JP3838342B2 - 圧電体素子の製造方法及び脱脂装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は圧電体素子の製造方法に係り、特に、ウエハ面内の結晶配向を均一にし、圧電特性を均一にすることの可能な圧電体素子の製造方法に関する。また、このような圧電体素子を製造するための脱脂装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧電体素子は、電気機械変換機能を呈する圧電体膜を2つの電極で挟んだ素子であり、圧電体膜は結晶化した圧電性セラミックスにより構成されている。
【0003】
従来、圧電体素子の製造方法として、いわゆるゾルゲル法が知られている。すなわち、下部電極を形成した基板上に有機金属化合物のゾルを塗布して乾燥および脱脂させて圧電体の前駆体膜を形成する。この塗布、乾燥および脱脂の工程を所定回数実行した後、高温で熱処理して結晶化させる。これを更に厚膜化するには、結晶化した圧電体膜の上に更にゾルの塗布、乾燥および脱脂の工程、および結晶化工程を繰り返し実行する。
【0004】
上記の有機金属化合物のゾルを脱脂させる方法としては、箱型乾燥機を用いるもの、ホットプレートを用いるものが知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、箱型乾燥機を用いて脱脂する場合、有機金属化合物のゾルの表面から脱脂が始まってしまうため均一な脱脂ができず、PZT膜内に応力が発生したり、脱脂に時間がかかってしまうという問題がある。
【0006】
また、ホットプレートを用いて脱脂をする場合、ウエハ面内で結晶配向にばらつきを生じることが避けられず、圧電特性の面内の均一性が十分に得られない。圧電素子の膜厚が厚くなるほど、また基板サイズが大きくなるほど、1つの基板内における圧電特性のばらつきは顕著となる傾向があり、均一化の工夫が望まれていた。
【0007】
本発明は、圧電特性の面内均一性を向上することのできる圧電体素子の製造方法を提供することを目的とする。また、この圧電体素子を応用してインクジェットヘッドを製造した場合に、各ノズルからのインク吐出特性にばらつきのないインクジェットヘッドの製造方法を提供することを目的とする。また、これらの製造方法に用いられる脱脂装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究の結果、圧電特性の不均一が、ゾルに含まれる有機物を除去する工程(脱脂工程)におけるウエハ面内の温度分布に起因していることを見出し、本発明に至った。従来、脱脂温度の不均一が問題とされたことはなく、それが圧電特性のばらつきに影響するとは考えられていなかった。しかし、実際にはゾルの塗り重ね及びホットプレートによる脱脂の過程で基板が反ってくる場合がある。また、圧電体前駆体膜の結晶化アニールの後、再度ゾルを塗布して脱脂させ、結晶化させる工程を繰り返す場合もあり、結晶化アニールの過程では特に基板が反る傾向が強い。このような場合には、脱脂工程においてホットプレートに基板全体が密着しないため、ホットプレートに接触する部分は熱伝導により早く加熱されるが、ホットプレートに接触しない部分は加熱されるのが遅くなり、脱脂条件が不均一となる。このような脱脂条件の下で脱脂した場合には、結晶化後の圧電体の圧電特性に影響を及ぼし、圧電特性のウエハ面内分布が生じる原因となることが判ってきたのである。
【0009】
上記の課題を解決する圧電体素子の製造方法は、基板上に下部電極を形成する工程と、この下部電極上に有機金属化合物のゾルを塗布する工程と、この有機金属化合物のゾルをゲル化させる工程と、このゲル化した有機金属化合物を結晶化させて圧電体膜を形成する工程と、この圧電体膜上に上部電極を形成する工程とを備える圧電体素子の製造方法であって、前記有機金属化合物のゾルをゲル化させる工程は、前記有機金属化合物のゾルを乾燥させる工程と、これを脱脂させる工程とを備え、この脱脂させる工程において、遠赤外線を前記有機金属化合物に基板側のみから照射して加熱する、ことを特徴とする。
【0010】
また本発明のインクジェット式記録ヘッドの製造方法は、上記の製造方法により製造した圧電体素子を用いることを特徴とする。
【0011】
また本発明の脱脂装置は、基板上に下部電極を形成する工程と、この下部電極上に有機金属化合物のゾルを塗布する工程と、この有機金属化合物のゾルを乾燥させ、脱脂することによりゲル化させる工程と、このゲル化した有機金属化合物を結晶化させて圧電体膜を形成する工程と、この圧電体膜上に上部電極を形成する工程とを実行する圧電体素子の製造における脱脂装置であって、前記有機金属化合物に遠赤外線を照射するヒータを備え、前記ヒータは、前記基板側のみから加熱するように設けられたことを特徴とする。
【0012】
上記において、前記遠赤外線は、3μm以上5μm以下の範囲に波長スペクトルのピークを有することが望ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0015】
(インクジェットプリンタの全体構成)
図1は、本実施形態の方法により製造される圧電体素子を備えたインクジェット式記録ヘッドが使用されるプリンタの構造の説明図である。このプリンタには、本体2に、トレイ3、排出口4および操作ボタン9が設けられている。さらに本体2の内部には、インクジェット式記録ヘッド1、供給機構6、制御回路8が備えられている。
【0016】
インクジェット式記録ヘッド1は、本発明の製造方法で製造された圧電体素子を備えている。インクジェット式記録ヘッド1は、制御回路8から供給される吐出信号に対応して、ノズルからインクを吐出可能に構成されている。
【0017】
本体2は、プリンタの筐体であって、用紙5をトレイ3から供給可能な位置に供給機構6を配置し、用紙5に印字可能なようにインクジェット式記録ヘッド1を配置している。トレイ3は、印字前の用紙5を供給機構6に供給可能に構成され、排出口4は、印刷が終了した用紙5を排出する出口である。
【0018】
供給機構6は、モータ600、ローラ601・602、その他の図示しない機械構造を備えている。モータ600は、制御回路8から供給される駆動信号に対応して回転可能になっている。機械構造は、モータ600の回転力をローラ601・602に伝達可能に構成されている。ローラ601および602は、モータ600の回転力が伝達されると回転するようになっており、回転によりトレイ3に載置された用紙5を引き込み、ヘッド1によって印刷可能に供給するようになっている。
【0019】
制御回路8は、図示しないCPU、ROM、RAM、インターフェース回路などを備え、図示しないコネクタを介してコンピュータから供給される印字情報に対応させて、駆動信号を供給機構6に供給したり、吐出信号をインクジェット式記録ヘッド1に供給したりできるようになっている。また、制御回路8は操作パネル9からの操作信号に対応させて動作モードの設定、リセット処理などが行えるようになっている。
【0020】
(インクジェット式記録ヘッドの構成)
図2は、本実施形態の方法により製造される圧電体素子を備えたインクジェット式記録ヘッドの構造の説明図である。インクジェット式記録ヘッド1は、図に示すように、ノズル板10、圧力室基板20および振動板30を備えて構成されている。このヘッドは、オンデマンド形のピエゾジェット式ヘッドを構成している。
【0021】
圧力室基板20は、圧力室(キャビティ)21、側壁(隔壁)22、リザーバ23および供給口24を備えている。圧力室21は、シリコン等の基板をエッチングすることにより形成されたインクなどを吐出するために貯蔵する空間となっている。側壁22は圧力室21間を仕切るよう形成されている。リザーバ23は、インクを共通して各圧力室21に充たすための流路となっている。供給口24は、リザーバ23から各圧力室21にインクを導入可能に形成されている。なお圧力室21などの形状はインクジェット方式によって種々に変形可能である。例えば平面的な形状のカイザー(Kyser)形であっても円筒形のゾルタン(Zoltan)形でもよい。また圧力室が1室形用に構成されていても2室形に構成されていてもよい。
【0022】
ノズル板10は、圧力室基板20に設けられた圧力室21の各々に対応する位置にそのノズル穴11が配置されるよう、圧力室基板20の一方の面に貼り合わせられている。ノズル板10を貼り合わせた圧力室基板20は、さらに筐体25に納められて、インクジェット式記録ヘッド1を構成している。
【0023】
振動板30は圧力室基板20の他方の面に貼り合わせられている。振動板30には圧電体素子(図示しない)が設けられている。振動板30には、インクタンク口(図示せず)が設けられて、図示しないインクタンクに貯蔵されているインクを圧力室基板20内部に供給可能になっている。
【0024】
(層構造)
図3に、本実施形態の方法により製造されるインクジェット式記録ヘッドおよび圧電体素子のさらに具体的な構造を説明する断面図を示す。この断面図は、一つの圧電体素子の断面を拡大したものである。図に示すように、振動板30は、絶縁膜31より構成され、圧電体素子40は下部電極32上に圧電体薄膜層41および上部電極42を積層して構成されている。特にこのインクジェット式記録ヘッド1は、圧電体素子40、圧力室21およびノズル穴11が一定のピッチで連設されて構成されている。このノズル間のピッチは、印刷精度に応じて適宜設計変更が可能である。例えば400dpi(dot per inch)になるように配置される。
【0025】
絶縁膜31は、導電性でない材料、例えば二酸化珪素(SiO2)により構成され、圧電体層の変形により変形し、圧力室21の内部の圧力を瞬間的に高めることが可能に構成されている。
【0026】
絶縁膜31上には下部電極32を形成するが、絶縁膜31と下部電極32との間に、20nm程度のチタン又は酸化チタンの膜(密着層)を形成しても良い。
【0027】
下部電極32は、圧電体層に電圧を印加するための一方の電極であり、導電性を有する材料、例えば、白金(Pt)などにより構成されている。なお、下部電極32はこれに限らず、白金と同じFCC構造を有する金属であるイリジウム(Ir)で構成しても良い。下部電極32は、圧力室基板20上に形成される複数の圧電体素子に共通な電極として機能するように絶縁膜31と同じ領域に形成される。ただし、圧電体薄膜層41と同様の大きさに、すなわち上部電極と同じ形状に形成することも可能である。
【0028】
上部電極42は、圧電体層に電圧を印加するための他方の電極となり、導電性を有する材料、例えば膜厚0.1μmの白金(Pt)で構成されている。
【0029】
圧電体薄膜層41は、本発明の製造方法で製造された例えばペロブスカイト構造を持つ圧電性セラミックスの結晶であり、振動板30上に所定の形状で形成されて構成されている。
【0030】
圧電体薄膜層41の組成は、例えばジルコニウム酸チタン酸鉛(Pb(Zr0 . 56、Ti0 . 44)O3:PZT)等の圧電性セラミックスを用いる。その他、チタン酸鉛ランタン((Pb,La)TiO3)、ジルコニウム酸鉛ランタン((Pb,La)ZrO3)またはマグネシウムニオブ酸ジルコニウム酸チタン酸鉛(Pb(Mg、Nb)(Zr、Ti)O3:PMN−PZT)、ジルコニウム酸チタン酸バリウム(Ba(Zr、Ti)O3:BZT)などでもよい。
【0031】
(印刷動作)
上記インクジェット式記録ヘッド1の構成において、印刷動作を説明する。制御回路8から駆動信号が出力されると、供給機構6が動作し用紙5がヘッド1によって印刷可能な位置まで搬送される。制御回路8から吐出信号が供給されず圧電体素子40の下部電極32と上部電極42との間に電圧が印加されていない場合、圧電体薄膜層41には変形を生じない。吐出信号が供給されていない圧電体素子40が設けられている圧力室21には、圧力変化が生じず、そのノズル穴11からインク滴は吐出されない。
【0032】
一方、制御回路8から吐出信号が供給され圧電体素子40の下部電極32と上部電極42との間に一定電圧が印加された場合、圧電体薄膜層41に変形を生じる。吐出信号が供給された圧電体素子40が設けられている圧力室21ではその振動板30が大きくたわむ。このため圧力室21内の圧力が瞬間的に高まり、ノズル穴11からインク滴が吐出される。ヘッド中で印刷させたい位置の圧電体素子に吐出信号を個別に供給することで、任意の文字や図形を印刷させることができる。
【0033】
(製造方法)
次に、この実施形態による圧電体素子の製造方法を、インクジェット式記録ヘッドの製造方法と併せて説明する。図4及び図5は、本実施形態の方法による圧電体素子の製造工程断面図である。
【0034】
絶縁膜形成工程(S1)
絶縁膜形成工程は、シリコン基板20に絶縁膜31を形成する工程である。シリコン基板20の厚みは、側壁の高さが高くなりすぎないように、例えば200μm程度のものを使用する。絶縁膜31は例えば1μm程度の厚みに形成する。絶縁膜の製造には公知の熱酸化法等を用い、二酸化珪素の膜を形成する。なお、絶縁膜31の上に、好ましくは厚さ5nm〜40nm、更に好ましくは20nm程度のチタン膜又は酸化チタン膜(密着層:図示せず)を更に形成しても良い。この密着層は、絶縁膜31と下部電極32との密着性を向上させる。
【0035】
下部電極形成工程(S2)
この下部電極形成工程は、絶縁膜31又は密着層の上に下部電極32を形成する工程である。下部電極32は、例えば白金層を200nmの厚みで積層する。これらの層の製造は公知の電子ビーム蒸着法、スパッタ法等を用いる。
【0036】
更に、白金膜上に、チタン(Ti)の種層を好ましくは2nm〜20nm、更に好ましくは5nmの厚みで形成する。このチタン種層の形成には、例えば公知の直流スパッタ法等を用いる。この種層は一様の厚みで形成するが、場合によって島状となっても構わない。
【0037】
圧電体前駆体膜の形成(S3、S4)
次に、下部電極32上に圧電体前駆体膜41’を成膜する。圧電体前駆体膜41’は、後述の処理で結晶化されて圧電体薄膜41となる以前の、非晶質膜として構成される。本実施例ではPZT前駆体膜をゾル・ゲル法で成膜する。
【0038】
ゾル・ゲル法とは、金属アルコキシド等の金属有機化合物を溶液系で加水分解、重縮合させるものである。具体的には、まず、基板上に金属有機化合物を含む溶液(ゾル)41”を塗布し、乾燥させる(S3)。用いられる金属有機化合物としては、無機酸化物を構成する金属のメトキシド、エトキシド、プロポキシド、ブトキシド等のアルコキシドやアセテート化合物等が挙げられる。硝酸塩、しゅう酸塩、過塩素酸塩等の無機塩でも良い。
【0039】
本実施形態においては、PZT膜の出発原料として、Pb(CH3COO)2・3H2O、Zr(t−OCH4H9)4、Ti(i−OC3H7)4の混合溶液(ゾル)を用意する。この混合溶液を1500rpmで0.1μmの厚さにスピンコーティングする。塗布した段階では、PZTを構成する各金属原子は有機金属錯体として分散している。
【0040】
塗布後、一定温度で一定時間乾燥させ、ゾルの溶媒を蒸発させる。例えば、乾燥温度は例えば150℃以上200℃以下に設定する。好ましくは、180℃で乾燥させる。乾燥時間は例えば5分以上15分以下にする。好ましくは10分程度乾燥させる。
【0041】
乾燥後、さらに大気雰囲気下において一定の脱脂温度で一定時間脱脂する(S4)。脱脂温度は、300℃以上500℃以下の範囲が好ましい。この範囲より高い温度では結晶化が始まってしまい、この範囲より低い温度では、十分な脱脂が行えないからである。好ましくは360℃〜400℃程度に設定する。脱脂時間は、例えば5分以上90分以下にする。この範囲より長い時間では結晶化が始まってしまい、この範囲より短い時間では十分に脱脂されないからである。好ましくは10分程度脱脂させる。脱脂により金属に配位している有機物が金属から解離し酸化燃焼反応を生じ、大気中に飛散する。
【0042】
特に、本実施形態では、遠赤外線を照射することによって脱脂を行なうことに特徴がある。この遠赤外線は、基板側、すなわち有機金属化合物のゾル膜41”が形成された側と反対側から照射することにより、基板側から加熱することができるため、均一かつ効率的に脱脂を行なうことができる。
【0043】
図6は、上記脱脂工程において使用される脱脂装置の例を概念的に示す断面図である。脱脂装置は遠赤外線ヒータ500を備え、遠赤外線ヒータ500は、電熱線503を内蔵したセラミックプレート501と、セラミックプレートの裏面に固定された断熱材502とを備えている。電熱線503に電流を流すとジュール熱が発生し、セラミックプレート501を加熱する。セラミックプレート501は例えば約700℃まで加熱され、それにより外部に放射されるエネルギーは遠赤外線領域で強いエネルギーを示す。セラミックプレート501が平板状であるため、セラミックプレート501に対向してこれと平行に配された基板20に対して遠赤外線が均等に照射される。基板20は、基板20の全面が遠赤外線に均等に照射されるならば、セラミックプレートに対向させて一定時間固定してもよく、一定速度でベルト搬送し続けるようにしてもよい。
【0044】
遠赤外線は、基板20を構成するSi、絶縁膜31を構成するSiO2、下部電極32を構成する金属などの無機物によってはほとんど吸収されず、樹脂成分を多く含んだ有機化合物のゾル41”に多く吸収されてこれを加熱、脱脂する。遠赤外線は一般的には波長2.5μmから1000μmまでの電磁波を指すものとされているが、他の波長の波を含んでいても構わない。特に波長3μm以上5μm以下の遠赤外線は高分子によって吸収されやすいため、ゾル41”を有効に加熱することができる。従って3μm以上5μm以下の範囲に波長スペクトルのピークを有する遠赤外線ヒータを使用することが最も好ましい。
【0045】
この脱脂装置は熱伝導によってゾル41”を加熱するよりは非接触で加熱しているため、基板20が反って変形を生じてもゾル41”を均等に加熱することができるし、短時間でゾル41”の脱脂が可能である。また、基板20と遠赤外線ヒータ500との間の空気や、基板20等を大幅に加熱することがないため、省エネルギーで有効にゾル41”を加熱することができる。
【0046】
以上の塗布・乾燥・脱脂の工程を所定回数、例えば2回繰り返して2層からなる圧電体前駆体膜41’を形成する。
【0047】
結晶化工程(S5)
上記の工程によって得られた圧電体前駆体膜41’を加熱処理することによって結晶化させ、圧電体薄膜層41を形成する。焼結温度は材料により異なるが、本実施形態では650℃で5分から30分間加熱を行う。加熱装置としては、RTA(Rapid Thermal Annealing)装置、拡散炉等を使用することができる。
【0048】
この結晶化により、圧電体膜41が形成される。本実施形態では、厚膜化のため、ゾルの塗布・乾燥・脱脂を2回繰返し、更に結晶化させるという上述の工程を、7回繰り返す。したがって、ゾルの塗布1回あたりの膜厚が0.1μmの場合には、圧電体膜41の膜厚は1.4μmとなる。
【0049】
上部電極形成工程(S6)
以上により形成された圧電体薄膜41上に上部電極42を形成する。具体的には、上部電極42として白金(Pt)を100nmの膜厚にDCスパッタ法で成膜する。
【0050】
圧電体素子の形成(図5:S7)
次に、上部電極42上にレジストをスピンコートした後、インク室が形成されるべき位置に合わせて露光・現像してパターニングする。残ったレジストをマスクとして上部電極42、圧電体薄膜41をイオンミリング等でエッチングする。以上の工程により、個々の圧電体素子40が形成される。
【0051】
インクジェット式記録ヘッドの形成(S8、S9)
更に、インク室基板20にインク室21を形成し、ノズル板10を形成する。具体的には、インク室基板20に、インク室が形成されるべき位置に合わせてエッチングマスクを施し、例えば平行平板型反応性イオンエッチング等の活性気体を用いたドライエッチングにより、予め定められた深さまでインク室基板20をエッチングし、インク室21を形成する。エッチングされずに残った部分は側壁22となる。
【0052】
最後に、樹脂等を用いてノズル板10をインク室基板20に接合する。ノズル板10をインク室基板20に接合する際には、ノズル11がインク室21の各々の空間に対応して配置されるよう位置合せする。以上の工程により、インクジェット式記録ヘッドが形成される。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、均一な圧電特性を有する圧電体素子を製造することができる。また、この圧電体素子を用いてインクジェット式記録ヘッドを製造することにより、インク吐出特性の均一なインクジェット式記録ヘッドを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の方法により製造される圧電体素子を備えたインクジェット式記録ヘッドが使用されるプリンタの構造の説明図である。
【図2】上記インクジェット式記録ヘッドの構造の説明図である。
【図3】上記インクジェット式記録ヘッドおよび圧電体素子のさらに具体的な構造を説明する断面図である。
【図4】圧電体素子の製造工程断面図である。
【図5】圧電体素子の製造工程断面図である。
【図6】脱脂工程において使用される脱脂装置の例を概念的に示す断面図である。
【符号の説明】
100 インクジェット式記録ヘッド
10 ノズルプレート
20 圧力室基板
30 振動板
40 圧電体素子
500 遠赤外線ヒータ
501 セラミックプレート
502 断熱材
503 電熱線
Claims (5)
- 基板上に下部電極を形成する工程と、この下部電極上に有機金属化合物のゾルを塗布する工程と、この有機金属化合物のゾルをゲル化させる工程と、このゲル化した有機金属化合物を結晶化させて圧電体膜を形成する工程と、この圧電体膜上に上部電極を形成する工程とを備える圧電体素子の製造方法であって、
前記有機金属化合物のゾルをゲル化させる工程は、前記有機金属化合物のゾルを乾燥させる工程と、これを脱脂させる工程とを備え、この脱脂させる工程において、遠赤外線を前記有機金属化合物に基板側のみから照射して加熱する、圧電体素子の製造方法。 - 請求項1において、前記遠赤外線は、3μm以上5μm以下の範囲に波長スペクトルのピークを有する、圧電体素子の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の製造方法により製造した圧電体素子を用いることを特徴とするインクジェット式記録ヘッドの製造方法。
- 基板上に下部電極を形成する工程と、この下部電極上に有機金属化合物のゾルを塗布する工程と、この有機金属化合物のゾルを乾燥させ、脱脂することによりゲル化させる工程と、このゲル化した有機金属化合物を結晶化させて圧電体膜を形成する工程と、この圧電体膜上に上部電極を形成する工程とを実行する圧電体素子の製造における脱脂装置であって、
前記有機金属化合物に遠赤外線を照射するヒータを備え、前記ヒータは、前記基板側のみから加熱するように設けられた、脱脂装置。 - 請求項4において、前記遠赤外線は、3μm以上5μm以下の範囲に波長スペクトルのピークを有する、脱脂装置。
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