JP3839585B2 - 車両用トラクション制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、左右駆動輪の発進、加速時のスリップを制御する車両用トラクション制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
駆動輪の路面に対するスリップが過大になるのを防止することは、車両の推進力を効果的に得る上で、またスピンを防止する等安全性の上で効果的である。そして、駆動輪のスリップを防止するためには、スリップの原因となる駆動輪の正味駆動トルクを減少させればよいことになる。
この種のトラクション制御を行うものは、例えば特許公報第2502982号の従来技術で開示しているように正味駆動トルクの調整に、制動力のみを調整するによるものや、エンジン発生トルクの調整と制動力の調整を併用するものが例示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、駆動輪に対するブレーキ液圧の制御に関してみれば、一般に車体速度に関連した複数の閾値の設定によって、駆動輪の車輪速度を複数の速度域に区分し、駆動輪速度が現在どの速度域に属するかを検出すると共に、この駆動輪速度が加速状態にあるか減速状態にあるかを検出し、これらの検出結果に基づいて、その駆動輪に対するブレーキ液圧の加圧、減圧、保持の制御を行うのが普通である。
しかしながら、このような駆動輪の挙動に依存してブレーキ液圧を加圧、減圧、保持する従来の制御装置においては、左右の駆動輪は差動装置を介して連結されているので、ブレーキ液圧を変化させることにより、一方が急減速すると他方が急加速してしまうというハンチング現象が生じて、左右の駆動輪間に大きな速度差が短時間に繰り返し発生するため、車体に振動が発生するという課題があった。
【0004】
本発明は、従来のトラクション制御装置における上述の如き課題を解決するためになされたものであり、本発明は、上記のようなハンチング現象により生じる車体の振動を防止することのできる車両用トラクション制御装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明の車両用トラクション制御装置は、車両の発進時または加速時に発生する左右駆動輪の路面に対するスリップを検出し、該検出結果に基づき、駆動輪に対するブレーキ液圧を加圧、減圧または保持のいずれかの状態に左右独立に制御して駆動輪のスリップを制御するようにしたトラクション制御装置において、車体速度より高い駆動輪速の目標値を、左右の駆動輪のそれぞれに独立して生成する目標値生成手段と、駆動輪速の目標値と実際の駆動輪速との偏差に基づき、該偏差の絶対値を減少させるための修正制動力を演算し、さらに該修正制動力に基づき、ブレーキ液圧を調整するための液圧増減分を演算する液圧演算手段と、該液圧増減分を累積することによりブレーキ液圧を推定して推定液圧の現在の極大値を左右駆動輪のそれぞれについて検出する極大値検出手段と、氷盤とスリップ状態のタイヤとの間に発生する力に相当する等価ブレーキ液圧よりも小さい所定値を極大値より減じた下限値を設け、推定液圧がこの下限値以下にならないよう液圧増減分を修正し、出力増減液圧を決定する液圧決定手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
また、前記左右の駆動輪速の平均値と、左右の駆動輪の駆動輪速の目標値の平均値との差の絶対値に基づいて、極大値と下限値の差が小さくなるように所定値を変化させることを特徴とする。
【0007】
また、前記極大値決定手段は、液圧増減分が更新されない状態が所定時間以上経過すると、そのときの推定液圧を推定液圧の極大値とすることを特徴とする。
【0008】
また、前記所定時間を、エンジンから前記駆動輪に至る動力伝達系の共振周波数の半周期より長い時間としたことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を実施の形態1について詳細に説明する。
図1は、本発明によるトラクション制御装置が適用される前輪駆動型の車両の全体の構成を示す図である。
図1に示すように、この車両においては左右の前輪7FL、7FRが駆動輪、左右の後輪7RL、7RRが従動輪とである。車体前部に搭載されたエンジン1の駆動トルクが、トルクコンバータ3aと遊星歯車式変速ギヤ機構3bと変速液圧制御装置3cを含む自動変速機3(以下ATと称す)から差動装置5および左右の前輪駆動軸6L、6Rを介して左右の前輪7FL、7FRに伝達される。
【0010】
エンジン1の吸気管1bには、アクセルペダル9と連動するように連結されたスロットル弁1aが配設されている。また、エンジン1周辺には、スロットル弁1aの開度θを検出するスロットル開度センサ60と、エンジン1の出力回転速度を検出するためのエンジン回転速度センサ61とを備えている。
各車輪の周辺には、各車輪の回転速度を検出するための車輪速センサ64FL、64FR、64RLおよび64RRと、各車輪の制動力を調整するための液圧アクチュエータであるホイールシリンダ38FL、38FR、38RL、38RRを備えている。
【0011】
トラクション電子制御装置50は、マイクロコンピュータ52と駆動回路54とより成っており、マイクロコンピュータ52は図1には詳細に示されていないが、例えば、中央処理ユニット(CPU)、リードオンメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)および入出力ポート装置を有し、これらが双方向性のコモンバスにより互いに接続された一般的な構成のものであってもよい。
【0012】
マイクロコンピュータ52の入出力ポート装置には、アクセルペダル位置センサ60で検出されるアクセルペダル位置Ap、エンジン回転速度センサ61で検出されるエンジン回転速度VE、車輪速センサ64FL〜64RRで検出され、それぞれ左右前輪および左右後輪の車輪速を示す信号VFL〜VRR、操舵角センサ65で検出される操舵角を示す信号δ、圧力センサ66で検出されるアキュムレータ36内の圧力を示す信号Pa、および、ブレーキペダル12に連動してオン・オフするブレーキスイッチ8のブレーキ信号SB(SB=1で踏込み、SB=0で非踏込み状態)が入力されるようになっている。
また、スロットル駆動機構7にスロットル開度調整出力がされるようになっている。
【0013】
また、マイクロコンピュータ52のROMは、後述の制御フローおよびマップを記憶しており、CPUは上述の種々のセンサによって検出されたパラメータに基づき、後述の如く種々の演算を行って、エンジンのスロットル駆動機構7を駆動してエンジンの出力を調整し、車体速度より高い駆動輪速の目標値としての目標回転速度Vtiを左右の駆動輪についてそれぞれ演算し、左右の目標回転速度Vtiの平均値と左右の駆動輪の実際の回転速度Viの平均値が一致するようにエンジン制御をする。そして、左右駆動輪のブレーキ液圧を調整して、左右の駆動輪Vi(以下サフィックスiで表わしi=1で左駆動輪をi=2で右駆動輪を表わす)の目標回転速度Vtiと実回転速度Viが一致するように左右独立でブレーキ液圧制御をしている。
【0014】
いずれかの目標回転速度Vtiと実回転速度Viの差(=偏差)が所定値より大きくなると、左右の駆動輪について独立にトラクション制御を開始し、路面に対する左右駆動輪のスリップがともに所定値以下になると、トラクション制御を終了する。
また、ブレーキスイッチ8が作動すると、トラクション制御は直ちに終了するようになっている。
【0015】
図2は制動装置の構成を概略的に示す図である。
図2において、制動装置10は、運転者によるブレーキペダル12の踏み込み操作に応答してブレーキオイルを第1のポート14aおよび第2のポート14bより圧送するマスタシリンダ14を備える。第1のポート14aは、前輪用のブレーキ液圧制御導管16により、左右前輪用のブレーキ液圧制御装置18および20に接続され、第2のポート14bは、途中にプロポーショナルバルブ22を有する後輪用のブレーキ液圧制御導管24により、左右後輪用のブレーキ液圧制御装置26および28に接続されている。
【0016】
また、制動装置10は、リザーバ30に貯容されたブレーキオイルを汲み上げ、高圧のオイルとして高圧導管32へ供給するオイルポンプ34を備えている。高圧導管32は、各ブレーキ液圧制御装置18、20、26、28に接続され、また、その途中にはアキュムレータ36が接続されている。
【0017】
各ブレーキ液圧制御装置18、20、26、28は、それぞれに対応する車輪に対する制動力を制御するホイールシリンダ38FL、38FR、38RL、38RR、3ポート2位置切換え型の電磁式の制御弁40FL、40FR、40RL、40RR、リザーバ30に接続された低圧導管42と高圧導管32との間に設けられた常開型の電磁式の開閉弁44FL、44FR、44RL、44RR、および、常閉型の電磁式の開閉弁46FL、46FR、46RL、46RRを備える。
【0018】
開閉弁44FL、44FR、44RL、44RRと、開閉弁46FL、46FR、46RL、46RRとの間をそれぞれ接続する高圧導管32は、接続導管48FL、48FR、48RL、48RRにより、制御弁40FL、40FR、40RL、40RRに接続されている。
なお、ホイールシリンダ38FL、38FR、38RL、38RRは説明の都合上、図2にも記載しているが、実際の装着位置は、図1に示す位置である。
【0019】
制御弁40FLおよび40FRは、第1の位置および第2の位置で切り替わるようになっており、第1の位置にあるときは、それぞれ前輪用のブレーキ液圧制御導管16とホイールシリンダ38FLおよび38FRとを連通すると共に、ホイールシリンダ38FLおよび38FRと接続導管48FLおよび48FRとを遮断し(図示の位置)、第2の位置にあるときは、ブレーキ液圧制御導管16とホイールシリンダ38FLおよび38FRとを遮断すると共に、ホイールシリンダ38FLおよび38FRと接続導管48FLおよび48FRとを連通する。
【0020】
同様に、制御弁40RLおよび40RRは、第1の位置にあるときは、それぞれ後輪用のブレーキ液圧制御導管24とホイールシリンダ38RLおよび38RRとを連通すると共に、ホイールシリンダ38RLおよび38RRと接続導管48RLおよび48RRとを遮断するが、第2の位置にあるときは、ブレーキ液圧制御導管24とホイールシリンダ38RLおよび38RRとを遮断すると共に、ホイールシリンダ38RLおよび38RRと接続導管48RLおよび48RRとを連通する。
【0021】
従って、制御弁40FL、40FR、40RL、40RRが第1の位置にあるときは、ブレーキペダル12を踏み込むことによってマスタシリンダ14内のブレーキオイルに発生する圧力が、ホイールシリンダ38FL、38FR、38RL、38RRに伝達され、ブレーキペダルの踏力に応じた制動力を得ることができる。
【0022】
また、制御弁40FL、40FR、40RL、40RRが第2の位置にあるとき、開閉弁44FL、44FR、44RL、44RRが開状態に制御されると共に、開閉弁46FL、46FR、46RL、46RRが閉状態に制御されると(図示の状態)、ホイールシリンダ38FL、38FR、38RL、38RRは、制御弁40FL、40FR、40RL、40RRおよび接続導管48FL、48FR、48RL、48RRを介して高圧導管32と連通され、これによりホイールシリンダ内の圧力が増圧される。
【0023】
逆に、制御弁40FL、40FR、40RL、40RRが第2の位置ある状況において、開閉弁44FL、44FR、44RL、44RRが閉弁されると共に、開閉弁46FL、46FR、46RL、46RRが開弁されると、ホイールシリンダ38FL、38FR、38RL、38RRは、制御弁40FL、40FR、40RL、40RRおよび接続導管48FL、48FR、48RL、48RRを介して低圧導管42と連通され、これによりホイールシリンダ内の圧力が減圧される。
【0024】
更に、制御弁40FL、40FR、40RL、40RRが第2の位置にある状況において、開閉弁44FL、44FR、44RL、44RRおよび開閉弁46FL、46FR、46RL、46RRが共に閉弁されると、ホイールシリンダ38FL、38FR、38RL、38RRは、高圧導管32および低圧導管42の何れとも遮断され、これによりホイールシリンダ38FL、38FR、38RL、38RR内の圧力がそのまま保持される。
【0025】
以上より、制動装置10は、制御弁40FL、40FR、40RL、40RRが第1の位置にあるときには、ホイールシリンダ38FL、38FR、38RL、38RRにより運転者によるブレーキペダル12の踏み込み量に応じた制動力を発生するが、制御弁40FL、40FR、40RL、40RRの何れかが第2の位置にあるときには、当該車輪の開閉弁44FL、44FR、44RL、44RRおよび開閉弁46FL、46FR、46RL、46RRを開閉制御することにより、ブレーキペダル12の踏み込み量および他の車輪の制動力に拘わらず、その車輪の制動力を制御できるようになっている。
【0026】
トラクション電子制御装置50により、トラクション制御の開始処理として、ポンプ34を駆動し、液圧回路をトラクション制御用に切替えるため、開閉弁44FL、44FRを駆動し、制御弁40FL、40FRも駆動する。
また、トラクション制御の終了処理として、ポンプ34を非駆動とし、液圧回路を通常に戻すために、開閉弁46FL、46FRを非駆動とし、制御弁40FL、40FRを非駆動とし、続いて開閉弁44FL、44FRも非駆動とする。トラクション制御中の制御弁40FL、40FR、40RL、40RR、開閉弁44FL、44FR、44RL、44RR、および、開閉弁46FL、46FR、46RL、46RRは、後に詳細に説明する如くトラクション電子制御装置50により制御される。
【0027】
次に、図3に示されたフローチャートを参照して、この発明の実施の形態1に係るブレーキ液圧制御の詳細について説明する。
図3は、この発明の実施の形態1に係る車両用トラクション制御装置の制御内容を概略的に示すフローチャートである。
なお、図3に示されたフローチャートによる制御は、図示しないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に繰り返し実行されるものである。
【0028】
また、以下の説明においては、図3の他に図4ないし図6を用いる。
ここに、図4は、図3に示すフローチャートのステップS60の内容を詳細に示すフローチャートである。
図5は、図3に示すフローチャートのステップS110の処理内容を詳細に示すフローチャートである。
図6は、車体速度に対する前輪速の比と、操舵角の関係を例示する特性図である。
図7は、ホイールシリンダとその配管を含む系における液圧と液量と関係を例示する特性図である。
図8は、トルクコンバータの速度比とトルク比および容量係数の関係を例示する特性図である。
図9は、左右の駆動輪速の平均値に対する所定値DPの関係を表す特性図である。
【0029】
まず、図3において、ステップS10では、上述した各センサが検出する信号、および、AT電子制御装置200より送信された変速段信号G_position等の信号の読み込みが行われる。ステップS20では、目標値生成手段としてのマイクロコンピュータ52により、次式(1)に従って左右独立の目標車輪速Vtiが演算される。なお、上述したように、サフィックスiは、i=1で左駆動輪を、i=2で右駆動輪を表わす。
Vti=MAX{VB・g(δ)/(1−λd)、Vtmin} (1)
ここで、VBは車速であり、従動輪速の平均値=(VRL+VRR)/2として表される。λdは目標スリップ率であり、数値例はλd=0.2である。
g(δ)は、操舵されたときの内外前輪の車速に対する比率であり、操舵角δの関数で車両のほぼ幾何学的な形状で決まる図6に示すような特性である。
MAX{x、y}は引数x、yのうち、いずれか大きい方が選択される関数を表しており、VBが0に近い値でもVtiが一定以上の値になるようにしてある。
【0030】
ステップS30では、目標車輪速Vtiと実車輪速Viの偏差Eは次式(2)で定義される演算を行う。
Ei=Vi−Vti (2)
【0031】
ステップS40では、偏差Eiに基づき、ViをVtiに一致させるための修正制動力ΔYiを次式(3)に従って演算する。
ΔYi=KI*Ei+KP*(Ei−Eli)+TD*(Vi−Vli)+ΔYli (3)
ここで、Eli、Vli、ΔYliは、それぞれ前回の処理において演算されたEi、Vi、ΔYiに対応する値であり、KI、KP、TDはそれぞれ重み付けの定数を表わす。
【0032】
ステップS50では、制動力Yiの上限値YUPPERを演算する。
まず駆動力Tdは次式(4)で演算される。
Td=GjKtKc(VE) (4)
ここで、Gjは変速段がj速のときのトルコン3aの出力から駆動輪までの減速比、トルク比Kt、容量係数Kcは図8に示すトルコンの特性で、ここでの速度比eは次式(5)で計算する。
e=VE/{0.5(V1+V2)Gj} (5)
【0033】
加速中の車両では、駆動輪制動力Yと駆動輪駆動力Tdと車両加速度αの関係は駆動輪の加速度項を無視すると次式(6)で近似できる。
Y1+Y2=Td−M{α+g(sinβ+μr)}r (6)
ここで、Mは車両の質量、rはタイヤ有効半径、gは重力加速度、βは道路勾配、μrタイヤ摩擦係数である。車両加速度αは、左右従動輪速度の平均値の時間微分値とし算出する。道路勾配βは不明であるが、g(sinβ+μr)の最尤値を0.1gとし、左右駆動輪の制動力比率をY1/Y2=0.5として制動力上限値YUPPERを次式(7)で算出し、この上限値でも駆動輪スリップが押さえきれない場合は一時的に上限値を大きくするといういわゆる適応制御を行う。
なお、車両の前後加速度センサがあれば、(このセンサの値)≒α+gsinβで表せるので、より精度の高い制動力上限値が設定できる。
YUPPER={Td−M(α+0.1g)r}/2 (7)
【0034】
ステップS60においては、ステップS40で演算された修正制動力ΔYiを得るために、開閉弁44FL、または、46FL、44FR、または、46RRを駆動する時間(パルス幅)であるパルス幅TPiを演算する。
図4は、ステップS60における制御内容を示すフローチャートである。
図4において、ステップS61では開閉弁の応動の限界からΔYiの絶対値が最低値ΔYmin以上であるかどうかをチェックし、ΔYiの絶対値がΔYmin未満であれば、フローはステップS76に進行し、ΔYiの絶対値がΔYmin以上であれば、フローはステップS65に進行する。
ステップS65では、次回への繰越し分であるΔYliをΔYli=0にして、修正制動力ΔYiをいわゆるブレーキ効力係数KBで除することで、ホイールシリンダ圧の液圧増減分としての(この場合は増圧分)ΔPiに変換する。
なお、ステップS30、40、50、60における制御処理は、液圧演算手段に行われるものである。
【0035】
次に、図8に示すブレーキ系統の液圧に対する液量の特性f(P)から、増圧分ΔPiに対応する増液量ΔQiを求め、以下の計算のために、Piの値をPliに代入した後、Piの値をPi+ΔPiに更新し(Pi=Pi+ΔPi)、Yiについても同様の更新処理を行い(Yi=Yi+ΔYi)、フローはステップS70に移行する。
【0036】
ステップS70では、制動力Yiとその上限値YUPPERの間にYi<YUPPERが成立するかどうかが判定され、ステップS72では、制動力Yiとその下限値KB・PLOWERの間にYi>KB・PLOWERが成立するかどうかが判定される。即ち、これらのステップでは、制動力Yiとその上限値YUPPERと下限値KB・PLOWERの間にあるかどうかがチェックされることになる。
これらの値の間にあれば、即ち、ステップS70および72の条件が共に成立すれば、フローはステップS80に移行する。一方、制動力Yiがこれらの値の間にない場合は、即ち、ステップS70または72のいずれかの条件が成立しないときは、フローはステップS74に移り、YiおよびPiは修正値を加算する前の値、即ち、更新前の値(=前回値)に戻され、ΔYiは0にクリヤされ、フローは次のステップS76に移る。
ステップS76では、修正制動力ΔYiの値は、次回分としてΔYliに代入された後、0にクリヤされ、開閉弁の駆動状態は変更しないので、パルス幅TPiも0にクリヤされる。
以上のステップS70、72、74および76に示す処理内容は、液圧決定手段としてのマイクロコンピュータによって行われるものである。また、ステップS72において用いる液圧の下限値PLOWERは、前回の処理において演算された値であり、その方法は、後述のステップS115で説明する。
【0037】
ステップS80では、増液量ΔQiの符号により、フローは増圧用計算ステップS85と減圧用計算ステップS82に分岐する。
それぞれのステップでは、増液量ΔQiをオリフィスの式(流速∝オリフィス前後の圧力差の平方根)からの流速で除することで開閉弁の駆動時間を求める。
【0038】
ステップS82では、低圧導管42の液圧を0とみなすとオリフィス前後の圧力差はPiで、オリフィスの形状・断面積で決まる係数をC2として流速はC2P1/2と求まるので、パルス幅TPiは、次式(8)で計算できる。
パルス幅TPi=ΔQi/(C2・Pi1/2)−t2 (8)
ここで、t2(>0)は、開閉弁46FLまたは46FRを駆動する際の無駄時間であり、ΔQiが負の値であるためt2を負の値として加算してある。
ステップS85においても同様にして、増圧のために開閉弁44FLまたは44FRを非駆動にするパルス幅TPiを計算する。t1は開閉弁の無駄時間である。
【0039】
ステップS100においては、更新されたパルス幅TPiに従って、制御対象となる開閉弁にパルスを出力する。パルス幅TPiの符号が正の場合は44FLまたは44FRを非駆動のためのパルス(オフ・パルス)をパルス幅TPi時間出力し、符号が負の場合は46FLまたは46FRを駆動するパルス(オン・パルス)をパルス幅TPiの絶対値分の時間出力する。
パルス幅TPiが0である場合は、開閉弁44FLまたは44FRは駆動出力で、46FLまたは46FRは非駆動状態とする。
ただし、今回更新されたパルス幅TPiが0である場合に限り、前回のパルス出力が終了していない場合は、前回のパルス出力が終了するまで続行する。
【0040】
ステップS110は、図5の詳細フローで説明する。
図5において、ステップS112で今回の処理で演算された推定ブレーキ液圧Piが、前回の処理で演算された推定ブレーキ液圧Pli以下である場合は、即ち、Pi>Pliが成立しない場合は、カウンタPCNTをチェックし、液圧極大値PPEAKが更新されない状態が所定時間PTIME以上連続したかどうかを判断する。
ステップS114において、PCNT=0であれば、即ち、Pi>Pliが所定時間以上成立していない場合は、更新すべき時間であるということで、フローはステップS115に移り、また、PCNT=0が成立しなければ、ステップS116でこのカウンタをダウンカウントする。
なお、このような所定時間は、エンジンから駆動輪に至る動力伝達系の共振周波数の半周期より長い時間とする。
【0041】
一方、ステップS112で今回の処理で演算された推定ブレーキ液圧Piが、前回の処理で演算された推定ブレーキ液圧Pliより大きい場合は、フローはステップS115に移り、推定ブレーキ液圧Piを液圧極大値PPEAKに代入し、液圧の下限値PLOWERを液圧極大値PPEAKから所定値DPを減算した値に更新し(PPEAK−DP)、カウンタPCNTをPTIMEで初期化する。
【0042】
なお、ステップS115における液圧極大値PPEAKの検出は、極大値検出手段としてのマイクロコンピュータ52によって行われるものであるが、ステップS115における液圧の下限値の更新は、液圧決定手段としてのマイクロコンピュータ52が行うものであり、ここで、更新された液圧の下限値は、次回の処理におけるステップS72で用いられるものである。
ここで、所定値DPは予め決められた値であり、DP=0.05Mg/KB程度の値である。
【0043】
また、駆動輪のスリップ状態(作動装置5の影響を排除するため左右駆動輪の平均値で表す量)に応じてDPを可変とすることでさらに好適なスリップ制御ができる。即ち、図9のように、左右駆動輪の平均値と左右目標駆動輪速の平均値の差の絶対値が小さければ、より小さい所定値DPとすることで、不必要な液圧変動を防止できるので、スリップ制御における速やかな応答性とハンチング防止を両立できる。
【0044】
以上、この発明の車両用トラクション制御装置によれば、液圧極大値より車体加速度換算で0.05g程度小さい値(ハンチング現象での駆動輪加速度例4〜6g程度に対して十分小さい値)に設定された液圧下限値でもって、増圧後の減圧出力に制限を掛けるため、片方が急減速すると他方が急加速してしまうというハンチング現象を減衰させることができる。一方、この操作量制限による目標値追従性への影響を軽減するために、液圧上限値を余裕のある値としているので、車両の推進力を効果的に得るとともに、スピンを防止する等安全性の上で効果的であるというトラクション制御の本来の目的を好適に達成できるという効果がある。
また、推定ブレーキ液圧の極大値より所定値小さい下限値制限を所定時間実施することにより駆動輪速度の変動のみに応動しないでしかも目標駆動輪速度に追従する制動力制御を行うことができるので、ハンチング現象を抑制して左右の駆動輪間の速度差を収束させ、車体振動を防止できるという効果が得られる。
【0045】
【発明の効果】
この発明の車両用トラクション制御装置は、車両の発進時または加速時に発生する左右駆動輪の路面に対するスリップを検出し、該検出結果に基づき、駆動輪に対するブレーキ液圧を加圧、減圧または保持のいずれかの状態に左右独立に制御して駆動輪のスリップを制御するようにしたトラクション制御装置において、車体速度より高い駆動輪速の目標値を、左右の駆動輪のそれぞれに独立して生成する目標値生成手段と、駆動輪速の目標値と実際の駆動輪速との偏差に基づき、該偏差の絶対値を減少させるための修正制動力を演算し、さらに該修正制動力に基づき、ブレーキ液圧を調整するための液圧増減分を演算する液圧演算手段と、該液圧増減分を累積することによりブレーキ液圧を推定して推定液圧の現在の極大値を左右駆動輪のそれぞれについて検出する極大値検出手段と、氷盤とスリップ状態のタイヤとの間に発生する力に相当する等価ブレーキ液圧よりも小さい所定値を極大値より減じた下限値を設け、推定液圧がこの下限値以下にならないよう液圧増減分を修正し、出力増減液圧を決定する液圧決定手段と、を備えることを特徴とするので、液圧極大値より車体加速度換算で0.05g程度小さい値(上記ハンチング現象での駆動輪加速度例4〜6g程度に対して十分小さい値)に設定された液圧下限値でもって、増圧後の減圧出力に制限を掛けるため、片方が急減速すると他方が急加速してしまうというハンチング現象を減衰させることができる。
【0046】
また、前記左右の駆動輪速の平均値と、左右の駆動輪の駆動輪速の目標値の平均値との差の絶対値に基づいて、極大値と下限値の差が小さくなるように所定値を変化させることを特徴とするので、トラクション制御が目標値に収束しつつある場合はより狭い範囲の操作量に限定できるため、不必要な液圧変動を防止できるので更に好適なトラクション制御を行うことができる。
【0047】
また、前記極大値決定手段は、液圧増減分が更新されない状態が所定時間以上経過すると、そのときの推定液圧を推定液圧の極大値とすることを特徴とするので、この液圧下限値を短時間(PTIME以下)で更新することにしているため急激な状況の変化により生じる減圧要求に対しては実質的な制御遅れを回避できより好適なトラクション制御を行うことができる。
【0048】
また、前記所定時間を、エンジンから前記駆動輪に至る動力伝達系の共振周波数の半周期より長い時間としたことを特徴とするので、目標追従性への影響をより軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明によるトラクション制御装置が適用される前輪駆動型の車両の全体構成を示す図である。
【図2】 制動装置の概略構成図である。
【図3】 本発明によるトラクション制御装置の実施の形態におけるブレーキ液圧制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】 上記スリップ制御ルーチンのステップS60の詳細フローチャートである。
【図5】 上記スリップ制御ルーチンのステップS110の詳細フローチャートである。
【図6】 車体速度に対する前輪速の比と操舵角の関係例の図である。
【図7】 ホイールシリンダとその配管を含む系の液圧−液量特性例の図である。
【図8】 トルクコンバータの速度比−トルク比、容量係数の特性例である。
【図9】 左右の駆動輪速の平均値に対する所定値DPの関係を表す特性図である。
【符号の説明】
50 トラクション電子制御装置、52 マイクロコンピュータ、200 AT電子制御装置。

Claims (4)

  1. 車両の発進時または加速時に発生する左右駆動輪の路面に対するスリップを検出し、該検出結果に基づき、前記駆動輪に対するブレーキ液圧を加圧、減圧または保持のいずれかの状態に左右独立に制御して前記駆動輪のスリップを制御するようにしたトラクション制御装置において、車体速度より高い駆動輪速の目標値を、左右の駆動輪のそれぞれに独立して生成する目標値生成手段と、前記駆動輪速の目標値と実際の駆動輪速との偏差に基づき、該偏差の絶対値を減少させるための修正制動力を演算し、さらに該修正制動力に基づき、ブレーキ液圧を調整するための液圧増減分を演算する液圧演算手段と、該液圧増減分を累積することにより前記ブレーキ液圧を推定して推定液圧の現在の極大値を左右駆動輪のそれぞれについて検出する極大値検出手段と、氷盤とスリップ状態のタイヤとの間に発生する力に相当する等価ブレーキ液圧よりも小さい所定値を前記極大値より減じた下限値を設け、前記推定液圧がこの下限値以下にならないよう前記液圧増減分を修正し、出力増減液圧を決定する液圧決定手段と、を備えることを特徴とする車両用トラクション制御装置。
  2. 前記左右の駆動輪速の平均値と、前記左右の駆動輪の駆動輪速の目標値の平均値との差の絶対値に基づいて、前記極大値と前記下限値の差が小さくなるように前記所定値を変化させることを特徴とする請求項1に記載の車両用トラクション制御装置。
  3. 前記極大値決定手段は、前記液圧増減分が更新されない状態が所定時間以上経過すると、そのときの推定液圧を推定液圧の極大値とすることを特徴とする請求項に記載の車両用トラクション制御装置。
  4. 前記所定時間を、エンジンから前記駆動輪に至る動力伝達系の共振周波数の半周期より長い時間としたことを特徴とする請求項に記載の車両用トラクション制御装置。
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