JP3843535B2 - 水性インク組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、いわゆるインクジェットプリンタや文具、さらには各種印刷用途に用いられる水性インク組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
パーソナルコンピュータ等で作成した画像を紙やOHPフィルム等の被記録媒体に出力する方法の一つとして、インクジェット記録方式が使用されている。
【0003】
このインクジェット記録方式は、電界、熱、圧力等を駆動源としてインクの液滴をインクジェット用プリンターノズルから被記録媒体に向けて吐出させ被記録媒体に画像形成するものである。
【0004】
このようなインクジェット記録方式は低騒音であり、ランニングコストが安く、普通紙に画像形成でき、インクリボンやトナーカートリッジ等の廃棄物が生じないという長所を有する。また、水性インクを用いることにより、環境中に蒸散する有機溶剤を排除ないし低減することができるという長所も有する。そのため、近年、インクジェット記録装置は、オフィス用または個人記録用(家庭用)として急速に普及しつつある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、例えばインクジェットプリンタに使用されるインクには、下記のような特性が求められる。
【0006】
(1)プリンタヘッドの目詰まりを起こさないこと。
【0007】
(2)記録用紙に浸透し易いこと。
【0008】
(3)乾燥が速いこと。
【0009】
(4)保存安定性に優れること。
【0010】
これらの特性は、インクの組成、及びこの組成により決定される溶液物性により決定される。
【0011】
例えば、上記の特性(1)にはインクの湿潤性が、また特性(2)にはインクの表面張力が、そして特性(3)にはインクの乾燥性がそれぞれ密接に関与している。良好な湿潤性は、プリンタヘッドのノズルからいかなる状態下においても安定して吐出するために必要である。表面張力は、液滴の飛翔の方向性やドットの形成性、記録紙への浸透性あるいはサテライト発生の有無等の画像品質に密接に関係する。
【0012】
上述した各種インク特性を満足せしめるためには、水性インク組成物中の溶剤や添加剤のバランスの良い選択が求められる。溶剤としては、水の他に染料溶解剤が、また添加剤としては湿潤剤、界面活性剤、凝固点降下剤、消泡剤、さらには抗菌剤等が用いられる。
【0013】
従来、インクジェット記録用インクの表面張力をプリンタヘッドのノズルからの吐出に適した値に調整する方法としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等の低級の脂肪族1価アルコールを添加する方法が採用されている。他の筆記具等に用いられるインクにおいても、アルコール類を添加した水性インクが用いられる場合が多い。
【0014】
従来の水性インク組成物は、これら各種溶剤や添加剤により、水を含めると10種、あるいはそれ以上の成分の混合物となっている。
【0015】
そのため、各成分が互いに溶液物性に影響を及ぼしあい、最適な組成を決定することは容易でなく、これら物性を十分に満足するインク組成物の実現は難しいのが実情である。
【0016】
さらに、インクジェット記録では、特別のインク受容層が形成されていない普通紙に記録した場合、滲みやフェザリング、濃度ムラが発生するという共通の問題がある。特に複雑な文字や小さな文字になるほど滲みやフェザリングが目立ってしまい、見づらいものとなる。
【0017】
この対策として、インク中に更に高粘度溶剤(樹脂)を添加し色剤の移動を仰制し、滲みやフェザリングを防ぐ方法がある。
【0018】
しかしながら、粘度を高くすることにより滲みやフェザリングは抑えられるが、そのためにはかなりの添加を必要とし、その結果インクの粘度が高くなりすぎ、ノズルにおけるインク吐出速度の低下及び吐出量の低下が生じるという問題がある。
【0019】
また、インクの粘度が高くなっても表面張力が著しく低下すると、普通紙上でインクが広がりやすくなり、逆に滲みやフェザリングを引き起こしてしまうことも有り得る。
【0020】
本発明は、これらの問題点を解決しようとするものであり、単純な組成により湿潤性、表面張力等を制御することができ、さらには抗菌性等も制御することができる水性インク組成物を提供することを目的とする。
【0021】
また、本発明は、普通紙に対して印刷したときにも滲みやフェザリングの無い印刷が可能な水性インク組成物を提供することを目的とする。
【0022】
さらに本発明は、高粘度溶剤のように多量の添加を必要とせず、吐出特性にも優れた水性インク組成物を提供することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、水性インク組成物の湿潤性や表面張力をはじめとする溶液物性を制御するために、各種添加剤について鋭意検討を進めた結果、半極性ホウ素化合物がこの目的に沿う物質であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0024】
すなわち、本発明の水性インク組成物は、下記の化学式1に示す半極性ホウ素化合物を含有することを特徴とするものである。
【0025】
【化2】
【0026】
半極性ホウ素化合物は、一般的な環境下で優れた湿潤性を発揮し、これを添加することで、単純な組成であっても表面張力、湿潤性、乾燥性のバランスの良い水性インク組成物が実現される。
【0027】
また、特殊溶剤として上記半極性ホウ素化合物を添加することにより、紙上での色剤の移動が防止され、普通紙への印画した時の滲みやフェザリングを抑えられる。
【0028】
また、高粘度溶剤のように多量の添加を必要としないため、吐出性に悪影響を及ぼすこともない。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明の水性インク組成物は、前述の通り、化学式1に示す半極性ホウ素化合物を含有することを特徴とするものである。
【0030】
半極性ホウ素化合物は、有機ホウ素化合物において、分子内でプラス(+)とマイナス(−)の極性を持つ化合物である。B−O結合を持つ有機ホウ素化合物は、通常ならばホウ素は配位数3であるため結合角120°の平面結合をかたちづくるが、上記半極性ホウ素化合物は、電子供与性基がホウ素原子へ引きつけられ、4面体構造をとる。
【0031】
上記半極性ホウ素化合物としては、グリセリン2分子とホウ酸1分子とから合成され下記の化学式2で示されるジグリセリンボラートが代表的化合物である。本発明の水性インク組成物に用いる化学式1に示す半極性ホウ素化合物の参考例として、先ず、化学式1に示す半極性ホウ素化合物と同様の効果を得ることができる化学式2に示すジグリセリンボラートについて説明する。
【0032】
【化3】
【0033】
なお、ジグリセリンボラートの誘導体としては、下記の化学式3に示すように、ジグリセリンボラートに脂肪酸を反応させた化合物が挙げられる。具体的には、グリセリン・モノラウロイルグリセリン・ボラート、グリセリン・モノパルミトイルグリセリン・ボラート、グリセリン・モノステアロイルグリセリン・ボラート等を挙げることができる。
【0034】
【化4】
【0035】
その他、ジグリセリンボラートと1,3−ジメチル−1,2−イミダゾリジノンとを複合化した化合物等も使用可能である。
【0036】
本発明が適用された水性インク組成物に含有される半極性ホウ素化合物は、下記の化学式1に示す化合物である。
【0037】
【化5】
【0038】
上記半極性ホウ素化合物、例えば参考例となるジグリセリンボラートは、一般的な環境下において優れた湿潤性を有する。表1にジグリセリンボラート単独の湿潤性のデータを示す。これは、ジグリセリンボラート1gをガラスシャーレ上に滴下し、25℃、相対湿度50%の雰囲気下に放置し、一定時間経過後の吸湿による重量増加を調べたものである。
【0039】
【表1】
【0040】
また、半極性ホウ素化合物は、同時に抗菌性をも有する。例えば、ジグリセリンボラートにおいては、黄色ブドウ球菌に対するMIC(最小発育阻止濃度:日本化学療法学会 標準法に準拠して測定)が3200(μg/ml)以下というデータが得られている。
【0041】
上述の半極性ホウ素化合物の添加量の最適範囲は、水性インク組成物に含まれる色剤が染料であるか顔料であるかによって異なり、色剤が染料の場合には水性インク組成物全重量の0.5重量%〜3.0重量%とすることが好ましい。色剤が顔料の場合には、水性インク組成物全重量の0.05重量%〜10重量%の範囲とすることが好ましい。
【0042】
この含有量が少なすぎると所望の効果が十分に期待できず、滲みやフェザリングが発生する。逆に含有量が多すぎると、インクの色調、特性等に悪影響を及ぼす虞れがある。
【0043】
色剤である染料としては、水溶性染料として公知のものを含め、各種の天然染料、合成染料が使用できる。具体的には、ニトロソ系、ニトロ系、アゾ系、スチルベン系、ジフェニルメタン系、トリアリールメタン系、ザンセン系、アクリジン系、キノリン系、メチン系、ポリメチン系、チアゾール系、インダミン系、インドフェノール系、アジン系、オキサジン系、チアジン系、硫化系、アミノケトン系、オキシケトン系、アントラキノン系、インジゴイド系、フタロシアニン系等の染料を挙げることができる。
【0044】
顔料としては、例えば黒用顔料が挙げられ、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラックを挙げることができる。中でも、表面に酸性基を有するカーボンブラックを色剤とする水性インク組成物に適用すると、著しく顕著な効果が発揮される。
【0045】
これら色剤のインク中の含有量は、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%であり、所望の色調に応じて設定すればよい。
【0046】
本発明の水性インク組成物には、溶剤である水、色剤、上記半極性ホウ素化合物の他、水溶性有機溶剤を含有させてもよい。水溶性有機溶剤としては、脂肪族1価アルコール、多価アルコール、環状ケトンの少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0047】
脂肪族1価アルコールとしては、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール等が好ましい。
【0048】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコールやその誘導体がヘッド目詰まり防止やインク凍結防止の点から好ましい。
【0049】
環状ケトンとしては、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、炭酸プロピレン等が被記録材への浸透を良くするという点から好ましい。
【0050】
これら水溶性有機溶剤のインク中の含有量は、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは5〜20重量%である。
【0051】
さらに、本発明の水性インク組成物中には、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、pH調整剤のうちの少なくとも1種を含有させてもよい。
【0052】
界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩類等のアニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類等のノニオン界面活性剤が挙げられ、インクの表面張力を制御するとともに、インクの保存性を高める効果を有する。インクの表面張力は、好ましくは25〜70dyne/cm、より好ましくは30〜50dyne/cmの範囲であり、表面張力がこの範囲に入るように界面活性剤の添加量を調整することが好ましい。
【0053】
粘度調整剤は、インク液滴の吐出安定性を高める効果のあるものであればいかなるものであってもよく、例えば粘度上昇剤として水溶性樹脂であるポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらの添加量を調整することにより、インクの粘度を好ましくは1〜30cps、より好ましくは1〜15cpsの範囲とするのがよい。
【0054】
消泡剤は、インク中の気泡の発生を抑え、インクの吐出安定性を高める効果のある一般的な消泡剤を用いることができ、例えば脂肪族1価アルコールが挙げられる。この消泡剤のインク中の含有量としては、0.5〜20重量%とすることが好ましく、より好ましくは1〜10重量%である。
【0055】
防腐剤としては、インクの腐敗を防止し、インクの保存安定性を高める効果のある化合物が用いられ、具体的には、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム等が挙げられる。これら防腐剤のインク中の含有量は、好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.1〜2重量%である。
【0056】
pH調整剤としては、インクが接する部分の材料に及ぼす影響をなくし、使用される記録装置を保護するもの、あるいはインクの保存性を高める効果のある一般的なものを用いれば良く、これによりインク組成物のpHを7〜10の範囲に調整することが好ましい。かかるpH調整剤の具体例としては、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の各種有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物等の無機アルカリ剤、有機酸、鉱酸等が挙げられる。
【0057】
【実施例】
以下、この発明を適用した具体的な実施例について、実験結果を基に詳細に説明する。
【0058】
先ず、化学式1に示す半極性ホウ素化合物を含有した水性インク組成物の参考例として、半極性ホウ素化合物にジグリセリンボラートを用い、色剤として染料を用いた水性インク組成物について説明する。
【0059】
水性インク組成物の調製
ジエチレングリコールモノメチルエーテル10g、水溶性染料(C.I.ダイレクトブルー199、ダイワ化成社製、商品名C−319H、構造を化学式4に示す。)3g、ジグリセリンボラート0〜5.0g、残部が水からなる水性インク組成物を混合して100gとし、水性インク組成物A0〜A6を得た。各水性インク組成物の組成を表2に示す。
【0060】
【化6】
【0061】
【表2】
【0062】
このように調製した7種の水性インク組成物A0〜A6につき、粘度、表面張力、湿潤性及び乾燥性を評価した。
【0063】
粘度の測定
マイクロビスコメータ(栄弘精機社製)を用い、上記7種の水性インク組成物A0〜A6の粘度を測定した。
【0064】
上記測定機は、落球式の粘度計で、次式から粘度ηを算出する。
【0065】
η=K・(ρ1−ρ2)・t
η:動粘度
K:定数(mpa.s.cm/g.s)
ρ1:ボールの比重(g/cm)=約7.8
ρ2:テストサンプルの比重(g/cm)
t:ボールの落下時間
表面張力の測定
CBVP型表面張力計(協和界面科学社製、A3型)を用い、上記7種の水性インク組成物A0〜A6の表面張力を測定した。
【0066】
上記測定機は、輪環法を用いた表面張力計で、次式から表面張力γを算出する。
【0067】
γ=(P/L)・F
γ:表面張力
P:プレートを引き離すのに必要な力
L:プレートの周囲有効長
F:補正関数
湿潤性の測定
水性インク組成物A0〜A6を、個々にガラスシャーレ上に液滴が重ならないように10滴ずつ滴下し、温度25℃、相対湿度50%の環境下に1週間放置して、染料の結晶析出の有無を目視で評価した。測定評価「なし」は湿潤性に問題がなく、「あり」は湿潤性が低下して染料の結晶が析出した状態を表す。
【0068】
乾燥性の測定
各水性インク組成物A0〜A6を用い、市販のインクジェットプリンタ(ヒューレットパッカード社製、商品名HPデスクジェット1200C)により専用記録紙上に文字を印刷し、30秒後に同じ専用記録紙で印刷文字を擦り、インクの尾引き、すなわち記録紙の汚れの有無を評価した。「なし」は問題なく、「有り」は記録紙の汚れが発生したものである。
【0069】
以上の測定結果を表3に示す。
【0070】
【表3】
【0071】
表2及び表3から明らかなように、ジグリセリンボラートを用いた場合には、このジグリセリンボラートの添加により、水性インク組成物の粘度に影響を与えることなく、表面張力の値を徐々に減少し、記録紙への浸透性やインク液滴の吐出性能を向上できることがわかる。
【0072】
湿潤性に関しては、0.5重量%以上の添加により、いずれも良好な結果が得られ、インクジェットノズルの目詰まりの懸念がないことを示している。
【0073】
また、乾燥性については、3.0重量%以下の添加量でいずれも問題なく、印字の擦れによる汚れの虞れはない。
【0074】
以上の測定結果を総合すると、半極性ホウ素化合物としてのジグリセリンボラートを用いた場合には、このジグリセリンボラートを0.5重量%以上、3.0重量%以下添加することにより、表面張力を適正値に低減し、湿潤性及び乾燥性のバランスのよい水性インク組成物が得られることがわかる。また、抗菌性をも付与することが可能である。
【0075】
次に、本発明を適用した水性インク組成物について説明する。
【0076】
水性インク組成物A7
半極性ホウ素化合物として、先の化学式1に示す化合物を用い、他は水性インク組成物A3と同様の組成で水性インク組成物を調製した。
【0077】
この水性インク組成物A7についても同様の測定を行ったところ、粘度1.17cps、表面張力57.9dyne/cm、湿潤性「なし」、乾燥性「なし」であり、ジグリセリンボラートと同様の効果が認められ、湿潤性、乾燥性のバランスのよいインク組成物が得られることがわかった。
【0078】
次に、色剤に顔料(カーボンブラック)を用いた場合の半極性ホウ素化合物の添加効果について調べた。なお、半極性ホウ素化合物には、参考例として挙げたジグリセリンボラートを用いた。
【0079】
水性インク組成物B1
カーボンブラック(商品名MICRJET BLACK CW−1、オリエント化学工業社製) 15.00重量%
ジグリセリンボラート(ボロンインターナショナル社製) 0.05重量%
2−ピロリドン 18.00重量%
界面活性剤(商品名LB−120、ボロンインターナショナル社製) 0.03重量%
分散剤(商品名D−1038、東洋ペトロライト社製) 0.15重量%
イオン交換水 66.77重量%
上記成分を超音波をかけながら混合し、更に0.8μmディスポーザブルメンブランフィルターで濾過を行い、水性インク組成物B1を得た。
【0080】
水性インク組成物B2
カーボンブラック(水性インク組成物B1と同じ) 15.00重量%
ジグリセリンボラート(ボロンインターナショナル社製) 10.00重量%
2−ピロリドン 18.00重量%
界面活性剤(商品名LB−120、ボロンインターナショナル社製) 0.03重量%
分散剤(商品名D−1038、東洋ペトロライト社製) 0.15重量%
イオン交換水 56.82重量%
上記成分を超音波をかけながら混合し、更に0.8μmディスポーザブルメンブランフィルターで濾過を行い、水性インク組成物B2を得た。
【0081】
水性インク組成物B3
カーボンブラック(水性インク組成物B1と同じ) 15.00重量%
ジグリセリンボラート(ボロンインターナショナル社製) 0.05重量%
プロピレングリコール 18.00重量%
界面活性剤(商品名LB−120、ボロンインターナショナル社製) 0.03重量%
分散剤(商品名D−1038、東洋ペトロライト社製) 0.15重量%
イオン交換水 66.77重量%
上記成分を超音波をかけながら混合し、更に0.8μmディスポーザブルメンブランフィルターで濾過を行い、水性インク組成物B3を得た。
【0082】
水性インク組成物B4
カーボンブラック(水性インク組成物B1と同じ) 15.00重量%
ジグリセリンボラート(ボロンインターナショナル社製) 0.03重量%
プロピレングリコール 18.00重量%
界面活性剤(商品名LB−120、ボロンインターナショナル社製) 0.03重量%
分散剤(商品名D−1038、東洋ペトロライト社製) 0.15重量%
イオン交換水 66.79重量%
上記成分を超音波をかけながら混合し、更に0.8μmディスポーザブルメンブランフィルターで濾過を行い、水性インク組成物B4を得た。
【0083】
水性インク組成物B0
カーボンブラック(水性インク組成物B1と同じ) 15.00重量%
2−ピロリドン 18.00重量%
界面活性剤(商品名LB−120、ボロンインターナショナル社製) 0.03重量%
分散剤(商品名D−1038、東洋ペトロライト社製) 0.15重量%
イオン交換水 66.82重量%
上記成分を超音波をかけながら混合し、更に0.8μmディスポーザブルメンブランフィルターで濾過を行い、水性インク組成物B0を得た。
【0084】
(インク吐出性について)
得られた水性インク組成物B0〜B4について、振動式粘度計(秩父小野田社製、商品名CJV−5000)を用い、25℃における粘度を測定した。さらに、CBVP型式表面張力計(協和界面科学社製、商品名A−3型)を用いて表面張力を測定した。これらの測定結果を表4に示す。
【0085】
また、得られた水性インク組成物B0〜B4について、バブルジェット方式プリンター(商品名Color Ink Jet Printer XJ−500、富士通社製)を用い、インクを詰め替えることにより、リサイクル紙へプリンタ内蔵機能のクリーニングパターンを印画した。形成された印画物を目視で検査し、インクが安定に吐出されているか否かを評価した。その結果を併せて表4に示す。なお、表4において、インクが安定に吐出され、ドット欠陥およびサテライトが認められない場合を“○”、吐出が不安定でドット欠陥およびサテライトが認められた場合を“×”で示す。
【0086】
(滲みとフェザリングについて)
得られた水性インク組成物B0〜B4により、上記と同種のバブルジェット方式プリンターを用い、リサイクル紙へ印字を行った。この時の印画物としては、1mm四方の大きさの漢字(4種)を用い、拡大写真で滲み、フェザリングの有無を目視で評価した。結果を表4に示す。なお、表4において、滲み,フェザリングが見られない又はほとんど見られない場合を“○”、滲み,フェザリングが見られた場合を“×”で示す。
【0087】
【表4】
【0088】
表4から明らかなように、水性インク組成物B0、B4の印画物に滲み,フェザリングが見られた。つまり、ジグリセリンボラートを用いた場合には、0.05重量%以上添加することにより、滲み,フェザリングが改善されることがわかる。また、添加量が多いほど滲み、フェザリングが無くなることがわかった。
【0089】
ジグリセリンボラートの添加量の検討
先の実験で、ジグリセリンボラートの添加量が多いほど滲み、フェザリングが無くなることがわかった。そこで、添加量をさらに増やして実験を行った。
【0090】
カーボンブラック(水性インク組成物B1と同じ) 15.00重量%
ジグリセリンボラート(ボロンインターナショナル社製) 15.00重量%
2−ピロリドン 18.00重量%
界面活性剤(商品名LB−120、ボロンインターナショナル社製) 0.03重量%
分散剤(商品名D−1038、東洋ペトロライト社製) 0.15重量%
イオン交換水 51.82重量%
上記成分を超音波をかけながら混合し、更に0.8μmディスポーザブルメンブランフィルターで濾過を行い、水性インク組成物B5を得た。
【0091】
このインクについても同様の測定を行ったところ、粘度20.2m・Pa・s、表面張力39.3dyne/cmであり、吐出性の悪いものであった。
【0092】
したがって、ジグリセリンボラートの含有量が10重量%までは、吐出に悪影響しない粘度と表面張力が得られるが、15重量%以上では吐出へ悪影響を及ぼす粘度となってしまうことがわかる。
【0093】
色剤として使用するカーボンブラックについての検討
ここでは、表面上に酸性基を持つような化学処理を施していないカーボンブラックを用いて、実験を行った。
【0094】
カーボンブラック分散液の製造
カーボンブラック Degussa社製、商品名 PRINTEX25
15.00重量%
イオン交換水 90.00重量%
上記の組成を混合し下記の条件で分散処理を行った。
【0095】
分散機 サンドグラインダー(浅田鉄工社製)
粉砕メディア ガラスビーズ(直径1mm)
粉砕メディアの充填率 60%
粉砕時間 3時間
更に、遠心分離処理(5000rpm、10分間)を行い、粗大粒子を除去して分散液とした。
【0096】
顔料インクの製造
上記分散液 15.00重量%
ジグリセリンボラート(ボロンインターナショナル社製) 0.05重量%
2−ピロリドン 18.00重量%
界面活性剤(商品名LB−120、ボロンインターナショナル社製) 0.03重量%
分散剤(商品名D−1038、東洋ペトロライト社製) 0.15重量%
イオン交換水 66.77重量%
上記成分を超音波をかけながら混合し、更に0.8μmディスポーザブルメンブランフィルターで濾過を行い、水性インク組成物B6を得た。
【0097】
得られたインクは、インク化した時点でゲル化し、吐出に至らなかった。したがって、表面を酸性基を持つように化学処理してあるカーボンブラックを用いることで安定吐出するインクが得られることがわかる。
【0098】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明の水性インク組成物は、化学式1に示す半極性ホウ素化合物を含有しているので、単純な組成により、表面張力、湿潤性、乾燥性及び抗菌性の各種特性を同時に満たすことができる。これにより、例えばインクジェット記録における画像品質を向上することが可能である。
【0099】
また、本発明の水性インク組成物を用いることにより、滲みやフェザリングの発生を防止し、優れた画像を形成することができる。
【0100】
さらに、本発明の水性インク組成物は、高粘度溶剤のように多量の添加は必要なく、吐出性も良好である。
Claims (5)
- グリコール誘導体、環状ケトン誘導体から選ばれる少なくとも1種を含有していることを特徴とする請求項1記載の水性インク組成物。
- 色剤として染料を含み、上記半極性ホウ素化合物の含有量がインク全重量の0.5〜3.0重量%であることを特徴とする請求項1記載の水性インク組成物。
- 色剤として顔料を含み、上記半極性ホウ素化合物の含有量がインク全重量の0.05〜10重量%であることを特徴とする請求項1記載の水性インク組成物。
- 上記顔料が表面に酸性基を有するカーボンブラックであることを特徴とする請求項4記載の水性インク組成物。
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