JP3836250B2 - 凝集沈殿装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、凝集剤、特にアルミニウム系等の無機凝集剤を原水に添加して原水中の懸濁物を処理槽内で凝集沈殿分離する凝集沈殿装置に関し、更に詳細には、従来の凝集沈殿装置に比べて、処理槽に設けた接触材集積層の洗浄間隔を長くし、しかも水質の高い処理水を長時間にわたり安定して流出できるようにした凝集沈殿装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
河川水などを原水とし、水処理して上水や工業用水を製造する場合、又は公共下水及び工場廃水等の排水を基準のレベルまで水処理する場合等に用いる水処理装置として、凝集沈殿性能及び濾過性能が高く、しかも運転が容易である等の理由から、いわゆる上昇流式凝集沈殿装置が採用されることが多い。
上昇流式凝集沈殿装置は、原水に凝集剤を添加する添加手段と、添加手段の下流に設けられ、空隙率の大きな小片接触材を集積させてなる接触材集積層を有し、接触材集積層内を上向流で原水を流して、原水中の懸濁物を凝集、沈殿させる凝集沈殿手段とから構成されている。
【0003】
ここで、図5及び図6を参照して、従来の上昇流式凝集沈殿装置の構成及び運転方法を説明する。図5は従来の上昇流式凝集沈殿装置の構成を示すフローシート、図6は凝集沈殿槽の構成を示す模式図である。
従来の上昇流式凝集沈殿装置10は、図5に示すように、原水槽12と、原水槽12から原水を汲み出し、送水する原水ポンプ14と、凝集剤添加装置16と、薬品混和槽18と、凝集沈殿槽20とを備えている。
凝集剤添加装置16は、原水の濁度を測定する濁度計22と、凝集剤槽24と、濁度計22の下流の原水供給管26に凝集剤槽24から凝集剤を注入する凝集剤ポンプ28とを備え、濁度計22の計測値に基づいて所要の凝集剤を原水に注入する。
薬品混和槽18は、攪拌機29を備えた容器であって、凝集剤が注入された原水を一次的に滞留させ、攪拌機29により原水を攪拌して、原水と凝集剤とを急速混和し、流入管30を介して原水を凝集沈殿槽20に流入させる。
【0004】
凝集沈殿槽20は、原水中の懸濁物が凝集剤によってフロック化した凝集フロックを凝集、濾過、分離する槽であって、図6に示すように、下から、順次、区画された原水の流入ゾーン32、接触材集積ゾーン34、及び集水ゾーン36から構成されている。
接触材集積ゾーン34は、ゾーンの上部及び下部に設けられた網目状、目板状等の多孔性隔板である流出防止板38、40で区画され、その間の領域に、空隙率の大きな小片接触材、例えば、図7に示すような短尺チューブ形状の比較的比重の小さいプラスチック製小片接触材42を多数収容している。
原水の通水時には、接触材42は原水の上向流により上部流出防止板38の下に集積して接触材集積層44を形成する一方、接触材集積層44と流出防止板40との間には流水以外には殆ど何も存在しない流水領域部45が形成される。
集水ゾーン36は、接触材集積ゾーン34を流過して処理された処理水を集水する領域であって、接触材集積ゾーン34の流出防止板38の直ぐ上に設けられた集水部46と、集水部46の上端から溢流する処理水を集める集水トラフ48と、集水トラフ48に接続されて、処理水を流出させる流出管50とから構成され、処理水を処理水槽52(図5参照)に送水する。
【0005】
流入ゾーン32には、薬品混和槽18から出た原水が流入管30を介して流入する。流入管30は、流入ゾーン32の中央に貫入して下向きの開口を先端に備えている。流入管30の開口の下方には、下向きに流入した原水の向きを上方に変えるために、傘を逆にした形状の変流板54が設けてある。また、流入管30には、アルカリ剤注入管56が接続され、必要に応じてアルカリ溶液を注入して原水のpHを調整するようになっている。
流入ゾーン32の底部、即ち変流板54の下方は、汚泥を集積するために逆円錐状の汚泥貯留ゾーン58になっていて、汚泥を排出する排泥管60がその最下部に接続されている。
また、流入ゾーン32の上部には、上方に向け空気を噴射する空気ノズルを多数備えた空気供給管62が設けられ、空気ブロア64で送入された空気を噴出して、接触材集積ゾーン34の接触材42を攪拌洗浄するようになっている。
【0006】
凝集沈殿槽20では、凝集剤が添加された原水は、先ず、流入ゾーン32に流入する。流入ゾーン32では、原水中の懸濁物が凝集して形成されたフロックのうち比較的大きなフロックが、先ず、沈降分離する。
次いで、原水は接触材集積ゾーン34に流入する。そこでは、原水中の残りの微小フロックが、接触材42と接触して接触材外表面及び接触材内表面に付着したり、あるいは接触材42同士の間隙に捕捉されたりし、分離される。一方、原水は、接触材42の空隙、或いは接触材42と接触材42との間を流れて、空隙内或いは接触材間に形成されたフロック層により濾過されると共に、原水中の微小フロックがフロック層に捕捉される。
【0007】
接触材42に付着した、あるいは接触材42間に捕捉されたフロックは、後続する微小フロックとの接触等によって徐々に成長し、フロック径が大きくなる。そして、原水の上昇流速より沈降速度が大きいフロックが形成されるにつれて、このフロックが、原水の流れによって接触材42から剥離し、更には原水の流れに逆らって沈降して、汚泥貯留ゾーン58に堆積し、次いで排泥管60により排出される。
このように、原水中の懸濁物は、懸濁物フロックの凝集作用、原水に対する濾過作用、フロックの分離及び沈殿作用等により、原水から分離され、汚泥貯留ゾーン58に沈殿する。一方、原水は、処理水となって上部の集水ゾーン36から処理水槽52に流出する。
本上昇流式凝集沈殿装置は、粗大化した凝集フロックの密度が高く、大きな沈降速度を有することから、高速処理が可能になる。よって、設備がコンパクトになって、設備面積が小さくなり、しかも薬品使用量も少なく、発生汚泥の処理処分が容易であると評価されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述の凝集沈殿槽20では、原水の通水時に、流水以外に殆ど何も存在しない空筒部、つまり流水領域部45が、接触材集積層44と下部の流出防止板40の間に形成される。流水領域部45は、原水の凝集沈殿処理上では必ずしも形成するに及ばない領域であるものの、接触材集積層44が目詰りした時に接触材42を空気等で撹拌洗浄する際の、接触材42の流動化のため空間として重要な領域である。
本発明者らは、凝集沈殿装置の研究の過程で、原水の水質によって、特に原水の濁度が高いときには、この流水領域部に、フロックの集合体であるフロックブランケットが形成されることを見い出した。本明細書で、フロックブランケットとは、原水中の懸濁物が凝集剤の凝集効果により凝集してフロックを生成し、生成したフロックが、流水領域部に浮遊してブランケット状に集積したものを言う。フロックブランケットの形成は、次のように説明できる。即ち、凝集剤により集塊化した濁質が、接触材集積層で大きく成長して、処理槽内の通水速度よりも大きい沈降速度を有するようになり、接触材集積層から沈降し始めるものの、沈降して行くフロックのうち下部の流出防止板の目開きよりも大きいフロックは、流出防止板によって下方への沈降を阻止され、次第に下部流出防止板上に浮遊、堆積してフロックブランケットを形成する。
また、フロックブランケットの形成は、原水の濁度が高いときに加えて、凝集剤の注入率が比較的多い場合にも、顕著であることも判った。
【0009】
本発明者らは、更に、下部の流出防止板上に形成されたフロックブランケットは、流出防止板を通過して槽下部から流入する未成長のフロックを吸合し、原水に対する除濁作用を助長する機能を有することも見い出した。
更に、フロックブランケットの成長を放置して、フロックブランケットが接触材集積層まで到達すると、フッロクブラケットを形成している粗大フロックが接触材集積層内に多量に進入するようになって接触材集積層の凝集沈殿濾過作用を著しく減退させ、接触材集積層での濁質の捕捉限界容量への到達時間を短くすることも判った。
換言すれば、フロックブランケットの成長を放置すると、接触材集積層の機能はフロックブランケットとの接触により減退する。その結果、接触材集積層の機能を回復するために、接触材集積層の洗浄操作が度々必要になり、洗浄操作と洗浄操作との洗浄間隔が短くなると共に通水運転時間が短くなる。従って、フロックブランケットが接触材集積層に到達しないようにすることが、凝集沈殿槽の接触材集積層の洗浄間隔を長く、つまり通水運転時間を長くするために必要であることが判った。
【0010】
そこで、本発明の目的は、接触材集積層の洗浄間隔を長くして、水質の高い処理水を安定して長時間にわたり流出させるようにした凝集沈殿装置を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る凝集沈殿装置は、原水に凝集剤を添加する添加手段と、添加手段の下流に設けられた処理槽の槽内を網目状等の多孔性隔板で上下に区画した槽上部に空隙率の大きな小片接触材を集積させてなる接触材集積層を有し、接触材集積層内を上向流で原水を流して、原水中の懸濁物を凝集、沈殿させる凝集沈殿手段とからなる凝集沈殿装置において、
処理槽の多孔性隔板上近傍の槽内と槽外とを連通させる連通手段を備え、原水の通水時に、多孔性隔板と接触材集積層との間に形成される流水領域部に生じるフロックブランケットを連通手段を介して槽内から槽外に抜き出すようにしたことを特徴としている。
生成するフロックブランケットのフロック吸合、凝集機能を積極的に利用するには、多孔性隔板と接触材集積層との間に形成される流水領域部の高さを20cm以上にして、フロックブランケットの生成領域を確保するのが好ましい。
【0012】
また、凝集沈殿手段(以下、後段の凝集沈殿手段と言う)と添加手段との間に、前処理手段として、後段の凝集沈殿手段の接触材集積層中の空塔通水速度より高い空塔通水速度で原水を通水する接触材集積層を少なくとも一層有する前段凝集手段を備え、前段凝集手段の接触材集積層内で凝集させた凝集フロックと共に一次処理水を前段凝集手段から流出させ、後段の凝集沈殿手段に流入させるようにした凝集沈殿装置である場合には、連通手段が、後段の接触材集積層下の多孔性隔板上近傍の槽内と槽外とを連通させるようにする。
【0013】
本発明では、添加手段によって原水に添加する凝集剤は、原水中の懸濁物に対して凝集効果がある限り制約はなく、例えば硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(PAC)等のアルミニウム塩を好適に使用できる。また、凝集剤の添加率は、その種類、原水の水質、濁度等により異なるので、予め実験等により好ましい値に設定する。
凝集剤としてアルミニウム系無機凝集剤を使用する場合に、その添加率は、原水の濁度によっても変わるが、一般的には、ALT比で0.1〜0.001、好ましくは0.05〜0.005である。この範囲のALT比により、原水中の懸濁物は、100μm 以下、好ましくは数μm 〜数10μm 程度の大きさの懸濁物の微小フロックを形成するように調整される。
【0014】
好適には、多孔性隔板上に生じるフロックブランケットとその上の水との界面を検出する界面検出手段を備える。
界面検出手段には、例えばフロックブランケット及びその上の水の透過光の光量をそれぞれ測定してフロックブランケットと水との界面を検出するようにした光学的濁度測定の界面計、超音波を利用した界面計、粘度測定を利用した界面計等を使用できる。
【0015】
更に、好適には、フロックブランケットから連通手段を介して抜き出すフロックの流出量を界面検出手段に連動して調節する流出量調節手段を備え、界面検出手段により検出した界面位置に応じてフロックの流出量を流出量調節手段により調整し、界面を所定範囲に維持する。これにより、フロックブランケットの接触材集積層への進入を確実に阻止することができると共にフロックブランケットを所定厚さに維持してフロックブランケットのフロック吸合、凝集機能を積極的に利用することができる。
流出量調節手段には、例えば界面検出手段と連動する開閉弁、流量調節弁等を使用する。フロックの抜き出し方式は、弁をオンオフ動作で開閉するオンオフ抜き出し方式でも、フロックブランケットと水との界面を設定高さに維持するように弁開度を調整して連続的にフロックを抜き出す連続抜き出し方式でも良い。
【0016】
連通手段は、処理槽の多孔性隔板上近傍の槽内と槽外とを連通させ、多孔性隔板と接触材集積層との間に形成された流水領域部に生じたフロックブランケットからフロックを槽内から槽外に抜き出すことができる限り、その構成には制約はない。
好適には、連通手段が、処理槽の槽壁を貫通して多孔性隔板上近傍の槽内に臨む開口を備え、他端が槽外に位置する管体である。
または、連通手段が、処理槽の槽壁を貫通して多孔性隔板上近傍の槽内に臨む開口を介して槽内と連通し、かつ槽外への出口を有する槽体である。
連通手段の断面積は、処理槽の横断面積の1〜20%の範囲、即ち連通手段の開口比は1〜20%が適当である。
【0017】
本発明の凝集沈殿装置で処理できる原水は、その水源、水質に制約はなく、例えば濁度が数度〜2000度の範囲にわたる原水に適用できる。
尚、原水とは、凝集沈殿装置に導入される被処理水の意味であって、河川水、井戸水、湖沼水等の上水用の原水のみならず、公共下水及び工場排水を処理する凝集沈殿装置では、凝集沈殿装置に導入される排水を原水と言う。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、実施形態例を挙げ、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を具体的かつ詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施形態例1
本実施形態例は、本発明に係る凝集沈殿装置の実施形態の一例である。図1は本実施形態例の凝集沈殿装置の要部、即ち凝集沈殿槽の構成を示す模式図である。
本実施形態例の凝集沈殿装置は、凝集沈殿槽としてフロックブランケットの抜き出し手段を備えた凝集沈殿槽65を有することを除いて、図5に示す従来の凝集沈殿装置と同じように構成されている。
凝集沈殿槽65は、図6に示す従来の凝集沈殿槽20の構成に加えて、凝集沈殿槽65の下部流出防止板40上近傍の槽内と槽外とを連通させる連通手段としてフロック抜き出し管66を、また、フロックブランケットと水との界面を検出する界面検出手段として界面計68を、更に、フロック抜き出し管66を流れるフロックの流出量を界面計68に連動して調節する流出量調節手段として流量調節弁69を備えている。
【0019】
フロック抜き出し管66は、凝集沈殿槽65の槽壁を貫通して下部の流出防止板(多孔性隔板)40の直ぐ上に開口を有する配管であって、流水領域部45に生成するフロックブランケットからフロックを所定の場所に流出させるようになっている。
界面計68は、フロックブランケットの濁度と水の濁度とを光学的に測定して、その相違からフロックブランケットと水との界面を検出する界面計であって、界面が上昇して設定高界面HLに到達した時点及び界面が下降して低界面LLに到達した時点に、それぞれ、その旨の信号を発信する。
流量調節弁69は、界面が高界面HLに到達した旨の信号を界面計68から受けると、弁を開放してフロック抜き出し管66を介してフロックを流出させ、次いで界面が低界面LLに到達した旨の信号を界面計68から受けると、弁が閉止する。界面が上昇し、再び、界面計68が高界面HLに到達した旨の信号を発信すると、流量調節弁69は弁を開放してフロックを流出させる。
【0020】
本実施形態例の凝集沈殿槽65では、界面計68と流量調節弁69のこのような協働により、フロックブランケットの界面は、設定した高界面HLと低界面LLとの間に常に位置して、接触材集積層44に到達することはない。
尚、実施形態例1では、界面位置を連続的に検出する界面計と、界面を設定高さに維持するように、界面計に連動して弁開度を調整して連続的にフロックを抜き出す流量調節弁とを備え、フロックを連続的に抜き出すようにしても良い。以下の実施形態例2及び3でも同様である。
【0021】
実施形態例2
本実施形態例は、本発明に係る凝集沈殿装置の実施形態の別の例である。図2は本実施形態例の凝集沈殿装置の要部、即ち凝集沈殿槽の構成を示す模式図である。
本実施形態例の凝集沈殿装置は、凝集沈殿槽としてフロックブランケットの抜き出し手段を備えた凝集沈殿槽70を有することを除いて、図5に示す従来の凝集沈殿装置と同じように構成されている。
凝集沈殿槽70は、図6に示す従来の凝集沈殿槽20の構成に加えて、下部流出防止板(多孔性隔板)40上近傍の槽内と槽外とを連通させる連通手段としてジャケット71及びジャケット71の底部に設けられたフロック抜き出し管72を、また、ジャケット71内のフロックブランケットと水との界面を検出する界面検出手段として界面計73を、更に、フロック抜き出し管72を流れるフロックブランケットの流出量を界面計73に連動して調節する流出量調節手段として流量調節弁74を備えている。
【0022】
ジャケット71は、凝集沈殿槽70の外側に付設された二重槽形式の容器であって、凝集沈殿槽70の槽壁を貫通して下部流出防止板40の直ぐ上に開口75を有し、開口75を介して流水領域部45と連通している。したっがて、該流水領域部45に生じたフロックブランケットの界面が上昇して開口75の高さ位置に達すると、それ以上の余剰のスラッジブランケットは該開口75から自然に流出してジャケット71内に抜き出されるので、凝集沈殿槽70内のスラッジブランケットの界面位置は常に開口75近傍に位置する。
フロック抜き出し管72は、ジャケット71の底部に接続され、所定の場所にフロックを流出させるようになっている。
界面計73は、ジャケット71内のフロックブランケットの濁度と水の濁度とを光学的に測定して、その相違からジャケット71内のフロックブランケットと水との界面を検出する界面計であって、界面が上昇して設定高界面HLに到達した時点及び界面が下降して低界面LLに到達した時点に、それぞれ、その旨の信号を発信する。
流量調節弁74は、界面が高界面HLに到達した旨の信号を界面計73から受けると、弁を開放してフロック抜き出し管72を介してフロックをジャケット71から流出させ、次いで界面が低界面LLに到達した旨の信号を界面計73から受けると、弁が閉止する。再び、界面が上昇し、界面計73が高界面HLに到達した旨の信号を発信すると、流量調節弁74は弁を開放してフロックを流出させる。
【0023】
本実施形態例の凝集沈殿槽70では、該沈殿槽70内でのフロックブランケットの界面は、常に開口75の近傍の所定位置に位置して、接触材集積層44に到達することはない。
【0024】
実施形態例3
本実施形態例は、本発明に係る凝集沈殿装置の実施形態の更に別の例である。図3は本実施形態例の凝集沈殿装置の要部、即ち凝集沈殿槽の構成を示す模式図である。
本実施形態例の凝集沈殿装置は、図6に示した従来の凝集沈殿槽20の改良型の凝集沈殿槽80を備えている。
先ず、図3を参照して、改良型の凝集沈殿装置80の構成を説明する。凝集沈殿槽20の改良型の凝集沈殿槽80は、凝集沈殿槽20に比べて一層濁度の低い処理水を流出させると共に接触材集積層の洗浄間隔を長くした凝集沈殿槽である。改良型の凝集沈殿槽80は、図3に示すように、空気供給管62を含む下部流出防止板40より上の構成が、従来の凝集沈殿槽20と同じであって、異なる構成は凝集沈殿槽20の下部流出防止板40と汚泥貯留ゾーン58との間に、原水流入ゾーン32に代えて、前段の凝集手段を有することである。
【0025】
従来の凝集沈殿槽20の原水流入ゾーン32に代えて設けられた前段の凝集手段は、前段接触材集積ゾーン82と、前段接触材集積ゾーン82と下部流出防止板40との間に設けられた、単なる空間領域からなる分離ゾーン83とから構成されている。
前段の接触材集積ゾーン82には、円筒部84を上部に、円筒部84に連続して逆円錐状部86を下部に備えた内容器88が設けられ、円筒部84は多数個の小片接触材を収容し、円筒部84の上端部と下端部には、収容した接触材が原水と共に流出しないように、目板状の流出防止板92及び94が設けてある。原水の通水に伴い、接触材は上部の流出防止板92の下に集積して前段接触材集積層90を形成する。
逆円錐状部86は、底部で原水の流入管30と接続し、原水を円筒部84に一様に分散して導水するために設けてある。
【0026】
改良型の凝集沈殿槽80では、円筒部84内に形成される前段の接触材集積層90での空塔通水速度を下部流出防止板40上の接触材集積層44での空塔通水速度より大きくなるように設定されており、そのために、円筒部84の直径は凝集沈殿槽80の直径より小さくなっている。
また、前段の接触材集積層90を構成する接触材は、その形状が接触材集積層44を構成する接触材と同じであって、その寸法が大きいものが好ましいが、勿論、寸法が同じであってもよい。
【0027】
分離ゾーン83は、凝集沈殿槽80と同じ直径の空間を設けることにより、前段の接触材集積層90から流出した一次処理水の流速を急激に低下させ、一次処理水に同伴された粗大な凝集フロックを流体力学的に一次処理水から分離する領域である。
【0028】
原水の通水開始当初は、前段の接触材集積層90に流入した原水中の微小フロックは、接触材の「さえぎり」の効果によって、接触材の表面に付着して表面を覆うようにして捕捉されて行く。
一旦、接触材の表面に微小フロックが付着し始めると、既に付着した微小フロック自体が凝集付着力を持っているので、後続する微小フロックは、接触材の未付着面に付着して捕捉されることに加えて、接触材面上の付着フロックに衝突し、衝突した微小フロックは、その付着フロックに捕捉される。このようにして、微小フロック同士の邂逅が、加速度的に進み、接触材上のフロック層が成長して行く。
付着当初の微小フロックの接触材に対する付着力は、比較的強いために簡単に剥離することはないものの、後続する微小フロックを逐次吸着して次第に粗大化すると原水の水流による剪断力によって剥離する。また、それほど粗大化しないうちに剥離した微小フロックであっても、一定以上の寸法にまで成長した微小フロックは、接触材集積層90内の水流の遅い所や、水流の影響の及ばない接触材の裏側又は内部空隙内に沈積するようになる。
【0029】
このようにして、原水中の懸濁物の捕捉が進行すると、接触材表面に付着している微小フロックから大きな沈降速度を持つ粗大な凝集フロックまで多様なフロック群が前段の接触材集積層90内に包含されるようになる。フロックの堆積が進んで、一部では接触材内部及び接触材同士の間隙を閉塞するが、通過する原水流の圧力によって堆積フロック群が上方に噴出する。
フロック群の噴出現象は、噴出したフロック群を分級する効果を有する。すなわち、粗大化されていないフロック粒子は、原水の流速によって上部に巻き上げられるものの、上部の接触材に接触すると、そこに沈積する。一方、粗大な凝集フロックは、流れに逆らって、噴出した近傍の接触材上に留まる。
微小フロックの付着、成長が進行するにつれて、このようにして、接触材集積層90内は、粗大化した凝集フロック群によって充満することになり、やがて、凝集フロック群は、一次処理水に伴われて接触材集積層90を離れ、上部の流出防止板92から上方に流出する。
【0030】
接触材集積層90から流出した一次処理水は、分離ゾーン83でその流速が急速に低下するので、粗大な粒子径と大きな密度を持つ凝集フロックは、一次処理水の流れから離れ、その大部分が凝集沈殿槽80と内容器88との間の静水状態の環状空間96を通過して沈降し、汚泥貯留ゾーン58に達して、沈殿汚泥として貯留される。
従って、薬品混和槽18内及び流入管30内で形成された微小フロックは、前段の接触材集積層90を通過する間に、そのうち相当の割合のものが粗大凝集フロックとなって汚泥貯留ゾーン58に沈降分離される。その結果、接触材集積層44に流入する一次処理水中の懸濁物の量は、大幅に減少すると共に流入する縣濁物自体も大部分が微小フロックということになる。
【0031】
接触材集積層90内の空塔速度を速めているので、接触材集積層90で粗大化した凝集フロックは、機械的な剥離手段を必要とすることなく、原水の水流により、随時、剥離、同伴される。
従って、特別の洗浄操作を行わなくとも、接触材集積層90のフロック凝集吸着活性を常に高く保持することができ、また、接触材集積層90が目詰まりすることも殆どない。また、フロックブランケットが形成されることもないし、仮に形成されたしても、速い原水の流速により分散される。
従って、本実施形態例の凝集沈殿槽80でも、フロックブランケットは、実施形態例1及び2と同様に分離ゾーン83の上方に設けられている流出防止板40上に生成する。
【0032】
そこで、本実施形態例では、実施形態例1と同様なフロックブランケットの抜き出し手段を備えている。
凝集沈殿槽80は、流出防止板40上のフロックブランケットからフロックを抜き出すために、凝集沈殿槽80の下部流出防止板40上近傍の槽内と槽外とを連通させる連通手段としてフロック抜き出し管98を、また、フロックブランケットと水との界面を検出する界面検出手段として界面計100を、更に、フロック抜き出し管98を流れるフロックの流出量を界面計68に連動して調節する流出量調節手段として流量調節弁102を備えている。
【0033】
フロック抜き出し管98は、凝集沈殿槽80の槽壁を貫通して下部の流出防止板40の直ぐ上に開口を有する配管であって、流水領域部45のフロックブランケットから所定の場所にフロックを流出させるようになっている。
界面計100は、フロックブランケットの濁度と水の濁度とを光学的に測定して、その相違からフロックブランケットと水との界面を検出する界面計であって、界面が上昇して設定高界面HLに到達した時点及び界面が下降して低界面LLに到達した時点に、それぞれ、その旨の信号を発信する。
流量調節弁102は、界面が高界面HLに到達した旨の信号を界面計100から受けると、弁を開放してフロック抜き出し管98を介してフロックを流出させ、次いで界面が低界面LLに到達した旨の信号を界面計100から受けると、弁が閉止する。界面が上昇し、再び、界面計100が高界面HLに到達した旨の信号を発信すると、流量調節弁102は弁を開放してフロックを流出させる。
【0034】
本実施形態例の凝集沈殿槽80では、界面計100と流量調節弁102とのこのような協働により、フロックブランケットの界面は、設定した高界面HLと低界面LLとの間に常に位置して、接触材集積層44に到達することはない。
なお、本実施形態例でも、実施形態例2の同様にジャケットを備えた抜き出し手段を設けることもできる。
【0035】
上述の実施形態例1から3では、接触材集積層44に流入したフロックは、接触材と接触して接触材表面、接触材の内部、更には接触材同士が形成する間隙に捕捉される。接触材に捕捉されたフロックの一部は、後から流入してきた微小なフロックを吸合して、次第に大きなフロックへと成長していく。
接触材集積層44の通水速度、例えば100〜1000m/日よりも速い沈降速度を持つ大きさにまで成長したフロックは、沈降し始める。しかし、下部流出防止板40の目開きが、例えば2mmであれば、目開き2mmより大きなフロックは、下部流出防止板40により下方への沈降が妨げられ、次第に下部流出防止板40上に浮遊、堆積していく。
【0036】
下部流出防止板40上に堆積したフロック層は、ある程度の厚さに達するとフロックブランケットとなる。下部流出防止板40を通過して分離ゾーン83から新たに流入する微小なフロックは、フロックブランケットに衝突して吸合され、フロックブランケットが成長する。
この結果、微小フロックのうち接触材集積層44に達するものは非常に少なくなり、接触材集積層44での濁質捕捉容量の限界に達するまでの時間が延長されるが、このまま原水を凝集沈殿槽80に送入し続けると、フロックブランケットは、下部流出防止板40上で成長して徐々に厚みを増し、やがて接触材集積層44に到達する。
そこで、実施形態例1〜3では、上述したフロックブランケットの抜き出し手段により余分なフロックをフロックブランケットから抜き出し、フロックブランケットが接触材集積層44に到達しないようにしている。
【0037】
フロックブランケットの抜き出し手段の寸法は、原水の水質や通水速度によって異なるものの、フロック抜き出し管66、72、98の断面積は、通常、それぞれ、凝集沈殿槽65、70、80の断面積の5%程度である。また、フロック抜き出し管66、98は、下部流出防止板40上15〜50cmの範囲の位置に接続されている。ジャケット71の開口75は、越流高さが15〜50cmの範囲になるように形成され、開口75の開口面積は、凝集沈殿槽70の断面積の5%程度である。
フロック抜き出し管66、72、98の行き先は自由であって、例えば排泥管60に接続しても良い。
【0038】
フロックブランケットの抜き出し手段を有しない従来の凝集沈殿槽20では、下部流出防止板40上に堆積したフロックは、洗浄時にブロワ64より供給された空気により、接触材集積層44に堆積した濁質と共に空気攪拌され濁質濃度の低い水と混和した状態で排泥管60によって排出されるため、重力沈降濃縮に長い時間を要した。
一方、実施形態例1〜3の凝集沈殿槽では、フロックブランケットの抜き出し手段より排出されたフロックは、凝集沈殿槽の通水速度、例えば100〜1000m/日よりも大きな沈降速度を持っているため、重力沈降濃縮における濃縮性が極めて良く、汚泥処理が容易になる。
【0039】
実験例
実施形態例3の凝集沈殿装置の効果を評価するために、以下の実験を行った。先ず、凝集沈殿槽80を備えた実施形態例3の凝集沈殿装置と同じ構成で以下の寸法の実施形態例実験装置を、また、フロック抜き出し管98、界面計100、流量調節弁102を備えていないことを除いて凝集沈殿槽80と同じ構成の凝集沈殿槽を備えた従来例の凝集沈殿装置と同じ構成の従来例実験装置を、それぞれ、作製した。
Figure 0003836250
【0040】
作製した実施形態例実験装置及び従来例実験装置を使って、以下の処理条件でそれぞれ試験運転を行った。なお、本実験例は市水用の水を製造する場合の例である。
Figure 0003836250
【0041】
実施形態例実験装置による原水処理試験では、図4のグラフ(1)に示すような実験結果を得た。この実験結果では、運転時間約500分にわって、水質がSS5mg/リットル以下の処理水を得ることができた。
一方、従来例実験装置による原水処理試験では、図4のグラフ(2)に示すような実験結果を得た。この実験結果では、運転時間約150分経過後に、処理水の水質がSS5mg/リットル以上になった。
この実験結果から判る通り、本実施形態例の凝集沈殿装置は、接触材集積層の洗浄を行うことなく、従来の凝集沈殿装置に比べて遙に長い時間にわたり安定して良質の処理水を流出することができる。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、処理槽の多孔性隔板上近傍の槽内と槽外とを連通させる連通手段を備え、原水の通水時に、多孔性隔板と接触材集積層との間に形成される流水領域部に生じるフロックブランケットを連通手段を介して槽内から槽外に抜き出すようにしたことにより、接触材集積層の洗浄間隔を長くし、長時間にわたり安定して水質の高い処理水を流出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例1の凝集沈殿装置の凝集沈殿槽の構成を示す模式図である。
【図2】実施形態例2の凝集沈殿装置の凝集沈殿槽の構成を示す模式図である。
【図3】実施形態例3の凝集沈殿装置の凝集沈殿槽の構成を示す模式図である。
【図4】実験例の結果を示すグラフである。
【図5】従来の凝集沈殿装置の構成を示す模式図である。
【図6】従来の凝集沈殿装置の凝集沈殿槽の構成を示す模式図である。
【図7】接触材の一例の斜視図である。
【符号の説明】
10 従来の上昇流式凝集沈殿装置
12 原水槽
14 原水ポンプ
16 凝集剤添加装置
18 薬品混和槽
20 凝集沈殿槽
22 濁度計
24 凝集剤槽
25 流水領域部
26 原水供給管
28 凝集剤ポンプ
29 攪拌機
30 流入管
32 原水の流入ゾーン
34 接触材集積ゾーン
36 集水ゾーン
38、40 流出防止板
42 小片接触材
44 接触材集積層
45 流水領域部
46 集水部
48 集水トラフ
50 流出管
52 処理水槽
54 変流板
56 アルカリ剤注入管
58 汚泥貯留ゾーン
60 排泥管
62 空気供給管
64 空気ブロア
65 凝集沈殿槽
66 フロック抜き出し管
68 界面計
69 流量調節弁
70 凝集沈殿槽
71 ジャケット
72 フロック抜き出し管
73 界面計
74 流量調節弁
75 開口
80 改良型の凝集沈殿槽
82 前段接触材集積ゾーン
83 分離ゾーン
84 円筒部
86 逆円錐状部
88 内容器
90 前段接触材集積層
92、94 流出防止板
96 環状空間
98 フロック抜き出し管
100 界面計
102 流量調節弁

Claims (6)

  1. 原水に凝集剤を添加する添加手段と、添加手段の下流に設けられた処理槽の槽内を網目状等の多孔性隔板で上下に区画した槽上部に空隙率の大きな小片接触材を集積させてなる接触材集積層を有し、接触材集積層内を上向流で原水を流して、原水中の懸濁物を凝集、沈殿させる凝集沈殿手段とからなる凝集沈殿装置において、
    処理槽の多孔性隔板上近傍の槽内と槽外とを連通させる連通手段を備え、原水の通水時に、多孔性隔板と接触材集積層との間に形成される流水領域部に生じるフロックブランケットを連通手段を介して槽内から槽外に抜き出すようにしたことを特徴とする凝集沈殿装置。
  2. 凝集沈殿手段(以下、後段の凝集沈殿手段と言う)と添加手段との間に、前処理手段として、後段の凝集沈殿手段の接触材集積層中の空塔通水速度より高い空塔通水速度で原水を通水する接触材集積層を少なくとも一層有する前段凝集手段を備え、
    前段凝集手段の接触材集積層内で凝集させた凝集フロックと共に一次処理水を前段凝集手段から流出させ、後段の凝集沈殿手段に流入させるようにした凝集沈殿装置であって、
    連通手段が、後段の接触材集積層下の多孔性隔板上近傍の槽内と槽外とを連通させていることを特徴とする請求項1に記載の凝集沈殿装置。
  3. 多孔性隔板上に生じるフロックブランケットとその上の水との界面を検出する界面検出手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の凝集沈殿装置。
  4. フロックブランケットから連通手段を介して抜き出すフロックの流出量を界面検出手段に連動して調節する流出量調節手段を備え、界面検出手段により検出した界面位置に応じてフロックの流出量を流出量調節手段により調整し、界面を所定範囲に維持するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の凝集沈殿装置。
  5. 連通手段が、処理槽の槽壁を貫通して多孔性隔板上近傍の槽内に臨む開口を備え、他端が槽外に位置する管体であることを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の凝集沈殿装置。
  6. 連通手段が、処理槽の槽壁を貫通して多孔性隔板上近傍の槽内に臨む開口を介して槽内と連通し、かつ槽外への出口を有する槽体であることを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の凝集沈殿装置。
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