JP3847139B2 - 切削工具 - Google Patents
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Description
【0002】
【発明の属する技術分野】
本発明は、中ぐり加工、旋盤、溝入れ、ねじ切り加工時などのびびり振動や過度のしなりを防止することができる切削工具に関するものである。
【0003】
【0004】
【従来の技術】
従来、工作機械で中ぐり加工、すなわち、すでに工作物に空けられた穴を、切削工具を用いて所望の寸法に拡げる加工において、棒状体の工具用ホルダーの先端側に切刃部を備えた切削工具が使用されている。
【0005】
【0006】
中ぐり加工用の工具用ホルダーを構成する素材として鋼材が用いられるが、加工穴直径に比べて穴が深い加工の場合には切削工具を細長形状とし、工作機械本体から切削工具の切刃部先端までの突き出し量Lを大きくする必要がある。そのため突き出し量L/加工径Dの比(L/D)が大きくなるので、鋼材は剛性が低い(ヤング率が200GPa程度)ことから、びびり振動や過度のしなりが生じやすく、加工面が粗くなったり或いは所望の加工精度を得難かったりする問題があった。
【0007】
【0008】
そこで、鋼製の工具用ホルダーに防振機構を付加するため、鋼製のシャンク部の軸方向に設けた穴に超硬合金からなる防振用軸体を挿入することが提案されており、本発明者は、特開2001−96403号において、鋼製のシャンク部に、後端から先端側に向けて穴を形成し、この穴の穴底に当接する弾性体(皿バネ)を設けるとともに、この弾性体をその先端で圧縮する防振用軸体を前記穴内に装着することにより、シャンク部の円周方向と軸方向の両方に圧縮応力を発生せしめ、該切削工具の先端に切削抵抗により発生する振動を減衰させる切削工具を提案した。
【0009】
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来技術は、比較的安価に製造でき、シャンク部に鋼材をメインで用いた切削工具であるにもかかわらず防振性能がオール超硬合金のものにほぼ匹敵する。しかし、それを大きく越える性能ではなかった。シャンク部に鋼材をメインで用いた比較的安価な切削工具において、防振性能がシャンク部を超硬合金で形成した切削工具よりも越えることが可能なものが望まれる。
【0011】
【0012】
そこで本発明は、超硬合金よりもさらに防振性能が上回ることが可能で、かつ、安価な切削工具を提供することを目的とする。
【0013】
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため本発明の切削工具は、工作機械本体に取り付けるためのシャンク部の先端側に切刃部を備えた棒状の鋼製工具本体の軸方向に穴を形成し、この穴における、前記工具本体の軸上に頂点を有する円錐状の穴底に面当接すべく先端部形状が円錐状の先端支を設けるとともに、この先端支に当接して皿バネを設け、この皿バネをその先端で圧縮するよう防振用軸体を前記穴内に装着したことを特徴とする。
【0015】
【0016】
かかる構成によれば、皿バネが円錐状となった穴底に直接着座する場合に比べ、上記先端支の一方端面が皿バネに対し安定した座り面を提供することで皿バネによる圧縮応力を切削工具の軸方向にロスなく作用させることができる。また、上記先端支は、先端部形状が円錐状で、穴底も円錐状であることから、先端支と穴底が全面当たりとなり、皿バネからの圧縮応力が工具本体の軸方向にロスなく作用し、この部分で振動を効果的に減衰させる作用を与える。これにより、防振性能が大きく改善し、超硬合金に匹敵するかあるいはそれを越える防振性能を発揮することが可能となる。
【0017】
【0018】
特に、先端支として高密度タングステンもしくは超硬合金を用いると、高密度材料が切刃部近傍に配置されることとなり、防振性能をさらに高めることができる。
【0019】
【0021】
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0023】
【0024】
図1において、1は旋盤などの工作機械本体に取り付けられて切削加工を行う切削工具、2は該切削工具1が備える工具本体、9は該工具本体2が備えるシャンク部、3は工具本体2が備える切刃部、4は工具本体2に穿設した穴、5は該穴4に嵌装した軸体、6は穴4に嵌装した皿バネ、8は穴4を封止する埋栓である。
【0025】
【0026】
前記棒状体の工具本体2は、不図示の工作機械本体に取り付けるためのシャンク部9と該シャンク部9の先端側に切刃部3とを備える。該切刃部3には、スローアウェイチップ17が着脱自在に取り付けられる。また、工具本体2には後端から先端側に向けて穴4が穿設され、該穴4の円錐状の穴底4bに面当接すべく先端部形状が円錐状の先端支7を設けるとともに、この先端支7に当接して皿バネ6を設け、この皿バネ6をその先端で圧縮するよう防振用軸体5を前記穴4内に装着している。前記穴4の入口部はその穴径が若干大きくなっており、穴を封止するべく埋栓8を圧入するよう構成されている。
【0027】
【0028】
各部材の材質は、工具本体2と皿バネ6が鋼材により構成され、防振用軸体5がハイス、超硬合金やサーメット等のヤング率270GPa以上の高剛性材で、先端支7は鋼材、または高密度タングステン、超硬合金などの高ヤング率材料で構成される。前記工具本体2を構成する鋼材の材種は、クロム・モリブデン鋼、ニッケル・クロム鋼、ニッケル・クロム・モリブデン鋼等の合金鋼や、鉄にC,Si,Mn,P及びSの5元素が入った炭素合金鋼をベースにクロム、タングステン、マンガン、モリブデン、バナジウムなどを添加した合金鋼などがある。また、前記皿バネ6を構成する合金鋼の材種は、ダイス鋼、バネ鋼、ベアリング鋼、炭素鋼などがある。なお、前記皿バネ6として、たわみ量0.4〜3.0mm程度のものが好ましい。埋栓8は前記工具本体2と同一か或いはアルミニウム等の軟質金属で構成することもできる。
【0029】
【0030】
前記切削工具1は、前記防振用軸体5の先端で皿バネ6を穴底4b側に圧縮した構造であるので、皿バネ6の大きな反発力で穴底4bと防振用軸体5が相半方向に押圧される。この内圧により、シャンク部9の外周部分に軸方向の強力な圧縮応力が発生する。この圧縮応力は、鋼製のシャンク部9の耐衝撃強度を損なうことなく、高剛性の防振用軸体5により大幅に補強されたシャンク部9の剛性をさらに補強する。
【0031】
【0032】
前記先端支7は、その一方端面が皿バネ6に対し安定した座り面を提供することで皿バネ6による圧縮応力を工具本体2の軸方向にロスなく作用させることができる。また、前記先端支7の先端面は円錐状であるとともに、穴底も円錐状であることから、先端支7と穴底4bが全面当たりとなり、皿バネ6からの圧縮応力が工具本体2の軸方向にロスなく作用し、この部分で振動を効果的に減衰させる作用を与える。これにより、防振性能が大きく改善し、超硬合金に匹敵するかあるいはそれを越える防振性能を発揮することが可能となる。特に、前記先端支7として高密度タングステンもしくは超硬合金を用いると、高密度材料が切刃部3近傍に配置されることとなり、防振性能をさらに高めることができる。ここで、高密度タングステンとは密度が15g/cm3を越えるタングステン材である。
【0033】
【0035】
【0036】
なお、前記切削工具1は多くの部分を安価な鋼材で構成しているため、一部に超硬合金などの高価な素材を用いても全体として比較的安価に製造することができる。
【0037】
【0038】
前記防振用軸体5を嵌挿するには、焼き嵌め法を用いることができる。すなわち、工具本体2を予め高温に熱して穴4を拡げ、この穴4内に先端支7と防振用皿バネ6を挿入した後、防振用軸体5を油圧プレス機により後側より押し込み、工具本体2の熱が冷めて穴4が収縮し、防振用軸体5が穴4の穴壁4aに圧接固着するまでその状態を保持する。以上のような方法でもって、前記防振用軸体5を穴4内に嵌挿することができる。この他、軸体5と穴4の穴壁との間に接着材を介在させる方法や、軸体5の後側の穴4内にセメントを充填する方法や、押し込みねじなど、任意の方法や部品により軸体5を穴4内に嵌挿すれば良い。
【0039】
【0040】
以上、本発明の実施形態例を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、発明の目的を逸脱しない限り任意の形態とすることができることは言うまでもない。例えば、高剛性、或いは、高精密加工用の外径旋盤ホルダなどである。
【0041】
【0042】
【実施例】
図1に示す切削工具1を工具機械本体(旋盤)に装着し、下記の条件で突き出し量L/加工径Dの比(L/D)を変えながら加工し、ビビリ振動が起こらない最大の突き出し量を測定した。
【0043】
【0044】
加工条件は次のとおりである:
V(切削速度)=100m/min
d(切り込み)=0.5/1.0mm
f(送り)=0.1mm/rev
湿式加工
ワーク材質:SCM415
防振用軸体材質:K10種超硬合金(JIS B 4053:1996)
この際、前記先端支7の素材を以下のように変え、それぞれ前記突き出し量と加工径の比(L/D)を測定した。素材は次のとおりである:
A:SKD61
B:K10種超硬合金
C:高密度タングステン((株)東芝製 WHA−H60)
また、比較例としてD:オール超硬合金(K10種)の工具本体のものについても測定した。
【0045】
【0046】
その結果、前記L/Dは:
A:6.0
B:7.0
C:8.0
D:6.5
であった。Aは比較例よりも若干劣ったが、これに近い防振性能であり、B,Cは比較例を凌駕していた。
【0047】
【0048】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、工作機械本体に取り付けるためのシャンク部の先端側に切刃部を備えた棒状の鋼製工具本体の軸方向に穴を形成し、この穴の円錐状の穴底に面当接すべく先端部形状が円錐状の先端支を設けるとともに、この先端支に当接して皿バネを設け、この皿バネをその先端で圧縮するよう防振用軸体を前記穴内に装着したことにより、皿バネが円錐状となった穴底に直接着座する場合に比べ、上記先端支の一方端面が皿バネに対し安定した座り面を提供することで皿バネによる圧縮応力を切削工具の軸方向にロスなく作用させることができる。また、上記先端支の先端部形状が円錐状で穴底も円錐状であることから、先端支と穴底が全面当たりとなり、皿バネからの圧縮応力が工具本体の軸方向にロスなく作用し、この部分で振動を効果的に減衰させる作用を与えることができる。これにより、防振性能が大きく改善し、超硬合金に匹敵するかあるいはそれを越える防振性能を発揮することが可能となる。なお、かかる切削工具は多くの部分を安価な鋼材で構成しているため、一部に超硬合金などの高価な素材を用いても全体として比較的安価に製造することができる。
【0049】
【0050】
また、先端支として高密度タングステンもしくは超硬合金を用いると、高密度材料が切刃部近傍に配置されることとなり、防振性能をさらに高めることができる。
【0051】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明一実施形態の切削工具を示し、(a)は要部破断側面図、(b)は要部を透視した斜視図である。
【符号の説明】
1 切削工具
2 工具本体
3 切刃部
4 穴
4a 穴壁
4b 穴底
5 軸体
6 皿バネ
7 先端支
17 スローアウェイチップ
8 埋栓
9 シャンク部
Claims (2)
- 工作機械本体に取り付けるためのシャンク部の先端側に切刃部を備えた棒状の鋼製工具本体の軸方向に穴を形成し、この穴における、前記工具本体の軸上に頂点を有する円錐状の穴底に面当接すべく先端部形状が円錐状の先端支を設けるとともに、この先端支に当接して皿バネを設け、この皿バネをその先端で圧縮するよう防振用軸体を前記穴内に装着したことを特徴とする切削工具。
- 前記先端支が高密度タングステンもしくは超硬合金からなることを特徴とする請求項1記載の切削工具。
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