JP3847822B2 - 自動原稿搬送装置の捌き部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機やファクシミリ装置において使用される自動原稿搬送装置に関し、特に、積載された複数枚の原稿を1枚ずつ捌いて送り出す捌き部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえば、複写機の自動原稿搬送装置においては、原稿トレイの上に原稿束を積載し、この原稿束の最下位の原稿から順次捌いて送り出すようにしている。この自動原稿搬送装置においては、原稿を1枚ずつ分離して送り出すために、ロールやパッドを捌き部材として使用している。この捌き部材は、回転駆動される給紙ロールに対向して設けられており、紙ロールと捌き部材の間を原稿が通過するときに、原稿の表面に摩擦を与えて重送を防止している。この捌き部材の表面は、十分な摩擦力が得られるように摩擦係数が大きな材料で形成されている。
【0003】
この捌き部材により原稿が捌かれるときには、捌き部材により原稿の表面が擦られるため、たとえば、鉛筆書きの原稿の場合、原稿の表面に付着していた鉛筆粉の一部が削り取られて他の場所に付着して原稿が汚れることがある。
【0004】
更に詳細に説明すると、従来の捌き部材は、対磨耗性を有する材料で形成されており、紙に対して摩擦係数0.8〜1.0を安定して得ることができるように、その表面が研磨されており、研磨目の凹凸(10μm)を有しており、鉛筆書き原稿を捌いた場合には、捌き部材表面の凹凸が、原稿表面の鉛筆粉の粒径(8〜30μm)よりも大きいために、鉛筆粉が掻きとられて、原稿表面が汚れてしまうという問題があった。
【0005】
この様な不都合の対策として、特開平4−79938号に記載されているように、表面摩擦係数の低い部材を捌き部材として使用したり、或いは、特開昭61−86329号に記載されているように、捌き部材を構成する一対のローラに鍔部を設けて各鍔部をオーバーラップさせるとともに、オーバーラップ量を調整可能とすることが知られている。また、捌き部材を押圧する力を低減させ、且つ、押圧する面積を増やす等のことが行われている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上述したような対策では、捌き性能が低下して原稿が重送されたり、或いは、送り出し性能が低下してミスフィードが発生する等の不都合が発生することが多かった。
【0007】
そこで本発明は、捌き性能や送り出し性能を低下させることなく、捌き時の原稿の汚れを防止することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、原稿を搬送する給紙ロールと該給紙ロールに圧接される捌き部材との間に原稿を通過させることにより重送された原稿と前記捌き部材との接触によって停止させて複数枚の原稿を1枚ずつ捌いて送り出す自動原稿搬送装置の捌き部材において、前記捌き部材は、ポリウレタンを基本とする材料から成形されており、原稿を捌くために必要な表面摩擦係数を有し、且つ、表面が、原稿上鉛筆粉が掻きとられにくくなる程度の平滑性を有することを特徴とする。
【0011】
前記撥水性を有し離型性のよい材料は、シリコーンゴム、フッ素ゴム等のゴム材料、或いは、ポリオレフィン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリアミド系樹脂等の樹脂材料、或いは、シリコーン系樹脂、シリコーン系オイル、フッ素系樹脂、フッ素系オイル等の撥水性成分を含有する樹脂材料又はゴム材料のいずれかであることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明が適用される自動原稿搬送装置の全体構成を示す原理図である。図2は、図1に示す自動原稿搬送装置の捌き機構の近傍を拡大して示す模式図である。
【0013】
自動原稿搬送装置は、原稿を走査して読み取るための原稿読取装置(図示せず)のプラテンガラス1を開閉自在に覆うように設けられている。原稿載置トレイ(図示せず)に原稿2の束が載置され、最下位側の原稿が繰り出しロール3により送り出される。このとき、図2に示すように、原稿2の束の最上位側の原稿は、繰り出しロール押圧部材4により押圧されている。また、原稿載置トレイ上の原稿の有無は、原稿セットセンサ5により検出される。
【0014】
繰り出しロール3により送り出された原稿は、用紙シュート6に沿って経路Aを進み、捌き機構7に至る。捌き機構7は、図示しない駆動機構により矢印P方向に回転駆動される給紙ロール8と、この給紙ロール8に対して圧接状態で設けられたロール状の捌き部材9とから構成されている。捌き部材9は、一方向クラッチ(図示せず)を介して固定軸に取り付けられており、用紙搬送方向には回転しないが、用紙搬送方向とは反対方向には回転可能となっている。
【0015】
図2に示すように、繰り出しロール3により複数の原稿2が送り出されて、この原稿の束が給紙ロール8と捌き部材9との圧接部、すなわち、ニップ部に至ると、給紙ロール8により最下位の原稿から順に搬送される。給紙ロール8の摩擦係数と捌き部材9の摩擦係数は、原稿の摩擦係数よりも大きく選定されており、給紙ロール8の摩擦係数は、捌き部材9の摩擦係数よりも大きく選定されている。たとえば、給紙ロール8の摩擦係数は、1.5〜2.0、捌き部材9の摩擦係数は0.8〜1.0、原稿の摩擦係数は、0.3〜0.5である。
【0016】
ここで、たとえば2枚の原稿がニップ部に入り込んだ場合には、原稿同士の摩擦力よりも、捌き部材9と原稿との間の摩擦力及び給紙ロール8と原稿との間の摩擦力の方が大きいので、重なった2枚の原稿間に滑りが生じ、2枚の原稿のうちの給紙ロール8に接触した原稿のみが搬送され、捌き部材9に接触している原稿は停止したままとなる。ニップ部の原稿が1枚になると、捌き部材9と原稿との間の摩擦力よりも給紙ロール8と原稿との間の摩擦力の方が大きいので、捌き部材9と原稿との間で滑りが生じ、この1枚の原稿が給紙ロール8により搬送される。このようにして、原稿が捌かれ重送が防止される。
【0017】
捌き機構7により1枚ずつ捌かれた原稿2は、経路Bに沿って搬送され、搬送ロール10aピンチロール10bからなる搬送ロール対によりプラテンガラス1上に搬送される。プラテンガラス1上に搬入された原稿2は、搬送ベルトによりプラテンガラス1上を搬送され、所定の原稿読取位置に載置される。この状態で、プラテンガラス1の下側から原稿の画像が読み取られる。
【0018】
片面原稿の場合には、読み取り終了後の原稿は、搬送ベルト装置11により矢印Q方向に搬出され、図示しない原稿搬出トレイに搬出される。
【0019】
両面原稿の場合には、第1面読み取り終了後の原稿は、搬送ベルト装置11により矢印R方向に搬出され、U字状の用紙シュート12に沿って搬送ロール対13a,13b、搬送ロール対14a,14bにより搬送されて経路を進み、更に、搬送ロール対10a,10bにより搬送されて、第2面を下側にしてプラテンガラス1上に搬送される。以後、第1面と同様に第2面の読み取りが行われる。両面読み取り終了後の原稿は、搬送ベルト装置11により矢印Q方向に搬出され、図示しない原稿搬出トレイに搬出される。
【0020】
本実施例においては、上述した捌き部材9の表面を、実質的に凹凸がない鏡面状態とする。たとえば、表面の粗さを8μm以下、好ましくは、5μm以下、更に好ましくは1μm以下とする。なお、ここでいう表面の粗さとは、垂直方向の凹凸の高さの差を意味する。
【0021】
本実施例において、捌き部材9の表面の粗さを8μm以下としたのは、以下の理由による。先に説明したように、鉛筆書きの原稿の場合、紙の表面に付着する鉛筆粉の粒子径は8〜30μmであるが、種々の実験の結果、捌き部材9の表面の粗さが、鉛筆粉の粒子径よりも大きくなると、捌き部材9の表面の凹凸により鉛筆粉の粒子が削り取られる程度が大きくなることを見いだした。そこで本実施例においては、捌き部材9の表面の粗さを、鉛筆粉の粒子径の最小径である8μmよりも小さくしている。なお、実験によれば、初期状態で表面の粗さが1μm程度であったとしても、磨耗により表面の粗がを4μm程度になることが認められるので、表面の粗さは可能な限り小さい方が望ましい。このように、捌き部材9の表面を鏡面状態とすることにより、捌き部材9の表面の凹凸が鉛筆粉の粒径(8〜30μm)よりも小さくなるので、捌き部材9が原稿上鉛筆粉を掻きとることがなくなり、したがって、鉛筆原稿が汚れることがない。
【0022】
鏡面表面を有する捌き部材9の製造方法の一例を以下に示す。図3は、捌き部材9の製造方法を説明するための説明図である。成形圧に対して十分な強度を有する材質からなる円筒状のキャビティを有する金型15の内側に、同じく環状のカラー16が着脱可能に嵌合される。このカラー16は、撥水性を有し離型性のよい材料で成形することにより製造される。このカラー16の内側面は、表面粗さ1μm以下の鏡面仕上げとされている。撥水性を有し離型性のよい材料としては、シリコーンゴム、フッ素ゴム等のゴム材料、或いは、ポリオレフィン系樹脂、ポリアセタール系樹脂等の樹脂材料、或いは、シリコーン系樹脂、シリコーン系オイル、フッ素系樹脂、フッ素系オイル等の撥水性成分を含有する樹脂剤材料又はゴム材料のいずれかを使用することができる。
【0023】
次に、カラー16の内側にポリウレタンを基本とする材料を注入して成形する。成形の際に生じる圧力は、カラー16を介して金型15で受け止められるので、カラー16が変形することはない。
【0024】
ここでポリウレタンとしては、2液混合注型タイプのポリウレタン材料、ミラブル(millable)タイプのポリウレタン材料、熱可塑性タイプのポリウレタン材料等ポリウレタン材料全般を使用することができる。注型タイプのポリウレタン材料としては、たとえば、武田薬品工業株式会社製のサイアナプレンA−9QMを使用することができ、ミラブルタイプのポリウレタン材料としては、たとえば、住友バイエルウレタン株式会社製のスパミン640Sを使用することができ、また、熱可塑性タイプのポリウレタン材料としては、たとえば、日本ミラクトラン株式会社製のE390を使用することができる。
【0025】
注型タイプのポリウレタン材料の場合、組成の略100%がポリウレタンである。ミラブルタイプのポリウレタン材料の場合、最大で50%程度の補強剤(フィラー)が添加されるが、残りの組成は殆どポリウレタンである。また、熱可塑性タイプのポリウレタン材料の場合は、殆ど全部がポリウレタンである。耐磨耗性の点からは、注型タイプ及びミラブルタイプが望ましい。
【0026】
なお、図示しないが、カラー16の中心軸には捌き部材9の固定軸に対応する円柱状の金型が配置されている。或いは、固定軸とカラー16の間に直接ポリウレタンを充填してもよい。
【0027】
本実施例において、捌き部材9の材料としてポリウレタンを採用したのは以下の理由による。
【0028】
一般に、自動原稿搬送装置の捌き機構の捌き部材の材料としては、シリコンゴムやポリウレタンが使用されている。シリコンゴムは安定性の点で優れており、ポリウレタンは耐磨耗性の点で優れている。シリコンゴムの表面を鏡面として捌き部材を構成して実験を行なったところ、原稿を2〜3万枚搬送した時点で鉛筆書き原稿の汚れが生じた。これに対して、ポリウレタンの表面を鏡面として捌き部材を構成して実験を行なったところ、原稿を5〜10万枚搬送しても鉛筆書き原稿の汚れが生じないという結果が得られた。これは、ポリウレタンの耐磨耗性が優れているので、最初に形成した鏡面が長期間に渡って維持されるからであると考えられる。このような理由により、本実施例において、捌き部材9の材料としてポリウレタンを採用した。
【0029】
また、捌き部材の表面を鏡面とした場合でも、従来の捌き部材と同程度の0.8〜1.0の摩擦係数が得られるような種類のポリウレタンを選択して使用する。
【0030】
次に、ロール状に成形されたポリウレタンをカラーから取り外すことにより、捌き部材9の外周層9a得る。このとき、カラーは撥水性を有し離型性のよい材料から形成されているので、従来必要とされていた離型剤を使用することなく、捌き部材9をカラーから取り外すことができるため、離型剤による悪影響を全く受けることなく、カラーの内周面に形成した鏡面を捌き部材9の外周面に完全に転写することができる。これに対して離型剤を使用する方法では、製品表面を鏡面とすることができない。
【0031】
また、カラーは1回の成形毎に使い捨てとすることもでき、この場合には、成形品表面の平滑性に関する成形品毎のばらつきをほぼ完全に防止することができる。
【0032】
なお、上述した実施例においては、N枚目から1枚目に向けて用紙の束の底部から給紙する方式を採用した捌き機構を例に挙げて説明したが、図4に示すような、原稿経路の上側に給紙ロール8を配置し、原稿経路の下側に捌き部材9を配置し、1枚目からN枚目に向けて用紙2の束の頂部から給紙する方式を採用した捌き機構に対しても本発明を適用することができる。
【0033】
【発明の効果】
捌き部材の表面に鏡面仕上げ程度の高い平滑性を持たせることにより、原稿を捌く際に鉛筆粉が掻きとられにくくなり汚れ跡が付きにくくなる。これにより、鉛筆原稿自体のが汚れが少なくなるとともに、原稿を読み取った画像に汚れが含まれることがなくなる。また、捌き部材の表面は原稿束を捌くために必要な表面摩擦係数を有しているため、重送や給紙不良等の2次障害が発生することはない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明が適用される自動原稿搬送装置の全体構成を示す原理図である。
【図2】 図1に示す自動原稿搬送装置の捌き機構の近傍を拡大して示す模式図である。
【図3】 捌き機構の捌き部材の製造方法を説明するための説明図である。
【図4】 捌き機構の他の例を示す模式図である。
【符号の説明】
1…プラテンガラス、2…原稿、3…繰り出しロール、4…繰り出しロール押圧部材、5…原稿セットセンサ、6…用紙シュート、7…捌き機構、8…給紙ロール、9…捌き部材、10a,10b…搬送ロール対、11…搬送ベルト装置、12…用紙シュート、13a,13b…搬送ロール対、14a,14b…搬送ロール対、15…金型、16…カラー
Claims (2)
- 原稿を搬送する給紙ロールと該給紙ロールに圧接される捌き部材との間に原稿を通過させることにより重送された原稿と前記捌き部材との接触によって停止させて複数枚の原稿を1枚ずつ捌いて送り出す自動原稿搬送装置の捌き部材において、
前記捌き部材は、ポリウレタンを基本とする材料から成形されており、原稿を捌くために必要な表面摩擦係数を有し、且つ、表面が、原稿上鉛筆粉が掻きと取られにくくなる程度の平滑性を有することを特徴とする自動原稿搬送装置の捌き部材。 - 前記捌き部材の表面粗さが、8μm以下であることを特徴とする請求項1記載の自動原稿搬送装置の捌き部材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP31674995A JP3847822B2 (ja) | 1995-12-05 | 1995-12-05 | 自動原稿搬送装置の捌き部材 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP31674995A JP3847822B2 (ja) | 1995-12-05 | 1995-12-05 | 自動原稿搬送装置の捌き部材 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH09156792A JPH09156792A (ja) | 1997-06-17 |
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ID=18080493
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP31674995A Expired - Lifetime JP3847822B2 (ja) | 1995-12-05 | 1995-12-05 | 自動原稿搬送装置の捌き部材 |
Country Status (1)
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Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP3986473B2 (ja) | 2003-07-01 | 2007-10-03 | シャープ株式会社 | シート材給送装置、画像読取装置及び画像形成装置 |
-
1995
- 1995-12-05 JP JP31674995A patent/JP3847822B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH09156792A (ja) | 1997-06-17 |
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