
きはS1112に進むと共に、否定されるときは残存す
る付着燃料量が無視できる位少ないためS1120に進
んでTWP (n) =0 とし、S1122に進んで第2のフラ
グFTWPR (n) のビットを1に設定し、S1106に進
む。
【0257】このようにして、気筒別の吸気管付着燃料
量TWP (n) を精度よく算出することができ、算出された
TWP (n) 値を図54において燃料噴射量Tout の算出に
使用することにより、吸気管に付着する燃料量及び付着
した燃料から持ち去られる燃料量を考慮した適切な量の
燃料を各気筒の燃焼室に供給することができる。尚、上
記において機関の始動モード(斉時噴射およびシーケン
シャル噴射含む)においても、直接率A、持ち去り率B
および吸気管付着燃料量TWP の算出を始め、付着補正を
実行する。
【0258】この実施の形態は上記の如く、内燃機関の
燃料噴射量を制御する燃料噴射量制御手段と、前記内燃
機関の排気系に触媒装置(28)の上流に配置され、前
記内燃機関が排出する排気ガスの空燃比を検出する第1
の空燃比検出手段(LAFセンサ54)と、前記第1の
空燃比検出手段の検出した空燃比KACTが目標空燃比KCMD
に一致するように燃料噴射補正量を算出する燃料噴射補
正量算出手段と、および前記触媒装置の下流に配置さ
れ、前記触媒を通過する排気ガスの空燃比を検出する第
2の空燃比検出手段(O2 センサ56)と、を有する内
燃機関の燃料噴射制御装置において、前記燃料噴射補正
量算出手段は、前記第1の空燃比検出手段の検出した空
燃比が目標空燃比に一致するように燃料噴射補正量を算
出する適応制御器(STRコントローラ)と、前記適応
制御器に入力する適応パラメータを調整する適応パラメ
ータ調整機構と、および前記第2の空燃比検出手段の検
出する空燃比に応じて前記目標空燃比KCMDを補正する補
正手段と、を備える如く構成したので、内燃機関の経時
変化や固体バラツキに起因する空燃比の動的な挙動を適
応的に補償することができ、第2の空燃比検出手段の検
出する空燃比に基づいて決定される目標値に、瞬時に空
燃比を合致させることができる。
【0259】即ち、この実施の形態は、第1の空燃比検
出手段(LAFセンサ54)の検出した空燃比が目標空
燃比KCMDに一致するように燃料噴射量の補正係数KSTRを
算出する適応制御器(STRコントローラ)と、STR
コントローラに入力する適応パラメータを調整する適応
パラメータ調整機構とを備えると共に、第2の空燃比検
出手段(O2 センサ56)の検出する空燃比に応じて前
記目標空燃比KCMDを補正する補正手段を備える如く構成
したので、空燃比の挙動を動的に補償することができ、
空燃比を目標空燃比に瞬時に合致させることができる。
【0260】尚、図8において、LAFセンサ54の上
流に、想像線で示すブロック400において第3の触媒
装置94を配置しても良い。この第3の触媒装置94は
いわゆるライトオフキャタライザ(早期活性キャタライ
ザ)と呼ばれるものが望ましい。また第3の触媒装置9
4は、下流の触媒装置に比べて容量は十分に小さいもの
で良い。更に、下流の触媒装置と同様の三元触媒型でも
良く、あるいはEHC(エレクトリックヒーテッドキャ
タライザ)と称される電気的に加熱されて早期に活性化
されるものでも良い。この第3の触媒装置94は必要に
応じて設ければ良く、特にV型機関の各バンクごとに上
記のようなシステムを構成するときは相対的に排気ボリ
ュームが減少することから、触媒装置の昇温が遅い場合
には有効である。尚、この第3の触媒装置94を配置し
た場合には無駄時間などが相違してくることから、制御
量などが相違してくるのは言うまでもない。
【0261】尚、図8においてオブザーバの前に想像線
で示す如くフィルタ96を配置して良い。LAFセンサ
54には応答遅れが存在するために、オブザーバでは前
記した如く内部計算で対処しているが、図示の如く、1
次遅れ特性を補償するフィルタ(即ち、進みフィルタ)
96を配置してハードウェア的に対処しても良い。
【0262】更に、上記において留意されるべきこと
は、図8ブロック図に示す構成はこの発明にとって全て
が必須のものではないことである。例えば、基本燃料噴
射量は開示した手法以外で求めても良く、付着補正もこ
の発明にとって必須なものではない。
【0263】図58はこの出願に係る装置の第2の実施
の形態を示す図8と同様のブロック図である。
【0264】第2の実施の形態においては図示の如く、
第2の触媒装置30の下流に第2のO2 センサ98を配
置した。第2のO2 センサ98の検出出力は、図示の如
く、目標空燃比KCMDの補正に用いる。それによって、よ
り一層、目標空燃比KCMDを最適に設定することができ、
制御性が向上する。また、最終的に大気に排出される排
気ガス中の空燃比を検出することで、エミッション性能
が向上すると共に、第2のO2 センサより上流側の触媒
装置の劣化状態も監視することができる。尚、第2のO
2 センサ98は、第1のO2 センサ56の代用としても
良い。また、第2のO2 センサ98は、第1のO2 セン
サ56と同様に、多段に構成された第2の触媒装置内に
図5に示した如く取り付けても良い。
【0265】この場合、第2のO2 センサ98の次段に
は1000Hz程度の周波数特性を備えたローパスフィ
ルタ500を接続する。尚、第1のO2 センサ56のフ
ィルタ60および第2のO2 センサ98のフィルタ50
0は、そのリニアではない特性を補償するために、リニ
アライザなどのフィルタを用いても良い。
【0266】上記した第1、第2の実施の形態におい
て、スロットル弁16をパルスモータMを介して駆動す
る機構としたが、一般的に知られている機構と同様に、
アクセルペダルと機械的に連動するものであっても良
い。
【0267】また、排気還流機構について、応答性の電
動型の排気還流弁を用いたが、機関の負圧により作動す
るダイアフラムを用いた排気還流弁を使用しても良い。
【0268】また、第2の触媒装置30は、第1の触媒
装置28の浄化性能にもよるが、設けないことも可能で
ある。
【0269】また、ローパスフィルタを用いたが、同等
な性能が得られるバンドパスフィルタを用いても良い。
【0270】更に、上記した構成において、1個の空燃
比センサを用いて各気筒の空燃比を推定し、目標値に制
御する例を示したが、それに限られるものではなく、気
筒ごとに空燃比センサを設けて各気筒の空燃比を直接検
出しても良い。
【0271】尚、上記の実施の形態において空燃比を実
際には当量比で求めているが、これは空燃比そのものを
用いるのと全く同一である。
【0272】また、上記においてフィードバック補正係
数KSTRないしKLAFを乗算値として求めたが、加算値とし
て求めても良い。
【0273】また、上記において適応制御器としてST
Rを例にとって説明したが、MRACS(モデル規範型
適応制御)を用いても良い。
【0274】
【発明の効果】請求項1項の内燃機関の燃料噴射制御装
置においては、空燃比を挙動を動的に補償することがで
き、第2の空燃比検出手段の検出する空燃比に基づいて
決定される目標値に、瞬時に空燃比を合致させることが
できる。
【0275】請求項2項にあっては、触媒装置の下流に
配置する場合に比して、出力が反転する時間が短くなっ
て、検出精度、ひいては制御精度が向上する。
【0276】請求項3項にあっては、フィルタの周波数
特性を適宜選択することにより、ノイズを除去すること
ができ、検出精度が上がって制御性が向上する。
【0277】請求項4項にあっては、フィルタの周波数
特性を適宜選択することにより、応答時間を最適にする
ことができ、検出精度が上がって制御性が向上する。
【0278】請求項5項にあっては、フィルタの周波数
特性を最適になってノイズを確実に除去することができ
る、ないしは応答時間を最適にすることができ、検出精
度が上がって制御性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この出願に係る内燃機関の燃料噴射制御装置を
全体的に示す概略図である。
【図2】図1中の排気還流機構の詳細を示す説明図であ
る。
【図3】図1中のキャニスタ・パージ機構の詳細を示す
説明図である。
【図4】図1中の可変バルブタイミング機構のバルブタ
イミング特性を示す説明図である。
【図5】図1中の第1の触媒装置およびO2 センサの配
置構成を示す説明図である。
【図6】図1中の制御ユニットの詳細を示すブロック図
である。
【図7】図1中のO2 センサの出力を示す説明図であ
る。
【図8】この出願に係る内燃機関の燃料噴射制御装置の
動作を示す機能ブロック図である。
【図9】図8ブロック図の基本燃料噴射量TiM-Fの算出
作業を示すフロー・チャートである。
【図10】図9フロー・チャートの基本燃料噴射量TiM
-Fの算出作業を説明するブロック図である。
【図11】スロットル弁の有効開口面積を流量係数など
を用いて算出する手法を示すブロック図である。
【図12】図11の算出で用いる係数のマップ特性を示
す説明図である。
【図13】図9フロー・チャートおよび図10ブロック
図で使用する定常運転状態時の燃料噴射量Timapのマッ
プ特性を示す説明図である。
【図14】図9フロー・チャートおよび図10ブロック
図で使用する目標空燃比、より具体的にはその基本値の
マップ特性を示す説明図である。
【図15】図9フロー・チャートおよび図10ブロック
図の基本燃料噴射量TiM-Fの算出作業におけるスロット
ルの有効開口面積についてのシミュレーション結果を示
すデータ図である。
【図16】図9フロー・チャートおよび図10ブロック
図の基本燃料噴射量TiM-Fの算出作業における定常運転
状態と過渡運転状態とを示す説明図である。
【図17】図9フロー・チャートおよび図10ブロック
図の基本燃料噴射量TiM-Fの算出作業におけるスロット
ル開度とスロットルの有効開口面積との関係を示す説明
図である。
【図18】図9フロー・チャートの基本燃料噴射量TiM
-Fの算出作業の修正例を説明するブロック図である。
【図19】図8ブロック図のEGR補正係数の算出にお
ける排気還流率の推定作業を示すフロー・チャートであ
る。
【図20】排気還流率推定の基本アルゴリズムを示す説
明図で、図19フロー・チャートの演算に使用される排
気還流率のリフト量に対するガス量の特性を示す説明図
である。
【図21】排気還流弁のリフト指令値に対する実リフト
および還流ガスの遅れを示す説明図である。
【図22】図19フロー・チャートの演算に使用される
定常時の排気還流率補正係数(基本排気還流率補正係
数)のマップ特性を示す説明図である。
【図23】図19フロー・チャートの演算に使用される
リフト指令値のマップ特性を示す説明図である。
【図24】図19フロー・チャートの燃料噴射補正係数
の算出作業を示すサブルーチン・フロー・チャートであ
る。
【図25】図24フロー・チャートの作業で使用される
リングバッファの構成を示す説明図である。
【図26】図24フロー・チャートの作業で使用される
無駄時間τのマップ特性を示す説明図である。
【図27】図24フロー・チャートの作業を説明するタ
イミング・チャートである。
【図28】図8ブロック図のキャニスタ・パージ補正係
数の算出作業を示すフロー・チャートである。
【図29】図8ブロック図の目標空燃比および空燃比補
正係数の算出作業を示すフロー・チャートである。
【図30】図29フロー・チャートにおける補正係数KE
TCの特性を示す説明図である。
【図31】多気筒内燃機関のTDCと排気系集合部の空
燃比との関係を示す説明図である。
【図32】実際の空燃比に対するサンプルタイミングの
良否を示す説明図である。
【図33】図8ブロック図のSel-V ブロックでの検出空
燃比のサンプリング作業を示すフロー・チャートであ
る。
【図34】図8ブロック図のオブザーバの説明図の1つ
で、先の出願で述べたLAFセンサの検出動作をモデル
化した例を示すブロック図である。
【図35】図34に示すモデルを周期ΔTで離散化した
モデルである。
【図36】空燃比センサの検出挙動をモデル化した真の
空燃比推定器を示すブロック線図である。
【図37】内燃機関の排気系の挙動を示すモデルを表す
ブロック線図である。
【図38】図37に示すモデルを用いて4気筒内燃機関
について3気筒の空燃比を14.7に、1気筒の空燃比
を12.0にして燃料を供給する場合を示すデータ図で
ある。
【図39】図38に示す入力を与えたときの図37モデ
ルの集合部の空燃比を表すデータ図である。
【図40】図38に示す入力を与えたときの図37モデ
ルの集合部の空燃比をLAFセンサの応答遅れを考慮し
て表したデータと、同じ場合のLAFセンサ出力の実測
値を比較するデータ図である。
【図41】一般的なオブザーバの構成を示すブロック線
図である。
【図42】図8ブロック図に示したオブザーバで、先の
出願で用いるオブザーバの構成を示すブロック線図であ
る。
【図43】図37に示すモデルと図42に示すオブザー
バを組み合わせた構成を示す説明ブロック図である。
【図44】図8ブロック図での空燃比のフィードバック
制御を示すブロック図である。
【図45】図33フロー・チャートで使用するタイミン
グマップの特性を示す説明図である。
【図46】図45の特性を説明する、機関回転数および
機関負荷に対するセンサ出力特性を示す説明図である。
【図47】図33フロー・チャートでのサンプリング動
作を説明するタイミング・チャートである。
【図48】フューエルカットから燃料供給を再開したと
きの空燃比の検出遅れを示すタイミング・チャートであ
る。
【図49】図8ブロック図でのフィードバック補正係数
の演算作業を示すフロー・チャートである。
【図50】図49フロー・チャートの動作を機能的に示
すブロック図である。
【図51】図49フロー・チャートのフィードバック補
正係数のより具体的な演算作業を示すサブルーチン・フ
ロー・チャートである。
【図52】図51フロー・チャートのフィードバック補
正係数のより具体的な演算作業を示す同様のサブルーチ
ン・フロー・チャートである。
【図53】図51フロー・チャートの動作の一部を説明
するタイミング・チャートである。
【図54】図49フロー・チャートの出力燃料噴射量の
吸気管壁面付着補正のサブルーチン・フロー・チャート
である。
【図55】図54フロー・チャートの演算に使用する直
接率などのマップ特性を示す説明図である。
【図56】図54フロー・チャートの演算に使用する補
正係数のテーブル特性を示す説明図である。
【図57】図54フロー・チャートのTWP (n) の演算作
業を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【図58】この出願に係る内燃機関の燃料噴射制御装置
の別の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
10 内燃機関 12 吸気管 20 吸気マニホルド 22 インジェクタ 24 排気マニホルド 26 排気管 28 第1の触媒装置 30 第2の触媒装置 34 制御ユニット 54 広域空燃比センサ(LAFセンサ) 56 O2 センサ 92 フィルタ 93 フィルタ 94 第3の触媒装置 96 フィルタ 98 第2のO2 センサ 100 排気還流機構 200 キャニスタ・パージ機構 300 可変バルブタイミング機構 500 フィルタ
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 G05B 13/02 9131−3H G05B 13/02 Z (72)発明者 小森谷 勲 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会 社本田技術研究所内 (72)発明者 西村 要一 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会 社本田技術研究所内 (72)発明者 廣田 俊明 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会 社本田技術研究所内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】a.内燃機関の燃料噴射量を制御する燃料
    噴射量制御手段と、 b.前記内燃機関の排気系に触媒装置の上流に配置さ
    れ、前記内燃機関が排出する排気ガスの空燃比を検出す
    る第1の空燃比検出手段と、 c.前記第1の空燃比検出手段の検出した空燃比が目標
    空燃比に一致するように燃料噴射補正量を算出する燃料
    噴射補正量算出手段と、および d.前記触媒装置の下流に配置され、前記触媒を通過す
    る排気ガスの空燃比を検出する第2の空燃比検出手段
    と、を有する内燃機関の燃料噴射制御装置において、前
    記燃料噴射補正量算出手段は、 e.前記第1の空燃比検出手段の検出した空燃比が目標
    空燃比に一致するように燃料噴射補正量を算出する適応
    制御器と、 f.前記適応制御器に入力する適応パラメータを調整す
    る適応パラメータ調整機構と、および g.前記第2の空燃比検出手段の検出する空燃比に応じ
    て前記目標空燃比を補正する補正手段と、を備えたこと
    を特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
  2. 【請求項2】 前記触媒装置は多段の触媒床を有すると
    共に、前記第2の空燃比検出手段は前記多段に構成され
    た触媒床の間に配置されることを特徴とする請求項1項
    記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
  3. 【請求項3】 前記第1の空燃比検出手段にフィルタ手
    段を接続したことを特徴とする請求項1項または2項記
    載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
  4. 【請求項4】 前記第2の空燃比検出手段にフィルタ手
    段を接続したことを特徴とする請求項1項ないし3項の
    いずれかに記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
  5. 【請求項5】 前記フィルタ手段がローパスフィルタで
    あることを特徴とする請求項4項記載の内燃機関の燃料
    噴射制御装置。
JP35404695A 1994-12-30 1995-12-29 内燃機関の燃料噴射制御装置 Expired - Fee Related JP3217682B2 (ja)

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