JP3842249B2 - 構造物の疲労診断方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、振動環境下に設置された構造物の疲労診断を行う方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
例えば高速道路等の標識柱や照明柱は、走行車両や風によって基部に繰返し応力が作用し、疲労損傷を起こしやすい。これにより、突然倒壊した事例も報告されており、耐久性評価や保守点検の重要な課題となっている。最近、疲労試験データや構造設計手法による疲労設計を行うことも検討されているが、車両の走行量や風の強さなどは設置場所によって異なり、すべての疲労要因を網羅する設計基準の確立には至っていない。そこで、実際の現場では、基部等の被診断部位にひずみゲージを設け、これにヒストグラムレコーダを繋ぐ等して応力頻度を計測し、疲労度を診断していた。
【0003】
しかし、ひずみゲージを貼り付けるにはグラインダをかけなければならない。交通規制をしなければならないこともある。また、ヒストグラムレコーダ等のために一定容量の外部電源や足場の確保を要し、多大な労力とコストがかかる。そのため、機器の設置数に限度があり、高速道路等に延々と設けられた標識柱や照明柱を網羅するのは困難である。そこで出願人は、標識柱や照明柱の被診断部位に作用する振動応力と、そこから離れた別の部位の振幅(変位)との間に相関関係があることに着目し、上記別の部位に振動計測器を設け、この計測器による一定期間の計測データに基づいて被診断部位に作用した応力頻度を算出し、疲労診断を行なうことを提案した(特願2001−94483号)。
【0004】
一方、標識柱や照明柱の設置された高架橋等の親構造物自体が振動している場合もある。そのような場合には、計測器による計測値に親構造物の変位(すなわち標識柱や照明柱全体の変位)も含まれる。したがって、この計測値から求めた被診断部位の応力振幅が実際より大きくなり、疲労診断の精度に影響が出る。
また、計測器として、変位の大きさごとに別々の素子で感知する方式のものを用いたが、大型になってしまう問題もある。
【0005】
さらに、疲労損傷は、標識柱や照明柱のような片持ち状又は門型状のものに限られた問題ではない。例えば、多主桁橋梁においては、車両通行時の偏載荷によって主桁間に変位差が生じ、対傾構や横桁と主桁との接合部に疲労損傷が生じやすい。従来、以下のような手段によって主桁間の変位差を計測し、偏載荷による疲労度の診断を行なっていた。
(1)一方の主桁から他方の主桁に向けて治具を延ばし、この治具の先端に変位計を設けて他方の主桁との相対変位を測る。
(2)両方の主桁にそれぞれ変位計を設け、各計測器と地面との間にワイヤを張ることにより地面を基準とする各主桁の変位を測り、その差を取る。
しかし、変位計や治具又はワイヤ等の設置作業が主桁間の空間やその下の空間に渡る大掛かりなものとなり、上記標識柱や照明柱等の場合と同様に、一定容量の外部電源や足場の確保を要し、多大な労力とコストがかかる。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る疲労診断方法は、振動環境下にある被診断構造物の被診断部位又はそれと一体に変位する当該若しくは他の構造物の部位からなる第1部位と、この第1部位に対し相対変位する当該被診断構造物の第2部位とに振動計測器をそれぞれ設け、これら計測器によって上記各部位の変位の大きさごとの発生回数を示す変位データを一定期間にわたって採取した後、上記第1部位の変位データによって上記第2部位の変位データを第1部位に対する相対変位データに修正するとともに、この相対変位データに基づいて上記被診断部位の疲労診断を行なうことを第1の特徴とする。
【0007】
これによって、疲労診断を簡単、安価に行なうことができるだけでなく、被診断構造物全体ひいては被診断部位自体の振動の有無に拘わらず、被診断部位における応力頻度を正確に算出することができ、疲労診断の精度を高めることができる。
なお、「疲労診断」には、後記する疲労度(累積損傷度)の診断だけでなく、被診断構造物が疲労し易い箇所に設置されているかどうかを診断する場合をも含む。「疲労度(累積損傷度)」とは、被診断構造物の疲労損傷の進行の程度が、疲労破断に至る限界損傷度に対してどのくらいの割合に相当するかを示したものであり、「疲労度を診断する」とは、被診断構造物の供用開始から上記疲労破断に至るまでの疲労寿命、及び疲労寿命から供用期間を差し引いた残存寿命を求めることを含む。
第1、第2部位は、それぞれ1つに限られず、複数設定することができる。
例えば、被診断構造物が橋梁等の親構造物に設置された標識柱や照明柱であり、被診断部位が、これら柱の基部である場合、上記橋梁等の親構造物は、柱基部と一体に変位する「他の構造物」となり得る。
【0008】
第1、第2部位の各振動計測器による振動計測と同時並行して、これらの計測値どうしを照らし合わせることにより、上記第2部位の第1部位に対する相対変位の大きさごとの発生回数を示す相対変位データを一定期間にわたって採取し、その後、この相対変位データに基づいて上記被診断部位の疲労診断を行なうことにしてもよい(第2の特徴)。
これによって、被診断部位における応力頻度を一層正確に算出することができ、疲労診断の精度を一層高めることができる。
【0009】
上記第1、第2部位の主たる振動方向がそれぞれ分かっている場合(予備調査で事前に解析しておいた場合も含む)、振動計測器によって少なくとも上記主たる振動方向についてデータ採取(第1特徴では第1、第2部位の各々についての変位データの採取。第2特徴では相対変位データの採取。以下同様。)を行なうことにしてもよい。これによって、計測ひいては疲労診断の合理化を図ることができる。
この場合において、第1、第2部位の主たる振動方向が互いに同一の方向であれば、第1、第2部位の振動計測器は、共に、少なくとも当該一方向の振動を計測するようにする。第1、第2部位の主たる振動方向が互いに異なる方向であれば、第1、第2部位の振動計測器の何れもが、少なくともこれら2つの方向の振動を計測するようにする。例えば、第1部位の主たる振動方向が第1方向であり、第2部位の主たる振動方向が第2方向であることが分かっている場合、第1部位の振動計測器は、少なくとも第1、第2方向の振動を計測し、第2部位の振動計測器も同様に、少なくとも第1、第2方向の振動を計測する。そして、第1、第2方向の各々について相対変位データを算出(第1の特徴の「修正」と第2の特徴の「採取」の両方の意を含む。以下、同様。)する。
例えば、橋梁等の親構造物に設置された標識柱や照明柱等を被診断構造物とし、この柱の基部または親構造物の柱基部近傍部を第1部位とし、柱の中間部を第2部位とする場合、親構造物の主たる振動方向(第1部位の主たる振動方向)、及び被診断構造物自体の主たる振動方向(第2部位の主たる振動方向)は、それぞれ経験的に分かっていることが多い。予備調査によって主たる振動方向を把握しておいたうえで、本発明の計測を行なうことにしてもよい。
第1、第2部位の主たる振動の位相が、互いに180度ずれている場合(例えば、第1部位がx軸のプラス方向に振れる時、第2部位がx軸のマイナス方向に振れるような場合)には、両者の計測値の和を取ることにより相対変位データを算出する。
【0010】
上記被診断部位における疲労亀裂を起こしやすい振動方向が分かっている場合において、上記振動計測器によって少なくとも上記疲労亀裂を起こしやすい振動方向についてのデータ採取を行なうことが望ましい。
これによって、専ら疲労亀裂を起こしやすい振動方向についての採取データに基づいて疲労診断でき、診断の合理化と信頼度向上を図ることができる。
データ採取は任意の振動方向について行ない、疲労診断の段階で採取データを上記第1部位における疲労亀裂を起こしやすい振動方向のものに換算することにしてもよい。
【0011】
上記被診断構造物が、柱状物であり、その基端部には、補強リブが周方向に離れて複数設けられている場合、この補強リブの配置方向と同方向への振動についてのデータ採取を行なうことが望ましい。
補強リブの配置箇所はそれの無い箇所と比べて一般に疲労亀裂が起きやすいところである。そこの採取データに基づいて疲労診断でき、診断の合理化と信頼度向上を図ることができる。
【0012】
上記振動計測器によって振動の方向をも計測可能であり、振動の方向ごとにデータ採取を行なうことにしてもよい。
これによって、振動の方向をも考慮した疲労診断を行なうことができる。主たる振動方向が不明であっても、その方向を割り出すことができ、前記予備診断無しに適用することもできる。
【0013】
上記振動計測器が、設置された部位の加速度を計測し、この加速度計測値を変位に換算するのが望ましい。これによって、計測器を安価かつ小型にすることができる。更に、振動計測器が互いに直交する2又は3方向ごとに加速度成分を計測することが望ましい。これによって、応力頻度を平面的、立体的に解析でき、疲労診断の精度をより一層高めることができる。
【0014】
上記変位データの要素として、変位の回数に代えて(又はそれに加えて)変位の発生時刻を含ませてもよい。この時刻を含むデータは、上記主たる振動方向が判明していない場合や、不規則で特定しきれない場合等に有効である。例えば、第1、第2部位の各々について直交する3つの方向成分ごとに変位(又は換算前の加速度)の大きさと時刻からなる変位データを一定期間にわたって採取し、記憶手段に記憶させておく。振動計測器による所定個数(例えば256個)のサンプリング値ごとに1つの変位データとしてまとめて記憶することにしてもよい。その後、これら第1、第2部位の同時刻の変位データによって上記相対変位データを求め、この相対変位データに基づいて上記被診断部位の疲労診断を行なう。勿論、振動計測と同時並行して相対変位の大きさと時刻からなる相対変位データを算出し、これを記憶手段に記憶させておき、この相対変位データに基づいて疲労診断を行なうことにしてもよい。これによって、上記3つの方向成分の合成方向に振動している場合、その合成方向への変位の大きさを正確に把握することができ、疲労診断の精度を確保することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1実施形態を、図面を参照して説明する。
図1(a)及び(b)は、高速道路用の橋梁1(親構造物)を示したものである。橋梁1は、I断面桁からなる複数の主桁1aと、これら主桁1aの間に設けられた対傾構(又は横桁)1bと、主桁1aに支持された床版1cとを有している。床版1cの左右の地覆1dに照明柱2(被診断構造物)が立設されている。照明柱2は、道路に沿って間隔を置いて延々と多数設置されている。
【0016】
照明柱2は、走行車両や風荷重などの要因によって、特に基部(被診断部位2a)が疲労していく。
図2は、この被診断部位2aの疲労度を診断するための疲労診断システムSを示したものである。疲労診断システムSは、第1、第2振動計測器10A,10Bと、解析装置40とを備えている。図1に示すように、第1、第2振動計測器10A,10Bは、各照明柱2に上下に離れて配されている。すなわち、第1振動計測器10Aは、照明柱2の危険断面部である被診断部位(第1部位)2aに配されている。第2振動計測器10Bは、照明柱2の中途高さの第2部位2bに配置されている。2つの部位2a,2b間の距離Hは、所定(例えば1.5m〜2m)に設定されている。
【0017】
各計測器10A,10Bは、互いに同一構成をなし、計測器本体11と、その背面に設けられた取付けバンド12とを有している。計測器本体11が、照明柱2の周面に当てられるとともに、バンド12が、照明柱2に巻き付けられている。
【0018】
計測器本体11は、例えば16×8×6cmの密閉箱状をなしている。図2に示すように、この計測器本体11の内部に加速度計20とCPU21(変位データ作成手段)が収容されている。図2および図3に示すように、加速度計20は、例えば2軸の静電容量型加速度センサを2個組み合せることにより、x,y,zの互いに直交する3方向の加速度成分ax,ay,azを計測できるようにしたものである。例えば、1個の加速度センサの軸をx,y方向に取り、もう1個の加速度センサの軸をx,z方向に取ってある。
【0019】
ところで、図3に示すように、一般的に照明柱2や標識柱の基部には、周方向に離れて複数(例えば90度間隔で4枚)の補強リブ4U,4Vが溶接されている。この補強リブ4U,4Vの配置方向への振動成分によって各補強リブ4U,4Vの溶接箇所に応力が集中し、疲労亀裂が出来やすい。そこで、各振動計測器10A、10Bの計測軸x,yを補強リブ4U,4Vの取り付け方向に向けることにする。すなわち、各振動計測器10A、10Bの計測軸xを補強リブ4Uの取り付け方向に合わせ、計測軸yを補強リブ4Vの取り付け方向に合わせる。計測軸zは鉛直に向ける。
なお、図3において、振動計測器10A,10Bは、実際には照明柱2の外周面に設けられているが、簡単のために照明柱2の中心軸上に図示している。
【0020】
あるいは、多くの場合、橋梁1の主たる振動方向(ひいては被診断部位即ち第1部位2aの主たる振動方向)、および照明柱2自体の主たる振動方向(ひいては第2部位2bの主たる振動方向)はそれぞれ経験的に判明しているので、これら2つの主たる振動方向に、各振動計測器10A、10Bの3つの計測軸のうちの2つをそれぞれ合わせることにしてもよい。上記主たる振動方向が経験的に判明していない場合は、予備調査によって求めることにしてもよい。
【0021】
なお、上記補強リブ4U,4Vの配置や主たる振動方向に関わらず、例えば計測軸xを橋軸方向へ向け、計測軸yを橋幅方向へ向け、計測軸zを鉛直方向へ向けることにしてもよい。
【0022】
図示は省略するが、各加速度センサは、縦横寸法が5mm角で、厚さが2mm弱の小チップ状になっている。
なお、2個の2軸加速度センサに代えて、3個の1軸加速度センサを組み合せてもよく、1個の3軸加速度センサを用いてもよい。静電容量型加速度センサに代えて、圧電型、サーボ型等の他の方式の加速度センサを用いてもよい。
【0023】
加速度計20に、フィルタ22、増幅器23、A/Dコンバータ24を順次介して上記CPU21が接続されている。CPU21は、加速度計20の計測加速度を変位に換算し、その変位の大きさ(後記レベルL1〜L5)ごとに回数をカウントする等の情報処理動作を実行する。
【0024】
計測器10A,10Bには、上記情報処理を実行するための記憶手段として、図示しないプログラム格納用ROMや一時保存用RAMに加えて、2つの記憶テーブル25,26が設けられている。図4に示すように、a−δ(加速度−変位)換算テーブル25には、加速度を変位に換算するための換算係数kが振動の半周期T1/2の大きさと対応付けられて設定されている。何故なら、振動は周期関数と考えてよいから、振動による変位振幅は、加速度振幅に比例し、周波数の略2乗に反比例する関係にあると見做すことができる。換算係数kは、この関係に基づいて算定されたものである。ただし、実際の情報処理では、加速度計20からの加速度相当の電圧に基づいて換算を行なうので、図4に例示した数値は、加速度計20に固有のものであり、加速度相当の電圧の取り方が異なれば、上記数値も異なるものになる。なお、換算テーブル25に代えて、上記変位振幅と加速度振幅と周波数(ないしは周期)との関係を示す式をROMに格納しておき、この関係式に加速度振幅及び周波数(周期)の計測値を当てはめることにより、変位振幅を求めるようにしてもよい。
【0025】
図5に示すように、各計測器10A,10Bのδカウントテーブル26(変位データ蓄積手段)には、変位(δ)の大きさと回数からなる変位データが蓄積されている。
詳述すると、図5(a)に示すように、第1振動計測器10Aのカウントテーブル26には、例えばL1からL5までの5つの変位振幅レベルが設定されるとともに、各レベルまで変位した回数を数えるカウント欄が設けられている。各レベルの変位振幅δ1x,δ1y,δ1zの範囲は、レベルL1が0.3mm以上0.5mm未満、レベルL2が0.5mm以上1.0mm未満、レベルL3が1.0mm以上1.5mm未満、レベルL4が1.5mm以上2.0mm未満、レベルL5が2.0mm以上等となっている。なお、δ1xは、被診断部位2aのx方向の変位振幅を示し、δ1yは、被診断部位2aのy方向の変位振幅を示し、δ1zは、被診断部位2aのz方向の変位振幅を示している。カウント欄は、x,y,zの各方向成分に対応して3つに区分けされている。すなわち、x方向への変位振幅δ1xに対応する回数N1xの欄と、y方向への変位振幅δ1yに対応する回数N1yの欄と、z方向への変位振幅δ1zに対応する回数N1zの欄とが設けられている。
【0026】
同様に、図5(b)に示すように、第2振動計測器10Bのカウントテーブル26には、上記第1振動計測器10Aと同一範囲の5つの変位振幅レベルL1〜L5が設定されるとともに、各レベルまで変位した回数を数えるカウント欄がx,y,zの各方向成分ごとに設けられている。同図において、δ2xは、第2部位2bのx方向の変位振幅を示し、δ2yは、第2部位2bのy方向の変位振幅を示し、δ2zは、第2部位2bのz方向の変位振幅を示し、N2xは、変位振幅δ2xの回数を示し、N2yは、変位振幅δ2yの回数を示し、N2zは、変位振幅δ2zの回数を示す。
なお、変位振幅δ2x,δ2y,δ2zは、地面を基準とする静止座標上での絶対変位振幅であり、被診断部位2aを基準とする相対変位振幅(後記図6のδ'2x,δ'2y,δ'2z)とは異なる。
【0027】
更に、図2に示すように、計測器本体11には、収容素子20〜26に電力を供給する乾電池Vのホルダ27が収容されている。
また、計測器本体11の外面には、外部出力端子28が設けられている。この外部出力端子28にケーブル49を介して上記解析装置40が接続されるようになっている。
【0028】
解析装置40は、例えば携帯可能なパーソナルコンピュータからなり、上記計測器10A,10Bの計測結果等を入力する入力部41と、入力データに基づいて疲労解析を行う処理部42と、記憶部43と、解析結果を表示する表示部44とを有している。記憶部43には、δ−σ(変位−応力)相関データ43aやS−N(応力−繰り返し)線図データ43b等の柱2の疲労解析に必要な諸種のデータや解析用プログラムが予め記憶されている。
【0029】
δ−σ相関データ43aは、柱2の第1部位すなわち被診断部位2aに対してそこから距離Hだけ離れた第2部位2bが所定量変位したとき、被診断部位2aにどれだけの応力が作用するかをデータ化したものである。すなわち、図6に示すように、δ−σ相関データ43aには、第2部位2bの被診断部位2aに対する相対変位振幅が、図5と同一のレベルL1〜L5ごとに設定されている。そして、各レベルのx,y,zの方向成分ごとに、被診断部位2aに作用する応力振幅の値が定められている。図6において、δ'2xは、第2部位2bの被診断部位2aに対するx方向への相対変位であり、δ'2yは、y方向への相対変位であり、δ'2zは、z方向への相対変位である。また、σ1xは、被診断部位2aに作用するx方向への応力振幅であり、σ1yは、y方向への応力振幅であり、σ1zは、z方向への応力振幅である。
【0030】
S−N線図データ43bは、被診断部位2aの応力振幅σ1x,σ1y,σ1zの大きさと、その応力を繰り返し受けることにより破断に至るまでの繰り返し回数との関係を、x,y,zの各方向成分ごとにデータ化したものである。
【0031】
上記構成の疲労診断システムSによる疲労診断方法を、図8及び図9のフローチャートにしたがって説明する。
まず、診断対象の柱2と、2つの被計測部位2a,2bを決定する(ステップ100)。また、上記疲労解析に必要なデータ43a,43b等を予め求め、記憶部43に登録しておく(ステップ101)。δ−σ相関データ43aは、柱2の断面諸元をもとにFEM等の構造解析によって求めることができる。S−N線図データ43bは、実際の柱や試験片を用いて疲労試験を行なうことによって得ることができる。
【0032】
現地においては、柱2の被計測部位2b,2bにそれぞれ第1、第2振動計測器10A,10Bを取り付ける(ステップ102)。この取付け作業は、バンド12を柱2に巻き付けるだけで簡単に行なうことができ、交通規制などは不要である。電池ホルダ27には、新しい乾電池Vを収容しておく。加速度計20をはじめとする計測器10A,10Bの各素子は、消費電力が極めて小さく、乾電池で十分に駆動できる。したがって、外部電力を確保する必要がない。
【0033】
そして、一定期間(例えば1週間〜2ヶ月)にわたって変位データの採取を実行する(ステップ103)。
すなわち、車両が走行したり風荷重が作用したりすると、照明柱2が、基部(被診断部位2a)を支点に振動する。これと一緒に第2振動計測器10Bが振動し、第2部位2bの変位データ(変位振幅レベルごとの変位回数N2x,N2y,N2z)が採取される。すなわち、第2振動計測器10Bの加速度計20が、上記振動の加速度に感応して、x,y,zの各成分ごとの加速度ax,ay,azを電圧信号として出力する。この信号が、フィルタ22によってフィルタ処理され、増幅器23によって増幅された後、A/Dコンバータ24によって例えば10msごとにサンプリングされる。図7は、一つの方向、例えばy方向の加速度ayの振動の様子を例示したものである。同図の黒丸が、A/Dコンバータ24による10msごとのサンプリングデータを示している。このようなサンプリングデータが、CPU21に順次入力される。
【0034】
サンプリングデータが偏った変動をすることもあることを考慮して、CPU21は、x,y,zの各成分ごとのサンプリングデータについて、例えば256(28)個ごとの平均を取る。この平均値を基準軸Q(図7の破線)として、加速度振動の半波ごとに半周期T1/2と振幅Wを求め、それに基づいて変位振幅δ2x,δ2y,δ2zへの換算を行ない、カウントテーブル26の対応欄の回数N2x,N2y,N2zをカウントアップする。 例えば、図7において、y方向の加速度ayが基準軸Qを上回ってから極大値を越えて再び基準軸Qに達するまでの時間を求め、これを第i回目の半周期T1/2iとする。この半周期T1/2iに対応する換算係数k=kiを換算テーブル25で特定する。また、上記極大値すなわち加速度相当電圧の第i回目の振幅Wiを求める。この振幅Wiと換算係数kiとを乗じることにより、y方向の第i回目の変位振幅δ2yi(=Wi×ki)を求めることができる。この変位振幅δ2yiの含まれるレベルを求め、カウントテーブル26における上記レベルのy方向の回数N2yをカウントアップする。ただし、上記の変位振幅δ2yiは、往復したときの振幅ではなく、往きだけの振幅であるので、回数N2yは、0.5だけカウントアップされる。
【0035】
続いて、加速度ayが基準軸Qを下回ってから極小値を越えて再び基準軸Qに達するまでの時間を求め、これを第j(=i+1)回目の半周期T1/2jとする。この半周期T1/2jに対応する換算係数k=kjを換算テーブル25で特定する。また、上記極小値すなわち加速度相当電圧の2回目の振幅Wjを求める。これにより、第j回目の変位振幅δ2yj(=Wj×kj)を求め、それに対応するレベルの回数N2yを0.5だけカウントアップする。
このようにして初めの256個のサンプリングデータが終わるまで、半波ごとに変位振幅δ2yの算出(換算)と対応レベルの回数N2yのカウントアップを繰り返すことにより、y方向の変位データを採取する。
この処理を次の256個のサンプリングデータにも行い、以降256個のサンプリングデータごとに繰り返す。
同様にして、x方向及びz方向についても変位データの採取を実行する。
なお、加速度の変位への換算は、換算テーブル25を用いるのに代えて、加速度と変位の関係を示す関係式によって行なうことにしてもよく、積分回路等を用いて計測加速度を2回積分することによって行なうことにしてもよい。
【0036】
以上は、第2部位2bの振動計測器10Bでの処理内容であるが、車両走行時等には、照明柱2だけでなく橋梁1自体も振動することがある。そうすると、照明柱2の被診断部位2aが橋梁1と一体に振動する。これによって、第1振動計測器10Aが、被診断部位2aの変位データ(5つの変位振幅レベルごとの変位回数N1x,N1y,N1z)を上記計測器10Bと同様にしてカウントテーブル26に蓄積していく。
一方、第2部位2bの振動は、照明柱2自体の振動と橋梁1の振動とを合成したものとなる。すなわち、変位振幅δ2x,δ2y,δ2zは、第2部位2bの橋梁1に対する変位振幅に、橋梁1の変位振幅を加算したものとなる。したがって、第2振動計測器10Bによる変位データは、橋梁1ひいてはそれと一体になった被診断部位2aに対する第2部位2bの変位データに、被診断部位2aの変位データとを加算したものとなる。
【0037】
こうして、一定の期間(1週間〜2ヶ月)にわたって変位データの採取を行なう(ステップ103)。消費電力が極小であるので、上記一定期間中の電力は、乾電池Vで十分に賄うことができる。期間の経過後、計測器10A,10Bにケーブル49を介して解析装置40を接続する。これによって、各計測器10A,10Bのカウントテーブル26の変位データを解析装置40に簡単に入力することができる(ステップ104)。解析装置40には、照明柱2が橋梁1に設置されてから現在までの供用期間等も入力される。解析装置40の処理部42は、入力データを記憶部43に記憶させる。そして、照明柱2の被診断部位2aの疲労診断を行なう。
【0038】
ここで、第2部位2bの計測器10Bによる変位データには、被診断部位2aの変位データが加算されていることは、上述した通りである。一方、被診断部位2aの変位データについては計測器10Aによって取得されている。そこで、解析装置40の処理部42は、先ず、第2部位2bの計測器10Bによる変位データと被診断部位2aの計測器10Aによる変位データとの差分を取る(ステップ105)。具体的には、同一の変位振幅レベルごとに、第2部位2bの変位回数から被診断部位2aの同一方向の変位回数を差し引く。すなわち、各レベルごとに以下の計算を行なう。
N'2x=N2x−N1x
N'2y=N2y−N1y
N'2z=N2z−N1z
これによって、第2部位2bの変位データを、被診断部位2aに対する相対変位データ(レベルごとの変位回数N'2x,N'2y,N'2z)に修正することができる。この相対変位データと記憶部43のδ−σ相関データ43aとによって、被診断部位2aに作用した応力振幅ごとの作用回数、すなわち応力頻度データを正確に得ることができる。
【0039】
この応力頻度データやS−N線図データ43bや供用期間データ等により、被診断部位2aの累積損傷度(疲労の度合い)を算出することができる。例えば、y方向の累積損傷度Dyは、
Dy=(NyL1/NfL1)+(NyL2/NfL2)+(NyL3/NfL3)+(NyL4/NfL4)+(NyL5/NfL5)
として求めることができる。ここで、Ny=N'2y×(計測期間/供用期間)であり、Nfは、S−N線図データ43bにおける疲労破壊に至る繰り返し回数であり、これらNy,Nfの添え字L1〜L5は、対応する変位振幅のレベルを示している。得られた累積損傷度や、その他の疲労診断結果は、表示部44等に出力される。これにより、診断作業者は、診断結果(柱2の疲労の度合い、累積損傷度の大きさ等)を容易に把握することができる(ステップ106)。そして、累積損傷度≧1.0のときは、疲労亀裂が起きている可能性があるため現場で詳細なチェックを行なう(ステップ107)。亀裂が有った場合には、補強・補修を行なったり、新たなものに設置し直したりするなどの処置をとる。累積損傷度<1.0のときは、特に処置の必要はないが(ステップ108)、疲労破壊に至る(累積損傷度≧1.0に達する)までの残存寿命を求めておくことにより、寿命が近くなってきた時点で補強・補修等を行なうことができる。これにより、柱2が倒壊する等の事故を未然に防止することができる。
計測器10A,10Bは安価、軽量であるので、多数の柱2を低コストで診断することができる。
【0040】
このシステムSでは、x,y,zの3方向についてデータを取得できるので、いずれの方向の振動であっても疲労診断することができる。特に、照明柱2においては補強リブ4U,4Vの溶接部分で疲労亀裂が生じやすいところ、x方向の計測データによって補強リブ4Uの溶接部分の疲労度を診断でき、y方向の計測データによって補強リブ4Vの溶接部分の疲労度を診断できる。これによって、診断の合理化と信頼度の向上を図ることができる。
【0041】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。
本発明は、上記の照明柱2や標識柱のような片持ち状又は門型状のものに限られず、振動環境下にある構造物に遍く適用できる。
例えば、図10に示す第2実施形態では、橋梁1の主桁1aを疲労診断の対象としている。すなわち、主桁1aにおける対傾構(又は横桁)1bとの接合部を被診断部位とし、この被診断部位又はその近傍を第1部位として、この第1部位に第1振動計測器10Aを設置するとともに、該第1部位から桁1aの長手方向に所定距離Lだけ離れた位置を第2部位として、そこに第2振動計測器10Bを設置する。これら計測器10A,10Bの本体11の側面には、取付け手段として、バンド12に代えて板状の永久磁石13が設けられている。これによって、計測器10A,10Bを主桁1aに磁力で簡単にくっつけることができる。
【0042】
そして、上記柱2の場合と同様にして、振動計測器10B,10Aの変位データの差分を取ることにより、第2部位の第1部位に対する相対変位データを求め、この相対変位データに基づいて被診断部位に作用する応力頻度を求め、この応力頻度により疲労診断を行なう。
主桁1aと対傾構1bの接合部には応力が3次元的に作用しやすい。本システムSは、3次元対応であるため、このような主桁1aの疲労解析に特に有効である。
なお、上記主桁1aはI断面桁であるが、箱桁その他の桁にも適用可能なことは勿論である。
【0043】
図11に示す第3実施形態では、橋梁1の複数の主桁1aの各々に、振動計測器10を設置してある。これら振動計測器10の構成は、上記第1、第2振動計測器10A,10Bと同一になっている。各振動計測器10の変位データを比較することによって、偏荷重による主桁1a間の相対変位を簡単に把握することができる。ひいては、各主桁1aと対傾構(横桁)1bとの接合部の疲労診断を容易に行なうことができる。
この実施形態においては、1つの主桁1aの対傾構1bとの接合部を「被診断部位(第1部位)」とするとき、他の主桁1aの対傾構1bとの接合部は、「第2部位」となる。
【0044】
1つの診断対象に3つ以上の振動計測器を設置してもよい。例えば、図12に示す第4実施形態では、トラストランガー橋3(親構造物)のトラス斜材3aを疲労診断の対象とし、このトラス斜材(被診断構造物)3aに3つの振動計測器を設置してある。すなわち、図12(b)に示すように、トラス斜材3aの両端部をそれぞれ被診断部位(第1部位)として、そこに第1振動計測器10Aを設置してある。また、トラス斜材3aの中間部を第2部位として、そこに第2振動計測器10Bを設置してある。そして、トラス斜材3aの両端部の変位データを中間部までの距離に応じて案分し、この案分値を中間部の変位データから差し引く等の演算処理により、中間部の相対変位データを得ることができる。この相対変位データから両端部の応力頻度を求め、疲労診断を行なうことができる。
なお、この実施形態のように、振動計測器を3つ以上設ける場合、これらの計測器が互いに同一直線に配置されているのが好ましいが、それに限定されるものではなく、同一平面上に配置されていてもよく、立体的に配置されていてもよい。
【0045】
図13、図14は、本発明の第5実施形態の疲労診断システムS'を示したものである。図13に示すように、照明柱2の被診断部位2aには、第1振動計測器10A’が設けられ、第2部位2bには、第2振動計測器10B'が設けられている。これら計測器10A',10B'が、柱2に沿って配線された信号ケーブル14で結ばれている。図14に示すように、第1振動計測器10A'には、加速度計20が設けられる一方、CPU21が設けられていない。したがって、CPU21に付属する記憶テーブル25,26や図示しないROMやRAMも設けられていない。第1振動計測器10A'において加速度計20にフィルタ22を介して連なる増幅器23が、上記信号ケーブル14を介して第2振動計測器10B'のA/Dコンバータ24に接続されている。
【0046】
車両の走行等によって柱2が振動するとともに橋梁1自体も振動したときは、第1振動計測器10A'の加速度計20が、橋梁1の振動加速度を計測する。この計測加速度信号が、当該第1振動計測器10A'のフィルタ22でフィルタ処理され、増幅器23で増幅された後、ケーブル14を介して第2振動計測器10B'に送られる。そして、計測器10B'のA/Dコンバータ24を介してCPU21へ入力される。
【0047】
これと併行して、第2振動計測器10B'の加速度計20によって柱2の第2部位2bの振動加速度が計測される。したがって、第2振動計測器10B'のCPU21には、柱2の被診断部位2aの加速度信号と第2部位2bの加速度信号とが同時並行して入力される。CPU21は、これら2つの入力信号の差分を取る。これによって、第2部位2bの被診断部位2aに対する相対加速度を求めることができる。勿論、上記2つの加速度信号をアナログの段階で差分を取ったうえで、CPU21に入力するように回路構成を組んでもよい。CPU21は、この相対加速度の振動データとa−δ換算テーブル25とを用いて、第2部位2bの被診断部位2aに対する相対変位の大きさと回数を求める。そして、δカウントテーブル26の対応欄をカウントアップする。
【0048】
このシステムS'によれば、第2部位2bの相対変位の大きさを振動計測と並行して直接的に採取することができる。これにより、解析装置40による差分の演算処理が不要になるだけでなく、被診断部位2aに作用した応力頻度をより正確に求めることができ、一層正確な疲労診断を行なうことができる。
システムS'において、CPU21やそれに付属する記憶テーブル25,26等は、第2振動計測器10B'に代えて第1振動計測器10A'に収容してもよく、計測器10A',10B'とは別体にユニット化して柱2近傍に配置するとともに、各計測器10A',10B'とケーブル14で繋ぐことにしてもよい。
【0049】
図15は、本発明の第6実施形態を示したものである。この実施形態の照明柱2の基部には、補強リブが周方向に45度間隔で8つ設けられている。すなわち、第1実施形態と同様の90度置きの補強リブ4U,4Vの中間に、補強リブ4A,4Bが設けられている。各振動計測器10A,10B(または10A’,10B’)の加速度計20に組み込まれた2個の2軸加速度センサ20a,20bのうち、1個の加速度センサ20aの一方の計測軸x20aは、補強リブ4Uの方向に向けられ、他方の計測軸y20aは、補強リブ4Vの方向に向けられている。もう1個の加速度センサ20bの一方の計測軸x20bは、補強リブ4Aの方向に向けられ、他方の計測軸y20bは、補強リブ4Bの方向に向けられている。これによって、8つの補強リブ4U,4V,4A,4Bの溶接箇所について、それぞれ直接的に振動計測して疲労度診断を行なうことができる。
【0050】
図16〜図18は、本発明の第7実施形態を示したものである。この実施形態は、橋梁1および柱2の主たる振動方向や、疲労亀裂の起きやすい振動方向が不明な場合に適している。各振動計測器10A,10B(または10A’,10B’)の計測軸xは、例えば橋軸方向に向けられ、計測軸yは、橋幅方向に向けられ、計測軸zは、鉛直に向けられている(図17参照)。また、振動計測器10A,10B(または10B’)には、変位データ蓄積手段として、図5のものに代えて図18に示すカウントテーブル26Aが設けられている。このカウントテーブル26Aは、所定の角度(例えば20°)ごとに区分された振動方向θと、複数(例えば5つ)のレベルL1〜L5ごとに区分された変位の大きさδ(θ)とのマトリックスで構成されている。ここで、θは、x軸となす角度を指す(図17)。各レベルL1〜L5の数値範囲は、図5のものと同様である。
【0051】
第7実施形態におけるCPU21は、2つの計測軸x,yの変位成分δx,δyを合成することによって、実際の振動の方向θと振幅(方向θへの変位の大きさδ(θ))を算出する。そして、カウントテーブル26A上において、上記算出値に対応する欄の計測値をカウントアップする。これによって、振動データを振動の方向θごとに蓄積することができ、方向をも考慮した疲労診断を行なうことができる。橋梁1や照明柱2の主たる振動方向も把握することができるので、前記予備診断に適用することもできる。
【0052】
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の改変が可能である。
第1振動計測器10A,10A'は、被診断構造物の被診断部位に直接設置する必要はなく、被診断部位と一体に変位する箇所に設置してもよい。一体に変位するのであれば当該被診断構造物に限らず他の構造物(該被診断構造物が定着される構造物など)に設置してもよい。例えば、被診断部位が照明柱2の基部の場合、その近くの地覆や床版等に設置してもよい。また、被診断部位が主桁1aの対傾構(横桁)1bとの接合部の場合、この接合部と一体に変位する限り、接合部から多少離れた部位に設置してもよい。
振動計測器の構造物への取付け手段として、上記バンド12や磁石13の他、ねじを用いた取付け手段等を適用してもよい。
本発明は、橋脚の張り出し部やパイプアーチ橋等にも適用できる。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、疲労診断を簡単、安価に行なうことができるだけでなく、構造物全体の振動の有無に拘わらず、被診断部位における応力頻度を正確に算出することができ、疲労診断の精度を高めることができる。 振動計測器として加速度計を用いることにすれば、安価かつ小型化を図ることができ、2方向又は3方向の計測も容易に行なうようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明の第1実施形態を適用したI断面桁橋梁の斜視図である。
(b)上記I断面桁橋梁の正面図である。
【図2】上記第1実施形態に係る疲労診断システムの概略構成図である。
【図3】(a)被診断構造物たる照明柱の基部の解説斜視図である。
(b)上記照明柱の基部の平面解説図である。
【図4】上記疲労診断システムの振動計測器内の加速度−変位換算テーブルのデータ構造を例示した表である。
【図5】(a)上記疲労診断システムの第1振動計測器内のカウントテーブルのデータ構造を例示した表である。
(b)上記疲労診断システムの第2振動計測器内のカウントテーブルのデータ構造を例示した表である。
【図6】上記疲労診断システムの解析装置内の変位−応力相関データの構造を例示した表である。
【図7】上記振動計測器によって計測された加速度振動の様子を例示したグラフである。
【図8】上記疲労診断システムによる疲労診断の手順の一例を示すフローチャートである。
【図9】図8の手順の続きを示すフローチャートである。
【図10】本発明の第2実施形態を適用したI断面桁橋梁の斜視図である。
【図11】本発明の第3実施形態を適用したI断面桁橋梁の斜視図である。
【図12】(a)本発明の第4実施形態を適用するトラストランガー橋の斜視図である。
(b)上記トラストランガー橋において第4実施形態を適用したトラス斜材の側面図である。
【図13】本発明の第5実施形態を適用したI断面桁橋梁の斜視図である。
【図14】上記第5実施形態に係る疲労診断システムの概略構成図である。
【図15】本発明の第6実施形態を示し、被診断構造物たる照明柱の基部の平面解説図である。
【図16】本発明の第7実施形態に係る疲労診断システムの振動計測器の概略構成図である。
【図17】上記第7実施形態の被診断構造物たる照明柱の基部の平面解説図である。
【図18】上記第7実施形態の振動計測器内のカウントテーブルのデータ構造を例示した表である。
【符号の説明】
S,S' 疲労診断システム
H,D 第1、第2部位間の距離
V 乾電池
1 橋梁(構造物)
1a 主桁
1b 対傾構又は横桁
1c 床版
1d 地覆
2 照明柱
2a 照明柱の第1部位(被診断部位)
2b 照明柱の第2部位
3 トラストランガー橋(構造物)
3a トラス斜材
4U,4V,4A,4B 補強リブ
10A,10A' 第1振動計測器
10B,10B' 第2振動計測器
10 振動計測器
11 計測器本体
12 取付けバンド
13 永久磁石
14 信号ケーブル
20 加速度計
20a,20b 2軸加速度センサ
21 CPU(変位データ作成手段)
22 フィルタ
23 増幅器
24 A/Dコンバータ
25 a−δ(加速度−変位)換算テーブル
26,26A 変位量カウントテーブル(変位データ蓄積手段)
27 乾電池ホルダ
28 外部出力端子
40 解析装置
49 ケーブル
41 入力部
42 処理部
43 記憶部
43a δ−σ(変位−応力)相関データ
43b S−N(応力−繰り返し)線図データ
44 表示部
Claims (8)
- 振動環境下にある被診断構造物の被診断部位又はそれと一体に変位する当該若しくは他の構造物の部位からなる第1部位と、この第1部位に対し相対変位する当該被診断構造物の第2部位とに振動計測器をそれぞれ設け、これら計測器によって上記各部位の変位の、複数段階に区分して設定した大きさごとの発生回数のデータを一定期間にわたって採取した後、上記第1部位の発生回数データによって上記第2部位の発生回数データを修正するとともに、この修正データに基づいて上記被診断部位の疲労診断を行なうことを特徴とする構造物の疲労診断方法。
- 振動環境下にある被診断構造物の被診断部位又はそれと一体に変位する当該若しくは他の構造物の部位からなる第1部位と、この第1部位に対し相対変位する当該被診断構造物の第2部位とに振動計測器をそれぞれ設け、これら計測器による振動計測と同時並行して、これらの計測値どうしを照らし合わせることにより、上記第2部位の第1部位に対する相対変位の、複数段階に区分して設定した大きさごとの発生回数のデータを一定期間にわたって採取し、その後、この発生回数データに基づいて上記被診断部位の疲労診断を行なうことを特徴とする構造物の疲労診断方法。
- 上記第1部位と第2部位の主たる振動方向がそれぞれ分かっている場合において、上記振動計測器によって少なくとも上記主たる振動方向についてデータ採取を行なうことを特徴とする請求項1又は2に記載の構造物の疲労診断法方法。
- 上記被診断部位における疲労亀裂を起こしやすい振動方向が分かっている場合において、上記振動計測器によって少なくとも上記振動方向についてのデータ採取を行なうことを特徴とする請求項1又は2に記載の構造物の疲労診断法方法。
- 上記被診断構造物が、柱状物であり、その基端部には、補強リブが周方向に離れて複数設けられており、この補強リブの配置方向と同方向への振動についてのデータ採取を行なうことを特徴とする請求項1又は2に記載の構造物の疲労診断法方法。
- 上記振動計測器によって振動の方向をも計測可能であり、振動の方向ごとにデータ採取を行なうことを特徴とする請求項1又は2に記載の構造物の疲労診断法方法。
- 上記振動計測器が、設置された部位の加速度振動を計測し、この加速度計測値が変位に換算されることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の疲労診断方法。
- 上記振動計測器が、互いに直交する2又は3方向ごとに加速度成分を計測することを特徴とする請求項7に記載の疲労診断方法。
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