JP3841743B2 - ディスク装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録媒体となるディスクの記録、再生を行うディスク装置に関するもので、特に、ディスクのデータの記録、再生を行うための光ピックアップを有するディスク装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ディスクのトラックに光ピックアップ内の対物レンズを追従させるとき、そのディスクのトラックに照射されたレーザービームの反射光より光ピックアップで得られた光検出信号によって生成されるトラッキングエラー信号がゼロになるように、光ピックアップ内に設けられたアクチュエータが制御される。このトラッキングエラー信号は、対物レンズが追従するトラックの中央位置からいくらずれているか、そのずれ量を示す信号である。即ち、トラッキングエラー信号よりアクチュエータを駆動するトラッキング駆動信号を生成し、このトラッキング駆動信号によって、アクチュエータを駆動して対物レンズをディスクの径方向に微細に移動させて、再生又は記録中のトラックを追従させる。
【0003】
このように、対物レンズがトラッキング制御されるのだが、トラックがスパイラル状に形成されるディスクのトラックを追従させた場合、光源光軸と対物レンズの光軸のずれ量であるシフト量が、その追従させた時間に伴って、徐々に増加していく。そのため、対物レンズがトラックを追従させていくには、このシフト量をゼロにするようなトラッキング駆動信号が必要であり、上述したトラッキング制御では、対物レンズがトラックの中央位置からずれた状態でトラックを追従することになる。
【0004】
そして、このようにシフト量分ずれた状態で対物レンズが追従することによって、そのシフト量に対応したトラッキングエラー信号が発生し、これによって生成された駆動信号によってトラッキング駆動信号が生成される。このトラッキング駆動信号で駆動された対物レンズは、光源光軸からずれるため、トラックの中央位置から少しずれたところにレーザービームを照射させることになる。
【0005】
このようなシフト量が大きくなるにつれ、レーザービームの照射位置とトラックの中央位置とのずれ量が大きくなる。これが、大きくなりすぎると、光ピックアップが受光した信号の信頼性が薄らぐことになる。即ち、このずれ量があまり大きくならないように、ある程度のずれ量になったときに、光源光軸と対物レンズの光軸とのずれ量がゼロになるようにする必要がある。このようなずれ量をうち消すために、そのうち消す方向に光ピックアップをスレッドモータによって移動させる方法が使用されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このスレッドモータを利用した場合、ある所定の電圧を与えたとき初めて回転動作を行うとともにこの所定の電圧を与えたとき所定角度以上回転してしまうコギングが存在するため、このコギングによる所定角度以下の回転角度でスレッドモータを回転制御させることができない。よって、従来は、トラッキング駆動信号が、対物レンズのシフト量が大きくなるにつれ大きくなり、このトラッキング駆動信号がコギングにうち勝つ電圧に達するとコギング分スレッドモータを回転させてそのシフト量をゼロにし、再びトラッキングエラー信号によるトラッキングを行うという動作を繰り返していた。
【0007】
例えば、コンパクトディスク再生装置では、このようなスレッドモータの1回のコギングにうち勝って、対物レンズが移動する量が略200μmである。今、トラッキングされるディスクのトラック幅を1.6μmとすると、約トラック120本分の光軸のずれが表れるところで、スレッドモータが回転を開始し、そのシフト量がゼロに戻されることになる。近年、ディスクの高密度記録化が要求されており、例えば、トラック幅が0.5μmのようなディスクにおいて、上記のような方法でトラッキングを行う際、約トラック400本分の光軸のずれが表れるところで、スレッドモータが回転し、シフト量がゼロに戻されることになる。このようにシフト量が大きくなるにつれ光軸のずれが大きくなるため、レーザービームの照射位置とトラックの中央位置とのずれも大きくなる。よって、トラック幅が小さいとき、このずれが再生信号の信頼性にという点で無視できなくなる。
【0008】
そこで、トラッキング駆動信号の増幅度を上げることが考えられるが、コギングによってスレッドモータの回転する回転量はほぼ不変であるので、シフト量ゼロの位置を通り越えてしまう。又、スレッドモータから光ピックアップの中間伝達部材の減速比を大きくすることが考えられる。このとき、例えば、コギングにうち勝って移動する量を200μmから20μmに1/10倍しようとするならば、減速比を10倍にする必要がある。しかしながら、コンパクトディスク再生装置におけるこの移動量200μmは、十分に減速した値であるので、これ以上に減速比を大きくすることは困難である。又、このような減速比を実現できたとしても、ロングサーチなどを行うシーク時に時間がかかることになり、近年要求されるシーク時間の短縮を達成することができない。
【0009】
又、このコギングを利用したトラッキングを行った場合、スレッドモータに、常時、トラッキング駆動信号を増幅した信号を与え続ける必要がある。しかしながら、この信号は、コギングにうち勝ってスレッドモータを回転させる瞬間以外は、使用されていない。よって、この信号によって常時消費されている電力が、大半無駄となる熱に変換される。
【0010】
又、光ピックアップ内の対物レンズは、バネ定数の高い弾性体で指示されている。従って、重力の影響を受ける。そのため、ポータブルタイプのディスク装置などにおいて、ディスクの径方向に重力がかかるようなとき、対物レンズはこの重力の影響を受けて、変位する。従って、対物レンズの光軸と光源の光軸がずれる。この状態で、再生が開始されると、この状態がシフト量ゼロとしてトラッキングが開始される。この重力の影響によるずれは、再生信号の信頼性という点で無視できない。
【0011】
又、このように重力の影響によるずれによって、後述するレーザーストローブ磁界変調によってデータの記録を行うディスクにデータを記録する際、装置が認識しているトラックから重力の影響によってずれた位置に対物レンズが存在する。そのため、このずれ量に応じたトラックに磁界を到達しなければ、データ記録することができない。よって、この磁界を発生する磁気ヘッドのコイル径を大きくする必要がある。しかしながら、このように磁気ヘッドのコイル径を大きくすることにより消費される電力が大きくなるとともに、磁気ヘッドによる磁界の不要輻射発生の増大化を招く。
【0012】
このような問題を鑑みて、本発明は、対物レンズをディスクにトラッキングする際に、スパイラル状に形成されたトラックによる対物レンズのシフト量を解消するための制御動作を行うディスク装置を提供することを目的とする。本発明の別の目的は、対物レンズにかかる重力などの外力の影響を解消することができるディスク装置を提供することである。又、本発明の別の目的は、トラック幅の狭いディスクをトラッキングする際、対物レンズのシフト量を小さくするための制御動作を有するディスク装置を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明のディスク装置は、データの記録媒体であるディスクにレーザービームを照射する光ピックアップと、該光ピックアップ内に設けられるとともに前記レーザービームを前記ディスクのトラックに収束させる対物レンズと、該対物レンズをディスクの径方向に移動させる対物レンズ移動手段と、前記光ピックアップが出力する光検出信号よりトラッキングエラー信号を生成するトラッキングエラー信号生成手段と、該トラッキングエラー信号生成手段から与えられるトラッキングエラー信号に応じて前記対物レンズ移動手段を動作させて前記対物レンズを前記ディスクのトラックに追従させるトラッキングサーボ手段と、前記光ピックアップをディスクの径方向に高速に移動させるためのスレッドモータと、を有し、前記光ピックアップよりレーザービームを前記ディスクのトラックに照射してデータの記録又は再生を行うディスク装置において、前記スレッドモータの回転速度を検出するとともに、速度信号を生成する速度信号生成手段と、前記速度信号と前記トラッキングエラー信号とが与えられるとともに、この2つの信号の差を表す差信号を生成する差信号生成手段と、を有し、前記トラッキングエラー信号に基づいて、前記トラッキングサーボ手段によって前記対物レンズ移動手段を動作させるとともに、前記差信号生成手段によって生成された差信号に基づいて、前記スレッドモータを駆動することによって、前記対物レンズを前記ディスクのトラックに追従させることを特徴とする。
【0014】
このようなディスク装置において、スパイラル状にトラックが形成されたディスクを記録又は再生する際に、そのトラックに対物レンズを追従させる。このとき、トラッキングサーボ手段によって、トラッキングエラー信号を用いたトラッキング制御を行って、光ピックアップ内のアクチュエータを駆動させて、対物レンズを追従させる。しかしながら、トラックがスパイラル状であるため、対物レンズをトラッキング制御のみで移動させたとき、対物レンズとトラックからシフトする。このときトラッキングエラー信号によって示されるシフト量に応じて、スレッドモータを速度制御することによって、対物レンズをトラッキングするトラックの中央位置に追従させる。
【0015】
又、本発明のディスク装置は、データの記録媒体であるディスクにレーザービームを照射する光ピックアップと、該光ピックアップ内に設けられるとともに前記レーザービームを前記ディスクのトラックに収束させる対物レンズと、該対物レンズをディスクの径方向に移動させる対物レンズ移動手段と、前記光ピックアップが出力する光検出信号よりトラッキングエラー信号を生成するトラッキングエラー信号生成手段と、該トラッキングエラー信号生成手段から与えられるトラッキングエラー信号に応じて前記対物レンズ移動手段を動作させて前記対物レンズを前記ディスクのトラックに追従させるトラッキングサーボ手段と、前記光ピックアップをディスクの径方向に高速に移動させるためのスレッドモータと、を有し、前記光ピックアップよりレーザービームを前記ディスクのトラックに照射してデータの記録又は再生を行うディスク装置において、前記スレッドモータの回転速度を検出するとともに、速度信号を生成する速度信号生成手段と、前記光ピックアップが出力する光検出信号より、前記レーザービームの光源光軸からの前記対物レンズの光軸のシフト量を表すシフト信号を生成するシフト信号生成手段と、前記速度信号と前記シフト信号とが与えられるとともに、この2つの信号の差を表す差信号を生成する差信号生成手段と、を有し、前記トラッキングエラー信号に基づいて、前記トラッキングサーボ手段によって前記対物レンズ移動手段を動作させるとともに、前記差信号生成手段によって生成された差信号に基づいて、前記スレッドモータを駆動することによって、前記対物レンズを前記ディスクのトラックに追従させることを特徴とする。
【0016】
このようなディスク装置において、スパイラル状にトラックが形成されたディスクを記録又は再生する際に、そのトラックに対物レンズを追従させる。このとき、トラッキングサーボ手段によって、トラッキングエラー信号を用いたトラッキング制御を行って、光ピックアップ内のアクチュエータを駆動させて、対物レンズを追従させる。しかしながら、トラックがスパイラル状であるため、対物レンズをトラッキング制御のみで移動させたとき、対物レンズの光軸が光源光軸よりシフトする。このとき、シフト信号によって示されるシフト量に応じて、スレッドモータを速度制御することによって、対物レンズをトラッキングするトラックの中央位置に追従させる。
【0017】
このとき、光ピックアップよりディスクに照射するレーザービームが、読み取りトラックに合焦するメインビームと、該読み取りトラックの両側に隣接した2つのトラックにそれぞれ合焦するサブビームとからなり、光ピックアップよりシフト信号生成手段に、メインビーム及び2つのサブビームの反射光から得られた光検出信号が与えられ、シフト信号生成手段において、メインビームの反射光による光検出信号に2つのサブビームの反射光による光検出信号の和信号を加えることによって、シフト信号が生成される。
【0018】
更に、光ピックアップよりトラッキングエラー信号生成手段に、メインビーム及び2つのサブビームの反射光から得られた光検出信号が与えられ、トラッキングエラー信号生成手段において、メインビームの反射光による光検出信号から2つのサブビームの反射光による光検出信号の和信号を差し引くことによって、トラッキングエラー信号が生成される。
【0019】
又、本発明のディスク装置は、データの記録媒体であるディスクにレーザービームを照射する光ピックアップと、該光ピックアップ内に設けられるとともに前記レーザービームを前記ディスクのトラックに収束させる対物レンズと、該対物レンズをディスクの径方向に移動させる対物レンズ移動手段と、前記光ピックアップが出力する光検出信号よりトラッキングエラー信号を生成するトラッキングエラー信号生成手段と、該トラッキングエラー信号生成手段から与えられるトラッキングエラー信号に応じて前記対物レンズ移動手段を動作させて前記対物レンズを前記ディスクのトラックに追従させるトラッキングサーボ手段と、前記光ピックアップをディスクの径方向に高速に移動させるためのスレッドモータと、を有し、前記光ピックアップよりレーザービームを前記ディスクのトラックに照射してデータの記録又は再生を行うディスク装置において、前記スレッドモータの回転速度を検出する複数のホール素子と、前記複数のホール素子からの複数の検出信号を、それぞれ、微分する微分手段と、前記複数の検出信号が前記微分手段で微分された複数の微分信号を、それぞれ、絶対値化するとともに、前記スレッドモータの回転方向に応じて正又は負の極性を与える絶対値化手段と、該絶対値化手段より出力された複数の信号を加算する加算手段と、前記加算手段からの信号と前記トラッキングエラー信号とが与えられるとともに、この2つの信号の差を表す差信号を生成する差信号生成手段と、を有し、前記トラッキングエラー信号に基づいて、前記トラッキングサーボ手段によって前記対物レンズ移動手段を動作させるとともに、前記差信号生成手段によって生成された差信号に基づいて、前記スレッドモータを駆動することによって、前記対物レンズを前記ディスクのトラックに追従させることを特徴とする。
【0020】
又、本発明のディスク装置は、データの記録媒体であるディスクにレーザービームを照射する光ピックアップと、該光ピックアップ内に設けられるとともに前記レーザービームを前記ディスクのトラックに収束させる対物レンズと、該対物レンズをディスクの径方向に移動させる対物レンズ移動手段と、前記光ピックアップが出力する光検出信号よりトラッキングエラー信号を生成するトラッキングエラー信号生成手段と、該トラッキングエラー信号生成手段から与えられるトラッキングエラー信号に応じて前記対物レンズ移動手段を動作させて前記対物レンズを前記ディスクのトラックに追従させるトラッキングサーボ手段と、前記光ピックアップをディスクの径方向に高速に移動させるためのスレッドモータと、を有し、前記光ピックアップよりレーザービームを前記ディスクのトラックに照射してデータの記録又は再生を行うディスク装置において、前記光ピックアップが出力する光検出信号より、前記レーザービームの光源光軸からの前記対物レンズの光軸のシフト量を表すシフト信号を生成するシフト信号生成手段と、前記スレッドモータの回転速度を検出する複数のホール素子と、前記複数のホール素子からの複数の検出信号を、それぞれ、微分する微分手段と、前記複数の検出信号が前記微分手段で微分された複数の微分信号を、それぞれ、絶対値化するとともに、前記スレッドモータの回転方向に応じて正又は負の極性を与える絶対値化手段と、該絶対値化手段より出力された複数の信号を加算する加算手段と、前記加算手段からの信号と前記シフト信号とが与えられるとともに、この2つの信号の差を表す差信号を生成する差信号生成手段と、を有し、前記トラッキングエラー信号に基づいて、前記トラッキングサーボ手段によって前記対物レンズ移動手段を動作させるとともに、前記差信号生成手段によって生成された差信号に基づいて、前記スレッドモータを駆動することによって、前記対物レンズを前記ディスクのトラックに追従させることを特徴とする。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
<ディスク装置の構成>
まず、図1に示すディスク装置の内部構造とディスクとの関係を示すブロック図より、ディスク装置の構成について、説明する。図1のディスク装置は、ディスク1のトラッキングを行う光ピックアップ2と、光ピックアップ2とディスク1を挟むようにして対向して設けられる磁気ヘッド3とを有し、この光ピックアップ2と磁気ヘッド3は、ともにディスク1の径方向に移動する。この光ピックアップ2と磁気ヘッド3によってディスク1の記録が行われるとともに、光ピックアップ2によってディスク1の再生が行われる。
【0023】
又、光ピックアップ2は、スレッドモータ5の回転駆動を直線駆動に変換する不図示の中間伝達手段によって、ディスク1の径方向への移動を行う。そして、スレッドモータ5は、PWM(Pulse Width Modulation)ドライバ14からのスレッドモータ駆動信号によって駆動する。又、このスレッドモータ5内には、N極とS極とが交互に磁化されたリング上のマグネット(不図示)と、ホール素子11a,11bとが設けられている。
【0024】
このホール素子11a,11bは、所定間隔隔てて設けられるとともに、その出力が速度・移動距離演算回路12が送出される。そして、速度・移動距離演算回路12では、ホール素子11a,11bからの出力をもとに、光ピックアップ2のディスク1の径方向の移動速度及び移動距離が演算される。そして移動速度の演算結果が、DSP(Digital Signal Processor)で構成されたデジタルサーボ処理回路10に、移動距離の演算結果が制御用マイコン8に送出される。デジタルサーボ処理回路10では、この演算結果と後述するRF処理回路6からの信号より処理された信号に基づいて、各制御系を動作させるための信号が生成される。この信号に基づいてPWM信号生成回路13で生成されたPWM信号がPWMドライバ14に送出されて、スレッドモータ駆動信号が生成される。
【0025】
又、磁気ヘッド3は、ヘッドモータ16によって、ディスク1のディスク面に対して鉛直方向に移動する。即ち、ディスク1への記録時に、ディスク1に摺接すべく、ディスク1のディスク面側に磁気ヘッド3が降下するように、磁気ヘッド昇降駆動回路18によってヘッドモータ16が駆動される。そして、記録が終了すると、磁気ヘッド3がディスク1から離間する方向に上昇するように、磁気ヘッド昇降駆動回路18によってヘッドモータ16が駆動される。
【0026】
このようにして、ヘッドモータ16によってディスク1に摺接するように磁気ヘッド3が移動させられたとき、信号処理回路9より与えられるデータ信号によって、ヘッド駆動回路17が動作する。このヘッド駆動回路17によって磁気ヘッド3が駆動して、ディスク1に対して信号処理回路9より与えられたデータ信号に応じた磁界を発生し、ディスク1への記録動作が行われる。
【0027】
又、光ピックアップ2で光検出されて電流信号として出力される信号がRF処理回路6によって、電圧信号に変換される。このRF処理回路6に出力される信号のうち、データを有するRF信号に対応する光検出信号は、位相が正反対の2つの信号からなる。よって、この光検出信号は、RF処理回路6に送出されると、この2つの信号の差動増幅した後、AGC(Automatic Gain Control)処理が施されて信号処理回路9に送出される。
【0028】
そして、信号処理回路9において、エラー訂正、デインターリーブ、NRZI(Non-Return-to-Zero Invert)変換、ビタビ復号などによって復号化され、インターフェース20に送出されて、外部に出力される。このようにして、ディスク1内のデータの再生が行われる。尚、インターフェース20を介して外部よりデータが入力されたとき、このデータが、信号処理回路9において、上記した変換と逆の変換が行われて符号化されたデータ信号が、ヘッド駆動回路17に送出される。このようにヘッド駆動回路17にデータ信号が送出された後、上述したように、このヘッド駆動回路17がそのデータ信号に応じて磁気ヘッド3を駆動させることによりディスク1への記録が行われる。
【0029】
又、デジタルサーボ処理回路10では、RF信号から得た同期信号が、基本周波数信号となるマスタークロックに基づいてPLL(Phase Locked Loop)処理される。このようにPLL処理された信号が、PWM信号生成回路13でPWM処理された後、スピンドルモータドライバ15を介してスピンドルモータ4が回転制御される。このスピンドルモータ4は、ディスク1をその周方向に動作させるためのモータで、ディスク1を記録・再生するためにトラッキング動作を行うときに、上記のようなPLL制御が施される。尚、ディスクの回転起動時やトラックのロングサーチを行うときは、スピンドルモータ4はFG(Frequency Generator)サーボによって制御される。
【0030】
又、このFGサーボについて、以下に説明する。スピンドルモータドライバ15より駆動信号がスピンドルモータ4に与えられて、スピンドルモータ4が回転駆動される。このとき、スピンドルモータ4からそのモータ自身の回転に関する信号がスピンドルモータドライバ15に帰還され、そして、この帰還された信号を波形成形して生成されたFG信号を信号処理回路9に送出する。この信号処理回路9では、このFG信号によって、現在光ピックアップ2がトラッキングしている位置におけるスピンドルモータ4のあるべき回転速度と比較され、エラー信号を発生する。このエラー信号に基づいて、デジタルサーボ処理回路10において、スピンドルモータ4を駆動するための信号が生成され、PWM信号生成回路13でPWM処理された後、スピンドルモータドライバ15に与えられる。このようなループによって、FGサーボがなされる。
【0031】
尚、スピンドルモータドライバ15で生成されたFG信号は、制御用マイコン8にも与えられる。このように与えられたFG信号よりスピンドルモータ4の回転速度を検出し、光ピックアップ2の位置するゾーンのあるべきの回転速度より、スピンドルモータ4の回転速度が予め設定された所定値以上低い場合に、制御用マイコン8によって、レーザービームのディスク1への照射を強制的に停止させる。
【0032】
一方、光ピックアップ2で光検出されたトラッキングエラー信号やフォーカスエラー信号といったエラー信号は、RF処理回路6で処理された後、A/Dコンバータ7でデジタル信号に変換される。このデジタル信号は、デジタルサーボ処理回路10に送出される。そして、デジタルサーボ処理回路10で処理された信号がPWM信号生成回路13でPWM処理された後、PWMドライバ14を介して、スレッドモータ5や光ピックアップ2内のアクチュエータ(不図示)を駆動して、フォーカス制御及びトラッキング制御がなされる。
【0033】
又、トラッキング制御を行うためのトラッキングサーボは、光ピックアップ2→RF処理回路6→ADコンバータ7→デジタルサーボ処理回路10→PWM信号生成回路13→PWMドライバ14→光ピックアップ2又はスレッドモータ5というメインループと、ホール素子11a,11b→速度・移動距離演算回路12→デジタルサーボ処理回路10→PWM信号生成回路13→PWMドライバ14→光ピックアップ2又はスレッドモータ5というサブループとから構成される。
【0034】
更に、このディスク装置は、後述するレーザーダイオード41(図5)から出力されるレーザーの出力を制御するLD(Laser Diode)ドライバ31と、ディスク1と光ピックアップ2との絶対位置を求める基準となる位置検出手段となるリミットスイッチのような機械的なスイッチであるリードインスイッチ32とを有する。
【0035】
このような構成のディスク装置において、制御用マイコン8、信号処理回路9、デジタルサーボ処理回路10、及びPWM信号生成回路13によって、制御回路19が構成される。
【0036】
<ディスク>
次に、ディスク1の構成について、図面を参照して以下に説明する。図2は、ディスク1の記録領域の構成を示す平面図である。又、図3は、ディスク1におけるトラックの構成を示す図である。又、図4は、ディスク1に構成される超解像層と記録層との関係を示す図である。
【0037】
このディスク1は、レーザーストローブ磁界変調記録によって記録されるディスクである。即ち、磁気ヘッド3(図1)から磁界を受けるとともに光ピックアップ2(図1)からのパルス発光されたレーザービームに基づいて、ディスク1の所定の箇所がキュリー点以上の温度に高められ、磁気ヘッド3から受ける磁界の方向に基づいて垂直磁化される。その後、このように磁化された記録箇所がキュリー点以下の温度に降下すると、上記のように磁化方向付けされた磁化に固定保持される。尚、照射されるレーザービームがパルス発光であるので、記録された信号のピッチが非常に狭いものとなり、高密度記録が可能となる。
【0038】
まず、ディスク1の構成について、図2を参照して説明する。ディスク1は、中央位置にスピンドルモータ4(図1)の軸に嵌合するためのスピンドル嵌合用孔25を有し、その最外周部と最内周部にそれぞれ信号が全く記録されないミラー領域21a,21bが形成される。そして、ミラー領域21aの内周側にリードイン領域22が、ミラー領域21bの外周側にリードアウト領域24が設けられ、このリードイン領域22の内周側からリードアウト領域24の外周側に至る領域に、データを記録するためのメイン情報領域23が形成される。
【0039】
又、リードイン領域22は、TOC領域でもあり、後述するウォブルが形成されている。このTOC(Table Of Contents)領域とは、ディスク製造者がディスク製造時に、ディスク記録時や再生時のレーザービームの最適なパワーなどといった製造情報などのTOC情報を記録した領域であり、そのTOC情報が繰り返し記録される。このようなTOC情報はユーザーが手にした時には既に記録済であり、消去することができない。尚、このリードイン領域22を、以下「TOC領域22」と呼ぶ。
【0040】
更に、メイン情報領域23は、複数に分割されたゾーンが形成される。このように複数のゾーンが形成されたディスク1は、ゾーンCLV(Constant Linear Velocity)制御によって、回転制御がなされる。このゾーンCLV制御は、各ゾーンにおいて、その回転数が一定になるように制御され、又、各ゾーン間の線速度がほぼ等しくなるように、各ゾーンの固定回転数が決定される。即ち、各ゾーンにおいては、CAV(Constant Angular Velocity)制御が行われ、又、各ゾーン間においては、CLV制御が行われる。よって、外周側のゾーンほどその固定回転数が低くなる。
【0041】
尚、TOC領域22もこのメイン情報領域23と同様のゾーンCLV制御が行われるため、TOC領域22の回転数が、全ての情報記録領域において、最も低い回転数で制御される。又、本実施形態において、ディスク1内のメイン情報領域23には、10のゾーンに分割されているものとし、外周部よりゾーン1、ゾーン2、・・・ゾーン10とする。又、TOC領域22は、ゾーン0に相当する。
【0042】
このような構成のディスク1を、ディスク装置に装着したとき、まず、光ピックアップ2(図1)がTOC領域22の読み取りを行い、ディスク1のTOC情報を把握する。そして、このTOC情報を読み取った後、ディスク装置が、記録・再生を開始することが可能な状態、即ち、スタンバイ状態になる。尚、このディスク1を装着してからスタンバイ状態になるまでの時間を、以下、「スタンバイ時間」と呼ぶ。
【0043】
このように、TOC領域22の読み取りを行う際、その読み取りが可能となるようにするために、ディスクの回転数を所定の回転数にしなければならない。このとき、TOC領域22がディスク1の情報記録領域の最外周部に存在して、その固定回転数が最も低く設定されているため、スピンドルモータ4(図1)の立ち上げが速くなる。よって、スタンバイ時間を短縮することができる。更に、TOC領域22が外周部に設けられることによって、TOC領域22の読み込みが、ディスク1の偏心に対しても有利となり、そのTOC情報の読み取りにかかる時間が短くなる。
【0044】
次に、ディスク1のトラックの構成について、図3を参照して説明する。ディスク1は、最外周部から最内周部まで、スパイラル状に1つのグルーブが形成されている。逆に言えば、最外周部から最内周部まで、スパイラル状にランドが形成されることになる。このように形成されたグルーブ及びランドは、光ピックアップ2(図1)がディスク1の径方向に移動すると、交互に検出されることになる。そして、このグルーブとランドの幅は、例えば、両者とも略0.5μmとするように、互いに略等しい値とする。以下、グルーブ及びランドの幅を、それぞれ、Pとして説明する。
【0045】
このように形成されたグルーブ及びランドは、それぞれ記録可能なトラックとして用いられる。即ち、図3(b)のように、グルーブからなる記録トラックとランドからなる記録トラックが交互に設けられることになる。尚、図3(a)は、ディスク1の円周方向に形成されたグルーブ及びランドの関係を示す図で、矢印が内周方向を示す。又、図3(b)は、図3(a)の図のM−M’の断面図である。以下、ランドによって形成される記録トラックを「トラックA」、グルーブによって形成される記録トラックを「トラックB」とする。このとき、トラックA間及びトラックB間のピッチは、それぞれ2Pとなるが、隣接するトラック同士のピッチは、Pとなる。以下、メイン情報領域23のトラックの構成について、説明する。
【0046】
このようなトラックが形成されたとき、トラックA及びトラックBは、所定間隔毎にランド及びグルーブが消滅する。このランド及びグルーブの消滅部分は、それぞれ、クロックマーク26a,26bとなる。トラックAに形成されるクロックマーク26aは、グルーブの高さと同じであり、その幅Sは、ディスク1上に形成されるビームスポットの径よりも小さくなるように設定されている。このようにすることによって、クロックマークの検出時において、その検出信号がゼロになる部分が連続しない。即ち、クロックマークの検出時では、ゼロクロスする箇所が1点になる。又、トラックBに形成されるクロックマーク26bは、ランドと同じ高さであり、その幅は、クロックマーク26aと同様Sである。
【0047】
よって、トラックA又はトラックBを再生するとき、それぞれのクロックマーク26a,26bを検出したときの信号の位相が異なることから、どちらのトラックを再生しているか確認することができる。このことは、トラックA又はトラックBを記録するときも、同様である。このようなクロックマーク26a,26bが形成されるトラックA及びトラックBにおいて、それぞれ、クロックマーク26a間、又は、クロックマーク26b間に、データ部27a,27bが形成される。このデータ部27a,27bは、それぞれ、55個毎に1つのフレームを形成する。
【0048】
又、このように1つのフレームを形成する55個のデータ部27aの1つには、その側壁にウォブル28aが形成される。又、データ部27aのうち、ウォブル28aが形成されたデータ部に続くデータ部には、ウォブル28aが形成された側壁の逆側の側壁に、ウォブル28bが形成される。このウォブル28a,28bは、アドレス情報を記録するために形成されたもので、ウォブル28aの示すアドレスデータを「先行アドレス」、ウォブル28bの示すアドレスデータを「後行アドレス」と呼ぶ。
【0049】
このようなウォブル28a,28bが形成された2つのデータ部を、「アドレスデータ部」と呼び、残りの53個のデータ部を「メインデータ部」と呼ぶ。尚、トラックBにおいては、データ部27bのうち、その内壁にウォブル28a,28bが形成された2つのデータ部を「アドレスデータ部」と呼び、残りの53個のデータ部を「メインデータ部」と呼ぶ。よって、2個のアドレスデータ部と53個のメインデータ部によって1個のフレームが形成される。そして、このフレームが16個毎に、1つの情報群として処理され、この情報群をブロックと呼ぶ。このブロックの1トラックあたりの数は、そのトラックの位置によって異なり、ディスク1の内周側にあるトラックほどその数が少なくなる。
【0050】
そして、このアドレスデータ部には、ゾーン番号、ブロック番号、及びフレーム番号が記録され、このアドレスデータ部のデータをもとに、記録、再生、サーチなどの各モードが実施される。又、アドレスデータ部は、このようなデータがウォブルを形成することによって記録されるため、ランドとなるトラックAのトラッキング時及びグルーブとなるトラックBのトラッキング時のいずれの場合においても、そのデータを読み出すことができる。更に、メインデータ部にデータの書込みを行う際には、トラックA、トラックBのどちらのトラックにデータを書き込んでいるのかを明確にするための情報が、その主情報となるデータとともに記録される。
【0051】
このようにトラックが構成されるとき、図3において最も外周側のトラックAの位置情報であるゾーン番号、ブロック番号、及びフレーム番号を、それぞれ、a、b、c、とし、その位置表現となるADIPデータを(a,b,c)とする。よって、同じトラック上の次のフレームのADIPデータは、(a,b,c+1)となる。今、このゾーンにおけるトラック1本のブロック数をnとすると、フレーム(a,b,c)に対向する次のトラックAのフレームのADIPデータは、(a,b+n,c)となる。尚、図3では、便宜上、対向するフレームのずれがないものとして示されているが、実際には、数フレーム分のずれが生じる、そして、このずれがαフレーム分であるとすると、(a,b+n,c+α)となる。又、このαフレーム分のずれは、各トラック毎に既知の値であり、ディスク装置においては、制御用マイコン8(図1)にデータテーブルが用意されている。
【0052】
このADIPデータは、符号化されて、先行アドレス及び後行アドレスとして、それぞれの側壁のウォブル28a,28bに、バイフェーズマーク変調されて記録される。即ち、先行アドレスと後行アドレスのデータが同じか異なるかによって、トラックが判断される。トラックAをトラッキングしている際にそのフレームアドレスを認識するためにADIPデータを読み出したとき、先行アドレスと後行アドレスの再生信号は逆位相のものとなる。しかし、この先行アドレスと後行アドレスはそれぞれバイフェーズマーク変調された信号であるため、トラックAをトラッキングしている際、同じフレームアドレスを表す情報が連続して読み出される。
【0053】
一方、トラックBをトラッキングしている際にそのフレームアドレスを認識するためにADIPデータを読み出したとき、まず、外周側のウォブル28aによる先行アドレスが読まれ、次に、内周側のウォブル28bによる後行アドレスが読まれる。このとき、例えば、先行アドレスのデータが(a,b,c)となるとき、後行アドレスのデータが(a,b+n,c)となる(尚、上記したように、トラック毎にフレームのずれが生じる場合、そのずれとなるαフレーム分を考慮する。)。
【0054】
このように、ウォブル28aによる先行アドレスとウォブル28bによる後行アドレスのデータが同じであれば、トラックAをトラッキングしており、又、ウォブル28aによる先行アドレスとウォブル28bによる後行アドレスのデータが違えば、トラックBをトラッキングしていることとなる。よって、ADIPデータを読み出すことによって、ランドのトラックをトラッキングしているか、グルーブのトラックをトラッキングしているかが確認できる。
【0055】
このようにしてメイン情報領域23にトラックが形成されるが、TOC領域22においても、同様に、ランドで形成されるトラックAとグルーブで形成されるトラックBを有し、トラックA,Bには、それぞれ、クロックマークとデータ部とが設けられる。そして、メイン情報領域23と同様に、2個のアドレスデータ部と53個のメインデータ部とで1つのフレームが形成され、2個のアドレスデータは、先行アドレスとなるウォブルと後行アドレスとなるウォブルが形成される。
【0056】
更に、このようなトラックが形成されるTOC領域22では、メインデータ部にもウォブルが、先行アドレスとなるウォブルが形成される側壁と同じ側の側壁に形成される。即ち、後行アドレスとなるウォブルが形成される側壁と逆側の側壁に形成され、アドレスデータのように、交互に形成されない。よって、連続する2つのトラックの一方のトラックにのみ、このウォブルによるデータが記録されることになる。尚、このように記録されたTOC領域22では、前述したように、TOC情報が繰り返し記録されているため、全てを読み出す必要が無い。
【0057】
又、メインデータ部のウォブルが、ランドの片側の側壁にのみ形成されているため、その記録されたTOC情報の繰り返し回数が、トラック毎にTOC情報を記録するものよりも少なくなるようにみえる。しかしながら、上述したように、ランドで形成されるトラックA、グルーブで形成されるトラックBのいずれをトラッキングしている場合においても、このウォブルからデータを読み出すことができるため、結果的にトラックA,Bの両方にTOC情報が記録されていることとなる。
【0058】
後述するが、トラックAからトラックBに移行するとき、又はその逆の動作を行うとき、トラッキングエラー信号の位相を反転してトラッキングサーボ制御を行う。TOC領域22において、光ピックアップ2(図1)がトラックAをトラッキングしているとき、トラッキングエラー信号がトラックA用の場合はそのままの位相の信号を用い、又、トラッキングエラー信号がトラックB用の場合は位相を反転させた信号を用いる。このようにトラッキングエラー信号を変更することによって、トラックを移行することなくTOC情報を読み取ることができる。
【0059】
よって、例えば、ディスク装置がスタンバイ時間にTOC情報を読み取る際、予め、トラックA用のトラッキングエラー信号を用いるように取り決めがなされているものとする。このとき、TOC領域22に光ピックアップ2(図1)を移動させたとき、その到達地点がトラックBであるとしたとき、このトラックBに隣接したトラックAに光ピックアップを移動させることなく、トラッキングエラー信号の位相反転させることによって、TOC情報を読み取ることができる。
【0060】
このように構成したTOC領域22にも、データを書き込むようにしても構わない。このとき、TOC領域22には、データを書き込むためのメインデータ部を形成するデータ部にもウォブルが形成されるため、SN比が悪くなり、データ部に書き込まれたデータを読み取りにくくなる。しかしながら、このデータ部に書き込むデータの記録密度を下げて記録することによって、ウォブルの影響を低減させることができる。例えば、メイン情報領域23のメインデータ部に記録するデータの記録密度の略半分の記録密度で記録することによって、ウォブルの影響を大幅に低減させることができる。
【0061】
このようにデータを書き込まれたTOC領域22を再生したとき、その再生信号は、メインデータにウォブルによる光量変化信号が重畳したものとなるが、ローパスフィルタを通すことによって、重畳された高周波のウォブルによる光量変化信号を除くことができる。このようにすることで、書き込まれたデータからウォブルの影響を取り除くことができる。
【0062】
このようにデータがTOC領域22に書き込まれるとき、その書き込まれるデータを、例えば、ユーザーTOC(UTOC)情報としても良い。このUTOC情報は、例えば、ディスク1に音楽情報が記録されるとき、記録される曲の開始位置と終了位置といった曲情報であり、このような曲情報となるUTOC情報を把握することによって、ディスク1に記録された曲からユーザーが再生したい曲を選択することができる。
【0063】
よって、このUTOC情報もディスク1の再生時において必要な情報であるので、TOC情報とともに、スタンバイ時間に読み込まれる。今、TOC領域22にウォブルによって記録したTOC情報とメインデータ部に書き込まれたUTOC情報を同時に読み取ることができるので、TOC情報とUTOC情報を個別に読み取るときに比べて、そのスタンバイ時間が早くなる。
【0064】
更に、超解像層と記録層の関係について、図4を参照して説明する。ディスク1は、光ピックアップ2(図1)からレーザービームが照射される側に超解像層が、磁気ヘッド3(図1)が摺接される側に記録層が設けられる。そして、ディスク1の超解像層がキュリー点に達していないときは、図4(a)に示すように、超解像層の磁化の向きは、水平方向に向いている。尚、図4において、記録層のN、S、矢印、及び超解像層の矢印は、その磁化されている方向を示し、1ビット単位で描いている。又、記録層のNで磁化された記録単位が再生された信号を「N信号」、記録層のSで磁化された記録単位が再生された信号を「S信号」と呼ぶ。
【0065】
又、超解像層のキュリー点は、記録層のキュリー点よりも低い。よって、ディスク1の再生時に光ピックアップ2(図1)よりレーザービームが照射されたとき、そのレーザービームの出力は、その1ビットの記録単位の温度が超解像層のキュリー点より高く、記録層のキュリー点より低くなるように、パワー制御される。又、記録時に光ピックアップ2(図1)よりレーザービームが照射されたとき、そのレーザービームの出力は、その1ビットの記録単位の温度が記録層のキュリー点より高くなるように、パワー制御される。
【0066】
まず、再生時の動作について、以下に説明する。光ピックアップ2(図1)より、上記のように再生時の出力となるようにパワー制御されたレーザービームが、ディスク1の超解像層に照射される。そして、超解像層が、図4(b)又は図4(c)のように、その真上にある記録層の磁化の向きによって垂直磁化される。これによって、レーザービームの反射光の偏光面が磁化された方向に応じた回転を受ける。しかしながら、記録層に記録されるデータは、高密度に記録されているため、レーザービームが照射されて生じるスポットのスポット径が、その記録単位より大きく、3ビットの記録単位に相当する。即ち、3ビット単位でスポットが形成される。尚、このレーザービームによって生じるスポットを「光スポット」と呼ぶ。
【0067】
今、図4(b)において、超解像層が存在しないものとしたとき、光スポットが形成される記録層の3ビットの記録単位には、Nに磁化された記録単位が1ビット、Sに磁化された記録単位が2ビット存在するため、実際にNに磁化された記録単位を再生するにもかかわらず、Sに磁化された記録単位としてS信号が再生される。しかしながら、超解像層を設けることによって、この超解像層がキュリー点に達する箇所は、目標とする1ビット分の記録単位部のみである。
【0068】
よって、図4(b)においては、反射光の偏光面はNに磁化された記録単位による回転を受け、N信号が再生される。尚、このようにキュリー点に達する箇所を「熱スポット」と呼ぶ。又、図4(c)においては、光スポットの中心に位置する箇所に形成される熱スポットに対応する1ビットの記録単位が、Sに磁化されているので、S信号が再生される。
【0069】
次に、記録時の動作について、以下に説明する。光ピックアップ2(図1)より、上記のように記録時の出力となるようにパワー制御されたレーザービームが、ディスク1の超解像層に照射され、超解像層が、図4(d)のように垂直磁化される。このとき、磁気ヘッド3(図1)が摺接して、磁界が与えられるので、この磁気ヘッド3の磁界によって、記録層も図4(d)のように垂直磁化される。即ち、図4(c)において、Sに磁化された記録単位が、図4(d)のように、磁気ヘッド3によってNの磁界が与えられると、Nに垂直磁化される。
【0070】
このとき、図4(d)において、超解像層の熱スポットのスポット径が大きくなるものの、記録層のキュリー点を超える熱スポットのスポット径が1ビットの記録単位に相当する大きさとなる。よって、目標とする1ビット分の記録単位部のみに、磁気ヘッド3(図1)による垂直磁化が行われる。
【0071】
上記のように、ランド及びグルーブの両方を記録トラックとし、更に、ディスク1の外側領域にTOC領域22を設けるとともに、このTOC領域22にもデータを記録するようにすることによって、直径が略50mmのディスクに、略1Gbyteの記録容量のデータを記録することが可能となった。(尚、フレキシブルディスクは1.44Mbyte、直径が120mmのCD(Compact Disk)は650Mbyte、直径が64mmのミニディスクは140Mbyteである。)
【0072】
<光ピックアップの構成>
以下に、光ピックアップ2について、図面を参照して説明する。図5は、光ピックアップ2の構成を示す外観斜視図である。光ピックアップ2は、レーザーダイオード41からディスク1上の目的とするトラックの中央位置めがけてレーザービームが出射される。このレーザービームは、まず、ホログラム素子で構成される第1回析格子42に入光する。第1回析格子42において、入光したレーザービームから、1つの0次光のメインビームと、2つの1次光のサブビームとが生成される。このメインビームとサブビームが、それぞれPBS(Polarizing beam splitter)45を通過した後、これらのビームを平行光にするコリメータレンズ43を介して、対物レンズ44に入光する。
【0073】
この対物レンズ44は、不図示のアクチュエータによって、トラッキングエラー信号に基づいてディスク1の径方向に移動するように制御される。又、対物レンズ44に入光するメインビームは、ディスク1上の目的とするトラックの中央位置にメインスポットを形成し、対物レンズ44に入光する2つのサブビームは、それぞれ、メインスポットの形成されたトラックの両隣のトラックの中央位置にサブスポットを形成する。
【0074】
メインデータ部の再生又は記録時に、メインビームによって形成される熱スポット(図4)によって超解像層(図4)の温度がキュリー点に達し、記録されたデータに基づいて垂直磁化されたディスク1の記録層(図4)の磁化の方向によって、ディスク1からの反射光の偏光面が回転される。このようにディスク1上のメインスポットに形成される熱スポット(図4)の磁化の方向によって偏光面が回転された反射光は、対物レンズ44及びコリメータレンズ43を通過してPBS45に入光する。又、このとき、目的とするトラックの両隣にあるそれぞれのトラックに入射されるサブビームが、サブスポットで反射されて、上述したメインスポットからの反射光と同様に、対物レンズ44及びコリメータレンズ43を通過してPBS45に入光する。
【0075】
このようにPBS45に入光したメインビーム及びサブビームの反射光の一部が分光された一部の反射光が、ホログラム素子で構成される第2回析格子49に入光し、第2回析格子49によってその進行方向が変えられる。このようにして第2回析格子49を通過した反射光は、第2光検出器50に入光する。更に、この第2光検出器50において、入光した反射光より、トラッキングエラー信号やフーコー法に基づくフォーカスエラー信号を生成するための光信号が生成される。
【0076】
又、PBS45に入光したメインビーム及びサブビームの反射光が分光された残りの反射光は、90°進行方向を変えられ、ウォラストンプリズム46に入光する。このようにウォラストンプリズム46に入光した反射光は、ディスク反射時にその偏光面に与えられる回転に応じて進行方向が異なる。そして、このようにウォラストンプリズム46を通過する反射光は、凹レンズ47を介して対となる2つのフォトダイオード(不図示)で構成される第1光検出器48に入光する。
【0077】
このとき、第1光検出器48に設けられた2つのフォトダイオードに、それぞれ、上述した進行方向の異なる反射光が入射される。この2つのフォトダイオードに反射光が入射されると、第1光検出器48がそれぞれの反射光に対応した電流信号を生成して、RF処理回路6(図1)に送出する。この進行方向の異なる反射光によって生成される電流信号は、互いに逆位相の信号となり、上述したS信号及びN信号に相当するメインデータ部に記録されたデータを再生したRF信号である。
【0078】
このように、光ピックアップ2内をレーザービームが通過するとき、レーザーダイオード41から出射されるレーザービームの出力は、記録時には記録層の温度をキュリー点以上に上昇させるために、再生時の出力より大きくする必要がある。又、記録時には、再生時と比べて、レーザービームの出力が大きくなるため、第1光検出器48及び第2光検出器50に入射される反射光のレベルも大きくなるため、上記のRF信号及び光信号のレベルも大きくなる。よって、これらの信号を処理する光ピックアップ2後段の各回路において、そのゲインが再生時に比べて小さくなるように切り換えられる。
【0079】
又、上述したように、ディスク1のTOC領域22(図2)に、UTOC情報などを記録する際には、その記録密度を下げて記録するために、光ピックアップ2のレーザーダイオード41より出射されるレーザービームの発光パルスの時間間隔を広げる。即ち、発光パルスの周期を長くしてその発光パルスの周波数を少なくすることによって、TOC領域22(図2)に記録するデータの記録密度を、メイン情報領域23(図2)に記録するデータの記録密度より小さくする。
【0080】
<ディスク装着時のサーチ動作>
ディスク1をディスク装置に装着したときのサーチ動作について、図2及び図5を参照して説明する。ディスク1がディスク装置に装着されると、上述したように、まず、TOC領域22をサーチする。尚、サーチとは、目標とするトラックに光ピックアップ2及び対物レンズ44を移動させることである。そして、このように、TOC領域22をサーチすると、TOC領域22内に記録されたTOC情報やUTOC情報が読み出され、ディスク装置がスタンバイ状態となる。
【0081】
このとき、スタンバイ時間を短くするため、光ピックアップ2ができる限り早くTOC領域22に到達するように、粗サーチやラフサーチのみで光ピックアップ2がTOC領域22に到達できるようにする必要がある。以下に、この粗サーチ及びラフサーチのそれぞれについて、説明する。
【0082】
粗サーチとは、光ピックアップ2の所在するトラックの位置と目標とするトラックの位置とのアドレスデータを比較することによって、約何本のトラックを横切らなければならないかを算出し、その算出結果に基づいてスレッドモータ5(図1)を目標とするトラックの位置近傍に到達させるものである。
【0083】
又、ラフサーチとは、上記した粗サーチより更に粗い動作となるサーチ手段であり、TOC領域22への光ピックアップ2の移動には、このラフサーチが一般的に用いられる。このラフサーチは、粗サーチのように横切るトラックの本数を算出することなく、TOC領域22に光ピックアップ2が到達したときに、ディスク1に対向して設けられたリードインスイッチ32が切り替わってスレッドモータ5(図1)の回転停止させるといったものである。
【0084】
スタンバイ時間を短くするために、このような粗サーチやラフサーチを一度行うだけで光ピックアップ2をTOC領域22に到達させようとすると、そのサーチ手段が粗い動作であるために、TOC領域22の幅を2mm程度にする必要がある。しかしながら、高密度記録を目的とするディスク1において、上記のTOC領域22の幅は、非常に大きいものとなる。よって、このようなTOC領域22をTOC情報のためにのみ用いたとき、無駄なスペースが広くなることとなる。
【0085】
そのため、上述したように、このTOC領域22にもUTOC情報などのデータを書き込めるようにすることで、そのデータの記録容量値を増加することができる。尚、このようにTOC領域22に記録されたデータを読み出すとき、上述したように、この記録されたデータの記録密度が低いので、ウォブルによる高周波の光量変化信号を、ローパスフィルタで取り除くことによって、記録されたデータを読み出すことができる。
【0086】
このようにUTOC情報をTOC領域22に記録されたディスクは、UTOC情報を読みにいく必要があるので、リードインスイッチ32(図1)によってサーチを行うラフサーチでなく、通常のサーチを行う必要がある。このように、通常のサーチが行われるため、ラフサーチによってサーチされるTOC領域22にUTOC情報が記憶されていないディスクに比べて、TOC領域22の領域幅を狭めることができる。又、TOC領域22にUTOC情報が記憶されたディスクによると、TOC情報とUTOC情報が一度に読み込まれるので、スタンバイ時間の短縮を図ることができる。
【0087】
<第2光検出器で検出される光信号の信号処理>
第2光検出器50で検出される光信号の信号処理動作について、図面を参照して説明する。図6は、第2回析格子49を通過するレーザービームの第2光検出器50に対する入射位置の位置関係を示す図である。
【0088】
上述したように、メインビーム及びサブビームのディスク1(図5)からの反射光は、PBS45(図5)で分光されて、その一部の反射光の1次光が第2回析格子49で進路が変えられて第2光検出器50に入光する。第2回析格子49は、図6のように、3つのそれぞれ偏光方向の異なる回析格子A,B1,B2によって構成される。この回析格子A,B1,B2の偏光方向の異なりによって、PBS45で分光されたメインビームやサブビームの反射光を、第2光検出器50における所定の位置に集光させる。
【0089】
又、第2光検出器50は、フォトダイオードD1,D2よりなるフォトダイオード群Daと、フォトダイオードE1,E2,E3よりなるフォトダイオード群Dbと、フォトダイオードF1,F2,F3よりなるフォトダイオード群Dcと、から構成される。このような第2光検出器50において、回析格子Aを通過するメインビームの反射光がフォトダイオード群DaのダイオードD1,D2の境界部に集光され、このダイオードD1,D2の光量の差がフォーカスエラー信号となる。
【0090】
又、回析格子B1を通過するメインビームの反射光はフォトダイオード群DcのダイオードF1に、そして、2つのサブビームによる反射光はそれぞれフォトダイオード群DcのダイオードF2,F3に集光される。更に、回析格子B2を通過するメインビームの反射光はフォトダイオード群DbのダイオードE1に、そして、2つのサブビームによる反射光はそれぞれフォトダイオード群DbのダイオードE2,E3に集光される。
【0091】
このとき、メインビームの反射光が入射されるダイオードE1,F1の光量の差と、メインビームが入光するトラックの右隣のトラックにおけるサブビームの反射光が入射されるダイオードE2,F2の光量の差と、メインビームが入光するトラックの左隣のトラックにおけるサブビームの反射光が入射されるダイオードE3,F3の光量の差とを用いて、トラッキングエラー信号及び後述するシフト信号が生成される。
【0092】
<トラッキングエラー信号及びシフト信号の生成>
トラッキングエラー信号及びシフト信号の生成動作について、図面を参照して説明する。図7は、ディスク1のトラック上に形成されるメインスポット、及びサブスポットの関係と、トラッキングエラー信号とシフト信号とを生成するための回路を示す図である。
【0093】
トラックA(ランド)とトラックB(グルーブ)が交互に、そのトラックピッチがPとなるように連続的に並んだディスク1に、図7のように、トラックAの一つを目標とするトラックとしたとき、このトラックAに光ピックアップ2(図1)よりメインビームが照射され、メインスポット51が形成される。又、メインスポット51が形成されるトラックAの右側に隣接したトラックBに2つのサブビームのうちの一方が照射され、サブスポット52が形成される。更に、メインスポット51が形成されるトラックAの左側に隣接したトラックBに2つのサブビームのうちの他方が照射され、サブスポット53が形成される。
【0094】
このように形成されたメインスポット51及びサブスポット52,53からの反射光が、上述したように、PBS45(図5)で分光された後、第2回析格子49(図6)を通過して第2光検出器50に入射される。このとき、図7のように、メインスポット51が4等分された1/4円に相当する4つの部分における反射光が、それぞれフォトダイオードD1,D2,E1,F1に入射される。又、サブスポット52が2等分された半円に相当する2つの部分における反射光が、それぞれフォトダイオードE2,F2に入射される。更に、サブスポット53が2等分された半円に相当する2つの部分における反射光が、それぞれフォトダイオードE3,F3に入射される。
【0095】
尚、フォトダイオードD1,D2,E1,E2,E3,F1,F2,F3によって出力される電流信号の値を、それぞれ、d1,d2,e1,e2,e3,f1,f2,f3とする。又、図7において、フォトダイオードD1,D2,E1,E2,E3,F1,F2,F3を、便宜上、メインスポット51及びサブスポット52,53に対応するように描いており、実際の構成は、図6のような構成である。
【0096】
このようにその値がd1,d2,e1,e2,e3,f1,f2,f3となる電流信号がRF処理回路6に送出される。RF処理回路6において、フォトダイオードE1,F1の電流信号がそれぞれ、オペアンプ54の正相入力端子aと逆相入力端子bに、フォトダイオードE2,F2の電流信号がそれぞれ、オペアンプ55の正相入力端子aと逆相入力端子bに、フォトダイオードE3,F3の電流信号がそれぞれ、オペアンプ56の正相入力端子aと逆相入力端子bに、送出される。そして、オペアンプ54,55,56において、それぞれに入力された2つの電流信号の差信号TE1,TE2,TE3に相当する電圧信号がそれぞれの出力端子より出力される。
【0097】
このオペアンプ54,55,56で求められる差信号TE1,TE2,TE3は、以下の通りである。
TE1=e1−f1
TE2=e2−f2
TE3=e3−f3
【0098】
そして、オペアンプ56で求められる差信号TE3が、乗算器57でG2が乗算され、G2・TE3に相当する電圧信号が加算器58に送出される。この加算器58では、オペアンプ56で求められた差信号TE2を加算することによって、TE2+G2・TE3に相当する電圧信号を生成して、乗算器59に送出する。そして、乗算器59において、G1が乗算され、G1・(TE2+G2・TE3)に相当する電圧信号が生成されて、オペアンプ60の逆相入力端子bと、オペアンプ61の正相入力端子bに送出される。
【0099】
又、オペアンプ60,61の正相入力端子aには、ともに差信号TE1に相当する電圧信号が送出される。そして、このオペアンプ60及びオペアンプ61は、それぞれ、出力端子よりトラッキングエラー信号TE及びシフト信号SFSが出力される。このトラッキングエラー信号TE及びシフト信号SFSは、下記の式によって求まる。
TE=TE1−G1・(TE2+G2・TE3)
SFS=TE1+G1・(TE2+G2・TE3)
【0100】
このようにして求められるトラッキングエラー信号TEは、乗算器57,59における乗数G2,G1を、適切な値に選択することによって、オフセットの無いトラッキングエラー信号となる。本実施形態では、このような差動プッシュプル法(DPP方式:Differential Push-Pull method)を用いて、トラッキングエラー信号TEが求められる。
【0101】
このDPP方式について、以下に、簡単に説明する。周知のように、ディスク上にトラックがスパイラル状に形成されるとき、ディスクの記録又は再生を行う際にトラッキング制御を行う場合、対物レンズが、トラックの中央位置からずれていく。このような対物レンズのずれ量をシフト量といい、このシフト量に対応する電気的信号をオフセットという。以下、メインスポット51及びサブスポット52,53の各スポットで生じるオフセットをB1,B2,B3、各差信号TE1,TE2,TE3の振幅をA1,A2,A3、対物レンズのシフト量をXとする。
【0102】
このようにして、各値を定めたとき、トラック間のピッチがPであるので、差信号TE1,TE2,TE3は、それぞれ、以下の式で表される。
TE1=A1・SIN(πX/P)+B1
TE2=A2・SIN(π(X−P)/P)+B2
TE3=A3・SIN(π(X+P)/P)+B3
【0103】
このとき、各スポットにおけるオフセットが各差信号の振幅の割合と同じ割合で生じるため、
B1/A1=B2/A2=B3/A3
となる。よって、乗算器59,57の乗数G1,G2を以下の式のように決定する。
G1=A1/(2・A2)
G2=A2/A3
【0104】
上記の式のような値に乗数G1,G2を決定することによって、トラッキングエラー信号TEは、以下の式のようになり、オフセットB1,B2,B3の消滅したトラッキングエラー信号となる。
TE=TE1−G1・(TE2+G2・TE3)
=2・A1・SIN(πX/P)
【0105】
このDPP方式は、プッシュプル法の変形である。又、メインビームと2つのサブビームを用いて、トラッキングエラー信号の検出を行っているが、ランドとグルーブのトラック幅が同じであるので、この3つのビームを用いてトラッキングエラー信号の検出を行う3ビーム方式は採用できない。というのも、3ビーム方式においては、2つのサブビームの明暗の差を検出することでトラッキングエラー信号を検出するものであるが、本方式では、2つのサブビームから得られる信号の値が同じ値となるため、2つのサブビームの明暗の差が検出できないからである。
【0106】
又、プッシュプル方式を用いたとき、対物レンズのシフト量Xに対するトラッキングエラー信号となる差信号のオフセットの割合(シフト量を横軸に、オフセットを縦軸にしてグラフを描いたときの傾きに相当する)が、3ビーム方式と比較したとき、極端に大きくなる。そのため、記録時又は再生時のトラッキング制御を行う際にこのオフセットが問題となり、このオフセットを低減させることが課題となっていた。しかしながら、本実施形態のように、メインビームと2つのサブビームを用いたDPP方式を採用することによって、上述したような処理を行って、このオフセットを除去し、トラッキングエラー信号がオフセットを含まない信号として生成される。よって、トラッキング制御を行うとき、トラックの中央位置を対物レンズが追従するように制御される。
【0107】
又、オペアンプ61の出力端子より送出されるシフト信号SFSは、以下の式のようにオフセットB1で表されるため、このシフト信号SFSにより、メインビームがどれだけ光源光軸からシフトしたかを検出することができる。
SFS=TE1+G1・(TE2+G2・TE3)
=2B1
【0108】
<クロックマークの再生>
クロックマークの再生動作について、以下に説明する。クロックマークは、上述した第2光検出器50(図7)のフォトダイオードD1,D2,E1,F1(図7)より得られる電流信号d1,d2,e1,e2を用いて、RF処理回路6(図1)で(d1+d2)−(e1+f1)を行うことによって検出される。クロックマークのトラック方向の幅は、メインビームによって形成されるメインスポットのスポット径よりも小さい。よって、メインビームがクロックマークを照射する際、(d1+d2)−(e1+f1)がゼロクロスするとき、クロックマークの中点をメインビームが通過したことになる。
【0109】
このようにしてクロックマークの中点を検出してから、次のクロックマークの中点を検出するまでの時間を所定の値(例えば、400)で分割された周期のクロックが信号処理回路9(図1)で生成される。このクロックと前述したマスタークロックを用いて、上述したように、デジタルサーボ処理回路10(図1)においてデジタルPLL処理が施される。このようにPLL処理が施された信号がPWM信号生成回路13(図1)でPWM処理された後、このPWM処理された信号がスピンドルモータドライバ15(図1)に与えられることによって、スピンドルモータ4(図1)が回転制御される。尚、信号処理回路9(図1)でクロックを生成するための分割値は、データの記録密度は低下させているTOC領域22(図2)においてもメイン情報領域23(図2)においても同じ値である。
【0110】
<ウォブルの再生>
ウォブルの再生動作について、以下に説明する。ウォブルは、上述した第2光検出器50(図7)のフォトダイオードE1,F1(図7)より得られる電流信号e1,f1を用いて、RF処理回路6(図1)でe1−f1を行うことによって検出される。よって、トラッキングエラー信号検出に使用される差信号TE1によって、ウォブルが検出される。
【0111】
即ち、光ピックアップ2(図1)より与えられるメインビームがディスク1(図1)のトラックの中央位置に追従しているならば、そのメインビームが照射されるメインスポットのうち、フォトダイオードE1,F1によって検出される部分のいずれか一方にウォブルが存在する。よって、フォトダイオードE1,F1の電流信号e1,f1がこのウォブルに影響された異なった値となる。よって、差信号TE1を求めることによって、ウォブルの検出が行われる。又、ウォブルによって記録されたデータ以外のデータについては、差信号TE1を求めたとき相殺されるので、ウォブルによって記録されたデータであるウォブル信号のみが得られる。
【0112】
<トラッキングサーボのメインループ>
以下に、トラッキングサーボのメインループについて、図面を参照して説明する。図8は、デジタルサーボ処理回路10の内部構成を示すブロック図である。上述したように、トラッキングエラー信号は、RF処理回路6(図1)でDPP方式を用いて求められるため、オフセットの無いトラッキングエラー信号が得られる。このトラッキングエラー信号は、ADコンバータ7(図1)によってデジタル化された後、デジタルサーボ処理回路10に送出される。
【0113】
ADコンバータ7(図1)によってデジタル化されたトラッキングエラー信号がデジタルサーボ処理回路10に送出されると、まず、極性反転回路81に送られる。この極性反転回路81では、例えば、トラックA(ランド)の信号を再生しているときにトラックB(グルーブ)の信号を再生しようとしたとき、対物レンズ44(図5)を移動する際に、与えられたトラッキングエラー信号の位相を反転させてその再生信号が読みとれるようにする。即ち、極性反転回路81において、与えられたトラッキングエラー信号を読み出したトラックがその設定のトラックと異なるとき、トラッキングエラー信号の位相を反転させる。
【0114】
そして、この極性反転回路81の出力信号は、位相補償回路82及びサンプリング回路87に送出される。位相補償回路82は、トラッキングサーボ系の安定化のために設けられた回路で、フィルタで構成される。このような位相補償回路82は、例えば、略40Hzまではゲインが60dbにフラットに保たれ、略40Hzから1kHz近傍までゲインが12db/octの割合で降下し、1kHz近傍以降そのゲインが6db/octの割合で降下するような開ループ特性を満足する。
【0115】
この位相補償回路82の出力信号が、トラッキングエラー信号が大きくなるとメインビームをトラックの中央位置に照射させるために、対物レンズ44(図5)をトラックの中央位置に対向するように引き戻そうとする力が加えられるネガティブフィードバックのトラッキング駆動信号となる。そして、このトラッキング駆動信号が、ゲイン切換回路83に入力されて、記録時及び再生時に対応するゲインによって増幅される。さらには、メインビーム照射するトラックに対応したゲインの切り換えも行われる。
【0116】
ゲイン切換回路83は、スイッチSW1の接点cに接続される。このスイッチSW1の接点dには、例えばグランド電圧といった基準電圧が印加される。このスイッチSW1によって、ディスク装置の電源が入っている状態で、ディスク1(図1)の記録や再生が実施されていないとき、スイッチSW1が接点d側に接続されて基準電圧を与えることにより、対物レンズ44(図5)を中立位置に保持する。又、後述するロングサーチを行う場合においても、スイッチSW1が接点d側に接続される。
【0117】
スイッチSW1の接点eに、スイッチSW2の接点c及びスイッチSW3の一端が接続される。そして、スイッチSW2の接点eに電源補償回路85が接続され、スイッチSW3の他端にホールド回路84が接続される。又、ホールド回路84の出力側にスイッチSW2の接点dが接続される。電源補償回路85では、トラッキング駆動信号が与えられると、ディスク装置の電源部(不図示)の電圧の低下に対して、トラッキング駆動信号のゲインが補償される。このように補償されたトラッキング駆動信号が、8ビットデジタル信号生成回路86に送出されて、8ビットのデジタル信号に変換された後、PWM信号生成回路13に送出されて、PWM処理が施された信号がPWMドライバ14(図1)に与えられ、対物レンズ44(図5)を駆動する。。又、ホールド回路84は、瞬時瞬時のトラッキング駆動信号をホールドする。
【0118】
このように、ゲイン切換回路83、ホールド回路84及び電源補償回路85を、スイッチSW1,SW2,SW3で接続したとき、ディスク1(図1)の記録又は再生を行う場合は、スイッチSW1,SW2が接点c側に接続されるとともに、スイッチSW3の接点が接続される。よって、ゲイン切換回路83よりトラッキング駆動信号が電源補償回路85に与えられてトラッキングサーボのメインループが閉じた状態となるとともに、このトラッキング駆動信号がホールド回路84に与えられ、その瞬時瞬時のトラッキング駆動信号がホールドされる。しかし、このホールド回路84でホールドされる信号は、スイッチSW2が接点c側に接続されているため、電源補償回路85に与えられることはない。
【0119】
又、後述するキック動作を行うとき、このキック動作開始時に、スイッチSW2は接点d側に接続され、又スイッチSW3がOFFになる。これによって、キック動作を開始する直前のトラッキング駆動信号がホールド回路84からスイッチSW2を介して電源補償回路85に供給される。このとき、トラッキングサーボのメインループが開いた状態となり、ホールド回路84でホールドされたトラッキング駆動信号が電源補償回路85に与えられて補正された後、8ビットデジタル信号生成回路86で8ビットのデジタル信号とされる。
【0120】
そして、この8ビットのトラッキング駆動信号がPWM信号生成回路13に送出されてPWM処理された後、PWMドライバ14(図1)に与えられて、対物レンズ44(図5)のアクチュエータが駆動される。又、キック動作が終了すると、スイッチSW2が接点c側に接続されるとともに、スイッチSW3がONとなり、トラッキングサーボのメインループが再び閉じた状態になる。
【0121】
一方、極性反転回路81からサンプリング回路87に送出されたトラッキングエラー信号がサンプリングされ、このサンプリング結果が最大振幅検出手段88、駆動パルス指令回路90に与えられる。最大振幅検出手段88では、与えられたサンプリング結果よりトラッキングエラー信号の振幅の最大値が検出され、又、駆動パルス指令回路90では、対物レンズ44(図5)の移動速度を加速又は減速するための加速パルス又は減速パルスを発生し、電源補償回路85に送出する。更に、第1カウンタ91では、駆動パルス指令回路90で生成された後述するカウント信号の切り替わりの回数を検知することによって、キック動作する際何本のトラックを横切ったかが検出される。
【0122】
又、最大振幅検出手段88で検出した振幅より駆動パルスの周期を決めるためのトラッキングエラー信号のレベルの閾値が閾値生成回路89で生成され、この生成された閾値が駆動パルス指令回路90に与えられる。この駆動パルス指令回路90から信号が第2カウンタ92に与えられ、駆動パルス指令回路90で発生した駆動パルスの周期分カウントを行って、その周期が測定される。又、キック検出回路93では、駆動パルス指令回路90が対物レンズ44(図5)の移動速度を加速するための駆動パルスを与えたときからトラッキングエラー信号がゼロクロスするまでのキック動作を検出するとともに、奇数本のキック動作を行うときには、極性反転回路81の極性を反転させる。
【0123】
<キック動作>
まず、原トラックから目的トラックに対物レンズ44(図5)を移動させるキック動作について、図8〜図11を参照して説明する。図9は、1本キック動作における各信号のタイミングチャートである。上述したように、トラッキングエラー信号がサンプリング回路87でサンプリングされる。
【0124】
そして、最大振幅検出手段88では、サンプリング回路87からのサンプリングデータより、常時トラッキングエラー信号の最大振幅の検出が行われ、記録時又は再生時において、最大振幅値が異常に大きいか又は異常に小さいかが検出される。このとき、異常値が検出されるとトラッキングサーボに異常が起きていることを制御用マイコン8(図1)に認識させる。例えば、最大振幅検出手段88が検出する最大振幅値が、0.5V±0.1Vの範囲を外れると異常値と判断するようにする。
【0125】
このようにして異常が起きていることが制御用マイコン8(図1)で認識されると、制御用マイコン8(図1)では、RF処理回路6(図1)やADコンバータ7(図1)やデジタルサーボ処理回路10などを構成する各回路のゲインが設定通り(記録時用又は再生時用、及びトラックA(ランド)用又はトラックB(グルーブ)用)か調べ、設定通りで無ければ設定の変更を行う。又、このとき、設定通りであれば、その設定値を変更し、その設定値が異常な値を示すときは記録もしくは再生を停止する。
【0126】
サーチ時においても最大振幅検出手段88は、トラッキングエラー信号の最大振幅値を検出する。図9(a)、図10(a)、図11(a)に示すMAXが、1本キック動作を行ったときに検出される最大振幅値である。
【0127】
(1)1本キック動作
まず、原トラックと目的トラックが隣接したときのキック動作である1本キック動作について説明する。このときのサンプリング波形を図9(a)に示す。又、図9(b)に、対物レンズ44(図5)を移動させるためにアクチュエータ(不図示)内に設けられた駆動コイルに与える駆動信号を示す。又、図9(c)に、キック動作時に何本のトラックを横切ったかを検出するために第1カウンタ91に与えられるカウント信号を示す。又、図9(d)に、キック検出回路93が発生するキック動作が行われていることを示すキック検出信号を示す。
【0128】
まず、制御用マイコン8(図1)が1本キックの指令を出すと、時刻Aの時点で対物レンズ44(図5)の移動速度を加速するように駆動パルス指令回路90より加速パルスが電源補償回路85に与えられる。このとき、同時に、スイッチSW2が接点d側に接続されるとともにスイッチSW3がOFFとなる。よって、電源補償回路85で、加速パルスがホールド回路84から出力されるトラッキング駆動信号に重畳され、この加速パルスが重畳された信号が8ビットデジタル信号生成回路86で8ビットのデジタル信号とされた後、PWM信号生成回路13でPWM処理される。
【0129】
そして、このようにPWM処理された信号が、PWMドライバ14(図1)に与えられて、図9(b)のような加速パルスを含んだ駆動信号によって、対物レンズ44(図5)を駆動する。このとき、対物レンズ44(図5)は、加速度運動を行う。尚、このとき、摩擦及び粘性などを無視した場合、等加速度運動となる。従って、図9(a)の時刻A〜時刻Bの間におけるサンプリングデータの波形は、放物線に近い波形となる。又、このとき与えられる加速パルスは、例えば、電圧振幅値が略250mVの方形波として与えられる。
【0130】
又、このとき同時に、キック検出回路93は駆動パルス指令回路90における加速パルスの発生を検出することによってキック動作が開始されたことを示すキック検出信号を、図9(d)のように、ローレベル(以下、「L」とする)からハイレベル(以下、「H」とする)に切り換える。又、このキック検出信号は、制御用マイコン8(図1)に送出する。更に、1本キック動作を行うため、その横切るトラックの本数が奇数本である。そのため、このキック検出信号は、極性反転回路81にも与えられ、極性の反転が行われる。
【0131】
このように予め、極性反転回路81に信号を与え、その極性を反転する理由について説明する。本実施形態で用いるディスクは、トラックA(ランド)及びトラックB(グルーブ)が交互に形成される。そのため、例えば、メインビームによるメインスポットがトラックAの右側に位置するときとトラックBの右側に位置するときにおいて、そのトラックの中央位置にメインビームを引き込む力の方向が正反対となる。又、これは、それぞれのトラックの左側にメインスポットが位置するときも同様である。即ち、トラックAとトラックBのトラッキング駆動信号の位相を互いに逆転させる必要がある。尚、ランドのみが又はグルーブのみがトラックとして形成されるディスクについては、このような位相の逆転を行う必要がない。
【0132】
よって、奇数本横切ってキック動作を行うとき、原トラックがトラックB(グルーブ)であれば目的トラックはトラックA(ランド)である。即ち、キック動作時に横切るトラックの本数が奇数であれば、そのトラックの状態が変わるので位相の反転を行う。又、逆に、横切るトラックの本数が偶数であれば、そのトラックの状態が同じであるので位相の反転を行わない。従って、横切る本数が奇数であるとき、目的トラックにメインビームが達したときには、位相を反転するとともに各回路のゲインを切り換える必要がある。しかしながら、メインビームが到達してから切り換えた場合、その分サーボの引き込みに時間がかかる。よって、上記のように、キック検出信号を極性反転回路81に与えて予め切り換えを行うことにより、このような引き込みにかかる時間を短縮することができる。
【0133】
又、制御用マイコン8(図1)にキック検出信号を与えるのは、現在キック動作中であることを制御用マイコン8(図1)に認識させるために行われ、この期間中に制御用マイコン8(図1)が新たにキック動作指令を出せないようにするためである。更に、制御用マイコン8(図1)が上記のような加速パルスや後述する減速パルスの発生を検出してキック動作期間中であるか否かを検知するよりも、デジタルサーボ処理回路10よりこのキック検出信号を与えることによって認識させる方が、ハード的に負担が少ない。
【0134】
又、閾値生成回路89では、前回のキック動作時に最大振幅検出手段88で検出された最大振幅値に対する所定値(例えば、最大振幅値の1/2の値)であるキック用閾値aが生成され、駆動パルス指令回路90に送出される。このように前回のキック動作における最大振幅値をキック用閾値aの生成に用いる理由を述べる。最大振幅値を最大振幅検出手段88で検出する際、その検出するタイミングは、最大振幅値からサンプリングデータが所定量減少したときである。従って、最大値を検出する前に最大値に対する所定値であるキック用閾値aに達したとき、後述するように加速パルスの停止を行うが、この時点においては最大振幅値が検出されない。よって、前回のキック動作時に検出された最大振幅値を用いて、キック用閾値aが決定される。
【0135】
このように、前回のキック動作時に検出された最大振幅値によって、閾値生成回路89でキック用閾値aが生成されるものとしたが、初めてキック動作を行ったときは、前回のキック動作時のデータが無いため、自動調整時に得られたデータより最大振幅値を得て、この最大振幅値を使用する。尚、この自動調整とは、ディスク1(図1)が、ディスク装置に装着された直後に、フォーカス制御やトラッキング制御を行うための各回路のゲインを決定させるために、ディスク装置の各部を試走させることである。
【0136】
そして、上記のようなキック用閾値aが与えられた駆動パルス指令回路90では、サンプリングデータを常時測定しており、このサンプリングデータがキック用閾値aに達したとき(時刻B)、図9(b)のように、加速パルスの発生を停止する。尚、第2カウンタ92は、駆動パルス指令回路90が加速パルスを発生した時刻Aにサンプリング回数のカウントを開始し、そして、加速パルスの発生を停止する時刻Bにこのカウント動作を停止する。このときカウントした回数にサンプリング周期を乗算したものが、加速パルス印加時間T1に等しく、この時間T1が次の減速パルス印加時間として制御用マイコン8(図1)に記憶される。又、この時刻Bでは、図9(c)のように、駆動パルス指令回路90より第1カウンタ91に与えられるカウント信号がHからLに切り替わる。
【0137】
このように加速パルスの印加が停止された後、PWMドライバ14(図1)に与えられる信号は、ホールド回路84から送出されるトラッキング駆動信号からのみ生成された信号となる。このトラッキング駆動信号は、キック動作開始直前の対物レンズ44(図5)の位置を保持する力を発生するための信号であるため、この信号によって発生する力以外に対物レンズ44(図5)が受ける外力が無くなる。従って、対物レンズ44(図5)は、加速パルスを受けたときにその速度が加速された方向に、キック動作開始直前の対物レンズ44(図5)の位置を保持しながら、外力を受けることなく移動する。よって、摩擦及び粘性などを無視したとき、対物レンズ44(図5)は、等速度運動を開始することになる。
【0138】
このように、時刻B以降に対物レンズ44(図5)が移動している間も常時、最大振幅検出手段88でサンプリングデータが測定されて、その最大振幅値MAX(図9(a))が検出され、この値が制御用マイコン8(図1)記憶される。この検出された最大振幅値MAXは、次のキック動作を行うときに、閾値生成回路89でキック用閾値aを生成するために記憶される。尚、理論的には、この最大振幅値は、トラックA(ランド)とトラックB(グルーブ)の境界位置で検出される。又、このとき、駆動パルス指令回路90においてもサンプリングデータが測定され、その値が再びキック用閾値aになる時刻Cにおいて、対物レンズ44(図5)の移動速度を減速させるために、減速パルスを発生する。
【0139】
この減速パルスは、駆動パルス指令回路90より電源補償回路85に与えられて、ホールド回路84より与えられるトラッキング駆動信号に重畳される。このように減速パルスが重畳されたトラッキング駆動信号が、8ビットデジタル信号生成回路86で8ビットのデジタル信号にされた後、PWM信号生成回路でPWM処理されて、PWMドライバ14(図1)に送出される。そして、PWMドライバ14(図1)によって図9(b)のような駆動信号が与えられて、対物レンズ44(図5)の移動速度が減速するように制御されると、対物レンズ44(図5)は、加速パルスが与えられたときと逆の方向に外力を受け、減速する。
【0140】
このように減速パルスが駆動パルス指令回路90より発生した後、制御用マイコン8(図1)記憶された加速パルス印加時間T1が経過すると、この減速パルスの印加が停止される。このとき、減速パルス印加時間をT2とすると、T2=T1となる。しかしながら、この時間T1が経過する前に、サンプリングデータがゼロクロスしたとき、その瞬間に減速パルスの印加が停止される。よって、このとき、T2<T1となる。このように、減速パルスが発生してから時間T1が経過した時刻、又は、減速パルスが発生してからサンプリングデータがゼロクロスした時刻のいずれか早いほうの時刻が、減速パルスの印加を停止する時刻Dとなる。
【0141】
このように減速パルスの印加が停止されるとともに、スイッチSW2が接点c側に接続されるとともに、スイッチSW3がONとなることによって、トラッキングサーボのメインループが閉じた状態になる。このとき、ゲイン切換回路83において、そのゲインを引き上げて引き込みが行われる。この引き込みが終了すると、ゲイン切換回路83で与えられるゲインが通常の予め設定された記録時もしくは再生時用のゲインに戻されて、トラッキングが行われる。尚、このとき、上述したように、トラッキング駆動信号が極性反転回路81によってその位相が反転されるようにキック検出信号が与えられているため、正常なトラッキングサーボ制御が行われる。又、ゲイン切換回路83のゲインも目的トラックに対応した所定のゲインに切り換えられている。
【0142】
このとき、サーボの引き込みが開始されたことによって、キック検出信号がHからLに切り替わり、制御用マイコン8(図1)がキック動作の終了を認識する。このように認識することによって、制御用マイコン8(図1)は、終了時点でトラッキングを行っているトラックが目的トラックでない場合、再びキック動作を行うように、駆動パルス指令回路90に指令を与えることが可能となる。
【0143】
又、このキック検出信号の終了に伴い、駆動パルス指令回路90から第1カウンタ91に与えられるカウント信号がLからHに切り替わり、基の状態に戻され、このカウント信号が何回切り替わったかを第1カウンタ91がカウントし、制御用マイコン8(図1)にそのカウント結果を与える。このようにカウント結果が与えられた制御用マイコン8(図1)では、所定通りのキック動作が行われたかどうかを判定する。図9の場合、1回しかカウント信号が切り替わっていないので、1本キック動作が正常に行われたものと判断される。
【0144】
(2)2〜4本キック動作
2〜4本キック動作について、2本キック動作を例に挙げて説明する。尚、この2〜4本キック動作は、基本的に、1本キック動作と動作の進行において、概略的に同じである。図10には、2本キック動作時のタイミングチャートを示す。図10(a)に、このときのサンプリング波形を示す。又、図10(b)に、対物レンズ44(図5)を移動させるためにアクチュエータ(不図示)内に設けられた駆動コイルに与える駆動信号を示す。又、図10(c)に、キック動作時に何本のトラックを横切ったかを検出するために第1カウンタ91に与えられるカウント信号を示す。又、図10(d)に、キック検出回路93が発生するキック動作が行われていることを示すキック検出信号を示す。
【0145】
まず、1本キック動作と同様に、制御用マイコン8(図1)より2本キックの指令が与えられ、駆動パルス指令回路90より加速パルスが電源補償回路85に与えられる(時刻A)。このとき、同時に、スイッチSW2が接点d側に接続されるとともにスイッチSW3がOFFとなる。よって、電源補償回路85で、加速パルスがホールド回路84から出力されるトラッキング駆動信号に重畳され、この加速パルスが重畳された信号が8ビットデジタル信号生成回路86で8ビットのデジタル信号とされた後、PWM信号生成回路13でPWM処理される。
【0146】
そして、このようにPWM処理された信号が、PWMドライバ14(図1)に与えられて、図10(b)のような加速パルスを含んだ駆動信号によって、対物レンズ44(図5)を駆動する。このとき、対物レンズ44(図5)は、加速度運動を行う。
【0147】
又、このとき同時に、キック検出回路93は駆動パルス指令回路90における加速パルスの発生を検出することによってキック動作が開始されたことを示すキック検出信号を、図10(d)のように、LからHに切り換える。このキック検出信号は、制御用マイコン8(図1)に送出する。更に、2本キック動作を行うため、その横切るトラックの本数が偶数本である。そのため、このキック検出信号は、極性反転回路81に与えられず、その極性の反転は行われない。
【0148】
このように加速パルスが発生した後、駆動パルス指令回路90において、サンプリングデータを測定し、閾値生成回路89より与えられたキック用閾値aに達したとき(時刻B)、図10(b)のように、加速パルスの発生を停止する。又、時刻Aから時刻Bの間において、第2カウンタ92がサンプリング回数をカウントし、そのカウント数より加速パルス印加時間T1を求め、制御用マイコン8(図1)に記憶する。更に、この時刻Bでは、図10(c)のように、駆動パルス指令回路90より第1カウンタ91に与えられるカウント信号がHからLに切り替わる。
【0149】
このように加速パルスの印加が停止すると、対物レンズ44(図5)は、加速パルスを受けたときにその速度が加速された方向に、キック動作開始直前の対物レンズ44(図5)の位置を保持しながら、外力を受けることなく等速度運動する。このように、時刻B以降に対物レンズ44(図5)が移動している間も常時、最大振幅検出手段88でサンプリングデータが測定されて、その最大振幅値MAX1(図10(a))が検出され、この値が制御用マイコン8(図1)に記憶される。
【0150】
このように、最大振幅値MAX1が検出されると、サンプリングデータは、図10(a)のように、ゼロクロスする。今、図10(a)のように、正の値で最大振幅値MAX1が検出されたとき、サンプリングデータはゼロクロスした後、負の値となる。逆に、負の値で最大振幅値MAX2が検出されたとき、サンプリングデータはゼロクロスした後、正の値となる。
【0151】
このように、図10(a)において、サンプリングデータが負の値となると、駆動パルス指令回路90において、サンプリングデータを測定し、閾値生成回路89より与えられたキック用閾値bとなるサンプリングデータが検出される。尚、このキック用閾値bは、キック用閾値aと同様に、前回のキック動作が行われたときに最大振幅検出手段88で測定されるとともに制御用マイコン8(図1)に記憶された負の側の最大振幅値に対する所定値(例えば、最大振幅値の1/2の値)で、閾値生成回路89において生成される。
【0152】
そして、図10(a)のように、負の側の最大振幅値MAX2が最大振幅検出手段88において検出された後、再び、キック用閾値bと同じ値のサンプリングデータが駆動パルス指令回路90で検出される。このように、2度目にそのキック用閾値bと同じ値となるサンプリングデータが検出される時刻Cにおいて、駆動パルス指令回路90より減速パルスが発生する。
【0153】
この減速パルスは、駆動パルス指令回路90より電源補償回路85に与えられて、ホールド回路84より与えられるトラッキング駆動信号に重畳される。このように減速パルスが重畳されたトラッキング駆動信号が、8ビットデジタル信号生成回路86で8ビットのデジタル信号にされた後、PWM信号生成回路でPWM処理されて、PWMドライバ14(図1)に送出される。そして、PWMドライバ14(図1)によって図10(b)のような駆動信号が与えられて、対物レンズ44(図5)の移動速度が減速するように制御されると、対物レンズ44(図5)は、加速パルスが与えられたときと逆の方向に外力を受け、減速する。又、このとき、駆動パルス指令回路90において、図10(c)のようにカウント信号をLからHに切り換える。
【0154】
このように減速パルスが駆動パルス指令回路90より発生した後、減速パルスが発生してから時間T1が経過した時刻、又は、減速パルスが発生してからサンプリングデータがゼロクロスした時刻のいずれか早いほうの時刻Dにおいて、駆動パルス指令回路90からの減速パルスの印加が停止される。このように減速パルスの印加が停止されるとともに、スイッチSW2が接点c側に接続されるとともに、スイッチSW3がONとなることによって、トラッキングサーボのメインループが閉じた状態になる。このとき、ゲイン切換回路83において、そのゲインを引き上げて所定時間引き込みが行われる。
【0155】
このとき、サーボの引き込みが開始されたことによって、キック検出信号がHからLに切り替わり、制御用マイコン8(図1)がキック動作の終了を認識する。又、このキック検出信号の終了に伴い、駆動パルス指令回路90より第1カウンタ91に与えられるカウント信号が基の状態に戻され、このカウント信号が何回切り替わったかを第1カウンタ91がカウントし、制御用マイコン8(図1)にそのカウント結果を与える。このようにカウント結果が与えられた制御用マイコン8(図1)では、所定通りのキック動作が行われたかどうかを判定する。図10の場合、2回、カウント信号が切り替わったので、2本キック動作が正常に行われたものと判断される。
【0156】
そして、引き込みが終了すると、ゲイン切換回路83で与えられるゲインが通常の予め設定された記録時もしくは再生時用のゲインに戻されて、トラッキングが行われる。尚、図10を用いて、サンプリングデータがはじめに正の側に移行したときの例について述べたが、サンプリングデータがはじめに負の側に移行したときは、キック用閾値bが検出されたときに加速パルスの印加が停止するとともに、キック用閾値aが検出されたときに減速パルスの印加が始まる。
【0157】
又、3本キック動作は、1本キック動作と同様に、まず、キック動作開始と同時に、トラッキングサーボのメインループを開くとともにキック検出信号を極性反転回路81に与えて、極性の反転を行う。そして、キック動作開始時からサンプリングデータがキック用閾値a(キック用閾値b)になるまで、加速パルスを与える。
【0158】
次に、サンプリングデータが2回ゼロクロスして正の側(負の側)の最大値を検出した後、再びキック用閾値a(キック用閾値b)を検出した時刻から、この時刻から加速パルス印加時間が経過した時刻、又は、減速パルスが発生してからサンプリングデータがゼロクロスした時刻のいずれか早いほうの時刻まで、減速パルスが与えられる。そして、トラッキングサーボのメインループを閉じるとともに、ゲイン切換回路83で与えるゲインを大きくして引き込みが行われる。
【0159】
更に、カウント信号は、キック用閾値a(キック用閾値b)が検出される加速パルスの印加が停止したときに、HからLに切り替わり、サンプリングデータがゼロクロスした後、2回目にキック用閾値b(キック用閾値a)が検出されたときにLからHに切り替わる。そして、再びサンプリングデータがゼロクロスした後、1回目にキック用閾値a(キック用閾値b)が検出されたとき、カウント信号がHからLに変更する。そして、減速パルスの印加が停止して引き込みがはじまるとともに、もとのHの状態にカウント信号が戻される。このとき、第1カウンタ91によってカウント信号の値が3回変更したことが確認される。尚、4本キック動作については、前述した2本キック動作及び3本キック動作と同様の動作を行うので、その説明については省略する。
【0160】
このように、1〜4本キック動作を行う際において、対物レンズ44(図5)を移動させるためにその移動速度を加速し、目的トラックで停止させるためにその移動速度を減速する間に、等速で移動する期間が設けられる。よって、対物レンズ44(図5)を駆動する駆動信号に加速パルスを与えた直後に減速パルスを与えたときに、対物レンズ44(図5)に加えられる急激な衝撃を和らげることができる。
【0161】
又、対物レンズ44(図5)には、キック動作開始前の対物レンズ44(図5)を保持しようとする力以外の外力が加えられることがないので、ほぼ等速度運動に等しい動作となる。そのため、トラッキングエラー信号のサンプリングデータが正弦波状のデータとして得られる。これによって、キック用閾値a,bの値をより正確に把握することができるので、加速パルスの印加停止及び減速パルスの印加開始の時刻を設定通りに正確に実行することができる。
【0162】
更に、本実施形態では、トラッキングエラー信号の最大振幅に対する所定値をキック用閾値とし、このキック用閾値によって、加速パルスの停止を行っている。よって、受光素子の検出特性のバラツキが原因で、そのトラッキングエラー信号の振幅がばらついても、加速パルス印加時間は、ほぼ一定となる。又、減速パルスの印加開始も同様に、トラッキングエラー信号の最大振幅に対する所定値であるキック用閾値によって行われる。そのため、対物レンズ44(図5)が等速で移動する等速度運動期間もほぼ一定となる。
【0163】
このように、加速パルス印加時間、等速度運動期間、及び減速パルス印加時間がほぼ一定となるので、1〜4本キック動作それぞれについて、1回のキック動作に対する対物レンズ44(図5)の移動量は、受光素子の検出特性に影響されることなく、ほぼ一定となる。
【0164】
又、加速パルスがトラッキングエラー信号の最大振幅に対する所定値となるキック用閾値でその印加が停止されるため、1〜4本キック動作のそれぞれにおいて、1キック動作あたりの移動量に対する加速パルスの印加される期間の移動量の割合が、アクチュエータのレスポンス特性がバラツキに影響されず、ほぼ一定となる。よって、受光素子の検出特性やアクチュエータのレスポンス特性のバラツキを吸収することができる。
【0165】
このように、受光素子の検出特性やアクチュエータのレスポンス特性のバラツキを吸収することができるようになるので、加速パルス及び減速パルスの精度が上げられたことと等しくなる。従って、加速パルス及び減速パルスの振幅レベルを大きくすることで、キック動作における対物レンズ44(図5)に与える加速度を大きくして、キック動作に費やされる時間を短縮することができる。
【0166】
(3)5〜10本キック動作
5〜10本キック動作について、説明する。尚、この5〜10本キック動作は、基本的に、1〜4本キック動作と動作の進行において、加速パルスを与えた後、ある期間、対物レンズ44(図5)を等速度運動させてから、減速パルスを与える点については、同じである。しかしながら、対物レンズ44(図5)の移動量が大きくなるので、加速パルス及び減速パルスを与える期間を長くする必要がある。
【0167】
図11には、6本キック動作時のタイミングチャートを示す。図11(a)に、このときのサンプリング波形を示す。又、図11(b)に、対物レンズ44(図5)を移動させるためにアクチュエータ(不図示)内に設けられた駆動コイルに与える駆動信号を示す。又、図11(c)に、キック動作時に何本のトラックを横切ったかを検出するために第1カウンタ91に与えられるカウント信号を示す。又、図11(d)に、キック検出回路93が発生するキック動作が行われていることを示すキック検出信号を示す。以下、図11をもとにキック動作について説明するが、この6本キック動作をn本キック動作に対応して説明する。
【0168】
まず、1〜4本キック動作と同様に、制御用マイコン8(図1)よりn(6)本キックの指令が与えられ、駆動パルス指令回路90より加速パルスが電源補償回路85に与えられる(時刻A)。このとき、同時に、スイッチSW2が接点d側に接続されるとともにスイッチSW3がOFFとなる。よって、電源補償回路85で、加速パルスがホールド回路84から出力されるトラッキング駆動信号に重畳され、この加速パルスが重畳された信号が8ビットデジタル信号生成回路86で8ビットのデジタル信号とされた後、PWM信号生成回路13でPWM処理される。
【0169】
そして、このようにPWM処理された信号が、PWMドライバ14(図1)に与えられて、図11(b)のような加速パルスを含んだ駆動信号によって、対物レンズ44(図5)を駆動する。このとき、対物レンズ44(図5)は、加速度運動を行う。
【0170】
又、このとき同時に、キック検出回路93は駆動パルス指令回路90における加速パルスの発生を検出することによってキック動作が開始されたことを示すキック検出信号を、図11(d)のように、LからHに切り換える。このキック検出信号は、制御用マイコン8(図1)に送出する。更に、n本キック動作が奇数本のトラックを横切るときは、このキック検出信号が極性反転回路81に与えられて、その極性の反転が行われる。また図11のように、n本キック動作が偶数本(6本)のトラックを横切るときは、このキック検出信号が極性反転回路81に与えられず、その極性の反転は行われない。
【0171】
このように加速パルスが発生した後、駆動パルス指令回路90において、サンプリングデータを測定し、閾値生成回路89より与えられたキック用閾値aに達する。このとき、1〜4本キック動作のように、加速パルスの印加を停止しないが、図11(c)のように駆動パルス指令回路90においてカウント信号をHからLに切り換える。そして、図11(a)のように、1回目の正の側の最大振幅値が最大振幅検出手段88で検出されるが、この正の側の最大振幅値は、次のキック動作時のデータとして使用しない。
【0172】
その後、駆動パルス指令回路90において、再び、キック用閾値aとなるサンプリングデータを検出したとき(時刻B)、図11(b)のように、加速パルスの発生を停止する。このように加速パルスが印加された時間T1を、1〜4本キック動作と同様に、第2カウンタ92によってサンプリング回数をカウントすることによって算出され、時間2/3T1が制御用マイコン8(図1)記憶される。このように、加速パルス印加時間に2/3を乗算したのは、減速パルス時間を加速パルス時間より若干短くするためである。
【0173】
このように加速パルスの印加が停止されることによって、対物レンズ44(図5)は、加速度運動から等速度運動に移行する。このとき、加速パルス印加時間が1〜4本キック動作における加速パルス印加時間より長く与えられるため、対物レンズ44(図5)の移動速度は、1〜4本キック動作における移動速度よりも速い。そして、加速パルスの印加が停止した後、図11(a)のサンプリングデータがゼロクロスし、閾値生成回路89より与えられるキック用閾値bとなるサンプリングデータが駆動パルス指令回路90で検出される。このとき、図11(c)のように、駆動パルス指令回路90において、カウント信号がLからHに切り換えられる。
【0174】
その後、図11(a)のように、最大振幅検出手段88で負の側の最大振幅値が検出され、この最大振幅値が制御用マイコン8(図1)に記憶される。これは、対物レンズ44(図5)が等速度運動を行っているからである。更に、図11(a)のように、キック用閾値bとなるサンプリングデータが、駆動パルス指令回路90で再び検出されるが、このとき、カウント信号は切り替わらない。このように、カウント信号は、キック用閾値aが奇数回目に検出されたとき、HからLに切り替わり、キック用閾値bが奇数回目に検出されたとき、LからHに切り替わる。よって、これ以降、カウント信号の切り替わりについては、省略する。
【0175】
そして、図11(a)のように、2回目の正の側の最大振幅値が最大振幅検出手段88で検出された後、サンプリングデータがゼロクロスし、2回目の負の側の最大振幅値が最大振幅検出手段88で検出される。このとき、2回目の正の側の最大振幅値が制御用マイコン8(図1)記憶されるとともに、1回目に検出された負の側の最大振幅値の記憶から抹消した後、2回目の負の側の最大振幅値を制御用マイコン8(図1)に記憶する。このとき、記憶させる負の側の最大振幅値に2回目の負の側の最大振幅値に採用するのは、1回目に検出したものよりも安定したデータが得られるためである。
【0176】
即ち、サンプリングデータ得るためのサンプリング周波数との関係より、記憶させる最大振幅値の精度を上げるために、速度の低い箇所で測定されたものの方が良い。よって、加速度運動が停止した直後よりも、その後に摩擦などの原因により若干速度の落ちた箇所で得た最大振幅値の方がより安定したデータとして得られるため、そのデータを最大振幅値として制御用マイコン8(図1)に記憶する。
【0177】
このように、減速パルスを印加して対物レンズ44(図5)の等速度運動を行っている間に、正及び負の側の最大振幅値がそれぞれ複数回検出されるが、このうち、最も安定したデータをそれぞれ選択し、制御用マイコン8(図1)に正及び負の側の最大振幅値として記憶する。又、上述したようにカウント信号が複数回切り替わり、このカウント信号がn−1(5)回切り替わったことが第1カウンタ91で確認された後、次に最大振幅値が最大振幅検出手段88で検出される。この最大振幅値が検出される近傍の時刻Cで駆動パルス指令回路90より減速パルスが発生する。尚、時刻C近傍で検出された最大振幅値は、n本キック動作が偶数本のキック動作であるとき、正の側の最大振幅値であり、又、奇数本のキック動作であるとき、負の側の最大振幅値である。
【0178】
このように減速パルスの印加を開始するためのトリガは、次の3つのうち最も速い時刻となるものである。
1.サンプリング回数がある設定回数に達したとき。
2.時刻C近傍で検出される最大振幅値と同じ極性側の制御用マイコン8(図1)に記憶された最大振幅値に対する所定値(例えば、98%)に、サンプリングデータが達したとき。
3.n−1(5)回目(この回数は、正負に関係なく最大振幅値が検出された回数である)に最大振幅値が検出されたとき。
【0179】
1.のようにサンプリング回数を基準とするのは、時刻Bから時刻Cまでの対物レンズ44(図5)の移動量は、原トラックの隣のトラックの所定の位置から、目的トラックの隣のトラックとこのトラックの更に隣のトラックとの境界近傍の位置までであるためである。即ち、このように時刻Bから時刻Cまでの対物レンズ44(図5)の移動量が既知の値であるとともに、対物レンズ44(図5)が等速度運動を行うので、その速度を検出することで時刻Bから時刻Cまでの時間がわかる。よって、この時間をサンプリング時間で除算すると、サンプリング回数の設定回数が求められる。
【0180】
2.のように記憶した最大振幅値を基準としたときは、その基準となる最大振幅値は、n本キック動作が偶数本のキック動作であるとき、既に制御用マイコン8(図1)に記憶された正の側の最大振幅値であり、又、奇数本のキック動作であるとき、既に制御用マイコン8(図1)に記憶された負の側の最大振幅値である。又、3.のようにn−1(5)回目に検出された最大振幅値を基準として減速パルスが発生するのは、このとき検出された最大振幅値が、この最大振幅値と同極性で既に記憶された最大振幅値の値よりも小さいとともに、対物レンズ44(図5)の移動速度が早いときである。尚、2.の記憶した最大振幅値、又は3.のn−1(5)回目に検出された最大振幅値を基準として減速パルスを発生したとき、減速パルスの印加時間又はその振幅レベルを補正しても構わない。
【0181】
このように時刻Cで減速パルスが印加が開始し、時間T2(=2/3T1)経過後、減速パルスの印加が停止される(時刻D)。このように減速パルスの印加時間が加速パルスの印加時間より短いのは、減速パルスの印加停止後の対物レンズ44(図5)の移動方向を、加速パルスによる運動方向と同じ方向(目的トラックへ移動する方向)にするためである。即ち、減速パルスを与えることによって、対物レンズ44の移動方向を逆方向(原トラックへ移動する方向)にしないようにするためである。
【0182】
このように減速パルスの印加が停止された後、1〜4本キック動作では、スイッチSW2及びスイッチSW3が切り替わってトラッキングサーボのメインループが閉じた状態となって引き込み動作が開始されるが、このn(6)本キック動作では、スイッチSW2及びスイッチSW3の切り換えは行われない。即ち、トラッキングサーボのメインループを開いた状態のままで、引き込み動作が行われない。
【0183】
従って、減速パルスによって減速された速度で、目的トラックに向かって、対物レンズ44(図5)が等速度運動する。このとき、対物レンズ44(図5)の移動速度は、トラッキングサーボによって十分に引き込みが可能な速度である。このように減速パルスを与えた後にトラッキングサーボのメインループを開いた状態のままとするのは、減速された対物レンズ44(図5)の移動速度が、このトラッキングサーボのメインループを閉じることによって発生する駆動信号により加速されるのを防ぐためである。
【0184】
このように、減速パルスを与えられた後、対物レンズ44が等速度運動している間に、駆動パルス指令回路90によってキック用閾値が再び検出されてカウント信号が切り替わるとともに、図11(a)のようにサンプリングデータがゼロクロスする。このサンプリングデータのゼロクロスする箇所近傍のサンプリングデータを駆動パルス指令回路90が検出したとき、スイッチSW2が接点c側に接続されるとともにスイッチSW3がONとなってトラッキングサーボのメインループが閉じる。
【0185】
このとき、ゲイン切換回路83で与えるゲインを大きくして引き込み動作が開始して、対物レンズ44(図5)の目的トラックへの引き込みが開始するとともに、キック検出回路93がキック検出信号をHからLに切り換えて、制御用マイコン8(図1)にキック動作が終了したことを認識させる。そして、引き込みが終了すると、ゲイン切換回路83で与えられるゲインが通常の予め設定された記録時もしくは再生時用のゲインに戻されて、トラッキングが行われる。
【0186】
尚、図11を用いて、サンプリングデータがはじめに正の側に移行したときの例について述べたが、サンプリングデータがはじめに負の側に移行したときは、2回目のキック用閾値bが検出されたときに加速パルスの印加が停止する。又、減速パルスの印加開始は、n−1回目に検出される最大振幅値近傍である。
【0187】
このようなn本キック動作によると、対物レンズ44(図5)が目的トラックに到達する数本前のトラックで減速されて、目的トラックでは十分に引き込みが行われる速度で等速度運動を行って目的トラックに近づく。そして、目的トラックの中央位置付近に対物レンズ44(図5)が到達したときにトラッキングサーボによる引き込みが行われるので、確実に目的とするトラックに到達することができる。よって、従来のように、キック動作をおこなったときに生じる光ピックアップ2(図1)暴走の発生を防ぐために設けられた滑り止め回路を必要としない。又、確実に目的トラックに到達するので、再度キック動作を行う必要がない。よって、目的トラックをサーチする時間が短縮される。
【0188】
尚、万一正確なキック動作ができず、キック動作が開始してから所定時間経過してもその目的トラックがとらえられない場合は、トラッキングサーボ回路を一旦遮断した後、再びONの状態とすることにより、トラックへの引き込みを瞬時に行って光ピックアップ2(図1)暴走を防ぐことができる。
【0189】
(4)1本キック動作の別例
又、1本キック動作の別例について、以下に説明する。この1本キック動作は、概略的に説明すると、図9(b)に示す加速パルスの印加時間T1を短くするとともに、減速パルスの印加時間T2を0とするものである。
【0190】
まず、制御用マイコン8(図1)が1本キックの指令を出すと、対物レンズ44(図5)の移動速度を加速するように駆動パルス指令回路90より加速パルスが電源補償回路85に与えられる。このとき、同時に、スイッチSW2が接点d側に接続されるとともにスイッチSW3がOFFとして、トラッキングサーボのメインループを開いた状態とするともに、ホールド回路84からトラッキング駆動信号が電源補償回路85に送出されるようにする。
【0191】
又、閾値生成回路89において、前回のキック動作時に最大振幅検出手段88で検出された最大振幅値に対する所定値(例えば、最大振幅値の1/10の値)であるキック用閾値aが生成され、駆動パルス指令回路90に送出される。尚、このキック用閾値aは、(1)で説明したキック用閾値aよりも小さい。そして、このキック用閾値aとなるサンプリングデータが駆動パルス指令回路90で検出されると、加速パルスの印加を停止するとともに、スイッチSW2をc側に接続するとともにスイッチSW3をONにしてトラッキングサーボのメインループを閉じる。
【0192】
このようにすることによって、対物レンズ44(図5)の引き込み動作が開始され、原トラックへの引き込みが行われようとするが、対物レンズ44(図5)は、加速パルスによってその移動速度が目的トラックに向かって加速されているので、減速されるものの隣の目的トラックとの境界を越えることができる。よって、このように目的トラックに移動した対物レンズ44(図5)は、原トラックとの境界を越えるまでにその移動速度が減速されるため、目的トラックにおける引き込み動作によって、目的トラックの中央位置に引き込まれる。
【0193】
このように加速パルスのエネルギーを小さくするために、その印加時間を短くしたが、印加電圧を小さくすることによって減速パルスを0とした1本キック動作としても構わない。又、加速パルスを与えた後、原トラックと目的トラックの境界(サンプリングデータが最大振幅値となる)付近に対物レンズ44(図5)が到達するまで、対物レンズ44(図5)を等速度運動させた後、トラッキングサーボのメインループを閉じて、引き込み動作を開始しても構わない。
【0194】
<トラッキングサーボのサブループ>
トラッキングサーボのサブループについて、図面を参照して説明する。図12は、トラッキングサーボのサブループの一部の構成を示すブロック図である。図13は、速度・移動距離演算回路12の内部構成を示すブロック図である。図14は、スレッドモータ5の回転速度を検出するときに生成される各信号のタイミングチャートである。図15は、対物レンズ44、ディスク1、及び光源の位置関係を示す図である。
【0195】
上述したように、光ピックアップ2(図1)が受光したメインビームやサブビームの反射光から、トラッキングエラー信号TEとシフト信号SFSがRF処理回路6(図1)で生成される。図12のように、このトラッキングエラー信号TE又はシフト信号SFSは、ADコンバータ7(図1)でデジタル化された後、スイッチSW4を介して、デジタルサーボ処理回路10内のオペアンプ94の正相入力端子aに入力される。尚、スイッチSW4の接点cにトラッキングエラー信号TE又はシフト信号SFSが、スイッチSW4の接点dに後述するスレッドモータ駆動信号SDが入力され、スイッチSW4の接点eがオペアンプ94の逆相入力端子aに接続されるとともに、今、スイッチSW4は接点c側に接続された状態である。又、このオペアンプ94の逆相入力端子bには、後述する速度・移動距離演算回路12から出力される速度信号Eが入力される。
【0196】
オペアンプ94からは、トラッキングエラー信号TEもしくはシフト信号SFSと速度信号Eとの差信号eが出力され、この差信号eが増幅器95で増幅されて駆動信号e0として出力される。この駆動信号e0がPWM信号生成回路13に入力され、PWM処理されてPWMドライバ14に与えられる。PWMドライバ14では、PWM処理された駆動信号に基づいてスレッドモータ5を回転制御し、ホール素子11a,11bがスレッドモータの回転にあわせて信号P1,P2を出力し、この信号P1,P2が速度・移動距離演算回路12に与えられる。このように、メインループによってトラッキング制御されているとき、このようなサブループによってスレッドモータ5が制御される。
【0197】
又、図14(a)、(b)のような信号P1,P2が、それぞれ、ホール素子11a,11bより速度・移動距離演算回路12に入力されると、図13のように、信号P1が微分回路101及び比較器103に、信号P2が微分回路102及び比較器104に与えられる。又、信号P1,P2において、図14(a)、(b)より明らかなように、信号P2は信号P1に対して、π/2位相が進んでいる。そのため、ホール素子11a,11bがスレッドモータ5の出力軸(不図示)と同期して回転するNSが交互に等間隔で磁化された回転板(不図示)に対向して配設される。即ち、例えば、N極ブロックとS極ブロックの境界部にホール素子11aを配設したとき、ホール素子11bをN極ブロックの中央位置に配設する。
【0198】
信号P1,P2はホール素子11a,11bとこれらホール素子11a,11bに対向しようとするスレッドモータ5の磁化部(不図示)との位置関係を示す。又、この信号P1,P2は、磁化部の磁極に対し90°位相のずれた配置となっているため、スレッドモータ5の回転に対して、図14(a)、(b)のような正弦波で90°位相のずれた波形となる。このような信号P1,P2が、微分回路101,102でそれぞれ微分され、微分信号Q1,Q2が生成される。この微分信号Q1,Q2は、図14(a)、(b)のような波形の信号P1,P2と比較して、その位相が−90°ずれた図14(c)、(d)のような波形となる。
【0199】
又、比較器103,104では、信号P1,P2がそれぞれ、図14(a)、(b)の波形の中心の値と比較される。即ち、図14(a)、(b)の波形の中心の値を0とすると、位置信号P1,P2のそれぞれの正側の信号が、方形波生成回路105,106に送出される。方形波生成回路105,106では、それぞれに与えられた位置信号P1,P2の正側の信号より、図14(e)、(f)のような方形波信号R1,R2を生成する。この方形波信号R1,R2は、それぞれ、信号P1,P2をその波形の中心を境界として二値化した信号である。
【0200】
そして、微分回路101,102で生成された微分信号Q1,Q2が、それぞれ、反転回路107,108に与えられ、又、方形波生成回路105,106で生成された方形波信号R1,R2が、それぞれ、反転回路108,107に与えられる。反転回路107は、方形波信号R2がハイレベル(以下、「H」とする)のとき微分信号Q1を反転して出力し、方形波信号R2がローレベル(以下、「L」とする)のとき微分信号Q1をそのまま出力する。又、反転回路108は、方形波信号R1がHのとき微分信号Q2をそのまま出力し、方形波信号R1がLのとき微分信号Q2を反転して出力する。
【0201】
図14の場合において、方形波信号R2がHのとき、微分信号Q1が負の値となり、方形波信号R2がLのとき、微分信号Q1が正の値となる。又、方形波信号R1がHのとき、微分信号Q2が正の値となり、方形波信号R1がLのとき、微分信号Q2が負の値となる。よって、反転回路107から出力される信号S1は、方形波信号R2がHのときに微分信号Q1が反転された信号となるとともに、反転回路108から出力される信号S2は、方形波信号R1がLのときに微分信号Q2が反転された信号となる。よって、信号S1,S2が、図14(g)、(h)のようになり、常に正の値となる。又、光ピックアップ2(図1)の進行方向が、ホール素子11a,11bより与えられる信号P1,P2の波形が図14(a)、(b)のようになる場合と逆の方向であるときは、この信号S1,S2が負の値となる。
【0202】
そして、この信号S1,S2が加算器109で加算され、図14(i)のような信号となり、スレッドモータ5の回転速度に略比例した信号となる。この信号S1,S2が加算された信号S1+S2が平滑回路110でスイッチングノイズを除去することにより、平滑化された速度信号Eが生成される。そして、この平滑化回路110で生成された速度信号Eが、オペアンプ94の逆相入力端子bに入力される。
【0203】
このとき得られる速度信号Eは、スレッドモータ5の絶対的な回転速度でもなく、又、スレッドモータ5の絶対的な回転速度と完全に正比例するものでもないが、ほぼ近似的に正比例していると考えて良い。本実施形態において、ホール素子を2つ用いた2相の位置信号による速度制御を説明したが、ホール素子を更に複数用いて、位置信号を多相化することによって速度信号Eがスレッドモータの絶対的な回転速度に対して正比例した値に近づく。又、このような速度の検出は、その瞬時瞬時の速度が検出できるので、トラッキングサーボのサブループに用いることができる。以下に、このようなトラッキングサーボのサブループの動作について、説明する。
【0204】
(1)トラッキングエラー信号TEを用いたとき
まず、オペアンプ94の正相入力端子aに入力される信号がトラッキングエラー信号TEであるときのサブループの動作について、説明する。差信号eは、速度・移動距離演算回路12より出力される速度信号Eとトラッキングエラー信号TEとの差信号であり、その関係は次式で表される。
e=TE−E
【0205】
このオペアンプ94より出力される差信号eは、増幅器95でA倍増幅されるため、増幅器95の出力信号e0は、次式で表される。
【0206】
この増幅器95の出力信号e0が、PWM信号生成回路13でPWM処理された後、PWMドライバ14を介して駆動信号としてスレッドモータ5に与えられ、スレッドモータ5がこの駆動信号に応じた速度vで回転制御される。よって、スレッドモータ5の回転速度vと出力信号e0は、ほぼ比例関係となるので、その比例定数をαとしたとき、回転速度vと出力信号e0の関係は次式で表される。
【0207】
又、速度・移動距離演算回路12より出力される速度信号Eは、スレッドモータ5の回転速度vと、ほぼ比例関係となるので、その比例定数をkとすると、速度信号Eと回転速度vとの関係は、次式で表される。
E=k・v ・・・(2)
【0208】
この(2)式より、(1)式のEにk・vを代入すると、次式のような関係が得られる。
v=α・A・(TE−kv)
よって、回転速度vは、次式のように表され、トラッキングエラー信号と正比例の関係となることがわかる。
v=TE/(k+1/(α・A)) ・・・(3)
【0209】
今、トラックの中央位置にメインビームによるメインスポットが形成されず、トラッキングエラー信号TEがゼロでなかったとする。このとき、スレッドモータ5は、(3)式のトラッキングエラー信号TEとの関係より、回転速度vで微小角度回転する。そして、瞬時にトラッキングエラー信号TEがゼロとなり、(3)式の関係より、回転速度がゼロとなりスレッドモータ5が回転を停止しようとする。しかしながら、トラックは同心円状でなくスパイラル状に形成されているため、対物レンズ44(図5)がトラックの中央位置からシフトすることによってメインスポットがトラックの中央位置からずれ、再びトラッキングエラー信号TEが増加する。そのため、この増加しかけたトラッキングエラー信号TEによって、再び回転速度が発生し、停止しかけたスレッドモータが、再び微小角度回転する。
【0210】
記録又は再生中のトラッキング動作を行っている間に、このような動作の繰り返しを常に行っているため、スレッドモータ5が常にその回転速度が非常に低い回転速度で回転し続けることとなる。従って、従来のディスク装置のように、対物レンズがある程度シフトして、そのトラッキングエラー信号による駆動信号の大きさがスレッドモータのコギングよりも大きくなったときに初めて、スレッドモータが回転して対物レンズのシフト量をゼロにするものとは異なり、常に、スレッドモータが低い回転速度で回転し続ける。よって、このとき、スレッドモータ5にかかる摩擦は、静摩擦でなく、動摩擦である。
【0211】
(2)シフト信号SFSを用いたとき
次に、オペアンプ94の正相入力端子aに入力される信号がシフト信号SFSであるときのサブループの動作について、説明する。この場合、トラッキングエラー信号TEの代わりにシフト信号SFSが用いられたものであるので、スレッドモータ5の回転速度vとシフト信号SFSとの関係は、(3)式のTEにSFSを代入した次式で表される。
v=SFS/(k+1/(α・A)) ・・・(4)
【0212】
この場合も同様に、トラックの中央位置にメインビームによるメインスポットが形成されず、シフト信号SFSがゼロでなかったとする。このとき、スレッドモータ5は、(4)式のシフト信号SFSとの関係より、回転速度vで微小角度回転する。そして、瞬時にシフト信号SFSがゼロとなり、(4)式の関係より、回転速度がゼロとなりスレッドモータ5が回転を停止しようとする。しかしながら、トラックは同心円状でなくスパイラル状に形成されているため、対物レンズ44(図5)がトラックの中央位置からシフトすることによってメインスポットがトラックの中央位置からずれ、再びシフト信号SFSが増加する。そのため、この増加しかけたシフト信号SFSによって、再び回転速度が発生し、停止しかけたスレッドモータが、再び微小角度回転する。
【0213】
記録又は再生中のトラッキング動作を行っている間に、このような動作の繰り返しを常に行っているため、スレッドモータ5が常にその回転速度が非常に低い回転速度で回転し続けることとなる。従って、従来のディスク装置のように、対物レンズがある程度シフトして、そのトラッキングエラー信号による駆動信号の大きさがスレッドモータのコギングよりも大きくなったときに初めて、スレッドモータが回転して対物レンズのシフト量をゼロにするものとは異なり、常に、スレッドモータが低い回転速度で回転し続ける。よって、このとき、スレッドモータ5にかかる摩擦は、静摩擦でなく、動摩擦である。
【0214】
このシフト信号SFSを用いてトラッキングサーボのサブループの制御を行ったとき、トラッキングエラー信号TEを用いたときと異なり、対物レンズ44(図5)のシフト量がわかる。即ち、トラッキングエラー信号TEでは、対物レンズ44(図5)のシフト量となるオフセットがうち消された信号である。そのため、例えば、ポータブルタイプのディスク装置において、図15(a)のように、矢印の方向に重力がかかり、光ピックアップ2(図1)の光源の光軸がトラックaに位置するともに、重力がディスクの径方向に加わって対物レンズ44の中心位置がトラックbに位置するとき、トラックbをとらえた状態でトラッキングエラー信号TEがゼロとしてトラッキング制御される。
【0215】
従って、光源の光軸がトラックaに位置したまま、対物レンズ44がトラックbの中央位置に位置するときに、トラッキングエラー信号TEがゼロとなるようにトラッキング制御される。よって、記録時において、磁気ヘッド3は、トラックbに磁界信号を与える必要がある。又、ポータブルタイプのディスク装置においては、その重力方向が図15(a)の矢印方向と逆方向にかかる場合もある。そのため、磁気ヘッド3は、このような場合も鑑みて、図15(a)のように、広い範囲で磁界を与えるようにするために、その磁界を発生するコイルを大きくする必要がある。このように、コイルを大きくすることは消費電力の増大につながり、ポータブルタイプのディスク装置に用いられる電池の寿命時間の短縮につながる。
【0216】
このように、トラッキングエラー信号TEを用いたときは、ポータブルタイプのディスク装置のように、対物レンズ44に加わる力が一定しないディスク装置には不適であるが、常に光ピックアップ2より発せられるレーザービームの光軸方向にのみに常に外力が加わるようなホームユースタイプのディスク装置には使用可能である。そこで、ポータブルタイプのディスク装置にも使用可能となる対物レンズ44のシフト量を表すシフト信号SFSを用いたトラッキングサーボのサブループの動作について、更に説明する。
【0217】
図15(b)のように、矢印の方向に重力を受けたとき、トラッキング制御が行われていないとき、光源の光軸と対物レンズ44の位置関係は、トラッキングエラー信号TEを用いたときと同様に、図15(a)のような関係となる。しかしながら、トラッキング制御が行われると、オペアンプ94の正相入力端子aに入力されるシフト信号SFSは、ゼロでなく、対物レンズ44のシフト量に応じた値となる。そして、このトラッキングサーボのサブループは、このシフト信号SFSがゼロになるように作用し、スレッドモータ5が回転を行う。
【0218】
このように、スレッドモータ5が回転を行うことによって、光源の光軸がトラックb上に位置するように光ピックアップ2(図1)を移動させる。即ち、光源からの光軸と対物レンズ44の中央部とを合致させるように光ピックアップ2(図1)を移動し、これらがトラックbの中央位置で合致した状態で、トラッキングエラー信号TEをゼロとしてトラッキング制御を開始することになる。よって、ディスク装置の姿勢が変化したとしても、常に光源の光軸と対物レンズ44の中央部とを合致させるように作用させる働きを有することとなり、ディスク上に楕円状のスポットの形成のなす割合を減少させるとともに、磁気ヘッド3が磁界を発生する範囲を狭めることができる。
【0219】
<ロングサーチ>
本実施形態のディスク装置におけるロングサーチも、従来のディスク装置と同様に、原トラックと目的トラックの間に何本のトラックがあるかそのトラックの本数を算出した後、スレッドモータ5を駆動して光ピックアップ2(図1)を移動させるという動作を行う。尚、本実施形態では、光ピックアップ2(図1)がどの位置にあるかその位置を検出しながら、ロングサーチが行われる。このようなロングサーチについて、図12、図14及び図16を参照して説明する。図16は、ロングサーチ時におけるスレッドモータ5に与える駆動信号の電圧値及びスレッドモータ5の回転速度を示す図である。
【0220】
このロングサーチにおけるスレッドモータ5の制御系は、図12のように表される。即ち、トラッキングサーボのサブループと同様のループによって制御され、スイッチSW4が接点d側に接続されることによって、オペアンプ94の正相入力端子aに、トラッキングエラー信号TE又はシフト信号SFSの代わりに、スレッドモータ駆動信号生成回路96で生成されたスレッドモータ駆動信号SDが入力される。それとともに、増幅器95の増幅度がAからA1に、速度・移動距離演算回路12のゲインがkからk1に切り換えられる。又、スレッドモータ駆動信号生成回路96では、制御用マイコン8(図1)からの指令により、スレッドモータ駆動信号SDを生成する。
【0221】
このとき、スレッドモータ5にスレッドモータ5に印加される電圧Vは、次式で表される。
この(5)式において、係数(A1/(1+k1・α・A1))は、1よりも小さく、且つ、通常は1に限りなく近い値になるようにk1及びA1が設定される。従って、通常は、スレッドモータ5にかかる電圧Vは、スレッドモータ駆動信号SDに実質等しい。
【0222】
又、スレッドモータ5の回転速度vと、スレッドモータ駆動信号SDの関係は、上述した、スレッドモータ5の回転速度vとトラッキングエラー信号TE又はシフト信号SFSとの関係式である(3)式及び(4)式と同様、次式のようになる。
v=SD/(k1+1/(α・A1)) ・・・(6)
【0223】
スレッドモータ5の回転速度vとスレッドモータ駆動信号SDの関係が(6)式のような関係になることより、スレッドモータ駆動信号SDによってスレッドモータ5が速度制御されていることがわかる。このようにスレッドモータ5が速度制御されているということは、ディスク装置の姿勢によって、光ピックアップ2(図1)の移動方向と同じ方向、又はその逆方向に重力がかかるような場合であっても、スレッドモータ5の回転速度が一定になるように制御される。
【0224】
即ち、光ピックアップ2(図1)の移動方向と同じ方向に重力がかかる場合は、スレッドモータ5に印加される電圧が小さくなるように制御され、又、その逆の場合は、スレッドモータ5に印加される電圧が大きくなるように制御される。よって、スレッドモータが速度制御されない従来の装置では、重力の影響がその回転速度に及ぼされるため、光ピックアップの移動距離がばらつくが、本実施形態のように、スレッドモータを速度制御することにより、重力に関係なくその回転速度が制御されるため、光ピックアップの移動距離のバラツキを抑えることができる。
【0225】
このようにスレッドモータ5を速度制御するロングサーチにおいて、まず、制御用マイコン8(図1)より指令が与えられると、デジタルサーボ処理回路10によって、スレッドモータ駆動信号SDが生成され、オペアンプ94の正相入力端子aに入力される。そして、このスレッドモータ駆動信号SDに基づくPWM処理された信号によってスレッドモータ5が回転駆動される。
【0226】
このとき、トラッキングサーボのメインループにおいて、スイッチSW1(図8)が接点d側に接続されて基準電圧が電源補償回路85(図8)に与えられ、この基準電圧に基づいた基準位置に対物レンズ44(図5)が保持される。尚、物理的には、対物レンズ44(図5)は、正又は負の加速力を受けて、変位する。そして、速度・移動距離演算回路12によって、光ピックアップ2(図1)の移動距離の演算が行われる。
【0227】
まず、この速度・移動距離演算回路12における光ピックアップ2(図1)の移動距離の演算及びその結果の使用について、以下に説明する。まず、ロングサーチを行う前に、原トラックと目的トラックとの間に何本のトラックが存在するか算出される。このとき、n本のトラックが原トラックと目的トラックの間に存在し、又、トラックピッチがpμmとすると、光ピックアップ2(図1)が移動する移動距離は、n・pμmとなる。
【0228】
よって、スレッドモータ5が1回転あたりに光ピックアップ2(図1)を移動させる距離をaμmとすると、光ピックアップ2(図1)を移動距離分移動させるためのスレッドモータ5の回転数をb回転とすると、そのbは、次式で表される。
b=(n・p)/a
【0229】
ところで、スレッドモータ5の回転数は、上述したように、ホール素子11a,11bからの出力信号によって検出される。即ち、図14(a)、(b)のようなホール素子11a,11bの出力信号P1,P2のゼロクロスする回数によって検出される。よって、今、ホール素子11a,11bに対向する回転板に設けられるN極及びS極の磁極数が、それぞれc極あるとすると、例えば、ホール素子11aの出力信号P1において、2c回ゼロクロスを検出すると、スレッドモータ5が1回転したことになる。従って、目的トラックに光ピックアップ2(図1)が到達するまでに検出される出力信号P1又は出力信号P2がゼロクロスする回数dは、次式で表される。
d=(n・p・2c)/a ・・・(7)
【0230】
このように、ホール素子11a,11bの出力信号P1,P2のいずれか一方がゼロクロスした回数をカウントし、そのカウント数が(n・p・2c)/aになったところで、スレッドモータ5を停止させると、目的トラックの近傍位置に対物レンズ44(図5)が位置することになる。尚、この出力信号P1又は出力信号P2のゼロクロス(以下、「ゼロクロス信号」とする)のカウント数の代わりに、図14(e)、(f)のような方形波生成回路105,106のそれぞれ出力されるパルス信号R1,R2のいずれか一方のパルス信号のゼロクロスをカウントして、そのカウント数が(n・p・2c)/aとなるとき、スレッドモータ5を停止するようにしても構わない。
【0231】
しかしながら、(7)式の値dが、正の整数になることはまれであるので、その小数点以下の値にゼロクロス信号1カウントあたりの光ピックアップ2(図1)の移動量(a/(2c))μmを乗算したものが誤差となる。従って、ゼロクロス信号1カウントあたりの光ピックアップ2(図1)の移動量を小さくすればするほど、その誤差も小さくなる。即ち、スレッドモータ5の1回転あたりのカウント数を増やせば増やすほど、目的トラック近傍のより精度の高い位置にたどり着くことができる。
【0232】
尚、このようにスレッドモータ5の1回転あたりのカウント数を増やして、更に細かいピッチでカウントするようにする方法としては、以下のようなものがある。
1.図14(j)のように、図14(e)、(f)のような信号R1,R2より、その周波数が信号R1,R2の2倍となるような信号Sを生成し、この信号Sを用いて、カウントする。
2.2つのホール素子11a,11bを用いた2相の検出信号を用いたが、ホール素子の数量を増やした3相などの複数相の検出信号を用い、これらの複数相の検出信号より1つの信号を生成し、カウントする。
3.上記1.又は2.の方法で得た信号の周波数を更に逓倍した信号を生成し、カウントする。
【0233】
1.の場合、図14(e)、(f)で表される信号R1,R2を、例えば、EXORゲート回路に入力して、その排他的論理和となる信号Sを出力することによって生成することができる。即ち、信号R1,R2が、それぞれ、(H,L)又は(L,H)のときは、Hに、信号R1,R2が、それぞれ、(L,L)又は(H,H)のときは、Lになる図14(j)のような信号Sを生成する。
【0234】
2.の場合、1.の場合において、2相の検出信号P1,P2から得られるパルス信号R1,R2よりこのパルス信号の2倍の周波数の信号Sを生成したように、例えば、n相の検出信号から得られるパルス信号を組み合わせることによって、この検出信号から得られるパルス信号のn倍の周波数の信号を生成する。尚、検出信号から得られるパルス信号の周波数は、ホール素子の数量とは関係がないので、結果的に、1.の場合において生成した信号Sと比べて、n/2倍の周波数の信号が得られる。
【0235】
3.の場合、例えば、1.又は2.の場合において生成した信号と、この信号を遅延回路で遅延した信号を、EXORゲート回路に入力して組み合わせることによって、1.又は2.の場合において生成した信号の2倍の周波数の信号を生成することができる。又、他の例として、バンドパスフィルタによって、1.又は2.の場合において生成した信号から奇数の高調波成分を取り出し、この高調波成分を波形成形することによって、1.又は2.の場合において生成した信号が逓倍された信号を得ることができる。
【0236】
次に、スレッドモータ5の回転について説明する。このとき、スレッドモータ駆動信号SDは、図16(b)のように変化し、これに応じて、増幅器95より与えられるスレッドモータを駆動する信号の電圧値が、図16(a)のように変化する。まず、A地点で、ロングサーチを行うように制御用マイコン8(図1)より指令が与えられると、図16(b)のように、スレッドモータ駆動信号生成回路96より与えられるスレッドモータ駆動信号SDに従い、スレッドモータ5の回転速度が徐々に速くなっていく。
【0237】
このとき、スレッドモータ5の回転速度はスレッドモータ駆動信号SDに比べて少し遅れて立ち上がる。そのため、速度信号Eがスレッドモータ駆動信号SDに比べて遅れて立ち上がるので、スレッドモータ駆動信号SDと速度信号Eとの差であるオペアンプ94より出力される差信号の値が大きくなる。よって、A地点からB地点に光ピックアップ2(図1)が至るまでの間に、まず、増幅器95より出力されるスレッドモータ5を駆動させる信号の電圧値が、図16(a)ように瞬時に大きくなる。その後、速度信号Eがスレッドモータ駆動信号SDと比例した値となるため、スレッドモータ駆動信号SDと速度信号Eとの差であるオペアンプ94より出力される差信号の値が小さくなる。よって、増幅器95より出力されるスレッドモータ5を駆動させる信号の電圧値が、図16(a)ように下がる。
【0238】
このとき、スレッドモータ5の回転速度の立ち上がりが急峻なものであると、スレッドモータ5に拘束電流が流れる。このような拘束電流を避けるために、図16(b)のようなスレッドモータ駆動信号SDを与えることによって、スレッドモータ5の回転速度の立ち上がりに傾斜を設けている。このA地点からB地点までのスレッドモータ駆動信号SDの値は、量産時のスレッドモータ5の特性のバラツキを考慮して、拘束電流が流れない範囲でスレッドモータ5の回転速度の変化率が最大となるような値に設定される。
【0239】
又、(6)式のように、スレッドモータ駆動信号SDは、スレッドモータ5の速度制御信号である。つまり、スレッドモータ5の回転速度vが、スレッドモータ駆動信号SDに係数((6)式参照)を乗算した速度に制御される。従って、立ち上がり時には、PWMドライバ14(図1)より与えられる電圧がスレッドモータ5の起動電圧を上回らねばならないので、スレッドモータ5には、スレッドモータ駆動信号SD通りの電圧がPWMドライバ14(図1)より印加されない。即ち、まず、スレッドモータ5に起動電圧以上の電圧が印加されて、スレッドモータ5が回転を始めた後に、このスレッドモータ5はスレッドモータ駆動信号SDによって速度制御される。
【0240】
このように、スレッドモータ5が回転を始めると、スレッドモータ5にかかる摩擦が、静摩擦から動摩擦に移行し、スレッドモータ5にかかる負荷が極端に減少する。このとき、スレッドモータ5に印加された電圧が起動電圧のままであると、その回転数が急激に上昇するが、本実施形態において、スレッドモータ5が起動した後、スレッドモータ駆動信号SDで速度制御されるので、スレッドモータ5に印加される電圧が瞬時に降下する。その後は、スレッドモータ5に印加される電圧は、スレッドモータ駆動信号SDの勾配とほぼ同様の勾配を示してある値まで増加した後減少する。このようにスレッドモータ5の速度制御を行うことによって、スレッドモータ5に印加する電圧がその起動電圧が越えた状態で急激にスレッドモータ5の回転速度を上げることを防ぐことができるとともに、そのときのスレッドモータ5における大電流の発生を防ぐことができる。
【0241】
その後、図16(b)のようにスレッドモータ駆動信号SDが所定値に達すると、図16(a)のように、増幅器95より与えられるスレッドモータ5を駆動する信号もほぼ一定の電圧になる。この間、スレッドモータ5への印加電圧とスレッドモータ5の起動電圧との差となる差電圧によって軸間に発生する軸間ロスを補う。そして、C地点に光ピックアップ2(図1)が到達した時点で上述した速度・移動距離演算回路12より制御用マイコン8(図1)に与えられるゼロクロス信号などのカウント値が、予め設定した後述する第1の所定値になったことを制御用マイコン8(図1)で検出される。このとき、制御用マイコン8(図1)よりスレッドモータ駆動信号生成回路96に指令が与えられて、スレッドモータ駆動信号SDの値は、スレッドモータ5への回転速度が時間の経過とともに徐々に減少するよう、図16(b)のように、C地点から光ピックアップ2(図1)がD地点に至るまで、下降する。
【0242】
このC地点からD地点に光ピックアップ2(図1)が移動している間の右下がりの傾斜が、急勾配であったとき、スレッドモータ5自身による図16(c)の破線で表される起電力が図16(c)の実線で表される印加電圧より上回り、その回転方向と逆向きの電圧がかかる。従って、このC地点からD地点までのスレッドモータ駆動信号SDの値は、量産時のスレッドモータ5の特性のバラツキを考慮して、C地点からD地点において常にスレッドモータ5への印加電圧がその起電力による電圧より上回る範囲において、スレッドモータ5の回転速度の変化率が最大となる値に設定される。
【0243】
図16(b)のように、スレッドモータ駆動信号SDの値が下降すると、スレッドモータ5が瞬時にその回転速度を減速することができないので、速度信号Eの値が遅れて下降する。よって、図16(a)のように、C地点に到達した時刻より遅れて増幅器95より与えられるスレッドモータ5を駆動する信号の電圧値が負の値となる。そして、スレッドモータ5の回転速度が減速されると、速度信号Eもスレッドモータ駆動信号SDに比例して下降するので、増幅器95より与えられるスレッドモータ5を駆動する信号の電圧値が負の値で一定となる。
【0244】
そして、D地点に光ピックアップ2(図1)が到達したとき、スレッドモータ5への印加電圧が、図16(a)のように、スレッドモータ5を動作させるために必要最低限となる最低動作電圧になるように、スレッドモータ駆動信号SDが、図16(b)のように設定される。尚、このとき設定される最低動作電圧は、例えば、B地点からC地点の間に印加する電圧の略1/10とするように、量産時のスレッドモータ5のモータ及び負荷のバラツキを考慮して、真の最低動作電圧より高く設定される。よって、D地点に光ピックアップ2(図1)が到達した後、最低動作電圧を一定期間印加するようにスレッドモータ駆動信号SDの値が、図16(b)のように設定されることにより、スレッドモータ5は非常に低い回転速度で駆動される。
【0245】
D地点に到達した時刻より遅れて、スレッドモータ5の回転速度が一定となるため、D地点に到達してから少しの間、速度信号Eは下降した後、一定の値となる。よって、スレッドモータ駆動信号SDと速度信号Eとの差が正の値となるため、D地点に到達してから少し遅れて、増幅器95より与えられるスレッドモータ5を駆動する信号の電圧値が、図16(a)のように正の値で一定となる。
【0246】
その後、E地点に光ピックアップ2(図1)が到達したとき、速度・移動距離演算回路12での上述したゼロクロス信号などのカウント値が、目的トラック位置に相当する最終総カウント数である予め設定した第2の所定値になったことを、制御用マイコン8(図1)で検知する。このとき、図16(b)のように、スレッドモータ駆動信号SDの値を0とする。このE地点直前までのスレッドモータへの印加電圧が最低動作電圧であるので、スレッドモータ5の慣性力が非常に小さい。そのため、E地点でスレッドモータ駆動信号SDの値を0としたとき、即刻回転が停止する。尚、本出願人は、実験により、上記した図16(a)のような駆動信号によってスレッドモータを駆動したとき、目的トラックから±30本の範囲に光ピックアップを到達させるという結果を得ている。
【0247】
ここで、C地点で検出される第1の所定値の設定について説明する。この第1の所定値は、最終総カウント数である第2の所定値の数%(略50〜90%)という値で設定されるが、光ピックアップ2(図1)がサーチ時に横切るトラックの本数によって第1の所定値を生成するためのパーセンテージが異なる。このパーセンテージは、サーチ時に横切るトラックの本数が多いほど高くなる。
【0248】
これは、ロングサーチを行う際、B地点からC地点の間でのスレッドモータ5の回転速度及び印加電圧が、サーチ時に横切るトラックの本数に限らずほぼ一定であるため、その印加電圧を最低動作電圧にする光ピックアップ2(図1)がC地点からD地点に至る間での時間とD地点以降にスレッドモータ5の回転速度を下げる光ピックアップ2(図1)がD地点からE地点に至るまでの時間とが、サーチ時に横切るトラックの本数の多さにあまり影響を受けないからである。
【0249】
又、上記ではこの第1の所定値によってC地点を決定したが、このC地点を決定する別の例を以下に述べる。この例では、一定の駆動電圧が印加され始めるB地点から、ゼロクロス信号などのカウント数が最終総カウント数の半分の値のカウント数に達する点がある。このカウント数に達する時刻を時刻Tとすると、光ピックアップ2(図1)がB地点に到達してから時刻Tまでの時間Taを測定する。そして、光ピックアップ2(図1)がB地点に到達してからこの測定した時間Taの2倍の時間2Taに光ピックアップ2(図1)が到達する位置をC地点とする。
【0250】
尚、このとき、A地点からB地点までの駆動電圧の増加率を表す傾斜と、C地点からD地点までの駆動電圧の減少率を表す傾斜との絶対値がほぼ同じように設定する必要がある。このようにC地点を設定したとき、サーチ時に横切る本数に応じてそのパーセンテージを切り換えて第1の所定値を設定する必要がない。
【0251】
又、上記のように、最終総カウント数を第2の所定値とするとともに、ゼロクロス信号などのカウント数がこの第2の所定値になったときの光ピックアップ2(図1)の位置をE地点とし、このE地点で、図16(b)のように、スレッドモータ駆動信号SDの値を瞬時に0に切り換えて、スレッドモータ5の回転を停止させる。このとき、スレッドモータ5に印加される最低動作電圧がいくら低い電圧といえども、スレッドモータ駆動信号SDによって、スレッドモータ5の回転速度が瞬時に0に切り換えられるので、スレッドモータ5内部に逆起電力が発生するとともに数100mAという大電流が流れる。
【0252】
よって、このような動作状態のまま、このディスク装置を用いたとき、このディスク装置に電力を供給する電源回路として、E地点に光ピックアップ2(図1)が到達したときに流れる大電流を許容するための電源回路が必要となる。又、電源に、例えば、乾電池などの2次電池を用いた場合、この大電流を許容した寿命電圧を設定する必要がある。しかしながら、現在、2次電池はその内部抵抗も増大しているので、大電流を許容するためにはその寿命電圧を大幅に上げる必要がある。そのため、他の動作で十分使用可能な電圧を供給することができるにも関わらず、この大電流が流れることによって発生した電圧が上記のように設定された寿命電圧として検知され、2次電池の交換を余儀なくさせられることがある。よって、このような不都合をなくすためには、図16(a)のE地点に光ピックアップ2(図1)が到達したときに流れる大電流を防ぐ必要がある。以下にその防ぐ手段を説明する。
【0253】
(1)大電流の発生を防ぐための第1の手段
まず、第1の手段について、以下に説明する。この第1の手段は、ゼロクロス信号などのカウント数が、最終総カウント数より1つ少ないカウント数となったとき、速度・移動距離演算回路12のゲインを、例えば、元のゲインk1の略1/10といったように、大幅に下げる。尚、このときに光ピックアップ2(図1)が到達する位置をE地点とする。又、同時に、スレッドモータ駆動信号SDの値を、図16(b)のように瞬時に0にする。
【0254】
このように、速度・移動距離演算回路12のゲインを大幅に下げることによって、スレッドモータ5を制御するための制御ループの反応が非常に鈍くなる。よって、スレッドモータ駆動信号SDが瞬時に0と低下されるものの、その制御反応が鈍いため、スレッドモータ5にかかる印加電圧が0Vに達するのに時間を要する。即ち、スレッドモータ5にかかる印加電圧が徐々に低下するため、スレッドモータ5のコイルからの逆起電力もほとんど発生しない。
【0255】
このとき、スレッドモータ5は、依然として回転を続けようとするが、光ピックアップ2(図1)がE地点に到達する前に印加されていた電圧が最低動作電圧であるため、スレッドモータ5への印加電圧の降下の割合が低くても、すぐにその停止電圧に達する。そして、スレッドモータ5の回転が停止し、スレッドモータ5自身による起電力の発生が無くなる。即ち、E地点に光ピックアップ2(図1)が到達したときからスレッドモータ5への印加電圧が0Vとなるときまで、スレッドモータ5自身の起電力がその印加電圧を上回る状況が無いため、大電流が流れることを防ぐことができる。
【0256】
(2)大電流の発生を防ぐための第2の手段
次に、第2の手段について、以下に説明する。この第2の手段は、ゼロクロス信号などのカウント数が最終総カウント数となる時刻Eにおいて、スレッドモータ5の両端入力端子を短絡させるものである。このとき、電源からスレッドモータ5に電圧がかからないように、電源とスレッドモータ5の2つの入力端子との間に2つのスイッチを設けるとともに、スレッドモータ5の2つの入力端子を短絡させるためのスイッチを設ける。そして、電源と接続される2つのスイッチをOFFにし、入力端子間に設けられたスイッチをオンにして入力端子が短絡させることによって、大電流が流れることを防ぐことができる。
【0257】
又、光ピックアップ2(図1)がE地点に到達したときに、スレッドモータ駆動信号SDの値を0にした後、10msec程度、増幅器95より与えられるスレッドモータ5を駆動する信号の電圧値を0Vに保つように設定することによって、スレッドモータ5が短絡状態となる。よって、このとき、上記の3つのスイッチを設けたときと同様に、短絡状態とすることができるので、上記の3つのスイッチを設ける必要がない。このようにして、短絡状態を作ることによって、大電流が流れることを防ぐことができる。
【0258】
上記のようにA地点からE地点間での粗サーチを行われた後、スレッドモータ駆動信号SDによるスレッドモータ5への電圧印加が停止されて、スレッドモータ5の回転が停止する。ところで、従来の装置では、ロングサーチを行うにおいて、粗サーチ後スレッドモータの回転停止を待つとともに対物レンズの振動が和らぐのを待つために数十msecのウェイティング時間を設ける必要があった。しかしながら、本実施形態のディスク装置では、スレッドモータ5の停止直前の印加電圧が最低動作電圧であるので、スレッドモータ5の回転速度が非常に小さく、光ピックアップ2(図1)及び対物レンズ44(図5)の慣性力が小さくなり、対物レンズ44(図5)の振動も小さい。よって、本実施形態のディスク装置におけるウェイティング時間が10msec程度と短くなる。
【0259】
このウェイティング時間が経過した後、トラッキングエラー信号がゼロクロスする間隔を測定し、この間隔が所定時間以上になると、スイッチSW1(図8)が接点c側に接続されて、トラッキングサーボによる引き込みが開始される。即ち、対物レンズ44(図5)の移動速度が、所定の速度より小さくなると、対物レンズ44(図5)の基準位置でのホールドが解除されて、トラッキングサーボによる引き込みが開始される。このウェイティング時間経過後から引き込みが開始されるまでの時間も、上述したウェイティング時間が短くなる理由と同様の理由により、短くなる。
【0260】
このように、トラッキングサーボによって引き込みが行われた後、このトラッキングサーボで引き込まれたトラックと目的トラックとの差となるトラックの本数を算出し、上述したキック動作を繰り返して目的トラックに対物レンズ44(図5)を移動させる。このとき、トラッキングサーボで引き込まれたトラックと目的トラックとの差となるトラックの本数は、上述したように30本以内に収まるので、従来と比べて、キック動作を繰り返す回数を減らすことができ、ロングサーチに費やされる時間の短縮を図ることができる。
【0261】
<スピンドルモータの回転制御>
以下に、スピンドルモータ4(図1)のロングサーチ時特に粗サーチ時における回転制御について、図面を参照して説明する。図17は、ゾーンCLV制御におけるディスク1(図1)の径方向と回転速度との関係を示す図である。図18は、超解像層を備えるディスク1(図1)において、ゾーンとその許容回転速度との関係を示す図である。図19は、ディスク1(図1)の内周側から外周方向へサーチを行うときの、スピンドルモータ4(図1)の回転速度の制御を示す図である。図20は、ディスク1(図1)の外周側から内周方向へサーチを行うときのスピンドルモータ4(図1)の回転速度の制御を示す図である。
【0262】
スピンドルモータ4(図1)は、上述したように、記録時や再生時のようにトラッキング動作が行われているときは、ADIPデータによってPLL制御される。そして、トラッキング動作が行われていないときに、ディスク1(図1)を回転させるときは、スピンドルモータ4(図1)は上述したFGサーボによって回転駆動される。
【0263】
又、本実施形態で用いるディスク1(図1)は、上述したように、超解像層と記録層で構成され、このディスク1(図1)を再生するときは、ディスク1(図1)の再生部が記録層のキュリー点よりも低く超解像層のキュリー点よりも高い温度になるように、照射されるレーザービームの出力を制御する必要がある。従って、超解像層を有しないディスクを再生するときよりも、照射されるレーザービームの出力が大きくなる。
【0264】
更に、ディスク1(図1)は、上述したゾーンCLV制御によって回転制御される。このディスク1(図1)の各ゾーンとそのゾーンにおけるスピンドルモータ4(図1)の回転速度の関係が、図17のようになる。図17のように、ディスク1(図1)は、1つのゾーン内においてスピンドルモータ4(図1)の回転速度が一定になるように制御され、全体的には、概略線速度が一定になるように制御される。従って、内周側に位置するゾーンにおいてはスピンドルモータ4(図1)の回転速度が高く制御され、逆に、外周側に位置するゾーンにおいてはスピンドルモータ4(図1)の回転速度が低く制御される。
【0265】
今、TOC領域22(図2)であるゾーン0のある位置からメイン情報領域23(図2)の最内周側にあるゾーン10のある位置まで、上述したロングサーチを行ったとする。又、ゾーン0でのスピンドルモータ4(図1)の適切な回転速度を1200rpm、ゾーン10でのスピンドルモータ4(図1)の適切な回転速度を2400rpmとする。
【0266】
このとき、ゾーン10に光ピックアップ2(図1)が到達した後にスピンドルモータ4(図1)の回転速度を2400rpmに変更したとき、ゾーン5からゾーン10において、光ピックアップ2(図1)から照射されるレーザービームの照射時間が長く、その照射される箇所の記録層の温度がキュリー点以上になって、記録されたデータが消去される恐れがある。
【0267】
又、このようにデータ消去を避けるために、粗サーチを行っている間にレーザービームの出力を落とし、ゾーン10に光ピックアップ2(図1)が到達した後に、レーザービームの出力を引き上げる方法もあるが、そのレーザービームの出力を所定の出力に引き上げるのに時間を要するため、ロングサーチに費やす時間を長引かせることになる。
【0268】
しかしながら、本実施形態においては、再生時にロングサーチを行っても、各ゾーンのデータが消去されることのない、各ゾーンにおけるスピンドルモータ4(図1)の許容回転速度以上の回転速度で、光ピックアップ2(図1)が各ゾーンに到達するときに、スピンドルモータ4(図1)を回転させて、そのゾーンにレーザービームが照射される箇所のデータの消去を防ぐ。このときのスピンドルモータ4(図1)の動作について、以下に説明する。尚、許容回転速度は、あるゾーンの最適な回転速度をNrpmとすると、その回転速度の略0.7倍である略0.7Nrpmとなり、図18に、ゾーンの最適な回転速度を実線で、そのゾーンの許容回転速度を波線で示す。
【0269】
(1)外周方向へのサーチ時のスピンドルモータの回転制御
ゾーン10のある位置からゾーン0のある位置までサーチするときの、スピンドルモータ4(図1)の回転速度の制御動作の1例について、図19を参照して説明する。即ち、内周側のゾーンにあるトラックから外周側のゾーンにあるトラックまでへの粗サーチを行うときの動作について説明する。尚、ゾーン0は、TOC領域22(図2)であるので、一般的には、このようなサーチは存在しないが、このTOC領域22(図2)にUTOC情報が記録されたディスクの場合、このようなディスクが装着された場合に、このようなサーチが行われる。
【0270】
まず、ロングサーチが指令されるとともに、原トラックから目的トラックまでに光ピックアップ2(図1)が横切るトラックの本数を検出し、このトラックの本数をもとに光ピックアップ2(図1)の移動距離が算出される。次に、目的トラックのあるゾーンを検出するとともに、原トラックのあるゾーンから目的トラックのあるゾーンまでのゾーン数を検出する。
【0271】
この検出した光ピックアップ2(図1)の移動距離とゾーン数より、スピンドルモータ4(図1)の回転速度を低下させる回数を決定するとともに、回転速度を低下させる位置を決める。尚、図19の例では、スピンドルモータ4(図1)の回転速度を低下させる回数を3回とし、その回転速度を低下させる位置を、光ピックアップ2(図1)が、ゾーン8を通過してゾーン7にさしかかったとき、ゾーン5を通過してゾーン4にさしかかったとき、ゾーン2を通過してゾーン1にさしかかったときとしている。
【0272】
又、このスピンドルモータ5(図1)の回転速度を低下させる度合いによって、回転速度を低下させるための所要時間が変わるので、この回転速度の低下に費やされる所要時間と上記した光ピックアップ2(図1)の移動距離とによって、上記回転速度を低下させる回数と位置が決定される。尚、検出した光ピックアップ2(図1)の移動距離やゾーン数が少ないほどスピンドルモータ5(図1)の回転速度を低下させる回数が少なくなる。
【0273】
以上のような演算及び設定が制御用マイコン8(図1)で行われる。そして、決定したスピンドルモータ4(図1)の回転速度を低下させる位置が、上述したように、速度・移動距離演算回路12により光ピックアップ2(図1)が移動した距離を検出することによって、検出される。この検出結果が制御用マイコン8(図1)に与えられ、回転速度を低下させる位置が検出されると、制御用マイコン8(図1)で設定した回転速度に低下されるように、その設定した回転速度を表す信号が信号処理回路9に与えられ、スピンドルモータ4(図1)が上述したFGサーボによって制御される。
【0274】
このようにすることによって、ディスク1(図1)の内周側から外周側へロングサーチを行ったとき、光ピックアップ2(図1)が各ゾーンを通過する際、各ゾーンにおいてスピンドルモータ4(図1)の回転速度が、その許容回転速度を下回ることがないので、ディスク1(図1)におけるレーザービームが照射される箇所のデータが消去されることがない。又、目的トラック近傍に光ピックアップ2(図1)が到達したときには、スピンドルモータ4がこの目的トラックの存在するゾーンに最適の回転速度で駆動しているので、その目的トラック近傍に、対物レンズ44(図5)が引き込まれた後、即時に、そのトラックの情報を読み出すことができる。更に、レーザービームの出力を下げる必要がないので、目的トラック近傍に光ピックアップ2(図1)が到達した際に、レーザービームの出力を引き上げる必要がない。
【0275】
(2)内周方向へのサーチ時のスピンドルモータの回転制御
2−1.内周方向へのサーチ時のスピンドルモータの回転制御の第1例
まず、ゾーン0のある位置からゾーン10のある位置までサーチするときの、スピンドルモータ4(図1)の回転速度の制御動作の1例について、図20を参照して説明する。即ち、外周側のゾーンにあるトラックから内周側のゾーンにあるトラックまでへの粗サーチを行うときの動作について説明する。
【0276】
まず、ロングサーチが指令されると、目的トラックのあるゾーンが検知され、そのゾーンの最適な回転速度を表す信号が信号処理回路9(図1)に与えられ、スピンドルモータ4(図1)の回転速度が上述したFGサーボによって、この最適な回転速度に引き上げられる。そして、このようにスピンドルモータの回転速度を変化させるとともに、上述したロングサーチ動作を行う。このようにすることによって、図20よりも明らかなように、スピンドルモータ4(図1)の回転速度が許容回転速度を下回ることがないので、ディスク1(図1)におけるレーザービームが照射される箇所のデータが消去されることがない。
【0277】
2−2.内周方向へのサーチ時のスピンドルモータの回転制御の第2例
次に、ゾーン0のある位置からゾーン10のある位置までサーチするときの、スピンドルモータ4(図1)の回転速度の制御動作の2例について、図19を参照して説明する。この回転制御の例は、上述した内周側のゾーンにあるトラックから外周側のゾーンにあるトラックまでへの粗サーチを行うときの回転制御と同様に、まず、原トラックから目的トラックまでに横切るトラックの本数をもとに光ピックアップ2(図1)の移動距離を算出するとともに、目的トラックのあるゾーンを検出するとともに、原トラックのあるゾーンから目的トラックのあるゾーンまでのゾーン数を検出する。
【0278】
そして、この検出した光ピックアップ2(図1)の移動距離とゾーン数より、内周側のゾーンにあるトラックから外周側のゾーンにあるトラックまでへの粗サーチを行うときの回転制御とは逆に、スピンドルモータ4(図1)の回転速度を上昇させる回数を決定するとともに、回転速度を上昇させる位置を決める。以上のような演算及び設定が制御用マイコン8(図1)で行われると、決定したスピンドルモータ4(図1)の回転速度を上昇させる位置が、上述したように、速度・移動距離演算回路12により検出される。このように、回転速度を上昇させる位置が検出されると、制御用マイコン8(図1)で設定した回転速度に上昇されるように、スピンドルモータ4(図1)が上述したFGサーボによって制御される。
【0279】
尚、このように原トラックのあるゾーンから目的トラックのあるゾーンへロングサーチする際、この2つのゾーンの全ての組み合わせに対する上記したそれぞれの制御手順を予め制御用マイコン8(図1)にプログラム化して記憶させておくことによって、原トラックのあるゾーンから目的トラックのあるゾーンを認識したとき、制御用マイコン8(図1)に記憶された複数の制御手段より適当な制御手段を選択させることができ、簡単にロングサーチ時におけるスピンドルモータ4(図1)の回転制御が行える。更に、このように制御手段を制御用マイコン(図1)に記憶させる際、ディスク1(図1)がゾーンCLVによって規格されたものであるので、スピンドルモータ4(図1)の回転制御のプログラム化を容易にすることができる。
【0280】
<ディスク装置の電源投入後の動作>
本実施形態のディスク装置の電源投入後の動作について、図面を参照して説明する。図21は、このときの各部の出力信号の関係を示すタイミングチャートである。又、図25は、ディスク1(図1)の各ゾーンと回転速度との関係を示した図である。まず、図21(a)のように、時刻Taで電源が投入されると、ディスク1(図1)のゾーン0に相当するTOC領域22(図2)へのラフサーチが行われる。このラフサーチは、上述したように、ディスク1(図1)の面に対向して設けられたリードインスイッチ32(図1)が切り替わるTOC領域22(図2)付近まで、スレッドモータ5(図1)によって光ピックアップ2(図1)を移動させる。
【0281】
このように電源が投入された直後の時刻Tbに、図21(c)、(e)のように、スレッドモータ5(図1)及びスピンドルモータ4(図1)が同時に起動する。このように、スレッドモータ5(図1)とスピンドルモータ4(図1)を同時に起動することにより、電源投入後の立ち上げ時間の短縮を図る。その後、スレッドモータ5(図1)によって上記のようなラフサーチが行われ、図21(b)のように、時刻Tcでリードスイッチ32が切り替わると、スレッドモータ5の駆動を停止する。
【0282】
又、スピンドルモータ4(図1)は、図21(e)のように、時刻Tbから時刻Tdまでの間、駆動電圧として定電圧が加えられる強制加速動作が行われ、この強制加速動作が行われている間、図21(d)のように出力されるスピンドルモータ4の回転速度を表すFG信号のパルス間隔が制御用マイコン8(図1)によって監視される。このとき、このFG信号のパルス間隔が所定値以下になると(時刻Td)、スピンドルモータ4(図1)の回転制御がFG制御に切り替わる。尚、図5(d)のように発生するFG信号のパルスを、以下、「FGパルス」と呼ぶ。
【0283】
例えば、今、TOC領域22(図2)に相当するディスク1(図1)のゾーン0での最適な回転速度が1200rpm、即ち、ディスク1(図1)が、1秒間に20回転するときの回転速度が最適な回転速度であるとし、又、ディスク1の1回転あたりに発生するFGパルスを6パルスとする。更に、スピンドルモータ4(図1)の回転制御動作を強制加速動作からFG制御動作に切り換えるタイミングとなるディスク1(図1)の回転速度を、1秒間に5回転するときの回転速度、即ち、300rpmと設定する。
【0284】
このとき、FGパルスが1秒間に30パルス発生したとき、スピンドルモータ4(図1)の回転制御動作を強制加速動作からFG制御動作に切り換えることになる。よって、スピンドルモータ4(図1)の回転制御動作を強制加速動作からFG制御動作に切り換えるときのパルス間隔が33msecとなり、制御用マイコン8(図1)で監視されているパルス間隔が33msec以下となったとき、信号処理回路9によるFG制御に切り換えられる。
【0285】
そして、図21(e)のように、時刻Tdから時刻Teの間、スピンドルモータ4(図1)をFG制御し、時刻Teで図25に示すゾーン0での第1所定回転速度に到達したとき、図21(f)のように、レーザードライバ31(図1)が制御用マイコン8(図1)によってONされ、レーザービームの照射が開始される。尚、この第1所定回転速度とは、各ゾーンにおける上述した許容回転速度より速く、その最適な回転速度よりも遅い回転速度であり、サーチ時にレーザービームが照射されて、記録されたデータが消去されることのない回転速度である。又、このとき、スピンドルモータ4(図1)の回転速度が、光ピックアップ2(図1)が到達したゾーンのデータを読み取ることが可能な最速の回転速度である、図25のような第2所定回転速度より低い回転速度であるか確認する。
【0286】
その後、図21(g)のように、制御用マイコン8(図1)によって、デジタルサーボ処理回路10(図1)にフォーカスサーチを行うように指示が与えられる。このフォーカスサーチは、対物レンズ44(図5)を光軸方向に上下させて、ディスク1(図1)に照射されるレーザービームの焦点を合わせる動作である。そして、レーザービームの焦点が合うと、その時点で、デジタルサーボ処理回路10(図1)によってフォーカスサーチサーボが閉じられる。
【0287】
このように、フォーカスサーチサーボが閉じた状態になると、光ピックアップ2(図1)から出力される光検出信号よりフォーカスエラー信号をRF処理回路6(図1)にて生成し、このフォーカスエラー信号がADコンバータ7(図1)によってデジタル信号に変換される。このデジタル信号に変換されたフォーカスエラー信号が、デジタルサーボ処理回路10(図1)でイコライジングされた後、PWM信号処理回路13(図1)でPWM処理され、PWMドライバ14(図1)に与えられる。そして、このPWMドライバ14によって光ピックアップのフォーカスコイルが駆動されて、対物レンズ44(図5)が上下に制御され、レーザービームの焦点が常にあった状態になるようにフォーカシング制御される。
【0288】
そして、図21(g)のように、トラッキングサーボのメインループを閉じるた後、このトラッキングサーボのサブループとなるスレッドサーボを閉じて、トラッキング制御を行う。このとき、スピンドルモータ4(図1)の回転速度はFG制御され、又、一度、ADIPデータが読み込まれて、そのアドレスが確認される。この確認したアドレスより、光ピックアップ2(図1)がTOC領域22(図2)をトラッキングしていることが確認されると、図21(e)のように、時刻Tfにおいて、スピンドルモータ4(図1)の回転制御が、FG制御からPLL制御に切り換えられる。
【0289】
このように、スピンドルモータ4(図1)がPLL制御されるようになると、上述したように、TOC領域22(図2)内のTOC情報やUTOC情報が読み出された後、ディスク装置は、スタンバイ状態になる。このような制御を行うことによって、スタンバイ時間を短縮するとともに、ディスク1(図1)内に記録されたデータを消去することなく、スタンバイ状態にすることができる。
【0290】
<ディスクの停止時の動作>
次に、ディスク装置に装着したディスクの停止時の動作について、図面を参照して説明する。図22は、このときの各部の出力信号の関係を示すタイミングチャートである。今、図22(c)のように、ディスク1(図1)に記録された同期信号をもとに、スピンドルモータ4(図1)がPLL制御されて、データの記録又は再生が行われているときに、時刻Taにディスク1(図1)の停止を行うように制御用マイコン8(図1)によって指令されるものとする。
【0291】
この時刻Taにおいて、スピンドルモータ4(図1)の回転制御が、図22(c)のように、PLL制御からFG制御に切り換えられるとともに、レーザードライバ31(図1)が制御されて、図22(d)のように、レーザービームがOFFされる。この時刻Taから時刻Tbの一定期間の間、スピンドルモータ4(図1)の回転速度が、そのゾーンの最適な回転速度の90%の回転速度となるように、信号処理回路9(図1)によってFG制御される。そして、時刻Tbになると、スピンドルモータ4(図1)の回転速度が、第1所定回転速度まで低下されるように、信号処理回路9(図1)によってFG制御される。
【0292】
そして、スピンドルモータ4(図1)の回転速度が第1所定回転速度となってから一定時間が経過した時刻Tcにおいて、図22(a)のように、電源をOFFにする。そして、電源がOFFされると、図22(b)のように、スピンドルモータ4(図1)が惰性で停止する。このように、急激なブレーキをかけて停止することなく、FG制御を行いながら、ディスク1(図1)の回転を停止していくことにより、ディスク装置の各部における回転停止時の急激な電圧変動の発生を防ぐことができる。
【0293】
<ディスク停止動作後に回転始動した時の動作>
ディスク1(図1)の回転を停止させた後、再び回転を始動させたときの動作について、図面を参照して説明する。図23は、このときの各部の出力信号の関係を示すタイミングチャートである。図24は、このときの各部の出力信号の関係を示すタイミングチャートである。
【0294】
まず、図23(b)のように、スピンドルモータ4(図1)が惰性で停止中で、且つ、スピンドルモータ4(図1)の回転速度があまり低下されていない状態において、再び回転始動させたときの動作について説明する。このとき、まず、時刻Taにおいて、回転始動の指令が制御用マイコン8(図1)によって与えられると、図23(a)のように、電源がONし、その後、スピンドルモータ4(図1)が、信号処理回路9によって、その回転速度が第1所定回転速度になるように、図23(c)のようにFG制御される。
【0295】
そして、時刻Taでスピンドルモータ4(図1)の回転速度が第1所定回転速度に至ると、上述した電源投入時の動作と同様に、レーザードライバ31が制御されて、図23(d)のようにレーザービームが照射される。そして、上述した電源投入時の動作と同様に、スピンドルモータ4(図1)の回転速度が第2回転速度より低いか確認された後、フォーカスサーボ及びトラッキングサーボが閉じられて、ADIPデータが読み込まれて、そのアドレスが確認される。その後、時刻Tcにおいて、スピンドルモータ4(図1)は、図23(c)のように、PLL制御される。
【0296】
次に、図24(b)のように、スピンドルモータ4(図1)が惰性で停止中で、且つ、スピンドルモータ4(図1)の回転速度がかなり低下した状態において、再び回転始動させたときの動作について説明する。このとき、まず、時刻Taにおいて、回転始動の指令が制御用マイコン8(図1)によって与えられると、図24(a)のように、電源がONし、その後、スピンドルモータ4(図1)は、駆動電圧として定電圧が与えられる強制加速動作が図24(c)のように行われる。そして、電源投入時の動作と同様に、時刻Tbにおいて、図24(b)のようにFGパルスのパルス間隔が所定値以下になると、図24(c)のように、スピンドルモータ4(図1)が、信号処理回路9によって、その回転速度が第1所定回転速度になるように、FG制御される。
【0297】
そして、時刻Tcでスピンドルモータ4(図1)の回転速度が第1所定回転速度に至ると、上述した電源投入時の動作と同様に、レーザードライバ31が制御されて、図24(d)のようにレーザービームが照射される。そして、上述した電源投入時の動作と同様に、スピンドルモータ4(図1)の回転速度が第2回転速度より低いか確認された後、フォーカスサーボ及びトラッキングサーボが閉じられて、ADIPデータが読み込まれて、そのアドレスが確認される。その後、時刻Tdで、スピンドルモータ4(図1)は、図24(c)のように、PLL制御される。
【0298】
【発明の効果】
本発明のディスク装置によると、スレッドモータは速度制御されているため、そのコギングによる回転しない方向への負荷に対しても、トラッキングエラー信号又はシフト信号を速度制御信号として、回転し続けることになる。よって、スレッドモータのコギングを利用して、対物レンズのシフト量が所定の値になったときにスレッドモータを所定角回転させるようなディスク装置と比べて、対物レンズのシフト量を非常に微細な範囲に制御することができる。又、スレッドモータが常に非常に低い回転速度で回転し続けるため、わずかの電力をスレッドモータに与えるだけでよい。よって、対物レンズのシフト量に応じてスレッドモータをコギングによる所定角回転させるディスク装置のように、スレッドモータが回転していないときにも無駄な電力を与え続けることがなく、消費電力を抑制することができる。
【0299】
又、シフト信号を用いてスレッドモータを駆動させた場合、このシフト信号によってスレッドモータが速度制御されることになるので、対物レンズに重力などの外力が加わって、その光軸と光源の光軸がずれたとき、そのずれ量であるシフト量に応じた速度でスレッドモータを回転させて、そのシフト量がゼロになるようにする。よって、このような外力による影響を防ぐことができるので、ディスク装置がいかなる姿勢であっても、対物レンズが正確にトラッキングすることができる。よって、磁気コイルなどによって、光ピックアップが照射するトラックにデータを記録するディスク装置において、その磁気コイルを大きくする必要がなくなり、不要な磁気の輻射の増大化を招くこともなく、又、この磁気コイルで消費される電力も抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ディスク装置の内部構造とディスクとの関係を示すブロック図。
【図2】ディスクの記録領域の構成を示す平面図。
【図3】ディスクのトラックの構成を示す図。
【図4】ディスクに構成される超解像層と記録層との関係を示す図。
【図5】光ピックアップの内部構成を示す外観斜視図。
【図6】第2回析格子を通過するレーザービームの第2光検出器に対する入射位置の位置関係を示す図。
【図7】ディスクのトラック上に形成されるメインスポット及びサブスポットの関係と、トラッキングエラー信号とシフト信号とを生成するための回路を示す図。
【図8】デジタルサーボ処理回路の内部構成を示すブロック図。
【図9】1本キック動作における各信号のタイミングチャート。
【図10】2本キック動作における各信号のタイミングチャート。
【図11】6本キック動作における各信号のタイミングチャート。
【図12】トラッキングサーボのサブループの一部の構成を示すブロック図。
【図13】速度・移動距離演算回路の内部構成を示すブロック図。
【図14】スレッドモータの回転速度を検出するときに生成される各信号のタイミングチャート。
【図15】対物レンズ、ディスク、及び光源の位置関係を示す図。
【図16】ロングサーチ時におけるスレッドモータに与える駆動信号の電圧値を示す図。
【図17】ゾーンCLV制御におけるディスクの径方向と回転速度との関係を示す図。
【図18】ディスクのゾーンとその許容回転速度との関係を示す図。
【図19】ディスクの内周側から外周方向へサーチを行うときの、スピンドルモータの回転数の制御を示す図。
【図20】ディスクの外周側から内周方向へサーチを行うときのスピンドルモータの回転数の制御を示す図。
【図21】電源投入時の各部の出力信号の関係を示すタイミングチャート。
【図22】ディスクの停止時の各部の出力信号の関係を示すタイミングチャート。
【図23】ディスクの回転停止後再び回転始動したときの各部の出力信号の関係を示すタイミングチャート。
【図24】ディスクの回転停止後再び回転始動したときの各部の出力信号の関係を示すタイミングチャート。
【図25】ディスクの各ゾーンと回転速度との関係を示した図
【符号の説明】
1 ディスク
2 光ピックアップ
3 磁気ヘッド
4 スピンドルモータ
5 スレッドモータ
6 RF処理回路
7 ADコンバータ
8 制御用マイコン
9 信号処理回路
10 デジタルサーボ処理回路
11a,11b ホール素子
12 速度・移動距離演算回路
13 PWM信号生成回路
14 PWMドライバ
15 スピンドルモータドライバ
16 ヘッドモータ
17 ヘッド駆動回路
18 ヘッド昇降駆動回路
19 制御回路
20 インターフェース
21a,21b ミラー領域
22 TOC領域
23 メイン情報領域
24 リードアウト領域
25 スピンドル軸嵌合用孔
26a,26b クロックマーク
27a,27b データ部
28a,28b ウォブル
31 LDドライバ
32 リードインスイッチ
41 レーザーダイオード
42 第1回析格子
43 コリメータレンズ
44 対物レンズ
45 PBS
46 ウォラストンプリズム
47 凹レンズ
48 第1光検出器
49 第2回析格子
50 第2光検出器
Claims (7)
- データの記録媒体であるディスクにレーザービームを照射する光ピックアップと、該光ピックアップ内に設けられるとともに前記レーザービームを前記ディスクのトラックに収束させる対物レンズと、該対物レンズをディスクの径方向に移動させる対物レンズ移動手段と、前記光ピックアップが出力する光検出信号よりトラッキングエラー信号を生成するトラッキングエラー信号生成手段と、該トラッキングエラー信号生成手段から与えられるトラッキングエラー信号に応じて前記対物レンズ移動手段を動作させて前記対物レンズを前記ディスクのトラックに追従させるトラッキングサーボ手段と、前記光ピックアップをディスクの径方向に高速に移動させるためのスレッドモータと、を有し、前記光ピックアップよりレーザービームを前記ディスクのトラックに照射してデータの記録又は再生を行うディスク装置において、
前記スレッドモータの回転速度を検出するとともに、速度信号を生成する速度信号生成手段と、
前記速度信号と前記トラッキングエラー信号とが与えられるとともに、この2つの信号の差を表す差信号を生成する差信号生成手段と、を有し、
前記トラッキングエラー信号に基づいて、前記トラッキングサーボ手段によって前記対物レンズ移動手段を動作させるとともに、前記差信号生成手段によって生成された差信号に基づいて、前記スレッドモータを駆動することによって、前記対物レンズを前記ディスクのトラックに追従させることを特徴とするディスク装置。 - データの記録媒体であるディスクにレーザービームを照射する光ピックアップと、該光ピックアップ内に設けられるとともに前記レーザービームを前記ディスクのトラックに収束させる対物レンズと、該対物レンズをディスクの径方向に移動させる対物レンズ移動手段と、前記光ピックアップが出力する光検出信号よりトラッキングエラー信号を生成するトラッキングエラー信号生成手段と、該トラッキングエラー信号生成手段から与えられるトラッキングエラー信号に応じて前記対物レンズ移動手段を動作させて前記対物レンズを前記ディスクのトラックに追従させるトラッキングサーボ手段と、前記光ピックアップをディスクの径方向に高速に移動させるためのスレッドモータと、を有し、前記光ピックアップよりレーザービームを前記ディスクのトラックに照射してデータの記録又は再生を行うディスク装置において、
前記スレッドモータの回転速度を検出するとともに、速度信号を生成する速度信号生成手段と、
前記光ピックアップが出力する光検出信号より、前記レーザービームの光源光軸からの前記対物レンズの光軸のシフト量を表すシフト信号を生成するシフト信号生成手段と、
前記速度信号と前記シフト信号とが与えられるとともに、この2つの信号の差を表す差信号を生成する差信号生成手段と、を有し、
前記トラッキングエラー信号に基づいて、前記トラッキングサーボ手段によって前記対物レンズ移動手段を動作させるとともに、前記差信号生成手段によって生成された差信号に基づいて、前記スレッドモータを駆動することによって、前記対物レンズを前記ディスクのトラックに追従させることを特徴とするディスク装置。 - 前記光ピックアップより前記ディスクに照射するレーザービームは、読み取りトラックに合焦するメインビームと、該読み取りトラックの両側に隣接した2つのトラックにそれぞれ合焦するサブビームとからなり、
前記光ピックアップより前記シフト信号生成手段に、前記メインビーム及び前記2つのサブビームの反射光から得られた光検出信号が与えられ、
前記シフト信号生成手段において、前記メインビームの反射光による光検出信号に前記2つのサブビームの反射光による光検出信号の和信号を加えることによって、シフト信号が生成されることを特徴とする請求項2に記載のディスク装置。 - 前記光ピックアップより前記ディスクに照射するレーザービームは、読み取りトラックに合焦するメインビームと、該読み取りトラックの両側に隣接した2つのトラックにそれぞれ合焦するサブビームとからなり、
前記光ピックアップより前記トラッキングエラー信号生成手段に、前記メインビーム及び前記2つのサブビームの反射光から得られた光検出信号が与えられ、
前記トラッキングエラー信号生成手段において、前記メインビームの反射光による光検出信号から前記2つのサブビームの反射光による光検出信号の和信号を差し引くことによって、トラッキングエラー信号が生成されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のディスク装置。 - 前記差信号生成手段によって生成された差信号をパルス幅変調した信号に基づいて、前記スレッドモータを回転制御することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のディスク装置。
- 前記ディスクが、ランド及びグルーブ両方に信号が記録されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のディスク装置。
- 前記スレッドモータの回転速度を検出する複数のホール素子を備えるとともに、
前記速度信号生成手段が、
前記複数のホール素子からの複数の検出信号をそれぞれ微分する微分手段と、
前記複数の検出信号が前記微分手段で微分された複数の微分信号をそれぞれ絶対値化するとともに、前記スレッドモータの回転方向に応じて正又は負の極性を与える絶対値化手段と、
該絶対値化手段より出力された複数の信号を加算して前記速度信号として前記差信号生成手段に出力する加算手段と、
を備えることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載のディスク装置。
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