JP2004047329A - 有機エレクトロルミネッセンス素子及び表示装置 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELとも略記する)素子及び表示装置に関する。詳しくは、発光輝度に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子、及び該有機エレクトロルミネッセンス素子を有する表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
発光型の電子ディスプレイデバイスとして、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)がある。ELDの構成要素としては、無機エレクトロルミネッセンス素子や有機エレクトロルミネッセンス素子が挙げられる。
【0003】
無機エレクトロルミネッセンス素子は平面型光源として使用されて来たが、発光素子を駆動させるためには交流の高電圧が必要である。有機EL素子は、発光する化合物を含有する発光層を陰極と陽極で挟んだ構成を有し、発光層に電子及び正孔を注入して再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光放出(蛍光、燐光)を利用して発光する素子であり、数V〜数十V程度の電圧で発光が可能であり、更に、自己発光型であるため視野角に富み、視認性が高く、薄膜型の完全固体素子であるため省スペース、携帯性等の観点から注目されている。
【0004】
しかしながら、今後の実用化に向け、更なる低消費電力で効率良く高輝度に発光する有機EL素子の開発が望まれている。
【0005】
これまで、様々な有機EL素子が報告されている。例えばAppl.Phys.Lett.,Vol.51,913頁あるいは特開昭59−194393号に記載の正孔注入層と有機発光体層とを組み合わせたもの、特開昭63−295695号に記載の正孔注入層と電子注入輸送層とを組み合わせたもの、Jpn.Journal of Applied Phisycs,vol.127,No.2,269〜271頁に記載の正孔移動層と発光層と電子移動層とを組み合わせたものが、それぞれ開示されている。
【0006】
しかしながら、より高輝度な素子が求められており、エネルギー変換効率、発光量子効率の更なる向上が期待されている。又、発光寿命が短いという問題点も指摘されている。こうした経時での輝度劣化の要因は完全には解明されていないが、発光中のエレクトロルミネッセンス素子は自ら発する光、及びその時に発生する熱などによって薄膜を構成する有機化合物自体の分解、薄膜中での有機化合物の結晶化等、有機EL素子材料である有機化合物に由来する要因も指摘されている。
【0007】
又、電子輸送材料は、現在のところ、知見が少なく、反結合軌道を利用することも相俟って、実用に耐える有用なる高性能電子輸送材料は見い出されていない。例えば、九州大学の研究グループは、オキサジアゾール系誘導体である2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(t−BuPBD)をはじめ、薄膜安定性を向上させたオキサジアゾール二量体系誘導体の1,3−ビス(4−t−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾジル)ビフェニレン(OXD−1)、1,3−ビス(4−t−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾリル)フェニレン(OXD−7)(Jpn.J.Appl.Phys.vol.31(1992),1812頁)を提案している。
【0008】
又、山形大学の研究グループは、電子ブロック性に優れたトリアゾール系電子輸送材料を用いることによりによる白色発光の素子を作製している(Science,3 March 1995,Vol.267,1332頁)。更に、特開平5−331459号には、フェナントロリン誘導体が電子輸送材料として有用であることが記載されている。
【0009】
しかし、従来の電子輸送材料では、薄膜形成能が低く、容易に結晶化が起こるため、発光素子が破壊されてしまう問題があり、実用に耐える素子性能を発現できなかった。
【0010】
これらの問題を解決する有機EL材料として、特開平9−87616号、同9−194487号、特開2000−186094に、分子内に珪素原子を含む化合物を発光材料又は電子輸送材料として用いる例が記載されているが、発光効率及び発光寿命の両立については十分ではなかった。
【0011】
又、発光層をホスト化合物及び微量の蛍光体で構成することにより、発光効率の向上を達成するという手法が報告されている。例えば特許3093796号では、スチルベン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体又はトリススチリルアリーレン誘導体に、微量の蛍光体をドープし、発光輝度の向上、素子の長寿命化を達成している。
【0012】
又、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム錯体をホスト化合物として、これに微量の蛍光体をドープした有機発光層を有する素子(特開昭63−264692号)、同様にキナクリドン系色素をドープした有機発光層を有する素子(特開平3−255190号)が知られている。
【0013】
以上のように、蛍光量子収率の高い蛍光体をドープすることによって、従来の素子に比べて発光輝度を向上させている。
【0014】
しかし、上記のドープされる微量の蛍光体からの発光は、励起一重項からの発光であり、励起一重項からの発光を用いる場合、一重項励起子と三重項励起子の生成比が1:3であるため発光性励起種の生成確率が25%であることと、光の取出し効率が約20%であるため、外部取出し量子効率(ηext)の限界は5%とされている。ところが、プリンストン大から励起三重項からの燐光発光を用いる有機EL素子が報告されて以来(例えばM.A.Baldo et al., nature,395巻,151〜154頁,1998年)、室温で燐光を示す材料の研究が活発になってきている(M.A.Baldo et al.,nature,403巻,17号,750〜753頁,2000年、米国特許6,097,147号など)。
【0015】
励起三重項を使用すると、内部量子効率の上限が100%となるため、励起一重項の場合に比べて原理的に発光効率が最大4倍となり、冷陰極管とほぼ同等の性能が得られ照明用にも応用可能であり注目されている。
【0016】
燐光性化合物をドーパントとして用いる時のホストは、燐光性化合物の発光極大波長よりも短波な領域に発光極大波長を有することが必要であることは勿論であるが、その他にも満たすべき条件があることが判って来た。
【0017】
The 10th International Workshop on Inorganic and Organic Electroluminescence(EL ’00,浜松)では、燐光性化合物について幾つかの報告が為されている。例えば、Ikaiらは、ホール輸送性の化合物を燐光性化合物のホストとして用いている。又、M.E.Tompsonらは、各種電子輸送性材料を燐光性化合物のホストとして、これらに新規なイリジウム錯体をドープして用いている。更に、Tsutsuiらは、ホールブロック層の導入により高い発光効率を得ている。
【0018】
尚、ホールブロック層とは、通常の有機EL素子で使われている電子輸送層と構成的には同じものであるが、その機能が電子輸送機能よりも発光層から陰極側に漏れ出すホールの移動を阻止する機能が有力であるために、ホールブロック層と名付けられているものであり、一種の電子輸送層と解釈することもできる。従って、本発明においては、ホールブロック層も電子輸送層と称することとし、その層で用いられる材料(ホールブロッカー)も電子輸送材料と称す。
【0019】
燐光性化合物のホスト化合物については、例えばC.Adachi et al.,Appl.Phys.Lett.,77巻,904頁(2000年)等に詳しく記載されているが、高輝度の有機EL素子を得るためにホスト化合物に必要とされる性質について、より新しい観点からのアプローチが必要である。
【0020】
しかし、何れの報告も、素子の発光輝度の向上及び耐久性を両立し得る構成は得られていない。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、発光輝度の向上及び耐久性(発光寿命)の両立を達成した有機エレクトロルミネッセンス素子、及び該有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた、発光輝度の高い、長寿命な表示装置を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下に示す構成により達成される。
【0023】
1)前記一般式(1)で表される化合物の少なくとも1種を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0024】
2)前記一般式(1)で表される化合物を電子輸送層に含有する1)記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0025】
3)前記一般式(1)で表される化合物を発光層に含有する1)記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0026】
4)ホスト化合物及び燐光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、ホスト化合物が前記一般式(1)で表される化合物である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0027】
5)燐光性化合物がイリジウム化合物、オスミウム化合物又は白金化合物である4)記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0028】
6)燐光性化合物がイリジウム化合物である4)記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0029】
7)1)〜6)の何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を有する表示装置。
【0030】
本発明は、特定構造のシクロファン化合物を用いて有機EL素子の発光輝度の向上及び耐久性の両立を満足させ、又、シクロファン化合物を燐光発光用のホスト化合物として用いること、及び/又はフェニルピリジン化合物を電子輸送材料(ホールブロッカー)として用いることにより、発光輝度の向上及び耐久性の両立を達成したものである。
【0031】
以下に本発明を詳細に説明する。まず、一般式(1)で表される化合物について説明する。
【0032】
一般式(1)において、R1及びR2で表される置換基としては、アルキル基(メチル、エチル、i−プロピル、ヒドロキシエチル、メトキシメチル、トリフルオロメチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル等)、アルケニル基(ビニル、プロペニル、スチリル等)、アルキニル基(エチニル等)、アリール基(フェニル、ナフチル、p−トリル、p−クロロフェニル等)、アルキルオキシ基(メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、ブトキシ等)、アリールオキシ基(フェノキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ、i−プロピルチオ等)、アリールチオ基(フェニルチオ等)、ハロゲン原子(弗素、塩素、臭素、沃素等)、アミノ基(ジメチルアミノ、メチルアミノ、ジフェニルアミノ等)シアノ基、ニトロ基、複素環基(ピロール、ピロリジル、ピラゾリル、イミダゾリル、ピリジル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル等)等が挙げられる。芳香族基としては、上記アリール基及びヘテロアリール基(ピロール、ピラゾリル、イミダゾリル、ピリジル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル等)が挙げられ、それぞれの置換基は更に任意の置換基で置換されてもよい。又、隣接する置換基同士が互いに縮合し環を形成してもよい。
【0033】
R1及びR2で表される置換基のうち特に好ましいものは、アリール基又はアルケニル基である。
【0034】
R3〜R14は水素原子又は置換基を表すが、置換基の具体例は前記R1と同義である。
【0035】
一般式(1)で表される化合物(以下、本発明の化合物とも言う)は、固体状態において強い蛍光を持つ化合物であり、電場発光性にも優れており、発光材料として有効に使用できる。又、金属電極からの優れた電子注入性及び電子輸送性に極めて優れているため、他の発光材料又は本発明の化合物を発光材料として用いた素子において、本発明の化合物を電子輸送材料(又はホールブロッカー)として使用した場合、優れた発光効率を示す。
【0036】
以下に本発明の化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
【化2】
【0038】
【化3】
【0039】
【化4】
【0040】
【化5】
【0041】
【化6】
【0042】
【化7】
【0043】
又、本発明者等は、燐光性化合物のホスト化合物について鋭意検討を重ねた結果、本発明のシクロファン化合物をホスト化合物として用いて、有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した場合に、素子の発光輝度及び寿命が改善されることを見い出した。
【0044】
本発明のホスト化合物とは、2種以上の化合物で構成される発光層中において、混合比(質量)の最も多い化合物であり、それ以外の化合物はドーパント化合物という。例えば、発光層を化合物A、化合物Bと言う2種で構成し、その混合比がA:B=10:90であれば、化合物Aがドーパント化合物であり、化合物Bがホスト化合物である。更に、発光層を化合物A、化合物B、化合物Cの3種から構成し、その混合比がA:B:C=5:10:85であれば、化合物A及び化合物Bがドーパント化合物であり、化合物Cがホスト化合物である。本発明における燐光性化合物はドーパント化合物の1種である。
【0045】
本発明の燐光性化合物とは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、燐光量子収率が25℃において0.001以上の化合物である。好ましくは0.01以上であり、更に好ましくは0.1以上である。
【0046】
上記燐光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版,丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中での燐光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に用いられる燐光性化合物は、任意の溶媒の何れかにおいて上記燐光量子収率が達成されればよい。好ましくは、元素の周期表でVIII属の金属を含有する錯体系化合物であり、更に好ましくはイリジウム、オスミウム又は白金錯体系化合物である。より好ましくはイリジウム錯体系化合物である。
【0047】
以下に、本発明で用いられる燐光性化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。これらの化合物は、例えばInorg.Chem.40巻,1704−1711に記載の方法等により合成できる。
【0048】
【化8】
【0049】
【化9】
【0050】
【化10】
【0051】
又、別の形態では、ホスト化合物と燐光性化合物の他に、燐光性化合物からの発光の極大波長よりも長波な領域に、蛍光極大波長を有する蛍光性化合物を少なくとも1種含有する場合もある。この場合、ホスト化合物と燐光性化合物からのエネルギー移動で、有機EL素子としての電界発光は蛍光性化合物からの発光が得られる。
【0052】
蛍光性化合物として好ましいのは、溶液状態で蛍光量子収率が高いものである。ここで蛍光量子収率は0.1以上、特に0.3以上であることが好ましい。具体的には、クマリン系,ピラン系,シアニン系,クロコニウム系,スクアリウム系,オキソベンツアントラセン系,フルオレッセイン系,ローダミン系,ピリリウム系,ペリレン系,スチルベン系,ポリチオフェン系の各色素、又は希土類錯体系蛍光体などが挙げられる。
【0053】
ここでの蛍光量子収率も、第4版実験化学講座7(前出)分光IIの362頁に記載の方法により測定することが出来る。
【0054】
以下、エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)について説明する。
EL素子における発光層は、広義の意味では、陰極と陽極からなる電極に電流を流した際に発光する層のことを指す。具体的には、陰極と陽極からなる電極に電流を流した際に発光する蛍光性化合物を含有する層のことを指す。通常、エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)は一対の電極の間に発光層を挟持した構造をとる。本発明の有機EL素子は、必要に応じ発光層の他に、正孔輸送層、電子輸送層、陽極バッファー層及び陰極バッファー層等を有し、陰極と陽極で挟持された構造を採る。
【0055】
具体的には、
(i)陽極/発光層/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(iii)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(v)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極などで示される構造がある。
【0056】
上記化合物を用いて発光層を形成する方法としては、例えば蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の方法により薄膜を形成する方法があるが、特に分子堆積膜であることが好ましい。ここで、分子堆積膜とは、上記化合物の気相状態から沈着され形成された薄膜や、該化合物の溶融状態又は液相状態から固体化され形成された膜のことである。通常、この分子堆積膜はLB法により形成された薄膜(分子累積膜)と、凝集構造、高次構造の相違やそれに起因する機能的な相違により区別することができる。
【0057】
又、この発光層は、特開昭57−51781号に記載されるように、樹脂などの結着材と共に発光材料として上記化合物を溶剤に溶かして溶液とした後、これをスピンコート法などにより塗布して薄膜形成することにより得られる。
【0058】
このようにして形成された発光層の膜厚については特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、通常は5nm〜5μmの範囲である。
【0059】
本発明に記載の燐光性化合物は、具体的には、前述のように重金属錯体系化合物であり、好ましくは元素の周期表でVIII属の金属を中心金属とする錯体系化合物であり、更に好ましくは、オスミウム、イリジウム又は白金錯体系化合物である。
【0060】
これらの燐光性化合物としては、前記のような燐光量子収率が、25℃において0.001以上である他、前記ホストとなる蛍光性化合物の蛍光極大波長よりも長い燐光発光極大波長を有するものであり、これにより、例えば、ホストとなる蛍光性化合物の発光極大波長より長波の燐光性化合物を用いて燐光性化合物の発光、即ち三重項状態を利用した、ホスト化合物の蛍光極大波長よりも長波において電界発光するEL素子を得ることができる。従って、用いられる燐光性化合物の燐光発光極大波長としては特に制限されるものではなく、原理的には、中心金属、配位子、配位子の置換基等を選択することで得られる発光波長を変化させることができる。
【0061】
例えば350〜440nmの領域に蛍光極大波長を有する蛍光性化合物をホスト化合物として用い、例えば緑の領域に燐光を持ったイリジウム錯体を用いることで緑領域に電界発光する有機EL素子を得ることが出来る。
【0062】
又、別の形態では、前記のように、ホスト化合物としての蛍光性化合物Aと燐光性化合物の他に、燐光性化合物からの発光の極大波長よりも長波な領域に、蛍光極大波長を有するもう一つの蛍光性化合物Bを少なくとも1種含有する場合もあり、蛍光性化合物Aと燐光性化合物からのエネルギー移動で、有機EL素子としての電界発光は蛍光性化合物Bからの発光を得ることも出来る。
【0063】
本発明の蛍光性化合物が発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編,東京大学出版会,1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(ミノルタ社製)で測定した結果をCIE色度座標に当て嵌めた時の色で決定される。
【0064】
ホスト化合物の分子量は600〜2000であることが好ましく、この分子量範囲にあるとTg(ガラス転移温度)が上昇し、熱安定性が向上し、素子寿命が改善される。より好ましくは分子量が800〜2000である。又、Tgは100℃以上であることが好ましい。又、この範囲内の分子量であると、発光層を真空蒸着法により容易に作製することができ、有機EL素子の製造が容易になる。更に、有機EL素子中における蛍光性化合物の熱安定性もよくなる。
【0065】
次に正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層等、発光層と組み合わせてEL素子を構成するその他の層について説明する。
【0066】
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有し、この正孔注入層、正孔輸送層を陽極と発光層の間に介在させることにより、より低い電界で多くの正孔が発光層に注入され、その上、発光層に陰極、電子注入層又は電子輸送層より注入された電子は、発光層と正孔注入層もしくは正孔輸送層の界面に存在する電子の障壁により、発光層内の界面に累積され発光効率が向上するなど、発光性能の優れた素子となる。この正孔注入層、正孔輸送層の材料(以下、正孔注入材料、正孔輸送材料と言う)については、前記の陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有する性質を持つものであれば特に制限はなく、従来、光導伝材料において、正孔の電荷注入輸送材料として慣用されているものや、EL素子の正孔注入層、正孔輸送層に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0067】
上記正孔注入材料、正孔輸送材料は、正孔の注入もしくは輸送、電子の障壁性の何れかを有するものであり、有機物,無機物の何れであってもよい。この正孔注入材料、正孔輸送材料としては、例えばトリアゾール誘導体,オキサジアゾール誘導体,イミダゾール誘導体,ポリアリールアルカン誘導体,ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体,フェニレンジアミン誘導体,アリールアミン誘導体,アミノ置換カルコン誘導体,オキサゾール誘導体,スチリルアントラセン誘導体,フルオレノン誘導体,ヒドラゾン誘導体,スチルベン誘導体,シラザン誘導体,アニリン系共重合体、また、導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。正孔注入材料、正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0068】
上記芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD)、2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン、N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル、N,N,N−トリ(p−トリル)アミン、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン、4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン、3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン、N−フェニルカルバゾール、更には、米国特許5,061,569号に記載される2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号に記載されるトリフェニルアミンユニットが三つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
【0069】
更に、これらの材料を高分子鎖に導入した、又は、これらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0070】
又、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。この正孔注入層、正孔輸送層は、上記正孔注入材料、正孔輸送材料を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。
【0071】
正孔注入層、正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度である。この正孔注入層、正孔輸送層は、上記材料の1種又は2種以上から成る1層構造であってもよく、同一組成又は異種組成の複数層から成る積層構造であってもよい。
【0072】
更に、必要に応じて用いられる電子輸送層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
【0073】
この電子輸送層に用いられる材料(以下、電子輸送材料と言う)の具体例としては、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレンなどの複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体などが挙げられる。更に、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。
【0074】
更に、これらの材料を高分子鎖に導入した、又は、これらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0075】
又、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及び、これらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホ基などで置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。又、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
【0076】
この電子輸送層は、上記化合物を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の薄膜形成法により製膜して形成することができる。電子輸送層としての膜厚は特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲で選ばれる。電子輸送層は、これらの電子輸送材料1種又は2種以上から成る1層構造でもよいし、あるいは、同一組成又は異種組成の複数層から成る積層構造でもよい。
【0077】
又、本発明においては、蛍光性化合物は発光層のみに限定することはなく、発光層に隣接した正孔輸送層、又は電子輸送層に前記燐光性化合物のホスト化合物となる蛍光性化合物と同じ領域に蛍光極大波長を有する蛍光性化合物を少なくとも1種含有させてもよく、それにより、更にEL素子の発光効率を高めることができる。
【0078】
これらの正孔輸送層や電子輸送層に含有される蛍光性化合物としては、発光層に含有されるものと同様に蛍光極大波長が350〜440nm、更に好ましくは390〜410nmの範囲にある蛍光性化合物が用いられる。
【0079】
本発明の有機EL素子に好ましく用いられる基盤は、ガラス、プラスチックなどの種類には特に限定はなく、又、透明のものであれば特に制限はない。本発明のEL素子に好ましく用いられる基盤としては、例えばガラス、石英、光透過性プラスチックフィルムを挙げることができる。
【0080】
光透過性プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等から成るフィルム等が挙げられる。
【0081】
次に、該有機EL素子を作製する好適な例を説明する。例として、前記の陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極から成るEL素子の作製法について説明する。
【0082】
まず適当な基板上に、所望の電極用物質、例えば陽極用物質から成る薄膜を、1μm以下、好ましくは10〜200nmの範囲の膜厚になるよう、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させて陽極を作製する。次に、この上に素子材料である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層/電子注入層から成る薄膜を形成させる。
【0083】
更に、陽極と発光層又は正孔注入層の間、及び、陰極と発光層又は電子注入層との間にはバッファー層(電極界面層)を存在させてもよい。
【0084】
バッファー層とは、駆動電圧低下や発光効率向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日,エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、陽極バッファー層と陰極バッファー層とがある。
【0085】
陽極バッファー層は、特開平9−45479号、同9−260062号、同8−288069号等にも詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。又、陰極バッファー層は、特開平6−325871号、同9−17574号、同10−74586号等にも詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、弗化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、弗化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウム、酸化リチウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。
【0086】
上記バッファー層は極く薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その膜厚は0.1〜100nmの範囲が好ましい。
【0087】
更に上記基本構成層の他に、必要に応じてその他の機能を有する層を積層してもよく、例えば特開平11−204258号、同11−204359号、及び「有機EL素子とその工業化最前線(前出)」の237頁等に記載される正孔阻止(ホールブロック)層などのような機能層を有していてもよい。
【0088】
バッファー層は、陰極バッファー層又は陽極バッファー層の少なくとも何れか一つの層内に、本発明の化合物の少なくとも1種が存在して、発光層として機能してもよい。
【0089】
次に、有機EL素子の電極について説明する。有機EL素子の電極は、陰極と陽極から成る。
【0090】
この陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。
【0091】
上記陽極は、蒸着やスパッタリング等の方法により、これらの電極物質の薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、又はパターン精度を余り必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、又、陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0092】
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属などが挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化などに対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第2金属との混合物、例えばマグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物などが好適である。
【0093】
上記陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させることにより、作製することができる。又、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜1μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。尚、発光を透過させるため、有機EL素子の陽極又は陰極の何れか一方が透明又は半透明であれば、発光効率が向上するので好都合である。
【0094】
次に有機EL素子の作製方法について説明する。
薄膜化の方法としては、前記の如くスピンコート法、キャスト法、蒸着法などがあるが、均質な膜が得られ易く、かつピンホールが生成し難い等の点から、真空蒸着法が好ましい。薄膜化に真空蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は、使用する化合物の種類、分子堆積膜の目的とする結晶構造、会合構造などにより異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10−6〜10−3Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、膜厚5nm〜5μmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
【0095】
前記の様に、適当な基板上に、所望の電極用物質、例えば陽極用物質から成る薄膜を1μm以下、好ましくは10〜200nmの範囲の膜厚になるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させて陽極を作製した後、該陽極上に前記の通り正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層/電子注入層から成る各層薄膜を形成させた後、その上に陰極用物質から成る薄膜を1μm以下、好ましくは50〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極を設けることにより、所望の有機EL素子が得られる。
【0096】
この有機EL素子の作製は、一回の真空引きで一貫してこの様に正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、発光層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
【0097】
このようにして得られた有機EL素子に直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧5〜40V程度を印加すると、発光が観測できる。又、逆の極性で電圧を印加しても、電流は流れずに発光は全く生じない。更に、交流電圧を印加する場合には、陽極が+、陰極が−の状態になった時のみ発光する。尚、印加する交流の波形は任意でよい。
【0098】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0099】
実施例1
有機EL素子OLED1−1〜1−7を以下のように作製した。
【0100】
〈有機EL素子の作製〉
陽極としてガラス上にITOを150nm成膜した基板(NHテクノグラス社製:NA−45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をi−プロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
【0101】
この透明支持基板を、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、一方、モリブデン製抵抗加熱ボートにα−NPDを200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートに比較化合物1を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにバソキュプロイン(BCP)を200mg入れ、更に別のモリブデン製抵抗加熱ボートにAlq3を200mg入れ、真空蒸着装置に取り付けた。
【0102】
真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、α−NPDの入った前記加熱ボートに通電・加熱し、蒸着速度0.1〜0.3nm/secで透明支持基板に蒸着し、膜厚50nmの正孔輸送層を設けた。蒸着時の基板温度は室温であった。
【0103】
次いで、比較化合物1の入った前記加熱ボートに通電・加熱し、蒸着速度0.1〜0.3nm/secで30nmの発光層を設けた。更に、BCPの入った前記加熱ボートを通電・加熱し、膜厚10nmの正孔阻止層を設けた。更に、Alq3の入った前記加熱ボートを通電・加熱し、蒸着速度0.1〜0.3nm/secで膜厚20nmの電子輸送層を設けた。
【0104】
次に、真空槽を開け、電子注入層の上にステンレス鋼製の長方形穴あきマスクを設置し、一方、モリブデン製抵抗加熱ボートにマグネシウム3gを入れ、タングステン製の蒸着用バスケットに銀を0.5g入れ、再び真空槽を2×10−4Paまで減圧した後、マグネシウム入りのボートに通電して蒸着速度1.5〜2.0nm/secでマグネシウムを蒸着し、この際、同時に銀のバスケットを加熱し、蒸着速度0.1nm/secで銀を蒸着し、前記マグネシウムと銀との混合物から成る陰極とすることで、表1に示す比較用有機EL素子OLED1−1を作製した。
【0105】
上記OLED1−1の比較化合物を、表1記載の本発明の化合物に替えた以外はOLED1−1と同様にして、OLED1−2〜1−7を作製した。発光色は青色から緑色を示した。
【0106】
【化11】
【0107】
〈有機EL素子の発光輝度及び発光寿命の評価〉
これらの素子7種を、23℃・乾燥窒素ガス雰囲気下で10V直流電圧印加による連続点灯を行い、点灯開始時の発光輝度(cd/m2)及び輝度の半減する時間(発光寿命)を測定した。発光輝度はOLED1−1を100とした時の相対値で表し、発光寿命もOLED1−1の輝度が半減する時間を100とした時の相対値で表した。発光輝度(cd/m2)については、ミノルタ製CS−1000を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
表1より、本発明の化合物を用いた有機EL素子は、点灯開始時の発光輝度及び発光寿命が改善されているのが判る。
【0110】
実施例2
本発明の化合物1−14とDCM−2を100:1の質量比で蒸着した膜厚30nmの発光層を使用する以外は、実施例1と同様の方法で有機EL素子OLED2−1を作製した。
【0111】
このOLED2−1を23℃・乾燥窒素ガス雰囲気下で10V直流電圧を印加すると、赤色の発光が得られた。
【0112】
上記OLED2−1のDCM−2をQd−2、BCzVBiに替えることによって、それぞれ緑色、青色の発光が得られた。
【0113】
【化12】
【0114】
実施例3
〈有機EL素子の作製〉
陽極としてガラス上にITOを150nm成膜した基板(NA−45:前出)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をi−プロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。この透明支持基板を、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。一方、モリブデン製抵抗加熱ボートに、m−MTDATXAを200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにDPVBiを200mg入れ、又、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにBCPを200mg入れ、真空蒸着装置に取り付けた。
【0115】
真空槽を4×10−4Paまで減圧し、m−MTDATXAの入った前記加熱ボートに通電・加熱し、蒸着速度0.1〜0.3nm/secで透明支持基板に膜厚25nmで蒸着し、更に、DPVBiの入った前記加熱ボートに通電・加熱し、蒸着速度0.1〜0.3nm/secで膜厚20nmで蒸着し、発光層を設けた。蒸着時の基板温度は室温であった。
【0116】
次いで、BCPの入った前記加熱ボートに通電・加熱し、蒸着速度0.1〜0.3nm/secで30nmの電子輸送層を設けた。
【0117】
次に、真空槽を開け、電子輸送層の上にステンレス鋼製の長方形穴あきマスクを設置し、一方、モリブデン製抵抗加熱ボートにマグネシウム3gを入れ、タングステン製の蒸着用バスケットに銀を0.5g入れ、再び真空槽を2×10−4Paまで減圧した後、マグネシウム入りのボートに通電して蒸着速度1.5〜2.0nm/secでマグネシウムを蒸着し、この際、同時に銀のバスケットを加熱し、蒸着速度0.1nm/secで銀を蒸着し、前記マグネシウムと銀との混合物から成る陰極とすることで、表2に示す比較用有機EL素子OLED3−1を作製した。
【0118】
上記OLED3−1のBCPを表2に記載の本発明の化合物に替えた以外はOLED3−1と同様にして、OLED3−2〜3−9を作製した。
【0119】
【化13】
【0120】
〈有機EL素子の発光輝度及び発光寿命の評価〉
これらの素子9種を23℃・乾燥窒素ガス雰囲気下で10V直流電圧印加による連続点灯を行い、点灯開始時の発光輝度及び発光寿命を測定した。発光輝度、発光寿命の何れもOLED3−1を100とした時の相対値で表した。結果を表2に示す。尚、全ての素子において発光色は青色だった。
【0121】
【表2】
【0122】
表2より、本発明の化合物を用いた有機EL素子は、点灯開始時の発光輝度及び発光寿命が改善されているのが判る。特に、発光寿命の改善が著しい。
【0123】
実施例4
実施例3で作製した有機EL素子OLED3−2の陰極をAlに置き換え、電子輸送層と陰極の間に弗化リチウムを膜厚0.5nm蒸着して陰極バッファー層を設けた以外は同様にして、有機EL素子OLED4−1を作製した。
【0124】
実施例3と同様に点灯開始時の発光輝度及び発光寿命を測定したところ、OLED3−1との相対比較で、発光輝度は214、発光寿命は405となった。又、OLED3−2〜9についても、同様に陰極バッファー層を導入すると更に効果的であった。
【0125】
実施例5
実施例3で用いた有機EL素子の発光層をDPVBiから、それぞれAlq3又はAlq3とDCM−2を100:1の質量比で蒸着した発光層に置き替えた以外は同様にして、有機EL素子を作製し、点灯開始時の発光輝度及び発光寿命を測定した。その結果、本発明の化合物を電子輸送層に用いた有機EL素子において、発光輝度及び発光寿命の改善が確認された。
【0126】
尚、Alq3を発光層に用いた場合は緑色の発光が得られ、Alq3とDCM−2を100:1で共蒸着した発光層からは赤色の発光が得られた。
【0127】
実施例6
〈有機EL素子の作製〉
有機EL素子OLED6−1〜6−8を以下のように作製した。
【0128】
陽極として100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上に、ITOを150nm成膜した基板(NA−45:前出)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をi−プロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
【0129】
この透明支持基板を、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、一方、モリブデン製抵抗加熱ボートにα−NPDを200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにCBPを200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにBCPを200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにIr−1(燐光性化合物)を100mg入れ、更に別のモリブデン製抵抗加熱ボートにAlq3を200mg入れ、真空蒸着装置に取り付けた。
【0130】
真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、α−NPDの入った前記加熱ボートに通電・加熱し、蒸着速度0.1nm/secで透明支持基板に蒸着し、膜厚45nmの正孔輸送層を設けた。更に、CBPとIr−1の入った前記加熱ボートに通電・加熱し、それぞれ蒸着速度0.1nm/sec、0.01nm/secで前記正孔輸送層上に共蒸着して膜厚20nmの発光層を設けた。尚、蒸着時の基板温度は室温であった。更に、BCPの入った前記加熱ボートに通電・加熱し、蒸着速度0.1nm/secで前記発光層の上に蒸着して膜厚10nmの正孔阻止の役割も兼ねた電子輸送層を設けた。その上に、更にAlq3の入った前記加熱ボートに通電・加熱し、蒸着速度0.1nm/secで前記電子輸送層の上に蒸着し、更に膜厚40nmの電子注入層を設けた。尚、蒸着時の基板温度は室温であった。
【0131】
次に、LiFを0.5nm及びAlを110nm蒸着して陰極を形成し、有機EL素子OLED6−1を得た。
【0132】
上記において、発光層のCBPを表3に示す化合物に置き換えた以外は全く同じ方法で、有機EL素子OLED6−2〜6−9を作製した。
【0133】
【化14】
【0134】
〈有機EL素子の発光輝度及び発光寿命の評価〉
OLED6−1では、初期駆動電圧3Vで電流が流れ始め、発光層のドーパントである燐光性化合物からの緑色の発光を示した。OLED6−1〜6−9を23℃・乾燥窒素ガス雰囲気下で9V直流電圧を印加した時の発光輝度及び発光寿命を測定した。発光輝度、発光寿命共にOLED6−1を100とした時の相対値で表した。結果を表3に示す。
【0135】
【表3】
【0136】
表3から明らかなように、本発明の化合物をホストに用いたEL素子は、発光輝度が高く、発光寿命が長いことから、有機EL素子として非常に有用であることが判った。
【0137】
更に、燐光化合物をIr−12又はIr−9に変更した以外はOLED6−1〜6−9と同様にして作製した有機EL素子においても同様の効果が得られた。
【0138】
尚、Ir−12を用いた素子からは青色の発光が、Ir−9を用いた素子からは赤色の発光が得られた。
【0139】
実施例7
〈有機EL素子の作製〉
実施例6で作製した有機EL素子OLED6−1の電子輸送物質BCPを表4に示す本発明の化合物に置き換えた以外は全く同様にして有機EL素子OLED7−1〜7−9を作製した。
【0140】
〈有機EL素子の発光輝度及び発光寿命の評価〉
各有機EL素子について実施例6と同様に、発光輝度及び発光寿命の評価を行った。
【0141】
OLED6−1では、初期駆動電圧3Vで電流が流れ始め、発光層のドーパントである燐光性化合物からの緑色の発光を示した。OLED6−1の23℃・乾燥窒素ガス雰囲気下で9V直流電圧を印加した時の発光輝度及び発光寿命を測定した。発光輝度、発光寿命は共にOLED6−1を100とした時の相対値で表した。結果を表4に示す。
【0142】
【表4】
【0143】
表4から明らかなように、本発明の化合物を電子輸送層(正孔阻止層)に用いたEL素子は、発光輝度が高く、発光寿命が長いことから、有機EL素子として非常に有用であることが判る。
【0144】
燐光性化合物をIr−12又はIr−9に変更した以外はOLED7−1〜7−9と同様にして作製した有機EL素子においても同様の効果が得られた。尚、Ir−12を用いた素子からは青色の発光が、Ir−9を用いた素子からは赤色の発光が得られた。
【0145】
実施例8
実施例6で作製した、それぞれ赤色、緑色、青色発光有機EL素子を同一基板上に並置し、図1に示すアクティブマトリクス方式フルカラー表示装置を作製した。
【0146】
図1には作製したフルカラー表示装置の表示部の模式図のみを示した。即ち、同一基板上に、複数の走査線2及びデータ線3を含む配線部と、並置した複数の画素1(発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素等)とを有し、配線部の走査線2及び複数のデータ線3は、それぞれ導電材料から成り、走査線2とデータ線3は格子状に直交し、直交する位置で画素1に接続している(詳細は図示せず)。前記複数画素1は、それぞれの発光色に対応した有機EL素子、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタと駆動トランジスタそれぞれが設けられたアクティブマトリクス方式で駆動されており、走査線2から走査信号が印加されると、データ線3から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。この様に赤、緑、青の各画素を適宜、並置することによってフルカラー表示が可能となる。
【0147】
該フルカラー表示装置を駆動することにより、輝度の高い鮮明なフルカラー動画表示が得られた。
【0148】
【発明の効果】
本発明により、発光輝度の向上及び耐久性の両立を達成した有機エレクトロルミネッセンス素子、及び該有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた表示装置が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で作製したフルカラー表示装置の模式図。
【符号の説明】
A 表示部
1 画素
2 走査線
3 データ線
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELとも略記する)素子及び表示装置に関する。詳しくは、発光輝度に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子、及び該有機エレクトロルミネッセンス素子を有する表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
発光型の電子ディスプレイデバイスとして、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)がある。ELDの構成要素としては、無機エレクトロルミネッセンス素子や有機エレクトロルミネッセンス素子が挙げられる。
【0003】
無機エレクトロルミネッセンス素子は平面型光源として使用されて来たが、発光素子を駆動させるためには交流の高電圧が必要である。有機EL素子は、発光する化合物を含有する発光層を陰極と陽極で挟んだ構成を有し、発光層に電子及び正孔を注入して再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光放出(蛍光、燐光)を利用して発光する素子であり、数V〜数十V程度の電圧で発光が可能であり、更に、自己発光型であるため視野角に富み、視認性が高く、薄膜型の完全固体素子であるため省スペース、携帯性等の観点から注目されている。
【0004】
しかしながら、今後の実用化に向け、更なる低消費電力で効率良く高輝度に発光する有機EL素子の開発が望まれている。
【0005】
これまで、様々な有機EL素子が報告されている。例えばAppl.Phys.Lett.,Vol.51,913頁あるいは特開昭59−194393号に記載の正孔注入層と有機発光体層とを組み合わせたもの、特開昭63−295695号に記載の正孔注入層と電子注入輸送層とを組み合わせたもの、Jpn.Journal of Applied Phisycs,vol.127,No.2,269〜271頁に記載の正孔移動層と発光層と電子移動層とを組み合わせたものが、それぞれ開示されている。
【0006】
しかしながら、より高輝度な素子が求められており、エネルギー変換効率、発光量子効率の更なる向上が期待されている。又、発光寿命が短いという問題点も指摘されている。こうした経時での輝度劣化の要因は完全には解明されていないが、発光中のエレクトロルミネッセンス素子は自ら発する光、及びその時に発生する熱などによって薄膜を構成する有機化合物自体の分解、薄膜中での有機化合物の結晶化等、有機EL素子材料である有機化合物に由来する要因も指摘されている。
【0007】
又、電子輸送材料は、現在のところ、知見が少なく、反結合軌道を利用することも相俟って、実用に耐える有用なる高性能電子輸送材料は見い出されていない。例えば、九州大学の研究グループは、オキサジアゾール系誘導体である2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(t−BuPBD)をはじめ、薄膜安定性を向上させたオキサジアゾール二量体系誘導体の1,3−ビス(4−t−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾジル)ビフェニレン(OXD−1)、1,3−ビス(4−t−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾリル)フェニレン(OXD−7)(Jpn.J.Appl.Phys.vol.31(1992),1812頁)を提案している。
【0008】
又、山形大学の研究グループは、電子ブロック性に優れたトリアゾール系電子輸送材料を用いることによりによる白色発光の素子を作製している(Science,3 March 1995,Vol.267,1332頁)。更に、特開平5−331459号には、フェナントロリン誘導体が電子輸送材料として有用であることが記載されている。
【0009】
しかし、従来の電子輸送材料では、薄膜形成能が低く、容易に結晶化が起こるため、発光素子が破壊されてしまう問題があり、実用に耐える素子性能を発現できなかった。
【0010】
これらの問題を解決する有機EL材料として、特開平9−87616号、同9−194487号、特開2000−186094に、分子内に珪素原子を含む化合物を発光材料又は電子輸送材料として用いる例が記載されているが、発光効率及び発光寿命の両立については十分ではなかった。
【0011】
又、発光層をホスト化合物及び微量の蛍光体で構成することにより、発光効率の向上を達成するという手法が報告されている。例えば特許3093796号では、スチルベン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体又はトリススチリルアリーレン誘導体に、微量の蛍光体をドープし、発光輝度の向上、素子の長寿命化を達成している。
【0012】
又、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム錯体をホスト化合物として、これに微量の蛍光体をドープした有機発光層を有する素子(特開昭63−264692号)、同様にキナクリドン系色素をドープした有機発光層を有する素子(特開平3−255190号)が知られている。
【0013】
以上のように、蛍光量子収率の高い蛍光体をドープすることによって、従来の素子に比べて発光輝度を向上させている。
【0014】
しかし、上記のドープされる微量の蛍光体からの発光は、励起一重項からの発光であり、励起一重項からの発光を用いる場合、一重項励起子と三重項励起子の生成比が1:3であるため発光性励起種の生成確率が25%であることと、光の取出し効率が約20%であるため、外部取出し量子効率(ηext)の限界は5%とされている。ところが、プリンストン大から励起三重項からの燐光発光を用いる有機EL素子が報告されて以来(例えばM.A.Baldo et al., nature,395巻,151〜154頁,1998年)、室温で燐光を示す材料の研究が活発になってきている(M.A.Baldo et al.,nature,403巻,17号,750〜753頁,2000年、米国特許6,097,147号など)。
【0015】
励起三重項を使用すると、内部量子効率の上限が100%となるため、励起一重項の場合に比べて原理的に発光効率が最大4倍となり、冷陰極管とほぼ同等の性能が得られ照明用にも応用可能であり注目されている。
【0016】
燐光性化合物をドーパントとして用いる時のホストは、燐光性化合物の発光極大波長よりも短波な領域に発光極大波長を有することが必要であることは勿論であるが、その他にも満たすべき条件があることが判って来た。
【0017】
The 10th International Workshop on Inorganic and Organic Electroluminescence(EL ’00,浜松)では、燐光性化合物について幾つかの報告が為されている。例えば、Ikaiらは、ホール輸送性の化合物を燐光性化合物のホストとして用いている。又、M.E.Tompsonらは、各種電子輸送性材料を燐光性化合物のホストとして、これらに新規なイリジウム錯体をドープして用いている。更に、Tsutsuiらは、ホールブロック層の導入により高い発光効率を得ている。
【0018】
尚、ホールブロック層とは、通常の有機EL素子で使われている電子輸送層と構成的には同じものであるが、その機能が電子輸送機能よりも発光層から陰極側に漏れ出すホールの移動を阻止する機能が有力であるために、ホールブロック層と名付けられているものであり、一種の電子輸送層と解釈することもできる。従って、本発明においては、ホールブロック層も電子輸送層と称することとし、その層で用いられる材料(ホールブロッカー)も電子輸送材料と称す。
【0019】
燐光性化合物のホスト化合物については、例えばC.Adachi et al.,Appl.Phys.Lett.,77巻,904頁(2000年)等に詳しく記載されているが、高輝度の有機EL素子を得るためにホスト化合物に必要とされる性質について、より新しい観点からのアプローチが必要である。
【0020】
しかし、何れの報告も、素子の発光輝度の向上及び耐久性を両立し得る構成は得られていない。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、発光輝度の向上及び耐久性(発光寿命)の両立を達成した有機エレクトロルミネッセンス素子、及び該有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた、発光輝度の高い、長寿命な表示装置を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下に示す構成により達成される。
【0023】
1)前記一般式(1)で表される化合物の少なくとも1種を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0024】
2)前記一般式(1)で表される化合物を電子輸送層に含有する1)記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0025】
3)前記一般式(1)で表される化合物を発光層に含有する1)記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0026】
4)ホスト化合物及び燐光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、ホスト化合物が前記一般式(1)で表される化合物である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0027】
5)燐光性化合物がイリジウム化合物、オスミウム化合物又は白金化合物である4)記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0028】
6)燐光性化合物がイリジウム化合物である4)記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0029】
7)1)〜6)の何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を有する表示装置。
【0030】
本発明は、特定構造のシクロファン化合物を用いて有機EL素子の発光輝度の向上及び耐久性の両立を満足させ、又、シクロファン化合物を燐光発光用のホスト化合物として用いること、及び/又はフェニルピリジン化合物を電子輸送材料(ホールブロッカー)として用いることにより、発光輝度の向上及び耐久性の両立を達成したものである。
【0031】
以下に本発明を詳細に説明する。まず、一般式(1)で表される化合物について説明する。
【0032】
一般式(1)において、R1及びR2で表される置換基としては、アルキル基(メチル、エチル、i−プロピル、ヒドロキシエチル、メトキシメチル、トリフルオロメチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル等)、アルケニル基(ビニル、プロペニル、スチリル等)、アルキニル基(エチニル等)、アリール基(フェニル、ナフチル、p−トリル、p−クロロフェニル等)、アルキルオキシ基(メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、ブトキシ等)、アリールオキシ基(フェノキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ、i−プロピルチオ等)、アリールチオ基(フェニルチオ等)、ハロゲン原子(弗素、塩素、臭素、沃素等)、アミノ基(ジメチルアミノ、メチルアミノ、ジフェニルアミノ等)シアノ基、ニトロ基、複素環基(ピロール、ピロリジル、ピラゾリル、イミダゾリル、ピリジル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル等)等が挙げられる。芳香族基としては、上記アリール基及びヘテロアリール基(ピロール、ピラゾリル、イミダゾリル、ピリジル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル等)が挙げられ、それぞれの置換基は更に任意の置換基で置換されてもよい。又、隣接する置換基同士が互いに縮合し環を形成してもよい。
【0033】
R1及びR2で表される置換基のうち特に好ましいものは、アリール基又はアルケニル基である。
【0034】
R3〜R14は水素原子又は置換基を表すが、置換基の具体例は前記R1と同義である。
【0035】
一般式(1)で表される化合物(以下、本発明の化合物とも言う)は、固体状態において強い蛍光を持つ化合物であり、電場発光性にも優れており、発光材料として有効に使用できる。又、金属電極からの優れた電子注入性及び電子輸送性に極めて優れているため、他の発光材料又は本発明の化合物を発光材料として用いた素子において、本発明の化合物を電子輸送材料(又はホールブロッカー)として使用した場合、優れた発光効率を示す。
【0036】
以下に本発明の化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
【化2】
【0038】
【化3】
【0039】
【化4】
【0040】
【化5】
【0041】
【化6】
【0042】
【化7】
【0043】
又、本発明者等は、燐光性化合物のホスト化合物について鋭意検討を重ねた結果、本発明のシクロファン化合物をホスト化合物として用いて、有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した場合に、素子の発光輝度及び寿命が改善されることを見い出した。
【0044】
本発明のホスト化合物とは、2種以上の化合物で構成される発光層中において、混合比(質量)の最も多い化合物であり、それ以外の化合物はドーパント化合物という。例えば、発光層を化合物A、化合物Bと言う2種で構成し、その混合比がA:B=10:90であれば、化合物Aがドーパント化合物であり、化合物Bがホスト化合物である。更に、発光層を化合物A、化合物B、化合物Cの3種から構成し、その混合比がA:B:C=5:10:85であれば、化合物A及び化合物Bがドーパント化合物であり、化合物Cがホスト化合物である。本発明における燐光性化合物はドーパント化合物の1種である。
【0045】
本発明の燐光性化合物とは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、燐光量子収率が25℃において0.001以上の化合物である。好ましくは0.01以上であり、更に好ましくは0.1以上である。
【0046】
上記燐光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版,丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中での燐光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に用いられる燐光性化合物は、任意の溶媒の何れかにおいて上記燐光量子収率が達成されればよい。好ましくは、元素の周期表でVIII属の金属を含有する錯体系化合物であり、更に好ましくはイリジウム、オスミウム又は白金錯体系化合物である。より好ましくはイリジウム錯体系化合物である。
【0047】
以下に、本発明で用いられる燐光性化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。これらの化合物は、例えばInorg.Chem.40巻,1704−1711に記載の方法等により合成できる。
【0048】
【化8】
【0049】
【化9】
【0050】
【化10】
【0051】
又、別の形態では、ホスト化合物と燐光性化合物の他に、燐光性化合物からの発光の極大波長よりも長波な領域に、蛍光極大波長を有する蛍光性化合物を少なくとも1種含有する場合もある。この場合、ホスト化合物と燐光性化合物からのエネルギー移動で、有機EL素子としての電界発光は蛍光性化合物からの発光が得られる。
【0052】
蛍光性化合物として好ましいのは、溶液状態で蛍光量子収率が高いものである。ここで蛍光量子収率は0.1以上、特に0.3以上であることが好ましい。具体的には、クマリン系,ピラン系,シアニン系,クロコニウム系,スクアリウム系,オキソベンツアントラセン系,フルオレッセイン系,ローダミン系,ピリリウム系,ペリレン系,スチルベン系,ポリチオフェン系の各色素、又は希土類錯体系蛍光体などが挙げられる。
【0053】
ここでの蛍光量子収率も、第4版実験化学講座7(前出)分光IIの362頁に記載の方法により測定することが出来る。
【0054】
以下、エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)について説明する。
EL素子における発光層は、広義の意味では、陰極と陽極からなる電極に電流を流した際に発光する層のことを指す。具体的には、陰極と陽極からなる電極に電流を流した際に発光する蛍光性化合物を含有する層のことを指す。通常、エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)は一対の電極の間に発光層を挟持した構造をとる。本発明の有機EL素子は、必要に応じ発光層の他に、正孔輸送層、電子輸送層、陽極バッファー層及び陰極バッファー層等を有し、陰極と陽極で挟持された構造を採る。
【0055】
具体的には、
(i)陽極/発光層/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(iii)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(v)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極などで示される構造がある。
【0056】
上記化合物を用いて発光層を形成する方法としては、例えば蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の方法により薄膜を形成する方法があるが、特に分子堆積膜であることが好ましい。ここで、分子堆積膜とは、上記化合物の気相状態から沈着され形成された薄膜や、該化合物の溶融状態又は液相状態から固体化され形成された膜のことである。通常、この分子堆積膜はLB法により形成された薄膜(分子累積膜)と、凝集構造、高次構造の相違やそれに起因する機能的な相違により区別することができる。
【0057】
又、この発光層は、特開昭57−51781号に記載されるように、樹脂などの結着材と共に発光材料として上記化合物を溶剤に溶かして溶液とした後、これをスピンコート法などにより塗布して薄膜形成することにより得られる。
【0058】
このようにして形成された発光層の膜厚については特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、通常は5nm〜5μmの範囲である。
【0059】
本発明に記載の燐光性化合物は、具体的には、前述のように重金属錯体系化合物であり、好ましくは元素の周期表でVIII属の金属を中心金属とする錯体系化合物であり、更に好ましくは、オスミウム、イリジウム又は白金錯体系化合物である。
【0060】
これらの燐光性化合物としては、前記のような燐光量子収率が、25℃において0.001以上である他、前記ホストとなる蛍光性化合物の蛍光極大波長よりも長い燐光発光極大波長を有するものであり、これにより、例えば、ホストとなる蛍光性化合物の発光極大波長より長波の燐光性化合物を用いて燐光性化合物の発光、即ち三重項状態を利用した、ホスト化合物の蛍光極大波長よりも長波において電界発光するEL素子を得ることができる。従って、用いられる燐光性化合物の燐光発光極大波長としては特に制限されるものではなく、原理的には、中心金属、配位子、配位子の置換基等を選択することで得られる発光波長を変化させることができる。
【0061】
例えば350〜440nmの領域に蛍光極大波長を有する蛍光性化合物をホスト化合物として用い、例えば緑の領域に燐光を持ったイリジウム錯体を用いることで緑領域に電界発光する有機EL素子を得ることが出来る。
【0062】
又、別の形態では、前記のように、ホスト化合物としての蛍光性化合物Aと燐光性化合物の他に、燐光性化合物からの発光の極大波長よりも長波な領域に、蛍光極大波長を有するもう一つの蛍光性化合物Bを少なくとも1種含有する場合もあり、蛍光性化合物Aと燐光性化合物からのエネルギー移動で、有機EL素子としての電界発光は蛍光性化合物Bからの発光を得ることも出来る。
【0063】
本発明の蛍光性化合物が発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編,東京大学出版会,1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(ミノルタ社製)で測定した結果をCIE色度座標に当て嵌めた時の色で決定される。
【0064】
ホスト化合物の分子量は600〜2000であることが好ましく、この分子量範囲にあるとTg(ガラス転移温度)が上昇し、熱安定性が向上し、素子寿命が改善される。より好ましくは分子量が800〜2000である。又、Tgは100℃以上であることが好ましい。又、この範囲内の分子量であると、発光層を真空蒸着法により容易に作製することができ、有機EL素子の製造が容易になる。更に、有機EL素子中における蛍光性化合物の熱安定性もよくなる。
【0065】
次に正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層等、発光層と組み合わせてEL素子を構成するその他の層について説明する。
【0066】
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有し、この正孔注入層、正孔輸送層を陽極と発光層の間に介在させることにより、より低い電界で多くの正孔が発光層に注入され、その上、発光層に陰極、電子注入層又は電子輸送層より注入された電子は、発光層と正孔注入層もしくは正孔輸送層の界面に存在する電子の障壁により、発光層内の界面に累積され発光効率が向上するなど、発光性能の優れた素子となる。この正孔注入層、正孔輸送層の材料(以下、正孔注入材料、正孔輸送材料と言う)については、前記の陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有する性質を持つものであれば特に制限はなく、従来、光導伝材料において、正孔の電荷注入輸送材料として慣用されているものや、EL素子の正孔注入層、正孔輸送層に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0067】
上記正孔注入材料、正孔輸送材料は、正孔の注入もしくは輸送、電子の障壁性の何れかを有するものであり、有機物,無機物の何れであってもよい。この正孔注入材料、正孔輸送材料としては、例えばトリアゾール誘導体,オキサジアゾール誘導体,イミダゾール誘導体,ポリアリールアルカン誘導体,ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体,フェニレンジアミン誘導体,アリールアミン誘導体,アミノ置換カルコン誘導体,オキサゾール誘導体,スチリルアントラセン誘導体,フルオレノン誘導体,ヒドラゾン誘導体,スチルベン誘導体,シラザン誘導体,アニリン系共重合体、また、導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。正孔注入材料、正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0068】
上記芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD)、2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン、N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル、N,N,N−トリ(p−トリル)アミン、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン、4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン、3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン、N−フェニルカルバゾール、更には、米国特許5,061,569号に記載される2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号に記載されるトリフェニルアミンユニットが三つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
【0069】
更に、これらの材料を高分子鎖に導入した、又は、これらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0070】
又、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。この正孔注入層、正孔輸送層は、上記正孔注入材料、正孔輸送材料を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。
【0071】
正孔注入層、正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度である。この正孔注入層、正孔輸送層は、上記材料の1種又は2種以上から成る1層構造であってもよく、同一組成又は異種組成の複数層から成る積層構造であってもよい。
【0072】
更に、必要に応じて用いられる電子輸送層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
【0073】
この電子輸送層に用いられる材料(以下、電子輸送材料と言う)の具体例としては、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレンなどの複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体などが挙げられる。更に、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。
【0074】
更に、これらの材料を高分子鎖に導入した、又は、これらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0075】
又、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及び、これらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホ基などで置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。又、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
【0076】
この電子輸送層は、上記化合物を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の薄膜形成法により製膜して形成することができる。電子輸送層としての膜厚は特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲で選ばれる。電子輸送層は、これらの電子輸送材料1種又は2種以上から成る1層構造でもよいし、あるいは、同一組成又は異種組成の複数層から成る積層構造でもよい。
【0077】
又、本発明においては、蛍光性化合物は発光層のみに限定することはなく、発光層に隣接した正孔輸送層、又は電子輸送層に前記燐光性化合物のホスト化合物となる蛍光性化合物と同じ領域に蛍光極大波長を有する蛍光性化合物を少なくとも1種含有させてもよく、それにより、更にEL素子の発光効率を高めることができる。
【0078】
これらの正孔輸送層や電子輸送層に含有される蛍光性化合物としては、発光層に含有されるものと同様に蛍光極大波長が350〜440nm、更に好ましくは390〜410nmの範囲にある蛍光性化合物が用いられる。
【0079】
本発明の有機EL素子に好ましく用いられる基盤は、ガラス、プラスチックなどの種類には特に限定はなく、又、透明のものであれば特に制限はない。本発明のEL素子に好ましく用いられる基盤としては、例えばガラス、石英、光透過性プラスチックフィルムを挙げることができる。
【0080】
光透過性プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等から成るフィルム等が挙げられる。
【0081】
次に、該有機EL素子を作製する好適な例を説明する。例として、前記の陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極から成るEL素子の作製法について説明する。
【0082】
まず適当な基板上に、所望の電極用物質、例えば陽極用物質から成る薄膜を、1μm以下、好ましくは10〜200nmの範囲の膜厚になるよう、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させて陽極を作製する。次に、この上に素子材料である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層/電子注入層から成る薄膜を形成させる。
【0083】
更に、陽極と発光層又は正孔注入層の間、及び、陰極と発光層又は電子注入層との間にはバッファー層(電極界面層)を存在させてもよい。
【0084】
バッファー層とは、駆動電圧低下や発光効率向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日,エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、陽極バッファー層と陰極バッファー層とがある。
【0085】
陽極バッファー層は、特開平9−45479号、同9−260062号、同8−288069号等にも詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。又、陰極バッファー層は、特開平6−325871号、同9−17574号、同10−74586号等にも詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、弗化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、弗化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウム、酸化リチウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。
【0086】
上記バッファー層は極く薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その膜厚は0.1〜100nmの範囲が好ましい。
【0087】
更に上記基本構成層の他に、必要に応じてその他の機能を有する層を積層してもよく、例えば特開平11−204258号、同11−204359号、及び「有機EL素子とその工業化最前線(前出)」の237頁等に記載される正孔阻止(ホールブロック)層などのような機能層を有していてもよい。
【0088】
バッファー層は、陰極バッファー層又は陽極バッファー層の少なくとも何れか一つの層内に、本発明の化合物の少なくとも1種が存在して、発光層として機能してもよい。
【0089】
次に、有機EL素子の電極について説明する。有機EL素子の電極は、陰極と陽極から成る。
【0090】
この陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。
【0091】
上記陽極は、蒸着やスパッタリング等の方法により、これらの電極物質の薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、又はパターン精度を余り必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、又、陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0092】
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属などが挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化などに対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第2金属との混合物、例えばマグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物などが好適である。
【0093】
上記陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させることにより、作製することができる。又、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜1μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。尚、発光を透過させるため、有機EL素子の陽極又は陰極の何れか一方が透明又は半透明であれば、発光効率が向上するので好都合である。
【0094】
次に有機EL素子の作製方法について説明する。
薄膜化の方法としては、前記の如くスピンコート法、キャスト法、蒸着法などがあるが、均質な膜が得られ易く、かつピンホールが生成し難い等の点から、真空蒸着法が好ましい。薄膜化に真空蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は、使用する化合物の種類、分子堆積膜の目的とする結晶構造、会合構造などにより異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10−6〜10−3Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、膜厚5nm〜5μmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
【0095】
前記の様に、適当な基板上に、所望の電極用物質、例えば陽極用物質から成る薄膜を1μm以下、好ましくは10〜200nmの範囲の膜厚になるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させて陽極を作製した後、該陽極上に前記の通り正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層/電子注入層から成る各層薄膜を形成させた後、その上に陰極用物質から成る薄膜を1μm以下、好ましくは50〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極を設けることにより、所望の有機EL素子が得られる。
【0096】
この有機EL素子の作製は、一回の真空引きで一貫してこの様に正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、発光層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
【0097】
このようにして得られた有機EL素子に直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧5〜40V程度を印加すると、発光が観測できる。又、逆の極性で電圧を印加しても、電流は流れずに発光は全く生じない。更に、交流電圧を印加する場合には、陽極が+、陰極が−の状態になった時のみ発光する。尚、印加する交流の波形は任意でよい。
【0098】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0099】
実施例1
有機EL素子OLED1−1〜1−7を以下のように作製した。
【0100】
〈有機EL素子の作製〉
陽極としてガラス上にITOを150nm成膜した基板(NHテクノグラス社製:NA−45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をi−プロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
【0101】
この透明支持基板を、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、一方、モリブデン製抵抗加熱ボートにα−NPDを200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートに比較化合物1を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにバソキュプロイン(BCP)を200mg入れ、更に別のモリブデン製抵抗加熱ボートにAlq3を200mg入れ、真空蒸着装置に取り付けた。
【0102】
真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、α−NPDの入った前記加熱ボートに通電・加熱し、蒸着速度0.1〜0.3nm/secで透明支持基板に蒸着し、膜厚50nmの正孔輸送層を設けた。蒸着時の基板温度は室温であった。
【0103】
次いで、比較化合物1の入った前記加熱ボートに通電・加熱し、蒸着速度0.1〜0.3nm/secで30nmの発光層を設けた。更に、BCPの入った前記加熱ボートを通電・加熱し、膜厚10nmの正孔阻止層を設けた。更に、Alq3の入った前記加熱ボートを通電・加熱し、蒸着速度0.1〜0.3nm/secで膜厚20nmの電子輸送層を設けた。
【0104】
次に、真空槽を開け、電子注入層の上にステンレス鋼製の長方形穴あきマスクを設置し、一方、モリブデン製抵抗加熱ボートにマグネシウム3gを入れ、タングステン製の蒸着用バスケットに銀を0.5g入れ、再び真空槽を2×10−4Paまで減圧した後、マグネシウム入りのボートに通電して蒸着速度1.5〜2.0nm/secでマグネシウムを蒸着し、この際、同時に銀のバスケットを加熱し、蒸着速度0.1nm/secで銀を蒸着し、前記マグネシウムと銀との混合物から成る陰極とすることで、表1に示す比較用有機EL素子OLED1−1を作製した。
【0105】
上記OLED1−1の比較化合物を、表1記載の本発明の化合物に替えた以外はOLED1−1と同様にして、OLED1−2〜1−7を作製した。発光色は青色から緑色を示した。
【0106】
【化11】
【0107】
〈有機EL素子の発光輝度及び発光寿命の評価〉
これらの素子7種を、23℃・乾燥窒素ガス雰囲気下で10V直流電圧印加による連続点灯を行い、点灯開始時の発光輝度(cd/m2)及び輝度の半減する時間(発光寿命)を測定した。発光輝度はOLED1−1を100とした時の相対値で表し、発光寿命もOLED1−1の輝度が半減する時間を100とした時の相対値で表した。発光輝度(cd/m2)については、ミノルタ製CS−1000を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
表1より、本発明の化合物を用いた有機EL素子は、点灯開始時の発光輝度及び発光寿命が改善されているのが判る。
【0110】
実施例2
本発明の化合物1−14とDCM−2を100:1の質量比で蒸着した膜厚30nmの発光層を使用する以外は、実施例1と同様の方法で有機EL素子OLED2−1を作製した。
【0111】
このOLED2−1を23℃・乾燥窒素ガス雰囲気下で10V直流電圧を印加すると、赤色の発光が得られた。
【0112】
上記OLED2−1のDCM−2をQd−2、BCzVBiに替えることによって、それぞれ緑色、青色の発光が得られた。
【0113】
【化12】
【0114】
実施例3
〈有機EL素子の作製〉
陽極としてガラス上にITOを150nm成膜した基板(NA−45:前出)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をi−プロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。この透明支持基板を、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。一方、モリブデン製抵抗加熱ボートに、m−MTDATXAを200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにDPVBiを200mg入れ、又、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにBCPを200mg入れ、真空蒸着装置に取り付けた。
【0115】
真空槽を4×10−4Paまで減圧し、m−MTDATXAの入った前記加熱ボートに通電・加熱し、蒸着速度0.1〜0.3nm/secで透明支持基板に膜厚25nmで蒸着し、更に、DPVBiの入った前記加熱ボートに通電・加熱し、蒸着速度0.1〜0.3nm/secで膜厚20nmで蒸着し、発光層を設けた。蒸着時の基板温度は室温であった。
【0116】
次いで、BCPの入った前記加熱ボートに通電・加熱し、蒸着速度0.1〜0.3nm/secで30nmの電子輸送層を設けた。
【0117】
次に、真空槽を開け、電子輸送層の上にステンレス鋼製の長方形穴あきマスクを設置し、一方、モリブデン製抵抗加熱ボートにマグネシウム3gを入れ、タングステン製の蒸着用バスケットに銀を0.5g入れ、再び真空槽を2×10−4Paまで減圧した後、マグネシウム入りのボートに通電して蒸着速度1.5〜2.0nm/secでマグネシウムを蒸着し、この際、同時に銀のバスケットを加熱し、蒸着速度0.1nm/secで銀を蒸着し、前記マグネシウムと銀との混合物から成る陰極とすることで、表2に示す比較用有機EL素子OLED3−1を作製した。
【0118】
上記OLED3−1のBCPを表2に記載の本発明の化合物に替えた以外はOLED3−1と同様にして、OLED3−2〜3−9を作製した。
【0119】
【化13】
【0120】
〈有機EL素子の発光輝度及び発光寿命の評価〉
これらの素子9種を23℃・乾燥窒素ガス雰囲気下で10V直流電圧印加による連続点灯を行い、点灯開始時の発光輝度及び発光寿命を測定した。発光輝度、発光寿命の何れもOLED3−1を100とした時の相対値で表した。結果を表2に示す。尚、全ての素子において発光色は青色だった。
【0121】
【表2】
【0122】
表2より、本発明の化合物を用いた有機EL素子は、点灯開始時の発光輝度及び発光寿命が改善されているのが判る。特に、発光寿命の改善が著しい。
【0123】
実施例4
実施例3で作製した有機EL素子OLED3−2の陰極をAlに置き換え、電子輸送層と陰極の間に弗化リチウムを膜厚0.5nm蒸着して陰極バッファー層を設けた以外は同様にして、有機EL素子OLED4−1を作製した。
【0124】
実施例3と同様に点灯開始時の発光輝度及び発光寿命を測定したところ、OLED3−1との相対比較で、発光輝度は214、発光寿命は405となった。又、OLED3−2〜9についても、同様に陰極バッファー層を導入すると更に効果的であった。
【0125】
実施例5
実施例3で用いた有機EL素子の発光層をDPVBiから、それぞれAlq3又はAlq3とDCM−2を100:1の質量比で蒸着した発光層に置き替えた以外は同様にして、有機EL素子を作製し、点灯開始時の発光輝度及び発光寿命を測定した。その結果、本発明の化合物を電子輸送層に用いた有機EL素子において、発光輝度及び発光寿命の改善が確認された。
【0126】
尚、Alq3を発光層に用いた場合は緑色の発光が得られ、Alq3とDCM−2を100:1で共蒸着した発光層からは赤色の発光が得られた。
【0127】
実施例6
〈有機EL素子の作製〉
有機EL素子OLED6−1〜6−8を以下のように作製した。
【0128】
陽極として100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上に、ITOを150nm成膜した基板(NA−45:前出)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をi−プロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
【0129】
この透明支持基板を、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、一方、モリブデン製抵抗加熱ボートにα−NPDを200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにCBPを200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにBCPを200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにIr−1(燐光性化合物)を100mg入れ、更に別のモリブデン製抵抗加熱ボートにAlq3を200mg入れ、真空蒸着装置に取り付けた。
【0130】
真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、α−NPDの入った前記加熱ボートに通電・加熱し、蒸着速度0.1nm/secで透明支持基板に蒸着し、膜厚45nmの正孔輸送層を設けた。更に、CBPとIr−1の入った前記加熱ボートに通電・加熱し、それぞれ蒸着速度0.1nm/sec、0.01nm/secで前記正孔輸送層上に共蒸着して膜厚20nmの発光層を設けた。尚、蒸着時の基板温度は室温であった。更に、BCPの入った前記加熱ボートに通電・加熱し、蒸着速度0.1nm/secで前記発光層の上に蒸着して膜厚10nmの正孔阻止の役割も兼ねた電子輸送層を設けた。その上に、更にAlq3の入った前記加熱ボートに通電・加熱し、蒸着速度0.1nm/secで前記電子輸送層の上に蒸着し、更に膜厚40nmの電子注入層を設けた。尚、蒸着時の基板温度は室温であった。
【0131】
次に、LiFを0.5nm及びAlを110nm蒸着して陰極を形成し、有機EL素子OLED6−1を得た。
【0132】
上記において、発光層のCBPを表3に示す化合物に置き換えた以外は全く同じ方法で、有機EL素子OLED6−2〜6−9を作製した。
【0133】
【化14】
【0134】
〈有機EL素子の発光輝度及び発光寿命の評価〉
OLED6−1では、初期駆動電圧3Vで電流が流れ始め、発光層のドーパントである燐光性化合物からの緑色の発光を示した。OLED6−1〜6−9を23℃・乾燥窒素ガス雰囲気下で9V直流電圧を印加した時の発光輝度及び発光寿命を測定した。発光輝度、発光寿命共にOLED6−1を100とした時の相対値で表した。結果を表3に示す。
【0135】
【表3】
【0136】
表3から明らかなように、本発明の化合物をホストに用いたEL素子は、発光輝度が高く、発光寿命が長いことから、有機EL素子として非常に有用であることが判った。
【0137】
更に、燐光化合物をIr−12又はIr−9に変更した以外はOLED6−1〜6−9と同様にして作製した有機EL素子においても同様の効果が得られた。
【0138】
尚、Ir−12を用いた素子からは青色の発光が、Ir−9を用いた素子からは赤色の発光が得られた。
【0139】
実施例7
〈有機EL素子の作製〉
実施例6で作製した有機EL素子OLED6−1の電子輸送物質BCPを表4に示す本発明の化合物に置き換えた以外は全く同様にして有機EL素子OLED7−1〜7−9を作製した。
【0140】
〈有機EL素子の発光輝度及び発光寿命の評価〉
各有機EL素子について実施例6と同様に、発光輝度及び発光寿命の評価を行った。
【0141】
OLED6−1では、初期駆動電圧3Vで電流が流れ始め、発光層のドーパントである燐光性化合物からの緑色の発光を示した。OLED6−1の23℃・乾燥窒素ガス雰囲気下で9V直流電圧を印加した時の発光輝度及び発光寿命を測定した。発光輝度、発光寿命は共にOLED6−1を100とした時の相対値で表した。結果を表4に示す。
【0142】
【表4】
【0143】
表4から明らかなように、本発明の化合物を電子輸送層(正孔阻止層)に用いたEL素子は、発光輝度が高く、発光寿命が長いことから、有機EL素子として非常に有用であることが判る。
【0144】
燐光性化合物をIr−12又はIr−9に変更した以外はOLED7−1〜7−9と同様にして作製した有機EL素子においても同様の効果が得られた。尚、Ir−12を用いた素子からは青色の発光が、Ir−9を用いた素子からは赤色の発光が得られた。
【0145】
実施例8
実施例6で作製した、それぞれ赤色、緑色、青色発光有機EL素子を同一基板上に並置し、図1に示すアクティブマトリクス方式フルカラー表示装置を作製した。
【0146】
図1には作製したフルカラー表示装置の表示部の模式図のみを示した。即ち、同一基板上に、複数の走査線2及びデータ線3を含む配線部と、並置した複数の画素1(発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素等)とを有し、配線部の走査線2及び複数のデータ線3は、それぞれ導電材料から成り、走査線2とデータ線3は格子状に直交し、直交する位置で画素1に接続している(詳細は図示せず)。前記複数画素1は、それぞれの発光色に対応した有機EL素子、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタと駆動トランジスタそれぞれが設けられたアクティブマトリクス方式で駆動されており、走査線2から走査信号が印加されると、データ線3から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。この様に赤、緑、青の各画素を適宜、並置することによってフルカラー表示が可能となる。
【0147】
該フルカラー表示装置を駆動することにより、輝度の高い鮮明なフルカラー動画表示が得られた。
【0148】
【発明の効果】
本発明により、発光輝度の向上及び耐久性の両立を達成した有機エレクトロルミネッセンス素子、及び該有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた表示装置が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で作製したフルカラー表示装置の模式図。
【符号の説明】
A 表示部
1 画素
2 走査線
3 データ線
Claims (7)
- 前記一般式(1)で表される化合物を電子輸送層に含有することを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 前記一般式(1)で表される化合物を発光層に含有することを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- ホスト化合物及び燐光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、ホスト化合物が前記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 燐光性化合物がイリジウム化合物、オスミウム化合物又は白金化合物であることを特徴とする請求項4記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 燐光性化合物がイリジウム化合物であることを特徴とする請求項4記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 請求項1〜6の何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を有することを特徴とする表示装置。
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