JP3842168B2 - 水中油滴型エマルション燃料用乳化剤組成物、及びエマルション燃料 - Google Patents
水中油滴型エマルション燃料用乳化剤組成物、及びエマルション燃料 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温時における乳化安定性に優れ、且つ防食性、抗菌性にも優れた灯油、軽油、A重油などの軽質油や、B重油、C重油、アスファルト等の重質油と水とからなる水中油滴型エマルション燃料用に好適な乳化剤組成物、及び該乳化剤を用いて製造される水中油滴型エマルション燃料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、軽質油系燃料を利用するディーゼルエンジンの問題点として、NOxや未燃カーボン(PM)が挙げられている。その改善策としては、水を同時に燃焼する方法が検討されてきている。
【0003】
これらの中でも、運用上のハンドリング性や燃焼条件の安定性に優れた手段としては、水と炭化水素系燃料を予め乳化するエマルション燃料の活用が種々提案されている。
例えば、油中水滴型エマルションの技術としては、特開昭52−69908号公報、特開昭52−69909号公報、特開昭52−69910号公報などが提案されているが、これらの技術では、乳化剤の量が多く必要であり、経済性に問題が残り、且つ特に内燃機関で必要となる50℃以上の高温条件で乳化安定性が不足する点に課題がある。
【0004】
一方、水中油滴型エマルションの技術としては、例えば、特開昭56−112992号公報、特表平9−511540号公報、特開平11―263991号公報などが知られているが、内燃機関などの金属腐食を抑制することが課題として残っている。更に、水と燃料油とを含むエマルション燃料に共通な課題として、エマルションでの細菌の繁殖が挙げられる。すなわち、エマルションを製造する際に、原料油、水、大気などから混入する大腸菌や緑膿菌のなどの菌が、燃料油や乳化剤などを栄養源としてエマルション貯蔵タンクや輸送配管中で異常に繁殖する。これらの細菌が繁殖すると、エマルションの乳化安定性が著しく損われるし、菌の代謝物によりフィルター閉塞などを引き起こすなどの課題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、高温時における乳化安定性に優れ、且つ防食性、抗菌性にも優れた灯油、軽油、A重油などの軽質油やB重油、C重油、アスファルト等の重質油と水からなる水中油滴型エマルション燃料に好適となる水中油滴型エマルション燃料用乳化剤組成物、及び該乳化剤を用いて製造される水中油滴型エマルション燃料を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記従来の課題等について、鋭意検討した結果、水中油型エマルション燃料用に好適な乳化剤組成物として、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤と共に、更に特定成分を含有せしめることにより、上記目的の水中油型エマルション燃料用乳化剤組成物、及び該乳化剤を用いて製造される水中油滴型エマルション燃料が得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(6)に存する。
(1) アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、防錆剤、抗菌剤及びキレート剤を含有することを特徴とする水中油滴型エマルション燃料用乳化剤組成物。
(2) アニオン界面活性剤がトール油脂肪酸塩であり、ノニオン界面活性剤がポリオキシアルキレン、アルキルないしアルケニル、エーテルである上記(1)記載の水中油滴型エマルション燃料用乳化剤組成物。
(3) 抗菌剤が、有機系抗菌剤を含む上記(1)又は(2)記載の水中油滴型エマルション燃料用乳化剤組成物。
(4) キレート剤が、エチレンジアミン4酢酸塩又はクエン酸塩を含む上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の水中油滴型エマルション燃料用乳化剤組成物。
(5) 上記(1)〜(4)の何れか一つに記載のエマルション乳化剤組成物を乳化剤として用いて製造されることを特徴とする水中油滴型エマルション燃料。
(6) 水として全硬度1mg/L以下の硬度の水を使用して製造される上記(5)記載の水中油滴型エマルション燃料。
【0007】
なお、本発明で規定する「水中油滴型エマルション燃料」とは、水中に軽油、灯油、A重油などの軽質燃料、B重油、C重油、アスファルト等の重質油の単独或いは、これらの1種以上の燃料油の油粒子が水を連続層として分散している燃料を意味する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の水中油滴型エマルション燃料用乳化組成物(以下、単に「乳化組成物」という)は、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、防錆剤、抗菌剤及びキレート剤を含有することを特徴とするものである。
また、本発明の水中油滴型エマルション燃料は、上記本発明の乳化剤組成物を乳化剤として用いて製造されることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の乳化剤組成物に用いるアニオン界面活性剤としては、好ましくは有機スルホン酸塩、有機硫酸エステル塩及び有機カルボン酸塩の中から選ばれた少なくとも一種類以上の混合物が挙げられる。
有機スルホン酸塩としては、例えば、直鎖又は分岐状の脂肪族スルホン酸塩、芳香族スルホン酸塩等が挙げられ、例えば、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸モノエタノールアミン、分岐ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、デセンモノスルホン酸ナトリウム、ドデセンモノスルホン酸ナトリウム、テトラデセンモノスルホン酸ナトリウム、ヘキサデセンモノスルホン酸ナトリウム、オクタデセンモノスルホン酸ナトリウム、ヒドロキシデシルスルホン酸ナトリウム、ヒドロキシドデシルスルホン酸ナトリウム、ヒドキシテトラデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ヘキサデシルスルホン酸ナトリウム、オクタデシルスルホン酸ナトリウムなどが挙げられ、また、有機硫酸エステル塩としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ミリスチル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸アンモニウム、ミリスチル硫酸モノエタノールアミン、パルミチル硫酸ナトリウム、パルミチル硫酸アンモニウム、パルミチル硫酸モノエタノールアミン、ステアリル硫酸ナトリウムなどが挙げられ、これらは、1種又は2種以上の混合物として使用できる。
これらの中では、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸塩、アルケンモノスルホン酸塩とヒドロキシアルカンスルホン酸塩の混合物であるα−オレフィンスルホン酸塩が好ましい。
【0010】
また、有機カルボン酸塩としては、例えば、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸アンモニウム、ラウリン酸モノエタノールアミン、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸アンモニウム、ミリスチン酸モノエタノールアミン、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸アンモニウム、パルミチン酸モノエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸アンモニウム、オレイン酸モノエタノールアミン、リノール酸ナトリウム、リノール酸アンモニウム、リノール酸モノエタノールアミン、ヤシ油脂肪酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アンモニウム、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミン、牛脂油脂肪酸ナトリウム、牛脂油脂肪酸アンモニウム、牛脂油脂肪酸モノエタノールアミン、トール油脂肪酸ナトリウム、トール油脂肪酸アンモニウム、トール油脂肪酸モノエタノールアミン、等のカルボン酸塩や、ナフテン酸等の芳香族カルボン酸塩、ラウリルアミノアセテートナトリウム等のアミノカルボン酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸モノエタノールアミン、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレンパルミチルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル酢酸ナトリウム等のエーテルカルボン酸塩等が挙げられ、これらは1種又は2種以上の混合物として使用できる。これらの中で、好ましくは、乳化安定性の点で有機脂肪酸塩がより望ましく、特に、トール油脂肪酸塩が望ましい。
【0011】
これらのアニオン界面活性剤は、乳化剤組成物中に、0.1〜70質量%(以下、単に「%」とい)、好ましくは1〜50%含有される。
このアニオン界面活性剤の含有量が、0.1%未満であると、乳化安定性不良となり、また、70%を越えると、乳化剤組成物の液安定性が不良となり、好ましくない。
【0012】
本発明の乳化組成物に用いるノニオン界面活性剤としては、以下の(1)〜(5)に記載されるものが例示される。ここで、pは、アルキレンオキシドの平均付加モル数を示し、アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド単独又はこれらの混合付加物が用いられる。Cは炭素数を意味する。
(1) ポリオキシアルキレン(p=3〜40)アルキル又はアルケニル(C6〜C22)エーテル
(2) ポリオキシアルキレン(p=3〜40)アルキル又はアルケニル(C6〜C10)フェニルエーテル
(3) ポリオキシアルキレン(p=0.5〜40)アルキル又はアルケニル(C10〜C22)アミン
(4) ポリオキシアルキレン(p=0.5〜50)アルキル又はアルケニル(C10〜C22)アミド
(5) エチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック付加物(プルロニック型界面活性剤)
これらノニオン界面活性剤は、1種又は2種以上の混合物として使用できる。
好ましいものは、乳化安定性の点で、HLB値が9〜14の範囲であり、より好ましくは、ポリオキシアルキレンアルキルないしアルケニルエーテルである。
【0013】
これらのノニオン界面活性剤は、乳化剤組成物中に、0.1〜70%、好ましくは1〜50%含有される。
このノニオン界面活性剤の含有量が、0.1%未満であると、乳化安定性不良となり、また、70%を越えると、乳化剤組成物が高粘度でハンドリング不良となり、好ましくない。
【0014】
本発明の乳化組成物に用いる防錆剤としては、金属の腐食を軽減させる作用を有する物質であれば特に限定されず、有機防錆剤や無機防錆剤を用いることができる。
例えば、有機防錆剤において、アミン化合物としては、例えば、長鎖状の脂肪族ないし芳香族モノアミンやピリジン、コリジンなどが挙げられ、アミン以外の化合物としては、安息香酸ナトリウムやメルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾールが挙げられる。また、無機防錆剤としては、例えば、亜硝酸塩、クロム酸塩、モリブデン酸塩、ケイ酸塩、硼酸塩、りん酸塩等を1種または2種以上の混合物として用いることができ、中でも、安息香酸ナトリウム、亜硝酸塩、ベンゾトリアゾールが好ましい。
これらの防錆剤は、乳化剤組成物中に0.01〜20%、好ましくは0.1〜10%含有される。
この防錆剤の含有量が、0.01%未満であると、防錆効果が不良となり、また、20%を越えると、乳化剤組成物の液安定性が不良となり、好ましくない。
【0015】
本発明の乳化組成物に用いる抗菌剤は、水系で繁殖しうる細菌やカビの繁殖を抑制あるいは殺菌する作用を有する物質をいい、各種無機系または有機系の抗菌剤を用いることができる。
例えば、無機系では、例えば、銀、亜鉛、銅、ニッケルなどの金属塩が挙げられる。具体的には、硫酸銀、硝酸銀、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸銅、エチレンジアミン4酢酸銅などである。
一方、有機系としては、例えば、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジンに代表される有機窒素系や1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2−メチルー4−イソチアゾリンー3−オン、5−クロロー2−メチルー4−イソチアゾリンー3−オン等に代表される有機窒素硫黄系、2,2−ジブロモー3−ニトリロプロピオンアミド、1,4−ビス(ブロモアセトキシ)―2−エタン、ビストリブロモメチルスルホンに代表されるような有機ブロム系、及び4,5−ジクロロー1,2−ジチオールー3−オンで代表されるような有機硫黄系などの化合物が用いられ、特に、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジン、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2−メチルー4−イソチアゾリンー3−オン、5−クロロー2−メチルー4−イソチアゾリンー3−オンが好適である。
【0016】
これらの抗菌剤は、乳化剤組成物中に0.001〜20%、好ましくは0.1〜10%含有される。
この抗菌剤の含有量が、0.001%未満であると、抗菌性不良となり、また、20%を越えると、乳化剤組成物の液安定性不良となり、好ましくない。
なお、上記無機系の抗菌剤は、有機溶剤に溶解しにくかったり、他の乳化剤組成分と相互作用して、乳化剤自体の液安定性を損なう場合がある。そこで、エマルションを作る際、或いは製造後の後述する水中油滴型エマルション燃料に添加することが望ましい。例えば、水にあらかじめ上記の金属塩を溶解してもよい。また、抗菌性は、金属イオン自体に由来するので、金属イオンを溶出させるような仕組みにしてもよい。この場合の金属イオン濃度は、0.01〜5ppm、好ましくは、0.1〜1ppmを水に溶出させることにより、乳化剤中の抗菌剤の性能を更に向上できるものとなる。
【0017】
本発明の乳化剤組成物には、上記アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、防錆剤及び抗菌剤と共に、更にキレート剤を併用することにより、乳化安定性及び抗菌性の更なる向上を図ることができる。
用いることができるキレート剤は、例えば、リン系、カルボン酸系の酸ないしその塩が挙げられ、具体的には、リン酸水素2ナトリウム、リン酸2水素ナトリウム、リン酸3ナトリウム、ヒドロキシエタンジホスホン酸ナトリウム、ポリカルボン酸ナトリウム、エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸2ナトリウム、リンゴ酸2ナトリウム、クエン酸3ナトリウム等が挙げられる。
これらの中でも、乳化安定性及び抗菌性を更に発揮させる効果が高い、エチレンジアミン4酢酸塩、クエン酸塩が好ましい。
これらのキレート剤の含有量は、乳化剤組成物中に0.01〜20%、好ましくは0.1〜10%である。
このキレートの含有量が、0.01%未満であると、抗菌効果を発揮することができず、また、20%を越えると、防食性を損なう懸念があるので、この点に留意を要する。
【0018】
本発明の乳化剤組成物は、乳化剤組成物の減粘効果によるハンドリング性向上や経日安定性の向上を目的として、更に、グリコールモノエーテル類、グリコールジエーテル類、フェニルグリコールエーテル類、ベンジルグリコール類などの各種アルコール系溶剤を含有せしめることが好ましい。
例えば、グリコールモノエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル等が挙げられる。
また、グリコールジエーテル類としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等が挙げられる。
更に、フェニルグリコールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル等が挙げられ、更にまた、ベンジルグリコール類としては、例えば、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上の混合物として好適に用いることができる。
これらのアルコール系溶剤は、乳化剤組成物中に0.1〜40%、好ましくは1〜30%含有される。
【0019】
本発明の乳化剤組成物には、更に引火性を低減するため、乳化組成物中に水(精製水、純水、イオン交換水、水道水など)を10%以上含有することが好ましい。
また、本発明における乳化剤組成物のpHは、安全性、抗菌性、乳化安定性の点から、7〜12の範囲とすることが好ましい。この好ましいpH範囲とするため、必要に応じてpH調整剤として、各種アルカリ剤を使用することができる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが挙げられる。
【0020】
本発明の乳化剤組成物は、これらの上記各成分を所定量配合して、通常の方法により均一化でき、透明な液体組成物とすることにより調製される。
このように構成される本発明の乳化剤組成物は、高温時における乳化安定性に優れ、且つ防食性、抗菌性にも優れた灯油、軽油、A重油などの軽質油やB重油、C重油、アスファルト等の重質油と水からなる水中油滴型エマルション燃料の乳化剤として好適に使用できるものとなる。
【0021】
次に、本発明の水中油滴型エマルション燃料は、上記構成のエマルション乳化剤組成物を乳化剤として用いて製造されるものであり、その製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、軽油、灯油、A重油などの軽質燃料、B重油、C重油、アスファルト等の重質油の単独或いは、これらの1種以上の燃料油中に乳化剤を加えて予備攪拌・混合し、水を後添加して攪拌・混合してもよいし、逆に、水に乳化剤を加えた後、燃料油を後添加する順番でもよい。攪拌・混合は、普通の混合攪拌によればよく、バッチ式または連続式でもよい。
本発明の水中油滴型エマルション燃料において、用いる乳化剤組成物の含有量は、用いる燃料油種等に応じて変動するが、エマルション燃料全量中に、0.01〜10%、好ましくは、0.1〜2.5%とすることが望ましい。
この乳化剤組成物の含有量が0.01%未満であると、目的とする効果が得られなくなり、また、10%を越えると、経済的に不利となり、好ましくない。
本発明の水中油型エマルション燃料は、上述で定義した如く、水中に軽油、灯油、A重油などの軽質燃料、B重油、C重油、アスファルト等の重質油の単独或いは、これらの1種以上の燃料油の油粒子が水を連続層として分散している燃料であり、その油粒子の粒径は均一でなく、粒度分布を有し、好ましくは、50%累積体積平均粒径が5μ以下であり、より好ましくは4μ以下となるものが望ましい。
また、本発明の水中油型エマルション燃料において、好ましい水/燃料油の体積比率は、20/80〜80/20であり、より好ましくは、30/70〜70/30とすることが望ましい。
更に、本発明の水中油滴型エマルション燃料において、好ましい燃料油としては、軽質燃料が望ましく、特に、A重油が好ましい。
【0022】
また、本発明の水中油滴型エマルション燃料において、乳化剤として用いる上記構成の乳化組成物にキレート剤を含有せしめた場合には、全硬度1mg/L以下の硬度の水を使用すれば、使用する場所や季節などによらずキレート剤の含有量を少なくすることができる。
すなわち、広い範囲の硬度の水を原料として本発明のエマルション燃料を製造しようとすると、最も硬度が高い水に合わせてキレート剤を配合することになり、結果として硬度の低い水を使用して本発明のエマルション燃料を製造した場合は、キレート剤により耐腐食性の低下が懸念されることとなる。
従って、使用する水(上述の乳化剤組成物において含有せしめる水を含む)の全硬度を1mg/L以下にすれば、キレート剤の含有量を、これに合わせて設定でき、このような問題が起こらないこととなるからである。
【0023】
このように構成される水中油滴型エマルション燃料では、高温時における乳化安定性に優れ、且つ防腐食性、抗菌性にも優れた乳化剤組成物を用いて製造されるものであるので、ハンドリング性や燃焼条件の安定性に優れ、軽質燃料等の燃料油を利用する内燃機関の抱えるNOxや未燃カーボン(PM)の発生の問題も改善できる水中油滴型エマルション燃料となるものである。
【0024】
【実施例】
次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によってなんら限定されるものではない。
【0025】
〔実施例1〜13及び比較例1〜5〕
下記表1〜表3に示す各種試料(乳化剤組成物)を使用して下記方法により水中油滴型エマルション燃料を調製し、下記各方法により、乳化剤保存安定性、乳化安定性、抗菌性、防錆性の各種性能評価を行なった。
なお、乳化剤組成物は、まず必要量の90%分の水(全硬度80mg/L)を使用して作製し、次いで、25%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを調整した後、目的の組成となるように水を加えて調製した。
これらの結果を下記表2及び3に示す。
【0026】
〔エマルション燃料の調製方法〕
エマルション燃料の調製方法は、所定量の200mlのA重油に、各乳化剤を2mlを加え、ホモミキサーで4000回転、2分間混合した後、全硬度80mg/Lの水道水200mlを加えて、更に5分間混合して目的とする水中油滴型エマルション燃料を得た。
【0027】
〔乳化剤組成物の保存安定性の評価方法〕
各種乳化剤組成物50mlをスクリュー瓶に入れ、40℃で3ヶ月保存し、外観変化を下記評価基準で目視評価した。
評価基準:
○:分離、変色なし
×:分離、変色あり
【0028】
〔乳化安定性の評価方法〕
100mlの各種エマルション燃料を100ml(高さ100mm)のバイアル瓶に密封して、80℃で静置保存し、経日(1日)でエマルション燃料の乳化安定性を下記評価基準で目視評価した。
評価基準:
◎:重油分離層なし、油の浮きなし
○:油の浮きはあるが重油分離層なし
△:重油分離層5mm未満
×:重油分離層5mm以上
【0029】
〔抗菌性の評価方法〕
環境より分離したグラム陰性桿菌をトリプトソイ寒天培地で30℃で24時間培養した。培養後、滅菌生理食塩水に約108〜109個/mlとなるように懸濁し、供試菌液とした。
各種評価エマルション燃料20mlに供試菌液0.2ml(条件1)、0.6ml(条件2)の2水準を添加し十分混合した後、20℃で保存した。
28日後に、各試料1mlを無菌的に採取し、ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト・レシチン・ポリソルベート80液体培地9mlで希釈混合した。
その1mlをシャーレにとり、ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト・レシチン・ポリソルベート80寒天培地で混釈を行った。
次いで、30℃で4日間培養を行い、寒天培地上に生じた集落数を計数し、希釈率を乗じて試料中の生菌数Y個/mlを測定した。試料の抗菌力を下記評価基準で評価した。試料中の生菌数Y個が少ないほど抗菌効果に優れること示す。
評価基準:
◎: Y≦10
○: 10<Y≦102
△: 102<Y≦104
×: 104<Y
【0030】
〔腐食性の評価方法〕
腐食性の評価は、各乳化剤1%水溶液を用いて行った。
具体的には、乳化剤1mlを水道水100mlに加えて攪拌希釈し、100mlのバイアル瓶に取った。これに鉄(SPCC:JIS G 3141:10×30×2mm)、銅の試験片(JIS H 3100:10×30×2mm)をそれぞれ全体が完全に浸かるようにして、80℃条件下で7日間、密閉保存した。鉄については、外観変化を目視で下記評価基準で評価し、銅については溶出イオン農度(Xmg/L)を測定し、下記評価基準で評価した。
鉄の評価基準:
○:錆の発生全くなし
△:僅かに錆び発生が見られる
×:錆の発生、変色あり
銅の評価基準:
◎: X≦3
○:3<X≦10
△:10<X≦30
×:30<X
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
上記表1〜表3の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1〜13は、本発明の範囲外となる比較例1〜5に較べて、乳化剤保存安定性、乳化安定性、抗菌性、防錆性の各種性能に優れた水中油滴型エマルション燃料用に好適な乳化剤組成物となることが判明した。
【0035】
〔実施例14〜21〕
エマルション燃料の製造に、全硬度0.5mg/Lの水を用いた以外は、キレート剤を含有しない実施例1〜実施例8の乳化剤組成物を用いて、上記評価方法により、乳化安定性、抗菌性、防錆性の各種性能評価を行なった。
これらの結果を下記表4に示す。
【0036】
【表4】
【0037】
上記表4の結果から明らかなように、実施例14〜21における、キレート剤を含有しない実施例1〜実施例8の乳化剤組成物を用いると共に、全硬度0.5mg/Lの水で調製したエマルション燃料は、耐腐食性の低下はなく、乳化安定性、抗菌性に優れることが判明した。
【0038】
〔実施例22〜25〕
エマルション燃料の製造に用いた水を、金属の電気分解により金属イオンとして所定濃度溶出させた水道水とした以外は、実施例5と同様にして、上記評価方法により、乳化安定性、抗菌性、防錆性の各種性能評価を行なった。
これらの結果を下記表5に示す。
【0039】
【表5】
【0040】
上記表5の結果から明らかなように、実施例22〜25における、水にあらかじめ抗菌性の金属イオンを溶出させた実施例5の乳化剤組成物を用いたエマルション燃料は、乳化安定性、防錆性に優れると共に、特に抗菌性に優れることが判明した。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、腐食性が少なく、高温条件でも乳化安定性に優れ、抗菌性を有し、かつ、使用量が少なく経済性に優れ、軽質燃料を初めとする燃料油を利用する内燃粘機の抱えるNOxや未燃カーボン(PM)という問題を改善できるエマルション燃料の実用性向上に寄与すると共に、環境負荷が著しく低減される水中油滴型エマルション燃料用乳化剤組成物及び水中油滴型エマルション燃料が提供される。
Claims (6)
- アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、防錆剤、抗菌剤及びキレート剤を含有することを特徴とする水中油滴型エマルション燃料用乳化剤組成物。
- アニオン界面活性剤がトール油脂肪酸塩であり、ノニオン界面活性剤がポリオキシアルキレン、アルキルないしアルケニル、エーテルである請求項1記載の水中油滴型エマルション燃料用乳化剤組成物。
- 抗菌剤が、有機系抗菌剤を含む請求項1又は2記載の水中油滴型エマルション燃料用乳化剤組成物。
- キレート剤が、エチレンジアミン4酢酸塩又はクエン酸塩を含む請求項1〜3の何れか一つに記載の水中油滴型エマルション燃料用乳化剤組成物。
- 請求項1〜4の何れか一つに記載のエマルション乳化剤組成物を乳化剤として用いて製造されることを特徴とする水中油滴型エマルション燃料。
- 水として全硬度1mg/L以下の硬度の水を使用して製造される請求項5記載の水中油滴型エマルション燃料。
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