JP3839593B2 - ポジ型平版印刷用材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、広くは赤外線波長域に感応性を有するポジ型平版印刷用材料に関し、特に、コンピュータ等のデジタル信号から赤外線レーザを用いて直接製版できる、いわゆるダイレクト製版可能なポジ型平版印刷用材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年におけるレーザの発展は目ざましく、特に波長760nmから1200nmの赤外線を放射する固体レーザおよび半導体レーザ(以下、「赤外線レーザ」という場合がある。)は、高出力かつ小型のものが容易に入手できるようになった。これらの赤外線レーザは、コンピュータ等のデジタルデータにより直接印刷版を製版する際の記録光源として非常に有用である。従って、このような赤外線記録光源に対し、感応性の高い画像記録材料、即ち、赤外線照射により光化学反応等が起こり、現像液に対する溶解性が大きく変化する画像記録材料への要望が近年高まっている。
このような赤外線レーザにて記録可能な画像記録材料として、米国特許第4,708,925号に記載されている、オニウム塩、フェノール樹脂及び分光増感剤より構成される記録材料がある。この画像記録材料は、オニウム塩とフェノール樹脂により発現する、現像液に対する溶解抑止効果を利用したポジ型画像記録材料である。
【0003】
ところで、赤外線は、従来の露光用光源として使用されていた紫外線よりもエネルギーが低いため、赤外線の露光により、画像記録材料の現像液に対する溶解性が大きく変化するような光反応等を化合物に起こさせるのは困難である。例えば、WO97/39894号公報では、赤外線吸収剤と、アルカリ水溶液に可溶な高分子バインダーからなる画像記録材料について提示されているが、この画像記録材料では、レーザ照射される材料の表面では、光熱変換の結果起こるポジ作用(未露光部は現像抑制され、露光部ではそれが解除または消失される)に優れているが、表面近傍で発生した熱が材料の深部まで十分に到達せず、深部でのポジ作用は不十分であった。その結果、アルカリ現像しても、非露光部と露光部のディスクリミネーションが明瞭になりにくく、感度および現像ラチチュードの点で問題があった。
また、熱分解性の高いジアゾニウム塩を光熱分解物質として添加した例が、特開平7−20629号公報に提案されているが、この感材は赤外線レーザに対する感度及び現像ラチチュードは改善されているものの、保存安定性が悪く、製品管理等の点で問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、赤外線を放射する固体レーザ及び半導体レーザを用いて、コンピューター等のデジタルデータから記録することにより直接製版が可能であり、上記赤外線レーザに対し高感度で、かつ現像ラチチュードに優れ、保存安定性に優れたポジ型平版印刷用材料を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、赤外線を放射して直接製版することのできるポジ型平版印刷用材料の構成成分に着目して鋭意検討した結果、特定の官能基を有するフェノール性化合物を、水不溶性、且つ、アルカリ水可溶性の高分子(以下、単に「アルカリ水可溶性高分子」ということがある。)と併用して用いることにより、前記フェノール性化合物が上記アルカリ水可溶性高分子中の解離性水素との間で強く相互作用し、平版印刷用材料の感光膜の膜密度を高めることができること、さらに、赤外線吸収剤としてオニウム塩型の赤外線吸収剤を用いることにより、未露光部の現像抑止効果、即ち、アルカリ性水に対する未露光部高分子の溶解性低下を促進することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、前記目的は、少なくとも下記の構成成分を含有するポジ型平版印刷用材料により達成される。
(A)下記一般式(1)で表されるフェノール性化合物、
(B)水不溶性、且つ、アルカリ水可溶性の高分子、
(C)オニウム塩型赤外線吸収剤。
【0006】
【化4】
【0007】
〔式中、Ar1 は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を表す。nは1〜3の整数を表し、pは1〜4の整数を表す。Xは2価の連結基を表し、Yは以下のY1 からなる群より選ばれる少なくとも1の部分構造を有する2価ないし4価の連結基、或いは末端が水素原子である末端基を表し、ZはYが末端基である場合には存在せず、Yが連結基である場合には、p価の連結基、或いは末端基を表す。〕
【0008】
【化5】
【0009】
本発明のポジ型平版印刷用材料に含有する上記一般式(1)で表されるフェノール性化合物は、一般式(1)中の−X−Y−Zが、解離性活性水素を持つフェノール性化合物であることが好ましい。
特に、Yに上記解離性活性水素を有する場合には、Yは以下のY2 からなる群より選ばれる少なくとも1の部分構造を表すことが望ましい。
【0010】
【化6】
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のポジ型平版印刷用材料について詳細に説明する。
[(A)一般式(1)で表されるフェノール性化合物]
本発明のポジ型平版印刷用材料は、前記一般式(1)で表されるフェノール性化合物を含有する。このフェノール性化合物は、後述のアルカリ水可溶性高分子と併存させることにより、該高分子中の解離性水素と強く相互作用し、平版印刷用材料の感光膜の膜密度を高める作用(以下、「架橋性作用」ということがある。)を有する。
前記一般式(1)中、Ar1 は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を示す。原料の入手性から、芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環またはアントラセン環が好ましい。また、好ましい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数12以下のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。上記のうち、感度が高いという観点から、ベンゼン環またはナフタレン環が特に好ましく、この場合、置換基を有していても有していなくてもよいが、置換基を有する場合、その置換基としてはハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、或いはニトロ基等が特に好ましい。
また、一般式(1)中のnは1〜3の整数を表し、n個の水酸基は、Ar1 中の任意の位置に配される。さらに、pは1〜4の整数を表す。
【0012】
前記一般式(1)中、Xは2価の連結基を表し、Yは前記のY1 からなる群より選ばれる少なくとも1の部分構造を有する2価ないし4価の連結基、或いは末端が水素原子である末端基を表し、ZはYが末端基である場合には存在せず、Yが連結基である場合にはp価の連結基、或いは末端基を表す。
【0013】
まず、一般式(1)中のXについて詳述する。
Xは、既述のごとく2価の連結基であり、詳しくは、単結合または置換基を有していてもよい2価の炭化水素連結基を表す。該炭化水素連結基としては、炭素数1〜18の直鎖アルキレン基;炭素数2〜18の直鎖、分枝鎖または環状のアルケニレン基;炭素数2〜8のアルキニレン基;炭素数6〜20のアリーレン基が好ましい。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソプロピレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基、トリレン基、ビフェニレン基等が挙げられ、下記構造で表される基が特に好ましい。
【0014】
【化7】
【0015】
また、これらの連結基が置換基を有する場合、好ましい置換基としては、炭素数12以下のアルコキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基が挙げられる。
【0016】
次に、一般式(1)中のYについて詳述する。
Yは、後述するZに連結する連結基、或いは末端が水素原子である末端基を表す。連結基を表す場合、Yは2価ないし4価のいずれかの価数を有する基であり、特に前記アルカリ水可溶性高分子中の解離性水素との間で強い相互作用を生ずることが知られている基である。具体的には、以下の部分構造を有するものである。
【0017】
【化8】
【0018】
ここで、「以下の部分構造を有する」とは、連結基、或いは、末端基としてのYが上記部分構造を少なくとも1つ有することを意味し、上記部分構造を複数有するものであってもよい。従って、Yは、上記部分構造自体であってもよく、さらにこれらを複数個連結した基、或いは、上記部分構造と他の炭化水素基等とを連結した基等であってもよい。
特に、一般式(1)において、上記部分構造を有する好ましい化合物の具体例としては、アミド、スルホンアミド、ウレア、ウレタン、チオウレア等が挙げられる。
【0019】
次に、一般式(1)中のZについて詳述する。
Zは、Yが末端基である場合には存在せず、Yが連結基を表す場合にはp価の連結基、或いは末端基を表す。尚、pは、1〜4の整数を表す。Zは、好ましくは置換基を有していてもよい炭化水素連結基または末端基であり、炭化水素連結基としては、炭素数1〜18の直鎖、分枝鎖または環状アルキレン基またはアルキル基;炭素数6〜20のアリーレン基またはアリール基;炭素数2〜18の直鎖、分枝鎖または環状アルケニレン基またはアルケニル基;炭素数2〜18の直鎖、分枝鎖または環状アルキニレン基またはアルキニル基が好ましい。
【0020】
Zの好ましい具体例としては、1価の場合はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、セカンダリーブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ベンジル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、アリル基、ビニル基等が挙げられる。
また、2価以上の場合は、これらの1価の基から水素原子を価数に応じて除去したものが好ましい。
Zが置換基を有する場合、好ましい置換基としては、炭素数12以下のアルコキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基が挙げられる。
【0021】
本発明において好適に用いられる一般式(1)で表されるフェノール性化合物の具体例を以下に例示するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0022】
【化9】
【0023】
【表1】
【0024】
【化10】
【0025】
【表2】
【0026】
【化11】
【0027】
【表3】
【0028】
【化12】
【0029】
【表4】
【0030】
【化13】
【0031】
【表5】
【0032】
【化14】
【0033】
【表6】
【0034】
【化15】
【0035】
【表7】
【0036】
【化16】
【0037】
【表8】
【0038】
【化17】
【0039】
【化18】
【0040】
【化19】
【0041】
【化20】
【0042】
【化21】
【0043】
【化22】
【0044】
【化23】
【0045】
【化24】
【0046】
【化25】
【0047】
【化26】
【0048】
【化27】
【0049】
【化28】
【0050】
【化29】
【0051】
【化30】
【0052】
【化31】
【0053】
【化32】
【0054】
【化33】
【0055】
上記の化合物のうち、一般式(1)で表されるフェノール性化合物は、式中のXが、置換基を有していてもよい炭素数2以上の2価の連結基であることが保存安定性の観点から、特に好ましい。また、式中のYは、スルホンアミド構造、アミド構造、ウレア構造であることが、前記アルカリ水可溶性高分子中の解離性水素と強く相互作用させうる点で特に好ましい。
さらに、一般式(1)の芳香族炭化水素環Ar1 には、1ないし3個の任意の数の水酸基を、特定の−X−Y−Zの置換位置に対し、o、m、p位の任意の位置に有することができるが、合成時の製造適性の点でp位に水酸基1個を有するフェノール性化合物であることが、特に好ましい。
【0056】
さらに、上記一般式(1)で表されるフェノール性化合物は、その−X−Y−Z中に解離性活性水素を有するフェノール性化合物であることが好ましい。ここで、解離性活性水素とは、pKa4〜pKa15の範囲で解離性を有している水素であることを意味し、さらに、pKa5〜pKa13の範囲で解離性を有する水素であることが、現像性の観点から好ましい。
特に、−X−Y−Z中のYの部位に上記解離性活性水素を有していることが好ましい。この場合、Yは下記Y2 からなる群から選ばれる少なくとも1の部分構造を有する基であることが好ましく、詳しくは、Yが下記部分構造Y2 自体である場合のほか、これらを複数個連結した基、下記部分構造Y2 とYの通常の部分構造Y1 とを連結した基、或いは下記部分構造Y2 と他の炭化水素基等とが連結した基等である。
【0057】
【化34】
【0058】
本発明の一般式(1)で表されるフェノール性化合物は、平版印刷用材料を構成するアルカリ水可溶性高分子中の解離性水素と相互作用して現像液に対する溶解性を抑制するが、このフェノール性化合物がアルカリ水可溶性高分子の構成単位間に存在することにより構成単位間での相互作用が強く働き、密な結合を形成するため感光膜の膜密度を高めることができる。その結果、形成された膜は高密度な膜としうるため、レーザ露光時の光熱変換から得られる熱の膜内伝達性が良化し、且つ現像促進性が向上することにより高感度で、高い現像ラチチュードを得ることができる。またさらに、膜が高密度であるため、湿度、温度等の外的要因の影響を受け難く、またエネルギー的にも安定な状態を維持できることから、長期における保存安定性を向上させることができるのである。
【0059】
[(B)水不溶性、且つ、アルカリ水可溶性の高分子]
本発明のポジ型平版印刷版用材料では、バインダーポリマーとして、(B)水不溶性、且つ、アルカリ水可溶性の高分子(アルカリ水可溶性高分子)、即ち、高分子中の主鎖および/または側鎖に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体またはこれらの混合物を用いる。従って、本発明のポジ型平版印刷版用材料はアルカリ性の現像液で現像可能なものである。
中でも、下記(1)〜(6)に挙げる酸性基を高分子の主鎖および/または側鎖中に有するものが、アルカリ性現像液に対する溶解性の点、溶解抑制能発現の点で好ましい。
【0060】
(1)フェノール基(−Ar−OH)
(2)スルホンアミド基(−SO2 NH−R)
(3)置換スルホンアミド系酸基(以下、「活性イミド基」という。)
〔−SO2 NHCOR、−SO2 NHSO2 R、−CONHSO2 R〕
(4)カルボン酸基(−CO2 H)
(5)スルホン酸基(−SO3 H)
(6)リン酸基(−OPO3 H2 )
【0061】
上記(1)〜(6)中、Arは置換基を有していてもよい2価のアリール連結基を表し、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。
【0062】
上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有するアルカリ水可溶性高分子の中でも、(1)フェノール基、(2)スルホンアミド基および(3)活性イミド基を有するアルカリ水可溶性高分子が好ましく、特に、(1)フェノール基または(2)スルホンアミド基を有するアルカリ水可溶性高分子が、アルカリ性現像液に対する溶解性、現像ラチチュード、膜強度を十分に確保する点から最も好ましい。
【0063】
上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有するアルカリ水可溶性高分子としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
(1)フェノール基を有するアルカリ水可溶性高分子としては、例えば、フェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、p−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、フェノールとクレゾール(m−、p−、またはm−/p−混合のいずれでもよい)とホルムアルデヒドとの縮重合体等のノボラック樹脂、およびピロガロールとアセトンとの縮重合体を挙げることができる。さらに、フェノール基を側鎖に有する化合物を共重合させた共重合体を挙げることもできる。或いは、フェノール基を側鎖に有する化合物を共重合させた共重合体を用いることもできる。
フェノール基を有する化合物としては、フェノール基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、またはヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0064】
具体的には、N−(2−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o−ヒドロキシフェニルアクリレート、m−ヒドロキシフェニルアクリレート、p−ヒドロキシフェニルアクリレート、o−ヒドロキシフェニルメタクリレート、m−ヒドロキシフェニルメタクリレート、p−ヒドロキシフェニルメタクリレート、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート等が挙げられる。
【0065】
高分子の重量平均分子量は5.0×102 〜2.0×104 で、数平均分子量が2.0×102 〜1.0×104 のものが、画像形成性の点で好ましい。また、これらの高分子を単独で用いるのみならず、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。組み合わせる場合には、米国特許第4123279号明細書に記載されているような、t−ブチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体や、オクチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体を併用してもよい。
【0066】
(2)スルホンアミド基を有するアルカリ水可溶性高分子としては、例えば、スルホンアミド基を有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分として構成される重合体を挙げることができる。上記のような化合物としては、窒素原子に少なくとも一つの水素原子が結合したスルホンアミド基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物が挙げられる。
中でも、アクリロイル基、アリル基、またはビニロキシ基と、置換あるいはモノ置換アミノスルホニル基または置換スルホニルイミノ基と、を分子内に有する低分子化合物が好ましく、例えば、下記一般式(2)〜(6)で示される化合物が挙げられる。
【0067】
【化35】
【0068】
〔式中、X1 、X2 は、それぞれ独立に−O−または−NR27−を表す。R21、R24は、それぞれ独立に水素原子または−CH3 を表す。R22、R25、R29、R32及びR36は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基を表す。R23、R27及びR33は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。また、R26、R37は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。R28、R30及びR34は、それぞれ独立に水素原子または−CH3 を表す。R31、R35は、それぞれ独立に単結合、または置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基を表す。Y3 、Y4 は、それぞれ独立に単結合、または−CO−を表す。〕
【0069】
一般式(2)〜(6)で表される化合物のうち、本発明のポジ型平版印刷用材料では、特に、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0070】
(3)活性イミド基を有するアルカリ水可溶性高分子としては、例えば、活性イミド基を有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分として構成される重合体を挙げることができる。上記のような化合物としては、下記構造式で表される活性イミド基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物を挙げることができる。
【0071】
【化36】
【0072】
具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0073】
(4)カルボン酸基を有するアルカリ水可溶性高分子としては、例えば、カルボン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
(5)スルホン酸基を有するアルカリ可溶性高分子としては、例えば、スルホン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成単位とする重合体を挙げることができる。
(6)リン酸基を有するアルカリ水可溶性高分子としては、例えば、リン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
【0074】
上記アルカリ水可溶性高分子のうち、特に、前記フェノール性化合物中の特定の官能基−X−Y−Zとの間で強い水素結合性の相互作用を得ることができる点から、(1)フェノール性水酸基を有するアルカリ水可溶性高分子であることが特に好ましい。
【0075】
本発明のポジ型平版印刷版用材料に用いるアルカリ水可溶性高分子を構成する、前記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有する最小構成単位は、特に1種類のみである必要はなく、同一の酸性基を有する最小構成単位を2種以上、または異なる酸性基を有する最小構成単位を2種以上共重合させたものを用いることもできる。
【0076】
共重合の方法としては、従来知られている、グラフト共重合法、ブロック共重合法、ランダム共重合法等を用いることができる。
【0077】
前記共重合体は、共重合させる(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有する化合物が共重合体中に10モル%以上含まれているものが好ましく、20モル%以上含まれているものがより好ましい。10モル%未満であると、十分な現像ラチチュードを向上させることができない傾向がある。
【0078】
本発明では、化合物を共重合して共重合体を形成する場合、その化合物として、前記(1)〜(6)の酸性基を含まない他の化合物を用いることもできる。(1)〜(6)の酸性基を含まない他の化合物の例としては、下記(m1)〜(m12)に挙げる化合物を挙げることができる。
【0079】
(m1)例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、およびメタクリル酸エステル類。
(m2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、N−ジメチルアミノエチルアクリレート等のアルキルアクリレート。
(m3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート。
(m4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミドもしくはメタクリルアミド。
(m5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(m6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(m7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
(m8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(m9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(m10)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(m11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(m12)アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
【0080】
本発明のポジ型平版印刷版用材料に用いるアルカリ水可溶性高分子としては、単独重合体、共重合体に係わらず、重量平均分子量が1.0×103 〜2.0×105 で、数平均分子量が5.0×102 〜1.0×105 の範囲にあるものが感度および現像ラチチュードの点で好ましく。また、多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.1〜10のものが好ましい。
【0081】
本発明において共重合体を用いる場合、その主鎖および/または側鎖を構成する、前記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有する化合物に由来する最小構成単位と、主鎖の一部および/または側鎖を構成する、(1)〜(6)の酸性基を含まない他の最小構成単位と、の配合重量比は、現像ラチチュードの観点から、50:50〜5:95の範囲にあるものが好ましく、40:60〜10:90の範囲にあるものがより好ましい。
【0082】
前記アルカリ水可溶性高分子は、それぞれ1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよく、ポジ型画像形成材料の全固形分中、30〜99重量%の範囲で用いるのが好ましく、40〜95重量%の範囲で用いるのがより好ましいが、更には50〜90重量%の範囲で用いることが特に好ましい。
アルカリ水可溶性高分子の上記使用量が30重量%未満である場合には、記録層の耐久性が悪化する傾向にあり、また、99重量%を越える場合には、感度、耐久性が低下する傾向があるため好ましくない。
【0083】
次に、ノボラック樹脂について説明する。
本発明において、好適に用いられるノボラック樹脂としては、例えば、フェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、p−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、フェノールとクレゾール(m−、p−、またはm−/p−混合のいずれでもよい)とホルムアルデヒドとの縮重合体等のノボラック樹脂、および、ピロガロールとアセトンとの縮重合体を挙げることができる。或いは、フェノール基を側鎖に有するモノマーを共重合させた共重合体を用いることもできる。
【0084】
本発明で使用されるアルカリ水可溶性高分子の合成の際に用いることができる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0085】
上述のように、(A)一般式(1)で表されるフェノール性化合物と、(B)水不溶性、且つ、アルカリ水可溶性の高分子と、を同時に感光膜中に使用することにより、レーザ露光時の感度および現像ラチチュード、かつ保存安定性を向上させることができる。
この原理は必ずしも明確ではないが、種々の比較実験の結果から、架橋性作用を持つフェノール性化合物として特定の官能基−X−Y−Zを有するものが、感度、現像ラチチュードおよび保存安定性の点で優れていることを見出したものである。更に、この特定の官能基の効果について詳細に検討したところ、アルカリ水可溶性高分子中の解離性水素との相互作用(水素結合又はドナーアクセプター或いは酸塩基相互作用)が大きいものは、例えば、公知の文献として、”Hydrogen bonding” Joesten Schaad著 P291〜381に記載されているように、各官能基を有するモデル化合物とフェノール中の水酸基との間の相互作用のエンタルピー(−ΔH)が下記式を満足する場合は、特に、上述の感度、現像ラチチュード及び保存安定性の向上が可能であることが分かった。
−ΔH>3.0kcal/mol
このことから、高分子中に分散した上記フェノール性化合物が、アルカリ水可溶性高分子中の解離性水素と相互作用の強い官能基−X−Y−Zを有することで、それらの水素結合性の強い分子間相互作用により膜密度が向上し、塗膜における膜質が外的要因(水、熱)に対して強くなったこと、露光時に光熱変換されて生じた熱の伝達効率が向上し、かつ現像促進性が向上したこと、色素が高分子中に強く保持され、ポジ作用が向上したこと、等が本発明の本質であると推測される。
さらに、色素の添加量を過剰に混合した場合に、一般に、色素だけが高分子中から分離して表面に結晶化してくる、いわゆる泣き出しが、(A)一般式(1)で表されるフェノール性化合物を用いた場合には、この特定の官能基を持たない従来のものに比べて著しく低減することが実験事実として分かっており、これも上述の推測を支持するものであると考える。
【0086】
上記のような水素結合性の分子間相互作用は、フェノール性水酸基との間で働く相互作用が特に強いことが分かっており、用いるアルカリ水可溶性高分子中にフェノール性水酸基を有していることが好ましい。
さらに付け加えると、一般式(1)で表されるフェノール性化合物を用いることで、例えば、ポリヒドロキシスチレンのように高分子鎖の側鎖にフェノール性の水酸基があっても、ノボラックのように主鎖にフェノール性水酸基があっても十分に感度が得られる点、またこのフェノール性化合物自体が多官能で、ある程度分子量の大きいものであってもやはり十分な感度が得られる点等も、上述の推測を支持するものであると考える。
【0087】
[(C)オニウム塩型赤外線吸収剤]
本発明のポジ型平版印刷用材料では、赤外線吸収剤として、高分子の構成単位間におけるポジ作用(未露光部は現像抑制され、露光部ではそれが解除または消失される)を及ぼす必要がある点で、オニウム塩型構造を有するものを使用する。具体的には、シアニン色素、ピリリウム塩等の染料を好適に用いることができる。
好ましい上記染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、さらに、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。
【0088】
また、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料も好ましい染料として挙げることができる。
【0089】
さらに、特願平10−79912号に記載のアニオン性赤外線吸収剤も、好適に使用することができる。アニオン性赤外線吸収剤とは、実質的に赤外線を吸収する色素の母核にカチオン構造が無く、アニオン構造を有するものを指す。
例えば、(c1)アニオン性金属錯体、(c2)アニオン性カーボンブラック、(c3)アニオン性フタロシアニン、さらに(c4)下記一般式(7)で表される化合物などが挙げられる。これらのアニオン性赤外線吸収剤の対カチオンは、プロトンを含む一価の陽イオン、或いは、多価の陽イオンである。
【0090】
【化37】
【0091】
〔Ga - はアニオン性置換基を表し、Gb は中性の置換基を表す。Xm+は、プロトンを含む1〜m価のカチオンを表し、mは1ないし6の整数を表す。〕
【0092】
ここで、(c1)アニオン性金属錯体とは、実質的に光を吸収する錯体部の中心金属および配位子全体でアニオンとなるものを指す。
(c2)アニオン性カーボンブラックは、置換基としてスルホン酸、カルボン酸、ホスホン酸基等のアニオン基が結合しているカーボンブラックが挙げられる。これらの基をカーボンブラックに導入するには、カーボンブラック便覧第三版(カーボンブラック協会編、1995年4月5日、カーボンブラック協会発行)第12頁に記載されるように、所定の酸でカーボンブラックを酸化する等の手段をとればよい。
このアニオン性カーボンブラックのアニオン性基に、対カチオンとしてオニウム塩がイオン結合してなるアニオン性赤外線吸収剤は本発明に好適に用いられるが、カーボンブラックにオニウム塩が吸着した吸着物は、本発明のアニオン性赤外線吸収剤には包含されず、また、単なる吸着物では本発明の効果は得られない。
(c3)アニオン性フタロシアニンは、フタロシアニン骨格に、置換基として先に(c2)の説明において挙げたアニオン基が結合し、全体としてアニオンとなっているものを指す。
【0093】
次に、前記(c4)一般式(7)で表される化合物について、詳細に説明する。一般式(7)中、Mは共役鎖を表し、この共役鎖Mは置換基や環構造を有していてもよい。共役鎖Mは、下記式で表すことができる。
【0094】
【化38】
【0095】
〔式中、R1 、R2 、R3 はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、アミノ基を表し、これらは互いに連結して環構造を形成していてもよい。nは、1〜8の整数を表す。〕
【0096】
上記一般式(7)で表されるアニオン性赤外線吸収剤のうち、以下のA−1〜A−19のものが、好ましく用いられる。
【0097】
【化39】
【0098】
【化40】
【0099】
【化41】
【0100】
【化42】
【0101】
【化43】
【0102】
【化44】
【0103】
これらの染料は、平版印刷用材料中に平版印刷用材料全固形分に対し0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜10重量%、特に好ましくは0.5〜10重量%添加することができる。染料の添加量が0.01重量%未満であると、感度が低くなり、50重量%を越えると印刷時非画像部に汚れが発生する。
【0104】
本発明のポジ型平版印刷用材料には、さらに感度および現像ラチチュードを向上させる目的で、他の染料、顔料等を含有することもできる。
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、スクワリリウム色素、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
【0105】
また、顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
例えば、顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0106】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0107】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。顔料の粒径が0.01μm未満のときは分散物の画像記録層塗布液中での安定性の点で好ましくなく、また、10μmを越えると画像記録層の均一性の点で好ましくない。
【0108】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0109】
これらの染料又は顔料の平版印刷用材料全固形分に対する添加量は、0.01〜50重量%が好ましく、更には0.1〜10重量%が好ましい。また、染料の場合、特に好ましくは0.5〜10重量%であり、顔料の場合、特に好ましくは1.0〜10重量%の範囲で平版印刷用材料中に添加することができる。顔料又は染料の添加量が、0.01重量%未満であると感度が低くなり、また、50重量%を越えると印刷時非画像部に汚れが発生する。
【0110】
これらの染料または顔料は、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。また、上記の染料または顔料の中でも、赤外光、もしくは近赤外光を吸収するものが特に好ましい。また、染料および顔料は、2種以上併用してもよい。
【0111】
本発明のポジ型平版印刷用材料には、種々の添加剤を添加することができる。例えば、他のオニウム塩、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物等は熱分解性物質として作用するので、このような物質を添加すると、画像部の現像液への溶解阻止性を向上させることができるので好ましい。
【0112】
上記オニウム塩としては、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等を挙げることができる。本発明において用いられるオニウム塩として好適なものとしては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)、または、特開平5−158230号公報に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号、または特開平3−140140号公報に記載のアンモニウム塩、D.C.Necker et al,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4,069,055号、または同4,069,056号に記載のホスホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、Chem.& Eng.News,Nov.28,p31(1988)、欧州特許第104,143号、米国特許第339,049号、同第410,201号、特開平2−150848号公報、または特開平2−296514号公報に記載のヨードニウム塩、J.V.Crivello et al,Polymer J.17,73(1985)、J.V.Crivello et al.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Watt et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,22,1789(1984)、J.V.Crivello et al,Polymer Bull.,14,279(1985)、J.V.Crivello et al,Macromorecules,14(5),1141(1981)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,2877(1979)、欧州特許第370,693号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同3,902,114号、同410,201号、同339,049号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、または同3,604,581号に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、またはJ.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,PolymerChem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等が挙げられる。
【0113】
上記オニウム塩の対イオンとしては、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸、及びパラトルエンスルホン酸等を挙げることができる。
これらの中でも、特に、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸や2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸のようなアルキル芳香族スルホン酸が好適である。
【0114】
オニウム塩の添加量は、好ましくは1〜50重量%、更に好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。
【0115】
また、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。好適な染料として、油溶性染料と塩基性染料を挙げることができる。
具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)、アイゼンスピロンブルーC−RH(保土ヶ谷化学(株)製)等、及び特開昭62−293247号に記載されている染料を挙げることができる。
【0116】
これらの染料を添加すると、画像形成後の画像部と非画像部の区別が明瞭になるため、添加する方が好ましい。尚、添加量は、平版印刷用材料全固形分に対し、0.01〜10重量%の範囲が好ましい。
【0117】
また、更に感度を向上させる目的で、環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類を添加することもできる。環状酸無水物としては、米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4 −テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。
フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4′−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4′,4″−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4′,3″,4″−テトラヒドロキシ−3,5,3′,5′−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。
有機酸類としては、特開昭60−88942号、特開平2−96755号公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類およびカルボン酸類などがあり、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。
【0118】
上記の環状酸無水物、フェノール類および有機酸類の印刷版材料中に占める割合は、0.05〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15重量%、特に好ましくは0.1〜10重量%である。
【0119】
また、本発明の平版印刷用材料には、現像条件に対する処理の安定性を向上させるため、特開昭62−251740号や特開平3−208514号に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号、特開平4−13149号に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
【0120】
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0121】
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名アモーゲンK、第一工業(株)製)等が挙げられる。
【0122】
上記非イオン界面活性剤および両性界面活性剤の平版印刷用材料中に占める割合は、0.05〜15重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%である。
【0123】
本発明のポジ型平版印刷用材料中には、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には、特開昭50−36209号、同53−8128号の各公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53−36223号、同54−74728号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号および同63−58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
【0124】
また、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、特願平7−18120号公報記載のヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基を有するフェノール化合物、および、特願平9−328937号公報等に記載のアルカリ溶解抑制作用を有する架橋性化合物等を添加すると、保存安定性の点で好ましい。
【0125】
更に、本発明のポジ型平版印刷用材料中には、必要に応じて塗膜に柔軟性等を付与するために可塑剤を添加することもできる。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸またはメタクリル酸のオリゴマーおよびポリマー等を好適に用いることができる。
【0126】
また、本発明のポジ型平版印刷用材料中には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば、特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、全印刷版材料の0.01〜1重量%さらに好ましくは0.05〜0.5重量%である。
【0127】
本発明のポジ型平版印刷用材料は、以下の平版印刷版の一般的製造方法により製造することができる。
平版印刷版は、通常、上記各成分を溶媒に溶かして適当な支持体上に塗布することにより製造する。ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン、水等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独あるいは混合して使用される。溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50重量%である。また塗布、乾燥後に得られる支持体上の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、感光性印刷版として用いられる場合は、一般的に0.5〜5.0g/m2 が好ましい。
塗布する方法としては種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。塗布量が少なくなるにつれて見かけの感度は大になるが、感光膜の被膜特性は低下する。この塗布層は、平版印刷版において感光層となる。
【0128】
支持体としては、寸度的に安定な板状物であり、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート、もしくは蒸着された紙、もしくはプラスチックフィルム等を挙げることができる。
本発明で使用する支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板およびアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10重量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。
【0129】
本発明で用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm〜0.3mmである。
【0130】
アルミニウム板は粗面化して用いるが、粗面化するに先立ち、所望により表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤またはアルカリ性水溶液などによる脱脂処理を行うこともできる。
アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法および化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸または硝酸電解液中で交流または直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。
【0131】
このように粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理および中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、シュウ酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0132】
陽極酸化の処理条件は、用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80重量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2 、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。陽極酸化被膜の量は1.0g/m2 より少ないと耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。
【0133】
陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。本発明に使用される親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号および第3,902,734号に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか、または電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウムおよび米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
【0134】
支持体と感光層との間には、必要に応じて、下塗層を設けることもできる。下塗層成分としては種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸およびエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸およびグリセロリン酸などの有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸およびグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類、およびトリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等から選ばれるが、2種以上混合して用いてもよい。
【0135】
この有機下塗層は次のような方法で設けることができる。水またはメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液をアルミニウム板上に塗布、乾燥して設ける方法と、水またはメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液に、アルミニウム板を浸漬して上記化合物を吸着させ、その後水などによって洗浄、乾燥して有機下塗層を設ける方法である。前者の方法では、上記の有機化合物の0.005〜10重量%の濃度の溶液を種々の方法で塗布できる。また、後者の方法では、溶液の濃度は0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜5重量%であり、浸漬温度は20〜90℃、好ましくは25〜50℃であり、浸漬時間は0.1秒〜20分、好ましくは2秒〜1分である。これに用いる溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウムなどの塩基性物質や、塩酸、リン酸などの酸性物質によりpH1〜12の範囲に調整することもできる。また、平版印刷用材料の調子再現性改良のために黄色染料を添加することもできる。
【0136】
有機下塗層の被覆量は、2〜200mg/m2 が適当であり、好ましくは5〜100mg/m2 である。上記の被覆量が2mg/m2 よりも少ないと十分な耐刷性能が得られない。また、200mg/m2 より大きくても同様である。
【0137】
製造された平版印刷版は、通常、像露光、現像処理を施され、画像を形成する。像露光に用いられる活性光線の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。またg線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。レーザービームとしてはヘリウム・ネオンレーザー、アルゴンレーザー、クリプトンレーザー、ヘリウム・カドミウムレーザー、KrFエキシマレーザー、固体レーザー、半導体レーザー等が挙げられる。本発明においては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザ、半導体レーザが特に好ましい。
【0138】
用いる現像液および補充液としては、従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウムおよび同リチウムなどの無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も用いられる。
【0139】
これらのアルカリ剤は単独もしくは2種以上を組み合わせて用いられる。
これらのアルカリ剤の中で特に好ましい現像液は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸塩水溶液である。その理由はケイ酸塩の成分である酸化珪素SiO2 とアルカリ金属酸化物M2 O(Mはアルカリ金属を表す。)の比率と濃度によって現像性の調節が可能となるためであり、例えば、特開昭54−62004号公報、特公昭57−7427号公報に記載されているようなアルカリ金属ケイ酸塩が有効に用いられる。
【0140】
更に、自動現像機を用いて現像する場合には、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換する事なく、多量の平版印刷版を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。現像液および補充液には、現像性の促進や抑制、現像カスの分散および印刷版画像部の親インキ性を高める目的で、必要に応じて種々の界面活性剤や有機溶剤を添加できる。好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系および両性界面活性剤が挙げられる。更に現像液および補充液には必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸、亜硫酸水素酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩等の還元剤、更に有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
【0141】
上記現像液および補充液を用いて現像処理された平版印刷版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明の平版印刷用材料を印刷版として使用する場合の後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0142】
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化および標準化のため、印刷版用の自動現像機が広く用いられている。本発明における平版印刷版も、この自動現像機にて処理を施すことができるものである。この自動現像機は一般に現像部と後処理部からなり、印刷版を搬送する装置と各処理液槽およびスプレー装置からなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながらポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによって印刷版を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
【0143】
画像露光、現像、水洗および/またはリンスおよび/またはガム引きを施された後、平版印刷版上に不必要な画像部(例えば、原画フィルムのフィルムエッジ跡など)がある場合は、その不必要な画像部を消去する処置をとることもできる。消去方法としては、例えば、特公平2−13293号公報に記載されているような消去液を不必要画像部に塗布し、そのまま所定の時間放置した後に水洗する方法が好ましいが、特開平59−174842号公報に記載されているようなオプティカルファイバーで導かれた活性光線を不必要画像部に照射したのち現像する方法も利用できる。
【0144】
以上の処理を施された平版印刷版は、所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができる。耐刷力を向上させる目的で、バーニング処理を施してもよい。平版印刷版をバーニング処理する場合には、該バーニング処理前に、特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に平版印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布などが適用される。また、塗布した後にスキージ、あるいは、スキージローラーで、その塗布量を均一にするとより好ましい。整面液の塗布量は一般に0.03〜0.8g/m2 (乾燥重量)が適当である。
【0145】
整面液が塗布された平版印刷版を乾燥した後、バーニングプロセッサー(たとえば富士写真フイルム(株)より販売されているバーニングプロセッサー:「BP−1300」)などで高温に加熱してもよい。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している成分の種類にもよるが、180〜300℃の範囲で1〜20分の範囲が好ましい。
【0146】
バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引きなどの従来より行われている処理を施こすことができるが、水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合には、ガム引きなどのいわゆる不感脂化処理を省略することもできる。
【0147】
この様な処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機等に組込まれ、用紙等の印刷に用いられる。
【0148】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
<水不溶性、且つ、アルカリ水可溶性の高分子の合成>
(共重合体Pの合成)
攪拌機、冷却管及び滴下ロートを備えた500ml三ツ口フラスコにメタクリル酸31.0g(0.36モル)、クロロギ酸エチル39.1g(0.36モル)及びアセトニトリル200mlを入れ、氷水浴で冷却しながら混合物を攪拌した。この混合物にトリエチルアミン36.4g(0.36モル)を約1時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後、氷水浴を取り去り、室温下で30分間混合物を攪拌した。
【0149】
この反応混合物に、p−アミノベンゼンスルホンアミド51.7g(0.30モル)を加え、湯浴にて70℃に温めながら混合物を1時間攪拌した。反応終了後、得られた混合物を水1L中にこの水を攪拌しながら投入し、30分間得られた混合物を攪拌した。この混合物をろ過して析出物を取り出し、これを水500mlを加えてスラリーにした後、このスラリーをろ過し、得られた固体を乾燥することによりN−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミドの白色固体が得られた(収量46.9g)。
【0150】
次に、攪拌機、冷却管及び滴下ロートを備えた100ml三ツ口フラスコに、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド5.04g(0.0210モル)、メタクリル酸エチル2.05g(0.0180モル)、アクリロニトリル1.11g(0.021モル)及びN,N−ジメチルアセトアミド20gを入れ、湯浴により65℃に加熱しながら混合物を攪拌した。この混合物にラジカル重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(商品名:「V−65」、和光純薬(株)製)0.15gを加え65℃に保ちながら窒素気流下2時間混合物を攪拌した。この反応混合物にさらにN−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド5.04g、メタクリル酸エチル2.05g、アクリロニトリル1.11g、N,N−ジメチルアセトアミド20g及び上記「V−65」0.15gの混合物を2時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後、得られた混合物をさらに65℃で2時間攪拌した。反応終了後、メタノール40gを混合物に加え冷却し、得られた混合物を水2L中にこの水を攪拌しながら投入し、30分間混合物を攪拌した後、析出物をろ過により取り出して乾燥し、白色固体の共重合体P15gを得た。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、この共重合体Pの重量平均分子量(ポリスチレン標準)を測定したところ、5.3×104 であった。
【0151】
(実施例1〜5)
以下の組成の感光液1を調製した。
<感光液1の組成>
・下記表9の一般式(1)のフェノール性化合物 ・・・0.10g
・赤外線吸収剤(IR−1) ・・・0.20g
・m,p−クレゾールノボラック ・・・1.0 g
(m/p比=6/4、重量平均分子量3500、
未反応クレゾール0.5重量%含有)
・ビクトリアピュアブルーBOHの対アニオンを ・・・0.02g
1−ナフタレンスルホン酸アニオンにした染料
・フッ素系界面活性剤 ・・・0.05g
(メガファックF−177、大日本インキ化学工業(株)製)
・γ−ブチロラクトン ・・・3.0 g
・メチルエチルケトン ・・・8.0 g
・1−メトキシ−2−プロパノール ・・・7.0 g
【0152】
【化45】
【0153】
【表9】
【0154】
以下の方法により製造された支持体に、感光液1を塗布量が1.8g/m2 になるよう塗布し、平版印刷版を得た。これを、実施例1〜5とした。
【0155】
<支持体の作製>
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質1050)をトリクロロエチレンで洗浄して脱脂した後、ナイロンブラシと400メッシュのパミス−水懸濁液を用いこの表面を砂目立てし、水でよく洗浄した。このアルミニウム板を45℃の25%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに20%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2 であった。次に、このアルミニウム板を7%硫酸を電解液として電流密度15A/dm2 で3g/m2 の直流陽極酸化被膜を設けた後、水洗、乾燥し、さらに下記下塗り液を塗布し、塗膜を90℃で1分間乾燥した。乾燥後の塗膜の塗布量は10mg/m2 であった。
【0156】
<下塗り液の組成>
・β−アラニン ・・・ 0.50g
・メタノール ・・・95 g
・水 ・・・ 5.0 g
【0157】
(実施例6〜10)
下記組成の感光液2を調製した。
<感光液2の組成>
・下記表10の一般式(1)のフェノール性化合物 ・・・0.10g
・赤外線吸収剤(IR−2) ・・・0.20g
・上記方法により合成した共重合体P ・・・1.0 g
・ビクトリアピュアブルーBOHの対アニオンを ・・・0.02g
1−ナフタレンスルホン酸アニオンにした染料
・フッ素系界面活性剤 ・・・0.05g
(メガファックF−177、大日本インキ化学工業(株)製)
・γ−ブチロラクトン ・・・3.0 g
・メチルエチルケトン ・・・8.0 g
・1−メトキシ−2−プロパノール ・・・7.0 g
【0158】
【化46】
【0159】
【表10】
【0160】
実施例1と同様な方法にて製造された支持体に、感光液2を塗布量が1.8g/m2 になるよう塗布し、平版印刷版を得た。これを実施例6〜10とした。
【0161】
(比較例1)
前記感光液1の調製において、本発明の一般式(1)で表されるフェノール性化合物を添加しない他は、実施例1と同様にして平版印刷版を製造し、これを比較例1とした。
【0162】
(比較例2)
前記感光液2の調製において、本発明の一般式(1)で表されるフェノール性化合物を添加しない他は、実施例6と同様にして平版印刷版を製造し、これを比較例2とした。
【0163】
上記のように作製した実施例1〜10、および比較例1〜2の各平版印刷版について、下記の基準に基づき性能評価を行った。
【0164】
<感度および現像ラチチュードの評価>
実施例1〜10および比較例1〜2の平版印刷版を、下記表11に示すように、波長840nmの半導体レーザ、または波長1064nmのYAGレーザを用いて露光した。どちらのレーザを用いるかについては、含まれる赤外線吸収染料の吸収波長に応じて適宜選択した。露光後、富士写真フイルム(株)製現像液DP−4、リンス液FR−3(1:7)を仕込んだ自動現像機(「PSプロセッサー900VR」,富士写真フイルム(株)製)を用いて現像した。現像液DP−4は、1:6で希釈したものと1:12で希釈したものの二水準を用意した。
上記DP−4の1:6で希釈した現像液にて得られた非画像部の線幅を測定し、その線幅に相当するレーザーの照射エネルギーを求め、感度の指標(mJ/cm2 )とした。この測定値(mJ/cm2 )が小さいほど、平版印刷版の感度が高いことを示す。
【0165】
次に、標準である1:6で希釈した現像液と、より希薄な1:12で希釈した現像液にて得られた非画像部の線幅を測定し、その線幅に相当するレーザーの照射エネルギーを求め、両者の感度の差を現像ラチチュードの指標とした。その差が小さいほど現像ラチチュードが良好であり、20mJ/cm2 以下であれば、実用可能なレベルである。
【0166】
<保存安定性の評価>
実施例1〜10の平版印刷版を温度60℃、湿度45%RHの環境下で3日間保存し、その後、前記と同様の方法でレーザ露光および現像を行い、同様に感度を求め、前記の結果と比較しその差を求め、保存安定性の指標とした。感度の変動は、20mJ/cm2 以下であれば、保存安定性は良好であり、実用可能なレベルである。
表11に評価結果を示す。
【0167】
【表11】
【0168】
上記結果から、実施例1〜10の平版印刷版は比較例1〜2の平版印刷版に比べ、赤外線レーザに対する感度が高く、また、前記2水準の現像液を用いたときのそれぞれの感度の差が格段に小さく、十分に実用可能な現像ラチチュードを有することが分かる。
更に、実施例1〜10の平版印刷版は全てにおいて、比較例1〜2の平版印刷版に比べ、保存前後における感度変動が極めて小さく、保存安定性に優れ、十分に実用可能なレベルを満足している。
【0169】
【発明の効果】
本発明のポジ型平版印刷用材料は、赤外線を照射する固体レーザ及び半導体レーザーを用いて、直接コンピュータ等のデジタルデータから製版することができ、上記赤外線レーザに対し高感度で、かつ現像ラチチュードに優れ、しかも長期での保存安定性に優れる。
従って、赤外線レーザにより直接書き込み可能なダイレクト製版用印刷版として、好適に用いられるものである。
Claims (3)
- 前記一般式(1)の−X−Y−Z中に、解離性活性水素を有することを特徴とする請求項1に記載のポジ型平版印刷用材料。
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