JP3838886B2 - ジアルカノールアミンの製造方法、ジアルカノールアミン製造用触媒およびその製造方法 - Google Patents

ジアルカノールアミンの製造方法、ジアルカノールアミン製造用触媒およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルキレンオキシドをアンモニアでアミノ化させてジアルカノールアミンを選択的に製造するジアルカノールアミンの製造方法、ジアルカノールアミン製造用触媒および該触媒の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルキレンオキシドをアンモニアでアミノ化してアルカノールアミン類を製造する方法としては、工業的にエチレンオキシドと濃度20〜40質量%のアンモニア水とを反応させてエタノールアミン類を製造する方法が採用されている。
【0003】
この方法では、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンの3種類が生成するが、トリエタノールアミンの需要が減退している現在、トリエタノールアミンの生成を抑える製造方法が求められている。このため、エチレンオキシド1モルに対してアンモニアを3〜5モル程度にして、アンモニアを大過剰の条件下で反応を行いトリエタノールアミンの生成を抑制させているが、それでもトリエタノールアミンの選択率は10〜20質量%またはこれ以上であり、ジエタノールアミンの選択率は40質量%以下である。
【0004】
一方、水が存在しない系ではアルキレンオキシドとアンモニアとはほとんど反応せず、触媒の存在が不可欠である。アルキレンオキシドをアンモニアでアミノ化してアルカノールアミン類を製造する触媒として、例えば有機酸類、無機酸類、アンモニウム塩などの均一系の触媒や、スルホン酸基を樹脂に固定したイオン交換樹脂、または酸活性化粘土触媒、各種ゼオライト触媒、更に希土類担持触媒の使用が提案されている。
【0005】
しかし、イオン交換樹脂はアルカノールアミンの活性に優れるものの耐熱性に劣る。その一方、ゼオライト触媒等の無機触媒は耐熱性に優れるもののジアルカノールアミンの選択性が劣る。このような現状から、特開平11−322681号公報には、ジアルカノールアミンの選択率に優れるジアルカノールアミン製造用触媒に関する発明が開示されている。
【0006】
該公報に記載された触媒は、モノアルカノールアミンとアルキレンオキシドの反応速度定数を1としたときのアンモニアとアルキレンオキシドの反応速度定数αが0.10以上であり、かつモノアルカノールアミンとアルキレンオキシドの反応速度定数を1としたときのジアルカノールアミンとアルキレンオキシドの反応速度定数βが0.7以下となる反応特性を有する触媒である。βが小さければ小さいほど、ジアルカノールアミンの選択性が優れる。
【0007】
該公報に記載された触媒は、有効細孔径が0.45nmないし0.8nmであるマイクロポーラスマテリアル、またはマイクロポーラスマテリアルを希土類元素でイオン交換した触媒であって、これを用いることによってジアルカノールアミンを選択性高く製造することができるとしている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、マイクロポーラスマテリアルを希土類元素でイオン交換する場合、その交換率は低位であり、それゆえイオン交換で調製したマイクロポーラスマテリアルを触媒とした場合、ジアルカノールアミンの選択性が十分とはいえない。
【0009】
例えば、上記公報の実施例2では、ペンタシル型アルミノシリケート(結晶構造=MFI型、Al/Si原子比=1/30、比表面積=380m2/g、細孔径=0.54×0.56nm)を塩酸処理でプロトンにイオン交換した後、外表面にテトラメトキシシラン処理を行い結晶外表面を不活性化処理し、次いでこれを硝酸ランタン水溶液に含浸させ、該触媒を濾別した後に純水で洗浄し、乾燥、粉砕して触媒調製している。該触媒の希土類元素交換率についての記載はないが、実測すればイオン交換当量のおよそ4%であり、得られた触媒を使用してアンモニアとエチレンオキシドとを反応させると、αは0.125、βは0.22である。
【0010】
このような現状から、更にジアルカノールアミンの選択性に優れる触媒の開発が望まれる。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、この課題を達成するため鋭意検討の結果、メタロシリケートの交換可能なイオン交換当量の10%以上好ましくは15%以上更に好ましくは20%の量の希土類元素で担持されている触媒が、極めてジアルカノールアミンの選択率に優れること、およびこのような高い担持率を有する触媒は、メタロシリケートに希土類元素の塩を混合させ、これを塩の分解温度以下の高温で熱処理すると得られることを見いだし本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(6)を提供するものである。
【0013】
(1) アンモニアとアルキレンオキシドとの反応によってジアルカノールアミンを製造する際に用いる触媒であって、
該触媒はMFIおよび/またはMELの構造のメタロシリケートからなり、固相イオン交換法により製造され、該メタロシリケートのイオン交換当量の10〜100%の量の希土類元素担持ていることを特徴とする、ジアルカノールアミン製造用触媒。
【0015】
) アンモニアとアルキレンオキシドとの反応によってジアルカノールアミンを製造する際に用いる触媒の製造方法であって、
メタロシリケートに該メタロシリケートのT元素に対して希土類元素を4〜40モル%の割合で混合させ、次いで400〜1000℃で熱処理して固相で該T元素上のイオン交換サイトを該希土類元素でイオン交換することを特徴とする、ジアルカノールアミン製造用触媒の製造方法。
【0016】
) メタロシリケートに希土類元素を混合し、100〜350℃で保持し、次いで400〜1000℃で熱処理する、上記()記載のジアルカノールアミン製造用触媒の製造方法。
【0017】
(4) 該熱処理工程の前に水洗する工程を有する、上記()または()記載のジアルカノールアミン製造用触媒の製造方法。
【0018】
(5) 上記(1)記載の触媒の存在下に、アルキレンオキシドとアンモニアとを反応させることを特徴とする、ジアルカノールアミンの製造方法。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の第一は、アンモニアとアルキレンオキシドとの反応によってジアルカノールアミンを製造する際に用いる触媒であって、該触媒はメタロシリケートからなり、該メタロシリケートのイオン交換当量の10〜100%の量の希土類元素で担持されていることを特徴とする、ジアルカノールアミン製造用触媒である。
【0020】
従来から、メタロシリケートはアルカノールアミンの製造用触媒として使用されていた。また、特開平11−322681号公報に示すように、これに希土類元素を担持させた触媒も存在した。しかしながら、希土類元素を担持させるには希土類化合物含有水溶液に含浸させ、次いでこれを純水で洗浄した後に室温で乾燥して得ていたため、イオン交換当量のせいぜい5%を担持できるに過ぎなかった。このため、これ以上の希土類元素を担持させたメタロシリケートがジアルカノールアミンの選択率に及ぼす影響についても全く不明であった。
【0021】
特に、メタロシリケートなどの無機のイオン交換体は、そのイオン交換サイトのカチオンを他のカチオンで交換でき、これをメタロシリケートのイオン交換可能なサイトへの希土類元素のイオン交換率によって表現することができるが、この交換率はイオン交換平衡によって規定されるため、1回の操作で高い交換率を達成するには大過剰の交換金属含有溶液を用いる必要があり、またはイオン交換操作を何回か繰り返す必要があった。しかしながら、希土類元素のような多価でイオン半径の大きな金属イオンでは、交換平衡が不利であるためこの交換率は従来法ではせいぜい5%であった。
【0022】
本発明者らは、通常では困難なイオン交換による担持率を上げる方法について鋭意検討したところ、驚くべきことに溶液中でのイオン交換ではなく、混合および熱処理によるイオン交換方法、すなわち、メタロシリケートに該メタロシリケートのケイ素以外の金属原子(以下、T元素と称す。)に対して希土類元素を4〜40モル%の割合で混合させ、次いで400℃〜1000℃好ましくは500℃〜900℃の高温で熱処理することによってイオン交換または担持が促進され、メタロシリケートに希土類元素の担持率が上がることを見いだした。また、モンモリナイトなどの層状粘土鉱物では、層状構造に大きな層間を有するため、希土類元素イオンが容易にイオン交換サイトに到達して担持率を向上させているが、大きな層間を有しているが故に担持率を高めてもジアルカノールアミンの選択率が向上しない。これに対して、本発明の触媒は、アンモニアとアルキレンオキシドとの反応が細孔内で引き起こされるためジアルカノールアミン生成反応用触媒として優れた選択性を発揮し、また本反応の活性種を構成する希土類元素の含有量も多いため寿命も長いのである。なお、メタロシリケートへの希土類元素の結合は、イオン交換サイトへのイオン的な結合であるか、イオン交換サイトまたは他の部位への物理的な結合であるか、またはこれらの双方が関与しているのかはいまだ明らかでない。
【0023】
本発明で用いられるメタロシリケートは、アルミノシリケート、ガロシリケート、フェリシリケート、ボロシリケート、ジンコシリケートなどのケイ素以外の金属原子、すなわちT原子がAl、Ga、Fe、B、Znなどのものが挙げられる。
【0024】
ケイ素とT原子の原子比(Si/T)は5〜300の範囲が好ましく、より好ましくは7〜200、もっとも好ましくは10〜100の範囲である。T原子が多すぎる、すなわちSi/T原子比が小さいと、構造が不安定になり好ましくない。逆にT原子が少なすぎる、すなわちSi/T原子比が大きいと活性点を構成する酸点の数が少なすぎて十分な活性が得られず好ましくない。本発明では、十分な担持率を確保するために、特に5を越えるものが好ましい。
【0025】
メタロシリケートの種類としては国際ゼオライト学会の構造を示すフレームワークトポロジーコードで表すと、MFI、MEL、BEA、MOR、MTW、TONなどが挙げられるがジアルカノールアミンの選択率の面からMFIあるいはMELが好ましい。
【0026】
MFI構造を有するものとしては、合成高シリカ型ゼオライトとして知られるZSM−5がある。またMEL構造を有するものとしては、同じく合成高シリカ型ゼオライトとして知られるZSM−11がある。MFIとMELは構造がよく似ており、インターグロースが起こって一つの結晶の中に両方の構造を含む場合があるが、本発明ではいずれも使用できる。
【0027】
なお、本発明で使用するメタロシリケートは、公知の方法で調製することができる。例えば、通常シリカ源・T原子源と構造指示剤を水中に分散させ、オートクレーブ中で加熱するいわゆる水熱合成法によって調製できる。またシリカ源・T原子源と構造指示剤とを濃縮乾固したゲルをオートクレーブ中で水蒸気と接触させる、いわゆるドライゲル法などで調製することもできる。なお、上記ZSM−5やZSM−11などの市販のゼオライトを用いることもできる。
【0028】
また、アルキレンオキシドとアミンとの反応は主として細孔内で起こるので、選択性を発現させるためには上述したメタロシリケートの有効ミクロ細孔径は0.45〜0.8nmであり、好ましくは0.5〜0.7nmである。
【0029】
上記有効ミクロ細孔径の範囲は、反応原料が細孔内に拡散することが困難になって活性が低下することがなく、逆にトリアルカノールアミンが細孔内で生成することがなくジアルカノールアミンの選択率が低下することがない点で好ましい。
【0030】
内部に大きなキャビティを持つX型やY型ゼオライト(国際ゼオライト学会の構造を示すフレームワークトポロジーコードで表すと、両方ともFAUに属する)は、このキャビティで大きな分子が生成できるので細孔出入口の細孔径から期待される形状選択性を示すことは少ない。
【0031】
また、細孔外での反応は形状選択性が期待できないため、結晶1次粒子の外表面を不活性化することが好ましい。不活性化処理の方法としては高温でのスチーミング処理、四塩化珪素処理、アルコキシシラン処理など挙げられる。またメタロシリケートを合成する場合、イオン交換サイトにはアルカリ金属イオンが入っている。その状態では酸性がほとんどなく活性が低い。そこでアルカリ金属イオンをプロトン、アンモニウムイオン、多価カチオン(特に希土類元素が好ましい)などでイオン交換して活性を上げることが望ましい。なお、通常水熱合成では生成したメタロシリケート中にアルカリ金属が対カチオンとして含まれているので、一旦アンモニウムイオンでイオン交換し、その後高温で焼成することによってプロトン型に交換することができる。
【0032】
本発明の触媒は、該メタロシリケートのイオン交換当量の10〜100%が希土類元素イオンで担持されることを特徴とする。なお、一般に、希土類元素は、メタロシリケートと接触させることでメタロシリケート中の交換可能なサイトでイオン交換すると考えられるが、物理的に担持されていることも考えられる。本願明細書では、上記したように、希土類元素がメタロシリケート中のイオン交換可能なサイトにイオン交換されている場合と、イオン交換サイトまたは他の部位に物理的に担持されている場合の両方を含む概念として担持率を用いた。なお、担持率は次の式で定義される。
【0033】
【数1】
Figure 0003838886
【0034】
なお、本明細書においてイオン交換当量とは、メタロシリケート単位質量あたりの交換可能なサイト数(mol/g)をいう。
【0035】
ここでメタロシリケート中の交換可能なサイト数は格子外にT原子が存在しなければ通常シリケート中のT原子の数×(4−T原子の価数)に比例する。例えばSi/Al原子比28のH−ZSM−5ゼオライトの交換可能なサイト数は次のようにして求められる。
【0036】
この場合、組成式は(HAlO2)(SiO228と考えられ、式量は1742.3である。従ってサイト数は1mol/1742.3g=0.574mmol/gとなる。希土類元素ランタン(3価)イオンでの担持率10%ということは、ランタンの価数が3価なので、0.574×(10/100)×(1/3)=0.0191mmol/gがイオン交換または担持することになる。
【0037】
本発明ではメタロシリケートのイオン交換当量の10〜100%(すなわち、担持率が10〜100%)、より好ましくは15〜80%、特には20〜50%の量の希土類元素で担持されたものが好ましい。10%を下回るとジアルカノールアミンの選択率に劣り、その一方、100%を越える担持率を得ることは、物理的な担持が増加することとなり好ましくない。
【0038】
本発明で使用するに好ましい希土類元素しては、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、ジスプロジウム、ホルミウム、エルビウム、イッテルビウム、イットリウム、スカンジウムなどがあり、こられのなかでもジアルカノールアミンの選択率の点から、ランタン、セリウム、イットリウムが好ましい。
【0039】
なお、本発明の触媒は、上記のいずれの触媒も、これをそのまま使用することができるが、利用に際して触媒を成形してもよい。メタロシリケートは非常に微細な結晶からなっており、単独では成形性が非常に悪く、成形するためには助剤あるいはバインダーを使わなければならない場合も多い。その場合の助剤あるいはバインダーとしては、シリカゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾルなどの各種酸化物ゾルや粘土鉱物類などが用いられる。
【0040】
また、成形してある程度の大きさになった触媒内部の拡散の影響による活性および選択性の低下を防止するため、細孔容積を大きくすることが好ましい。このためには成形時に細孔形成剤を加えて成形し、焼成操作によって除去して、細孔容積を増加させることができる。この細孔形成剤としては、たとえば硝酸アンモニウムや酢酸アンモニウムなどの各種アンモニウム塩、蓚酸や尿素などの有機化合物、各種ポリマーや繊維などの非水溶性有機化合物などが挙げられる。細孔の生成効率、成型のしやすさなどの面から非水溶性有機化合物が好適に使用でき、その非水溶性有機化合物としてはある程度吸湿性が有り、微細な粉体になっており数百度の高温処理で燃焼除去可能であればよく、特に結晶性セルロースが取扱性の面で好ましい。
【0041】
結晶性セルロースとしては、ろ紙を粉砕した粉末や、パルプを粉砕した粉体などが用いられる。結晶性セルロースなどの有機物の細孔形成剤を用いるときは、単なる加熱処理では分解除去できないので、酸素を含む気体中(空気を用いるのが便利である)で燃焼除去する。
【0042】
次に、本発明の第二は、アンモニアとアルキレンオキシドとの反応によってジアルカノールアミンを製造する際に用いるメタロシリケートの製造方法であって、メタロシリケートのT元素に対して希土類元素を4〜40モル%の割合で混合させ、次いで400〜1000℃で熱処理することを特徴とする、ジアルカノールアミン製造用触媒の製造方法である。
【0043】
本発明は、メタロシリケートなどのイオン交換体に多価でイオン半径の大きな希土類元素を結合する方法として、予め希土類元素を4〜40モル%の割合で混合させ、次いでこれを熱処理すると、驚くべきことに溶液中でのイオン交換ではなく、熱処理工程すなわち固相でイオン交換または担持が起こることを見出し、これによって従来と比較して極めて高いイオン交換等による担持率が得られることを見出したのである。しかも、このようにして得られた触媒は、ジアルカノールアミンの選択率が極めて高く、触媒の劣化も抑制される。
【0044】
本発明の触媒において、メタロシリケートに希土類元素を混合し熱処理する方法に制限はないが、一般には次のような手順で行われる。
【0045】
例えば、メタロシリケートと固体の希土類または希土類元素含有化合物を混合した後、乳鉢、ボールミルなどの粉砕器で粉砕混合し、熱処理する方法である。
【0046】
また、水などの溶媒に希土類元素または希土類元素含有化合物を溶解した溶液にメタロシリケート粉末を投入し分散させ溶媒を蒸発・乾燥などによって除去してメタロシリケートに希土類化合物を担持させた後に、熱処理する方法でもよい。
【0047】
なお、本発明において混合させる希土類元素の割合は、希土類元素の塩などをメタロシリケートのT元素に対して4〜40モル%、より好ましくは5〜30モル%、特に好ましくは6〜15モル%である。希土類元素の混合量によってジアルカノールアミンの選択率がことなり、4モル%を下回るとジアルカノールアミンの選択率に劣り、その一方、40モル%を越えても選択率に変化なく、かつ触媒の調製が困難となるからである。
【0048】
本発明で使用するに好ましい希土類元素としては、第一の発明に記載したと同様に、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、ジスプロジウム、ホルミウム、エルビウム、イッテルビウム、イットリウム、スカンジウムなどがあり、こられのなかでもジアルカノールアミンの選択率の点から、ランタン、セリウム、イットリウムが好ましい。
【0049】
また、希土類元素を担持させるために使用できる化合物には、希土類元素のハロゲン化物、硝酸塩・硫酸塩などの無機酸塩、更に希土類元素の酸化物、水酸化物、蓚酸塩・酢酸塩などの有機酸塩などが挙げられる。これらの中でも、熱処理によって分解するか洗浄除去が可能で触媒に不必要な成分が残存しない化合物が好ましい。このような化合物としては、硝酸ランタン、硝酸塩、塩化物等がある。
【0050】
なお、本発明で希土類元素をメタロシリケートに担持させるためにメタロシリケートと接触させた希土類元素または希土類元素含有化合物であって、担持されずに残存したものは、水などの溶媒によって洗浄除去することができる。水洗は、一般に脱イオン水を用いて、これに熱処理前の触媒を浸漬し、次いで上澄みを除去すればよい。
【0051】
次いで、本発明では、希土類元素の塩の分解温度以下、より好ましくは100〜350℃で一定時間保持することが好ましい。このように、400〜1000℃の熱処理に先立つ所定温度での保持を加えたのは、分解温度以下でも塩を分解させずに固相のイオン交換反応を進行させ得ることが判明したからである。ただし、分解温度を超える温度では固相イオン交換反応より塩の分解反応が早くなり、マイクロポーラスマテリアル表面に希土類元素の酸化物が析出するため好ましくない。なお、100℃以下では反応速度が遅すぎる。この温度での保持時間は、1〜48時間、より好ましくは2〜24時間、特に好ましくは3〜12時間である。1時間を下回るとイオン交換または担持が不充分であり、その一方48時間を越えても担持量に変化が少ない。
【0052】
次いで、希土類元素担持後に熱処理を行う。この温度は、メタロシリケート中に希土類元素イオンが拡散していくことが必要なため、400〜1000℃、より好ましくは500〜1000℃、特に好ましくは500〜900℃である。400℃を下回ると希土類元素イオンの拡散が十分でなく、その一方、1000℃を越えると触媒の結晶構造が崩壊するため好ましくない。
【0053】
熱処理の時間は特に限定されないが、通常1〜100時間である。高温で長時間処理するとメタロシリケートの結晶が崩壊する可能性があるので処理温度が比較的高い場合には処理時間は短い方が好ましい。また低温では希土類元素が十分拡散しない場合があるので、処理温度が比較的低温の場合には処理時間は長い方が好ましい。
【0054】
本発明の第三は、上記記載の触媒の存在下に、アルキレンオキシドとアンモニアとを反応させることを特徴とする、ジアルカノールアミンの製造方法である。
【0055】
本発明で使用するアルキレンオキシドに特に制限はないが、以下の式(I)で示される化合物が好ましい。具体的には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等の2〜4個の炭素原子を有するアルキレンオキシドが例示される。
【0056】
【化1】
Figure 0003838886
【0057】
(式中、R1、R2、R3およびR4は各々独立して水素原子、メチル基またはエチル基を表す。)
また、得られるジアルカノールアミンは、上記(I)式に対応する化合物であり、下記式(II)で示される化合物である。
【0058】
【化2】
Figure 0003838886
【0059】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8は各々独立して水素原子、メチル基またはエチル基を表す。)
具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン類等が例示される。
【0060】
反応は液相状態で行なうことが好ましく、一般には反応圧力は反応器内の最高温度における反応液の蒸気圧より高く保つ必要があるが、アルキレンオキシドの濃度が高く反応熱の除去が困難な場合はアンモニアの一部を気化させてその蒸発潜熱で反応熱を除去することもできる。この場合は反応圧力を反応系内の最高温度での反応液の蒸気圧より低くすることが好ましい。
【0061】
通常、アルカノールアミン類の製造は、40〜300℃の温度範囲で実施することができる。好ましい範囲は80〜200℃である。操作圧力は、1〜20MPaである。
【0062】
また、上述の条件下、液毎時空間速度(LHSV)に特に制限はないが1hr-1以上の条件が通常用いられる。なお、上記LHSVは次のように定義する。
【0063】
【数2】
Figure 0003838886
【0064】
本発明の方法を用いれば特にモノアルカノールアミンをリサイクルしなくとも、高効率でジアルカノールアミンを製造することができるが、断熱1段反応で実施する場合など、反応器入り口のアルキレンオキシド濃度に制約がある場合やモノアルカノールアミンをあまり製造する必要のない場合などには、生成したモノアルカノールアミンの一部を反応器にリサイクルすることにより、ジアルカノールアミンの生成量を増加させることもできる。
【0065】
なお、原料であるアンモニアと上記式(I)で示されるアルキレンオキシドとのモル比は特に制限はないが、適当な範囲に制御することにより、さらにジアルカノールアミンを選択的に製造することができることを見出した。すなわち、アルキレンオキシド1モルに対してアンモニアのモル数が、2β/α0.3以上、1/(1.5αβ0.5)以下である組成の反応原料を用いることがジアルカノールアミンを選択的に生産するために好ましいことを見出したものである。ここで、αは、モノアルカノールアミンとアルキレンオキシドの反応速度定数を1としたときのアンモニアとアルキレンオキシドの反応速度定数であり、βは、モノアルカノールアミンとアルキレンオキシドの反応速度定数を1としたときのジアルカノールアミンとアルキレンオキシドの反応速度定数である。
【0066】
【実施例】
以下に続く実施例は、主としてエチレンオキシドとアンモニアからのエタノールアミン類の製造例を示す。該実施例は、説明の目的に意図されるものであり、それにより本発明が限定されるものではない。
【0067】
実施例中の混合率(mol%)は、下式で定義される。
【0068】
【数3】
Figure 0003838886
【0069】
(実施例1)
塩化ランタン・7水和物1.98gを自動乳鉢に仕込み5分間粉砕した。そこへZeolyst社製 ZSM−5ゼオライト(Si/Al原子比28、アンモニウムイオン型)80.8gを投入し更に1時間粉砕した。これを磁製皿に移し、マッフル炉を用い550℃で3時間熱処理し、固相イオン交換を行った。このときの混合率は11.4モル%であった。
【0070】
熱処理後、イオン交換せずに残存した塩化ランタンを除去するために、脱イオン水500mlを用いて3回洗浄した。1回目のろ液中にランタンはわずかしか検出されなかった。
【0071】
洗浄後の粉体を120℃12時間乾燥し、圧縮成型した後、粉砕して20−50メッシュに粒径を揃え、もう一度550℃で3時間熱処理した。これを触媒Aとする。蛍光X線分析によれば、添加したランタンはほとんど触媒中に残っており担持率は30%であった。
【0072】
図1に示す装置を用いて反応を行った。反応管201は内径10mm長さ400mmのステンレス製に放熱を補償するヒーターを巻き保温したチューブを用いた。反応管内部には触媒層の温度プロファイルを測定するために熱電対を挿入できる保護管を設けた。この反応管に触媒A20mLを充填し、予熱器202で70℃に加熱した原料(アンモニア/エチレンオキシドモル比15)をLHSV 10hr-1で流通させ反応させた。
【0073】
反応開始2時間後と24時間後の速度パラメータを表1に示した。反応熱による温度上昇は、初期は入口100mm程度で150℃になったが、300時間経過後には触媒層出口付近でようやく温度150℃近くまで上昇するプロファイルとなり、比較例に比べると触媒の劣化は小さいものであった。
【0074】
(実施例2)
用いる塩化ランタン・7水和物の量を3.96gに変更した以外は実施例1と同様の操作を行って触媒を調製し、反応を行った。結果を表1に示す。
洗浄操作で残存したランタンが溶出するのが見られた。これを触媒Bとする。蛍光X線分析によれば、添加したランタンの約60%が触媒中に担持されて残っており担持率は37%であった。
【0075】
(実施例3)
硝酸ランタン・6水和物1.98gを脱イオン水200mlに溶解した溶液に、Zeolyst社製 ZSM−5ゼオライト(Si/Al原子比28、プロトン型)80gを加え、蒸発乾固してゼオライトにランタン化合物を均一に付着させた後、120℃で12時間乾燥した。この粉体を圧縮成型した後、粉砕して20−50メッシュに粒径を揃え、更にマッフル炉を用い600℃で3時間熱処理を行い、固相イオン交換を行った。これを触媒Cとする。担持率は27%であった。
【0076】
触媒Cを用いる以外は実施例1と同様に反応を行い、結果を表1に示した。
【0077】
(実施例4)
硝酸ランタン・6水和物2.05gを脱イオン水200mlに溶解した溶液に、常法により調製したZSM−11ゼオライト(Si/Al原子比30、プロトン型)80gを加え、蒸発乾固してゼオライトにランタン化合物を均一に付着させた後、120℃で12時間乾燥した。この粉体を圧縮成型した後、粉砕して20−50メッシュに粒径を揃え、更にマッフル炉を用い600℃で3時間熱処理を行い、固相イオン交換を行った。これを触媒Dとする。担持率は30%であった。
【0078】
触媒Dを用いる以外は実施例1と同様に反応を行い、結果を表1に示した。
【0079】
(実施例5)
硝酸ランタン・6水和物の代わりに硝酸セリウム・6水和物を用いる以外は実施例3と同様に触媒を調製した。これを触媒Eとする。
【0080】
触媒Eを用いる以外は実施例1と同様に反応を行い、結果を表1に示した。
【0081】
(比較例1)
硝酸ランタン・6水和物346gを脱イオン水800mlに溶解した溶液を60℃に加熱し、そこへZeolyst社製 ZSM−5ゼオライト(Si/Al原子比28、プロトン型)87.1gを撹拌しながら加えた。そのまま24時間溶液中でイオン交換を行った後、遠心分離操作で分離した。更に脱イオン水400mlに分散・洗浄・遠心分離操作を3回行った。120℃で12時間乾燥後、圧縮成型した。これを粉砕して20−50メッシュに粒径を揃え、更にマッフル炉を用い550℃で3時間焼成した。イオン交換当量の約50倍もの大過剰のランタンを用いているにもかかわらず、蛍光X線分析による担持率は5.1%しかなかった。これを触媒Xとする。触媒Xを用いる以外は実施例1と同様に反応を行い、結果を表1に示した。実施例1〜3と比較するとβが大きくジエタノールアミンの選択性が劣ることが分かる。触媒活性の劣化は比較的速く200時間程度で温度ピークが反応器出口付近に到達した。
【0082】
(比較例2)
用いるゼオライトをZSM−11にした以外は、比較例1と同様の手順で触媒を調製した。これを触媒Yとする。触媒Yを用いる以外は実施例1と同様に反応を行い、結果を表1に示した。実施例4と比較するとβが大きくジエタノールアミンの選択性が劣ることが分かる。
【0083】
(実施例6)
蒸発乾固後のゼオライトを250℃で12時間保持した以外は、実施例3と同様の操作を行って触媒Fを調製し、反応をおこなった。結果を表1に示す。
【0084】
(実施例7)
実施例6において、250℃で12時間保持後、イオン交換せずに残存した硝酸ランタンを除去するために、脱イオン水500mlを用いて4回洗浄した。3回目の濾液中にはランタンはわずかしか検出されなかった。
【0085】
洗浄後の粉体を120℃で12時間乾燥し、圧縮成型した後、粉砕して20〜50メッシュに粒径をそろえ、更にマッフル炉を用いて550℃で3時間熱処理を行った。これを触媒Gとする。触媒Gを用いる以外は実施例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
【0086】
(実施例8)
粒径0.7〜1mmシリカビーズ(富士シリシア化学製キャリアクト)100gにアルミン酸ナトリウム6.54g、水酸化ナトリウム1.87g、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(40質量%水溶液)38.5gを水58.1gに溶解させた溶液を撹拌しながら加え含浸させた。これを80℃で12時間乾燥後、水20gを底部に仕込んだ1リットルオートクレーブに水に接しないように設置し、180℃で10時間発生する蒸気で処理してMFI型ゼオライトを合成した。この時のSi/Al比は24である。
【0087】
このゼオライトビーズを硝酸アンモニウム水溶液でイオン交換してアンモニウム型にした後、550℃で5時間焼成してプロトン型にした。
【0088】
このプロトン型ゼオライトビーズを、3.4質量%硝酸ランタン水溶液に浸漬し細孔内に溶液を浸透させた後引き上げ、120℃12時間乾燥、250℃3時間熱処理後550℃3時間焼成して触媒Hを得た。ランタンの担持率は30%であった。触媒Hを用いる以外は実施例1と同様に反応を行なった。結果を表1に示す。
【0089】
【表1】
Figure 0003838886
【0090】
【発明の効果】
本発明の触媒は、ジアルカノールアミン生成の選択性が高いため、生成物のモノアルカノールアミンをリサイクルせずとも同等のアルカノールアミン類の生成比率となるので、未反応のアンモニアの回収コストが小さくなる。同時に供給原料の総量が減少するので反応系、回収系の装置を小さくする事ができ、設備費が小さくなる。更に、触媒寿命も長いため、再生に要する時間も比較的短く、効率よくアルカノールアミンを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、実施例で用いた反応装置の模式図である。
【符号の説明】
201・・・反応管、
202・・・予熱器、
210・・・エチレンオキシド、
211・・・アンモニア、
203、204、205・・・高圧ポンプ、
206・・・圧力制御弁、
207・・・アンモニアフラッシュ塔、
208・・・回収アンモニアタンク、
209・・・熱交換器。

Claims (5)

  1. アンモニアとアルキレンオキシドとの反応によってジアルカノールアミンを製造する際に用いる触媒であって、
    該触媒はMFIおよび/またはMELの構造を有するメタロシリケートからなり、固相イオン交換法により製造され、該メタロシリケートのイオン交換当量の10〜100%の量の希土類元素担持ていることを特徴とする、ジアルカノールアミン製造用触媒。
  2. アンモニアとアルキレンオキシドとの反応によってジアルカノールアミンを製造する際に用いる触媒の製造方法であって、
    メタロシリケートに該メタロシリケートのT元素に対して希土類元素を4〜40モル%の割合で混合させ、次いで400〜1000℃で熱処理して固相で該T元素上のイオン交換サイトを該希土類元素でイオン交換することを特徴とする、ジアルカノールアミン製造用触媒の製造方法。
  3. メタロシリケートに希土類元素を混合し、100〜350℃で保持し、次いで400〜1000℃で熱処理する、請求項記載のジアルカノールアミン製造用触媒の製造方法。
  4. 該熱処理工程の前に水洗する工程を有する、請求項または記載のジアルカノールアミン製造用触媒の製造方法。
  5. 請求項1記載の触媒の存在下に、アルキレンオキシドとアンモニアとを反応させることを特徴とする、ジアルカノールアミンの製造方法。
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