JP3838135B2 - 燃料電池用のセパレータの成形装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解質膜の両側に多孔質の電極を介して配置されたセパレータを成形するための燃料電池用のセパレータの成形装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池用のセパレータを使用した燃料電池としては、図9〜図11に示す固体高分子型燃料電池がある。この固体高分子型燃料電池は、電解質膜1の両側に電極2を介してセパレータ3を設けたものを単位セル4とし、各セパレータ3を電極2と反対側の面で互いに重ね合わせることによって、単位セル4を複数積層させたスタック構造のものが知られている。
上記セパレータ3は、カーボンや金属等の導電性の材料で板状に形成されたものであり、その電極2側の部分がセパレータ部31になっており、電極2と反対側の部分であって互に重なり合う側の部分が冷却部32となっている。
セパレータ部31には、電極2側の面にガスの流路となるガス溝31aが形成されており、当該ガス溝31aを介して電極2側にガスを導くようになっている。そして、アノード側に位置するガス溝31aには、燃料ガスとしての例えば水素が供給され、カソード側に位置するガス溝31aには、酸化剤ガスとして例えば酸素あるいは空気が供給されるようになっている。
【0003】
上記のように構成された固体高分子型燃料電池においては、アノード側で水素が酸化されてプロトン(H+)と電子(e- )が生成される。すなわち、
H2 →2H+ +2e-
の電池反応が生じる。プロトンは、水分子(H2 O)を伴って電解質膜1中をカソード側に移動し、外部回路から供給される電子とともに酸素の還元に使われる。すなわち、
1/2O2 +2H+ +2e- →H2 O
の電池反応が生じる。そして、アノード側の電子が例えば外部の負荷を通ってカソード側に流れることから、これを電気エネルギとして使うことができる。
【0004】
電極2は、ガスや水の通過が可能な多孔質のもので構成されており、上記電池反応は主に電極2と電解質膜1との境界部で発生することになる。なお、電極2は、電解質膜1の両面に加熱圧着により固定されるようなっている。そして、電解質膜1の両面に電極2を接合してなるものは、膜−電極接合体(MEA:Membrane-Electrode Assembly)と呼ばれる。
【0005】
また、互いに重ね合わされるセパレータ3のうち、少なくとも一方のセパレータ3の冷却部32には、冷却水の流路となる冷却溝32aが形成されている。なお、この従来例では、重ね合わされたセパレータ3の双方の面に冷却溝32aが形成されたものを示している。
また、上記セパレータ3に代えて、両面側をセパレータ部31で構成してなるセパレータを用いることもある。ただし、この場合にも、冷却のために、上記セパレータ3を重ね合わせたものを数枚おきに挿入する必要がある。
【0006】
したがって、セパレータとしては、一方の面にガス溝31aを有し、他方の面に冷却溝32aを有するセパレータ3と、一方の面にガス溝31aを有し、他方の面が冷却溝32a等を有さず平坦な第2のセパレータと、一方および他方の面の双方にガス溝31aを有する第3のセパレータ等が存在し得る。
【0007】
また、上記セパレータの成形装置としては、ガス溝31a等を切削加工によって成形するものや、塑性加工によって成形するもの等が知られている。切削加工によって成形する装置としては、フライス盤やマシニングセンタがあり、塑性加工によって成形する装置としては、パンチやダイ等を上下方向に往復移動させるプレス機械がある。
ただし、現状においては、製造コストの低減等を図ることから、主として上記プレス機械がセパレータの成形装置として使用されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記プレス機械を用いたセパレータの成形装置においても、固体高分子型燃料電池のコストの低減等の要求に伴って、セパレータの製造コストをさらに低減することができる装置の開発が要求されていた。
このため、発明者らは、セパレータの製造コストを低減すべく鋭意研究を重ねた結果、セパレータの製造コストをさらに低減することのできる成形装置が開発可能であるとの知見を得た。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、セパレータの製造コストの低減を図ることのできる燃料電池用のセパレータの成形装置を提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、電解質膜の両面に電極を接合してなる膜−電極接合体の上記電極に隣接するように配置され、上記電極側を向く面に、上記電極側に燃料ガスまたは酸化剤ガスを導くためのガス溝が形成された板状のセパレータを成形する装置であって、少なくとも外周面部が超硬合金で形成された圧縮加工用の第1のロータリダイと第2のロータリダイとを備えてなり、上記第1のロータリダイおよび第2のロータリダイの少なくとも一方には、板状の素材に食い込んで上記セパレータのガス溝を成形する凸部が設けられ、かつ上記凸部には、当該ガス溝の流路を狭める方向に突出する突起部を成形するための凹部が形成されていることを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記セパレータは、一方の面が上記電極側を向くように配置されるようになっており、上記第1のロータリダイには、上記セパレータの一方の面に上記ガス溝を成形する凸部が設けられ、かつ上記凸部には、当該ガス溝の流路を狭める方向に突出する突起部を成形するための凹部が形成されていることを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記セパレータは、隣り合う2つの上記膜−電極接合体の間に設けられ、一方および他方の各面がそれぞれ上記隣接する各膜−電極接合体の電極側を向くように配置されるようになっており、上記第1のロータリダイには、上記セパレータの一方の面に上記ガス溝を成形する凸部が設けられ、上記第2のロータリダイには、上記セパレータの他方の面に上記ガス溝を成形する凸部が設けられ、かつ上記凸部には、それぞれ当該ガス溝の流路を狭める方向に突出する突起部を成形するための凹部が形成されていることを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記セパレータは、隣り合う2つの上記膜−電極接合体の間に他のセパレータと互いに重なり合うようにして設けられ、その一方の面が上記膜−電極接合体の電極側を向き、かつ他方の面が互いに重なり合う上記他のセパレータ側を向くように配置されるようになっており、上記第1のロータリダイには、上記セパレータの一方の面に上記ガス溝を成形する凸部が設けられ、かつ上記凸部には、当該ガス溝の流路を狭める方向に突出する突起部を成形するための凹部が形成され、上記第2のロータリダイには、上記セパレータの他方の面に冷却水の流路となる冷却溝を成形する凸部が設けられ、かつ上記凸部には、当該冷却溝の流路を狭める方向に突出する突起部を成形するための凹部が形成されていることを特徴としている。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の発明において、第1のロータリダイおよび第2のロータリダイの少なくとも一方には、上記板状の素材に穴をあける凸部が設けられていることを特徴としている。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れかに記載の発明において、第1のロータリダイおよび第2のロータリダイの少なくとも一方には、上記板状の素材を一定の長さ送った位置で切断して、その送り方向に所定長さとなる上記セパレータを成形するせん断カッタが備えられていることを特徴としている。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜5の何れかに記載の発明において、第1のロータリダイおよび第2のロータリダイの少なくとも一方には、上記板状の素材を送りながら、当該素材を上記セパレータの輪郭に沿って切断する打抜カッタが備えられていることを特徴としている。
【0018】
請求項1〜7に記載の発明においては、第1のロータリダイと第2のロータリダイとの間に板状の素材を通して圧縮加工することにおり、少なくとも一方に設けられて凸部が素材に食い込むことになることから、所定の位置にガス溝が転造されたセパレータを成形することができる。したがって、ガス溝を所定の位置に正確に配置したセパレータを成形することができる。
そして、第1のロータリダイと第2のロータリダイとの回転によって、セパレータを連続して成形することができるので、当該セパレータを短時間で大量に製造することができる。したがって、セパレータの製造コストの低減を図ることができる。
【0019】
請求項2に記載の発明においては、第1のロータリダイと第2のロータリダイとを回転するだけで、セパレータの一方の面にガス溝を成形し、他方の面は例えば平面状に仕上げることができる。
請求項3に記載の発明においては、第1のロータリダイと第2のロータリダイとを回転するだけで、セパレータの一方の面と他方の面とに、ガス溝をほぼ同時に成形することができる。
請求項4に記載の発明においては、第1のロータリダイと第2のロータリダイとを回転するだけで、セパレータの一方の面にガス溝を、同他方の面に冷却溝をほぼ同時に成形することができる。
【0020】
請求項1〜4に記載の発明においては、ガス溝を成形する凸部に、当該ガス溝の流路を狭める方向に突出する突起部を成形するための凹部が形成されているので、第1のロータリダイと第2のロータリダイとを回転するだけで、突起部を有するガス溝をセパレータに簡単に成形することができる。
請求項4に記載の発明においては、冷却溝を成形する凸部に、当該冷却溝の流路を狭める方向に突出する突起部を成形するための凹部が形成されているので、第1のロータリダイと第2のロータリダイとを回転するだけで、突起部を有するガス溝をセパレータに簡単に成形することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明においては、第1のロータリダイおよび第2のロータリダイの少なくとも一方に、板状の素材に穴をあける凸部が設けられているので、第1のロータリダイと第2のロータリダイとを回転するだけで、例えばスタックした状態において連結ボルトを通すための穴や、冷却水を冷却溝に供給したり、排出したりする穴や、位置決め穴等を簡単に成形することができる。
【0022】
請求項6に記載の発明においては、第1のロータリダイと第2のロータリダイとを回転するだけで、所定の長さに切断されたセパレータを連続して成形することができる。
請求項7に記載の発明においては、第1のロータリダイと第2のロータリダイとを回転するだけで、所定の輪郭のセパレータを連続して成形することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、従来例で示したセパレータの構成要素と共通する要素には同一の符号を付しその説明を簡略化する。
【0024】
(第1実施形態)
図1および図2は、第1実施形態として示した燃料電池用のセパレータの成形装置を示す図である。この成形装置で成形するセパレータは、固体高分子型燃料電池に組み込まれるものであり、図3〜図7に示す構造になっている。したがって、セパレータの構造を説明してから、上記セパレータの成形装置について説明する。
【0025】
図3は、固体高分子型燃料電池における積層された単位セル4の要部断面図を示したものであり、図4はセパレータ3の要部斜視図、図5は同セパレータ3のセパレータ部31側の要部平面図、図6は図5のVI−VI線に沿う断面図、図7は同セパレータ3の冷却部32側の要部平面図を示している。
単位セル4は、その全体を図示したものではないが、四角形状に形成された電解質膜1、電極2およびセパレータ3、3を積層したもので構成されている。
【0026】
セパレータ3は、カーボン、鉄基合金、チタン、チタン基合金、ニッケル、ニッケル基合金等の導電性を有する材料で板状に形成されたものである。なお、この実施形態ではセパレータ3を鉄基合金としてのステンレス鋼の板で構成している。また、セパレータ部31に形成されたガス溝31aは、図示を省略するが、電解質膜1を向く面の全体に行き渡るように複数回にわたって蛇行するように形成されており、その隣接するもの同士が平行に延在している。そして、各ガス溝31aは、底面31bおよび左右の側面31eによって断面が四角形状に形成されており、その底面31bには、電解質膜1の表面に向けて三角形状に突出する突起部31cが形成されている。
【0027】
突起部31cは、底面31bから二等辺三角形状に突出しているとともに、ガス溝31aの延在する方向に対して直交する方向、すなわち幅方向の全体にわたって延在している。したがって、突起部31cは、ガス溝31aの側面31eからも一体的に突出した形状になっている。この突起部31cの底面31bからの高さは、ガス溝31aの深さの2/10〜7/10の範囲に設定されている。
また、ガス溝31aの幅D1は、0.2〜2mmに設定され、各ガス溝31aの隣接方向のピッチP1は、0.4〜4mmに設定されている。さらに、突起部31cは、ガス溝31aの延在する方向に0.2〜4mmのピッチで形成されている。
【0028】
一方、冷却部32に形成された冷却溝32aは、図示を省略するが、電解質膜1を向く面の全体に行き渡るように複数回にわたって蛇行するように形成されており、その隣接するもの同士が平行に延在している。そして、各冷却溝32aは、底面32bおよび左右の側面32eによって断面が四角形状に形成されており、その底面32bには、重なり合う他方の冷却部32の表面に向けて三角形状に突出する突起部32cが形成されている。なお、図4において、冷却部32の各構成要素はカッコ付きの符号で示している。
【0029】
突起部32cは、底面32bから二等辺三角形状に突出しているとともに、冷却溝32aの延在する方向に対して直交する方向、すなわち幅方向の全体にわたって延在している。したがって、突起部32cは、冷却溝32aの側面32eからも一体的に突出した形状になっている。この突起部32cの底面32bからの高さは、冷却溝32aの深さの2/10〜7/10の範囲に設定されている。すなわち、冷却溝32aは、ガス溝31aとほぼ同様の形状に構成されている。
【0030】
また、冷却溝32aの幅D2は、0.5〜5mmに設定され、各冷却溝32aの隣接方向のピッチP1は、1〜10mmに設定されている。さらに、突起部32cは、冷却溝32aの延在する方向に0.5〜10mmのピッチで形成されている。
なお、上記各冷却溝32aは、セパレータ3において所定の間隔をおいて位置する一方の側縁部から他方の側縁部に向けて、蛇行することなく、直線状に平行に延在するように形成されたものであってもよい。
【0031】
上記構造のセパレータ3は、隣り合う2つの膜−電極接合体の間に他のセパレータ3と互いに重なり合うようにして挿入され、そのセパレータ部31側の面(一方の面)が上記膜−電極接合体の電極2側を向き、かつ冷却部32側の面(他方の面)が互いに重なり合う上記他のセパレータ3側を向くように配置されるようになっている。
【0032】
また、上記セパレータ3は、図1および図2に示す燃料電池用のセパレータの成形装置5によって製造されるようになっている。
セパレータの成形装置5は、ステンレス鋼製の板状の素材Wを冷間転造加工(圧縮加工)してセパレータ3を得るための第1のロータリダイ6と、第2のロータリダイ7とを備えている。素材Wは、帯状に形成されたものであり、コイル状に巻かれた状態から連続して第1および第2のロータリダイ6、7間に繰り出されるようになっている。
【0033】
第1および第2のロータリダイ6、7は、それぞれ主軸となるアーバー61、71の外周面に超硬合金製のスリーブ62、72を固定したもので構成されている。なお、図2においては、第1のロータリダイ6の構成を示しているが、第2のロータリダイ7も、スリーブ72の外周面の形状が異なるものの、同様の構成になる。
【0034】
第1のロータリダイ6のスリーブ62の外周面には、素材Wに食い込んでセパレータ部31におけるガス溝31aを成形する凸部62aや、セパレータ3の四隅部の穴33を成形する凸部62b等が形成されている。上記穴33は、セパレータ3を膜−電極接合体等と積層した状態において、連結ボルト(図示せず)を通すためのものである。また、スリーブ62の外周面には、図示を省略するが、冷却水を冷却溝32aに供給するための穴や、当該冷却溝32aから冷却水を排出したりするための穴等を成形するための凸部も設けられている。
そして、ガス溝31aを成形する凸部62aには、ガス溝31aによる流路を狭める方向に突出する突起部31cを成形するための凹部62cが形成されている。さらに、スリーブ62の外周面には、帯状の素材Wをその長手方向であって繰り出す方向に案内する段部62dが軸方向に所定の間隔をおいて形成されている。またさらに、スリーブ62の外周面には、素材Wを一定の長さ送った位置で切断して、その送り方向に所定長さとなるセパレータ3を成形するためのせん断カッタ(図示せず)が備えられている。
【0035】
一方、第2のロータリダイ7のスリーブ72の外周面には、図示を省略するが、素材Wに食い込んで冷却部32における冷却溝32aを成形する凸部が形成されている。そして、この凸部には、冷却溝32aによる流路を狭める方向に突出する突起部32cを成形するための凹部(図示せず)が形成されている。
【0036】
そして、上記超硬合金からなるスリーブ62、72は、主体であるタングステン粉末と、結合材としてのコバルト粉末と、その他の元素の粉末を成分とする焼結合金であり、耐摩耗性の向上のための硬さと、耐衝撃性の向上のための靱性とを併せ持ったものとなっている。例えば硬さは、ロックウエルA(60kg)で85〜91となっている。
【0037】
上記のように構成された燃料電池用のセパレータの成形装置においては、第1のロータリダイ6と第2のロータリダイ7との間に素材Wを通して圧縮加工することにより、第2のロータリダイ7に設けた凸部62a、凸部62b、せん断カッタ等や、第2のロータリダイ7に設けた凸部等が素材Wに食い込むことになることから、所定の位置にガス溝31aや冷却溝32aなどが転造等によって形成され、穴33などが穴あけにより形成され、かつ所定の長さにせん断されたセパレータ3を得ることができる。
したがって、ガス溝31a、冷却溝32a、突起部31c、32c、穴33等を、第1および第2のロータリダイ6、7の各部の寸法通りに正確に成形することができるとともに、正確な長さにせん断されたセパレータ3を得ることができる。
そして、第1のロータリダイ6と第2のロータリダイ7との回転によって、セパレータ3を連続して成形することができるので、当該セパレータ3を短時間で大量に製造することができる。
したがって、セパレータ3の寸法精度の向上を図ることができるとともに、当該セパレータ3の製造コストの低減を図ることができる。
【0038】
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を図8を参照して説明する。ただし、図1〜図7の第1実施形態で示した構成要素と共通する要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
この第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、素材Wを、セパレータ3の輪郭に沿って切断するための打抜カッタ62eを第1のロータリダイ6に備えている点である。
【0039】
すなわち、打抜カッタ62eは、スリーブ62の外周面に設けられた一対のロータリカッタ62fと、せん断カッタ62gとによって構成されている。
ロータリカッタ62fは、スリーブ62の軸方向に所定の間隔をおいて設けられており、当該スリーブ62の外周面から円環状に突出するように形成されている。
このロータリカッタ62fは、セパレータ3の側縁部を第1および第2のロータリダイ6、7による送り方向に沿って切断するようになっている。
【0040】
また、せん断カッタ62gは、スリーブ62の外周面を軸方向に延在するよう設けられている。
このせん断カッタ62gは、素材Wを第1および第2のロータリダイ6、7によって一定の長さ送るごとに切断して、その送り方向に所定長さとなるセパレータ3を成形するようになっている。
【0041】
上記のように構成された燃料電池用のセパレータの成形装置においては、第1のロータリダイ6と第2のロータリダイ7とを回転するだけで、打抜カッタ62eの寸法通りの輪郭(この実施形態では長方形の輪郭)を有するセパレータ3を連続して成形することができる。したがって、寸法精度の高いセパレータ3を低コストで製造することができる。
【0042】
なお、上記各実施形態においては、一方の面にガス溝31aを有し、他方の面に冷却溝32aを有するセパレータ3を成形するように構成したが、第2のロータリダイ7におけるスリーブ72を外周面の形状の異なるものに変更することにより、一方の面にガス溝31aを有し、他方の面が平坦な第1の他の形状のセパレータや、一方の面および他方の面の双方にガス溝31aを有する第2の他の形状のセパレータを成形することも可能である。
【0043】
すなわち、上記第1の他の形状のセパレータは、スリーブ72の外周面を凸部等のない円筒状のもので形成することにより、成形することができる。
また、上記第2の他の形状のセパレータは、スリーブ72の外周面に、冷却溝32aを形成する凸部に代えて、ガス溝31aを成形する凸部62aを設けることにより、成形することができる。
【0044】
また、上記第1実施形態においては、穴33を形成する凸部62bや、素材Wのガイド用の段部62dやせん断カッタ等を第1のロータリダイ6に設けるように構成したが、これらの凸部62b、段部62d、せん断カッタ等は第2のロータリダイ7や、第1および第2のロータリダイ6、7の双方に設けるように構成してもよい。
【0045】
さらに、上記第2実施形態においては、打抜カッタ62eを第1のロータリダイ6に設けるように構成したが、この打抜カッタ62eは第2のロータリダイ7に設けてもよく、また第1および第2のロータリダイ6、7の双方に設けて、上下から共同して切断するように構成してもよい。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1〜7に記載の発明によれば、第1のロータリダイと第2のロータリダイとの回転によって、セパレータを連続して成形することができるので、当該セパレータを短時間で大量に製造することができる。したがって、セパレータの製造コストの低減を図ることができる。
【0047】
請求項2に記載の発明によれば、第1のロータリダイと第2のロータリダイとを回転するだけで、セパレータの一方の面にガス溝を成形し、他方の面は例えば平面状に仕上げることができる。
請求項3に記載の発明によれば、第1のロータリダイと第2のロータリダイとを回転するだけで、セパレータの一方の面と他方の面とに、ガス溝をほぼ同時に成形することができる。
請求項4に記載の発明によれば、第1のロータリダイと第2のロータリダイとを回転するだけで、セパレータの一方の面にガス溝を、同他方の面に冷却溝をほぼ同時に成形することができる。
【0048】
請求項1〜4に記載の発明によれば、ガス溝を成形する凸部に、当該ガス溝の流路を狭める方向に突出する突起部を成形するための凹部が形成されているので、第1のロータリダイと第2のロータリダイとを回転するだけで、突起部を有するガス溝をセパレータに簡単に成形することができる。
請求項4に記載の発明によれば、冷却溝を成形する凸部に、当該冷却溝の流路を狭める方向に突出する突起部を成形するための凹部が形成されているので、第1のロータリダイと第2のロータリダイとを回転するだけで、突起部を有するガス溝をセパレータに簡単に成形することができる。
【0049】
請求項5に記載の発明によれば、第1のロータリダイおよび第2のロータリダイの少なくとも一方に、板状の素材に穴をあける凸部が設けられているので、第1のロータリダイと第2のロータリダイとを回転するだけで、例えばスタックした状態において連結ボルトを通すための穴や、冷却水を冷却溝に供給したり、排出したりする穴や、位置決め穴等を簡単に成形することができる。
【0050】
請求項6に記載の発明によれば、第1のロータリダイと第2のロータリダイとを回転するだけで、所定の長さに切断されたセパレータを連続して成形することができる。
請求項7に記載の発明によれば、第1のロータリダイと第2のロータリダイとを回転するだけで、所定の輪郭のセパレータを連続して成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施形態として示した燃料電池用のセパレータの成形装置の図であって、(a)は同燃料電池用のセパレータの成形装置の斜視図であり、(b)は(a)に示すB部の要部拡大斜視図であり、(c)は(a)に示すC部の要部拡大斜視図である。
【図2】同燃料電池用のセパレータの成形装置における第1のロータリダイの断面図である。
【図3】同燃料電池用のセパレータの成形装置で成形するセパレータを用いた固体高分子型燃料電池のガス溝の延在方向に沿う要部断面図である。
【図4】同燃料電池用のセパレータの成形装置で成形するセパレータの要部斜視図である。
【図5】同燃料電池用のセパレータの成形装置で成形するセパレータのセパレータ部を示す要部平面図である。
【図6】同燃料電池用のセパレータの成形装置で成形するセパレータの図であって、図5のVI−VI線に沿う方向の断面図である。
【図7】同燃料電池用のセパレータの成形装置で成形するセパレータの冷却部を示す要部平面図である。
【図8】この発明の第2実施形態として示した燃料電池用のセパレータの成形装置の斜視図である。
【図9】従来例で示した一般的な固体高分子型燃料電池を示す要部断面図である。
【図10】同固体高分子型燃料電池の要部斜視図である。
【図11】同固体高分子型燃料電池のガス溝の延在方向に沿う要部断面図である。
【符号の説明】
1 電解質膜
2 電極
3 セパレータ
31 セパレータ部
31a ガス溝
31c 突起部
32 冷却部
32a 冷却溝
32c 突起部
6 第1のロータリダイ
7 第2のロータリダイ
62a 凸部(ガス溝を成形する凸部)
62b 凸部(穴をあける凸部)
62c 凹部(ガス溝の突起部を成形するための凹部)
62e 打抜カッタ
W 素材
Claims (7)
- 電解質膜の両面に電極を接合してなる膜−電極接合体の上記電極に隣接するように配置され、上記電極側を向く面に、上記電極側に燃料ガスまたは酸化剤ガスを導くためのガス溝が形成された板状のセパレータを成形する装置であって、
少なくとも外周面部が超硬合金で形成された圧縮加工用の第1のロータリダイと第2のロータリダイとを備えてなり、
上記第1のロータリダイおよび第2のロータリダイの少なくとも一方には、板状の素材に食い込んで上記セパレータのガス溝を成形する凸部が設けられ、かつ上記凸部には、当該ガス溝の流路を狭める方向に突出する突起部を成形するための凹部が形成されていることを特徴とする燃料電池用のセパレータの成形装置。 - 上記セパレータは、一方の面が上記電極側を向くように配置されるようになっており、
上記第1のロータリダイには、上記セパレータの一方の面に上記ガス溝を成形する凸部が設けられ、かつ上記凸部には、当該ガス溝の流路を狭める方向に突出する突起部を成形するための凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用のセパレータの成形装置。 - 上記セパレータは、隣り合う2つの上記膜−電極接合体の間に設けられ、一方および他方の各面がそれぞれ上記隣接する各膜−電極接合体の電極側を向くように配置されるようになっており、
上記第1のロータリダイには、上記セパレータの一方の面に上記ガス溝を成形する凸部が設けられ、
上記第2のロータリダイには、上記セパレータの他方の面に上記ガス溝を成形する凸部が設けられ、
かつ上記凸部には、それぞれ当該ガス溝の流路を狭める方向に突出する突起部を成形するための凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用のセパレータの成形装置。 - 上記セパレータは、隣り合う2つの上記膜−電極接合体の間に他のセパレータと互いに重なり合うようにして設けられ、その一方の面が上記膜−電極接合体の電極側を向き、かつ他方の面が互いに重なり合う上記他のセパレータ側を向くように配置されるようになっており、
上記第1のロータリダイには、上記セパレータの一方の面に上記ガス溝を成形する凸部が設けられ、かつ上記凸部には、当該ガス溝の流路を狭める方向に突出する突起部を成形するための凹部が形成され、
上記第2のロータリダイには、上記セパレータの他方の面に冷却水の流路となる冷却溝を成形する凸部が設けられ、かつ上記凸部には、当該冷却溝の流路を狭める方向に突出する突起部を成形するための凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用のセパレータの成形装置。 - 第1のロータリダイおよび第2のロータリダイの少なくとも一方には、上記板状の素材に穴をあける凸部が設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の燃料電池用のセパレータの成形装置。
- 第1のロータリダイおよび第2のロータリダイの少なくとも一方には、上記板状の素材を一定の長さ送った位置で切断して、その送り方向に所定長さとなる上記セパレータを成形するせん断カッタが備えられていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の燃料電池用のセパレータの成形装置。
- 第1のロータリダイおよび第2のロータリダイの少なくとも一方には、上記板状の素材を送りながら、当該素材を上記セパレータの輪郭に沿って切断する打抜カッタが備えられていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の燃料電池用のセパレータの成形装置。
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