JP3704324B2 - 内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は内燃機関の燃料噴射制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近時、内燃機関においても適応制御理論が導入され、気筒に実際に吸入される燃料量が目標燃料量に一致するよう適応的に制御する技術が提案されており、その例としては特開平1−110,853号の技術を挙げることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
また、本出願人も特願平6−66594号などにおいて適応制御を用いた内燃機関の燃料噴射制御を提案している。
【0004】
この発明の目的は、そのような適応制御を用いた内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために請求項1項にあっては、多気筒の内燃機関の排気する排気空燃比を含む運転状態を検出する運転状態検出手段と、前記検出された運転状態の中の少なくとも機関回転数と機関負荷に基づいて前記内燃機関に供給すべき基本燃料噴射量を決定する基本燃料噴射量決定手段と、前記検出された排気空燃比が目標空燃比に一致するように、適応制御器と前記適応制御器で用いる適応パラメータを前記検出された排気空燃比に基づいて調整する適応パラメータ調整機構を備え、前記適応パラメータ調整機構で調整された前記適応パラメータと、前記検出された排気空燃比と、および前記目標空燃比とを用いて前記適応制御器によりフィードバック補正係数を算出するフィードバック補正係数算出手段と、および前記決定された基本燃料噴射量を前記算出されたフィードバック補正係数で補正するフィードバック制御を実行して出力燃料噴射量を決定し、前記決定した出力燃料噴射量を前記内燃機関に供給して燃料噴射を制御する燃料噴射制御手段とを備えた内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記燃料噴射制御手段は、前記検出された運転状態が所定の運転状態にあるとき、前記フィードバック制御を中止する如く構成した。
【0006】
請求項2項にあっては、前記所定の運転状態が、高回転状態である如く構成した。
【0007】
請求項3項にあっては、前記所定の運転状態が、全開増量状態である如く構成した。
【0008】
請求項4項にあっては、前記所定の運転状態が、高水温状態である如く構成した。
【0010】
【作用】
後述する実施の形態の記載を敷衍して説明すると、請求項1項にあっては、多気筒の内燃機関の排気する排気空燃比KACTを含む運転状態を検出する運転状態検出手段(制御ユニット34、図6のS10,S22からS24)と、前記検出された運転状態の中の少なくとも機関回転数Neと機関負荷Pbに基づいて前記内燃機関に供給すべき基本燃料噴射量Timを決定する基本燃料噴射量決定手段(制御ユニット34、図6のS16)と、前記検出された排気空燃比が目標空燃比KCMDに一致するように、適応制御器と前記適応制御器で用いる適応パラメータを前記検出された排気空燃比に基づいて調整する適応パラメータ調整機構を備え、前記適応パラメータ調整機構で調整された前記適応パラメータと、前記検出された排気空燃比と、および前記目標空燃比とを用いて前記適応制御器によりフィードバック補正係数KSTRを算出するフィードバック補正係数算出手段(制御ユニット34、図6のS28)と、および前記決定された基本燃料噴射量を前記算出されたフィードバック補正係数で補正するフィードバック制御を実行して出力燃料噴射量Tout を決定し、前記決定した出力燃料噴射量を前記内燃機関に供給して燃料噴射を制御する燃料噴射制御手段(制御ユニット34、図6のS30からS36)とを備えた内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記燃料噴射制御手段は、前記検出された運転状態が所定の運転状態にあるとき、前記フィードバック制御を中止する(制御ユニット34、図6のS20,S38)如く構成した。即ち、フィードバック制御領域か否か判別し、高回転、全開増量、ないしは高水温などにより運転状態が変化したような所定の運転状態にあるときは、噴射量がオープンループ制御されるようにした。
【0011】
請求項2項にあっては、前記所定の運転状態が、高回転状態である如く構成した。即ち、フィードバック制御領域か否か判別し、高回転などにより運転状態が変化したような所定の運転状態にあるときは、噴射量がオープンループ制御されるようにした。
【0012】
請求項3項にあっては、前記所定の運転状態が、全開増量状態である如く構成した。即ち、フィードバック制御領域か否か判別し、全開増量などにより運転状態が変化したような所定の運転状態にあるときは、噴射量がオープンループ制御されるようにした。
【0013】
請求項4項にあっては、前記所定の運転状態が、高水温状態である如く構成した。即ち、フィードバック制御領域か否か判別し、高水温などにより運転状態が変化したような所定の運転状態にあるときは、噴射量がオープンループ制御されるようにした。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に即してこの発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1はこの出願に係る内燃機関の燃料噴射制御装置を概略的に示す全体図である。
【0017】
図において、符号10はOHC直列4気筒の内燃機関を示しており、吸気管12の先端に配置されたエアクリーナ14から導入された吸気は、スロットル弁16でその流量を調節されつつサージタンク18と吸気マニホルド20を経て、2個の吸気弁(図示せず)を介して第1から第4気筒へと流入される。各気筒の吸気弁(図示せず)の付近にはインジェクタ22が設けられて燃料を噴射する。噴射されて吸気と一体となった混合気は、各気筒内で図示しない点火プラグで第1、第3、第4、第2気筒の順で点火されて燃焼してピストン(図示せず)を駆動する。
【0018】
燃焼後の排気ガスは、2個の排気弁(図示せず)を介して排気マニホルド24に排出され、排気管26を経て触媒装置(三元触媒)28で浄化されて機関外に排出される。上記で、スロットル弁16はアクセルペダル(図示せず)とは機械的に切り離され、パルスモータMを介してアクセルペダルの踏み込み量および運転状態に応じた開度に制御される。また、吸気管12には、スロットル弁16の配置位置付近にそれをバイパスするバイパス路32が設けられる。
【0019】
ここで、内燃機関10には、排気ガスを吸気側に還流させる排気還流機構100が設けられる。
【0020】
図2を参照して説明すると、排気還流機構100の排気還流路121は、一端121aが排気管26の第1の触媒装置28(図2に図示省略)の上流側に、他端121bが吸気管12のスロットル弁16(図2で図示省略)の下流側に連通する。この排気還流路121の途中には、排気還流量を調節する排気還流弁(還流ガス制御弁)122および容積室121cが、設けられる。この排気還流弁122はソレノイド122aを有する電磁弁であり、ソレノイド122aは後述する制御ユニット(ECU)34に接続され、制御ユニット34からの出力によってその弁開度をリニアに変化させる。排気還流弁122には、その弁開度を検出するリフトセンサ123が設けられ、その出力は制御ユニット34に送出される。
【0021】
更に、内燃機関10の吸気系と燃料タンク36との間も接続され、キャニスタ・パージ機構200が設けられる。
【0022】
キャニスタ・パージ機構200は図3に示す如く、密閉された燃料タンク36の上部と吸気管12のスロットル弁16の下流側との間に構成された、蒸気供給通路221、吸着剤231を内蔵するキャニスタ223、及びパージ通路224からなる。蒸気供給通路221の途中には2ウェイバルブ222が装着され、パージ通路224の途中にはパージ制御弁225、パージ通路224を流れる燃料蒸気を含む混合気の流量を検出する流量計226、および該混合気中のHC濃度を検出するHC濃度センサ227が設けられる。パージ制御弁(電磁弁)225は後述の如く制御ユニット34に接続され、それからの信号に応じて制御されて開弁量をリニアに変化させる。
【0023】
このキャニスタ・パージ機構によれば、燃料タンク36内で発生した燃料蒸気(燃料ベーパ)は、所定の設定量に達すると2ウェイバルブ222の正圧バルブを押し開き、キャニスタ223に流入し、吸着剤231によって吸着され貯蔵される。制御ユニット34からのオンオフ制御信号のデューティ比に応じた開弁量だけパージ制御弁225が開弁されると、キャニスタ223に一時貯えられていた蒸発燃料は、吸入管12内の負圧により、外気取込口232から吸入された外気と共にパージ制御弁225を経て吸気管12へ吸引され、各気筒へ送られる。また外気などで燃料タンク36が冷却されて燃料タンク内の負圧が増すと、2ウェイバルブ222の負圧バルブが開弁し、キャニスタ223に一時貯えられていた蒸発燃料は燃料タンク36へ戻される。
【0024】
更に、内燃機関10は、いわゆる可変バルブタイミング機構300(図1にV/T と示す)を備える。可変バルブタイミング機構300は例えば、特開平2−275,043号公報に記載されており、機関回転数Neおよび吸気圧力Pbなどの運転状態に応じて機関のバルブタイミングV/T を図4に示す2種のタイミング特性LoV/T, HiV/Tの間で切り換える。但し、それ自体は公知な機構なので、説明は省略する。尚、このバルブタイミング特性の切り換えには、2個の吸気弁の一方を休止する動作を含む。
【0025】
図1において内燃機関10のディストリビュータ(図示せず)内にはピストン(図示せず)のクランク角度位置を検出するクランク角センサ40が設けられると共に、スロットル弁16の開度を検出するスロットル開度センサ42、スロットル弁16下流の吸気圧力Pb を絶対圧力で検出する絶対圧センサ44も設けられる。また、内燃機関10の適宜位置には大気圧Pa を検出する大気圧センサ46が設けられ、スロットル弁16の上流側には吸入空気の温度を検出する吸気温センサ48が設けられると共に、機関の適宜位置には機関冷却水温を検出する水温センサ50が設けられる。また、油圧を介して可変バルブタイミング機構300の選択するバルブタイミング特性を検出するバルブタイミング(V/T )センサ52(図1で図示省略)も設けられる。更に、排気系において、排気マニホルド24の下流側で触媒装置28の上流側の排気系集合部には、広域空燃比センサ54が設けられる。これらセンサ出力は、制御ユニット34に送られる。
【0026】
図5は制御ユニット34の詳細を示すブロック図である。広域空燃比センサ54の出力は検出回路62に入力され、そこで適宜な線型化処理が行われてリーンからリッチにわたる広い範囲において排気ガス中の酸素濃度に比例したリニアな特性からなる検出信号を出力する(以下、この広域空燃比センサを「LAFセンサ」と呼ぶ)。
【0027】
検出回路62の出力は、マルチプレクサ66およびA/D変換回路68を介してCPU内に入力される。CPUはCPUコア70、ROM72、RAM74を備え、検出回路62の出力はより詳しくは、所定のクランク角度(例えば15度)ごとにA/D変換され、RAM74内のバッファの1つに順次格納される。12個のバッファには後で図53に示すように、0から11までのNo.が付される。また、スロットル開度センサ42などのアナログセンサ出力も同様にマルチプレクサ66およびA/D変換回路68を介してCPU内に取り込まれ、RAM74に格納される。
【0028】
またクランク角センサ40の出力は波形整形回路76で波形整形された後、カウンタ78で出力値がカウントされ、カウント値はCPU内に入力される。CPUにおいてCPUコア70は、ROM72に格納された命令に従って後述の如く制御値を演算し、駆動回路82を介して各気筒のインジェクタ22を駆動する。更に、CPUコア70は、駆動回路84,86,88を介して電磁弁90(2次空気量を調節するバイパス路32の開閉)、および前記した排気還流制御用電磁弁122ならびにキャニスタ・パージ制御用電磁弁225を駆動する。尚、図5でリフトセンサ123、流量計226およびHC濃度センサ227の図示は省略した。
【0029】
図6は出願に係る制御装置の動作を示すフロー・チャートである。
【0030】
以下説明すると、先ずS10において検出した機関回転数Neおよび吸気圧力Pb などを読み出し、S12に進んでクランキングか否か判断し、否定されるときはS14に進んでフューエルカットか否か判断する。フューエルカットは、所定の運転状態、例えばスロットル弁開度が全閉位置にあり、かつ機関回転数が所定値以上であるときに行われ、燃料供給が停止されて噴射量はオープンループで制御される。
【0031】
S14でフューエルカットではないと判断されたときはS16に進み、検出した機関回転数Neと吸気圧力Pbとからマップを検索して基本燃料噴射量Timを算出する。次いでS18に進んでLAFセンサ54の活性化が完了したか否か判定する。これは例えば、LAFセンサ54の出力電圧とその中心電圧との差を所定値(例えば0.4V)と比較し、差が所定値より小さいとき活性化が完了したと判定することで行う。活性化が完了したと判断されるときはS20に進み、フィードバック制御領域か否か判断する。高回転、全開増量、ないしは高水温などにより運転状態が変化したようなときは、噴射量はオープンループ制御される。S20でフィードバック制御領域と判断されるときはS22に進み、LAFセンサ検出値を読み込み、S24に進んで検出値から検出空燃比KACT(k) (k:離散系におけるサンプリング時刻。以下同じ)を求める。次いでS26に進んでPID制御則によるフィードバック補正係数KLAF(k) を演算する。
【0032】
このPID制御則によるフィードバック補正係数KLAFは、以下の通り演算される。
【0033】
先ず、目標空燃比KCMDと検出空燃比KACTの制御偏差DKAFを
DKAF(k) =KCMD(k-d’) −KACT(k)
と求める。上記でKCMD(k-d’) :目標空燃比(ここでd’はKCMDがKACTに反映されるまでの無駄時間を示し、よって無駄時間制御周期前の目標空燃比を意味する)、KACT(k) :検出空燃比(今回制御周期の)を示す。尚、この明細書で空燃比は目標値KCMDも検出値KACTも実際は当量比、即ち、Mst/M=1/λで示している(Mst:理論空燃比、M=A/F(A:空気消費量、F:燃料消費量、λ:空気過剰率))。
【0034】
次いで、それに所定の係数を乗じてP項KLAFP(k)、I項KLAFI(k)、およびD項KLAFD(k)を
P項:KLAFP(k)=DKAF(k) ×KP
I項:KLAFI(k)=KLAFI(k-1)+DKAF(k) ×KI
D項:KLAFD(k)=(DKAF(k) −DKAF(k-1) )×KD
と求める。
【0035】
このようにP項は偏差に比例ゲインKPを乗じて求め、I項は偏差に積分ゲインKIを乗じて得た値をフィードバック補正係数の前回値KLAFI(k-1)に加算して求め、D項は偏差の今回値DKAF(k) と前回値DKAF(k-1) の差に微分ゲインKDを乗じて求める。尚、各ゲインKP,KI,KDは、機関回転数と機関負荷に応じて求められ、より具体的にはマップを用いて機関回転数Neと吸気圧力Pbとから検索できるように設定しておく。最後に、よって得た値を
KLAF(k) =KLAFP(k)+KLAFI(k)+KLAFD(k)
と合算してPID制御則によるフィードバック補正係数の今回値KLAF(k) とする。尚、この場合、乗算補正によるフィードバック補正係数とするため、オフセット分である1.0はI項KLAFI(k)に含まれているものとする(即ち、KLAFI(k)の初期値は1.0とする)。
【0036】
図6フロー・チャートにおいては続いてS28に進んで適応制御則によるフィードバック補正係数KSTR(k) を演算する。この適応制御則によるフィードバック補正係数KSTR(k) については後で詳しく説明する。
【0037】
続いてS30に進み、求めた基本燃料噴射量Timに目標空燃比補正係数KCMDM(k)およびその他の補正係数KTOTAL(水温補正など乗算で行う各種の補正係数の積算値)を乗算し、内燃機関が要求する要求燃料噴射量Tcyl(k)を決定する。この制御においては前述の通り目標空燃比を実際には当量比として求めていると共に、それを燃料噴射量の補正係数としても用いる。尚、詳しくは気化熱で吸入空気の充填効率が相違することから、目標空燃比に適宜な特性で充填効率補正を施して目標空燃比補正係数KCMDM とする。
【0038】
続いてS32に進んで要求燃料噴射量Tcyl(k)に、S26もしくはS28で求めたフィードバック補正係数KLAF(k) もしくはKSTR(k) のいずれかを乗算し、その積に加算項TTOTALを加算して出力燃料噴射量Tout(k)を決定する。ここで、加算項TTOTALは、気圧補正など加算値で行う補正係数の合計値を示す(但し、インジェクタの無効時間などは出力燃料噴射量Tout の出力時に別途加算されるので、これに含まれない)。
【0039】
続いてS34に進んで決定した出力燃料噴射量Tout(k)に機関冷却水温などから付着係数マップを検索して得られる付着係数を用いて付着補正を行い、出力燃料噴射量Tout(k)の吸気管壁面付着補正(付着補正後の値をTout-F (k) とする)を行う。尚、この吸気管壁面付着補正自体はこの発明の要旨と直接の関連を有しないので、説明は省略する。次いでS36に進んで付着補正した出力燃料噴射量Tout-F(k)を出力して終わる。
【0040】
尚、S18ないしS20で否定されたときはS38に進み、基本燃料噴射量Tim(k) に目標空燃比補正係数KCMDM(k)と各種補正係数KTOTALを乗じると共に、その積に補正加算項TTOTALを加算して出力燃料噴射量Tout を算出し、S34以降に進む。またS12でクランキングと判断されたときはS40に進んでクランキング時の燃料噴射量Ticr を検索し、S42に進んで始動モードの式によって出力燃料噴射量Tout を算出すると共に、S14でフューエルカットと判断されるときはS44に進んで出力燃料噴射量Tout を零とする。
【0041】
次に、図6フロー・チャートのS28で触れた適応制御則を用いたフィードバック補正係数KSTR(k) の演算について説明する。
【0042】
図7はその動作をより機能的に示すブロック図である。
【0043】
図示の装置は、本出願人が先に提案した適応制御技術を前提とする。それはSTR(セルフチューニングレギュレータ)コントローラからなる適応制御器とその適応(制御)パラメータ(ベクトル)を調整する適応(制御)パラメータ調整機構とからなり、STRコントローラは、燃料噴射量制御のフィードバック系の目標値と制御量(プラント出力)を入力し、適応パラメータ調整機構によって同定された係数ベクトルを受け取って出力を算出する。
【0044】
このような適応制御において、適応制御の調整則(機構)の一つに、I.D.ランダウらの提案したパラメータ調整則がある。この手法は、適応制御システムを線形ブロックと非線形ブロックとから構成される等価フィードバック系に変換し、非線形ブロックについては入出力に関するポポフの積分不等式が成立し、線形ブロックは強正実となるように調整則を決めることによって、適応制御システムの安定を保証する手法である。即ち、ランダウらの提案したパラメータ調整則においては、漸化式形式で表される調整則(適応則)が、上記したポポフの超安定論ないしはリヤプノフの直接法の少なくともいづれかを用いることでその安定性を保証している。
【0045】
この手法は、例えば「コンピュートロール」(コロナ社刊)No.27,28頁〜41頁、ないしは「自動制御ハンドブック」(オーム社刊)703頁〜707頁、" A Survey of Model Reference Adaptive Techniques - Theory and Ap-plication" I.D. LANDAU「Automatica」Vol. 10, pp. 353-379, 1974、"Unifi- cation of Discrete Time Explicit Model Reference Adaptive ControlDesigns" I.D.LANDAU ほか「Automatica」Vol. 17, No. 4, pp. 593-611, 1981 、および" Combining Model Reference Adaptive Controllers and Stochastic Self-tuning Regulators" I.D. LANDAU 「Automatica」Vol. 18, No. 1, pp. 77-84, 1982 に記載されているように、公知技術となっている。
【0046】
図示例の適応制御技術では、このランダウらの調整則を用いた。以下説明すると、ランダウらの調整則では、離散系の制御対象の伝達関数B(Z-1)/A(Z-1) の分母分子の多項式を数1および数2のようにおいたとき、パラメータ調整機構が同定する適応パラメータθハット(k) は、数3のようにベクトル(転置ベクトル)で示される。またパラメータ調整機構への入力ζ(k) は、数4のように定められる。ここでは、m=1、n=1、d=3の場合、即ち、1次系で3制御サイクル分の無駄時間を持つプラントを例にとった。
【0047】
【数1】
【0048】
【数2】
【0049】
【数3】
【0050】
【数4】
【0051】
ここで、数3に示される適応パラメータθハットは、ゲインを決定するスカラ量b0 ハット-1(k) 、操作量を用いて表現される制御要素BR ハット(Z-1, k)および制御量を用いて表現される制御要素S(Z -1, k)からなり、それぞれ数5から数7のように表される。
【0052】
【数5】
【0053】
【数6】
【0054】
【数7】
【0055】
パラメータ調整機構はこれらのスカラ量や制御要素の各係数を同定・推定し、前記した数3に示す適応パラメータθハットとして、STRコントローラに送る。パラメータ調整機構は、プラントの操作量u(i)および制御量y(j)(i,jは過去値を含む)を用いて目標値と制御量との偏差が零となるように適応パラメータθハットを算出する。適応パラメータθハットは、具体的には数8のように計算される。数8で、Γ(k) は適応パラメータの同定・推定速度を決定するゲイン行列(m+n+d次)、eアスタリスク(k) は同定・推定誤差を示す信号で、それぞれ数9および数10のような漸化式で表される。
【0056】
【数8】
【0057】
【数9】
【0058】
【数10】
【0059】
また数9中のλ1(k) ,λ2(k) の選び方により、種々の具体的なアルゴリズムが与えられる。例えば、λ1(k) =1,λ2(k) =λ(0<λ<2)とすると漸減ゲインアルゴリズム(λ=1の場合には最小自乗法)、λ1(k) =λ1(0<λ1<1),λ2(k) =λ2(0<λ2<λ)とすると可変ゲインアルゴリズム(λ2=1の場合には重み付き最小自乗法)、λ1(k) /λ2(k) =σとおき、λ3が数11のように表されるとき、λ1(k) =λ3とおくと固定トレースアルゴリズムとなる。また、λ1(k) =1,λ2(k) =0のとき固定ゲインアルゴリズムとなる。この場合は数9から明らかな如く、Γ(k) =Γ(k-1) となり、よってΓ(k) =Γの固定値となる。燃料噴射ないし空燃比などの時変プラントには、漸減ゲインアルゴリズム、可変ゲインアルゴリズム、固定ゲインアルゴリズム、および固定トレースアルゴリズムのいずれもが適している。
【0060】
【数11】
【0061】
ここで、図7にあっては、前記したSTRコントローラ(適応制御器)と適応パラメータ調整機構とは燃料噴射量演算系の外におかれ、検出空燃比KACT(k) が目標空燃比KCMD(k-d’) (ここでd’は前述の如くKCMDがKACTに反映されるまでの無駄時間)に適応的に一致するように動作してフィードバック補正係数KSTR(k) を演算する。即ち、STRコントローラは、適応パラメータ調整機構によって適応的に同定された係数ベクトルθハット(k) を受け取って目標空燃比KCMD(k-d’)に一致するようにフィードバック補償器を形成する。演算されたフィードバック補正係数KSTR(k) は要求燃料噴射量Tcyl(k)に乗算され、補正された燃料噴射量が出力燃料噴射量Tout(k)として付着補正補償器を介して制御プラント(内燃機関)に供給される。
【0062】
このように、フィードバック補正係数KSTR(k) および検出空燃比KACT(k) が求められて適応パラメータ調整機構に入力され、そこで適応パラメータθハット(k) が算出されてSTRコントローラに入力される。STRコントローラには入力として目標空燃比KCMD(k) が与えられ、検出空燃比KACT(k) が目標空燃比KCMD(k-d')に一致するように漸化式を用いてフィードバック補正係数KSTR(k) を算出する。
【0063】
フィードバック補正係数KSTR(k) は、具体的には数12に示すように求められる。
【0064】
【数12】
【0065】
他方、検出空燃比KACT(k) と目標空燃比KCMD(k) とは、図6フロー・チャートのS26で先に説明したPID制御則による制御器(図にPIDと示す)にも入力され、排気系集合部の検出空燃比と目標空燃比との偏差を解消すべくPID制御則に基づいて第2のフィードバック補正係数KLAF(k) が算出される。適応制御則によるフィードバック補正係数KSTRとPID制御則によるフィードバック補正係数KLAFは、図7の切換機構400を介していずれか一方が燃料噴射量の演算に用いられる。そして、後述の如く適応制御系(STRコントローラ)の動作が不安定と判別されたとき、もしくは適応制御系の適応領域外の場合、適応制御則に基づくフィードバック補正係数KSTR(k) に代えて、PID制御則によるフィードバック補正係数KLAF(k) が使用される。
【0066】
ところで、内燃機関の燃料噴射量を制御するとき、図57に示すように、噴射量を演算し、演算された燃料が気筒内で圧縮、爆発、排気されるまでにある程度の時間を要する。更に、排気ガスがLAFセンサに到達するまでの時間やセンサ自体の検出遅れ、更には検出値から実際に気筒に吸入された燃料量を演算するに要する時間までを考えると、この時間は更に大きくなる。このように内燃機関の燃料噴射量制御においては無駄時間が必然的に伴う。1気筒に注目して無駄時間を例えば前述の如く燃焼サイクルで3回分とすると、TDC数では内燃機関が4気筒のとき、図8に示す如く、12TDCとなる。尚、ここで" 燃焼サイクル" は、吸入、圧縮、爆発、排気からなる4行程で、この実施の形態の場合は4TDCに相当する。
【0067】
上記した適応制御器(STRコントローラ)において、適応パラメータθハット(k) の要素の数は、数3から明らかな通り、m+n+d個となって、無駄時間dに比例する。先の例の如く無駄時間を3とすると、刻々と変化する運転状態に対応すべく、STRコントローラと適応パラメータ調整機構をTDC同期で動作させるとき、適応パラメータθハット(k) の要素の数は、m=n=1とおいても、図8に示す如く、d=12(3燃焼サイクル×4TDC)となり、m+n+d=14となる。その結果、ゲイン行列Γの演算が14×14の行列演算となり、演算量が多くなって車載コンピュータの負荷が増加し、通例の車載コンピュータの性能では、機関回転数の上昇に伴い、1TDC内に演算を完了することが困難となると同時に、前述の通り、無駄時間の回数の増加は制御性の悪化を招く。
【0068】
そこで、図示に係る内燃機関の燃料噴射制御装置では、刻々と変化する運転状態に可能な限り対応できると共に、行列演算量を低減して車載コンピュータの負荷を軽減するようにした。具体的には、図9に示す如く、パラメータ調整機構には燃焼サイクル、より具体的には特定気筒(第1気筒など)の所定のクランク角度(TDCなど)のみに同期させて制御プラント出力を入力させ、前記した適応パラメータθハットを演算させる。
【0069】
ここで、適応パラメータθハットの演算は図9から明らかな如く、全気筒の所定のクランク角度(TDCなど)で行う。尚、STRコントローラが全気筒の所定のクランク角度(TDCなど)に同期して動作してフィードバック補正係数を算出することは図8に示した構成と異ならない。
【0070】
このように、例えば燃焼サイクル、即ち、特定の気筒の所定のクランク角度のみに同期させて動作させると、d=3となり、適応パラメータθハットの要素数はm+n+d=5となり、ゲイン行列Γの演算は14×14から5×5の行列演算に減少し、車載コンピュータの負荷が軽減して1TDC内で演算を処理することが可能となる。前述の如く、制御対象の無駄時間が大きいことは、少ない場合に比して一般的に制御性は悪化し、特に、適応制御においては顕著となるが、上記のように構成したことで無駄時間を大幅に低減させることができ、制御性を向上させることができる。
【0071】
上記は、具体的には、数1ないし数12の制御サイクルkを気筒毎にとることで、実現可能となる。より具体的には、4気筒の内燃機関の場合、数4を数13に、数8を数14に、数9を数15に、数10ないし数12を数16ないし数18のように変更すれば良い。
【0072】
【数13】
【0073】
【数14】
【0074】
【数15】
【0075】
【数16】
【0076】
【数17】
【0077】
【数18】
【0078】
これにより、図9に示す構成においても、図8に示す構成と同様に制御周期を全気筒のTDC毎にとる、即ち、全気筒のTDCに同期させて適応パラメータを演算しながら、演算で用いる行列、ベクトルの次数を減らすことが可能となる。もちろん、制御サイクルを気筒別にとり、数1ないし数12の制御サイクルkをK=気筒数×kとおくことで気筒別に内部変数を持つ構成にしても、同様に動作することは言うまでもない。尚、ここでのKは燃焼サイクル数を、kはTDCを示す。図10は図8の構成をSTRコントローラとパラメータ調整機構とに焦点をおいて書き直した図である。図10において、STRコントローラの作動周期m×TDCとパラメータ調整機構の作動周期n×TDCとをそれぞれm=n=1とすれば、図8と図9に示す構成となる。ここで、パラメータ調整機構の入力周期をTDCに同期させ、無駄時間をd=2とすれば、図8の構成となる。一方、パラメータ調整機構の入力周期を燃焼サイクルに同期させ、無駄時間をd=3とすれば、図9の構成となる。
【0079】
しかしながら、プラント出力を燃焼サイクルに同期させてパラメータ調整機構に入力して演算(動作)させることは、特定気筒の所定クランク角度に同期させて動作させることになるため、常にその特定気筒の排気ガス空燃比の影響を強く受けることになる。その結果、理論空燃比に制御するときなど、その特定気筒の排気ガス空燃比が例えばリーン方向にあり残余の気筒のそれがリッチ方向にあるとすると、適応制御器(STRコントローラ)は操作量をリッチ方向に調整して目標値に一致させるように動作してしまい、それによって残余の気筒の空燃比は更にリッチ傾向が高くなってしまう場合がある。
【0080】
その意図から、図示の装置では、後述の如く、プラント出力をパラメータ調整機構に燃焼サイクルに同期させて入力させて動作させることで適応パラメータの要素の数を減少させて行列演算量を軽減すると共に、特定気筒の排気ガス空燃比の影響を強く受けないようにした。これを実現させるためには、以下のように動作させる。
【0081】
パラメータ調整機構は燃焼サイクルに同期して動作、即ち、4気筒のうちの特定気筒の所定のクランク角度に同期して動作させることになるが、制御量y(k) を燃焼サイクル間の各気筒の所定クランク角度、例えばTDCごとに検出空燃比KACT(k) の平均値、例えば単純平均値、として求めてパラメータ調整機構に入力することで、その特定気筒の排気ガス空燃比に大きく影響されることがないようにした。
【0082】
更に、所定クランク角度ごとに、パラメータ調整機構が算出する適応パラメータθハットについても平均値を求めると共に、STRコントローラが算出するフィードバック補正係数KSTR(k) についても平均値を求めるようにし、それによって一層特定気筒の排気ガス空燃比に大きく影響されることがないようにした。
【0083】
図11はその演算作業を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【0084】
同図に従って説明すると、先ずS100で機関が所定の運転領域にあるか否か判断する。ここで、所定の運転領域とはアイドルを含む低回転領域とする。S100で所定の運転領域にないと判断されるときはS102に進み、図6のS24で当該気筒について算出された今回算出空燃比KACT(k) 、前回燃焼気筒についての前回算出空燃比KACT(k-1) 、前前回燃焼気筒についての前前回算出空燃比KACT(k-2) 、前前前回燃焼気筒についての前前前回算出空燃比KACT(k-3) の平均値KACTAVE を求め、それをプラント出力である制御量y(k) とする。即ち、制御周期を3回前まで遡り、当該気筒を含む4気筒について1燃焼サイクルの間に算出された空燃比の単純平均値を求め、制御量y(k) とする。この手法で、特定気筒の排気ガス空燃比の影響を低減することができる。
【0085】
続いてS104に進み、図7末尾に示すように、パラメータ調整機構で今求めた制御量y(k) などから数3に従って適応パラメータθハット(k) を算出し、STRコントローラに入力する。
【0086】
続いて、S106に進み、今回算出する適応パラメータθハット(k) を含めた3制御周期前までの算出値、即ち、1燃焼サイクル間のθハット(k) 、θハット(k-1) 、θハット(k-2) およびθハット(k-3) の平均値、例えば単純平均値AVE-θハット(k) を演算する。即ち、パラメータ調整機構の入力側ではなく、その出力側の適応パラメータθハット(k) について4気筒のそれに対応する4制御周期分(1燃焼サイクル)のθハットの平均値を求めてSTRコントローラに入力する。この手法を用いても、STRコントローラに対して4気筒のθハット(k) の平均値を入力しても特定気筒の排気ガス空燃比の影響を低減すると言う目的を達成することができる。尚、θハットは数3に示すようにベクトルとして求められるため、その平均値は、ベクトルの各要素s0,r1,r2,r3,b0の平均値を求めることで算出する。尚、いずれかの要素について平均値を求め、他の要素はそれに比例するように変化量を求め、それらからθハットの平均値を算出しても良い。S106では、その意味を含めてθハットの平均値を求める式を模式的に示した。
【0087】
続いてS108に進み、STRコントローラにおいて入力値に基づいて数12に従ってフィードバック補正係数KSTR(k) を算出し、次いでS110に進み、上で今回演算したフィードバック補正係数KSTR(k) を含む3制御周期前までの算出値、即ち、1燃焼サイクル間のKSTR(k),KSTR(k-1),KSTR(k-2) およびKSTR(k-3) の平均値、例えば単純平均値AVEKSTR(k)を演算する。即ち、パラメータ調整機構側ではなく、燃料演算系のフィードバック補正係数である制御入力KSTR(k) を出力するSTRコントローラについて4気筒のそれに対応する4制御周期分(1燃焼サイクル)のKSTRの平均値を求めても、特定気筒の排気ガス空燃比の影響を低減すると言う目的を達成することができるからである。
【0088】
他方、S100で所定の運転領域にあると判断されるときはS112に進んでy(k) の演算、即ち、当該気筒について図6のS24で求めた今回算出当量比KACT(k) をそのまま制御量(プラント出力)とする。そして、S114に進んで先のS104と同様に適応パラメータθハット(k) を算出し、S116に進んでS108と同様にフィードバック補正係数KSTR(k) を算出する。
【0089】
このように、全気筒の空燃比の平均値が求められ、制御量y(k) としてパラメータ調整機構に入力されるので、特定気筒(例えば第1気筒)の当量比、より具体的には排気ガス空燃比に大きく影響されることがない。更に、STRコントローラ出力についても最新値u(k) =KSTR(k) を含む4制御周期分の値が用いられて信号ベクトルζが求められ、パラメータ調整機構に入力されるので、特定気筒の排気ガス空燃比の影響は更に減少する。
【0090】
また、パラメータ調整機構の入力側ではなく、その出力側の適応パラメータθハット(k) について4気筒のそれに対応する4制御周期分(1燃焼サイクル)のθハットの平均値を求めてSTRコントローラに入力するようにしたので、その平滑化によっても、特定気筒の排気ガス空燃比の影響を低減すると言う目的を達成することができる。更に、パラメータ調整機構側ではなく、燃料演算系のフィードバック補正係数であるKSTR(k) を出力するSTRコントローラについても、4気筒のそれに対応する4制御周期分(1燃焼サイクル)のKSTRの平均値を求めるようにしたので、同様に特定気筒の排気ガス空燃比の影響を低減することができる。
【0091】
他方、S100で機関が所定の運転領域、具体的にはアイドルを含む低回転領域にあるか否か判断し、肯定されるときは平均値を算出しないようにしたので、不都合が生じることがない。即ち、低回転時は制御サイクルが長くなるため、LAFセンサの応答遅れが無視できるようになる。逆に、検出空燃比KACT(k) とその平均値KACTAVE の位相が図12のようにずれるため、制御系の無駄時間が変化したのと同じ現象が起きる。そのため、位相がずれているKACTAVE(k)を用いて適応制御を行うと、ハンチングなどの悪影響が起こる可能性がある。そのために、アイドル運転時など低回転状態にあってこの影響を受けるときは、平滑化を停止するようにした。
【0092】
尚、上記において、S106で算出する適応パラメータθハットの平均値AVE-θハット(k) は、数10に示す同定誤差信号eアスタリスクの算出には用いないこととする。即ち、同定誤差信号eアスタリスクは検出空燃比と目標空燃比との誤差の大きさを評価する関数なので、上記の如く求めたAVE-θハット(k) を数10の算出に用いると、誤差が不正確となる場合があるため、AVE-θハット(k) は数8の算出のみ用い、数10の算出には用いない運転領域を設けることが有益である。
【0093】
また、上記において、S102,S106,S110で空燃比、θハット(k) 、KSTR(k) の平均値を全て用いるようにしたが、いずれか1つ、もしくは適切な2つを用いても良いことは言うまでもない。また、機関始動時ないしはSTRコントローラの演算再開の平均値の演算において、過去値がないときは、適宜な所定値を用いることも言うまでもない。
【0094】
尚、適応パラメータθハット(k) やフィードバック補正係数KSTR(k) の平均値を求める場合には、それらの値をパラメータ調整機構に対して必ずしも入力させる必要がない。これは、適応パラメータθハット(k) の平均値を用いてSTRコントローラで算出されるフィードバック補正係数KSTR(k) は、特定気筒の排気ガス空燃比に大きく影響されない値に既になっているからである。同様に、STRコントローラで算出されるフィードバック補正係数KSTR(k) の平均値も、その値自体が特定気筒の排気ガス空燃比に大きく影響されない値になっているからである。
【0095】
図6フロー・チャートのS32で示したフィードバック補正係数の選択について説明する。
【0096】
図13はその作業を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【0097】
同図に従って説明すると、先ずS200で適応制御系の適用領域にあるか否か判断する。例えば、極低水温域などの燃焼不安定運転領域などでは、正確な算出空燃比KACT(k) が求まらないため適用領域外とし、その場合にはS210に進んでPID制御則によって求めたフィードバック補正係数KLAF(k) を使用して出力燃料噴射量Tout(k)を算出する。適用領域にあると判断されるときはS202に進んで適応パラメータθハットの各要素を用いて適応制御系の安定性を判別する。
【0098】
具体的には、STRコントローラが算出するフィードバック補正係数KSTR(k) の伝達特性は、数19のように表される。
【0099】
【数19】
【0100】
ここで、付着補正が正しく、燃料演算系の外乱が存在しない状態を仮定すると、KSTR(k) とKACT(k) の伝達特性は、数20のようになる。
【0101】
【数20】
【0102】
KCMD(k) から補正係数KSTR(k) の伝達関数は、数21のようになる。
【0103】
【数21】
【0104】
ここで、b0はゲインを決定するスカラ量であるため、0あるいは負となり得ないので、数21の伝達関数の分母関数f(z)=b0Z3 +r1Z2 +r2Z+r3+s0は、図14に示す関数のいずれかになる。そこで、実根が単位円内にあるか否かを判別する、即ち、図15に示すように、f(−1)<0ないしf(1)>0であるか否かを判別すれば、肯定されるときは実根が単位円内にあることになるので、それから系が安定しているか否かを容易に判定することができる。
【0105】
そこでS204に進んで上記から適応制御系が不安定か否か判断し、肯定されるときはS206に進んで適応パラメータベクトルθハットを初期値に戻す。これにより、系の安定を回復することができる。続いてS208に進んでゲイン行列Γを補正する。ゲイン行列Γはパラメータ調整機構の変化(収束)速度を決定するものであることから、この補正は収束速度を遅くするように行う。ここでは、ゲイン行列Γの各要素を小さい値に置換する。それによっても同様に系の安定を回復することができる。続いてS210に進み、図示の如く、適応制御系が不安定であることからフィードバック補正係数としてはPID制御則による補正係数KLAF(k) を用い、それを要求燃料噴射量Tcyl (k) に乗じると共に、その積に加算項TTOTALを加算して出力燃料噴射量Tout(k)を決定する。
【0106】
尚、S204で適応制御系が不安定ではないと判断されるときはS212に進んで、図示の如く、フィードバック補正係数として適応制御則による補正係数KSTR(k) を用いて出力燃料噴射量Tout(k)を算出する。このとき、図11フロー・チャートのS110でフィードバック補正係数KSTRの平均値が求められているときは、その平均値を使用することは言うまでもない。
【0107】
尚、図7ブロック図において、切換機構400の出力u(k) は、STRコントローラおよびパラメータ調整機構に入力される。これは、PID制御則によるフィードバック補正係数KLAFが選択されたときも適応制御則によるフィードバック補正係数KSTRの演算を可能にするためである。
【0108】
この実施の形態においては上記のように構成した結果、パラメータ調整機構は全気筒TDCごとに動作するにも関わらず、適応パラメータの要素の数が5となってΓ行列演算は5×5に減少して車載コンピュータの負荷が軽減し、通例の性能の車載コンピュータで1TDC間に演算を完了することが可能となる。他方、STRコントローラも全気筒TDCごとにフィードバック補正係数KSTRを算出すると共に、その変更を全気筒TDCごとに行うことで運転状態の変化に対して極力対応することができる。また、無駄時間の大幅な削減により、制御性を向上させることが可能となる。
【0109】
更に、パラメータ調整機構では気筒別に見ると、燃焼サイクルごとに作動する結果、特定気筒、例えば第1気筒の所定クランク角度で常に動作することになるが、当該燃焼サイクル間の残余の気筒群を含む全てについての検出空燃比(制御量)の平均値を求め、その平均値をパラメータ調整機構に入力する、ないしは適応パラメータθハットの平均値を求める、ないしはSTRコントローラの出力たるフィードバック補正係数KSTRの平均値を求めて使用するようにしたので、特定気筒の燃焼状態のみを強く反映する不都合がない。
【0110】
即ち、特定気筒についての制御量に基づいてフィードバック補正係数KSTRを求めるとすると、例えば第1気筒の空燃比がリッチで他の気筒のそれがリーンであるとき、フィードバック補正係数KSTRは空燃比をリーン方向に修正するべく決定され、他の気筒の空燃比のリーン化に拍車がかけられてしまうが、全気筒の平均値とする結果、そのような不都合が生じない。
【0111】
尚、更なる簡素化のためには、図16に示す如く、適応パラメータθハットも全気筒TDCごとではなく、特定気筒の燃焼サイクルに同期させて、即ち、4TDCに1度演算し、STRコントローラでその適応パラメータθハットとして気筒数回、同じ値を用いるように構成しても良い(図10においてm=1,n=4とした場合に相当)。
【0112】
この手法は、機関の回転数の上昇に伴う演算可能時間の減少時などに特に有効である。高回転時には各気筒ごとに必要とされる適応パラメータθハットのばらつきが少なくなるため、特定気筒の適応パラメータθハットを他の気筒を含む全気筒に用いても、制御性の悪化が少ないことから、制御性を悪化させることなく、演算時間を短縮することができる。
【0113】
更には、図17に示すように、STRコントローラも燃焼サイクルに同期させて4TDCに1度のみ動作させるようにすれば、構成を一層簡略にすることができる。制御精度は低下するが、この構成でもある程度の効果を挙げることができる(図10においてm=n=4とした場合に相当)。
【0114】
図18は、この出願に係る装置の第2の実施の形態を示すフロー・チャートであり、フィードバック補正係数KSTRの演算に用いるゲイン行列Γの設定に関する。
【0115】
フィードバック補正係数KSTRの演算には前述の数1ないし数12から明らかな如く、ゲイン行列Γ(k) を必要とする。第2の実施の形態は、数9においてλ1 =1,λ2 =0、即ち、固定ゲインアルゴリズムを用いた場合において、このゲイン行列Γ(k) の非対角要素を全て0にすることにより、演算時間の短縮とセッティングの容易化を図った。
【0116】
説明のために、一例として内部変数Γζ(k-d) の演算を行う場合を考える。ゲイン行列Γを5×5の行列とする第1の実施の形態の場合では、Γの演算は数22のように行われ、乗算が25回、加算が20回必要となる。
【0117】
【数22】
【0118】
これをゲイン行列Γの非対角要素を全て0とおくと、数23のように表すことができ、演算は乗算5回に短縮することができる。
【0119】
【数23】
【0120】
また、ゲイン行列Γの非対角要素を全て0にすることにより、適応パラメータθハット(k) の演算を行う場合、数24のようになる。
【0121】
【数24】
【0122】
その結果、行列要素g11, g22, g33, g44, g55は、適応パラメータθハット(k) の各要素の変化速度をζ(k) の1つのみの要素に対応した値で、独立してセッティングすることができる。もし、ゲイン行列Γの非対角要素が0でなければ、数22および数24から分かるように、適応パラメータθハット(k) の演算は数25の如くとなり、θハット(k) の1つの要素の変化速度を決定するのに、ζ(k-d) の全ての要素に対応した5つの変数を考慮する必要があり、セッティングに困難を伴う。ゲイン行列Γの非対角要素を全て0にすることにより、演算時間を短縮し、セッティングを容易にすることが可能となる。
【0123】
【数25】
【0124】
更に、発明者達がテストを行ったところ、Γ行列においてg11〜g55の5つのセッティング要素は、その幾つかを同じ値とすると、適応パラメータθハット(k) の各要素の変化速度の割合が適正となって、最も制御性が良くなることが判明した。例えば、g11=g22=g33=g44=gとおく場合である。このようにおくと、セッティング要素をgとg55の2つに低減することができ、セッティングのための工数を削減することができると共に、例えば内部変数のζT (k-d) Γζ(k-d) の演算は数26のようになり、乗算が12回となる。
【0125】
【数26】
【0126】
それに対し、g11〜g44がそれぞれ別々の値をとる場合には上記演算は数27のようになり、乗算が15回に増加する。
【0127】
【数27】
【0128】
以上から、g11〜g55のうち、幾つかを同じ値とすることで、セッティング要素の数を減少させることができ、演算時間を更に短縮することが可能となる。また、適応パラメータθハット(k) の各要素の変化速度の割合を適正にできるため、制御性も良好となる。このとき、g11=g22=g33=g44=g55とすると、その効果が最も表れることは言うまでもない。
【0129】
更に、例えば燃焼が不安定なため、プラント出力も不安定となる運転領域を例にとると、上記のg55を小さくすることにより、so(k) のハンチングなどを抑えることができる。このように、ゲイン行列Γの非対角要素を0にすることにより、制御特性のセッティングが容易となるメリットは大である。また、運転領域によってゲイン行列Γを持ち替えることにより、常に機関にとって最適な制御性を得ることが可能となる。
【0130】
その場合、g11〜g55は、運転状態に応じて制御ユニット34内のRAM74に記憶しておく。より具体的には、運転状態に加え、キャニスタ・パージ、排気還流などの機関の制御デバイスの動作状態に応じて記憶しておく。このとき、g11〜g55は全て同じ値でも、全て違う値でも、幾つか同じ値でも良い。尚、また、この場合、RAM74の容量ないしは演算時間に余裕があれば、ゲイン行列Γの非対角要素を用いても良い。
【0131】
上記を前提として、図18フロー・チャートに従ってこの出願に係る装置の第2の実施の形態を説明する。
【0132】
先ず、S300において機関回転数Ne、吸気圧力Pbなどの機関運転パラメータおよび前述の排気還流機構ないしキャニスタ・パージ機構の動作状態を読み込み、S302に進んでアイドル領域にあるか否か判断し、肯定されるときはS304に進んでアイドル用のΓマップを検索する。他方、S302でアイドル領域にはないと判断されるときはS306に進んで可変バルブタイミング機構がHiバルブタイミング特性で運転されているか否か判断し、肯定されるときはS308に進んでHiバルブタイミング用のΓマップを検索すると共に、否定されるときはS310に進んでLoバルブタイミング用のΓマップを検索する。
【0133】
図19にLoバルブタイミング用のΓマップの特性を図示する。このマップは図示の如く、機関回転数Neと吸気圧力Pbとから行列要素g11〜g55を検索する。尚、アイドル用およびHiバルブタイミング用のΓマップも同様の特性を備える。また、このマップは、機関負荷を示す吸気圧力Pbによりゲイン行列Γの値を検索しているため、機関負荷の急変動時である減速運転状態などにおいても、最適なゲイン行列の値を得ることができる。
【0134】
続いてS312に進んでEGR(排気還流機構)が動作しているか否か判断し、肯定されるときはS314に進んで排気還流率に対する燃料補正係数KEGRN に応じてゲイン行列Γを修正する。より具体的には排気還流率に対する燃料補正係数KEGRN から図20にその特性を示すテーブルを検索して補正係数 KΓEGR を求め、求めた補正係数 KΓEGR をゲイン行列Γに乗算して補正する。排気還流率に対する燃料補正係数KEGRN に応じてゲイン行列を修正する理由は、補正係数 KΓEGR は図示の如く、排気還流量が増加するに従い排気還流率に対する燃料補正係数KEGRN が減少するのに従って外乱が大きくなることから、適応制御系の安定性が高まるように、排気還流率に対する燃料補正係数KEGRN が減少するにつれてゲイン行列Γを小さくするように設定される。
【0135】
尚、この排気還流率KEGRN は燃料噴射量を乗算補正する係数であって、例えば0.9などと決定される。しかし、この発明の要旨は排気還流率の決定自体にはなく、また排気還流率の決定は例えば本出願人が先に提案した特願平6−294,014号に述べられているので、説明は省略する。
【0136】
続いてS316に進み、キャニスタ・パージ機構が動作しているか否か判断し、肯定されるときはS318に進んでパージ質量に応じてゲイン行列Γを修正する。より具体的にはパージ質量KPUGから図21にその特性を示すテーブルを検索して補正係数 KΓPUG を求め、求めた補正係数 KΓPUG をゲイン行列Γに乗算して補正する。補正係数 KΓPUG は図示の如く、パージ質量KPUGが増加するに従って外乱が大きくなることから、パージ質量KPUGが増加するにつれて大きくなるように設定される。尚、パージ質量についても例えば本出願人が先に提案した特開平6−101,522号に述べられているので、説明は省略する。
【0137】
続いてS320に進んで検出した大気圧Paに応じてゲイン行列Γを修正する。より具体的には検出した大気圧Paから図22にその特性を示すテーブルを検索して補正係数 KΓPaを求め、求めた補正係数 KΓPaをゲイン行列Γに乗算して補正する。検出した大気圧Paに応じてゲイン行列Γを修正する理由は、検出した大気圧Paが減少する、即ち、機関が位置する高度が増加するにつれて充填効率が低下することから、常圧でセッティングされたデータに対して外乱を生じるため、適応制御系の安定性が高まるように、検出した大気圧Paが減少するにつれてゲイン行列Γを小さくするように設定される。
【0138】
続いてS322に進んで検出した水温Twに応じてゲイン行列Γを修正する。より具体的には検出した水温Twから図23にその特性を示すテーブルを検索して補正係数 KΓTwを求め、求めた補正係数 KΓTWをゲイン行列Γに乗算して補正する。検出した水温Twに応じてゲイン行列Γを修正する理由は、補正係数 KΓTWは図示の如く、検出した水温Twが低水温または高水温にあるときは燃焼が不安定となることから、常温でセッティングされたデータに対して外乱を生じるため、適応制御系の安定性が高まるように、低水温または高水温にあるときはゲイン行列Γを小さくするように設定される。
【0139】
第2の実施の形態は上記の如く、適応パラメータθハットの変化(収束)速度を決定するゲイン行列を運転状態に応じて適正に決定するようにしたので、安定した適応パラメータの変化速度を得ることができ、制御性が向上する。
【0140】
尚、第2の実施の形態はゲイン行列Γを固定ゲインで決定するものであるが、可変ゲインアルゴリズムを用いることも可能であり、その際にはゲイン行列Γの各要素の初期値を上記のように運転状態で修正し、運転状態が変化したときに所定値としても良い。
【0141】
更に、第2の実施の形態においては、固定ゲインアルゴリズムで説明したが、ゲイン行列Γ(k) の演算を数9に示した可変ゲインアルゴリズムなどの固定ゲインアルゴリズム以外の演算則に基づいて行う場合、ゲイン行列Γ(k) の非対角要素の演算を行わず、0と固定することにより、上記第2の実施の形態で示した演算量の低減とセッティングの容易化を実現することが可能なことは、言うまでもない。
【0142】
図24はこの出願に係る装置の第3の実施の形態を示すフロー・チャートである。
【0143】
第1の実施の形態および第2の実施の形態においてはゲイン行列Γを固定ゲインで演算したが、第3の実施の形態は固定ゲイン以外のアルゴリズムを用いて演算し、そのときの適応パラメータを用いた制御結果(プラント出力、より具体的には検出空燃比KACT)が良好な挙動を示したとき、演算値を機関の運転状態に応じて記憶しておけば、再びその領域でゲイン行列Γ(k) を演算する必要がなくなると同時に、その領域で最適なゲイン行列Γ(k) を常に用いることができるようになり、制御性が向上する。このとき格納するΓ(k) は、4TDC間の平均値などの加工値を用いても良い。尚、固定ゲインアルゴリズムから、ゲイン行列Γを演算する場合は、プラント出力の挙動が良好ではないと判断された場合となる。そのときのゲイン行列Γ(k-1) は運転領域ごとに格納された初期値として始める。
【0144】
上記を前提に図24を参照して説明する。これは第3の実施の形態のフロー・チャートの図18のS308,S310もしくはS304などのゲイン行列Γのマップ検索時に行う作業である。
【0145】
以下説明すると、S400で機関回転数Neと吸気圧力Pbとから第2の実施の形態で示したと同様のゲイン行列Γのマップを検索し、S402に進んでプラント出力たる検出空燃比KACTの挙動が良好か否かを適宜な手法で判断し、否定されるときはS404に進んでゲイン行列Γ(k) を演算し、S406に進んで検索したマップの所定領域に格納する。尚、S402で肯定されるときは直ちにS406に進む。S402における検出空燃比KACTの挙動の良否の判断は、例えば10TDC間の検出空燃比KACTが目標空燃比KCMD±所定値以内に入っていれば良好と判断することで行う。
【0146】
第3の実施の形態は上記の如く構成したので、検出空燃比KACTの挙動が良好な場合は、ゲイン行列Γ(k) の演算を数9に示した演算式を用いずに、単なるマップ検索によって行うことができるため、演算量を低減することができる。更に、検出空燃比KACTの挙動が良好ではない場合に、最適なゲイン行列Γ(k) を演算し直し、内燃機関の運転領域ごとに学習することにより、内燃機関の経時劣化などにも対応することができ、常に検出当量比KACT(k) の挙動が良好となるようにすることができるため、制御性を向上させることができる。
【0147】
図25はこの出願に係る装置の第4の実施の形態を示すフロー・チャートである。
【0148】
第4の実施の形態においては、適応制御系が不安定にならないように、検出空燃比KACTの特性に不感帯を設けた。即ち、STRコントローラは検出空燃比KACTが目標空燃比KCMDに一致するように動作するため、STRコントローラに入力する検出空燃比KACTが目標空燃比KCMDに一致していれば、適応パラメータはほとんど変化しない。そこで、検出空燃比KACTがセンサノイズなどの微小な外乱から微小に変動するとき、それによって適応制御系がその微小な外乱などに影響されて不要な過補正を行うことがないように、図26に示す如く、検出空燃比KACTの特性に、目標空燃比KCMDの付近に不感帯を設けた。詳しくはKCMD−βからKCMD+αの範囲においては検出空燃比KACTの値が同一である如くした。
【0149】
図25フロー・チャートを参照して説明すると、S500で検出空燃比KACTを下限の所定値KCMD−βと比較し、それ以上と判断されるときはS502に進んで検出空燃比KACTを上限の所定値KCMD+αと比較する。S502で検出空燃比が所定値KCMD+α以下と判断されるときはS504に進んで検出空燃比KACTを所定の値、例えば目標空燃比KCMDとする。尚、S500で検出空燃比KACTが下限の所定値KCMD−βを下回ると判断されるとき、ないしはS502で検出空燃比KACTが上限の所定値KCMD+αを上回ると判断されるときは、直ちにプログラムを終了する。従って、その場合は検出値をそのまま検出空燃比KACTとすることになる。以上の処理により、図26に示す如く、検出空燃比KACTの特性に、目標空燃比KCMDの付近で不感帯を設けることができる。
【0150】
第4の実施の形態は上記の如く構成したので、例えば検出空燃比KACTが微小に変動するときも、STRコントローラはその影響を受けることなく、安定に動作することができ、よって良好な制御結果を得ることができる。尚、S502において目標空燃比KCMDを検出空燃比としたが、それ以外のKCMD−βからKCMD+αの範囲の適宜な値としても良い。
【0151】
図27はこの出願に係る装置の第5の実施の形態を示すフロー・チャートである。
【0152】
第5の実施の形態は第4の実施の形態と同様に適応制御系の不安定化を防止するものであり、同定誤差信号eアスタリスクに上下限リミッタを設けて安定した適応パラメータを得るようにした。
【0153】
即ち、数8から明らかな如く、同定誤差信号eアスタリスクの値をある一定以内の範囲に制限することで、適応パラメータθハットの変化速度を制限することができる。それによって、適応パラメータθハット(k) の最適値に対するオーバーシュートを防止することができ、結果的に適応制御系を安定に動作させて、良好な制御結果を得ることができるからである。
【0154】
図27フロー・チャートに従って説明すると、先ずS600で算出した同定誤差信号eアスタリスク(k) を上限値a(図28に示す)と比較し、それを超えていると判断されるときはS602に進んで所定値、例えば上限値aを同定誤差信号eアスタリスク(k) とする。他方、S600で同定誤差信号eアスタリスク(k) が上限値a以下と判断されるときはS604に進んで算出した同定誤差信号eアスタリスク(k) を下限値b(図28に示す)と比較し、それ未満と判断されるときはS606に進んで第2の所定値、例えば下限値bを同定誤差信号eアスタリスク(k) とする。尚、S604で同定誤差信号eアスタリスク(k) が下限値b以上と判断されるときは、直ちにプログラムを終了する。従って、その場合は同定誤差信号eアスタリスク(k) は算出値のままとする。
【0155】
第5の実施の形態は上記の如く構成したので、同定誤差信号eアスタリスク(k) の値をある一定以内の範囲に制限することで、適応パラメータθハット(k) の変化速度を制限することができる。それによって、適応パラメータθハット(k) の最適値に対するオーバーシュートを防止することができ、適応制御系を安定に動作させて、良好な制御結果を得ることができる。
【0156】
尚、S602ないしS606において同定誤差信号eアスタリスク(k) の値を上下限値としたが、上下限値の間の適宜な値としても良く、あるいは上下限値付近の適宜な値としても良い。
【0157】
図29はこの出願に係る装置の第6の実施の形態を示すフロー・チャートである。
【0158】
第6の実施の形態では、第1の実施の形態に示したSTRコントローラにおいて、適応パラメータθハットを決定する同定誤差信号eアスタリスクの、数10の算出式の分母に用いる定数1を可変とすることで、その変化速度を安定させ、制御性を向上させるようにした。
【0159】
この第6の実施の形態は、パラメータ調整機構で演算に用いる中間変数の変化範囲を制限して図示の如き適応制御を低レベルの車載マイクロコンピュータで実現させる技術を前提とする。それについては本出願人が先に提案した特開平6−161,511号公報に記載されているので、説明は省略する。
【0160】
即ち、理論式ではこの同定誤差信号eアスタリスク(k) は、数10のように算出される。今、ζ(k) およびy(k) に1/10(以下jとする)を乗算してパラメータ調整機構に入力するとし、その分母に注目すると、数28のようになる(ゲイン行列Γ(k-1) は固定ゲインの場合、一定となる)。
【0161】
【数28】
【0162】
ここで、右項はζ(k) ,y(k) に乗算する係数の自乗となり、この係数が1以下の小さい値の場合(例の場合は1/102 =1/100)、左項=1に比べて極端に小さくなってしまう。このため、右項がどのように変化しても同定誤差信号eアスタリスク(k) の分母は1に近い値となり、係数を乗算する前と同定誤差信号eアスタリスク(k) の変化速度が変わってしまう。この問題を解決するために、左項を1以外の値にすれば良い。目安としては、上記の係数をjとすると、j2 とおけば、係数jを乗算する前と同じ変化速度とすることができる。
【0163】
逆に、同定誤差信号eアスタリスク(k) の変化速度は適応パラメータθハット(k) の変化(収束)速度に比例するため、即ち、θ(k) は数8を用いて算出されるため、j2 以外の値を持たせることにより、適応パラメータθハット(k) の変化速度を変更することができる。よって、数29に示す同定誤差信号eアスタリスク(k) の分母の演算式において、式中のiが1以外の値をとる、即ち、i≠1の値をとるようにした。
【0164】
【数29】
【0165】
図29フロー・チャートを参照して説明すると、先ずS700で同定誤差信号eアスタリスク(k) による適応パラメータθハット(k) の変化(収束)速度を可変とする動作を行うか否か判断し、肯定されるときはS702に進んでiを1以外の値、より具体的には検出した機関回転数Neと吸気圧力Pbとから図30にその特性を示すマップを検索してiを求める。他方、S700で否定されるときはS704に進んでiをj2 とおいて、係数jを乗算する前と同じ変化速度とする。尚、jは定数なので、図30に示すマップ特性において、iの値はj2 を考慮した値、例えばi=j2 ×0.5ないしi=j2 ×2などと設定する。
【0166】
具体的には、jは通常1より小さい値に設定するが、例えばj=1/10とすると、S700で否定される場合にはi=j2 =1/100となる。よって、S700で肯定される場合でも、i=1/100を中心に、例えば1/50〜1/200の間となるように図30においてiマップ値を設定する。このとき、iが小さい(例えば1/200)ほど、適応パラメータθハット(k) の変化(収束)速度は大きくなり、iが大きい(例えば1/50)ほど、適応パラメータθハット(k) の変化(収束)速度は小さくなる。従って、図30においてiマップ値は、より具体的には、高回転で高負荷状態では大きく(例えば1/50)、低回転で低負荷では小さく(例えば1/200)なるように設定する。
【0167】
第6の実施の形態は上記の如く構成したので、適応パラメータθハットを決定する同定誤差信号eアスタリスクの定数を可変にすることで、入力に対する係数との調和がとれて適応パラメータθハットの変化速度が安定し、良好な制御性を達成することができる。
【0168】
尚、第6の実施の形態においては第1の実施の形態で用いたSTRコントローラを例にとったが、適応制御器は第1の実施の形態に図示のものに限られるのではなく、ランダウらの調整則に基づいて動作するものであれば、MRACS型の適応制御器も含めて全て妥当する。
【0169】
図31フロー・チャートはこの出願に係る装置の第7の実施の形態を示すフロー・チャートである。
【0170】
第7の実施の形態においては、第1の実施の形態に示したパラメータ調整機構とSTRコントローラの制御サイクルについて、それらの制御サイクルを可変とすると共に、運転状態、具体的には機関回転数に応じて制御サイクルを決定するようにした。即ち、適応制御器のパラメータ調整機構もしくはコントローラの制御周期を運転状態に応じて可変にすることで、演算負荷を可能な限り低減して高回転時など演算時間が少ない運転状態においても適応制御を行うことを可能とし、良好な制御性を実現するようにした。
【0171】
図31フロー・チャートを参照して説明すると、先ずS800で検出した機関回転数Neを所定値Nep1 と比較し、検出した機関回転数Neが所定値Nep1 未満と判断されるときはS802に進んで検出した機関回転数Neを別の所定値Nec1 と比較する。そしてS802で検出した機関回転数Neが別の所定値Nec1 未満と判断されるときはS804に進んでパラメータ調整機構(図31でPと略称)とSTRコントローラ(図31でCと略称)の制御周期はTDCごととする。
【0172】
図32は図31フロー・チャートの動作の説明図であり、図示の如く所定値Nep1,Nec1 が比較的低い回転域にあるときは演算時間に余裕があることから、制御精度を優先させてパラメータ調整機構とSTRコントローラとも、図8および図9に示す如く、全TDCごとに動作させる。
【0173】
図31においてS802で検出した機関回転数Neが所定値Nec1 を超えると判断されるときはS806に進んで検出した機関回転数Neを所定値Nec2 と比較し、それ未満と判断されるときはS808に進んでパラメータ調整機構はTDCごとに、STRコントローラは2TDCごとに動作させる。他方、S806で検出した機関回転数Neが所定値Nec2 以上と判断されるときはS810に進んでパラメータ調整機構はTDCごとに、STRコントローラは4TDCごとに動作させる。
【0174】
また、S800で検出した機関回転数Neを所定値Nep1 以上と判断されるときはS812に進んで検出した機関回転数Neを所定値Nep2 と比較し、それ未満と判断されるときはS814に進んで検出した機関回転数Neを所定値Nec3 と比較し、そこで検出した機関回転数Neが所定値Nec3 未満と判断されるときはS816に進んでパラメータ調整機構は2TDCごとに、STRコントローラはTDCごとに動作させる。
【0175】
他方、S814で検出した機関回転数Neが所定値Nec3 以上と判断されるときはS818に進んで検出した機関回転数Neを所定値Nec4 と比較し、それ未満と判断されるときはS820に進んでパラメータ調整機構もSTRコントローラは2TDCごとに動作させる。また、S818で検出した機関回転数Neが所定値Nec4 以上と判断されるときはS822に進んでパラメータ調整機構は2TDCごとに、STRコントローラは4TDCごとに動作させる。
【0176】
更に、S812で検出した機関回転数Neが所定値Nep2 以上と判断されるときはS824に進んで検出した機関回転数Neを所定値Nep3 と比較し、それ未満と判断されるときはS826に進んで検出した機関回転数Neを所定値Nec5 と比較し、そこで検出した機関回転数Neが所定値Nec5 未満と判断されるときはS828に進んでパラメータ調整機構は4TDCごとに、コントローラはTDCごとに動作させる(図16に示す)。
【0177】
他方、S826で検出した機関回転数Neが所定値Nec5 以上と判断されるときはS830に進んで検出した機関回転数Neを所定値Nec6 と比較し、それ未満と判断されるときはS832に進んでパラメータ調整機構は4TDCごとに、STRコントローラは2TDCごとに動作させると共に、S830で検出した機関回転数Neが所定値Nec6 以上と判断されるときはS834に進んでパラメータ調整機構もSTRコントローラも4TDCごとに動作させる(図17に示す)。尚、S824で検出した機関回転数Neが所定値Nep3 以上と判断されるときはS836に進んで適応制御器STRを停止させる。
【0178】
第7の実施の形態は上記の如く、機関回転数に応じて適応制御器のパラメータ調整機構とSTRコントローラの制御サイクルを決定するようにしたので、演算負荷を可能な限り低減して高回転時など演算時間が少ない運転状態においても適応制御を行うことを可能とし、良好な制御性を実現することができる。
【0179】
尚、上記で、図32に示す適応制御器STRの作動状態は1〜10(図では丸付き数字で示す)の全て備える必要はなく、機関や制御ユニット構成のCPUの能力に応じて適宜選択しても良い。例えば、1,3,5,9,10、ないし1,3,6,9,10、ないし1,7,9,10、ないし1,10、ないし1,4,7,10などと選択しても良い。
【0180】
更に、運転状態として機関回転数を使用したが、それに限られるものではなく、機関負荷も加味して決定しても良い。その場合は、例えば高負荷状態においては適応パラメータθハットの変化が少ないため、パラメータ調整機構を4TDCごとに処理することも考えられよう。
【0181】
図33はこの出願に係る装置の第8の実施の形態を示す、図11と同様のフィードバック補正係数KSTRなどの平均値の演算作業を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【0182】
第1の実施の形態の場合には特定気筒の排気空燃比の影響を避けるために、原則的にフィードバック補正係数KSTRを決定する要素について平均値を求めるようにすると共に、所定の運転状態、即ち、アイドル状態では平均値の算出を中止するようにした。
【0183】
第8の実施の形態は第1の実施の形態と対照的に、原則的に平均値を算出しないと共に、所定の運転状態、具体的には排気還流(EGR)実行時のみ、平均値を算出するようにした。
【0184】
これについて説明すると、前記した排気還流機構において排気ガスが還流されるとき、運転状態によっては、排気ガスが4気筒に均等に導入されずに、例えば還流口121bに近い気筒に多量の排気ガスが吸入され、遠い気筒には僅かの量しか吸入されない状態が起こる可能性がある。従って、そのような場合には、TDCごとに検出する空燃比KACT(k) は、特定気筒の影響を大きく受けることになり、その検出空燃比KACT(k) を用いると、その気筒の当量比のみを目標空燃比に合わせようとして全気筒の制御値がその気筒のずれ分だけオフセットし、他気筒の空燃比がずれてしまう。従って、それを回避するために、図示の如く、平均値を求めることが望ましい。
【0185】
図33に従って説明すると、S900でEGR(排気還流制御)が実行されているか否か判断し、肯定されるときS902以降に進んで図11に関して第1の実施の形態で述べたと同様にKACTAVE などの平均値を求める。他方、S900で否定されたときはS912以降に進み、図11に関して第1の実施の形態で述べたと同様の処理を行う。
【0186】
第8の実施の形態は上記の如く構成したので、排気ガスが還流されるときも特定気筒の影響を大きく受けることがなく、制御性が向上する。
【0187】
図34はこの出願に係る装置の第9の実施の形態を示す、図33と同様のフィードバック補正係数KSTRなどの平均値の演算作業を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【0188】
排気還流実行時と同様に、キャニスタ・パージが実行されてガスが供給されるとき、運転状態によっては、ガスが気筒に均一に導入されない場合が生じて第8の実施の形態で述べたと同様の問題が生じ得る。第9の実施の形態はそれに対処した。
【0189】
図34に従って説明すると、S1000でキャニスタ・パージが実行されているか否か判断し、肯定されるときS1002以降に進んで図11に関して第1の実施の形態で述べたと同様にKACTAVE などの平均値を求める。他方、S1000で否定されたときはS1012以降に進み、図9に関して第1の実施の形態で述べたと同様の処理を行う。
【0190】
第9の実施の形態は上記の如く構成したので、キャニスタ・パージが実行されるときも特定気筒の影響を大きく受けることがなく、制御性が向上する。
【0191】
尚、図示はしないが、その他にも大気圧Paが低い場合、即ち、高地に位置するとき、あるいは低水温時、あるいはリーンバーン運転時など、燃焼が不安定な状態にあるときは、同様に平均値を求めるが望ましく、それによって制御性を向上させることができる。
【0192】
図35および図36はこの出願に係る装置の第10の実施の形態を示すフロー・チャートおよびブロック図である。
【0193】
図36を先に参照して説明すると、第10の実施の形態の場合、第1の実施の形態の構成にPID制御則からなる排気系集合部当量比のフィードバックループ(補正係数KLAF)を除くと共に、同様のPID制御則からなる気筒別のフィードバックループ(補正係数#nKLAF )を挿入した。
【0194】
即ち、排気系集合部に配置した単一の空燃比センサ出力から、上述の本出願人が先に特開平5−180040号公報で提案したオブザーバを用いて各気筒の空燃比#nA/F(n:気筒)を推定し、その推定値と所定の気筒別空燃比F/Bの目標値との偏差に応じてPID制御則を用いて気筒毎のフィードバック補正係数#nKLAF を求め、出力燃料噴射量Tout を乗算補正するようにした。
【0195】
より具体的には、気筒毎のフィードバック補正係数#nKLAF は、集合部空燃比を気筒毎のフィードバック補正係数#nKLAF の平均値の前回演算値で除算して求めた値(これを上記の如く「気筒別空燃比F/Bの目標値」と言う。従って、これは目標空燃比KCMDとは異なる値である)とオブザーバ推定空燃比#nA/Fとの偏差を解消するように、PID制御則を利用して求める。尚、その詳細は、本出願人が別途提案した特願平5−251,138号に示されているので、説明を省略する。また、付着補正補償器の図示は省略した。
【0196】
更に、第10の実施の形態においては、LAFセンサ出力を適宜なタイミングでサンプリングするサンプリングブロック(図中にSel-VOBSVと示す)を設けると共に、STRコントローラについても同種のサンプリングブロック(図中にSel-VSTR と示す)を設けた。
【0197】
ここで、それらのサンプリングブロックおよびオブザーバについて説明する。尚、そのサンプリング動作ブロックを図36で「Sel-VOBSV」と示す。
【0198】
内燃機関において排気ガスは排気行程で排出されることから、多気筒内燃機関の排気系集合部において空燃比の挙動をみると、明らかにTDCに同期している。従って、内燃機関の排気系に前記した広域空燃比センサを設けて空燃比をサンプリングするときもTDCに同期して行う必要があるが、検出出力を処理する制御ユニット(ECU)のサンプルタイミングによっては空燃比の挙動を正確に捉えられない場合が生じる。即ち、例えば、TDCに対して排気系集合部の空燃比が図37のようであるとき、制御ユニットで認識する空燃比は図38に示す如く、サンプルタイミングによっては全く違った値となる。この場合、実際の空燃比センサの出力変化を可能な限り正確に把握できる位置でサンプリングするのが望ましい。
【0199】
更に、空燃比の変化は排気ガスのセンサまでの到達時間やセンサの反応時間によっても相違する。その中、センサまでの到達時間は排気ガス圧力、排気ガスボリュームなどに依存して変化する。更に、TDCに同期してサンプリングすることはクランク角度に基づいてサンプリングすることになるので、必然的に機関回転数の影響を受けざるを得ない。このように、空燃比の検出は機関の運転状態に依存するところが大きい。そのために例えば特開平1−313,644号公報記載の技術においては所定クランク角度毎に検出の適否を判定しているが、構成が複雑であって演算時間が長くなるため高回転域では対応しきれなくなる恐れがあると共に、検出を決定した時点で空燃比センサの出力の変局点を徒過してしまう不都合も生じる。
【0200】
図39は、そのLAFセンサのサンプリング動作を示すフロー・チャートであるが、空燃比の検出精度は特に前記したオブザーバの推定精度と密接な関連を有するので、同図の説明に入る前に、ここでオブザーバによる空燃比推定について簡単に説明する。
【0201】
先ず、1個のLAFセンサの出力から各気筒の空燃比を精度良く分離抽出するためには、LAFセンサの検出応答遅れを正確に解明する必要がある。そこで、とりあえずこの遅れを1次遅れ系と擬似的にモデル化し、図40に示す如きモデルを作成した。ここでLAF:LAFセンサ出力、A/F:入力A/F、とすると、その状態方程式は下記の数30で示すことができる。
【0202】
【数30】
【0203】
これを周期ΔTで離散化すると、数31で示すようになる。図41は数31をブロック線図で表したものである。
【0204】
【数31】
【0205】
従って、数31を用いることによってセンサ出力より真の空燃比を求めることができる。即ち、数31を変形すれば数32に示すようになるので、時刻kのときの値から時刻k−1のときの値を数33のように逆算することができる。
【0206】
【数32】
【0207】
【数33】
【0208】
具体的には数31をZ変換を用いて伝達関数で示せば数34の如くになるので、その逆伝達関数を今回のLAFセンサ出力LAFに乗じることによって前回の入力空燃比をリアルタイムに推定することができる。図42にそのリアルタイムのA/F推定器のブロック線図を示す。
【0209】
【数34】
【0210】
続いて、上記の如く求めた真の空燃比に基づいて各気筒の空燃比を分離抽出する手法について説明すると、先願でも述べたように、排気系の集合部の空燃比を各気筒の空燃比の時間的な寄与度を考慮した加重平均であると考え、時刻kのときの値を、数35のように表した。尚、F(燃料量)を制御量としたため、ここでは『燃空比F/A』を用いているが、後の説明においては理解の便宜のため、支障ない限り「空燃比」を用いる。尚、空燃比(ないしは燃空比)は、先に数34で求めた応答遅れを補正した真の値を意味する。
【0211】
【数35】
【0212】
即ち、集合部の空燃比は、気筒ごとの過去の燃焼履歴に重みCn(例えば直近に燃焼した気筒は40%、その前が30%...など)を乗じたものの合算で表した。このモデルをブロック線図であらわすと、図43のようになる。
【0213】
また、その状態方程式は数36のようになる。
【0214】
【数36】
【0215】
また集合部の空燃比をy(k)とおくと、出力方程式は数37のように表すことができる。
【0216】
【数37】
【0217】
上記において、u(k)は観測不可能のため、この状態方程式からオブザーバを設計してもx(k)は観測することができない。そこで4TDC前(即ち、同一気筒)の空燃比は急激に変化しない定常運転状態にあると仮定してx(k+1)=x(k−3)とすると、数38のようになる。
【0218】
【数38】
【0219】
ここで、上記の如く求めたモデルについてシミュレーション結果を示す。図44は4気筒内燃機関について3気筒の空燃比を14.7:1にし、1気筒だけ12.0:1にして燃料を供給した場合を示す。図45はそのときの集合部の空燃比を上記モデルで求めたものを示す。同図においてはステップ状の出力が得られているが、ここで更にLAFセンサの応答遅れを考慮すると、センサ出力は図46に「モデル出力値」と示すようになまされた波形となる。図中「実測値」は同じ場合のLAFセンサ出力の実測値であるが、これと比較し、上記モデルが多気筒内燃機関の排気系を良くモデル化していることを検証している。
【0220】
よって、数39で示される状態方程式と出力方程式にてx(k)を観察する通常のカルマンフィルタの問題に帰着する。その荷重行列Q,Rを数40のようにおいてリカッチの方程式を解くと、ゲイン行列Kは数41のようになる。
【0221】
【数39】
【0222】
【数40】
【0223】
【数41】
【0224】
これよりA−KCを求めると、数42のようになる。
【0225】
【数42】
【0226】
一般的なオブザーバの構成は図47に示されるようになるが、今回のモデルでは入力u(k)がないので、図48に示すようにy(k)のみを入力とする構成となり、これを数式で表すと数43のようになる。
【0227】
【数43】
【0228】
ここでy(k)を入力とするオブザーバ、即ちカルマンフィルタのシステム行列は数44のように表される。
【0229】
【数44】
【0230】
今回のモデルで、リカッチ方程式の荷重配分Rの要素:Qの要素=1:1のとき、カルマンフィルタのシステム行列Sは、数45で与えられる。
【0231】
【数45】
【0232】
図49に上記したモデルとオブザーバを組み合わせたものを示す。シミュレーション結果は先の出願に示されているので省略するが、これにより集合部空燃比より各気筒の空燃比を的確に抽出することができる。
【0233】
オブザーバによって集合部空燃比より各気筒空燃比を推定することができたことから、PIDなどの制御則を用いて空燃比を気筒別に制御することが可能となる。具体的には図36のオブザーバによるフィードバック部分のみ抽出した図50に示すように、センサ出力(集合部空燃比)と目標空燃比とからPID制御則を用いて集合部フィードバック補正係数KLAFを求めると共に、オブザーバ推定値#nA/Fから気筒毎のフィードバック補正係数#nKLAF (n:気筒)を求める。
【0234】
気筒毎のフィードバック補正係数#nKLAF はより具体的には、集合部空燃比を気筒毎のフィードバック補正係数#nKLAF の全気筒についての平均値の前回演算値で除算して求めた目標値とオブザーバ推定値#nA/Fとの偏差を解消するようにPID則を用いて求める。
【0235】
これにより、各気筒の空燃比は集合部空燃比に収束し、集合部空燃比は目標空燃比に収束することとなって、結果的に全ての気筒の空燃比が目標空燃比に収束する。ここで、各気筒の燃料噴射量#nTout (インジェクタの開弁時間で規定される)は、
#nTout =Tcyl ×#nKLAF ×KLAF
で求められる。
【0236】
ここで、図39フロー・チャートに戻ってLAFセンサ出力のサンプリングを説明する。尚、このプログラムはTDC位置で起動される。
【0237】
図39フロー・チャートを参照して以下説明する。先ずS1200において機関回転数Ne、吸気圧力Pb、バルブタイミングV/T を読み出し、S1204,S1206に進んでHiV/T ないしLoV/T 用のタイミングマップ(後述)を検索し、S1208に進んでHiないしLoバルブタイミング用のオブザーバ演算に用いるセンサ出力のサンプリングを行う。具体的には、機関回転数Neおよび吸気圧力Pbからタイミングマップを検索して前記した12個のバッファのいずれかをそのNo.で選択し、そこに記憶されているサンプリング値を選択する。
【0238】
図51はそのタイミングマップの特性を示す説明図であり、図示の如く特性は、機関回転数Neが低くないしは吸気圧力(負荷)Pbが高いほど早いクランク角度でサンプリングされた値を選択するように設定される。ここで、「早い」とは前のTDC位置により近い位置でサンプリングされた値(換言すれば古い値)を意味する。逆に、機関回転数Neが高くないしは吸気圧力Pbが低いほど遅いクランク角度、即ち、後のTDC位置に近いクランク角度でサンプリングされた値(換言すれば新しい値)を選択するように設定する。
【0239】
即ち、LAFセンサ出力は図38に示したように、実際の空燃比の変局点に可能な限り近い位置でサンプリングするのが最良であるが、その変局点、例えば最初のピーク値は、センサの反応時間を一定と仮定すれば、図52に示すように、機関回転数が低くなるほど早いクランク角度で生じる。また、負荷が高いほど排気ガス圧力や排気ガスボリュームが増加し、従って排気ガスの流速が増してセンサへの到達時間が早まるものと予想される。その意味から、サンプルタイミングを図51に示すように設定した。
【0240】
更に、バルブタイミングに関しては、機関回転数の任意の値Ne1をLo側についてNe1-Lo 、Hi側についてNe-Hiとし、吸気圧力についてもその任意の値をLo側についてPb1-LO 、Hi側についてPb1-Hi とすると、マップ特性は、
Pb1-Lo >Pb1-Hi
Ne1-Lo >Ne1-Hi
とする。即ち、HiV/T にあっては排気弁の開き時点がLoV/T のそれより早いため、機関回転数ないし吸気圧力の値が同一であれば、早期のサンプリング値を選択するように、マップ特性が設定される。
【0241】
次いでS1210に進んでオブザーバ行列の演算をHiV/T について行い、続いてS1212に進んで同様の演算をLoV/T について行う。続いてS1214に進んで再びバルブタイミングを判断し、判断結果に応じてS1216,S1218に進んで演算結果を選択して終わる。
【0242】
即ち、バルブタイミングの切り換えに伴って空燃比の集合部の挙動も変わるため、オブザーバ行列を変更する必要が生じる。しかし、各気筒の空燃比の推定は瞬時に行えるものではなく、各気筒の空燃比推定演算が収束し終わるまでに演算数回を要するため、バルブタイミングの変更前のオブザーバ行列を用いた演算と変更後のオブザーバ行列を用いた演算とをオーバーラップして行っておき、もしバルブタイミングの変更が行われたとしても、S1214で変更後のバルブタイミングに応じて選択できるようにした。尚、各気筒が推定された後は、先に述べたように、目標値との偏差を解消するようにフィードバック補正係数が求められて噴射量が決定される。
【0243】
この構成により、空燃比の検出精度を向上させることができる。即ち、図53に示す如く、比較的短い間隔でサンプリングすることから、サンプリング値はセンサ出力をほぼ忠実に反映すると共に、その比較的短い間隔でサンプリングされた値をバッファ群に順次記憶しておき、機関回転数と吸気圧力(負荷)に応じてセンサ出力の変局点を予測してバッファ群の中からそれに対応する値を所定クランク角度において選択するようにした。この後、オブザーバ演算が行われて各気筒空燃比が推定され、図50で説明したように、空燃比の気筒別のフィードバック制御も可能となる。
【0244】
従って、図53下部に示すように、CPUコア70はセンサ出力の最大値と最小値を正確に認識することができる。従って、この構成により前記したオブザーバを用いて各気筒の空燃比を推定するときも、実際の空燃比の挙動に近似する値を使用することができてオブザーバの推定精度が向上し、結果として図50に関して述べた気筒別の空燃比フィードバック制御を行うときの精度も向上する。尚、その詳細は本出願人が先に提案した特願平6−243,277号に詳細に記載されているので、これ以上の説明は省略する。
【0245】
上記は、LAFセンサ出力についてオブザーバが行うサンプリング動作(図36にSel-VOBSV と示す)であるが、STRコントローラも同様のサンプリング動作(図36にSel-VSTRと示す)も行う。
【0246】
即ち、このSel-VSTRもSel-VOBSVで行ったと同様の手順、つまり図39と同様なフロー・チャートに示す手順に従って求められる。Sel-VOBSV はオブザーバによる気筒別の空燃比推定に対して最も好都合のタイミング(例えば前述のオブザーバの重み係数Cがモデルに対して最適となるタイミング)で空燃比を検出するのに対し、Sel-VSTRはSTRを作動させるのに最も好都合のタイミング(例えば直近の排気行程の気筒の影響を最も受ける空燃比の検出タイミング)になるように、Sel-VOBSV で示した図51と同様のマップを用いて空燃比を検出する。
【0247】
上記を前提として図35フロー・チャートを参照して第10の実施の形態を説明すると、第1の実施の形態と同様のステップS1100ないしS1110を経てS1112に進み、そこでSel-VSTR によるLAFセンサ出力のサンプリング、即ち、空燃比KACT(k) を検出する。次いでS1114に進んで第1の実施の形態と同様にフィードバック補正係数KSTRを演算する。より具体的には第1の実施の形態で使用した図11フロー・チャートを用いて行う。
【0248】
続いてS1116,S1118に進んで要求燃料噴射量Tcyl(k)と出力燃料噴射量Tout(k)とを求め、S1120に進んでSel-VOBSVによるLAFセンサ出力のサンプリング、即ち、当量比KACT(k) を検出する。次いでS1122に進んで前記したオブザーバを介して各気筒の空燃比#nA/Fを推定し、S1124に進んで気筒毎のフィードバック補正係数#nKLAF を演算し、S1126に進んで前回値との加重平均値などからその学習値#nKLAFstyを求め、S1128に進んで出力燃料噴射量Tout を気筒毎のフィードバック補正係数#nKLAF で乗算補正して当該気筒の出力噴射量#nTout とし、S1130に進んで吸気管壁面付着補正を行い、S1132に進んで出力する。
【0249】
尚、S1108ないしS1110で否定されたときはS1134に進んで図示の如く要求燃料噴射量Tcyl(k)を求め、S1136に進んで気筒毎のフィードバック補正係数#nKLAFstyの学習値を読み出し、S1138に進んで学習値を補正係数#nKLAF とする。また、S1104でフューエルカットと判断されるときはS1144を経てS1146に進んで行列演算を停止すると共に、S1148に進んで気筒毎のフィードバック補正係数は前回値とする。残余のステップは第1の実施の形態と異ならない。
【0250】
第10の実施の形態においては上記の如く構成したことから、第1の実施の形態と同様に、適応パラメータを演算しながら、パラメータ調整機構への入力は燃焼サイクル同期となるため、パラメータ調整機構の演算負荷が大幅に低減され、制御性を確保しつつ実機への適応制御器の使用が可能となると同時に、気筒間バラツキを減少させることも可能となる。
【0251】
また、第1の実施の形態と同様に、全気筒について1燃焼サイクル間の空燃比KACTの平均値ないしは適応パラメータの平均値を求めてパラメータ調整機構に入力すると共に、STRコントローラの出力の平均値も求めているので、特定気筒の燃焼状態の影響を大きく受けることがない。
【0252】
尚、第10の実施の形態において、第2の実施の形態と同様に適応パラメータθハットあるいはKSTRの平均値を求めても良く、あるいは空燃比KACTと適応パラメータθハットの平均値を共に求めても良いことは言うまでもない。また、目標空燃比KCMD(k) は、全気筒で同一の値でも良い。
【0253】
また、第10の実施の形態において、第2の実施の形態、第3の実施の形態、第4の実施の形態、第5の実施の形態、第6の実施の形態、第7の実施の形態、第8の実施の形態および第9の実施の形態について述べた記載は、全て妥当する。
【0254】
図54および図55はこの出願に係る装置の第11の実施の形態を示すフロー・チャートおよびブロック図である。
【0255】
第11の実施の形態の場合、図55に示すように、STRコントローラとパラメータ調整機構とを燃料噴射量演算系に直列に挿入した。即ち、基本燃料噴射量Timに第1の実施の形態と同様に、目標空燃比補正係数KCMDM(k)と各種補正係数KTOTALを乗算して要求燃料噴射量Tcyl(k)を求めた後、補正した要求燃料噴射量Tcyl(k)をSTRコントローラに入力する。
【0256】
他方、検出した排気系集合部空燃比から第1の実施の形態と同様に平均値KACTAVE ないしはθハットAVE を求め、要求燃料噴射量Tcyl(k)に対してSTRコントローラで動的補正を行い、補正燃料噴射量Gfuel-str(k) を算出する。
【0257】
同時に、検出した排気系集合部空燃比からPID制御則を用いて集合部のフィードバック補正係数KLAFを求めて、要求燃料噴射量Tcyl(k)に乗算して補正燃料噴射量Gfuel-KLAF(k)を算出する。
【0258】
図55においてSTRコントローラは、実吸入燃料量(より正確には推定吸入燃料量)Gfuel(k) が目標燃料量Tcyl(k)に一致するように適応的に出力燃料噴射量Gfuel-str(k) を算出し、出力燃料噴射量Tout (k) として内燃機関に供給する。尚、仮想プラントでの壁面付着補正は本出願人が先に提案した特願平4−200331号(特開平6−17681号)に詳細に述べられており、この発明の要旨もそこにはないので、説明は省略する。
【0259】
ここで実吸入燃料量Gfuel(k) は、検出された空気量を検出空燃比で除算して求めることも可能であるが、実施の形態の場合には空気量検出器(エアフローメータ)を備えていないため、目標吸入燃料量(要求噴射量)Tcyl(k)に検出空燃比を乗算するようにした。これによって空気量を検出して求めるのと等価に実吸入燃料量を求めることができる。尚、先に述べたように、この制御においては目標空燃比と検出空燃比を実際は当量比として表している。
【0260】
また、目標空燃比が理論空燃比ではない場合には算出値を更に目標空燃比で除算して実吸入燃料量を求める。即ち、実吸入燃料量は、目標空燃比が理論空燃比のときは、
実吸入燃料量=要求噴射量(目標吸入燃料量)×検出空燃比(当量比)
で求め、目標空燃比が理論空燃比以外のときは、
実吸入燃料量=(要求噴射量(目標吸入燃料量)×検出空燃比(当量比))/目標空燃比(当量比)
で求める。
【0261】
上記を図54フロー・チャートを参照して説明すると、これまでの実施の形態と同様のステップS1300ないしS1316を経てS1318に進み、空燃比の平均値KACTAVE および適応パラメータθハットの平均値θハット-AVEを算出する。
【0262】
続いてS1320ないしS1322を経てS1324に進んで第1の実施の形態と同様に適応制御系(STRコントローラ)の不安定判別を行う。
【0263】
図56はその作業を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【0264】
同図に従って説明すると、先ずS1400で適応パラメータθハットの各要素を用いてSTR制御系の安定性を判別する。
【0265】
具体的には、STRコントローラが算出する燃料噴射量Gfuel-STR(k) は、数46のように算出される。
【0266】
【数46】
【0267】
ここで、付着補正が正しいと仮定すると、仮想プラントの伝達関数は、数47のようになる。
【0268】
【数47】
【0269】
数46と数47とからTcyl(k)から噴射量Gfuel-STR(k) への伝達関数は、数48のようになる。
【0270】
【数48】
【0271】
ここで、b0はゲインを決定するスカラ量であるため、0あるいは負となり得ないので、数48の伝達関数の分母関数f(z)=b0z3 +r1z2 +r2z+r3+s0は、図14に示した関数のいずれかになる。そこで、実根が単位円内にあるか否かを判別する、即ち、図15に示したように、f(−1)<0ないしf(1)>0であるか否かを判別すれば、肯定されるときは実根が単位円内にあることになるので、それから系が安定しているか否かを容易に判定することができる。
【0272】
そしてS1402において上記からSTRコントローラ系が不安定か否か判断し、肯定されるときはS1404に進んで適応パラメータθハットを初期値に戻す。これにより、系の安定を回復することができる。続いてS1406に進んでゲイン行列Γを補正する。ゲイン行列Γは収束速度を決定するものであることから、この補正は収束速度を遅くするように行うものであり、それによっても同様に系の安定を回復することができる。続いてS1408に進み、図示の如く、フィードバック補正係数としてPID制御則による補正係数KLAF(k) を用い、補正燃料噴射量Gfuel-KLAF を用い、それに加算項TTOTALを加算して出力燃料噴射量Tout(k)を決定する。
【0273】
尚、S1402でSTRコントローラ系が不安定ではないと判断されるときはS1410に進んで、図示の如く、フィードバック補正係数として適応制御則による補正係数KSTR(k) を用いた補正燃料噴射量Gfuel-str(k) を用い、それに加算項TTOTALを加算して出力燃料噴射量Tout(k)を決定する。
【0274】
図54フロー・チャートに戻ると、次いで進んで1326に進んで出力燃料噴射量を出力して終わる。第11の実施の形態の場合、空燃比などの平均値の算出は、従前の実施の形態と異なり、特定気筒の所定クランク角度に限らず、各気筒の所定クランク角度で行うようにしても良い。尚、残余の構成は、従前の実施の形態と相違しない。
【0275】
第11の実施の形態においては上記の如く構成し、第1の実施の形態と同様に、適応パラメータを演算しながら、パラメータ調整機構への入力は燃焼サイクル同期としても良く、その場合はパラメータ調整機構の演算負荷が大幅に低減され、制御性を確保しつつ実機への適応制御器の使用が可能となる。また、無駄時間の短縮により、制御性の向上が可能となる。
【0276】
また第11の実施の形態においても全気筒の制御量の平均値を求めてパラメータ調整機構に入力しているので、特定気筒の燃焼状態の影響を大きく受けることがない。
【0277】
上記の如く、この実施の形態においては、多気筒内燃機関の燃料噴射量を制御する燃料噴射量制御手段と、前記燃料噴射量を操作量として目標値に適応的に一致させる適応制御器と、および前記適応制御器で用いる適応パラメータを算出する適応パラメータ調整機構と、を備えた多気筒内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記適応制御器のパラメータ調整機構が出力する複数の適応パラメータθハットに基づいて前記適応制御器および適応パラメータ調整機構の少なくともいずれかに入力する適応パラメータの値を決定するように構成した。
【0278】
尚、上記第1の実施形態ないし第11の実施形態はそれぞれの実施形態の構成において上述したような作用、効果が得られるが、これらの実施形態の多くを組み合わせた構成においては、内燃機関の燃料制御装置において良好な制御性、言い換えればより正確な排気ガス空撚比の制御が可能となる。またすべての実施形態を機関の運転状態等を加味して構成すれば最も有効な作用、効果が表れることは言うまでもない。
【0279】
また、上記第1の実施形態ないし第11の実施形態はその作用、効果によっていくつかの種類に区別できる。
【0280】
第1の実施形態は内燃機関の燃料制御装置に適応制御器を適用するにあたって、適応制御器の制御性(演算精度)の向上と演算処理能力の拡大という作用、効果を得られる。また機関の特定運転状態に起因する気筒別の空撚比の偏りも解消できる作用、効果を得られる。さらには機関の運転状態に応じて適応制御器とPID制御器を切り換える際の制御性の悪化を防止するという作用、効果を得られる。第7の実施形態は第1の実施形態の実際の適用例に相当する。第7の実施形態においてはあらゆる運転状態においても適応制御器の優れた制御性を確保できる作用、効果を得られる。
【0281】
第2の実施形態と第3の実施形態は適応制御器の演算方法に係わるものである。第2の実施形態は適応制御器のゲイン行列Γを機関の運転状態に応じて適切に設定するという構成により、適応制御器の制御性(演算精度)の向上と演算処理能力の拡大および制御特性のセッティングが容易となるという作用、効果を得られる。第3の実施形態はプラント出力の挙動から適応制御器のゲイン行列Γを設定するもので、適応制御器の制御性(演算精度)の向上と演算処理能力の拡大という作用、効果を得られる。
【0282】
第4の実施形態は適応制御器への入力信号の処理に係わるものである。第4の実施形態は適応制御器への入力たる検出空撚比に不感帯を設けるという構成により、検出空撚比の微小な変動による適応制御器の制御性(演算精度)の悪化を防止するという作用、効果を得られる。
【0283】
第5の実施形態と第6の実施形態は適応制御器の演算方法、特に適応パラメータの変化速度に係わるものである。第5の実施形態は適応制御器で用いる適応パラメータの変化速度にリミットを設けるという構成により、適応制御器の制御安定性を向上させるという作用、効果を得られる。第5の実施形態は適応制御器で用いる適応パラメータの変化速度を算出安定させるという構成で適応制御器の制御性(演算精度)の向上という作用、効果を得られる。
【0284】
第8の実施形態と第9の実施形態は適応制御器の演算方法、特に特定運転状態における適応制御器の演算方法に係わるものである。第8の実施形態および第9の実施形態は適応制御器の演算方法を特定の運転状態に応じて変化させるという構成により、適応制御器の特定運転状態に起因する気筒別の空撚比の偏りも解消できるという作用、効果を得られる。
【0285】
第10の実施形態は適応制御器と気筒別空撚比制御手段による燃料噴射量演算方法に係わるものである。第10の実施形態は気筒別の空撚比の偏差を解消する手段に適応制御器による空撚比制御手段を加えたという構成により、気筒別の空撚比の偏りも解消でき適応制御器の制御性(演算精度)の向上という作用、効果を得られる。また空撚比の検出タイミングを機関の運転状態により最適にするという構成により、気筒別の空撚比の検出(演算)精度と適応制御器の制御性(演算精度)の向上という作用、効果を得られる。
【0286】
第11の実施形態は適応制御器をプラントに接続する手法に係わるものであり、第1の実施形態および第3の実施形態の変形例に相当するものである。第11の実施形態は燃料噴射量を直接演算するという構成により、適応制御器の制御性(演算精度)の向上という作用、効果を得られる。また適応制御器で用いる適応パラメータから適応制御器の安定性を判別するという構成により、適応制御器の制御安定性の向上と演算処理能力の拡大という作用、効果を得られる。
【0287】
以上に示した実施形態の種類はそれぞれ同じ種類に属する実施形態同士を組み合わせた構成により、それぞれの実施形態で述べた作用、効果が向上する。またいくつかの実施形態の種類をそれぞれ組み合わせてもそれぞれの実施形態で述べた作用、効果が相乗的に向上して内燃機関の燃料制御装置において良好な制御性、言い換えればより正確な排気ガス空撚比の制御が可能となることは先に述べた通りである。
【0288】
第1の実施形態および第7の実施形態と第2の実施形態および第3の実施形態を組み合わせて利用すれば適応制御器の制御性(演算精度)の向上と演算処理能力の拡大という作用、効果を得られる。
【0289】
第1の実施形態および第7の実施形態と第4の実施形態を組み合わせて利用すれば適応制御器の制御性(演算精度)の向上と演算処理能力の拡大という作用、効果を得られる。
【0290】
第1の実施形態および第7の実施形態と第5の実施形態および第6の実施形態を組み合わせて利用すれば適応制御器の制御性(演算精度)の向上と演算処理能力の拡大という作用、効果を得られる。
【0291】
第1の実施形態および第7の実施形態と第8の実施形態および第9の実施形態を組み合わせて利用すれば適応制御器の特定運転状態に起因する気筒別の空撚比の偏りも解消でき適応制御器の制御性(演算精度)の向上と演算処理能力の拡大という作用、効果を得られる。
【0292】
第1の実施形態および第7の実施形態と第10の実施形態を組み合わせて利用すれば気筒別の空撚比の偏りも解消でき適応制御器の制御性(演算精度)の向上と演算処理能力の拡大という作用、効果を得られる。
【0293】
第1の実施形態および第7の実施形態と第11の実施形態を組み合わせて利用すれば適応制御器の制御安定性の向上と適応制御器の制御性(演算精度)の向上と演算処理能力の拡大という作用、効果を得られる。特に第11の実施形態の適応制御器で用いる適応パラメータの安定性の判別が各実施形態に用いることが有効な点は先に述べた通りである。
【0294】
第2の実施形態および第3の実施形態と第4の実施形態を組み合わせて利用すれば適応制御器の制御性(演算精度)の向上と演算処理能力の拡大という作用、効果を得られる。
【0295】
第2の実施形態および第3の実施形態と第5の実施形態および第6の実施形態を組み合わせて利用すれば適応制御器の制御性(演算精度)の向上と演算処理能力の拡大という作用、効果を得られる。
【0296】
第2の実施形態および第3の実施形態と第8の実施形態および第9の実施形態を組み合わせて利用すれば適応制御器の特定運転状態に起因する気筒別の空撚比の偏りも解消でき適応制御器の制御性(演算精度)の向上と演算処理能力の拡大という作用、効果を得られる。
【0297】
第2の実施形態および第3の実施形態と第10の実施形態を組み合わせて利用すれば気筒別の空撚比の偏りも解消でき適応制御器の制御性(演算精度)の向上と演算処理能力の拡大という作用、効果を得られる。
【0298】
第2の実施形態および第3の実施形態と第11の実施形態を組み合わせて利用すれば適応制御器の制御性(演算精度)の向上と演算処理能力の拡大という作用、効果を得られる。また第11の実施形態における適応制御器で用いる適応パラメータから適応制御器の安定性を判別するという構成により、適応制御器の制御安定性の向上と演算処理能力の拡大という作用、効果を得られる。
【0299】
第4の実施形態と第5の実施形態および第6の実施形態を組み合わせて利用すれば適応制御器の制御性(演算精度)の向上と演算処理能力の拡大という作用、効果を得られる。
【0300】
第4の実施形態と第8の実施形態および第9の実施形態を組み合わせて利用すれば適応制御器の特定運転状態に起因する気筒別の空撚比の偏りも解消でき適応制御器の制御性(演算精度)の向上と演算処理能力の拡大という作用、効果を得られる。
【0301】
第4の実施形態と第10の実施形態を組み合わせて利用すれば気筒別の空撚比の偏りも解消でき適応制御器の制御性(演算精度)の向上と演算処理能力の拡大という作用、効果を得られる。
【0302】
第4の実施形態と第11の実施形態を組み合わせて利用すれば気筒別の空撚比の偏りも解消でき適応制御器の制御性(演算精度)の向上と演算処理能力の拡大という作用、効果を得られる。また第11の実施形態における適応制御器で用いる適応パラメータから適応制御器の安定性を判別するという構成により、適応制御器の制御安定性の向上と演算処理能力の拡大という作用、効果を得られる。
【0303】
第5の実施形態および第6の実施形態と第8の実施形態および第9の実施形態を組み合わせて利用すれば適応制御器の特定運転状態に起因する気筒別の空撚比の偏りも解消でき適応制御器の制御性(演算精度)の向上と演算処理能力の拡大という作用、効果を得られる。
【0304】
第5の実施形態および第6の実施形態と第10の実施形態を組み合わせて利用すれば気筒別の空撚比の偏りも解消でき適応制御器の制御性(演算精度)の向上と演算処理能力の拡大という作用、効果を得られる。
【0305】
第5の実施形態および第6の実施形態と第11の実施形態を組み合わせて利用すれば適応制御器の制御性(演算精度)の向上と演算処理能力の拡大という作用、効果を得られる。また第11の実施形態における適応制御器で用いる適応パラメータから適応制御器の安定性を判別するという構成により、適応制御器の制御安定性の向上と演算処理能力の拡大という作用、効果を得られる。
【0306】
第8の実施形態および第9の実施形態と第10の実施形態を組み合わせて利用すれば気筒別の空撚比の偏りも解消でき適応制御器の制御性(演算精度)の向上と演算処理能力の拡大という作用、効果を得られる。
【0307】
第8の実施形態および第9の実施形態と第11の実施形態を組み合わせて利用すれば適応制御器の特定運転状態に起因する気筒別の空撚比の偏りも解消でき適応制御器の制御性(演算精度)の向上と演算処理能力の拡大という作用、効果を得られる。また第11の実施形態における適応制御器で用いる適応パラメータから適応制御器の安定性を判別するという構成により、適応制御器の制御安定性の向上と演算処理能力の拡大という作用、効果を得られる。
【0308】
第10の実施形態と第11の実施形態を組み合わせて利用すれば気筒別の空撚比の偏りも解消でき適応制御器の制御性(演算精度)の向上と演算処理能力の拡大という作用、効果を得られる。また第11の実施形態における適応制御器で用いる適応パラメータから適応制御器の安定性を判別するという構成により、適応制御器の制御安定性の向上と演算処理能力の拡大という作用、効果を得られる。
【0309】
尚、上記第1ないし第11の実施の形態において、平均値として単純平均値を示したが、それに限られるものではなく、加重平均値、移動平均値、加重移動平均値などでも良い。また、パラメータ調整機構への入力が同期して行われる1燃焼サイクルの間の平均値を求めたが、2燃焼サイクル以前の平均値を求めて良く、或いは1燃焼サイクル未満、例えば2ないし3TDC間の平均値を求めても良い。
【0310】
更に、上記でSel-VOBSV とSel-VSTRとを別々に備え、それぞれに最適な空燃比を検出すれば良いことは上述の通り当然であるが、機関の特性や排気系のレイアウトによってはSel-VOBSV とSel-VSTRとはほとんどの運転領域でほぼ同一の検出空燃比を示すことから、このような場合にはこれらのサンプリング機能を統一して空燃比を検出し、その出力をオブザーバとSTRの双方の入力に用いても良い。例えば、図36のSel-VOBSV のみとし、その出力をオブザーバとSTRに利用しても良い。
【0311】
また、第1の実施の形態などで空燃比として実際には当量比を用いているが、空燃比と当量比とを別々に定めても良いことは言うまでもない。更に、フィードバック補正係数KSTR, #nKLAF, KLAF を乗算項として求めたが、加算値として求めても良い。
【0312】
また、上記において適応制御器としてSTRを例にとって説明したが、MRACS(モデル規範型適応制御)を用いても良い。
【0313】
尚、上記において排気系集合部に設けた単一の空燃比センサの出力を用いているが、それに限られるものではなく、気筒毎に空燃比センサを設けて検出した空燃比から気筒ごとに空燃比フィードバック制御を行っても良い。
【0314】
【発明の効果】
請求項1項にあっては、フィードバック制御領域か否か判別し、高回転、全開増量、ないしは高水温などにより運転状態が変化したような所定の運転状態にあるときは、噴射量がオープンループ制御されるようにした。
【0315】
請求項2項にあっては、前記所定の運転状態が、高回転状態である如く構成した。即ち、フィードバック制御領域か否か判別し、高回転などにより運転状態が変化したような所定の運転状態にあるときは、噴射量がオープンループ制御されるようにした。
【0316】
請求項3項にあっては、前記所定の運転状態が、全開増量状態である如く構成した。即ち、フィードバック制御領域か否か判別し、全開増量などにより運転状態が変化したような所定の運転状態にあるときは、噴射量がオープンループ制御されるようにした。
【0317】
請求項4項にあっては、前記所定の運転状態が、高水温状態である如く構成した。即ち、フィードバック制御領域か否か判別し、高水温などにより運転状態が変化したような所定の運転状態にあるときは、噴射量がオープンループ制御されるようにした。
【図面の簡単な説明】
【図1】この出願に係る内燃機関の燃料噴射制御装置を全体的に示す概略図である。
【図2】図1中の排気還流機構の詳細を示す説明図である。
【図3】図1中のキャニスタ・パージ機構の詳細を示す説明図である。
【図4】図1中の可変バルブタイミング機構のバルブタイミング特性を示す説明図である。
【図5】図1中の制御ユニットの詳細を示すブロック図である。
【図6】この出願に係る内燃機関の燃料噴射制御装置の動作を示すメイン・フロー・チャートである。
【図7】図6フロー・チャートの動作を機能的に示すブロック図である。
【図8】この出願に係る内燃機関の燃料噴射制御装置で用いる適応制御器の動作の例を示すタイミング・チャートである。
【図9】この出願に係る内燃機関の燃料噴射制御装置で用いる適応制御器の動作の別の例を示すタイミング・チャートである。
【図10】図6ブロック図の構成をSTRコントローラと適応パラメータ調整機構とに焦点をおいて書き直したブロック図である。
【図11】図6フロー・チャートの適応制御則によるフィードバック補正係数などの平均値の演算作業を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【図12】図11フロー・チャートの演算作業を説明するタイミング・チャートである。
【図13】図6フロー・チャートの適応制御系の不安定判別を説明するサブルーチン・フロー・チャートである。
【図14】図13フロー・チャートの不安定判別を説明する説明図である。
【図15】図13フロー・チャートの不安定判別作業を説明する図14と同様の説明図である。
【図16】図8と同様の適応制御器の動作の別の例を示すタイミング・チャートである。
【図17】図8と同様の適応制御器の動作の別の例を示すタイミング・チャートである。
【図18】この出願に係る装置の第2の実施の形態を示すフロー・チャートである。
【図19】図18フロー・チャートで使用するマップの特性を示す説明図である。
【図20】図18フロー・チャートで使用するテーブルの特性を示す説明図である。
【図21】図18フロー・チャートで使用する図20と同様のテーブルの特性を示す説明図である。
【図22】図18フロー・チャートで使用する図20と同様のテーブルの特性を示す説明図である。
【図23】図18フロー・チャートで使用する図20と同様のテーブルの特性を示す説明図である。
【図24】この出願に係る装置の第3の実施の形態を示すフロー・チャートである。
【図25】この出願に係る装置の第4の実施の形態を示すフロー・チャートである。
【図26】図25フロー・チャートで使用する不感帯の特性を示す説明図である。
【図27】この出願に係る装置の第5の実施の形態を示すフロー・チャートである。
【図28】図27フロー・チャートで使用するリミッタの特性を示す説明図である。
【図29】この出願に係る装置の第6の実施の形態を示すフロー・チャートである。
【図30】図29フロー・チャートで使用するマップの特性を示す説明図である。
【図31】この出願に係る装置の第7の実施の形態を示すフロー・チャートである。
【図32】図31フロー・チャートの作業を説明する説明図である。
【図33】この出願に係る装置の第8の実施の形態を示すフロー・チャートである。
【図34】この出願に係る装置の第9の実施の形態を示すフロー・チャートである。
【図35】この出願に係る装置の第10の実施の形態を示すフロー・チャートである。
【図36】図35フロー・チャートの動作を説明するブロック図である。
【図37】多気筒内燃機関のTDCと排気系集合部の空燃比との関係を示す説明図である。
【図38】実際の空燃比に対するサンプルタイミングの良否を示す説明図である。
【図39】図36ブロック図のSel-Vブロックでの出空燃比のサンプリング作業を示すフロー・チャートである。
【図40】図36ブロック図のオブザーバの説明図の1つで先の出願で述べた空燃比センサの検出動作をモデル化した例を示すブロック図である。
【図41】図40に示すモデルを周期ΔTで離散化したモデルである。
【図42】空燃比センサの検出挙動をモデル化した真の空燃比推定器を示すブロック線図である。
【図43】内燃機関の排気系の挙動を示すモデルを表すブロック線図である。
【図44】図43に示すモデルを用いて4気筒内燃機関について3気筒の空燃比を14.7:1に、1気筒の空燃比を12.0:1にして燃料を供給する場合を示すデータ図である。
【図45】図44に示す入力を与えたときの図43モデルの集合部の空燃比を表すデータ図である。
【図46】図44に示す入力を与えたときの図43モデルの集合部の空燃比をLAFセンサの応答遅れを考慮して表したデータと、同じ場合のLAFセンサ出力の実測値を比較するグラフ図である。
【図47】一般的なオブザーバの構成を示すブロック線図である。
【図48】図36ブロック図に示したオブザーバで、先の出願で用いるオブザーバの構成を示すブロック線図である。
【図49】図43に示すモデルと図48に示すオブザーバを組み合わせた構成を示す説明ブロック図である。
【図50】図36ブロック図における空燃比のフィードバック制御を示すブロック図である。
【図51】図39フロー・チャートで使用するタイミングマップの特性を示す説明図である。
【図52】図51の特性を説明する、機関回転数および機関負荷に対するセンサ出力特性を示す説明図である。
【図53】図39フロー・チャートでのサンプリング動作を説明するタイミング・チャートである。
【図54】この出願に係る装置の第11の実施の形態を示すフロー・チャートである。
【図55】図54フロー・チャートの動作を説明するブロック図である。
【図56】図54フロー・チャートの適応制御系の不安定判別作業を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【図57】内燃機関の燃料噴射量演算での無駄時間を説明するタイミング・チャートである。
【符号の説明】
10 内燃機関
12 吸気管
20 吸気マニホルド
22 インジェクタ
24 排気マニホルド
26 排気管
28 触媒装置
34 制御ユニット
54 広域空燃比センサ(LAFセンサ)
100 排気還流機構
200 キャニスタ・パージ機構
300 可変バルブタイミング機構
400 切換機構
Claims (4)
- a.多気筒の内燃機関の排気する排気空燃比を含む運転状態を検出する運転状態検出手段と、
b.前記検出された運転状態の中の少なくとも機関回転数と機関負荷に基づいて前記内燃機関に供給すべき基本燃料噴射量を決定する基本燃料噴射量決定手段と、
c.前記検出された排気空燃比が目標空燃比に一致するように、適応制御器と前記適応制御器で用いる適応パラメータを前記検出された排気空燃比に基づいて調整する適応パラメータ調整機構を備え、前記適応パラメータ調整機構で調整された前記適応パラメータと、前記検出された排気空燃比と、および前記目標空燃比とを用いて前記適応制御器によりフィードバック補正係数を算出するフィードバック補正係数算出手段と、
および
d.前記決定された基本燃料噴射量を前記算出されたフィードバック補正係数で補正するフィードバック制御を実行して出力燃料噴射量を決定し、前記決定した出力燃料噴射量を前記内燃機関に供給して燃料噴射を制御する燃料噴射制御手段と、
を備えた内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記燃料噴射制御手段は、前記検出された運転状態が所定の運転状態にあるとき、前記フィードバック制御を中止することを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 前記所定の運転状態が、高回転状態であることを特徴とする請求項1項記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
- 前記所定の運転状態が、全開増量状態であることを特徴とする請求項1項記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
- 前記所定の運転状態が、高水温状態であることを特徴とする請求項1項記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
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