JP6205091B2 - 防護柵支柱の健全度評価方法及び健全度評価装置 - Google Patents
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Description
その他の方法としては例えば構造物を所定位置で加振し、その振動波形を測定することで構造物の固有振動数を求める。そして、求めた固有振動数と振動試験により予め算出しておいた固有振動数との変動を振動モード毎に求め、振動モード毎に固有振動数の変動幅に応じた健全度を評価する方法が知られている(特許文献1)。
また、構造物を加振して算出した固有振動数や、評価時における構造物のヤング率、厚み等に基づいて構造物に加わる最大応力を算出し、この最大応力から構造物の健全度を評価する方法も知られている(特許文献2)。
すなわち、防護柵の支柱はその基部に防食テープが巻きつけられていることがあるため、支柱基部の劣化、損傷度合いを外観から目視点検によって判断し辛いという問題や、防食テープを剥がす作業に手間がかかるという問題がある。
また、防食テープを剥がして支柱の基部を露出させた場合であっても、基部に層状剥離が生じている場合や、内部にコンクリートが充填されている場合には超音波厚さ計等を用いた正確な肉厚測定ができないという問題もある。
また、設置直後の支柱の固有振動数を設計図面等に記載された材料強度、寸法、支柱基部の拘束条件(支持条件)等に基づいて算出し、この固有振動数(推定値)と現場で実際の支柱に対して行なった振動試験により算出した固有振動数とを比較する評価手法も考えられる。
このように支柱基部の埋設方法は多様であるため、これに伴って支柱基部の支持条件も多様となる。特に設置から長期間を経た支柱の場合、周囲のモルタル等に亀裂が入ったり、砂が雨水により流出してしまっている等の強度上の不具合が生じていることがある。つまり、支柱基部の支持条件が設計段階の支持条件とは大きく異なってしまっており、これが各次数のモード形状にとって大きな変動要因となる。
このような支柱基部の支持条件が設計段階と大きく異なってしまっている支柱に対して現場で振動試験を行い、その固有振動数を算出したとしても、この値を設計図面等に基づいて算出した固有振動数(推定値)と比較しながら健全度を正確に評価することは極めて困難である。また、このような問題は上記特許文献2の技術に関しても同様に生じる。
なお、部材の支持条件が経年変化によって変化するという防護柵支柱に特有の問題は本願発明者の研究によって初めて見出されたものである。
また、防護柵支柱の複数位置に配置したセンサから当該複数位置における振幅値を得る際に、防護柵支柱の一部に取り付けた加振手段によって当該防護柵支柱を共振させることを特徴とする。
また、防護柵支柱の複数位置に配置したセンサから当該複数位置における振幅値を得る際に、防護柵支柱の一部に取り付けた加振手段によって当該防護柵支柱を共振させることを特徴とする。
上述の通り、経年変化によって支柱基部の支持条件が設計段階の支持条件と異なっていることがある。例えば設計段階では支柱基部の支点が地表面と一致しており、評価時点では支点が実質的に地表面より数十センチ程度下方に位置しているような場合がある。このような場合でもカーブフィット処理を行うことで、基準モードの節の位置(設計段階での支点の位置)まで実測モードの節の位置を補正して同定することができる。
このように本発明は部材の支持条件が経年変化によって変化するという防護柵支柱に特有の問題をカーブフィット処理により解消し、これによって部材の支持条件の変化の影響を受けずに、評価対象である防護柵支柱単体の健全度を非破壊にて高精度で評価することを可能にするものである。
なお、防護柵支柱の一部にピエゾ素子等の加振手段を取り付けておき、防護柵支柱を共振させた状態で、防護柵支柱の複数位置に配置したセンサから当該複数位置における振幅値を得ることにすれば、より安定した状態で実測モードを測定することができ、健全度評価の精度をより向上できる。
また、本明細書において「健全度」とは、評価対象となる防護柵支柱についての安全性を示す指標のことをいい、この健全度が高いと損傷、劣化によって防護柵支柱が崩壊する危険性が低く、これが低いと崩壊する危険性が高いことを意味する。
健全度の評価対象となる防護柵支柱は実際に道路脇に設置されているものであり、その基部が上述したような方法によって土中等に埋設されることで支持されている。
センサ20は、防護柵支柱11に振動を加えた場合における防護柵支柱11の振動による加速度、速度、変位等の振動データを検出するために設けられるものであり、本実施の形態では圧電型加速度計を使用している。
センサ20は、防護柵支柱11の基部11aに上下方向に一定間隔で複数(本実施の形態では5つ)取り付けられる。なお、予め複数のセンサ20を一定間隔で治具に取り付けておき、この治具自体を防護柵支柱11に押し当てた状態で固定するようにしてもよい。
センサ20を設置する個数は特に限定されるものではなく、また、必ず一定間隔で設置しなければならないというわけではない。センサ20の設置は通常健全度評価作業を行う保全員によって行われる。センサ20の種類としては圧電型加速度計以外にも例えば可動板が用いられたサーボ型センサ20等の公知のものを使用できる。
センサ20による振動データの検出は時系列に行なわれる。検出された振動データはアナログデータであり、これを情報処理装置30に格納されているA/D変換装置よってデジタル情報に変換する。なお、A/D変換をセンサ20側で行なってもよく、また、センサ20が検出した振動データをアンプで増幅してからA/D変換することにしてもよい。
防護柵支柱11への加振方法としては、保全員が防護柵支柱11の所定位置(例えば地表面Gから40cm)をハンマーH等で叩く方法や、あるいは振り子状の錘を所定高さから円弧状に自由落下させ、その最下点で防護柵支柱の上記所定位置に衝突させる方法などが挙げられる。
詳しい説明は後述するが、メモリ39内には上記各構成要素を動作させるためのプログラムの他、振動モードに関するデータ、基準モードに関するデータ、センサ20から得られた振幅値、実測モードに関するデータ、カーブフィット処理を行った後の実測モードに関するデータ、カーブフィット処理を行った後の状態の基準モードと実測モードのMAC値(評価値)、防護柵支柱11の健全度を評価する際の基準となるデータ(MAC値(指標値))等も格納される。
まず、作業者は健全度の評価対象となる防護柵支柱11を想定した防護柵支柱モデルを作成する(ステップS1)。防護柵支柱モデルとしては有限要素法(FEM)による解析モデルが挙げられる。ここで、解析モデルは梁要素やシェル要素(板要素)を用いてモデル化する。さらに、耐荷力まで解析する場合は、材料非線形を考慮したモデル化を行う。
次に、防護柵支柱モデルを使用して振動モード取得部31に周知の計算手法による固有振動解析を実行させ、当該モデルの固有振動数と振動モードデータを算出させる(ステップS2)。
算出された振動モードデータには1次、2次、3次・・・と複数の励起次数の振動モードが含まれており、このデータはメモリ39に格納される。
次に、保全員が評価対象となる防護柵支柱11の基部11aに複数のセンサ20を一定間隔で取り付け、防護柵支柱11の所定位置に振動を加えると、当該複数位置における振動データが情報処理装置30に送信される。なお、当然のことながら上記作業者と保全員は同一人物であっても異なる人物であってもよい。また、振動を加えた位置がモードの腹になることを考慮すると腐食の程度が激しいと推測される位置(例えば地表面Gから近い位置)に振動を加えるのが好ましい。
次に、実測モード取得部34は、メモリ39に記憶されている各センサ20の振幅値を呼び出し、この値を縦軸(Y軸)、防護柵支柱11上の各センサ20の位置を横軸(X軸)とする実測モードを算出する(ステップS5)。具体的には、センサ20が検出した波形データとしての振動データを高速フーリエ変換によって周波数分析し、バンドパスフィルタを用いた後、フーリエ逆変換により振動次数ごとの振幅値を得る方法やERA(Eigensystem Realization Algorithm)等の周知の手法によって実測モードを算出する。算出した実測モードはメモリ39に記憶される。なお、防護柵支柱11上の各センサ20の位置を決める際の始点(原点)は例えば地表面Gや、あるいは防護柵支柱11の上端部又は下端部のいずれかにするなど適宜選択可能である。
カーブフィット処理を行うことで、経年変化等によって支柱基部11aの支持条件が設計段階の支持条件と異なっている場合でも、基準モードの節の位置(設計段階での支点の位置)まで実測モードの節の位置を補正して同定することができる。
MAC値とは2つのモードシェイプがどの程度一致しているかを定量的に示す値をいい、次式により求められる。
図3(a)〜(d)は防護柵支柱モデルに対して振動モード解析を行うことで得た各次数の振動モードであり、縦軸(Y軸)は振幅値(モード振幅)、横軸(X軸)は地表面からの距離を防護柵支柱モデルの長さで割って無次元化した値を示している。
評価対象とした振動モード(支柱高700mmの場合)は(a)8次振動(2次系,パターン1)、(b)13次振動(2次系,パターン2)、(c)15次振動(3次系,パターン1)、(d)17次振動(3次系,パターン2)である。
防護柵支柱モデルは全長1,100mm、直径139.8mm、肉厚4.5mmの実物支柱(STK400、引張強さ472-476N/mm2)を下端から400mmの位置で固定支持してモデル化したものである。
本実施例ではこれら各次数の振動モードのうち、図3に示した2次モード形状(パターン2)を基準モードとして選択した。その理由としては、基部に近い部分が腹になっている振動モードであり、加振により励起しやすい振動モード(2000Hz付近)だからである。
図4は各センサから得た振幅値に基づいて得た実測モードであり、上記基準モードと比較するとX軸方向にシフトしていることが分かる。
図5は実測モードに対してカーブフィット処理を行った状態を示しており、実測モードと基準モードの重なり度合いが高くなったことが分かる。
カーブフィット処理を行った後の状態における基準モードと実測モードのMAC値(評価値)は0.996となった。
図7より、試験体の先端(自由端)から100mmの位置に荷重を載荷する曲げ試験において、国土交通省「防護柵の設置基準」で定める60kNまで耐えられたのは健全状態の試験体を含む全5体であることが分かる。
以上より、上記[MAC値(評価値):0.996≧[MAC値(指標値):0.995]が成立するので、評価対象の防護柵支柱は充分な健全度を有していると評価することができる。
なお、当然のことながらMAC値(指標値)は上記手法以外の方法で決定しても良い。また、本実施例ではMAC値(指標値)=0.995としたが、この値はあくまで解析上得られたものにすぎず、本発明に係る方法及び装置を実際に使用する際には異なる値を採用してもよい。
11 防護柵支柱
11a 基部
20 センサ
30 情報処理装置
31 振動モード取得部
32 基準モード選択部
33 振幅値取得部
34 実測モード取得部
35 カーブフィット処理部
36 MAC値算出部
37 健全度評価部
38 CPU
39 メモリ
40 ディスプレイ
Claims (4)
- 防護柵支柱モデルに対して振動モード解析を行うことで当該モデルの振動モードを得るステップと、
前記振動モードのうち任意の次数の振動モードを基準モードとするステップと、
評価対象となる防護柵支柱に対して所定位置で振動を加えることで、当該防護柵支柱の複数位置に配置したセンサから当該複数位置における振幅値を得るステップと、
前記複数位置における振幅値に基づいて実測モードを得るステップと、
前記実測モードを構成する各振幅値と前記基準モードに含まれる振幅値との差の二乗和が最小になる位置を算出することでカーブフィット処理を行うステップと、
前記カーブフィット処理を行った後の状態における前記基準モードと実測モードのMAC値(MAC:Modal Assurance Criterion)を算出するステップと、
算出したMAC値から防護柵支柱の健全度を評価するステップを含むことを特徴とする防護柵支柱の健全度評価方法。 - 防護柵支柱の複数位置に配置したセンサから当該複数位置における振幅値を得る際に、防護柵支柱の一部に取り付けた加振手段によって当該防護柵支柱を共振させることを特徴とする請求項1記載の健全度評価方法。
- 防護柵支柱モデルに対して振動モード解析を行うことで当該モデルの振動モードを得る振動モード取得部と、
前記振動モードのうち任意の次数の振動モードを基準モードとする基準モード選択部と、
評価対象となる防護柵支柱に対して所定位置で振動を加えることで、当該防護柵支柱の複数位置に配置したセンサから当該複数位置における振幅値を得る振幅値取得部と、
前記複数位置における振幅値に基づいて実測モードを得る実測モード取得部と、
前記実測モードを構成する各振幅値と前記基準モードに含まれる振幅値との差の二乗和が最小になる位置を算出することでカーブフィット処理を行うカーブフィット処理部と、
前記カーブフィット処理を行った後の状態における前記基準モードと実測モードのMAC値(MAC:Modal Assurance Criterion)を算出するMAC値算出部と、
算出したMAC値から防護柵支柱の健全度を評価する健全度評価部を含むことを特徴とする防護柵支柱の健全度評価装置。 - 防護柵支柱の複数位置に配置したセンサから当該複数位置における振幅値を得る際に、防護柵支柱の一部に取り付けた加振手段によって当該防護柵支柱を共振させることを特徴とする請求項3記載の健全度評価装置。
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