JP3844397B2 - オートテンショナ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プーリに巻き掛けられたベルトに、所定の張力を付与するオートテンショナに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば自動車におけるカムシャフト等の複数の被駆動軸間に巻き掛けられたベルトの張力を一定にするために、摩擦式のオートテンショナが用いられている。
摩擦式のオートテンショナとしては、ベルトに接触させるプーリを、揺動部材によって回転自在に支持し、この揺動部材を固定軸に揺動自在に取り付けるとともに、摩擦抵抗を利用した揺動抵抗付与手段によって、上記揺動部材に揺動抵抗を付与することにより、ベルトの振動エネルギーを吸収するようにしたものが知られている(例えば、特開平2−168049号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
図9は、上記のような従来のオートテンショナにおける揺動部材の揺動角θに対するトルク(揺動トルク)の特性を示すグラフである。図示のように、トルクはヒステリシスを有し、ベルトの押し込み側及び戻り側におけるダンピングトルクは互いに同一値である。このことは、ベルトの押し込みと戻りとが同一の応答性を持って行われることを意味する。
一方、揺動部材がベルトを押し込む場合と、ベルトの張力の急速な増大により揺動部材が押し戻される場合とでは、望まれる応答性が異なっている。すなわち、張力を増加させるべくベルトを押し込む場合の揺動部材には、迅速な追随性が求められるが、例えば冷間時のエンジン始動時等においてエンジンから急激にベルトに張力が付与されたされた場合には、急速なベルトの張り動作に対して揺動部材がむしろ緩慢に応答して、性急に張力を弛めないことが望ましい。しかしながら、上記のように、ベルトの押し込み及び戻りの応答性は同一であるため、相反する状況の双方に適したダンピング特性を備えることはできなかった。従って、追随性の良さを優先すれば、冷間時のエンジン始動時等に一時的にベルトが弛み、ベルトの振動や異音が発生していた。
【0004】
上記のような従来の問題点に鑑み、本発明は、ベルトの弛みに対する迅速な追随性と、急速なベルトの張りに対する俊敏過ぎない応答性とを両立させることのできるオートテンショナを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のオートテンショナは、固定軸と、前記固定軸に軸支され、当該固定軸周りに揺動し、揺動基部側に前記固定軸と同心な円筒部が形成されている揺動部材と、前記揺動部材に軸支され、ベルトが巻き掛けられるプーリと、前記揺動部材に対して常に揺動抵抗を付与する第1の揺動抵抗付与手段と、前記プーリを前記ベルトに押しつける第1の方向に前記揺動部材を付勢する引張コイルばねと、前記円筒部内に前記固定軸に対する当該円筒部の回動によって係止及び蓄圧される弾性部材を有し、前記第1の方向と逆の第2の方向への揺動時において、所定の揺動途中位置まで当該弾性部材を自由な状態とし、当該揺動途中位置以降の揺動によってのみ、前記引張コイルばねとは別に、当該弾性部材に蓄圧することにより前記揺動部材に揺動抵抗を付与する第2の揺動抵抗付与手段とを備えたことを特徴とするものである(請求項1)。
上記のように構成されたオートテンショナにおいて、第2の揺動抵抗付与手段は、第1の方向とは逆の第2の方向への揺動時に、所定の揺動途中位置以降の揺動によってのみ弾性部材に蓄圧することにより、揺動部材に揺動抵抗を付与する。従って、ベルトの押し込み動作時に比して、戻り動作時の揺動抵抗が大きくなる。
【0006】
また、弾性部材は、戻り側に瞬発的に付与される揺動エネルギーを吸収するとともに、吸収したエネルギーの放出により、揺動部材に対してこれをベルトの押し込み方向へ押し戻す力を作用させる。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1の(a)は、本発明の第1の実施形態によるオートテンショナの正面図であり、図1の(b)は、(a)における点O1を通るI-I断面の要部を示す図である。また、図2は、エンジン等の固定部のベッド51に取り付けられた状態のオートテンショナを示す断面図であり、図1の(a)のII-II線における断面に相当する図である。
図2において、固定軸1は、ボルト52によりベッド51に取り付けられる固定部材であり、ボルト52が挿通される円筒形の軸部1aと、その端部に形成されたフランジ部1bとを有している。フランジ部1bの片面1c(図1の(b)参照)は、後述する摩擦面としての機能も有している(以下、摩擦面1cという。)。
【0008】
上記固定軸1の外周には、ナイロン46等の樹脂からなるブッシュ2が装着され、このブッシュ2を介して、アルミニウムダイカスト品からなる偏心円筒状の揺動部材3が回動自在に嵌合されている。この揺動部材3は、ボルト52の頭部及び固定軸1のフランジ部1bによって軸方向(図2の左右方向)への移動が規制されている。揺動部材3の揺動基部側(図2の右側)には、固定軸1と同心な円筒部3aが形成されており、この円筒部3aは、図1の(a)の点O1を回動中心として固定軸1周りに回動する。一方、揺動部材3の揺動側(図2の左側)は、上方に偏心した円筒形状であり、その中心は図1の(a)における点O2である。揺動部材3の揺動側外周には玉軸受4が外挿され、その可動側外輪がプーリ5となっている。従って、図1の(a)に示す点O1から偏心した点O2を中心としてプーリ5は回転し、点O1を回動中心とした円筒部3aの回動により、プーリ5は揺動する。これによって、プーリ5に巻き掛けられたベルト53の張力が変化する。
【0009】
図1の(b)に示すように、揺動部材3の一端側から固定軸1の軸方向に穿設された内部穴3bには、圧縮された状態の圧縮コイルばね6と、固定軸1の軸方向に移動可能で、圧縮コイルばね6によって付勢されることによりフランジ部1bの摩擦面1cに圧接する摩擦摺動部材7とが装着されている。摩擦摺動部材7は、耐摩耗性に優れるエンジニアリングプラスチックからなる。
なお、ベルト53の荷重によって揺動部材3が傾くことを圧縮コイルばね6の付勢力によって抑制すべく、上記内部穴3bは、ベルト53の荷重点Pに対して固定軸1を挟んだ略反対側の位置であって、固定軸1と同心の円周上の一箇所に設けられている(図1の(a)参照。)
【0010】
一方、上記圧縮コイルばね6及び摩擦摺動部材7と固定軸1を挟んで反対側の揺動部材3の内部には、円筒部3aの回動方向に沿って所定長の回廊状に内洞部3cが形成され、この中にピン8及び弾性部材9が設けられている。ピン8は固定軸1のフランジ部1bに固定された固定部材であり、取付洞部3c内に突出してストッパの作用をする。弾性部材9は、圧縮コイルばね、蛇腹状の折り曲げばね又はゴムであり、図1の(a)に示す自由な状態における弾性方向への長さが、ピン8と内洞部3cの一端側の壁面3c1との間の周長より短いことにより、内洞部3c内に遊挿されている。
【0011】
揺動部材3の円筒部3aの外周には、ブラケット10が圧入されている。図1において、ブラケット10は、円筒部3aに外接するリング部10aと、このリング部10aより外側に形成されたフランジ部10bと、このフランジ部10bからさらに外方に突設された舌片状の係止部10cと、揺動部材3の外周面の一点に突設された突起部3dと係合して、ブラケット10と揺動部材3との相対回転を規制する回り止め部10dとを備えている。
上記係止部10cには、一端が固定された引張コイルばね11の他端が係止されている。
【0012】
図3は、上記のように構成されたオートテンショナの一部の構成を概念的に示した斜視図である(但し、弾性部材9は図1及び図2と異なり、蛇腹状の折り曲げばねで示している。)。すなわち、固定軸1と揺動部材3との間には、2つの揺動抵抗付与手段が設けられており、そのうちの第1の揺動抵抗付与手段は、圧縮コイルばね6と、この圧縮コイルばね6に付勢されて摩擦面1cに対して固定軸1の軸方向に圧接された摩擦摺動部材7とにより構成される。この第1の揺動抵抗付与手段は、揺動部材3の揺動に対して常に揺動抵抗を付与する。一方、第2の揺動抵抗付与手段は、固定軸1に固定されたピン8と、このピン8に対して、固定軸1の周方向に対峙して配置され、揺動部材3により周方向に駆動される弾性部材9とによって構成される。この第2の揺動抵抗付与手段は、図1の(a)に示すプーリ5がベルト53に対して張力を付与する方向とは逆の方向に揺動したときにのみ、揺動部材3に対して、弾性部材9の蓄勢による揺動抵抗を付与する。
【0013】
上記のように構成されたオートテンショナは、図1の(a)に示す引張コイルばね11によって、ブラケット10及びこれと互いに固定された揺動部材3の円筒部3aが回動付勢され、これによって、プーリ5がベルト53に押し当てられる。
ベルト53の張力が弛んだ場合には、引張コイルばね11の付勢を受けたプーリ5が、摩擦摺動部材7と摩擦面1cとの摩擦抵抗を揺動抵抗としてベルト53に追随して揺動し、ベルト53に所定の張力を付与する。このときの揺動抵抗は、上記摩擦抵抗のみであるため、プーリ5は迅速にベルト53に追随して張力を付与する。
【0014】
一方、例えば冷間時のエンジン始動時等においてエンジンから急激にベルト53に張力が付与された場合には、引張ばね11が伸びて、プーリ5はベルト53から離反する方向に揺動を開始する。揺動の開始とともに、摩擦摺動部材7と摩擦面1cとの摩擦抵抗を揺動抵抗として、揺動部材3が固定軸1周りに回動する。これによって、内洞部3cの壁面3c1が周方向に移動開始する。そして、前述した弾性部材9の遊びの分だけ壁面3c1が移動すると、弾性部材9がピン8に当接するので、その後揺動部材3は弾性部材9を圧縮しなければ回動することができなくなる。
【0015】
上記の結果、強い揺動抵抗が揺動部材3に付与される。これによって、プーリ5の戻り動作が抑止され、ダンピングトルクは押し込み動作時より大きくなる。従って、ベルト53の張力は過度に弛められることがなく、ベルト53の振動や異音の発生を防止することができる。また、弾性部材9は、その圧縮により蓄えた弾性エネルギーを放勢しようとするため、揺動部材3はベルト53を押し込む方向に押し戻される力を受ける。従って、引張コイルばね11による付勢と相まって、ベルト53の張力の急速な弛みは確実に防止される。
図4は、上記のオートテンショナにおける、揺動角に対するトルクの特性である。押し込み側のダンピングトルクT1と、戻り側のダンピングトルクT2とは、T1<T2の関係にある。
【0016】
図5の(a)は、本発明の第2の実施形態によるオートテンショナの正面図であり、図5の(b)は、(a)のB−B線における要部断面図である。また、図6は、エンジン等の固定部のベッド51に取り付けられた状態の本実施形態のオートテンショナを示す断面図であり、図5の(a)のVI-VI線における断面に相当する図である。第1の実施形態との差異は、第2の揺動抵抗付与手段の構成にあり、具体的には、第1の実施形態におけるピン8に代えて、固定軸1に係止部1dを設けるとともに、第1の実施形態における弾性部材9に代えて板状の弾性部材12を設けたことにある。その他の構成は第1の実施形態と同様であるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0017】
図7は、上記第2の実施形態における一部の構造を概念的に示した斜視図であり、図5及び図7において、固定軸1におけるフランジ部1bの外端部の一箇所に、ストッパとしての係止部1dが突設されている。係止部1dは、その外周面1d3に対して内側面1d1の方が内側面1d2より緩斜面になるように形成されている。一方、弾性部材12は略円弧状のばね鋼等からなり、円弧状の保持部12a及び12eと、この保持部12a及び12eからそれぞれやや内方に折り曲げられた補助ばね部12b及び12dと、係止部1dの内側面1d1に対して若干の隙間を有しつつこれに沿うように、補助ばね部12b及び12dに対して外方に突出形成されたばね部12cとを有している。なお、補助ばね部12bは、係止部1dの内側面1d2に対して対向せず、両者の間には十分な隙間がある。弾性部材12は揺動部材3の一端側に内接して装着され、揺動部材3から内方に突設されたばね止め3eによって両端の移動を規制されることにより、揺動部材3に固定されている。
【0018】
上記のように構成された第2の実施形態のオートテンショナは、引張コイルばね11によって、ブラケット10及びこれと互いに固定された揺動部材3の円筒部3aが回動付勢され、これによって、プーリ5がベルト53に押し当てられる。
ベルト53の張力が弛んだ場合には、引張コイルばね11の付勢を受けたプーリ5が、摩擦摺動部材7と摩擦面1cとの摩擦抵抗を揺動抵抗としてベルト53に追随して揺動し、ベルト53に所定の張力を付与する。このときの揺動抵抗は上記摩擦抵抗のみであるため、プーリ5は迅速にベルト53に追随して張力を付与する。なお、揺動により、弾性部材12の補助ばね部12bが係止部1dに接近するが、前述のように、両者の間には十分な隙間があるため、当接しない。
【0019】
一方、例えば冷間時のエンジン始動時等においてエンジンから急激にベルト53に張力が付与された場合には、引張ばね11が伸びて、プーリ5はベルト53から離反する方向に揺動を開始する。揺動の開始とともに、摩擦摺動部材7と摩擦面1cとの摩擦抵抗を揺動抵抗として、揺動部材3が固定軸1周りに回動する。これによって、弾性部材12が周方向に移動開始し、ばね部12cが係止部1dの内側面1d1に当接する。従って、その後は、ばね部12c及びこれに連設されたばね補助部12b及び12dを変形させなければ、揺動部材3は回動することができなくなる。
【0020】
上記の結果、強い揺動抵抗が揺動部材3に付与される。これによって、プーリ5の戻り動作が抑止され、ダンピングトルクが押し込み動作時より大きくなる。従って、ベルト53の張力は過度に弛められることがなく、ベルト53の振動や異音の発生を防止することができる。また、弾性部材12は、その加圧変形により蓄えた弾性エネルギーを放勢しようとするため、揺動部材3はベルト53を押し込む方向に押し戻される力を受ける。従って、引張コイルばね11による付勢と相まって、ベルト53の張力の急速な弛みは確実に防止される。
図8は、上記のオートテンショナにおける、揺動角に対するトルクの特性である。押し込み側のダンピングトルクT3と、戻り側のダンピングトルクT4とは、T3<T4の関係にある。
【0021】
【発明の効果】
以上のように構成された本発明は以下の効果を奏する。
請求項1のオートテンショナによれば、第2の揺動抵抗付与手段を設けたことにより、ベルトの押し込み動作時に比して、戻り動作時の揺動抵抗が大きくなるので、ベルトの弛みに対する押し込み動作の迅速な追随性を維持しつつ、その一方で、急速なベルトの張りに対しては、戻り動作を抑止することができる。
【0022】
また、弾性部材の蓄によって戻り側への瞬発的な揺動エネルギーを吸収するとともに、吸収したエネルギーの放勢により、揺動部材をベルトの押し込み方向に押し戻す力を作用させることができるので、揺動付勢手段による付勢と相まって、ベルトの張力の急速な弛みを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態によるオートテンショナを示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)の点O1を通るI-I線における要部断面図である。
【図2】エンジン等の固定部に取り付けられた状態における第1の実施形態のオートテンショナを示す断面図であり、図1の(a)のII-II線における断面に相当する図である。
【図3】第1の実施形態によるオートテンショナの一部の構成を概念的に示した斜視図である。
【図4】第1の実施形態によるオートテンショナの揺動角とトルクとの関係を示すグラフである。
【図5】本発明の第2の実施形態によるオートテンショナを示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)の点O1を通るB−B線における要部断面図である。
【図6】エンジン等の固定部に取り付けられた状態における第2の実施形態のオートテンショナを示す断面図であり、図2の(a)のVI-VI線における断面に相当する図である。
【図7】第2の実施形態によるオートテンショナの一部の構成を概念的に示した斜視図である。
【図8】第2の実施形態によるオートテンショナの揺動角とトルクとの関係を示すグラフである。
【図9】従来のオートテンショナの揺動角とトルクとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 固定軸
1d 係止部
3 揺動部材
5 プーリ
6 圧縮コイルばね
7 摩擦摺動部材
8 ピン
9、12 弾性部材
53 ベルト

Claims (1)

  1. 固定軸と、
    前記固定軸に軸支され、当該固定軸周りに揺動し、揺動基部側に前記固定軸と同心な円筒部が形成されている揺動部材と、
    前記揺動部材に軸支され、ベルトが巻き掛けられるプーリと、
    前記揺動部材に対して常に揺動抵抗を付与する第1の揺動抵抗付与手段と、
    前記プーリを前記ベルトに押しつける第1の方向に前記揺動部材を付勢する引張コイルばねと、
    前記円筒部内に前記固定軸に対する当該円筒部の回動によって係止及び蓄圧される弾性部材を有し、前記第1の方向と逆の第2の方向への揺動時において、所定の揺動途中位置まで当該弾性部材を自由な状態とし、当該揺動途中位置以降の揺動によってのみ、前記引張コイルばねとは別に、当該弾性部材に蓄圧することにより前記揺動部材に揺動抵抗を付与する第2の揺動抵抗付与手段と
    を備えたことを特徴とするオートテンショナ。
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