JP3836451B2 - トウガラシ属植物の辛味遺伝子座近傍に位置するdnaマーカーを用いた遺伝子型判別方法、dnaマーカー検出に用いられるプライマー、およびこれを用いた遺伝子型判別方法 - Google Patents
トウガラシ属植物の辛味遺伝子座近傍に位置するdnaマーカーを用いた遺伝子型判別方法、dnaマーカー検出に用いられるプライマー、およびこれを用いた遺伝子型判別方法 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【本発明の属する技術分野】
本発明の対象は、トウガラシ属の植物、特にカプシクム・アヌウム(Capsicum annuum )の辛味成分の生産に関する遺伝子型を判定するための、簡便かつ効率的な方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
トウガラシ属植物の一種であるカプシクム・アヌウム(Capsicum annuum )には、いわゆるトウガラシのように辛味成分(カプサイシノイド)を生産するものと、ピーマンのように辛味成分を生産しないものが存在する。辛味成分の生産能力の有無は、辛味遺伝子座の遺伝子型により決定され、この遺伝子型が優性ホモ型のPunPunあるいはヘテロ型のPunpunであれば辛味の生産能力を有し、劣性ホモ型のpunpunであれば辛味の生産能力がないことが知られている(非特許文献1)。従来より、ピーマン等の育種では辛味成分の生産能力を有する野生種等から病害抵抗性遺伝子等の導入が行われることが多く、その際辛味遺伝子座についても劣性ホモ型のものを選抜する必要があった。
【非特許文献1】
Daskalov, S. and J.M. Poulos. 1994. Capsicum Newsletter 13:15-26、Deshpande, R.B. 1935. Indian Jour. Agr. Sci. 5:513-516
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、辛味成分の生産能力を有する品種の中には、‘ししとう’や京都府の在来品種である‘万願寺’トウガラシのように通常辛味成分を生産していなくても栽培環境の変化によって突然辛味を発現するものがあるため、辛味遺伝子座が劣性ホモ型のものを選抜することが非常に困難となっている。したがって、本発明は、栽培環境に関わらず安定的に辛味成分を生産しないものの選抜を目的とした、より簡易に辛味遺伝子座の遺伝子型の判定を可能ならしめる方法を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、辛味遺伝子と連鎖するDNA断片を見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、トウガラシ属植物の辛味遺伝子座であるPun 座の近傍に位置し、配列番号1で表される塩基配列よりなるDNA、または配列番号1で表される塩基配列よりなるDNAと実質的に同一のDNAマーカーを用いて以下a)〜c)の少なくとも一の基準:
a)該DNAマーカーの増幅断片の有無、
b)該DNAマーカーの増幅断片の長さ、および
c)該DNAマーカーの増幅断片の制限酵素による切断パターン、
によりPun 座の遺伝子型を判別することを特徴とする方法である。
【0005】
また、本発明は、トウガラシ属植物の辛味遺伝子座であるPun 座の近傍に位置するDNAマーカーを検出するための1組のプライマーであって、配列番号1の塩基配列より任意に選んだ連続した15〜40塩基の長さの塩基配列(x)で規定されるプライマーと、配列番号1の塩基配列より任意に選んだ連続した15〜40塩基の長さの塩基配列(y)と相補的な塩基配列で規定されるプライマーとからなることを特徴とするものである。
【0006】
さらに、本発明は、前記プライマーの配列が、配列番号2と配列番号3であることを特徴とするものである。配列番号2は、上記の「配列番号1の塩基配列より任意に選んだ連続した15〜40塩基の長さの塩基配列(x)で規定されるプライマー」に相当し、配列番号3は、「配列番号1の塩基配列より任意に選んだ連続した15〜40塩基の長さの塩基配列(y)と相補的な塩基配列で規定されるプライマー」に相当する。
【0007】
また、本発明は、Pun 座の遺伝子型を判定する方法において、トウガラシ属植物の辛味遺伝子座であるPun 座の近傍に位置するDNAマーカーを検出するため、前記1組のプライマーを用いて、トウガラシ属植物から抽出したDNAを鋳型としてPCRを行い、トウガラシの辛味遺伝子座であるPun 座の近傍に位置するDNAマーカーを増幅し、増幅されたDNAマーカーを制限酵素Mbo Iで処理した場合、切断パターンが異なることにより、Pun 座の遺伝子型を判定することをも特徴とする。なお、この場合、前記1組のプライマーの配列が、配列番号2と配列番号3であるのがよい。
【0008】
更に、本発明では、辛味遺伝子と連鎖した新たなマーカーの開発により、これを使用して、誤判定の可能性を極限まで減らすことを可能とした。例えば、前記a)〜c)の少なくとも1の基準によりPun 座の遺伝子型を判別する方法において、配列番号4(10塩基のRAPD用プライマー)の記載の塩基配列で規定されるプライマーを用いてPCRによるDNAマーカーの増幅を行い、 トウガラシ属植物の辛味遺伝子座であるPun 座の近傍に位置する約1kbp のDNAマーカーを用いて、より効率のよい判別を可能とする。なお、本発明において約1kbp とは0.9〜1.1kbp を意味する。
【0009】
なお、この場合、配列番号5および6で挟まれた約1kbp のDNAマーカーを使用するのが好ましい。
【0010】
また、トウガラシ属植物の辛味遺伝子座であるPun 座の近傍に位置するDNAマーカーを検出するための1組のプライマーとしては、配列番号5の塩基配列より任意に選んだ連続した15〜40塩基の長さの塩基配列で規定されるプライマーと、このプライマーと向かい合う配列番号6の塩基配列より任意に選んだ連続した15〜40塩基の長さの塩基配列で規定されるプライマーとからなるものであってもよい。
【0011】
かかる1組のプライマーは、プライマーの配列が、配列番号7および9とこれと向かい合う配列番号8および10であってもよい。
【0012】
なお、本発明では、前述の配列番号5と配列番号6で規定されるプライマーや、配列が配列番号7および9とこれに向かい合う配列番号8および10であるような1組のプライマーを用いてトウガラシから抽出したDNAを鋳型としてPCRを行い、トウガラシ属植物の辛味遺伝子座であるPun 座の近傍に位置するDNAマーカーを増幅し、増幅されたDNAマーカーを制限酵素Hsp 92IIで処理した場合、切断パターンが異なることにより、Pun 座の遺伝子型を判別する方法も可能とする。
【0013】
更に、本発明では、前述のPun 座の遺伝子型を判別する方法において、Pun 座をはさむ位置に座乗する2つのDNAマーカーを用いることも効果的である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明では、上記課題を解決するため、RAPD法を用いて多数の増幅断片の中から辛味遺伝子座と連鎖したDNA断片を見いだし、これの塩基配列を明らかにし、この塩基配列に基づいてプライマーを作成し、PCR法を用いて安定して増幅できるDNAマーカーの特定を行った。さらに、このDNAマーカーを適当な制限酵素により切断することにより、辛味遺伝子座の遺伝子型を識別できるようにした。すなわち、本発明は辛味遺伝子座の近傍に位置し、配列番号1で表される塩基配列よりなるDNAマーカー、または配列番号1で表される塩基配列よりなるDNAと実質的に同一のDNAマーカーを利用して、これを制限酵素Mbo Iで処理した場合、切断パターンが異なることにより、辛味遺伝子座の遺伝子型を判定できるようにした。
【0015】
ここでいう、トウガラシの辛味遺伝子座であるPun 座の「DNAマーカー」とは、トウガラシの辛味遺伝子座であるPun 座の近傍に位置するDNAで、トウガラシのDNAを調べることにより、間接的に辛味遺伝子座の遺伝子型を判別できるものを指す。「近傍」とは、本発明に係るDNAマーカーがトウガラシの育種において実用的に利用可能な距離を指す。遺伝子間の距離は、分析に用いる集団の個体数や種類により変動するが、具体的には約15cM(センチモルガン)以下が好ましく、さらに好ましくは10cM以下で、5cM以下が特に好ましい。本発明のトウガラシの辛味遺伝子座の近傍に位置するDNAマーカーとしては、具体的には例えば、配列番号1で表される塩基配列によるDNAまたは配列番号1で表される塩基配列によるDNAと実質的に同一のDNAを挙げることができる。ここで、「配列番号1で表される塩基配列によるDNAと実質的に同一のDNA」とは、配列番号1で表されるDNAと同様に辛味遺伝子座の近傍に位置し、配列番号1で表される塩基配列の一部を含有するDNA、または配列番号1で表される塩基配列の一部を含有し、かつ配列番号1で表される塩基配列に隣接する塩基配列を含有するDNAを意味する。本発明のトウガラシの辛味遺伝子座の近傍に位置するDNAマーカーである、配列番号1に示されるDNAまたは配列番号1で表されるDNAと実質的に同一のDNAを有するかどうかの確認は、サザンハイブリダイゼーション法を用いて分析可能であるが、PCR法を利用して分析することが望ましい。
【0016】
次に、PCR法によって簡便かつ安定して増幅可能なDNAマーカーを用いたPun 座の遺伝子型の判別方法について説明する。まず、供試しようとするトウガラシから鋳型となるDNAを抽出するが、DNAを抽出するための組織としては植物体のどの部位を用いてもよく、また、生育段階も問わない。また、抽出方法はどのような方法も用いることができ、粗精製のDNAを用いることもできる。抽出したDNAを鋳型にDNAマーカーをPCR法により増幅させる。
【0017】
PCR法を用いて遺伝子型を判別する方法としては、(1)ある遺伝子型においてのみ特異的断片を増幅し、増幅の有無により遺伝子型を判別する方法、(2)増幅断片の長さが遺伝子型間で異なることに基づき、この増幅断片の長さを比較することにより遺伝子型を判別する方法、(3)全ての遺伝子型で増幅する同じ長さの断片をある制限酵素で処理した場合、遺伝子型により切断パターンが異なることに基づき、切断パターンを比較することにより遺伝子型を判別する方法などがある。(2)および(3)では遺伝子型がホモであるかヘテロであるかも同時に判別することが可能である。例えば、配列番号2と3に示すオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いたPCRにより増幅した断片を制限酵素Mbo Iで処理した場合、3つの断片に切断される品種と4つの断片に切断される品種がある。この切断パターンが異なることに基づき、辛味遺伝子座の遺伝子型の判定を行うことが可能となる。
【0018】
なお、本発明では、トウガラシ属植物の辛味遺伝子座であるPun 座の近傍に位置する強く連鎖した2つのマーカーで目的の遺伝子を挟み込むことにより、誤判定の可能性を極限まで減らすことを可能とした。すなわち、配列番号5と6で挟まれた約1kbp のDNAマーカーを用いて、より効率のよい判別を可能とする。
【0019】
このマーカーと先に開発されたマーカー(配列番号1で表わされる塩基配列よりなるDNAと実質的に同一のDNAマーカー)の間の遺伝距離は約8cM以下であり、この距離での二重組み換えの可能性は極めて低いため、これらの使用により、辛味遺伝子座の遺伝子型をより正確に判別することが可能となった。
【0020】
以下に実施例をあげて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0021】
【実施例】
実施例1:(植物材料)
辛味成分を生産しない‘とんがり’(ナント種苗より入手)と辛味成分を生産する‘万願寺’(京都府農業資源研究センター育成系統)を交配したF1 個体の自殖F2 集団を87個体育成し、この全ての個体について辛味成分の生産能力について調査した。その結果、辛味成分を生産する個体と生産しない個体が、60個体と27個体に分離した。この結果により、辛味成分の生産能力の有無は単一の遺伝子により支配されていることが確認された。以降、この87個体のF2 集団を用いて辛味遺伝子の連鎖マーカーの検索を行った。
【0022】
(トウガラシの辛味遺伝子に連鎖した多型断片の探索)
トウガラシからのDNAの抽出は、DNA extraction kits (Nucleon PhytoPure ,Amersham社)を用いて行った。得られたDNAを鋳型とし、約500種類の市販の10mer オリゴヌクレオチド(オペロン社)をプライマーとしてRAPD法の反応を行った。RAPD法の反応液組成および反応条件は以下の通りである。反応液は10mM Tris-HCl (pH8.3 )、50mM KCl、1.5mM MgCl2 、0.05% TritonX-100、200 μM dNTP mixture、0.5units Taq DNA polymerase(Takara社)、0.42μM プライマー、12ng鋳型DNAを含み12μlとなるように水で調節した。反応サイクルは94℃にて3分間保持した後、94℃にて1分間、40℃にて2分間、72℃にて2分間の繰り返しを40回行った後、72℃で5分間反応させ、その後4℃で維持した。なお、反応にはPROGRAM TEMP CONTROL SYSTEM (PC-800,ASTEC 社)を用いた。次にPCR反応液8μlを、1.7 %アガロースゲル、TBE バッファーを用いた電気泳動により分離し、エチジウムブロマイドで染色後、紫外線照射下で増幅断片を検出した。その結果、親品種である‘とんがり’と’万願寺’の間で約192種類のプライマーを用いた際に多型断片が検出できた。
【0023】
次にF2 個体のうち辛味成分を生産する個体と生産しない個体の各7個体から抽出したDNAを鋳型として、親品種間で多型断片の認められた192種類のプライマーを用いてRAPD法を行った。しかし、辛味成分を生産する個体のみに特異的な多型断片は認められなかった。したがって、組換え型の比較的少なかった10種類のプライマーを用いて全87個体の多型断片の分離を調査した。その結果、プライマー 5 '-agcagcgcac-3' (オペロン社の品名「OPY-09」)を用いた場合に得られた約0.8kbp の多型断片で組換え型が少なく、辛味遺伝子と連鎖していることがわかった。
【0024】
図1は親品種である‘とんがり’、‘万願寺’およびF2 個体の3個体のDNAを鋳型にし、「OPY-09」をプライマーに用いてRAPD法により反応を行った際の増幅産物の電気泳動像を示す。鋳型にしたDNAは左のレーンから‘万願寺’、‘とんがり’およびF2 個体の3個体であり、F2 個体の辛味成分の生産能力は左から「なし」、「あり」および「あり」である。泳動像からもわかるように、辛味遺伝子と連鎖した約0.8kbp の多型断片(矢印)のRAPD法による増幅は極めて不安定であった。
【0025】
(辛味遺伝子連鎖マーカーの塩基配列の決定)
辛味遺伝子に連鎖した約0.8kbp のDNA断片の塩基配列を決定するため、以下の操作を行った。‘万願寺’のDNAを鋳型にして増幅した約0.8kbp のDNA断片をアガロースゲルから回収し、TAクローニングキット(pGEM-T Easy Vector System 、プロメガ社)により、プラスミドpGEM-T Easy Vectorにサブクローニングし、大腸菌(DH5 α)に形質転換した。塩基配列の決定はABI PRISM BIG DYE Terminator Sequence Kit (ABI 社)を用いて、サブクローニングしたプラスミドを鋳型にシークエンス反応液を調整し、ABI PRISM 310 (ABI 社)装置で解析した。以上の操作の結果、辛味遺伝子に連鎖した約0.8kbp のDNA断片の塩基配列は、配列番号1に示すとおりであった。
【0026】
実施例2:(辛味遺伝子連鎖マーカーの遺伝子型の識別)
配列番号1記載の塩基配列情報から、辛味遺伝子に連鎖したDNA断片を特異的に増幅するためのプライマーペアを設計した。設計したプライマーの塩基配列は配列番号2および3に示した。このプライマーペアを用いて以下の反応液組成および反応条件で親品種である‘とんがり’と‘万願寺’のDNAを鋳型にPCRを行った。反応液は 10mM Tris-HCl(pH8.3 )、50mM KCl、1.5mM MgCl2 、0.05% Triton X -100、200 μM dNTP mixture、0.5units Taq DNA polymerase(Takara社)、各0.21μM プライマー、12ng鋳型DNAを含み12μlとなるように水で調節した。反応サイクルは94℃で3分間保持した後、94℃にて1分間、65℃にて2分間、72℃にて2分間の繰り返しを30回行った後、72℃で5分間反応させ、その後4℃で維持した。その結果、親品種間で同じサイズと思われるDNA断片の増幅が認められた。図2に、このPCRによる増幅産物の電気泳動像を示す。左のレーンが‘万願寺’、右のレーンが‘とんがり’を鋳型にした増幅産物である。
【0027】
次に配列番号2および3のプライマーペアを用いて上記の方法でPCRによりDNA断片を増幅した。得られた増幅産物を制限酵素Mbo Iで処理し、8%アクリルアミドゲルで電気泳動し分画した。その結果、‘万願寺’では3つの断片(約170bp、約220bp、および約340bp)に切断されたのに対し、‘とんがり’では4つの断片(約140bp、約160bp、約200bp、および約220bp)に切断された。すなわち、‘とんがり’の増幅産物では‘万願寺’のそれよりも制限酵素Mbo Iの認識部位が1箇所多いことがわかった。また、F2 個体では‘万願寺’のホモ型、‘とんがり’のホモ型およびこれらの2つのパターンを併せ持ったヘテロ型を確認できた。この方法により、辛味遺伝子連鎖マーカーの遺伝子型の識別が可能となった。図3にこの結果を示した。左のレーンから順に‘万願寺’、‘とんがり’、F2 個体の4個体であり、F2 個体は左からヘテロ型、ヘテロ型、‘とんがり’ホモ型および‘万願寺’ホモ型である。
【0028】
(辛味遺伝子と辛味遺伝子座に連鎖したDNAマーカーの距離)
‘とんがり’と‘万願寺’の交配F2 集団の87個体について、上記の方法により辛味遺伝子座に連鎖したDNAマーカーの遺伝子型の判定を行った。その結果と辛味成分の生産能力の有無を表1に示した。F2 集団では辛味遺伝子座の遺伝子型の判定は不可能であるため、表現型での比較を行ったところ、9個体で組換えが起こっており、これらの遺伝子間の距離は約10cMと計算された。したがって、配列番号1に示すDNAマーカーが辛味遺伝子座の連鎖マーカーとして実用的に利用できる距離であることがわかった。
【0029】
【表1】
【0030】
実施例3:(他の品種での辛味遺伝子座に連鎖したDNAマーカーの利用)
さらに、辛味成分を生産する‘伏見甘長’(タキイ種苗より入手)と‘とんがり’との交配F2 集団の103個体を用いて、辛味遺伝子と連鎖マーカーの遺伝子分析を行ったところ、表2に示すように、4個体で組換えが起こっており、遺伝子間の距離は約4cMであった。また、同一の種(カプシクム・アヌウム)に含まれる15品種から抽出した粗精製のDNAを鋳型に配列番号2および3のプライマーペアを用いてPCRを行ったところ、全ての品種でほぼ同一サイズのDNA断片が増幅されることが確認され、これらの15品種についての辛味成分の生産性有無の判定に応用可能であることが示唆された。用いた15品種のうちの8品種を以下に列挙する。
ベルマサリ(長野県原種センター)、新さきがけ2号(高知前川種苗)、カリフォルニアワンダー、鷹の爪、八つ房、ししとう(いずれも大和農園)、南禅寺トウガラシ(丸種種苗)、ニューエース(タキイ種苗)。
【0031】
【表2】
【0032】
実施例4:(植物材料)
辛味成分を生産しない‘とんがり’(ナント種苗より入手)と辛味成分を生産する‘万願寺’(京都府農業資源研究センター育成系統)を交配したF1 個体から葯培養により作出した倍加半数体(DH)集団を123個体育成し、この全ての個体について辛味成分の生産能力について調査した。その結果、辛味成分を生産する個体と生産しない個体が、69個体と54個体に分離した。DH集団の個体はヘテロ接合体がなく、全ての固体がホモ結合体で固定している特徴を持つ。以降、この123個体のDH集団を用いて辛味遺伝子の連鎖マーカーの検索を行った。
【0033】
「トウガラシの辛味遺伝子に連鎖した多型断片の探索」を実施例1と同様の方法で実施しその結果、親品種である‘とんがり’と’万願寺’の間で約192種類のプライマーを用いた際に多型断片が検出できた。
【0034】
次にDH集団のうち辛味成分を生産する個体と生産しない個体の各7個体から抽出したDNAを鋳型として、親品種間で多型断片の認められた192種類のプライマーを用いてRAPD法を行った。しかし、辛味成分を生産する個体あるいは生産しない個体のみに特異的な多型断片は認められなかった。したがって、組換え型の比較的少なかったプライマーを用いて全123個体の多型断片の分離を調査した。その結果、配列番号4に記載されるプライマー 5'-acaggtgcgt-3'(オペロン社の品名「OPR-12」)を用いた場合に得られた約1kbp の多型断片で組換え型が少なく、辛味遺伝座の劣性遺伝子と連鎖していることがわかった。
【0035】
図4は親品種である‘とんがり’、‘万願寺’およびDH集団の3個体のDNAを鋳型にし、「OPR-12」をプライマーに用いてRAPD法により反応を行った際の増幅産物の電気泳動像を示す。鋳型にしたDNAは左のレーンから‘万願寺’、‘とんがり’およびDH集団の3個体であり、DH個体の辛味成分の生産能力は全て「なし」である。
【0036】
(辛味遺伝子座連鎖マーカーの塩基配列の決定)
辛味遺伝子座に連鎖した約1.0kbp のDNA断片の塩基配列を決定するため、以下の操作を行った。‘とんがり’のDNAを鋳型にして増幅した約1.0kbp のDNA断片をアガロースゲルから回収し、TAクローニングキット(pGEM-T Easy Vector System 、プロメガ社)により、プラスミドpGEM-T Easy Vectorにサブクローニングし、大腸菌(DH5 α)に形質転換した。塩基配列の決定は、サブクローニングしたプラスミドを鋳型にシークエンス反応液を調整し、マルチキャピラリーDNA解析システム(ベックマン・コールター社)で解析した。以上の操作の結果、辛味遺伝子座に連鎖した約1.0kbp のDNA断片の中央部を除く両端の塩基配列を配列番号5と配列番号6に示した。
【0037】
実施例5:(辛味遺伝子座連鎖マーカーの遺伝子型の識別)
配列番号5と6記載の塩基配列情報から、辛味遺伝子に連鎖したDNA断片を特異的に増幅するためのプライマーペアを設計した。設計したプライマーの塩基配列は配列番号7および8と配列番号9および10に示した。配列番号7および8のプライマーペアを用いて以下の反応液組成および反応条件で親品種である‘とんがり’と‘万願寺’のDNAを鋳型にPCRを行った。反応液は 10mM Tris-HCl(pH8.3 )、50mM KCl、1.5mM MgCl2 、0.05% TritonX-100、200 μM dNTP mixture、0.5units Taq DNA polymerase(Takara社)、各0.21μM プライマー、12ng鋳型DNAを含み12μlとなるように水で調節した。反応サイクルは94℃で3分間保持した後、94℃にて1分間、60℃にて2分間、72℃にて2分間の繰り返しを30回行った後、72℃で5分間反応させ、その後4℃で維持した。その結果、非特異的なDNA断片の増幅が認められるため1回目のPCR産物を100倍に希釈した後、配列番号9および10のプライマーペアを用いて、 同じ条件でPCR反応を行った。その結果、 親品種間で同じサイズと思われるDNA断片の増幅が認められた。図2に、このPCRによる増幅産物の電気泳動像を示す。左のレーンが‘万願寺’、右のレーンが‘とんがり’を鋳型にした増幅産物である。
【0038】
次に配列番号7および8と配列番号9および10のプライマーペアを用いて上記の方法でPCRによりDNA断片を増幅した。得られた増幅産物を制限酵素Hsp 92IIで処理し、電気泳動し分画した。その結果、サイズマーカーの118bp付近に、切断断片長の違いによる、多型が確認できた。また、DH集団では‘万願寺’のホモ型‘とんがり’のホモ型の2つのパターンを確認できた。この方法により、辛味遺伝子連鎖マーカーの遺伝子型の識別が可能となった。図6は上記方法によりPCR増幅したDNA断片を6種類の制限酵素で処理した際の泳動像であり、偶数番号が‘万願寺’、奇数番号が‘とんがり’を示し、多型の得られたHsp 92IIで切断したものは12と13レーンに示した。
【0039】
(辛味遺伝子と辛味遺伝子座に連鎖したDNAマーカーの距離)
‘とんがり’と‘万願寺’のDH集団の123個体について、辛味遺伝子座に連鎖したDNAマーカーの遺伝子型と辛味成分の生産能力の有無を表3に示した。その結果、6個体で組換えが起こっており、これらの遺伝子間の距離は約5cMと計算された。したがって、配列番号5および6を両端にもつ約1.0kbp のDNAマーカーが辛味遺伝子座の連鎖マーカーとして実用的に利用できる距離であることがわかった。
【0040】
【表3】
【0041】
なお、DH集団で実施例1に示した辛味遺伝子連鎖マーカーを適用したところ、辛味遺伝子と3個体で組換えが確認され、2.4cMの遺伝距離であった。さらに、この2つの連鎖マーカーは辛味遺伝子座を挟む形で連鎖していることも確認できた。従って、上記2つの辛味遺伝子連鎖マーカーを用いることにより、より正確に辛味遺伝子座の遺伝子型の判定が可能であり、辛味の有無に関する形質を間違いなく選抜できることが明らかとなった。
【0042】
なお、本発明は上述した実施例には限られない。例えば、DNAをマーカーとして、配列番号1や5および6に表された塩基配列の一部を少なくとも含むDNA断片を用いて、辛味遺伝子座の遺伝子型の判定を行っても構わない。さらに、このようなDNAマーカーを用いる際に、例えば制限酵素Mbo IやHsp 92IIとは異なる他の一般的な制限酵素を、単独もしくは組み合わせて用いて処理することで、遺伝子型の判定を行うことも可能である。
【0043】
【発明の効果】
本発明による配列番号1に表される辛味遺伝子座近傍のDNAマーカーと、これをPCR法および制限酵素処理を用いて行う辛味遺伝子座の遺伝子型の判定方法は、トウガラシ属の植物、特にカプシクム・アヌウムの品種に適応可能であり、これにより、例えば辛味成分を生産するトウガラシ品種と生産しないトウガラシ品種を交配して育種を行う際に、辛味成分の生産能力の有無を効率的かつ簡便に判定できるという効果を奏する。
【0044】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、OPY-09をプライマーに用いてRAPD法により反応を行った際の増幅産物の電気泳動像である。
【図2】 図2は、PCRにより増幅したDNA断片の電気泳動像である。
【図3】 図3は、PCRによる増幅産物を制限酵素Mbo Iで処理して得られた断片の電気泳動像である。
【図4】 図4は、OPR-12をプライマーに用いてRAPD法により反応を行った際の増幅産物の電気泳動像である。
【図5】 図5は、特異的にPCR増幅したDNA断片の電気泳動像である。
【図6】 図6は、特異的にPCR増幅したDNA断片を様々な制限酵素処理して得られた断片の電気泳動像である。
【本発明の属する技術分野】
本発明の対象は、トウガラシ属の植物、特にカプシクム・アヌウム(Capsicum annuum )の辛味成分の生産に関する遺伝子型を判定するための、簡便かつ効率的な方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
トウガラシ属植物の一種であるカプシクム・アヌウム(Capsicum annuum )には、いわゆるトウガラシのように辛味成分(カプサイシノイド)を生産するものと、ピーマンのように辛味成分を生産しないものが存在する。辛味成分の生産能力の有無は、辛味遺伝子座の遺伝子型により決定され、この遺伝子型が優性ホモ型のPunPunあるいはヘテロ型のPunpunであれば辛味の生産能力を有し、劣性ホモ型のpunpunであれば辛味の生産能力がないことが知られている(非特許文献1)。従来より、ピーマン等の育種では辛味成分の生産能力を有する野生種等から病害抵抗性遺伝子等の導入が行われることが多く、その際辛味遺伝子座についても劣性ホモ型のものを選抜する必要があった。
【非特許文献1】
Daskalov, S. and J.M. Poulos. 1994. Capsicum Newsletter 13:15-26、Deshpande, R.B. 1935. Indian Jour. Agr. Sci. 5:513-516
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、辛味成分の生産能力を有する品種の中には、‘ししとう’や京都府の在来品種である‘万願寺’トウガラシのように通常辛味成分を生産していなくても栽培環境の変化によって突然辛味を発現するものがあるため、辛味遺伝子座が劣性ホモ型のものを選抜することが非常に困難となっている。したがって、本発明は、栽培環境に関わらず安定的に辛味成分を生産しないものの選抜を目的とした、より簡易に辛味遺伝子座の遺伝子型の判定を可能ならしめる方法を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、辛味遺伝子と連鎖するDNA断片を見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、トウガラシ属植物の辛味遺伝子座であるPun 座の近傍に位置し、配列番号1で表される塩基配列よりなるDNA、または配列番号1で表される塩基配列よりなるDNAと実質的に同一のDNAマーカーを用いて以下a)〜c)の少なくとも一の基準:
a)該DNAマーカーの増幅断片の有無、
b)該DNAマーカーの増幅断片の長さ、および
c)該DNAマーカーの増幅断片の制限酵素による切断パターン、
によりPun 座の遺伝子型を判別することを特徴とする方法である。
【0005】
また、本発明は、トウガラシ属植物の辛味遺伝子座であるPun 座の近傍に位置するDNAマーカーを検出するための1組のプライマーであって、配列番号1の塩基配列より任意に選んだ連続した15〜40塩基の長さの塩基配列(x)で規定されるプライマーと、配列番号1の塩基配列より任意に選んだ連続した15〜40塩基の長さの塩基配列(y)と相補的な塩基配列で規定されるプライマーとからなることを特徴とするものである。
【0006】
さらに、本発明は、前記プライマーの配列が、配列番号2と配列番号3であることを特徴とするものである。配列番号2は、上記の「配列番号1の塩基配列より任意に選んだ連続した15〜40塩基の長さの塩基配列(x)で規定されるプライマー」に相当し、配列番号3は、「配列番号1の塩基配列より任意に選んだ連続した15〜40塩基の長さの塩基配列(y)と相補的な塩基配列で規定されるプライマー」に相当する。
【0007】
また、本発明は、Pun 座の遺伝子型を判定する方法において、トウガラシ属植物の辛味遺伝子座であるPun 座の近傍に位置するDNAマーカーを検出するため、前記1組のプライマーを用いて、トウガラシ属植物から抽出したDNAを鋳型としてPCRを行い、トウガラシの辛味遺伝子座であるPun 座の近傍に位置するDNAマーカーを増幅し、増幅されたDNAマーカーを制限酵素Mbo Iで処理した場合、切断パターンが異なることにより、Pun 座の遺伝子型を判定することをも特徴とする。なお、この場合、前記1組のプライマーの配列が、配列番号2と配列番号3であるのがよい。
【0008】
更に、本発明では、辛味遺伝子と連鎖した新たなマーカーの開発により、これを使用して、誤判定の可能性を極限まで減らすことを可能とした。例えば、前記a)〜c)の少なくとも1の基準によりPun 座の遺伝子型を判別する方法において、配列番号4(10塩基のRAPD用プライマー)の記載の塩基配列で規定されるプライマーを用いてPCRによるDNAマーカーの増幅を行い、 トウガラシ属植物の辛味遺伝子座であるPun 座の近傍に位置する約1kbp のDNAマーカーを用いて、より効率のよい判別を可能とする。なお、本発明において約1kbp とは0.9〜1.1kbp を意味する。
【0009】
なお、この場合、配列番号5および6で挟まれた約1kbp のDNAマーカーを使用するのが好ましい。
【0010】
また、トウガラシ属植物の辛味遺伝子座であるPun 座の近傍に位置するDNAマーカーを検出するための1組のプライマーとしては、配列番号5の塩基配列より任意に選んだ連続した15〜40塩基の長さの塩基配列で規定されるプライマーと、このプライマーと向かい合う配列番号6の塩基配列より任意に選んだ連続した15〜40塩基の長さの塩基配列で規定されるプライマーとからなるものであってもよい。
【0011】
かかる1組のプライマーは、プライマーの配列が、配列番号7および9とこれと向かい合う配列番号8および10であってもよい。
【0012】
なお、本発明では、前述の配列番号5と配列番号6で規定されるプライマーや、配列が配列番号7および9とこれに向かい合う配列番号8および10であるような1組のプライマーを用いてトウガラシから抽出したDNAを鋳型としてPCRを行い、トウガラシ属植物の辛味遺伝子座であるPun 座の近傍に位置するDNAマーカーを増幅し、増幅されたDNAマーカーを制限酵素Hsp 92IIで処理した場合、切断パターンが異なることにより、Pun 座の遺伝子型を判別する方法も可能とする。
【0013】
更に、本発明では、前述のPun 座の遺伝子型を判別する方法において、Pun 座をはさむ位置に座乗する2つのDNAマーカーを用いることも効果的である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明では、上記課題を解決するため、RAPD法を用いて多数の増幅断片の中から辛味遺伝子座と連鎖したDNA断片を見いだし、これの塩基配列を明らかにし、この塩基配列に基づいてプライマーを作成し、PCR法を用いて安定して増幅できるDNAマーカーの特定を行った。さらに、このDNAマーカーを適当な制限酵素により切断することにより、辛味遺伝子座の遺伝子型を識別できるようにした。すなわち、本発明は辛味遺伝子座の近傍に位置し、配列番号1で表される塩基配列よりなるDNAマーカー、または配列番号1で表される塩基配列よりなるDNAと実質的に同一のDNAマーカーを利用して、これを制限酵素Mbo Iで処理した場合、切断パターンが異なることにより、辛味遺伝子座の遺伝子型を判定できるようにした。
【0015】
ここでいう、トウガラシの辛味遺伝子座であるPun 座の「DNAマーカー」とは、トウガラシの辛味遺伝子座であるPun 座の近傍に位置するDNAで、トウガラシのDNAを調べることにより、間接的に辛味遺伝子座の遺伝子型を判別できるものを指す。「近傍」とは、本発明に係るDNAマーカーがトウガラシの育種において実用的に利用可能な距離を指す。遺伝子間の距離は、分析に用いる集団の個体数や種類により変動するが、具体的には約15cM(センチモルガン)以下が好ましく、さらに好ましくは10cM以下で、5cM以下が特に好ましい。本発明のトウガラシの辛味遺伝子座の近傍に位置するDNAマーカーとしては、具体的には例えば、配列番号1で表される塩基配列によるDNAまたは配列番号1で表される塩基配列によるDNAと実質的に同一のDNAを挙げることができる。ここで、「配列番号1で表される塩基配列によるDNAと実質的に同一のDNA」とは、配列番号1で表されるDNAと同様に辛味遺伝子座の近傍に位置し、配列番号1で表される塩基配列の一部を含有するDNA、または配列番号1で表される塩基配列の一部を含有し、かつ配列番号1で表される塩基配列に隣接する塩基配列を含有するDNAを意味する。本発明のトウガラシの辛味遺伝子座の近傍に位置するDNAマーカーである、配列番号1に示されるDNAまたは配列番号1で表されるDNAと実質的に同一のDNAを有するかどうかの確認は、サザンハイブリダイゼーション法を用いて分析可能であるが、PCR法を利用して分析することが望ましい。
【0016】
次に、PCR法によって簡便かつ安定して増幅可能なDNAマーカーを用いたPun 座の遺伝子型の判別方法について説明する。まず、供試しようとするトウガラシから鋳型となるDNAを抽出するが、DNAを抽出するための組織としては植物体のどの部位を用いてもよく、また、生育段階も問わない。また、抽出方法はどのような方法も用いることができ、粗精製のDNAを用いることもできる。抽出したDNAを鋳型にDNAマーカーをPCR法により増幅させる。
【0017】
PCR法を用いて遺伝子型を判別する方法としては、(1)ある遺伝子型においてのみ特異的断片を増幅し、増幅の有無により遺伝子型を判別する方法、(2)増幅断片の長さが遺伝子型間で異なることに基づき、この増幅断片の長さを比較することにより遺伝子型を判別する方法、(3)全ての遺伝子型で増幅する同じ長さの断片をある制限酵素で処理した場合、遺伝子型により切断パターンが異なることに基づき、切断パターンを比較することにより遺伝子型を判別する方法などがある。(2)および(3)では遺伝子型がホモであるかヘテロであるかも同時に判別することが可能である。例えば、配列番号2と3に示すオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いたPCRにより増幅した断片を制限酵素Mbo Iで処理した場合、3つの断片に切断される品種と4つの断片に切断される品種がある。この切断パターンが異なることに基づき、辛味遺伝子座の遺伝子型の判定を行うことが可能となる。
【0018】
なお、本発明では、トウガラシ属植物の辛味遺伝子座であるPun 座の近傍に位置する強く連鎖した2つのマーカーで目的の遺伝子を挟み込むことにより、誤判定の可能性を極限まで減らすことを可能とした。すなわち、配列番号5と6で挟まれた約1kbp のDNAマーカーを用いて、より効率のよい判別を可能とする。
【0019】
このマーカーと先に開発されたマーカー(配列番号1で表わされる塩基配列よりなるDNAと実質的に同一のDNAマーカー)の間の遺伝距離は約8cM以下であり、この距離での二重組み換えの可能性は極めて低いため、これらの使用により、辛味遺伝子座の遺伝子型をより正確に判別することが可能となった。
【0020】
以下に実施例をあげて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0021】
【実施例】
実施例1:(植物材料)
辛味成分を生産しない‘とんがり’(ナント種苗より入手)と辛味成分を生産する‘万願寺’(京都府農業資源研究センター育成系統)を交配したF1 個体の自殖F2 集団を87個体育成し、この全ての個体について辛味成分の生産能力について調査した。その結果、辛味成分を生産する個体と生産しない個体が、60個体と27個体に分離した。この結果により、辛味成分の生産能力の有無は単一の遺伝子により支配されていることが確認された。以降、この87個体のF2 集団を用いて辛味遺伝子の連鎖マーカーの検索を行った。
【0022】
(トウガラシの辛味遺伝子に連鎖した多型断片の探索)
トウガラシからのDNAの抽出は、DNA extraction kits (Nucleon PhytoPure ,Amersham社)を用いて行った。得られたDNAを鋳型とし、約500種類の市販の10mer オリゴヌクレオチド(オペロン社)をプライマーとしてRAPD法の反応を行った。RAPD法の反応液組成および反応条件は以下の通りである。反応液は10mM Tris-HCl (pH8.3 )、50mM KCl、1.5mM MgCl2 、0.05% TritonX-100、200 μM dNTP mixture、0.5units Taq DNA polymerase(Takara社)、0.42μM プライマー、12ng鋳型DNAを含み12μlとなるように水で調節した。反応サイクルは94℃にて3分間保持した後、94℃にて1分間、40℃にて2分間、72℃にて2分間の繰り返しを40回行った後、72℃で5分間反応させ、その後4℃で維持した。なお、反応にはPROGRAM TEMP CONTROL SYSTEM (PC-800,ASTEC 社)を用いた。次にPCR反応液8μlを、1.7 %アガロースゲル、TBE バッファーを用いた電気泳動により分離し、エチジウムブロマイドで染色後、紫外線照射下で増幅断片を検出した。その結果、親品種である‘とんがり’と’万願寺’の間で約192種類のプライマーを用いた際に多型断片が検出できた。
【0023】
次にF2 個体のうち辛味成分を生産する個体と生産しない個体の各7個体から抽出したDNAを鋳型として、親品種間で多型断片の認められた192種類のプライマーを用いてRAPD法を行った。しかし、辛味成分を生産する個体のみに特異的な多型断片は認められなかった。したがって、組換え型の比較的少なかった10種類のプライマーを用いて全87個体の多型断片の分離を調査した。その結果、プライマー 5 '-agcagcgcac-3' (オペロン社の品名「OPY-09」)を用いた場合に得られた約0.8kbp の多型断片で組換え型が少なく、辛味遺伝子と連鎖していることがわかった。
【0024】
図1は親品種である‘とんがり’、‘万願寺’およびF2 個体の3個体のDNAを鋳型にし、「OPY-09」をプライマーに用いてRAPD法により反応を行った際の増幅産物の電気泳動像を示す。鋳型にしたDNAは左のレーンから‘万願寺’、‘とんがり’およびF2 個体の3個体であり、F2 個体の辛味成分の生産能力は左から「なし」、「あり」および「あり」である。泳動像からもわかるように、辛味遺伝子と連鎖した約0.8kbp の多型断片(矢印)のRAPD法による増幅は極めて不安定であった。
【0025】
(辛味遺伝子連鎖マーカーの塩基配列の決定)
辛味遺伝子に連鎖した約0.8kbp のDNA断片の塩基配列を決定するため、以下の操作を行った。‘万願寺’のDNAを鋳型にして増幅した約0.8kbp のDNA断片をアガロースゲルから回収し、TAクローニングキット(pGEM-T Easy Vector System 、プロメガ社)により、プラスミドpGEM-T Easy Vectorにサブクローニングし、大腸菌(DH5 α)に形質転換した。塩基配列の決定はABI PRISM BIG DYE Terminator Sequence Kit (ABI 社)を用いて、サブクローニングしたプラスミドを鋳型にシークエンス反応液を調整し、ABI PRISM 310 (ABI 社)装置で解析した。以上の操作の結果、辛味遺伝子に連鎖した約0.8kbp のDNA断片の塩基配列は、配列番号1に示すとおりであった。
【0026】
実施例2:(辛味遺伝子連鎖マーカーの遺伝子型の識別)
配列番号1記載の塩基配列情報から、辛味遺伝子に連鎖したDNA断片を特異的に増幅するためのプライマーペアを設計した。設計したプライマーの塩基配列は配列番号2および3に示した。このプライマーペアを用いて以下の反応液組成および反応条件で親品種である‘とんがり’と‘万願寺’のDNAを鋳型にPCRを行った。反応液は 10mM Tris-HCl(pH8.3 )、50mM KCl、1.5mM MgCl2 、0.05% Triton X -100、200 μM dNTP mixture、0.5units Taq DNA polymerase(Takara社)、各0.21μM プライマー、12ng鋳型DNAを含み12μlとなるように水で調節した。反応サイクルは94℃で3分間保持した後、94℃にて1分間、65℃にて2分間、72℃にて2分間の繰り返しを30回行った後、72℃で5分間反応させ、その後4℃で維持した。その結果、親品種間で同じサイズと思われるDNA断片の増幅が認められた。図2に、このPCRによる増幅産物の電気泳動像を示す。左のレーンが‘万願寺’、右のレーンが‘とんがり’を鋳型にした増幅産物である。
【0027】
次に配列番号2および3のプライマーペアを用いて上記の方法でPCRによりDNA断片を増幅した。得られた増幅産物を制限酵素Mbo Iで処理し、8%アクリルアミドゲルで電気泳動し分画した。その結果、‘万願寺’では3つの断片(約170bp、約220bp、および約340bp)に切断されたのに対し、‘とんがり’では4つの断片(約140bp、約160bp、約200bp、および約220bp)に切断された。すなわち、‘とんがり’の増幅産物では‘万願寺’のそれよりも制限酵素Mbo Iの認識部位が1箇所多いことがわかった。また、F2 個体では‘万願寺’のホモ型、‘とんがり’のホモ型およびこれらの2つのパターンを併せ持ったヘテロ型を確認できた。この方法により、辛味遺伝子連鎖マーカーの遺伝子型の識別が可能となった。図3にこの結果を示した。左のレーンから順に‘万願寺’、‘とんがり’、F2 個体の4個体であり、F2 個体は左からヘテロ型、ヘテロ型、‘とんがり’ホモ型および‘万願寺’ホモ型である。
【0028】
(辛味遺伝子と辛味遺伝子座に連鎖したDNAマーカーの距離)
‘とんがり’と‘万願寺’の交配F2 集団の87個体について、上記の方法により辛味遺伝子座に連鎖したDNAマーカーの遺伝子型の判定を行った。その結果と辛味成分の生産能力の有無を表1に示した。F2 集団では辛味遺伝子座の遺伝子型の判定は不可能であるため、表現型での比較を行ったところ、9個体で組換えが起こっており、これらの遺伝子間の距離は約10cMと計算された。したがって、配列番号1に示すDNAマーカーが辛味遺伝子座の連鎖マーカーとして実用的に利用できる距離であることがわかった。
【0029】
【表1】
【0030】
実施例3:(他の品種での辛味遺伝子座に連鎖したDNAマーカーの利用)
さらに、辛味成分を生産する‘伏見甘長’(タキイ種苗より入手)と‘とんがり’との交配F2 集団の103個体を用いて、辛味遺伝子と連鎖マーカーの遺伝子分析を行ったところ、表2に示すように、4個体で組換えが起こっており、遺伝子間の距離は約4cMであった。また、同一の種(カプシクム・アヌウム)に含まれる15品種から抽出した粗精製のDNAを鋳型に配列番号2および3のプライマーペアを用いてPCRを行ったところ、全ての品種でほぼ同一サイズのDNA断片が増幅されることが確認され、これらの15品種についての辛味成分の生産性有無の判定に応用可能であることが示唆された。用いた15品種のうちの8品種を以下に列挙する。
ベルマサリ(長野県原種センター)、新さきがけ2号(高知前川種苗)、カリフォルニアワンダー、鷹の爪、八つ房、ししとう(いずれも大和農園)、南禅寺トウガラシ(丸種種苗)、ニューエース(タキイ種苗)。
【0031】
【表2】
【0032】
実施例4:(植物材料)
辛味成分を生産しない‘とんがり’(ナント種苗より入手)と辛味成分を生産する‘万願寺’(京都府農業資源研究センター育成系統)を交配したF1 個体から葯培養により作出した倍加半数体(DH)集団を123個体育成し、この全ての個体について辛味成分の生産能力について調査した。その結果、辛味成分を生産する個体と生産しない個体が、69個体と54個体に分離した。DH集団の個体はヘテロ接合体がなく、全ての固体がホモ結合体で固定している特徴を持つ。以降、この123個体のDH集団を用いて辛味遺伝子の連鎖マーカーの検索を行った。
【0033】
「トウガラシの辛味遺伝子に連鎖した多型断片の探索」を実施例1と同様の方法で実施しその結果、親品種である‘とんがり’と’万願寺’の間で約192種類のプライマーを用いた際に多型断片が検出できた。
【0034】
次にDH集団のうち辛味成分を生産する個体と生産しない個体の各7個体から抽出したDNAを鋳型として、親品種間で多型断片の認められた192種類のプライマーを用いてRAPD法を行った。しかし、辛味成分を生産する個体あるいは生産しない個体のみに特異的な多型断片は認められなかった。したがって、組換え型の比較的少なかったプライマーを用いて全123個体の多型断片の分離を調査した。その結果、配列番号4に記載されるプライマー 5'-acaggtgcgt-3'(オペロン社の品名「OPR-12」)を用いた場合に得られた約1kbp の多型断片で組換え型が少なく、辛味遺伝座の劣性遺伝子と連鎖していることがわかった。
【0035】
図4は親品種である‘とんがり’、‘万願寺’およびDH集団の3個体のDNAを鋳型にし、「OPR-12」をプライマーに用いてRAPD法により反応を行った際の増幅産物の電気泳動像を示す。鋳型にしたDNAは左のレーンから‘万願寺’、‘とんがり’およびDH集団の3個体であり、DH個体の辛味成分の生産能力は全て「なし」である。
【0036】
(辛味遺伝子座連鎖マーカーの塩基配列の決定)
辛味遺伝子座に連鎖した約1.0kbp のDNA断片の塩基配列を決定するため、以下の操作を行った。‘とんがり’のDNAを鋳型にして増幅した約1.0kbp のDNA断片をアガロースゲルから回収し、TAクローニングキット(pGEM-T Easy Vector System 、プロメガ社)により、プラスミドpGEM-T Easy Vectorにサブクローニングし、大腸菌(DH5 α)に形質転換した。塩基配列の決定は、サブクローニングしたプラスミドを鋳型にシークエンス反応液を調整し、マルチキャピラリーDNA解析システム(ベックマン・コールター社)で解析した。以上の操作の結果、辛味遺伝子座に連鎖した約1.0kbp のDNA断片の中央部を除く両端の塩基配列を配列番号5と配列番号6に示した。
【0037】
実施例5:(辛味遺伝子座連鎖マーカーの遺伝子型の識別)
配列番号5と6記載の塩基配列情報から、辛味遺伝子に連鎖したDNA断片を特異的に増幅するためのプライマーペアを設計した。設計したプライマーの塩基配列は配列番号7および8と配列番号9および10に示した。配列番号7および8のプライマーペアを用いて以下の反応液組成および反応条件で親品種である‘とんがり’と‘万願寺’のDNAを鋳型にPCRを行った。反応液は 10mM Tris-HCl(pH8.3 )、50mM KCl、1.5mM MgCl2 、0.05% TritonX-100、200 μM dNTP mixture、0.5units Taq DNA polymerase(Takara社)、各0.21μM プライマー、12ng鋳型DNAを含み12μlとなるように水で調節した。反応サイクルは94℃で3分間保持した後、94℃にて1分間、60℃にて2分間、72℃にて2分間の繰り返しを30回行った後、72℃で5分間反応させ、その後4℃で維持した。その結果、非特異的なDNA断片の増幅が認められるため1回目のPCR産物を100倍に希釈した後、配列番号9および10のプライマーペアを用いて、 同じ条件でPCR反応を行った。その結果、 親品種間で同じサイズと思われるDNA断片の増幅が認められた。図2に、このPCRによる増幅産物の電気泳動像を示す。左のレーンが‘万願寺’、右のレーンが‘とんがり’を鋳型にした増幅産物である。
【0038】
次に配列番号7および8と配列番号9および10のプライマーペアを用いて上記の方法でPCRによりDNA断片を増幅した。得られた増幅産物を制限酵素Hsp 92IIで処理し、電気泳動し分画した。その結果、サイズマーカーの118bp付近に、切断断片長の違いによる、多型が確認できた。また、DH集団では‘万願寺’のホモ型‘とんがり’のホモ型の2つのパターンを確認できた。この方法により、辛味遺伝子連鎖マーカーの遺伝子型の識別が可能となった。図6は上記方法によりPCR増幅したDNA断片を6種類の制限酵素で処理した際の泳動像であり、偶数番号が‘万願寺’、奇数番号が‘とんがり’を示し、多型の得られたHsp 92IIで切断したものは12と13レーンに示した。
【0039】
(辛味遺伝子と辛味遺伝子座に連鎖したDNAマーカーの距離)
‘とんがり’と‘万願寺’のDH集団の123個体について、辛味遺伝子座に連鎖したDNAマーカーの遺伝子型と辛味成分の生産能力の有無を表3に示した。その結果、6個体で組換えが起こっており、これらの遺伝子間の距離は約5cMと計算された。したがって、配列番号5および6を両端にもつ約1.0kbp のDNAマーカーが辛味遺伝子座の連鎖マーカーとして実用的に利用できる距離であることがわかった。
【0040】
【表3】
【0041】
なお、DH集団で実施例1に示した辛味遺伝子連鎖マーカーを適用したところ、辛味遺伝子と3個体で組換えが確認され、2.4cMの遺伝距離であった。さらに、この2つの連鎖マーカーは辛味遺伝子座を挟む形で連鎖していることも確認できた。従って、上記2つの辛味遺伝子連鎖マーカーを用いることにより、より正確に辛味遺伝子座の遺伝子型の判定が可能であり、辛味の有無に関する形質を間違いなく選抜できることが明らかとなった。
【0042】
なお、本発明は上述した実施例には限られない。例えば、DNAをマーカーとして、配列番号1や5および6に表された塩基配列の一部を少なくとも含むDNA断片を用いて、辛味遺伝子座の遺伝子型の判定を行っても構わない。さらに、このようなDNAマーカーを用いる際に、例えば制限酵素Mbo IやHsp 92IIとは異なる他の一般的な制限酵素を、単独もしくは組み合わせて用いて処理することで、遺伝子型の判定を行うことも可能である。
【0043】
【発明の効果】
本発明による配列番号1に表される辛味遺伝子座近傍のDNAマーカーと、これをPCR法および制限酵素処理を用いて行う辛味遺伝子座の遺伝子型の判定方法は、トウガラシ属の植物、特にカプシクム・アヌウムの品種に適応可能であり、これにより、例えば辛味成分を生産するトウガラシ品種と生産しないトウガラシ品種を交配して育種を行う際に、辛味成分の生産能力の有無を効率的かつ簡便に判定できるという効果を奏する。
【0044】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、OPY-09をプライマーに用いてRAPD法により反応を行った際の増幅産物の電気泳動像である。
【図2】 図2は、PCRにより増幅したDNA断片の電気泳動像である。
【図3】 図3は、PCRによる増幅産物を制限酵素Mbo Iで処理して得られた断片の電気泳動像である。
【図4】 図4は、OPR-12をプライマーに用いてRAPD法により反応を行った際の増幅産物の電気泳動像である。
【図5】 図5は、特異的にPCR増幅したDNA断片の電気泳動像である。
【図6】 図6は、特異的にPCR増幅したDNA断片を様々な制限酵素処理して得られた断片の電気泳動像である。
Claims (9)
- トウガラシ属植物の辛味遺伝子座であるPun 座の近傍に位置し、配列番号1で表される塩基配列よりなるDNAマーカーを用いて以下a)〜c)の少なくとも一の基準:
a)該DNAマーカーの増幅断片の有無、
b)該DNAマーカーの増幅断片の長さ、および
c)該DNAマーカーの増幅断片の制限酵素による切断パターン、
により前記 Pun 座が、辛味成分の生産能力に関して優性ホモ型か、劣性ホモ型か、またはヘテロ型かを判別する方法であって、
前記DNAマーカーの増幅断片が、配列番号2で規定されるプライマーと配列番号3で規定されるプライマーとからなる1組のプライマーを用いて、トウガラシ属植物から抽出したDNAを鋳型としてPCRを行って得られることを特徴とする、判別方法。 - 配列番号2で規定されるプライマーと配列番号3で規定されるプライマーとからなる1組のプライマーを用いて、トウガラシ属植物から抽出したDNAを鋳型としてPCRを行って得られることを特徴とする、請求項1に記載のDNAマーカーの増幅断片。
- 配列番号2で規定されるプライマーと配列番号3で規定されるプライマーとからなる1組のプライマー。
- 請求項2に記載のDNAマーカーの増幅断片を制限酵素Mbo Iで処理し、該増幅断片の切断パターンが異なることにより、前記 Pun 座が、辛味成分の生産能力に関して優性ホモ型か、劣性ホモ型か、またはヘテロ型かを判別する方法。
- トウガラシ属植物の辛味遺伝子座である Pun 座の近傍に位置し、配列番号5で表される塩基配列と配列番号6で表される塩基配列を両端に有する塩基配列よりなるDNAマーカーを用いて、以下a)〜c)の少なくとも一の基準:
a)該DNAマーカーの増幅断片の有無、
b)該DNAマーカーの増幅断片の長さ、および
c)該DNAマーカーの増幅断片の制限酵素による切断パターン、
により前記 Pun 座が、辛味成分の生産能力に関して優性ホモ型か、劣性ホモ型か、またはヘテロ型かを判別する方法であって、
前記DNAマーカの増幅断片が、配列番号7で規定されるプライマーおよび配列番号9で規定されるプライマーと配列番号8で規定されるプライマーおよび配列番号10で規定されるプライマーとからなる1組のプライマーを用いて、トウガラシ属植物から抽出したDNAを鋳型としてPCRを行って得られることを特徴とする、判別方法。 - 配列番号7で規定されるプライマーおよび配列番号9で規定されるプライマーと配列番号8で規定されるプライマーおよび配列番号10で規定されるプライマーとからなる1組のプライマーを用いて、トウガラシ属植物から抽出したDNAを鋳型としてPCRを行って得られることを特徴とする、請求項5に記載のDNAマーカーの増幅断片。
- 配列番号7で規定されるプライマーおよび配列番号9で規定されるプライマーと配列番号8で規定されるプライマーおよび配列番号10で規定されるプライマーとからなる1組のプライマー。
- 請求項6に記載のDNAマーカーの増幅断片を制限酵素Hsp 92IIで処理し、該増幅断片の切断パターンが異なることにより、前記 Pun 座が、辛味成分の生産能力に関して優性ホモ型か、劣性ホモ型か、またはヘテロ型かを判別する方法。
- 請求項1に記載のDNAマーカーおよび請求項5に記載のDNAマーカーの、 Pun 座をはさむ位置に座乗する2つのDNAマーカーを用いて、以下a)〜c)の少なくとも一の基準:
a)配列番号2で規定されるプライマーと配列番号3で規定されるプライマーとからなる1組のプライマーを用いて得られることを特徴とする請求項1に記載のDNAマーカーの増幅断片および配列番号7で規定されるプライマーおよび配列番号9で規定されるプライマーと配列番号8で規定されるプライマーおよび配列番号10で規定されるプライマーと からなる1組のプライマーを用いて得られることを特徴とする請求項5に記載のDNAマーカの増幅断片の有無、
b)前記2つのDNAマーカーの前記増幅断片の長さ、および
c)前記2つのDNAマーカーの前記増幅断片の制限酵素による切断パターン、
により前記 Pun 座が、辛味成分の生産能力に関して優性ホモ型か、劣性ホモ型か、またはヘテロ型かを判別する方法。
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