JP3836209B2 - 防汚塗料組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水中に徐々に溶出し得るセコデヒドロアビエンチン酸を含有する軟質樹脂の金属塩を塗膜形成成分として使用した塗料組成物に関するものであって、船底塗料などとして海中生物の付着を防止する防汚塗料組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
船底防汚塗料は、塗膜から海水中に防汚剤を溶出させることにより、海中生物の付着を防止する機能を持っている。防汚剤としては、かつては銅化合物が使用されていたが、近年錫化合物が非常に有効であるとされている。しかしながら錫化合物はその毒性のためにその使用が規制され、再び旧来の防汚剤である亜酸化銅など他の金属化合物が見直しがされてきている。
【0003】
近年注目されている防汚塗料組成物して、塗膜形成成分としてアクリル樹脂とロジン酸銅などの金属石鹸とを併用し、防汚剤として亜酸化銅などを用いる防汚塗料組成物がある。ロジン酸銅などの金属石鹸はそれ自身が防汚性を有しており、海水中に徐々に溶解することにより防汚効果を生じると共に、さらに亜酸化銅などの防汚剤をも溶出させて高い防汚効果を奏するのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ロジンは塗膜の可撓性が乏しくなるため、多量に配合すると塗膜が硬くなり好ましくない。ロジンに代えてナフテン酸や植物油脂肪酸を用いると可撓性は良好であるが、これらはアクリル樹脂との相溶性が悪いため、光沢のある塗膜が得られない。またこれらの成分が塗膜表面にブリードするため、塗料を塗り重ねた際に層間密着性が不良となる。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、ロジンにセコデヒドロアビエチン酸を含ませることにより、塗膜を軟質化して可撓性を向上させ、防汚性に優れ且つリコート性も良好な防汚塗料組成物を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
而して本発明の防汚塗料組成物は、塗膜形成成分として、セコデヒドロアビエチン酸を10〜30%含む軟質ロジン系樹脂と金属との塩を含有することを特徴とするものである。
【0007】
本発明において、前記金属としては、銅及び/又は亜鉛であることが好ましい。また前記軟質ロジン系樹脂は、ロジンにアルキルフェノールジスルフォイドオリゴマー及びヨウ素を添加し、加熱混合して得られた、軟化点が30〜50℃、セコデヒドロアビエチン酸含有率10〜30%、酸価が140以上のものを使用するのが好ましい。
【0008】
セコデヒドロアビエチン酸は、次の化1又は化2に示す化学構造を有する物質であって、ロジンの主成分であるアビエチン酸から脱水素し、且つ開環した構造を有するものである。このものは、アビエチン酸と同じ分子量を有しているにも拘らず、軟化点が低く且つ可撓性を有しており、このセコデヒドロアビエチン酸の含有量が高いロジンは、低軟化点で軟質の樹脂となり、通常のロジンとは異なる物理的性質を示す。
【0009】
【化1】
Figure 0003836209
【0010】
【化2】
Figure 0003836209
【0011】
本発明においては、ロジン系樹脂中のセコデヒドロアビエチン酸の含有率は、10〜30%である。10%未満ではロジン系樹脂が硬くて十分に軟質のものとならず、また30%を超えると軟化点が低くなり過ぎて常温で軟化し、塗料として塗膜の耐久性に劣ったものとなる。
【0012】
この軟質ロジン系樹脂と塩を構成する金属は特に限定されるものではないが、銅及び/又は亜鉛を使用するのが適当である。銅イオン及び亜鉛イオンはそれ自体が毒性を有しているので、ロジン塩が水中に徐々に溶出することにより、防汚性を有する。
【0013】
軟質ロジン系樹脂を形成するには、前記セコデヒドロアビエチン酸とロジンとを混合することもできるが、ロジンをアルキルフェノールジスルフィドオリゴマーとヨウ素との混合触媒で処理することにより、適度にセコデヒドロアビエチン酸を含む軟質ロジン系樹脂を得ることができる。
【0014】
前記アルキルフェノールジスルフィドオリゴマーは、次の化3に示す構造を有している。
【0015】
【化3】
Figure 0003836209
【0016】
セコデヒドロアビエチン酸を含む軟質ロジン系樹脂を得るには、ロジン100重量部に対し、アルキルフェノールジスルフィドオリゴマー及びヨウ素を合計量で0.05〜2.0重量部(好ましくは0.2〜1.0重量部)添加し、200〜280℃(好ましくは250℃前後)の温度で加熱することにより、セコデヒドロアビエチン酸含有量が10〜30%で、軟化点が30〜50℃の軟質ロジン系樹脂が得られる。
【0017】
触媒中のアルキルフェノールジスルフィドオリゴマーとヨウ素との比率は、アルキルフェノールジスルフィドオリゴマー100重量部に対し、ヨウ素5〜250重量部(好ましくは10〜70重量部)とするのが適当である。触媒はアルキルフェノールジスルフィドオリゴマー又はヨウ素を、それぞれ単独で反応しても軟質ロジン系樹脂は得られない。またナフテン酸鉄、酸化鉄等の鉄化合物を添加することにより、反応を促進することができる。
【0018】
【作用】
セコデヒドロアビエチン酸は、ロジン系樹脂の軟化点を低下させ、且つ可撓性を付与する性質を有するので、これを10〜30%含有するロジン系樹脂は、軟化点が30〜50℃と低く、また柔軟であって可撓性を有しており、この軟質ロジン系樹脂を含有する塗料は、塗膜が柔軟である。
【0019】
またセコデヒドロアビエチン酸はそれ自体ロジン系樹脂であるので、アクリル樹脂との相溶性に優れており、光沢のある塗膜が得られる。また塗料中の成分がブリードすることもなく、塗膜の耐久性に優れ、またリコートに際しても新たな塗膜との密着性に優れている。
【0020】
【発明の効果】
従って本発明によれば、塗膜が柔軟であって可撓性に優れており、塗膜に亀裂が生じたり剥離したりすることがない。またロジン系樹脂であるのでアクリル樹脂との相溶性に優れており、防汚性に優れ且つリコート性も良好な防汚塗料組成物となるのである。
【0021】
【実施例】
[セコデヒドロアビエチン酸の合成]
合成例1
トールロジン100部に対し、ノニルフェノールジスルフィドオリゴマー(イオウ含有量:10%)を0.35部、ヨウ素を0.14部及びナフテン酸鉄0.013部を添加し、250℃に昇温した後同温度で3時間保持し、軟質ロジン系樹脂Aを得た。
【0022】
合成例2
トールロジン100部に対し、ノニルフェノールジスルフィドオリゴマー(イオウ含有量:10%)を0.56部、ヨウ素を0.05部及びナフテン酸鉄0.01部を添加し、250℃に昇温した後同温度で3時間保持し、軟質ロジン系樹脂Bを得た。
【0023】
合成例3
トールロジン100部に対し、t−アミルフェノールジスルフィドオリゴマー(イオウ含有量:23%)を0.30部、ヨウ素を0.05部及びナフテン酸鉄0.01部を添加し、260℃に昇温した後同温度で3時間保持し、軟質ロジン系樹脂Cを得た。
【0024】
合成例4
トールロジン100部に対し、ヨウ素0.2部及びナフテン酸鉄0.01部を添加し、250℃に昇温した後同温度で3時間保持した。得られたロジン系樹脂Dは軟化点が高く、軟質ではなかった。
【0025】
合成例5
トールロジン100部に対し、ノニルフェノールジスルフィドオリゴマー(イオウ含有量:10%)0.5部を添加し、250℃に昇温後同温度で3時間保持した。得られたロジン系樹脂Eは軟化点が高く、軟質ではなかった。
【0026】
以上の各合成例で得られたロジン系樹脂A〜E並びに、トールロジン及びナフテン酸について、その酸価、軟化点及び、ガスクロマトグラフィーによるセコデヒドロアビエチン酸の分析結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
Figure 0003836209
【0028】
[ビヒクルの調製]
表2の各実施例及び比較例に示された樹脂と金属とから、それぞれ樹脂の金属石鹸を調製した。
【0029】
温度計、冷却管及び撹拌機を備えたフラスコに、水酸化ナトリウム11.2重量部(樹脂に対し1当量)を取り、水125重量部を加えて撹拌して溶解し、90℃にまで昇温し、ここに融解した樹脂100重量部を投入し、90〜95℃で20分間撹拌した。
【0030】
冷却後、キシレン200重量部を加え、乳化しない程度に撹拌しながら、硫酸銅5水和物36.7重量部(使用金属がZnである場合には塩化亜鉛20.0重量部、樹脂に対して1.05当量)を水125重量部に溶解した水溶液を投入し、10分間撹拌した後静置し、有機物層と水層とを分離した。有機物層を温度計、水抜き管及び撹拌機を備えたフラスコに移し、還流温度にまで昇温し、残存する水を除去した後、固形分濃度をキシレンで調整して、各樹脂の金属石鹸を調製した。
【0031】
次いで調製した各樹脂の金属石鹸40gと、アクリル樹脂(ハリマ化成株式会社製ハリアクロン510)70gとを混合して、防汚塗料用のビヒクルを調製した。
【0032】
[防汚塗料の調製]
前項により調製したビヒクル110gに、ベンガラ40g、亜酸化銅40g、タルク5g及びキシレン10gを混合し、サンドミルで均一に分散して防汚塗料を得た。
【0033】
[塗料性能試験]
1.相溶性
表2の各実施例及び比較例により調製したビヒクルを、4milのアプリケーターでガラス板に塗装し、20℃で24時間乾燥させた後、塗膜が均一かつ透明であるか否かを目視により観察して評価した。
【0034】
2.可撓性
表2の各実施例及び比較例により調製したビヒクルを、大きさ70×150×0.8mmの磨軟鋼板に塗装し、20℃で3日間乾燥させた後、その試験片を曲げ半径5mmで180°折り曲げ、塗装面の亀裂の有無を目視により観察して評価した。
【0035】
3.防汚性
大きさ100×300×2mmのサンドブラスト処理鋼板に、ジンクリッチエポキシ系ショッププライマー(乾燥膜厚15μ)及びエポキシ系防錆塗料(乾燥膜厚150μ)を予め塗装し、その被塗板に、表2の各実施例及び比較例により調製した防汚塗料を、乾燥膜厚が100μになるよう塗装し、25℃で7日間乾燥させて試験板とした。
【0036】
試験板を、兵庫県加古川市別府港に設置したテスト用の筏から海中に吊し、生物の付着面積を定期的に調査した。表示は試験板の表面積に対する生物の付着面積の百分率で表した。
【0037】
[試験結果]
試験の結果を表2に示す。
【0038】
【表2】
Figure 0003836209
【0039】
本発明の実施例は、表2の試験結果からも判るように、ビヒクル中の軟質ロジン系樹脂とアクリル樹脂との相溶性に優れており、且つ優れた可撓性を有している。そして比較例のものと同等の防汚性を有しているのであって、船底防汚塗料として極めて有用なものであることが理解できる。

Claims (3)

  1. 塗膜形成成分として、セコデヒドロアビエチン酸を10〜30%含む軟質ロジン系樹脂と金属との塩を含有することを特徴とする、防汚塗料組成物
  2. 前記金属が、銅及び/又は亜鉛であることを特徴とする、請求項1に記載の防汚塗料組成物
  3. 前記軟質ロジン系樹脂が、ロジンにアルキルフェノールジスルフォイドオリゴマー及びヨウ素を添加し、加熱混合して得られた、軟化点が30〜50℃、セコデヒドロアビエチン酸含有率10〜30%、酸価が140以上のものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の防汚塗料組成物
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