JP3844985B2 - 通電加圧焼結装置および通電加圧焼結装置における酸化物焼結方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、通電加圧焼結装置および通電加圧焼結装置における酸化物焼結方法に関する。なお、通電加圧焼結装置は、内部に金属やセラミックス等の被焼結粉末が入れられた焼結型を加圧しながら通電し、通電により焼結型を発熱させ被焼結粉末を焼結させるための装置である。
【0002】
【従来の技術】
従来の通電加圧焼結装置は、焼結型および被焼結粉末が酸化することを防ぐために、真空または不活性ガスで満たされた真空チャンバ内で被焼結粉末を焼結している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、焼結型は高温高圧に耐え得るものでなければならないので、通常カーボン製のものが使用される。しかし、被焼結粉末が酸化ルテニウムストロンチウム(SrRuO3)等の酸化物である場合、高温高圧の雰囲気下では、焼結型中の炭素と被焼結粉末が反応するので、被焼結粉末が分解してしまい、焼結品を製造することができなくなるという問題がある。
【0004】
本発明はかかる事情に鑑み、酸化物の粉末であっても確実に焼結することができる通電加圧焼結装置および通電加圧焼結装置における酸化物焼結方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1の通電加圧焼結装置は、被焼結粉末である酸化物粉末が入れられる炭素含有素材製の焼結型と、該焼結型が収容され、内部に二酸化炭素を含有する充填ガスが充満される、気密な真空チャンバと、該真空チャンバ内において、前記焼結型を加圧し通電する焼結軸とからなり、前記真空チャンバ内において、前記充填ガス中における二酸化炭素の分圧が、前記焼結型中の炭素と前記酸化物粉末との反応が平衡状態となる圧力よりも高圧であることを特徴とする。
請求項2の通電加圧焼結装置における酸化物焼結方法は、被焼結粉末である酸化物粉末が入れられる炭素含有素材製の焼結型と、該焼結型が収容される気密な真空チャンバと、該真空チャンバ内において前記焼結型を加圧し通電する焼結軸とを備えた通電加圧焼結装置において、前記真空チャンバ内を、二酸化炭素を含有する充填ガスによって充満し、該充填ガス中における二酸化炭素の分圧を、前記焼結型中の炭素と前記酸化物粉末との反応が平衡状態となる圧力よりも高圧にした状態で、前記酸化物粉末を焼結することを特徴とする。
【0006】
請求項1の発明によれば、二酸化炭素を含有する充填ガスによって真空チャンバ内を充満しており、しかも、充填ガス中の二酸化炭素の分圧が、焼結型中の炭素と被焼結粉末が反応して生成される二酸化炭素の圧力よりも高くなるので、被焼結粉末が焼結型中の炭素と反応して分解されることを防ぐことができる。したがって、被焼結粉末が酸化物であっても確実に焼結することができる。
請求項2の発明によれば、二酸化炭素を含有する充填ガスによって真空チャンバ内を充満しており、しかも、焼結型中の炭素と被焼結粉末が反応して生成される二酸化炭素の圧力と、充填ガス中の二酸化炭素の分圧が同じとなるので、被焼結粉末が焼結型中の炭素と反応して分解されることを防ぐことができる。したがって、被焼結粉末が酸化物であっても確実に焼結することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は本実施形態の通電加圧焼結装置1の真空チャンバ2の概略説明図である。同図に示すように、本実施形態の通電加圧焼結装置1は、真空チャンバ2、焼結軸25および焼結型80を備えている。
【0008】
まず、焼結型80を説明する。
図1に示すように、焼結型80は、モールド81および上下一対のダイス82,83から構成されたものである。このモールド81および上下一対のダイス82,83は、いずれも黒鉛と、バナジウム、チタニウム、鉄、アルミニウム等を含む炭素含有素材によって形成されている。
モールド81は、中空部分を備えた環状に形成されたものである。各ダイス82,83は、その断面形状がモールド81の中空部分の断面形状と同じ形状に形成されたものである。例えば、モールド81の中空部分の断面形状が円形の場合、各ダイス82,83の断面形状も円形に形成されるし、モールド81の中空部分の断面形状が矩形の場合には、各ダイス82,83の断面形状も矩形に形成されるのである。
このため、モールド81の中空部分にダイス82の下端およびダイス83の上端を挿入すれば、モールド81と上下一対のダイス82,83によって囲まれた空間に酸化ルテニウムストロンチウム(SrRuO3)等、酸化物である被焼結粉末mを収容することができる。
【0009】
つぎに、真空チャンバ2について説明する。
図1に示すように、真空チャンバ2は中空かつ気密な容器であって、その内部に前記焼結型80を収容するためのものである。
この真空チャンバ2には、その内部と図示しない真空ポンプ等の真空引き手段、またはその内部と充填ガス供給手段との間を連通させる供給配管2dが設けられている。この供給配管2dの途中には、バルブBが介装されている。
【0010】
このため、供給配管2dによって、真空チャンバ2を真空ポンプと連通させれば真空チャンバ2内を真空にすることができるし、真空チャンバ2が充填ガス供給手段と連通させれば真空チャンバ2内に充填ガスを供給することができる。そして、バルブBを閉めれば真空チャンバ2を密閉することができる。
なお、真空チャンバ2と真空ポンプを連通させる配管と、充填ガス供給手段と真空チャンバ2を連通させる配管とをそれぞれ別々に設け、各配管にそれぞれバルブを設けてもよい。
【0011】
さらになお、図1において、符号2eおよび符号RBは、それぞれ真空チャンバ2を外部と連通させるリリーフ配管およびリリーフバルブを示している。このため、真空チャンバ2の充填ガスの圧力が設定圧力よりも高くなるとリリーフバルブRBが開き、真空チャンバ2内の充填ガスがリリーフ配管2eを通って外部に排出され、真空チャンバ2が充填ガスの圧力上昇によって破損することを防ぐことができる。
さらになお、リリーフバルブは手動で開閉するものでもよい。この場合、圧力ゲージ等の真空チャンバ2内の圧力を監視する装置を設けておけばよい。すると、真空チャンバ2内の圧力が高くなりすぎると、人がリリーフバルブを開いて真空チャンバ2内の圧力を下げることができるので、真空チャンバ2が充填ガスの圧力上昇によって破損することを防ぐことができる。
【0012】
つぎに、焼結軸25を説明する。
焼結軸25は、上下一対の加圧電極軸26,27から構成されている。上下一対の加圧電極軸26,27は、円柱状の部材であり、その素材は、電気伝導性があり、耐熱性がある、例えば黒鉛やシリコンカーバイド等である。
なお、上下一対の加圧電極軸26,27の素材は、電気伝導性があり、耐熱性があるという性質を有しておればよく、黒鉛やシリコンカーバイド等に限定されない。
【0013】
上方の加圧電極軸26は、垂直に配設されており、その上端が真空チャンバ2の外方に突出しており、図示しない機枠に固定されている。しかも、加圧電極軸26は、その外周面が真空チャンバ2と気密かつ揺動自在に取り付けられている。
前記加圧電極軸26の下方には、加圧電極軸27が加圧電極軸26と軸中心が一致するように、垂直に配設されている。この加圧電極軸27は、その下端部が真空チャンバ2の外方に突出しており、その下端が図示しない機枠に昇降自在に設けられており、例えば油圧シリンダ等によって昇降させることができる。そして、加圧電極軸27は、その外周面が真空チャンバ2に気密に固定されている。
前記加圧電極軸26および前記加圧電極軸27には、図示しない直流電源の正極および負極がそれぞれ接続されている。
【0014】
このため、加圧電極軸26と加圧電極軸27の間に前記焼結型80を設置して、シリンダ等によって真空チャンバ2とともに加圧電極軸27を押し上げて通電すれば、焼結型80を加圧しながら通電することができる。
しかも、上下一対の加圧電極軸26,27の外周面は真空チャンバ2に気密に取り付けられているので、真空チャンバ2が上方に移動しても真空チャンバ2内は気密に保たれる。
なお、下加圧電極軸27を昇降させる手段は特に限定されない。
【0015】
さて、充填ガスについて詳細に説明する。
充填ガスは、例えば、主成分として、二酸化炭素を含有するガスであり、その他の成分として、一酸化炭素(CO)や窒素(N2)等の不活性ガスを含有するものである。この充填ガスは、真空チャンバ2内において、充填ガス中における二酸化炭素の分圧が、焼結型80中に含まれる炭素と被焼結粉末mとが反応したときに発生する二酸化炭素の圧力よりも高い圧力となるように真空チャンバ2内に充填されている。つまり、被焼結粉末mの化学式をMOxとすると、以下の化学反応式が平衡状態となるように、真空チャンバ2内における充填ガスの二酸化炭素の分圧を調整しているのである。
mMOx+nC→M+nCO2(2n=m*x)
mMOx+nC←M+nCO2(2n=m*x)
なお、充填ガスは、その成分が二酸化炭素のみでもよい。
【0016】
つぎに、本実施形態の通電加圧焼結装置によって酸化物である被焼結粉末mを焼結する方法を説明する。
まず、真空チャンバ2内に被焼結粉末mが収容された焼結型80を収容し、この焼結型80を、上下一対の加圧電極軸26,27の間に配置する。
ついで、供給配管2dによって、真空チャンバ2内を真空引き手段で連通させて、真空チャンバ2内を真空引きする。そして、真空チャンバ2内が真空になると、バルブBを閉じる。
ついで、その後供給配管2dを充填ガス供給手段に接続し、バルブBを開くと真空チャンバ2と充填ガス供給手段が連通される。そして、充填ガス供給手段から真空チャンバ2内に充填ガスが供給され、真空チャンバ2内が、所望の圧力になると、バルブが閉じられ真空チャンバ2内が気密に密閉される。
【0017】
ついで、シリンダ等によって、真空チャンバ2とともに加圧電極軸27を押し上げて、上下一対の加圧電極軸26、27間に通電すれば、焼結型80内の被焼結粉末mが焼結される。
【0018】
このとき、焼結型80および被焼結粉末mは、いずれも高温となるため、焼結型80中の炭素と被焼結粉末mが反応しようとする。しかし、真空チャンバ2内における充填ガス中の二酸化炭素の分圧が、焼結型80中に含まれる炭素と被焼結粉末mとが反応したときに発生する二酸化炭素の圧力よりも高いので、焼結型80中の炭素と被焼結粉末mが反応できない。
したがって、被焼結粉末が焼結型80中の炭素と反応して分解されることを防ぐことができるので、被焼結粉末が酸化物であっても、確実に焼結することができる。
【0019】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、二酸化炭素を含有する充填ガスによって真空チャンバ内を充満しており、しかも、充填ガス中の二酸化炭素の分圧が、焼結型中の炭素と被焼結粉末が反応して生成される二酸化炭素の圧力よりも高くなるので、被焼結粉末が焼結型中の炭素と反応して分解されることを防ぐことができる。したがって、被焼結粉末が酸化物であっても確実に焼結することができる。
請求項2の発明によれば、二酸化炭素を含有する充填ガスによって真空チャンバ内を充満しており、しかも、焼結型中の炭素と被焼結粉末が反応して生成される二酸化炭素の圧力と、充填ガス中の二酸化炭素の分圧が同じとなるので、被焼結粉末が焼結型中の炭素と反応して分解されることを防ぐことができる。したがって、被焼結粉末が酸化物であっても確実に焼結することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施形態の通電加圧焼結装置1の概略説明図である。
【符号の説明】
1 通電加圧焼結装置
2 真空チャンバ
25 焼結軸
m 被焼結粉末
Claims (2)
- 被焼結粉末である酸化物粉末が入れられる炭素含有素材製の焼結型と、
該焼結型が収容され、内部に二酸化炭素を含有する充填ガスが充満される、気密な真空チャンバと、
該真空チャンバ内において、前記焼結型を加圧し通電する焼結軸とからなり、
前記真空チャンバ内において、前記充填ガス中における二酸化炭素の分圧が、前記焼結型中の炭素と前記酸化物粉末との反応が平衡状態となる圧力よりも高圧である
ことを特徴とする通電加圧焼結装置。 - 被焼結粉末である酸化物粉末が入れられる炭素含有素材製の焼結型と、該焼結型が収容される気密な真空チャンバと、該真空チャンバ内において前記焼結型を加圧し通電する焼結軸とを備えた通電加圧焼結装置において、
前記真空チャンバ内を、二酸化炭素を含有する充填ガスによって充満し、該充填ガス中における二酸化炭素の分圧を、前記焼結型中の炭素と前記酸化物粉末との反応が平衡状態となる圧力よりも高圧にした状態で、前記酸化物粉末を焼結する
ことを特徴とする通電加圧焼結装置における酸化物焼結方法。
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