JP3841020B2 - 鉄道車輪の磁粉探傷方法および磁粉探傷装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁性体である被検査材例えば鉄鋼製品の品質保証に適用される磁粉探傷方法および磁粉探傷装置に関し、詳しくは、厚さ方向に貫通する軸孔が中心に形成された磁性体からなる鉄道車輪の全表面の欠陥、しかも、いずれの方向の欠陥をも探傷することのできる磁粉探傷方法および磁粉探傷装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、磁気を利用した磁粉探傷試験や漏洩磁束探傷試験は、例えば鉄鋼製品の品質保証技術として定着し種々の製品に対し広く採用されている。
【0003】
しかし、このうち磁粉探傷試験は、欠陥部で生じる漏洩磁束に磁着した磁粉が集まる現象を利用した方法であるため、欠陥の長さ方向と直交する方向に磁場をかけないと漏洩磁束が生じず欠陥検出が困難となる。このため、多方向に欠陥が生じる可能性のある場合は、磁場の方向を多方向にしなければ全方向の欠陥を検出することができない。
【0004】
多方向の欠陥を検出する装置として特開昭 60-242363号では、断面がE型形状の磁極に回転ローラーを設けて回転させることにより均一な磁界を得る装置が提案されている。また、特開平 9-80026号では、閉磁界を作る磁芯に矩形状に配置された4個の磁極を設け、磁芯の2辺に設けた2個のコイルに通電して平行磁界を加える動作と、直交磁芯に設けた2個のコイルに通電して直交磁界を加える動作とを切り替える装置が提案されている。
【0005】
また、特開昭51-29987号では、断面がE型形状の円筒形磁極を用いて歯車や車輪等環状品の側面に円周方向磁界を、端部には軸方向の磁界を加える方法が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開昭 60-242363号や特開平 9-80026号で提案された技術では、磁極の回転や切り替えによって磁界の方向を変更するため、被検査材が流れ作業等で動く場合は、切り替え時間が問題となり、同一部位に対して多方向の磁場を加えることができない。従って、製造過程での品質保証には、時間がかかり過ぎ適用することが困難である。また、特開昭51-29987号は、側面の円周方向磁場と、端部の厚み方向磁場を同時に与える方法であるが、側面の縦割れや端部の厚み方向の割れが検出できないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記したような問題を解決せんとしてなされたものであり、製造過程での品質保証に適し、短時間に被検査材の全表面のいずれの方向の欠陥をも探傷することのできる鉄道車輪の磁粉探傷方法および磁粉探傷装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明に係る鉄道車輪の磁粉探傷方法は、車輪の中心に形成された軸孔に、両側から電流貫通極を挿入して端部同士を突合わせ接続した前記電流貫通極に直流電流を通電すると共に、前記車輪の両側面に対向して配置され、前記電流貫通極の前記軸孔への挿入に伴い、前記電流貫通極と一定の位置関係に固定された状態で前記車輪の両側面に近接する磁化コイルに交流電流を通電して前記車輪を磁化する工程と、前記車輪の表面に磁粉液を散布する工程、を主構成としている。
【0009】
また、磁粉探傷装置は、車輪の中心に形成された軸孔に両側から挿入され、突合わせ接続することにより直流電流を通電される電流貫通極と、前記車輪の両側面それぞれに対向し、かつ前記電流貫通極と一定の関係に固定されて配置され、前記電流貫通極の前記軸孔への挿入に伴い前記車輪の両側面に近接し、交流電流を通電される磁化コイルを主構成としている。そしてこのようにすることで、短時間に被検査材の全表面のいずれの方向の欠陥をも捉えることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明者が品質保証に取り組んできた鉄道車輪(以下、単に車輪と称す)の検査を例にして、本発明について詳細に説明する。
本発明者は、長年に亘り、その中心部に軸孔を形成した環状体である鉄道車輪の品質保証に取り組んできた。
鉄道は昼夜を問わず運行され、多量の商品や、多数の乗客を乗せ、しかも高速で運行することから、とりわけその車輪の安全確保については、注意を払い過ぎるということはなく、何重にも検査が行われている。車輪の素材は超音波探傷に合格した鋼片であり、この鋼片から鍛造、圧延等を経て車輪となる。製品となる車輪は、最終工程で磁粉探傷と共に目視検査にかけられる。特に車輪の品質は、そのリム部から踏面にかけて大事であり、この部分での欠陥検出精度の向上は極めて重要である。
【0011】
ところが、前記した最終工程の検査で10,000個に対し1〜2個程度の割合で、磁粉探傷に合格した車輪の中に目視検査でそのリム部に微小欠陥が発見されることがあった。発明者は、この原因を明確にするために、磁粉探傷について、その欠陥検出特性を調査することにした。表1はその検査条件であり、表2はその検査結果を示したものである。また、図2は車輪の軸孔を通る断面図でその上半分を示し、表2の車輪検査部位を示したものであり、この部位に表1に示すJIS G0565で規定のA型の試験片を貼り付けて観察した。
【0012】
【表1】
【0013】
【表2】
【0014】
表2中の○印は欠陥の検出ができたもの、×印は欠陥の検出ができなかったものを表し、この結果、表リム、踏面、裏リムにおける放射状欠陥の欠陥検出が悪いことを示している。なお、表2における円周欠陥とは、被検査材1(車輪)とその発生した欠陥の状態を模式的示す図1において、側面12の孔11(軸孔)に同心状の欠陥(エ)や端部の孔11に同心状の欠陥(ウ)を指し、放射状欠陥とは側面12の孔11方向に向かう欠陥(イ)や端部の孔11に平行の欠陥(ア)を指す。
【0015】
この結果、原因、対策として下記2点が考えられる。
▲1▼、「外側磁化の強度不足」が原因とすれば、対策として「外周磁化棒の追加」
▲2▼、「交流による表皮作用」が原因とすれば、対策として「直流化」。
【0016】
そこで、さらに図3に示す車輪への磁場強度解析を進め、その結果を図4に示した。
図3(a)は、車輪2の軸孔21に電流貫通極3と車輪外周部に外周磁化棒31を設けたもの、図3(b)は、前記解析と同じ電流貫通極3のみを設けたものである。この電流貫通極3および外周磁化棒31に通電する電流を交流と直流とで解析した結果のうち、図4(a)は、直流磁化による磁場解析を行った場合、図4(b)は、交流磁化による磁場解析を行った場合である。
【0017】
図4は、横軸に車輪の軸心からの距離(mm)を、縦軸に磁束密度(T)をとり、◆記号は図3(a)の場合、■記号は図3(b)の場合をそれぞれ示している。図4(b)から、電流貫通極および外周磁化棒に交流を通電する限りにおいて、表皮効果の影響で電流貫通極および外周磁化棒の近傍のみしか磁化されないことが判る。
また、電流貫通極および外周磁化棒に直流を通電すると、交流と違い表皮効果がないので車輪内部およびその端部まで磁化されることが、図4(a)から判る。しかし、この場合、外周磁化棒の効果がほとんどないことも判る。
【0018】
さらに、前記外周磁化棒31の効果を検証するために示したのが、図5である。図5(a)は、外周磁化棒31と車輪2までの距離を、外周磁化棒31と車輪2との最短距離Lと、その角度θの関係で表した図、図5(b)は、前記角度θの値とその位置での磁場強度の関係を示した図である。B0 は(μ0 Ι)/(2πL)の値で距離Lにおける磁場強度を示し、Bθは同じくθにおける距離の磁場強度を示している。
なお、μ0 は透磁率、Ιは電流である。
【0019】
図5(b)より、外周磁化棒と車輪間の少しの距離変化で磁場強度が大きく低下する例えば、角度θが45°の場所では、磁場強度は約70%(−3dB)であることが判る。
従って、磁場強度の安定化のために車輪形状に応じた外周磁化棒を採用することも得策とは言えないし、図4(a)からも外周磁化棒の採用は効果のあるものとは言えないことが判る。
【0020】
それ故に、再度電流貫通極だけを使用して直流と交流の違いによる効果確認を実施した。表3にその結果を示す。
表3に示すように、同じ電流値でも直流の方が検出能が高く、さらに電流値を高めることにより、踏面までの探傷が可能であることが確認された。
【0021】
【表3】
【0022】
第1の本発明に係る車輪の磁粉探傷方法は、上記の知見によりなされたものであり、
車輪の中心に形成された軸孔に、両側から電流貫通極を挿入して端部同士を突合わせ接続した前記電流貫通極に直流電流を通電すると共に、前記車輪の両側面に対向して配置され、前記電流貫通極の前記軸孔への挿入に伴い、前記電流貫通極と一定の位置関係に固定された状態で前記車輪の両側面に近接する磁化コイルに交流電流を通電して前記車輪を磁化する工程と、前記車輪の表面に磁粉液を散布する工程と、前記車輪に付着する磁粉の有無を観察する工程と、前記車輪を脱磁する工程とからなる磁粉探傷方法である。
【0023】
本発明において、車輪の軸孔に電流貫通極を挿入し該電流貫通極に直流電流を通電するのは、車輪の内部およびその端部にも磁場が浸透するため、前記軸孔を軸心とした放射状欠陥の検出に優れるからである。また、車輪の両側面に対向して配置された磁化コイルに交流電流を通電して前記車輪を磁化するのは、表皮効果により車輪の両側面全体に磁場が浸透し、特に前記軸孔を軸心とした円周欠陥の検出に優れるからである。このように電流貫通極と磁化コイルを併用し、電流貫通極に直流電流を、磁化コイルに交流電流を通電することによって、いかなる方向のいかなる位置の欠陥も検知することができる。
【0024】
前記電流貫通極の作用は、直流電流を車輪の軸孔内を貫通させるためのものであり、したがって1本の電流貫通極を車輪の軸孔内を貫通させる方法でも、また、2本の電流貫通極を車輪の両側面から挿入し、電流貫通極の端部同士を突合わせ接続し、通電するものでもよいが、後者の場合は、電流貫通極が1本のものに比べると長さが半分となるから、探傷装置の作動時間が短縮できるのと共に電流貫通極の突出し量が少なくなり装置自体が小さくなる利点がある。
よって、本発明では2本の電流貫通極を車輪の両側面から挿入することとした。
【0025】
また、付着磁粉の有無確認前後に前記車輪を脱磁処理するのは、磁粉探傷時の磁場による強い磁気が残存した状態のままでは、車輪近傍での電気的な処理例えばアーク溶接等の不具合、電磁弁の誤作動等の可能性、さらに、周辺機器への磁性体粉の吸引による不具合、しかも、車輪自身の電気腐食等さまざまな懸念があるためである。
【0026】
脱磁方法については、本発明では車輪の内部や端部まで磁場を浸透させるために電流貫通極に直流電流を採用しているので、交流磁化に比較して磁束が残存しやすく、かつ残留磁束が表面に出にくいため、効果的に脱磁できるものであればどのような構成のものを使用してもよい。
【0027】
本発明者の実験によると、別途脱磁機を設置して脱磁処理を施した後であっても、少しの磁気の残存と、欠陥部に付着した磁粉がそのまま残存していることが判明している。
したがって、別途脱磁機を設置することなく、例えば、前記電流貫通極に、図6に示す電流波形のように直流反転電流を付与して脱磁した場合でも、脱磁機による脱磁と同等の効果を確認している。この場合には、反転する直流電流であるため車輪の内部、端部まで脱磁作用が働き、かつ、通電電流の切替えのみであることから磁化、脱磁のサイクル時間が極めて短くなり、別途新規に脱磁機を設置する場合に比較し、設置場所も設置費用も不要となる。
【0028】
よって、第1の本発明では、付着する磁粉の有無の観察を脱磁工程前に行うことも、脱磁後に行うことも可能である。
また、磁粉液の散布は、磁化を開始する前から始めてもよいし、磁化を開始した後に始めてもよい。ただし、磁化を終了する前に散布を終了しなければならない。これは、散布された磁粉液が車輪の表面を流れる間も磁化し続け、かつ、欠陥部での磁着を磁粉液の流れで流れ落とすことを防止するためである。
また、付着する磁粉の有無の観察は通常脱磁工程の前に行われる。しかし、前記本発明者の実験によると脱磁後でもある程度磁化は残存していること、および欠陥部に付着した磁粉がそのまま残るため、脱磁の後に観察してもよい。
【0029】
さらに、本発明においては、軸孔を軸心として回転させながら、その表面に磁粉液を散布すると、少ないノズルでしかも短時間で均一に散布できる。この場合の回転数は1回転以上、例えば1.5 回転でも効果が発揮される。また、軸孔を中心とした対称形となるから外周部のどの位置でも一定の磁場強度となって、欠陥検出にムラが無くなり望ましい。これが第2の本発明である。
【0030】
本発明に係る車輪の磁粉探傷装置は、車輪の中心に形成された軸孔に両側から挿入され、突合わせ接続することにより直流電流を通電される電流貫通極と、前記車輪の両側面それぞれに対向し、かつ前記電流貫通極と一定の関係に固定されて配置され、前記電流貫通極の前記軸孔への挿入に伴い前記車輪の両側面に近接し、交流電流を通電される磁化コイルと、前記車輪に磁粉液を散布するノズルを備えている。望ましくは、車輪の軸孔を軸心として回転させる回転機構をさらに備えたものである。
このような構成により、本発明の車輪の磁粉探傷方法が実施可能となる。
特に、本発明の磁粉探傷装置で車輪を検査すれば、車輪のリム部、踏面部等の全ての欠陥が完全に検出され、検査後の品質の信頼性が非常に高くなる。これが第3、4の本発明である。
【0031】
【実施例】
(実施例1)
以下、本発明に係る磁粉探傷方法を実施例に基づいて説明する。
外径910mm の車輪の図2に示す▲1▼〜▲7▼の位置にJIS G0565で規定のA型の試験片を貼り付け、電流貫通極から貫通電流を車輪の軸孔に通電し、同時に車輪の両側面に対向配置した磁化コイルにも通電し、目視観察にて評価した。
【0032】
実施手順は、図7に示すように車輪を回転しながら磁粉液散布に15秒、磁粉液散布の終了前から磁化を始めその磁化に10秒、表4の電流値で実施した。表4中、○印は吸着磁粉模様が明瞭に見え、△印は薄らと見え、×印は見えなかった状態を示す。
【0033】
【表4】
【0034】
この表4より、比較例では、リム部、踏面では全く検出不可であった。これに対し、本発明例の方法ではボス部、リム部とも良好な検出能力が得られ、さらに、踏面においても何の問題もなく良好に検出できた。
【0035】
次いで、表4における本発明例で示した磁粉探傷検査後の車輪の脱磁処理についての結果を表5に示す。脱磁処理は、電流貫通極による最大電流7000Aからの図6に示す直流反転脱磁で図7に示すように15秒間行った。図6の直流反転脱磁は、波長とサイクルを次第に小さくして最後に共に0とした。
表5は残留磁束密度(mT)の出現容易なエッジ部を含め測定し、その検出数値は最大値で示した。なお、表5中の加工孔とは、車輪の最終機械加工における給油孔等であり、切粉とは軸孔の仕上げ加工や給油孔加工時に発生する切粉である。
【0036】
【表5】
【0037】
この表5より、残留磁束の少ない部分の脱磁効果は現れていないが、残留磁束の多い部分、例えば加工孔内部や加工孔エッジについては、1/2 以下に低減していることが判る。
【0038】
(実施例2)
次いで、本発明の磁粉探傷装置を図8〜12に示す実施例に基づいて説明する。図8は、本発明の磁粉探傷装置全体の正面図を示し、図9は電流貫通極、磁化コイルを取り付けた台車の正面図、図10は図9の平面図、図11は電流貫通極、磁化コイルの昇降機構の内部拡大図、図12は電流貫通極、磁化コイルの取り付け部分の側面図を示したものである。
【0039】
図8は、中央にその軸孔21を水平にして厚さ方向を正面に向けた被検査材である車輪2が、回転機構6を構成するローラ61上に載置され、その車輪2の左右側には台車7上に搭載された電流貫通極3、磁化コイル4が互いに向き合う形で配置されている。前記台車7の下方に位置する枠体9に前記ローラ61を回転させる減速器付きモータ62が取り付けられ、このモータ62とローラ61間にはベルトを介在させていることによってローラ61を回転させている。
前記ローラ61は2個一対になって所定の間隔を保ち、そのローラ61間に車輪2を起立させる形で載置し、車輪2の搬入出は、別途設けているコンベア式と片方のローラ61の下降により行っている。
【0040】
前記モータ62の向かい側には、磁粉液を供給するためのポンプ81がモータ82に接続され、ポンプ81から汲み上げられた磁粉液は、供給配管83を介して多数のノズル84に供給されている。前記ノズル84からの磁粉液は、図面視で車輪2の上端である車輪踏面まで十分に散布する必要があるために、多数配置している前記ノズル84の1つは車輪踏面上方に位置させている。なお、この図面で省略しているが、供給配管83はその一部分をフレキシブルにしていると共に、供給配管83およびノズル84を合わせて、前記台車7に固定されている。
【0041】
前記台車7は、枠体9に固定されたエアーシリンダ71のロッドの出退で前記車輪2に対し接離移動するように構成されている。車輪2を磁化する場合には、車輪2を挟んで両側の台車7が互いに等距離を前進し、車輪2の表裏面側に近接すると共に、電流貫通極3が軸孔21内に挿入され、軸孔21内で電流貫通極3が互いに突き合わせ接続され直流電流を流すことができる。
【0042】
被検査材である車輪2と台車7の位置関係は、車輪2のローラ61への載置位置を一定位置とし、2台の台車7の前進量も常に一定として定めることにより、被検査材である車輪2と、電流貫通極3および磁化コイル4間の相対的なばらつきを無くし、電流貫通極3および磁化コイル4に規定の電流を通電すれば、車輪2には規定の磁場が与えられるようになっている。なお、車輪2のサイズ変動に伴う車輪2の厚さ変動は少なく、磁粉探傷にはその影響をほとんど与えない。
【0043】
前記台車7に搭載された電流貫通極3と磁化コイル4の位置関係は、その各々を取付けた取付基体72に一定に固定されている。しかし、この取付基体72が車輪2の大きさ(車輪径の変更)に合わせて位置調整可能なように上下方向に移動させることができる。車輪2のサイズは、製造過程ではまとまったロット生産であり、頻繁に変わるものではないから、本実施例では、前記取付基体72の上下方向の調整を手動で行わせるべくハンドル73を設けている。このハンドル73を正逆に回転させることにより、電流貫通極3と磁化コイル4を台車枠体74に対して上下動させることができる。
【0044】
図11はその昇降機構の拡大図であり、ハンドル73を回すと、ハンドル73を取り付けた軸73a、その軸73aに取り付けたウォーム73bとこれに噛み合うウォームホィール73cを介して伝達軸73dに回転を伝達し、伝達軸73dの回転で第二のウォーム73eと、それに噛み合うウォームホィール73fが回転され、このウォームホィール73fがラック73gを上下動させる構成となっている。ラック73gと取付基体72とは、ねじで固定されているために、ラック73gの上下動は取付基体72の上下動となる。
従って、前記取付基体72に固定された電流貫通極3、磁化コイル4は、前記ラック73gの上下動と一体になって、2本のガイドロッド73hに案内されスムーズに上下動することになる。なお、75は台車7の車輪を示す。また、電流貫通極3、磁化コイル4への通電は、別途電源より供給されることになる。
【0045】
上記構成の本発明の磁粉探傷装置は、別途設けた制御機器にその作動手順を記憶させておけば、その指示にしたがい本発明方法が実行される。特に、磁粉液の散布と被検査材の回転と台車7の前進との同時作動、磁粉液の散布と磁化の同時作動、磁化と脱磁の連続電流切り替え等、効率的な処理も可能である。勿論制御機器を備えなくても磁粉探傷を行うことは可能である。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、車輪に限らず厚さ方向に貫通する孔が形成された磁性体からなる被検査材の全表面の欠陥、しかも、いずれの方向の欠陥をも探傷することができ、従来技術に比べ短時間に磁粉探傷を行うことができる。特に被検査材が環状体の鉄道車輪である場合、その端面である踏面まで完全な検査ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】被検査材とその発生欠陥の状態を模式的に示した図である。
【図2】車輪の検査部位を示した図である。
【図3】車輪への磁場解析を示す図であり、(a)は、車輪軸心に電流貫通極を、車輪外周部に外側磁化棒を設けた図、(b)は、車輪軸心に電流貫通極のみを設けた図である。
【図4】図3に示す配置において、電流貫通極および外側磁化棒に通電する電流を交流と直流に使い分けた場合の結果を示した図で、(a)は、図3(a)(b)のいずれにも直流を通電した場合、(b)は、図3(a)(b)のいずれにも交流を通電した場合の図である。
【図5】(a)は、外側磁化棒と車輪との距離の関係を示した図、(b)は、距離の変化に伴う磁場強度の変動関係を示した図である。
【図6】脱磁通電における電流波形を示す図である。
【図7】実施例における本発明方法の実施手順を示す図である。
【図8】本発明の磁粉探傷装置全体を示す正面図である。
【図9】電流貫通極、磁化コイルを取り付けた台車の正面図である。
【図10】図9の平面図である。
【図11】電流貫通極、磁化コイルの昇降機構の内部を示す拡大図である。
【図12】電流貫通極、磁化コイルの取り付け部分を示す側面図である。
【符号の説明】
1 被検査材
2 車輪
21 軸孔
3 電流貫通極
31 外周磁化棒
4 磁化コイル
6 回転機構
61 ローラ
62 モータ
7 台車
71 エアーシリンダ
72 取付基体
73 ハンドル
74 台車枠体
75 台車の車輪
81 ポンプ
82 モータ
83 供給配管
84 ノズル
9 枠体
Claims (4)
- 車輪の中心に形成された軸孔に、両側から電流貫通極を挿入して端部同士を突合わせ接続した前記電流貫通極に直流電流を通電すると共に、前記車輪の両側面に対向して配置され、前記電流貫通極の前記軸孔への挿入に伴い、前記電流貫通極と一定の位置関係に固定された状態で前記車輪の両側面に近接する磁化コイルに交流電流を通電して前記車輪を磁化する工程と、
前記車輪の表面に磁粉液を散布する工程と、
前記車輪に付着する磁粉の有無を観察する工程と、
前記車輪を脱磁する工程とからなることを特徴とする鉄道車輪の磁粉探傷方法。 - 車輪を、軸孔を軸心として回転させながら、その表面に磁粉液を散布することを特徴とする請求項1に記載の鉄道車輪の磁粉探傷方法。
- 車輪の中心に形成された軸孔に両側から挿入され、突合わせ接続することにより直流電流を通電される電流貫通極と、
前記車輪の両側面それぞれに対向し、かつ前記電流貫通極と一定の関係に固定されて配置され、前記電流貫通極の前記軸孔への挿入に伴い前記車輪の両側面に近接し、交流電流を通電される磁化コイルと、
前記車輪に磁粉液を散布するノズルを備えたことを特徴とする鉄道車輪の磁粉探傷装置。 - 車輪の軸孔を軸心として回転させる回転機構をさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載の鉄道車輪の磁粉探傷装置。
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