JP3847071B2 - 粉粒体充填管の製造方法およびその装置 - Google Patents

粉粒体充填管の製造方法およびその装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は炭素鋼、ステンレス鋼、銅合金、アルミニウム合金その他の金属管に粉粒体を充填した粉粒体の製造方法およびその装置に関する。ここで、粉粒体とは溶接用フラックス、酸化物超電導材、溶鋼用添加剤などの粉体、粒体または粉体と粒体の混合物をいう。
【0002】
【従来の技術】
粉粒体充填管の一つとして、溶接用フラックス入りシームレスワイヤがある。この溶接用フラックス入りシームレスワイヤの製造では、金属帯板を所要の幅でスリッティングし、スリット後の金属帯板を成形ロールによりU字形からO形に漸次成形する。この成形途中でU字形金属帯板の長手方向に沿った開口にフラックス供給用フィーダーを設置し、フラックスの供給を行った後、O字形に成形してエッジ面を溶接により接合し、引き続いて縮径する。さらに必要に応じて焼鈍したのち、所望の径に伸線、巻き取って製品とする。
【0003】
上記溶接用フラックス入りシームレスワイヤの製造における溶接方法として、高周波誘導溶接法、高周波抵抗溶接法等の高周波溶接が広く用いられている。これら溶接法は、O字形に成形した突合せ部を高周波電流の誘導加熱または抵抗加熱により、溶融温度まで加熱し、スクイズロールで両端を圧接して接合する。
【0004】
ところで、フラックスを充填し溶接した管を圧延、伸線等により縮径する際に、管外皮に割れが発生することがある。この割れの原因として、溶接時に管状体の開口エッジ面にフラックス粒子の一部が吸着する。すなわち溶接位置では、高周波溶接電流によって管状体の開口エッジ部は磁極となり、磁場を形成する。磁場がフラックスまで及ぶ場合、フラックス中の磁性成分は、磁力により開口エッジ部に吸着される。このとき弱磁性成分および非磁性成分も磁性成分に伴われ開口エッジ部に吸着することがある。これら開口エッジ部に吸着したフラックス粒子は、接合溶接部に介在物として残り、溶接欠陥となる。この粉粒体充填管の溶接欠陥は、縮径時に割れ欠陥となる。縮経時に発生した割れは長く伸びて製品、すなわち溶接用フラックス入りシームレスワイヤに持ち込まれ、溶接作業性を劣化させる。
【0005】
このような問題を解決する技術の一つに特開昭60−234794号公報で開示された「溶接用複合ワイヤ」があり、非透磁率が1.10以下の粉末原料の実質的に非磁性の粉体を充填し、粉体が磁気吸引により開口エッジ部に吸着するのを防止する。また、特開昭60−234792号公報の「フィラーワイヤ及びその製造方法」があり、強磁性材またはフェライト系材料を下層に、非磁性体の粉体材料を前記下層の上に散布し、粉体が磁力により開口エッジ部に吸着するのを防止している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開昭60−234794号公報記載の技術では強磁性粉を全く含有することができないので、高品質、高能率の溶接用フラックス入りシームレスワイヤを製造することができない。また、特開昭60−234792号公報の方法では上層は非磁性材料のみ、下層は強磁性材料(またはフェライト系材料)のみの分離方式であることから、縮径途中に管外皮の応力除去のための焼鈍、あるいは脱水素のための熱処理を施した場合に、強磁性材料粉(鉄粉等)同士が焼結して塊状となり、その結果、その後の縮経、伸線時に管外皮に局部的な薄肉化現象が生じて断線を誘発するようになる。
【0007】
このように上記従来技術はいずれも実用上の問題点を有し、管縮経時の外皮割れ発生を防止するという課題は依然として残されていた。外皮割れは一度発生すると、最初は微少な割れでも、管の縮径サイズが小さくなるにしたがって管長手方向に延び、製品サイズでは無視できない程度の長さとなる。
【0008】
そこで、この発明は、健全な接合溶接部を得ることにより管縮経時の外皮割れをなくして製品歩留まりの向上を図ることができ、しかも製品品質の良好な粉粒体充填管の製造方法およびその装置を提供することを目的とする。
【0009】
【発明を解決するための手段】
この発明の粉粒体充填管の製造方法およびその装置の要旨は、
(1)金属帯板を長手方向に送りながら成形ロールにより連続的にオープン管に成形し、該成形途中のオープン管に空隙を残すようにして粉粒体を供給し、次いでオープン管を空隙部を有する円管に成形して対向する開口エッジ面を突合せ溶接し、該溶接管を縮径して粉粒体充填管を製造する方法において、突合せ溶接点近傍の前記空隙部に耐熱性および電気絶縁性を有するケースに収納された高透磁率材料からなる棒状の高透磁率コアを挿入し、該高透磁率コアにより開口エッジ面と粉粒体間の磁力線を吸収することを特徴とする。
また、ケースに収納された高透磁率コアをキュリー点以下に冷却することを特徴とする粉粒体充填管の製造方法にある。
(2)金属帯板を長手方向に送りながら成形ロールにより連続的にオープン管に成形する装置、該成形途中のオープン管に空隙を残すようにして粉粒体を供給する装置、オープン管の対向する開口エッジ面を突合せ溶接する溶接装置、および縮径装置を備えた粉粒体充填管の製造装置において、突合せ溶接点近傍の空隙部に耐熱性および電気絶縁性を有するケースに収納された高透磁率材料からなる棒状の高透磁率コアを備えたことを特徴とする。
また、ケースは冷媒の循環機能を有し、冷媒供給管および冷媒排出管に連接されていることを特徴とする粉粒体充填管の製造装置にある。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、溶接用フラックス入りシームレスワイヤの製造方法およびその装置を例として詳細に説明する。
【0011】
図1は溶接用フラックス入りシームレスワイヤ製造装置の主要部の構成図である。金属帯板1の送り方向に沿って成形ロール2群、シームガイド3、高周波誘導溶接装置4、および縮径ロール群5が順次配列されている。成形ロール2の間にフラックス供給装置6が配置されている。高周波誘導溶接装置4はワークコイル7およびスクイズロール8を備えている。ワークコイル7には高周波電源16から200〜800kHzの高周波溶接電流Isが供給される。
【0012】
高周波誘導溶接装置4近傍のフラックス9と溶接される開口エッジ面10との空隙部に耐熱性および電気絶縁性を有するケース11に高透磁率材料からなる棒状の高透磁率コア12を配置することによって開口エッジ面10とフラックス9間の磁力線17を吸収している。ここで、高透磁率材料とは鉄酸化物系のフェライトやNi−Fe系合金系のパーマロイ等をいうが、本発明においては電気絶縁抵抗が大きい鉄酸化物系のフェライトが好ましい。また、高透磁率コア12は導磁率が大きく磁束密度を集中させることができるので溶接入熱量を低くすることができる。
【0013】
図2に高周波誘導溶接装置4近傍の斜視図を示す。高周波溶接電流Isの供給で開口エッジ面10近傍から溶接点18に向かって高周波誘導電流Ioが流れ、この高周波誘導電流Ioによって開口エッジ面10が磁極となり磁力線17が生じる。
【0014】
図3に図2のA−A′断面図を示す。高周波誘導電流Ioによって磁極となった開口エッジ面10からの磁力線17はフラックス9表面まで到達、フラックス9中の磁性成分は磁力により開口エッジ面10に吸着される。また弱磁性成分および非磁性成分も磁性成分に伴われて開口エッジ面10に吸着される。開口エッジ面10に吸着したフラックス粒子は、接合溶接部に介在物として残り、縮径時に割れが発生する。
【0015】
図4は本発明の原理を示す模式図で、フラックス9と溶接される開口エッジ面10との空隙部に高透磁率コア12を設置した場合の、高周波誘導電流Ioによって磁極となった開口エッジ面10の磁力線17の状態を示す。開口エッジ面10の磁力線17は高透磁率コア12で吸収されてフラックス9の表面に達しない。
【0016】
したがって、開口エッジ面10に磁性成分を含むフラックス9の粒子が吸着されることがなく、接合溶接部に介在物として残ることがないので、縮径しても割れが発生することがない。
【0017】
なお、高透磁率コア12の形状は、図6(a)に示すように丸型、図6(b)に示すように平角型等どのような形状でもよく、図6(c)に示すように複数配置しても良い。また、高透磁率コア12の大きさは、溶接点18近傍の外皮内径および開口エッジ面10とフラックス9との間の空隙部の大きさ、およびケース11の大きさより決定されるが、溶接用フラックス入りシームレスワイヤ製造時の場合、溶接点18近傍の外皮内径が15〜27mmで、フラックス9は管内部の1/3〜2/3程度供給されるので2〜5mmの丸型または平角型であることが好ましい。長さは、スクイズロール8の中心から若干ワークコイル7よりから少しシームガイド3側まであれば高透磁率コア12の効果は得られるが、溶接用フラックス入りシームレスワイヤ製造時の場合50〜500mm程度が構造上好ましい。
【0018】
また、図5に示すように高透磁率コア12は高周波誘導溶接による輻射熱で加熱され、キューリー点(約200〜300℃)を超えて加熱されないように、耐熱性および電気絶縁性を有するケース11に収納する。
【0019】
なお、耐熱性および電気絶縁性を有するケース11は、テフロン、セラミックス、耐熱強化ガラス類、石英等で作られている。
【0020】
さらに、ケース11に収納された高透磁率コア12は冷媒でキュリー点以下に冷却する。高透磁率コア12を収納するケース11は、冷媒の循環機能を有し、冷媒供給管13および冷媒排出管14に連接され、冷媒を冷媒循環装置15から冷媒供給管13を介してケース11に供給し、高透磁率コア12を冷却した後冷媒排出管14を通って冷媒循環装置へと送られる。これによって、高透磁率コア12の温度は長時間にわたって溶接用フラックス入りシームレスワイヤを製造しても60℃以下に保たれ、開口エッジ面10とフラックス9間の磁力線17を吸収でき、フラックス9が開口エッジ面10に吸着されることはない。また、図6(b)に示すように高透磁率コアが2本(複数)の場合は、ケース先端部をU字型に曲げて冷媒供給管と冷媒排出管とに端部を連接すれば冷媒の循環が良くなって、高透磁率コアの冷却効果が向上する。
【0021】
冷媒としては、水、冷却ガスなどの液体または気体を用いることが可能であるが、工業的に長時間連続的に使用できる水が最も適している。
【0022】
なお、高透磁率コア12を収納したケース11と該ケース11に連接された冷媒供給管13および冷媒排出管14からなる装置は、フラックス供給装置6下流のU字形金属帯板の開口部からフラックス9と開口エッジ面10との空隙部でかつケース11先端部をスクイズロール8位置前後まで挿入して吊り上げ、溶接用フラックス入りシームレスワイヤ製造装置の架台に上下左右調整可能な状態で固定される。
【0023】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
板厚2.5mm、幅75mmの金属帯板(SPHC,C=0.05%)を、図1に示す溶接用フラックス入りシームレスワイヤの製造装置を用いて外径25.5mm、内径20.5mmの管に成形した。成形途中のオープン管の開口部から表1に示す鉄粉20〜60%含む組成のフラックスを、表2に示す管内面高さまで供給し、オープン管を連続的に突合せ溶接した。なお、表1に示す各フラックスは水ガラスで造粒し、500μm以下の粒度とした。
【0024】
【表1】
Figure 0003847071
【0025】
高透磁率コアは鉄酸化物系のフェライト(以下、フェライトコアという。)を用いて表2に示す形状、サイズを各種ケースに収納して図1および図5に示すように冷媒供給管および冷媒排出管に連接してフラックス供給装置下流のU字形金属帯板の開口部からフラックスと開口エッジ面との空隙部でかつケース先端部をスクイズロール位置前後まで挿入した。なお、冷媒は水を用い、ラジエタを有する冷媒循環装置を用いて流量1リットル/minでフェライトコアを冷却した。ケースは外径6mmで長さはフェライトコアの長さより50mm長いものを用い、冷媒供給管および冷媒排出管はそれぞれ外径6mm、内径4mmのステンレス管を用いた。
【0026】
溶接条件は、高周波溶接電流の周波数450〜500kHz、入熱量(EpIp)P=100〜160kVA、溶接速度は35m/min、ワークコイルから溶接点距離40mm、アペックス角は7°であった。溶接した管を圧延ロール群により途中1回の連続焼鈍を施してコイルに巻き取った。ついで孔ダイスまたはローラダイス等により仕上げ伸線して外径1.2mmの製品サイズまで各条件5トン製造して製品ワイヤの割れの有無を調べた。
【0027】
割れの調査は外径1.2mmの製品ワイヤ全長にわたってワイヤ外皮の渦流探傷試験(ECT)を実施して割れの有無と位置を確認し、割れ信号が出た該当部分を拡大鏡で観察して割れの存在を確認することにより実施した。それらの結果を表2にまとめて示す。
【0028】
【表2】
Figure 0003847071
【0029】
表2中、試験No.1からNo.4が本発明例、試験No.5およびNo.6が比較例である。
【0030】
本発明例である試験No.1からNo.4は、溶接点近傍のフラックスと開口エッジとの空隙部に管に沿って耐熱性および電気絶縁性を有するケースに収納されたフェライトコアで開口エッジ面と粉粒体間の磁力線を吸収している。したがって、開口エッジ面にフラックスの粒子が吸着されることがなく、接合溶接部に介在物として残ることがないので、縮径しても割れは生じなかった。また、ケースに収納されたフェライトコアは循環水で冷却されているので、フェライトコアが加熱されてキューリー点を超えることがないので、長時間溶接用フラックス入りシームレスワイヤを製造しても磁力線吸収の効果が劣化することはなく割れは皆無であった。さらに、別途溶接試験した結果も良好で極めて満足な結果であった。
【0031】
なお、水冷フェライトコアを設置した場合の適正溶接入熱量は100kVAであり、これはフェライトコアなしの場合(160kVA)の約62%で大幅な電力節減となった。
【0032】
本発明例中試験No.4は、ケースに収納したフェライトコアを開口エッジとの空隙部に設置したが、水冷をしていないので500kg製造までは割れは生じなかったが、それ以後はフェライトコアが加熱されキューリー点を超えて磁力線の吸収効果がなくなって開口エッジ面にフラックスの粒子が吸着され、接合溶接部に介在物として残り、縮径時に割れが生じた。
【0033】
試験No.5は、フェライトコアを開口エッジとの空隙部に設置したが、フェライトコアがケースに収納されておらず、また水冷もされていないことからフェライトコアが加熱されキューリー点を超えて磁力線の吸収効果がなくなって開口エッジ面にフラックスの粒子が吸着され、接合溶接部に介在物として残り、縮径時に割れが生じた。
【0034】
試験No.6は、ケースに収納されたフェライトコアを設置していないので、開口エッジ面にフラックスの粒子が吸着され、接合溶接部に介在物として残り、縮径時に割れが生じた。
【0035】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の粉粒体充填管の製造方法およびその装置によれば、溶接点近傍のフラックスと開口エッジとの空隙部に管に沿って耐熱性および電気絶縁性を有するケースに収納された高透磁率材料からなる棒状のフェライトコアで開口エッジ面と粉粒体間の磁力線を吸収しているので、鉄粉等の強磁性成分を配合した粉粒体をオープン管内に供給する場合でも、高周波誘導溶接時に粉粒体粒子が磁力線により舞い上がり管状体のエッジ面に吸着することがない。したがってこの吸着に起因する管の割れは実質的になくなる。その結果、製品歩留まりの向上を図ることができ、しかも製品品質の良好な粉粒体充填管を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の粉粒体充填管を製造するための装置例を示すもので、溶接用フラックス入りシームレスワイヤ製造装置の主要部を示す構成図である。
【図2】従来の高周波誘導溶接装置近傍を示す斜視図である。
【図3】図2のA−A′断面図を示す。
【図4】本発明の原理を示す模式図である。
【図5】本発明の主要部を示す縦断面図である。
【図6】本発明のケースに収納された棒状の高透磁率コアの配置状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 金属帯板
2 成形ロール
3 シームガイド
4 高周波誘導溶接装置
5 縮径ロール群
6 フラックス供給装置
7 ワークコイル
8 スクイズロール
9 フラックス
10 エッジ面
11 ケース
12 高透磁率コア
13 冷媒供給管
14 冷媒排出管
15 冷媒循環装置
16 高周波電源
17 磁力線
18 溶接点
Is 高周波溶接電流
Io 高周波誘導電流

Claims (4)

  1. 金属帯板を長手方向に送りながら成形ロールにより連続的にオープン管に成形し、該成形途中のオープン管に空隙を残すようにして粉粒体を供給し、次いでオープン管を空隙部を有する円管に成形して対向する開口エッジ面を突合せ溶接し、該溶接管を縮径して粉粒体充填管を製造する方法において、突合せ溶接点近傍の前記空隙部に耐熱性および電気絶縁性を有するケースに収納された高透磁率材料からなる棒状の高透磁率コアを挿入し、該高透磁率コアにより開口エッジ面と粉粒体間の磁力線を吸収することを特徴とする粉粒体充填管の製造方法。
  2. ケースに収納された高透磁率コアをキュリー点以下に冷却することを特徴とする請求項1記載の粉粒体充填管の製造方法。
  3. 金属帯板を長手方向に送りながら成形ロールにより連続的にオープン管に成形する装置、該成形途中のオープン管に空隙を残すようにして粉粒体を供給する装置、オープン管の対向する開口エッジ面を突合せ溶接する溶接装置、および縮径装置を備えた粉粒体充填管の製造装置において、突合せ溶接点近傍の空隙部に耐熱性および電気絶縁性を有するケースに収納された高透磁率材料からなる棒状の高透磁率コアを備えたことを特徴とする粉粒体充填管の製造装置。
  4. ケースは冷媒の循環機能を有し、冷媒供給管および冷媒排出管に連接されていることを特徴とする請求項3記載の粉粒体充填管の製造装置。
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