JP3839128B2 - 固体状重合体の乾燥方法および乾燥装置 - Google Patents

固体状重合体の乾燥方法および乾燥装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、固体状重合体から溶媒および/または重合原料を除去して重合体を乾燥する方法およびこの乾燥を効率的に行なうことができる乾燥装置に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
重合により得られる固体状重合体は、通常未反応重合原料あるいは重合時に用いた溶媒などを含有している。たとえばエチレンと1-ヘキセンとを気相重合させて得られるパウダー状オレフィン重合体(LLDPE)は、重合原料である1-ヘキセン、重合希釈媒体あるいは触媒のスラリー溶媒などを含有している。
【0003】
このような未反応重合原料を含む固体状重合体は、成形時あるいは使用時に爆発を起こす危険性がある。また固体状重合体に含まれる未反応重合原料および溶媒を大気中に放散させることは環境面からも好ましくない。このため従来より、重合で得られた固体状重合体は、乾燥工程に供し、乾燥ガスを用いて固体状重合体中に残存する重合原料および溶媒を除去している。
【0004】
またスラリー重合あるいは溶液重合などの液相重合では、得られる重合体液を遠心分離法あるいはフラッシュ・ドライ法などにより予備乾燥して固体状重合体を得た後、次いで上記のように乾燥ガスを用いて固体状重合体を乾燥している。
【0005】
上記のような固体状重合体の乾燥時には、乾燥ガスとして窒素などの不活性ガスまたは空気が用いられている。たとえば特公昭62−47441号公報には、単量体に対して不活性でありかつ酸素を実質上含まないガス(不活性ガス)を用いてオレフィン重合体を乾燥容器内へ搬送し、オレフィン重合体と乾燥ガス(不活性ガス)とを向流接触させて固体オレフィン重合体から未重合のガス状単量体を除去するとともに、乾燥ガスの一部を乾燥容器内に再循環させる方法が示されている。またポリオレフィンを乾燥させる際に乾燥ガスとして水を含有するガスを用い、ポリオレフィンの乾燥とともに重合で用いた触媒の失活処理も同時に行なう方法も提案されている(特公平7−5661号公報)。
【0006】
このような固体状重合体の乾燥においては、上記のように乾燥ガス(乾燥ガス)を乾燥容器に再循環させる方法は知られている。
ところで乾燥後に回収される不活性ガスは、溶媒または未反応重合原料を含んでいるので、これらを反応系に循環させて再使用すると溶媒または重合原料を有効的に利用することができる。しかしながら乾燥工程で回収された乾燥ガスをそのまま反応系に循環させると、溶媒または重合原料とともに不活性ガスが多量に重合器中に混入し、重合反応で消費されない不活性ガスが蓄積して重合効率を低下させてしまう。この不活性ガスは、重合器中の全ガスを放出することにより抜き出すので、このことは経済的に不利益である上、大気汚染などの点でも好ましくない。
【0007】
このため乾燥工程で回収される溶媒および/または未反応重合原料は、不活性ガスから分離して重合系に循環させることが望ましく、たとえば深冷分離法、吸着分離法などの方法によって重合原料と不活性ガスとを分離することが考えられる。しかしながらこれらの分離法を実施して回収された未反応重合原料を再利用するには過大なコストを要する。したがって乾燥工程から回収される溶媒および未反応重合原料は、分離して再利用せずに焼却または廃棄してしまうこともあった。
【0008】
上記のように従来、乾燥工程で回収される溶媒および/または未反応重合原料は非効率的に処理されており、重合原料の有効利用および環境面から、これらを効率よく回収して再利用しうる方法の出現が切望されていた。
【0009】
【発明の目的】
本発明は上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、固体状重合体を効率的に乾燥することができるとともに、固体状重合体中から回収された溶媒および未反応重合原料を効率よく再利用することができるような固体状重合体の乾燥方法およびこの乾燥を効率的に行なうことができる乾燥装置を提供することを目的としている。
【0010】
【発明の概要】
本発明に係る固体状重合体の乾燥方法は、
乾燥ガスとして用いることができる重合原料を重合あるいは共重合して得られた固体状重合体または該重合体の変性物を、乾燥ガスと接触させ、該固体状重合体中に残存する溶媒および/または未反応重合原料を除去して乾燥するに際して、
(i) 固体状重合体を製造する際に用いたガス状重合原料の少なくとも 1 つを、乾燥ガスと
して、固体状重合体と接触させて該固体状重合体を乾燥した後、
(ii)固体状重合体を、不活性気体含有乾燥ガスと接触させる方法であって、
工程 (i) から回収される水素を含有する乾燥ガスの一部を、工程 (i) に循環させることを特徴としている。
【0011】
上記工程(i) に供される固体状重合体に残存する溶媒および未反応重合原料の量が20重量%以下であることが好ましい。
工程(i) から回収される乾燥ガスは、その一部を重合工程に循環させて使用することができる。
【0012】
工程(ii)に供給される乾燥ガス中に含まれる不活性気体としては、具体的にはヘリウム、窒素、アルゴン、ネオンまたはこれらの混合物を例示でき、かつ該乾燥ガスは酸素を5%以下の量で含有していてもよい。
【0013】
さらに工程(ii)に供給される乾燥ガスは、ガス状または液体状の水を含有していてもよく、水を0.1重量%〜70重量%の量で含有していてもよい。
本発明では、固体状重合体と乾燥ガスとを向流接触させることが好ましい。
【0014】
上記のような本発明では、工程(i) から回収される乾燥ガスを、重合工程に循環させて使用することができる。またこの回収された乾燥ガスを冷却して凝縮成分を除去した後、一部を工程(i) に循環して使用することもできる。
【0015】
本発明に係る固体状重合体の乾燥装置は、固体状重合体を、重合原料を含む第1乾燥ガス、不活性ガスを含む第2乾燥ガスと順次向流接触させて、固体状重合体を乾燥させるための単一の乾燥容器からなる乾燥装置であって、
乾燥容器上部近傍に設けられた固体状重合体の供給口(b) と、
この固体状重合体供給口(b) の下方位置に設けられた第1乾燥ガス供給口(c)と、
乾燥容器頂部に設けられた固体状重合体と接触後の第1乾燥ガス排出口(a) と、
乾燥容器底部近傍に設けられた第2乾燥ガス供給口(d) と、
固体状重合体と向流接触後の第2乾燥ガスを回収するために、前記第1乾燥ガス供給口(c) と第2乾燥ガス供給口(d) との間の位置に乾燥容器内に配設された第2乾燥ガス捕集装置Dと、
この第2乾燥ガス捕集装置Dに捕集された第2乾燥ガスを乾燥装置外へ導出するための第2乾燥ガス捕集装置Dから乾燥容器外部に至る回収管路Eと、
前記第1乾燥ガスおよび第2乾燥ガスと向流接触して乾燥された固体状重合体を回収するために、乾燥容器底部に設けられた固体状重合体排出口(e) とから構成されており、
前記乾燥容器内に配設された第2乾燥ガス捕集装置Dによって、該乾燥ガス捕集装置Dより上方部分が、固体状重合体と第1乾燥ガスとの接触乾燥ゾーンを構成し、乾燥ガス捕集装置Dより下方部分が、固体状重合体と第2乾燥ガスとの接触乾燥ゾーンを構成しており、
前記第2乾燥ガス捕集装置Dが、乾燥容器内壁より乾燥容器中芯方向に張設され中央部分に開口を有する突板より構成されていることを特徴としている。
【0016】
回収管路Eの第2乾燥ガス回収部先端は、第2乾燥ガス捕集装置Dの下部近傍に位置していることが好ましい。
乾燥容器は、上部にドーム形状の頂部を有する円筒形状の直胴部を有するホッパー型乾燥容器であることが好ましい。
【0017】
前記突板の形状としては、逆円錐形状または逆多角形状が挙げられる。また突板が円盤形状であって、前記開口部がその中心部下方に延設された円筒状開口部からなる形状も挙げられる。
【0018】
このような構成の乾燥装置において、直胴部内径をD1 とし、捕集装置Dの最小内径をD4 とするとき、これらの比D4 /D1 が0.3〜0.8であることが好ましい。
【0019】
また第2乾燥ガス捕集装置Dは、乾燥容器中央部に乾燥容器内壁と間隙を有するように配設された傘状の捕集部材により構成されていてもよい。
傘状の捕集装置Dとしては、円錐状、多角錐状または円盤状などの形状が挙げられる。
【0020】
このような構成の乾燥装置において、直胴部内径をD1 とし、捕集装置Dの最大内径をD2 とするとき、これらの比D2 /D1 が0.2〜0.8であることが好ましい。
【0021】
乾燥装置は、ホッパー部の胴中間部に、上部直胴部内径D1 よりも大きな内径D5 を有する直胴部を有していてもよく、この上部直胴部内径D1 とホッパー部内直胴部内径D5 との比D1 /D5 が0.2〜0.7であることが好ましい。
【0022】
【発明の具体的説明】
以下本発明に係る固体状重合体の乾燥方法および乾燥装置について具体的に説明する。
【0023】
なお本発明において、「重合」という語は単独重合だけでなく共重合をも包含する意味で用いられることがあり、また「重合体」という語は単独重合体だけでなく共重合体をも包含する意味で用いられることがある。
【0024】
固体状重合体の乾燥方法
本発明では、重合により得られた固体状重合体または該固体状重合体の変性物を、乾燥装置内において乾燥ガスと接触させ、該固体状重合体中に残存する溶媒および/または未反応重合原料を除去して乾燥するに際して、
(i) 乾燥ガスとしてガス状重合原料を用いて固体状重合体と接触させた後、
(ii)次いで固体状重合体と、不活性気体含有乾燥ガスとを接触させる
ことを特徴としている。
【0025】
本発明において「固体状」とは互いに再結合しない塊状であればよく、特に好ましくはパウダー状(粒状も含む)である。
本発明では、乾燥に供される重合体は、固体状であること以外特に限定されず、重合方法あるいは重合原料なども特に限定されないが、後述するような乾燥ガスとして用いることができる重合原料から製造された固体状重合体であることが好ましく、具体的にこの重合原料の常圧における沸点が20℃以下であることが好ましい。
【0026】
このような固体状重合体として、たとえばポリオレフィンが挙げられる。このポリオレフィンは、炭素数2〜10好ましくは2〜6のオレフィンから導かれる重合体であることが好ましく、オレフィンとしては具体的にエチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン、1-ヘキセンなどが挙げられる。ポリオレフィンは、これらオレフィンの単独重合体であってもランダム共重合体あるいはブロック共重合体であってもよい。
【0027】
より具体的には、ホモポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)などのエチレンと他のα−オレフィンとの共重合体、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレンなどが挙げられる。これらオレフィンを主成分とするポリオレフィンは、ジエンなどの他のコモノマー成分を適宜含有していてもよい。
【0028】
上記のようなポリオレフィンは、チーグラー触媒、メタロセン触媒、フィリップス触媒など公知の重合触媒を適宜用いて、公知の重合方法によって製造されればよいが、この際スラリー法、溶液法などの液相重合法により製造された重合体は、乾燥に供するに先立って遠心分離法、スプレードライ法、フラッシュ・ドライ法などにより予備乾燥され、固体状重合体とされる。
【0029】
これらのうちでも本発明はスラリー重合または気相重合によって製造された固体状重合体を乾燥するのに適している。
また本発明では、上記のような重合体の変性物を乾燥に供することもでき、変性物としてはたとえば塩素化物、グラフト変性物、マレイン化物などが挙げられる。
【0030】
具体的には、乾燥工程に供される固体状重合体に残存する溶媒および未反応重合原料の量は20重量%以下であることが好ましい。
本発明では、まず乾燥装置内において、(i) 乾燥ガスとしてガス状重合原料を用いて固体状重合体と接触させている。
【0031】
この乾燥ガスとして用いられる重合原料は、常圧における沸点が20℃以下であり、固体状重合体を製造する際に用いた重合原料が用いられる。重合時に2種以上の重合原料を共重合させたときには、このうちの少なくとも1つの重合原料を用いればよいが、重合原料と同組成であってもよい。
【0032】
なお乾燥ガスとして共重合原料のうちの1種を用いるときには、低沸点原料を用いることが好ましい。たとえば固体状重合体として、エチレン・1-ブテン共重合体を製造したときには、乾燥ガスとしてエチレンを用いることが好ましい。
【0033】
上記のような工程(i) では、固体状重合体と乾燥ガスとの接触により、固体状重合体中に残存する未反応重合原料、重合時に用いられた溶媒が固体状重合体からパージされて除去され、乾燥ガスとともに回収される。
【0034】
本発明では、この回収乾燥ガスの一部を、工程(i) に循環させることもできるが、循環される乾燥ガス(リサイクルガス)は、重合時に用いた水素さらには他の化合物を含有していてもよい。このようなリサイクルガスに、共重合原料のうちの低沸点原料たとえばエチレンを新たに加えて循環させてもよい。
【0035】
また工程(i) から回収される乾燥ガスは、その一部または全部を重合工程に循環させて使用することもできる。この際重合系において共重合が実施されている場合には、必要に応じて回収乾燥ガスを冷却、凝縮させ、非揮発性成分と揮発性成分とに分離して共重合系に循環させることもできる。
【0036】
工程(ii)に供給される乾燥ガスとしては、不活性気体が用いられ、具体的にヘリウム、窒素、アルゴン、ネオンのいずれかまたはこれらの混合物が用いられる。
【0037】
この工程(ii)に供給される乾燥ガスは、酸素を含有していてもよいが酸素含有量は5重量%以下であることが好ましい。
さらに工程(ii)に供給される乾燥ガスは、ガス状または液体状の水を含有していてもよく、水を0.1重量%〜70重量%好ましくは1.0重量%〜50重量%特に好ましくは 2.0重量%〜40重量%の量で含有していてもよい。
【0038】
本発明では、上記のような工程(i) および工程(ii)において、固体状重合体と乾燥ガスとは向流接触させることが好ましい。
また上記のような乾燥は、乾燥温度が40℃〜120℃好ましくは60℃〜110℃特に好ましくは70℃〜100℃、乾燥圧力が0.0001MPa 〜0.6MPa 好ましくは0.001MPa 〜0.35MPa 特に好ましくは 0.01MPa 〜0.25MPa の条件下で行うことが望ましい。なお常圧(0.01MPa )以上の方が装置コストは安くなる。
【0039】
また乾燥時間は、工程(i) において、乾燥ガス(ガス状重合原料)と固体状重合体との接触時間(滞留時間)が、0.5分〜5時間好ましくは1分〜3時間さらに好ましくは2分〜2時間特に好ましくは5分〜1時間であることが好ましい。工程(ii)において、乾燥ガス(不活性ガス)と固体状重合体との接触時間(滞留時間)が、1分〜3時間好ましくは1分〜1時間さらに好ましくは2分〜30分特に好ましくは5分〜20分であることが望ましい。
【0040】
上記のような工程(i) においては、乾燥ガスとして用いられる重合原料の一部が重合するが、この重合熱が固体状重合体内部を暖めることにより脱ガス効率がよくなり、固体状重合体から未反応重合原料(モノマー)および溶媒の除去を効果的に行なうことができる。またこの際には固体状重合体中に溶解している重合原料も重合するので、固体状重合体中に残存する重合原料の量は、不活性ガスで乾燥する時よりも低減される。
【0041】
このように工程(i) における脱モノマー率は不活性ガスで乾燥する時よりも高いので、この工程(ii)において窒素などの高価な不活性ガス使用量を低減させることができる。
【0042】
また工程(i) から回収される乾燥ガスは、不活性ガスをほとんど含有しておらず、直接重合系に循環させることができ、重合系における不活性ガス蓄積などの問題を生じることがない。したがって不活性ガスを重合系から除去するため大気中に重合ガスを放出する必要がなく、未反応ガスおよび/または溶媒を効率的に再利用することができ、また環境面からも好ましい。
【0043】
また工程(ii)に供される固体状重合体では、重合原料量が極めて低濃度まで低減されているので爆発などの危険性が少なく、したがって工程(ii)で用いられる乾燥ガスは特に高純度窒素などの高価な不活性ガスでなくてもよく、少量であれば酸素を含んでいてもよく、乾燥ガスのコストを低下させることができる。
【0044】
さらに工程(ii)において水を用いた場合には、重合体に含まれる残留金属触媒成分、助触媒を不活性化合物することができ、造粒時の安定剤との反応を阻止すして、ペレット着色を防止することができる。
【0045】
本発明では、上記のような乾燥を実施するに際して、(i) ガス状重合原料と固体状重合体とを接触させた後に、(ii)固体状重合体と不活性ガスとを接触させることができれば、工程(i) および工程(ii)をそれぞれ別々の装置(分離型)で行なってもよく、また工程(i) および工程(ii)を一装置内(非分離型)で行なってもよい。
【0046】
この非分離型装置としては、たとえば後述するような本発明に係る乾燥装置を用いることができるが、以下本発明に係る固体状重合体の乾燥方法を、図1に示すような2基のホッパーを直列に接続した分離型乾燥装置で実施する場合を例にしてより具体的に説明する。
【0047】
また以下の説明においては便宜上、固体状重合体はポリオレフィン(LLDPE)とする。
図1において、固体状ポリオレフィンは、乾燥装置Aの上部ライン1から乾燥装置A内に導かれる。このライン1には、ライン1aからオレフィンガス(搬送ガス)が送入されている。
【0048】
加熱器3においてスチームなどで加熱されたオレフィン(たとえばエチレン)ガス(乾燥ガス)を、乾燥装置Aの下部ライン2から導入する。
乾燥装置A内において、固体状ポリオレフィンとオレフィンガスとを向流接触させる(工程(i) )。
【0049】
固体状ポリオレフィンは、次いで乾燥装置A底部からライン11を介して排出され、乾燥装置Bの頂部から乾燥装置内に導かれる。
一方乾燥装置Aの頂部ライン4から排出された回収ガスは、冷却器5を介して凝縮器6に導かれ、気液分離される。分離された高沸点成分(コモノマー)は、凝縮器6から圧縮器9によりライン10を介して重合系に循環させる。またガス(エチレンガス)の一部はライン7を介して重合系に循環させ、他のエチレンガスはライン8を介してたとえばライン1aから乾燥装置Aに循環させる。
【0050】
乾燥装置B内においては、乾燥装置Aライン11から供給された固体状ポリオレフィンと、乾燥装置B下部ライン12から供給された不活性気体含有乾燥ガスとを向流接触させる(工程(ii))。
【0051】
乾燥された固体状ポリオレフィンは、乾燥装置B底部ライン13から抜き出され、乾燥装置B頂部ライン14から排出された乾燥ガスはフレアーに導かれる。なおライン14から排出される乾燥ガスを乾燥装置Bに循環させてもよい。 図2には、以下に示すような発明に係る乾燥装置(非分離型)を用いて行なった時の本発明に係る固体状重合体の乾燥方法による乾燥工程を示す。なお図2中、図1と同番符号は図1と同様のものを示し、非分離型乾燥装置Cを用いる以外は上記分離型乾燥装置A、Bを用いるプロセスと同様である。
【0052】
なお上記には、固体状重合体としてポリオレフィン(LLDPE)を乾燥させる例について説明したが、本発明で乾燥される固体状重合体は、これに限定されないことはいうまでもない。
【0053】
重合体の乾燥装置
本発明に係る固体状重合体の乾燥装置は、固体状重合体を、重合原料を含む第1乾燥ガス、不活性ガスを含む第2乾燥ガスと順次向流接触させて、固体状重合体を乾燥させるための単一の乾燥容器からなる乾燥装置であって、
乾燥容器上部近傍に設けられた固体状重合体の供給口(b) と、
この固体状重合体供給口(b) の下方位置に設けられた第1乾燥ガス供給口(c) と、
乾燥容器頂部に設けられた固体状重合体と接触後の第1乾燥ガス排出口(a) と、
乾燥容器底部近傍に設けられた第2乾燥ガス供給口(d) と、
固体状重合体と向流接触後の第2乾燥ガスを回収するために、前記第1乾燥ガス供給口(c) と第2乾燥ガス供給口(d) との間の位置に乾燥容器内に配設された第2乾燥ガス捕集装置Dと、
この第2乾燥ガス捕集装置Dに捕集された第2乾燥ガスを乾燥装置外へ導出するための第2乾燥ガス捕集装置Dから乾燥容器外部に至る回収管路Eと、
前記第1乾燥ガスおよび第2乾燥ガスと向流接触して乾燥された固体状重合体を回収するために、乾燥容器底部に設けられた固体状重合体排出口(e) とから構成されている。
【0054】
図2に示すように、乾燥容器C内に配設された第2乾燥ガス捕集装置Dによって、該乾燥ガス捕集装置Dより上方部分が、固体状重合体と第1乾燥ガスとの接触乾燥ゾーンを構成し、乾燥ガス捕集装置Dより下方部分が、固体状重合体と第2乾燥ガスとの接触乾燥ゾーンを構成している。
【0055】
回収管路Eの第2乾燥ガス回収部先端は、第2乾燥ガス捕集装置Dの下部近傍に位置していることが好ましく、ガス捕集装置Dの高さ内に位置していることがより好ましい。
【0056】
上記のような乾燥容器は、上部にドーム形状の頂部を有する円筒形状の直胴部を有するホッパー型乾燥容器であることが好ましい。
このような非分離型乾燥装置において、各接触ゾーンにおける滞留時間は、
各接触ゾーンの容積(m3)/フィードパウダー体積速度(m3/分)
として決定することができる。
【0057】
ここで
1)固体状重合体と第1乾燥ガスとの接触ゾーンの容積(m3
捕集装置D最下端からポリマー粉面(高さはレベル計にて測定)までの乾燥装置の内部容積(捕集装置Dは無いものとして計算)する。通常は
直胴部の断面積(m2)×捕集装置D最下端からのポリマー高さ(m)
として求めている。
【0058】
ポリマー粉面高さは、パドル型、音叉型、超音波型、ロードセル型、放射線型(γ線)レベル計などを用いて測定することができる。
2)固体状重合体と第2乾燥ガスとの接触ゾーンの容積(m3
捕集装置D最下端から下方の容積部分の乾燥装置容積とする。通常は、
捕集装置D最下端から下方の直胴部容積(m3)+ホッパー部容積(m3
として求めている。
3)フィードパウダーの体積速度
フィードパウダー重量速度/嵩密度
として求める。
【0059】
第2乾燥ガス捕集装置Dは、乾燥容器中央部に乾燥容器内壁と間隙を有するように配設された傘状の捕集部材により構成されていてもよい。(図3参照)
傘状の捕集装置Dとしては、円錐状、多角錐状または円盤状などの形状が挙げられる。
【0060】
第2乾燥ガス捕集装置Dは、乾燥容器内壁より乾燥容器中芯方向に張設され中央部分に開口を有する突板より構成されていてもよい。(図4参照)
前記突板の形状としては、逆円錐形状または逆多角形状が挙げられる。また突板が円盤形状であって、前記開口部がその中心部下方に延設された円筒状開口部からなる形状も挙げられる。
【0061】
図3および図4に示す上部に断面円形の直胴部を有するホッパー形乾燥装置において、ホッパー部底部の乾燥ポリマー抜き出し部の角度φ1は、一般的に20°〜70°好ましくは25°〜60°さらに好ましくは25°〜50°である。
【0062】
捕集装置Dの広がり角度φ2は、20°〜120°好ましくは40°〜90°さらに好ましくは50°〜90°であることが望ましい。
図3に示すような断面形状の捕集装置では、直胴部内径をD1 とし、捕集装置Dの最大内径をD2 とするとき、これらの比D2 /D1 が、0.2〜0.8好ましくは0.3〜0.6特に好ましくは0.4〜0.55であることが望ましい。
【0063】
ホッパー部の乾燥ポリマー抜き出し出口(e) から、第2乾燥ガス(不活性ガス)供給口(d) までの高さをh1 とするとき、このh1 と直胴部内径D1 との比h1/D1が、0.05〜0.5好ましくは0.1〜0.3であることが望ましい。
【0064】
また直胴部最下端部から第1乾燥ガス(重合原料ガス)供給口(c) までの高さをh2とし、直胴部最下端部から捕集装置D頂部までの高さをh3とするとき、これらの比h2/h3は、1.0〜2.0好ましくは1.1〜1.7であることが望ましい。
【0065】
さらに直胴部最下端部から固体状重合体供給口(b) までの高さをh0とするとき、D1 =D5 (D5 はホッパー部最大内径)のときは、h0/h3が、2〜20好ましくは3〜15特に好ましくは5〜10であることが望ましい。
【0066】
図4に示すような捕集装置Dでは、捕集装置の最小内径をD4とするとき、D4/D1は、0.3〜0.8好ましくは0.4〜0.6であることが望ましい。
本発明に係る乾燥装置は、図5に示すようにホッパー部の胴中間部に、上部直胴部内径D1 よりも大きな内径D5 を有する直胴部を有していてもよい。
【0067】
このような乾燥装置では、上部直胴部内径D1 とホッパー部最大内径(直胴部)D5 との比D1 /D5 が一般に0.2〜0.7好ましくは0.3〜0.6であることが望ましい。
【0068】
また図5に示すようにD1 ≠D5 である乾燥装置では、h0高さでの平均滞留時間と、h3高さでの平均滞留時間との比が、2〜20好ましくは3〜15特に好ましくは5〜10であることが望ましい。なおこのようにD1 ≠D5 である乾燥装置において、一般にD5 はD1 より大きいが、D5 はD1 より小さくてもよい。
【0069】
捕集装置は、上記に示したような形状が適宜選ばれる。
本発明に係る乾燥装置では、重合原料ガスによる乾燥ゾーンにおいて、ピストンフロー性を示すことが望ましい時には、上記φ2を20°〜40°とするか、あるいは邪魔板を設けることもできる。
【0070】
なお不活性ガスによる乾燥ゾーンでは、必ずしもピストンフロー性が好ましいとは限らない。
【0071】
【発明の効果】
本発明に係る固体状重合体の乾燥方法によれば、固体状重合体を効率的に乾燥することができるとともに、固体状重合体中に残存する溶媒および未反応重合原料を効率的に回収して、重合系にあるいは乾燥装置へ循環して容易に再利用することができる。
【0072】
また本発明に係る固体状重合体の乾燥装置を用いれば、このような固体状重合体の乾燥を一装置内で効率的に行なうことができる。
【0073】
【実施例】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0074】
[実施例1〜6、参考例1〜8]
表1に示すような固体状重合体を、乾燥した結果を表1に示す。処理結果を、重合体中の高沸点成分(主反応オレフィンより分子量の大きいコモノマーおよび溶剤など)の分析結果として示す。
【0075】
測定方法:メチルイソブチルケトンにて重合体パウダーから抽出し、その抽出液をガスクロマトグラフにより定量分析した。
なお実施例1、4および、参考例1〜3、7〜9において、図1に示す工程(分離型)に準じて乾燥を行なった。
【0076】
実施例2、3、5、6および参考例4〜6において、図2に示す工程(非分離型)に準じて乾燥を行なった。この実施例2、3、5、6および参考例4〜6で用いた非分離型乾燥装置の概要を以下に示す。(図3参照)
φ1=50° φ2=75°D1=0.35m D2=0.175m D3=0.075m
1=0.08m h2=0.25m h3=0.175m
重合体高さは、γ線レベル計(γ線を放出する線源と、そのγ線を検知する検知管よりなる測定計)を用いて測定した。
【0077】
実施例1〜6および参考例1〜8において、図1および図2に示される装置を用いて重合体の乾燥を行なった結果、ライン4を介して排出される回収ガスへの、第二乾燥ガス(不活性ガス含有乾燥ガス)に由来する不活性ガスの混入は観察されなかった。さらに、図1および図2の乾燥装置を用いた実施例1〜6および参考例1〜8の重合体の製造方法では、モノマー(コモノマーを含む)の損失を、これらの乾燥装置を用いない重合体の製造方法でのモノマー損失量100(重量)に対して、約40(重量)まで低減することができた。
【0078】
【表1】
Figure 0003839128
【0079】
【表2】
Figure 0003839128

【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る固体状重合体の乾燥方法を、分離型乾燥装置を用いて実施したときの乾燥工程概略を示す。
【図2】本発明に係る固体状重合体の乾燥方法を、本発明に係る非分離型乾燥装置を用いて実施したときの乾燥工程概略を示す。
【図3】本発明に係る非分離型乾燥装置の好ましい形状と、捕集装置部分の概略説明例である。
【図4】本発明に係る非分離型乾燥装置の捕集装置部分の他の概略説明例である。
【図5】本発明に係る非分離型乾燥装置の他の形状例を示す。

Claims (14)

  1. 乾燥ガスとして用いることができる重合原料を重合あるいは共重合して得られた固体状重合体または該重合体の変性物を、乾燥ガスと接触させ、該固体状重合体中に残存する溶媒および/または未反応重合原料を除去して乾燥するに際して、
    (i) 固体状重合体を製造する際に用いたガス状重合原料の少なくとも 1 つを、乾燥ガスと
    して、固体状重合体と接触させて該固体状重合体を乾燥した後、
    (ii)固体状重合体を、不活性気体含有乾燥ガスと接触させる方法であって、
    工程 (i) から回収される水素を含有する乾燥ガスの一部を、工程 (i) に循環させることを特徴とする固体状重合体の乾燥方法。
  2. 上記工程(i) に供される固体状重合体に残存する溶媒および未反応重合原料の量が20重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の固体状重合体の乾燥方法。
  3. 工程(i) から回収される乾燥ガスの一部を重合工程に循環させて使用することを特徴とする請求項1に記載の固体状重合体の乾燥方法。
  4. 工程(ii)に供給される乾燥ガスは、不活性気体としてヘリウム、窒素、アルゴン、ネオンまたはこれらの混合物であり、かつ酸素含有量が5%以下であることを特徴とする請求項1に記載の固体状重合体の乾燥方法。
  5. 工程(ii)に供給される乾燥ガスが、ガス状または液体状の水を含有することを特徴とする請求項1に記載の固体状重合体の乾燥方法。
  6. 乾燥ガスが、水を0.1重量%〜70重量%の量で含有することを特徴とする請求項に記載の固体状重合体の乾燥方法。
  7. 固体状重合体と乾燥ガスとを向流接触させることを特徴とする請求項1に記載の固体状重合体の乾燥方法。
  8. 固体状重合体を、重合原料を含む第1乾燥ガス、不活性ガスを含む第2乾燥ガスと順次向流接触させて、固体状重合体を乾燥させるための単一の乾燥容器からなる乾燥装置であって、
    乾燥容器上部近傍に設けられた固体状重合体の供給口(b) と、
    この固体状重合体供給口(b) の下方位置に設けられた第1乾燥ガス供給口(c)と、
    乾燥容器頂部に設けられた固体状重合体と接触後の第1乾燥ガス排出口(a) と、
    乾燥容器底部近傍に設けられた第2乾燥ガス供給口(d) と、
    固体状重合体と向流接触後の第2乾燥ガスを回収するために、前記第1乾燥ガス供給口(c) と第2乾燥ガス供給口(d) との間の位置に乾燥容器内に配設された第2乾燥ガス捕集装置Dと、
    この第2乾燥ガス捕集装置Dに捕集された第2乾燥ガスを乾燥装置外へ導出するための第2乾燥ガス捕集装置Dから乾燥容器外部に至る回収管路Eと、
    前記第1乾燥ガスおよび第2乾燥ガスと向流接触して乾燥された固体状重合体を回収するために、乾燥容器底部に設けられた固体状重合体排出口(e) とから構成されており、
    前記乾燥容器内に配設された第2乾燥ガス捕集装置Dによって、該乾燥ガス捕集装置Dより上方部分が、固体状重合体と第1乾燥ガスとの接触乾燥ゾーンを構成し、乾燥ガス捕集装置Dより下方部分が、固体状重合体と第2乾燥ガスとの接触乾燥ゾーンを構成しており、
    前記第2乾燥ガス捕集装置Dが、乾燥容器内壁より乾燥容器中芯方向に張設され中央部分に開口を有する突板より構成されていることを特徴とする固体状重合体の乾燥装置。
  9. 前記回収管路Eの第2乾燥ガス回収部先端が、第2乾燥ガス捕集装置Dの下部近傍に位置していることを特徴とする請求項に記載の固体状重合体の乾燥装置。
  10. 前記乾燥容器が、上部にドーム形状の頂部を有する円筒形状の直胴部を有するホッパー型乾燥容器であることを特徴とする請求項8または9に記載の固体状重合体の乾燥装置。
  11. 前記突板が、逆円錐形状または逆多角形状であることを特徴とする請求項に記載の固体状重合体の乾燥装置。
  12. 前記突板が円盤形状であって、前記開口部がその中心部下方に延設された円筒状開口部からなることを特徴とする請求項に記載の固体状重合体の乾燥装置。
  13. 直胴部内径をD1 とし、捕集装置Dの最小内径をD4 とするとき、これらの比D4 /D1 が0.3〜0.8であることを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の固体状重合体の乾燥装置。
  14. ホッパー部の胴中間部に、上部直胴部内径D1 よりも大きな内径D5 を有する直胴部を有し、上部直胴部内径D1 とホッパー部内直胴部内径D5 との比D1 /D5 が0.2〜0.7であることを特徴とする請求項に記載の固体状重合体の乾燥装置。
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