JP3841203B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発光特性および寿命特性が改善された有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の情報通信分野における急速な技術開発の進展に伴い、CRTに代わるフラットディスプレイに大きな期待が寄せられている。なかでも有機EL素子は、高速応答性、視認性、輝度などの点に優れるため盛んに研究が行われている。
【0003】
1987年に米国コダック社のTangらによって発表された有機EL素子は、有機薄膜の2層積層構造を有し、発光層にトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(以下「Alq」と略称する)を使用し、10V以下の低電圧駆動で、1000cd/m2と高輝度が得られた。また、この素子は、発光効率1.5lm/Wの緑色発光素子であった(Appl.Phys.Lett.,51,913(1987))。
【0004】
有機EL素子の発光効率を向上させまたは発光色を変化させる方法として、発光層に色素をドーピングする方法が知られている。例えば、Alqを発光層のホスト材料として使用し、蛍光量子収率の高いクマリン誘導体や4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−p−ジメチルアミノスチリル−4H−ピラン(以下「DCM」と略称する)誘導体をドープ色素としてドープした、発光効率を向上させた素子や発光色を赤色に変化させた素子が報告されている(J.Appl.Phys.,65,3610(1989))。
【0005】
高発光効率化についてはキナクリドンをドープした素子が特に優れており、Alqとキナクリドンの組み合わせ(Polymer preprints,Japan 40,3600(1991))、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリネート)ベリリウムとキナクリドンの組み合わせ(Extended Abstracts,No3,1073,41st Spring Meeting of the Japan Soc.of Appl. Phys(1994))などが知られている。
【0006】
ところが、従来知られるドープ色素としては、青〜黄色を発色させる色素が多い。赤色系の色を発色させるドープ色素としては、上記のDCM誘導体、ニールレッド(Science 267,1332(1995))、ペリレン誘導体(Appl.Phys.Lett.,64,187(1993))、ユーロピウム錯体(Chem.Lett.,1267(1991))などがあるものの、発光効率、長期の安定性の面で必ずしも満足のいくものではない。したがって、発光効率に優れるとともに寿命に優れた赤色系蛍光材料を与えるドープ色素の開発が望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、発光効率に優れるとともに、発光が長期に渡って安定した有機EL素子を提供することにある。また、マルチカラー表示またはフルカラー表示に応用可能な、特に黄色〜赤色の発光を有する有機EL素子を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、特定のナフタセン誘導体を含む層を有する有機EL素子に関する下記発明である。
陽極と陰極との間に下記式(1)で表されるナフタセン誘導体を含む層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0009】
【化2】
【0010】
(式(1)中、X1、X2は、それぞれ独立に、酸素原子、イオウ原子、NH基またはCH2基を表し、R1〜R18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または1価有機基を表す。)。
【0011】
上記式(1)で表されるナフタセン誘導体を含む層は発光層であることが好ましく、この場合は発光層は上記式(1)で表されるナフタセン誘導体と他の有機蛍光物質を含む発光層であることが好ましい。また、この発光層において、上記式(1)で表されるナフタセン誘導体と他の有機蛍光物質との合計に対し上記式(1)で表されるナフタセン誘導体を0.01〜20mol%含むことが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明においては、特定のナフタセン誘導体が使用されることにより、発光層の発光効率に優れ、発光が長期に渡って安定した有機EL素子が得られる。また、マルチカラー表示、フルカラー表示に応用可能な黄〜赤色の有機EL素子が得られる。
【0013】
ナフタセン系やアントラセン系の色素は、有機EL用の高蛍光量子収率色素として古くから知られている(Phys.Rev.Lett.,14,229,(1965))。しかしながら、黄〜赤色発光の長波長発光を得ることや長期に渡って安定した発光を得ることについては不十分であった。本発明者は、黄〜赤色発光を得るためには、ナフタセン誘導体の共役を広げること、また、長期に渡って安定した発光を得るためにはナフタセン骨格に隣接する2重結合の回転を抑制することが重要であることを見出し、その結果、式(1)で表されるナフタセン誘導体(以下、ナフタセン誘導体(1)という)を用いることにより、黄〜赤色発光の長波長発光が得られることおよび長期に渡って安定した発光を得られることを見出した。
【0014】
さらにナフタセン誘導体(1)は、物質としての耐熱性が高く、薄膜安定性や輝度半減寿命を向上させる効果もあわせ持つ。また、連続駆動やパルス駆動においても長期に渡って高輝度で安定した特性を得ることができる。
【0015】
式(1)中、X1、X2は、それぞれ独立に、酸素原子、イオウ原子、NH基またはCH2基を表す。特に、X1、X2の少なくとも一方が酸素原子またはイオウ原子であることが好ましい。さらに、X1とX2が同一の原子であってかつそれらが酸素原子またはイオウ原子であることが最も好ましく、次いでX1とX2の一方が酸素原子またはイオウ原子であり他方がそれとは異なる原子または基である組合せが好ましい。
【0016】
R1〜R18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または1価有機基を表す。ハロゲン原子としてはフッ素原子と塩素原子が好ましい。1価有機基としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアラルキル基、炭素数6〜18のアリールオキシ基、炭素数6〜18のアリールアミノ基、炭素数1〜18のアシル基または炭素数4〜18の芳香族性複素環基が好ましい。これら1価有機基の炭素原子に結合した水素原子の一部はハロゲン原子などの有機基以外の1価の置換基で置換されていてもよく、これら1価有機基の炭素−炭素結合間にはエーテル性酸素原子などの2価の原子が挿入されていてもよい。上記アルキル基、アルケニル基およびアルコキシ基の炭素数は6以下が好ましく、特に4以下が好ましい。アルキルアミノ基としてはモノアルキルアミノ基とジアルキルアミノ基があり、それらのアルキル基の炭素数はそれぞれ1〜4が好ましい。
【0017】
上記アリール基、並びにアラルキル基、アリールオキシ基およびアリールアミノ基におけるアリール基、としては置換基を有していてもよいフェニル基が好ましく、置換基を有する場合はその数は1〜5、置換基としては炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子が好ましい。アラルキル基におけるアルキル部分の炭素数は4以下が好ましく、アリールアミノ基はモノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基のいずれであってもよい。アシル基としては炭素数8以下のアシル基が好ましい。芳香族性複素環基としてはピリジル基、チオフェニル基、フリル基などがあり、その環には上記のような置換基が結合していてもよい。
【0018】
本発明有機EL素子は、基本的に陽極と陰極、およびそれらに挟まれた発光層から構成される。また後述するように陽極と陰極の間には正孔輸送層、電子輸送層、界面層、その他の中間層を有していてもよい。本発明におけるナフタセン誘導体(1)を含む層は通常発光層であるが、これに限られず陽極と陰極の間に存在する他の層に含まれていてもよい。ナフタセン誘導体(1)を含む発光層はナフタセン誘導体(1)以外に他の有機蛍光物質を含んでいてもよい。ナフタセン誘導体(1)を発光層以外の層に含ませる場合、発光層以外の層は有機物質を含む層であることが好ましく、例えば、正孔輸送層や界面層などがある。
【0019】
本発明有機EL素子としては、ナフタセン誘導体(1)と他の有機蛍光物質とを含む発光層を陽極と陰極の間に存在させた有機EL素子が好ましい。この場合、発光層におけるナフタセン誘導体(1)と他の有機蛍光物質の合計に対するナフタセン誘導体(1)の濃度は、0.01〜20mol%であることが好ましい。0.01mol%以上とすることにより他の有機蛍光物質からのエネルギー移動効率が高くすることができ、20mol%以下とすることにより濃度消光による発光輝度の低下を抑制することができる。ナフタセン誘導体(1)を発光層以外の層に含ませる場合、その層における有機物質との合計に対するナフタセン誘導体(1)濃度は0.01〜20mol%であることが好ましい。
【0020】
ナフタセン誘導体(1)以外の有機蛍光物質としては、蛍光量子収率が高く、陰極からの電子注入効率が高くかつ電子移動度が高い化合物が好ましく、公知の有機蛍光物質を使用できる。本発明においては特に下記式(2)で表される8−オキシキノリン系錯体が他の有機蛍光物質として好ましい。
【0021】
【化3】
【0022】
ただし、上記式(2)中、A1〜A6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、シアノ基または1価有機基を、Mは金属原子を、nは1〜3の整数を、Lは炭素数1〜12のアルコキシ基または炭素数6〜18のアリールオキシ基を、pは0〜2の整数を表す。ハロゲン原子としてはフッ素原子と塩素原子が好ましい。
【0023】
1価有機基としては、前記式(1)の説明に記載した1価有機基が好ましく、特に、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアラルキル基、炭素数6〜18のアリールオキシ基、炭素数6〜18のアリールアミノ基、炭素数1〜18のアシル基が好ましい。
【0024】
A1〜A6としてのアルキル基以下アシル基までの1価有機基としては、前記式(1)における好ましい範囲のアルキル基〜アシル基と同じ範囲の基が好ましい。Lとしてのアルコキシ基およびアリールオキシ基もまたこの好ましい範囲のアルコキシ基およびアリールオキシ基が好ましい。
【0025】
金属原子Mとしては、リチウム、銀、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、イットリウム、スカンジウム、ランタン、鉛、ジルコニウム、マンガン、ルテチウムなどがある。これらの中でも、高い蛍光量子収率を有するベリリウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、スカンジウムが好ましい。
【0026】
式(2)で表される8−オキシキノリン系錯体以外にも発光層の有機蛍光物質としては、テトラフェニルブタジエン、スチリル系色素、オキサジアゾール系色素などが使用することができる。その他、ポリフェニレンビニレン誘導体やポリフルオレン誘導体などの高分子化合物も使用できる。ただし、有機蛍光物質が高分子化合物の場合、前記ナフタセン誘導体(1)との合計に対するナフタセン誘導体(1)の好ましいモル濃度は、高分子化合物のモノマー単位ごとを1モルとして計算するものとする。
【0027】
本発明有機EL素子における発光層には有機蛍光物質(ナフタセン誘導体(1)や他の有機蛍光物質)以外に他の化合物をさらに含有していてもよい。他の化合物としては色素が好ましく、特にナフタセン誘導体(1)以外のドープ色素が好ましい。
【0028】
ナフタセン誘導体(1)以外のドープ色素としては、公知の蛍光性有機色素を使用することができる。例えば、スチルベン系色素、オキサゾール系色素、シアニン系色素、キサンテン系色素、オキサジン系色素、クマリン系色素、アクリジン系色素などのレーザー用色素やアントラセン誘導体、上記以外のナフタセン誘導体、ペンタセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体などの芳香族炭化水素系物質、DCM誘導体、ユーロピウム錯体、フェニルピリジンイリジウム錯体など幅広く使用することができる。このようなドープ色素を使用する場合、発光層におけるその濃度は、0.01〜20mol%が好ましい。
【0029】
以下、本発明の有機EL素子について図面に従って説明する。
図1は本発明の有機EL素子の基本的な構成の側面図であり、図2はその応用例の側面図である。図1の有機EL素子は、基板1、陽極2、発光層3、陰極4から構成されている。図2の有機EL素子は、陽極2と発光層3との間に正孔輸送層5と界面層6とを有し、さらに陰極4と発光層3の間に電子輸送層7と界面層8とを有する構成となっている。
【0030】
基板1は、有機EL素子の支持体であり、ガラス、プラスチックフィルム等の透明な基板が通常使用される。プラスチックフィルムの場合には、ポリカーボネート、ポリメタアクリレート、ポリサルホンなどの材料が使用される。
【0031】
陽極2は透明電極で、基板1の上に設けられる。この透明電極としては、通常、インジウム錫酸化物(ITO)薄膜、錫酸化物の膜を使用することができる。また、仕事関数の大きい銀、金等の金属、ヨウ化銅などの無機導電性物質、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子により構成されてもよい。
【0032】
この陽極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法等により行われることが一般的であるが、導電性高分子の場合には適当なバインダーとの溶液を基板上に塗布したり、電解重合により直接基板上に薄膜を作製することができる。陽極の膜厚は、必要とする透明性に依存するが、可視光の透過率が60%以上、特に80%以上、となる膜厚が好ましく、この場合の膜厚は5〜1000nmが好ましく、特に10〜500nmが好ましい。
【0033】
基本的な構成では、発光層3は、陽極2の上に設けられる。発光層3は前記のような有機材料からなる層である。発光層にナフタセン誘導体(1)を用いることにより、高い輝度での発光が可能であり、特に、黄色〜赤色の長波長領域の発光色の有機EL素子を得ることができる。また、連続駆動やパルス駆動においても長期に渡って安定した特性を得ることができる。このような発光層3の膜厚は、通常10〜200nmであり、好ましくは20〜80nmである。
【0034】
この発光層3の作製方法としては、真空蒸着法、ディップ法、スピンコート法、LB法等の種々の方法が適用できる。ピンホール等の欠陥の無いサブミクロンオーダーの均一な薄膜を作製するためには、特に、真空蒸着法、スピンコート法が好ましい。真空蒸着法では、ある一定割合で混合した材料を単一のボートやるつぼから昇華させる方法、複数のボートから複数の材料を別々に昇華させる方法などが適用できる。スピンコート法では、溶媒中に複数の材料を一定割合で溶解して製膜することが好ましい。
【0035】
陰極4は、発光層3に対して陽極と反対の側に設けられる。陰極には公知の有機EL用の陰極も含め種々のものが使用できる。例えば、マグネシウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金、アルミニウム等がある。陰極4の作製方法としては、真空蒸着法、ディップ法、スピンコート法、LB法、CVD法等の種々の公知の手法が適用できる。ピンホール等の欠陥の無いサブミクロンオーダーの均一な薄膜を作製するためには、特に、真空蒸着法、スピンコート法が好ましい。
【0036】
正孔輸送層5は、図2に示すように陽極2と発光層3との間に必要に応じて設けることができる。この正孔輸送層5に用いる正孔輸送材料としては、陽極2からの正孔注入障壁が低く、さらに正孔移動度が高い材料が使用できる。
【0037】
このような正孔輸送材料としては、公知の正孔輸送材料が使用できる。例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(以下「TPD」と略称する)や1,1’−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン等の芳香族ジアミン系化合物、特開平2−311591号公報で示されているヒドラゾン化合物が使用することができる。また、ポリ−N−ビニルカルバゾールやポリシランのような高分子材料も好ましく使用することができる(Appl.Phys.Lett.,59,2760(1991))。
【0038】
正孔輸送層5の材料としては、上記有機物質だけではなく無機物質である金属カルコゲン化物、金属ハロゲン化物、金属炭化物、ニッケル酸化物、鉛酸化物、銅の沃化物、鉛の硫化物等のp型化合物半導体やp型水素化非晶質シリコン、p型水素化非晶質炭化シリコン等も使用することができる。また、有機物質である前記正孔輸送材料とこのような無機物質とを混合して正孔輸送層5を形成することも好ましい。
【0039】
正孔輸送層5の耐熱性や薄膜均一性を向上させるために、正孔のトラップとなりにくいバインダー樹脂を正孔輸送材料と混合して使用することもできる。このようなバインダー樹脂としては、ポリエーテルサルホン、ポリカーボネート、ポリエステル等が挙げられる。バインダー樹脂の含有量は正孔輸送層の全材料に対し10〜50質量%が好ましく、この範囲の量であれば正孔移動度が低下するおそれが少ない。
【0040】
有機物質、無機物質のいずれの材料を使用した場合においても正孔輸送層5の膜厚は、通常10〜200nmが好ましく、特に20〜80nmが好ましい。
【0041】
陽極側の界面層6は、陽極2と正孔輸送層5との間に、リーク電流の防止、正孔注入障壁の低減、密着性向上等を目的として設けてもよい。このような陽極側界面層6の材料としては、特開平4−308688号公報にみられるようなトリフェニルアミンの誘導体である4,4’,4”−トリス{N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ}トリフェニルアミン(以下「MTDATA」と略称する)や4,4’,4”−トリス{N,N−ジフェニルアミノ}トリフェニルアミン(以下「TDATA」と略称する)や銅フタロシアニン等が好ましく使用できる。この界面層6を設けるときの膜厚は、5〜100nmで好ましく使用できる。
【0042】
電子輸送層7は、発光層3と陰極4との間に必要に応じて設けることができる。この電子輸送層7の電子輸送性物質としては、電子親和力が大きく電子の移動度が大きい物質が必要である。このような条件を満たす物質は、シクロペンタジエン誘導体(特開平2−289675号公報)、オキサジアゾール誘導体(特開平2−216791号公報)、ビススチリルベンゼン誘導体(特開平1−245087号公報)、p−フェニレン化合物(特開平3−33183号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、トリアゾール誘導体(特開平7−90260号公報)などが挙げられる。
【0043】
陰極側の界面層8を、電子輸送層7と陰極4との間に、必要に応じて設けることもできる。この界面層を設けることにより、駆動電圧の低減や発光効率の向上、長寿命化を達成することができる。この界面層は陰極からの電子注入を容易にする効果や陰極との密着性をあげる効果がある。
【0044】
このような陰極側界面層8の材料としては、フッ化リチウム(Appl.Phys.Lett.,70,152(1997))に代表されるアルカリ金属のフッ化物、アルカリ土類金属のフッ化物、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化アルミニウム、酸化リチウムなど アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物がある。また、アルカリ金属やアルカリ土類金属のβ−ジケトン錯体などの有機物も好ましい。このような界面層材料がそれ自体絶縁体である場合には、使用する膜厚は、通常5nm以下の薄膜であり、好ましくは2nm以下とすることにより陰極からの電子のトンネル注入が可能となると考えられる。
【0045】
これら正孔輸送層5、界面層6、電子輸送層7、界面層8の作製方法としては、真空蒸着法、ディップ法、スピンコート法、LB法、CVD法等の種々の公知の手法が適用できる。ピンホール等の欠陥の無いサブミクロンオーダーの均一な薄膜を作製するためには、特に、真空蒸着法、スピンコート法が好ましい。
【0046】
上述した図1や図2に示した各層は、有機EL素子として機能する範囲であれば、その層自体が複数の層で形成されていたり、それらの間にさらに他の層を挟んだりしてもよい。
【0047】
本発明の有機EL素子においては、大気中における保存安定性、駆動安定性を確保するために、陰極4表面や基板1表面などを高分子膜をコーティングしたりガラス封止により大気中の酸素や水分から遮断してもよい。
【0048】
本発明の有機EL素子は、全面発光体として使用して、液晶表示素子のバックライトや壁面照明素子として使用したり、パターニングして画素を形成し、ディスプレイとして使用したりすることができる。
【0049】
【実施例】
以下、本発明の具体的な態様を実施例および比較例により説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
本実施例および比較例で使用したナフタセン誘導体を以下に示す。なお、下記化合物の内式(3)、(4)、(6)、(7)、(8)、(9)および(10)の化合物はナフタセン誘導体(1)である。
【0050】
【化4】
【0051】
例1(実施例)
ガラス基板上にITOを膜厚200nmで蒸着して陽極2(シート抵抗7Ω/□)を形成した。この陽極2上に、真空蒸着法により下記のTPD(式11)を膜厚60nmに蒸着して正孔輸送層5を形成した。次いで、8−オキシキノリンのアルミニウム錯体である下記のAlq(式12)と上記のナフタセン誘導体(式3)を異なるボートを用いて膜厚60nmに共蒸着して発光層3を形成した。
【0052】
このときのナフタセン誘導体の発光層中の濃度は1.0mol%であった。最後に、MgとAgを共蒸着して膜厚200nmのMgAg(質量比10:1)陰極合金を形成して有機EL素子を作製した。共蒸着時の真空度は8.0×10-6torrであった。
【0053】
【化5】
【0054】
例2(実施例)
例1のナフタセン誘導体(式3)の代わりに上記のナフタセン誘導体(式4)を用いたこと以外は例1と同様にして、有機EL素子を作製した。この素子の発光層中のナフタセン誘導体濃度は1.0mol%であった。
【0055】
例3(比較例)
例1のナフタセン誘導体(式3)の代わりに下記のDCM(式13)を用いたこと以外は例1と同様にして、有機EL素子を作製した。この素子の発光層中のDCMの濃度は1.0mol%であった。
【0056】
【化6】
【0057】
例4(比較例)
例1のナフタセン誘導体(式3)の代わりに上記のナフタセン誘導体(式5)を用いたこと以外は例1と同様にして、有機EL素子を作製した。この素子の発光層中のナフタセン誘導体の濃度は1.0mol%であった。
【0058】
例5(実施例)
例1のナフタセン誘導体(式3)の代わりに上記のナフタセン誘導体(式6)を用いたこと以外は例1と同様にして、有機EL素子を作製した。この素子の発光層中のナフタセン誘導体の濃度は1.0mol%であった。
【0059】
例6(実施例)
例1と同様に形成した陽極2上にポリ−N−ビニルカルバゾール1質量部およびTPD1質量部をジクロロメタン500質量部に溶解させた溶液を用いて、回転数5000rpmでこの基板上に膜厚60nmでスピンコートし正孔輸送層とした。次いでAlqと上記のナフタセン誘導体(式7)を異なるボート用いて膜厚60nmに共蒸着して発光層3を形成した。
【0060】
このときのナフタセン誘導体の濃度は1.5mol%であった。最後に、AlLi合金(Li含有量0.07質量%)を膜厚200nmに蒸着して陰極を形成して有機EL素子を作製した。
【0061】
例7(実施例)
例6のナフタセン誘導体(式7)の濃度が24mol%であること以外は例6と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0062】
例8(実施例)
例1と同様に形成した陽極2上に真空蒸着法により銅フタロシアニンを膜厚15nmに蒸着して界面層6を形成した。ついで下記のNPD(式14)を膜厚45nmに蒸着して正孔輸送層5を形成した。
【0063】
次いでAlqとナフタセン誘導体(式8)とを異なるボート用いて膜厚60nmに共蒸着して発光層3を形成した。このときのナフタセン誘導体の濃度は1.5mol%であった。次に、フッ化リチウムを0.5nm蒸着して界面層8を形成した。最後に、Alを膜厚200nmに蒸着して陰極4を形成して有機EL素子を作製した。
【0064】
【化7】
【0065】
例9(実施例)
例8のナフタセン誘導体(式8)の代わりに上記ナフタセン誘導体(式9)を用いたこと以外は例8と同様にして、有機EL素子を作製した。この素子の発光層内のナフタセン誘導体(式9)の濃度は2.0mol%であった。
【0066】
例10(実施例)
例8のナフタセン誘導体(式8)の代わりに上記ナフタセン誘導体(式10)を用いたこと以外は例8と同様にして、有機EL素子を作製した。この素子の発光層内のナフタセン誘導体(式10)の濃度は1.5mol%であった。
【0067】
例11(評価)
上記各例(実施例および比較例)で作製した有機EL素子の発光色、10mA/cm2時の発光効率(lm/W)、駆動安定性(窒素中、5mA/cm2の一定電流で駆動したときに初期輝度が元の半分に低下するのに要した時間(単位:時間))に関する測定結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
【発明の効果】
本発明によれば、ナフタセン誘導体(1)を含む発光層を使用することにより、黄色〜赤色発光で高い発光効率と寿命に優れる有機EL素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機EL素子の基本的な例の側面図。
【図2】本発明の有機EL素子の応用例の側面図。
【符号の説明】
1:基板
2:陽極
3:発光層
4:陰極
5:正孔輸送層
6:界面層
7:電子輸送層
8:界面層
Claims (3)
- X1、X2が、それぞれ独立に、酸素原子またはイオウ原子である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 層が前記式(1)で表されるナフタセン誘導体と他の有機蛍光物質を含む発光層であって、ナフタセン誘導体と他の有機蛍光物質との合計に対し前記式(1)で表されるナフタセン誘導体を0.01〜20mol%含む請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
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