JP3835847B2 - 遊星ローラ式変速装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は太陽軸の外周とリングローラの内周との間にキャリアに軸支された遊星ローラを転接して構成される遊星ローラ式変速装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図7〜図8には、上記遊星ローラ式変速装置(以下トラクションドライブ変速機という)の従来の1例が示されている。図7は太陽軸の軸心線に沿う断面図、図8は図7のZ−Z線断面図である。
【0003】
図7〜図8において、1は太陽軸、6は外周にキャリア5が固着されたキャリア支持軸、3はリングローラであり、同太陽軸1の外周とリングローラ3の内周との間には、上記キャリア5に円周方向等間隔に固着された遊星ローラ軸4に転がり軸受10を介して支持された複数個の遊星ローラ2が転接されている。
【0004】
そして上記変速機を減速機として使用する場合には、太陽軸1を入力軸としリングローラ3を固定する。これにより、太陽軸1の回転は同太陽軸1から各遊星ローラ2に伝達され、同遊星ローラ2が太陽軸1とリングローラ3との間を自転することによって遊星ローラ軸4及びキャリア5が公転し、これによって減速された回転が出力軸であるキャリア支持軸6に伝達される。増速機として使用する場合は、キャリア支持軸6を入力軸、太陽軸1を出力軸とし、上記と逆の経路で動力(回転)を伝達せしめる。
【0005】
上記のように構成されたトラクションドライブ変速機は、ローラ間に(太陽軸1と遊星ローラ2とリングローラ3との間)に形成される油膜のせん断力により動力を伝達する機構であり、ローラ間に油膜のせん断力以上の接線力が作用する場合には、ローラ間ですべりを生じる。このようなすべりが生じると、摩耗、焼付き等によりローラが損傷し、これによって変速機が破損する。かかる破損を防止するため、通常のトラクションドライブ変速機にあっては、変速機に作用する負荷トルクをモニタし、過大負荷トルクが生じた場合には同負荷トルクが減少するようにフィードバック制御を行い、ローラ間でのすべりの発生を未然に防止し得るシステムを備えている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようなローラ間でのすべりの発生を防止するためのフィードバック制御システムを備えたトラクションドライブ変速機にあっては、過大負荷トルクを防止するために、フィードバック制御を行うと、制御の遅れにより、短時間ではあるがローラ間に過大なすべりを生じる。反面、上記制御の遅れを小さくするために、制御系の応答性を上げると、制御系の挙動が不安定となる。このため、かかるフィードバック制御システムを備えたトラクションドライブ変速機にあっては、上記フィードバック制御系を最適に設定しても、過大負荷トルクの作用によるすべりの発生を完全に防止するのは困難であり、ローラ及び軸部の焼付き、摩耗により損傷の可能性が依然として残されている。
【0007】
本発明の目的は、フィードバック制御系の応答性を低下させることなくローラ間のすべりの発生を回避してローラ及び軸部の焼付き、摩耗による破損の発生が防止された遊星ローラ式変速装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記問題点を解決するもので、その要旨とする第1の手段は、太陽軸の外周とリングローラの内周との間に、円周方向等間隔に配設された複数個の遊星ローラを、キャリア支持軸に固着されたキャリアに遊星ローラ軸を介して軸支し、上記太陽軸とキャリア支持軸との間に動力を伝達するように構成された遊星ローラ式変速装置において、上記太陽軸の外周に、外周が上記遊星ローラに転接される外輪を相対回転自在に嵌合するとともに、上記太陽軸の外周と外輪の内周のそれぞれに互いに凹部で対向する半円状の嵌合溝の対を複数組刻設して各対の組の各嵌合溝の間にC型ばねを介装し、上記外輪、遊星ローラを経て上記太陽軸と上記キャリア支持軸間で動力を伝達するように形成したことを特徴とする遊星ローラ式変速装置にある。
【0009】
また第2の手段は、上記遊星ローラ式変速装置において、遊星ローラを、遊星ローラ軸に転動自在に支承される内輪と、同内輪の外周に相対回転自在に嵌合され、外周が上記リングローラに転接される外輪とに分割し、上記内輪の外周と外輪の内周のそれぞれに互いに凹部で対向する半円状の嵌合溝の対を複数組刻設して各対の組の各嵌合溝の間にC型ばねを介装し、上記遊星ローラの外輪、内輪を経て上記太陽軸と上記キャリア支持軸間で動力を伝達するように形成したことにある。
【0010】
上記第1、第2の手段によれば、太陽軸あるいはキャリア支持軸に過大な負荷トルクが発生した際には太陽軸と遊星ローラ間あるいは遊星ローラとリングローラ間にすべりが生ずる前に、前記した外輪、遊星ローラを経て上記太陽軸と上記キャリア支持軸間で動力を伝達する系、あるいは遊星ローラの外輪、内輪を経て太陽軸とキャリア支持軸間で動力を伝達する系において、凹部で対向する対にして複数組刻設した半円状の嵌合溝で、各対の組の嵌合溝の間に介装したC型ばねが変形する。この変形動作中に制御装置によって負荷トルクを減少せしめる制御を行うことにより、上記ローラ間に過大な接線力が発生するのを阻止し、これによってローラ間のすべりの発生が回避される。また、制御系の応答性が低下することも回避できる。
【0011】
尚、上記弾性部材は、変速装置内における振動の減衰作用もなす。
【0012】
また、上記第1の手段と第2の手段とを併設することも本発明の好適な1手段である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1には本発明の実施形態に係るトラクションドライブ変速機の太陽軸の軸心線に沿う断面図、図2には図1のA−A線断面図、図3には太陽軸外周のC型ばね取付部の拡大図が夫々示されている。
【0014】
図1〜図3において、1は太陽軸、6は外周にキャリア5が固着されたキャリア支持軸、3はリングローラ、7は太陽軸の外輪(詳細は後述)であり、同太陽軸の外輪7の外周とリングローラ3の内周との間には、上記キャリア5に円周方向等間隔に固着された遊星ローラ軸4に転がり軸受10を介して支持された複数個の遊星ローラ2が転接されている。
【0015】
上記太陽軸1の外周と、同太陽軸1と相対回転自在に嵌合された外輪7の内周との間には複数個(この実施形態では4個)のC型ばね8が介装されている。即ち図3に示されるように、同C型ばね8は、上記太陽軸1の外周に刻設された半円状の嵌合溝1aと外輪7の内周に刻設された半円状の嵌合溝7aとの間に、一定の取付荷重(C型ばねの開方向の荷重)を与えられて装着されている。
【0016】
上記変速機を減速機として使用する場合には、太陽軸1を入力軸としリングローラ3を固定する。これにより、太陽軸1の回転は同太陽軸1からC型ばね8及び外輪7を経て、各遊星ローラ2に伝達され、同遊星ローラ2が太陽軸の外輪7とリングローラ3との間を自転することによって遊星ローラ軸4及びキャリア5が公転し、これによって減速された回転が出力軸であるキャリア支持軸6に伝達される。
【0017】
増速機として使用する場合にはリングローラ3を固定し、上記とは逆に、キャリア支持軸6を入力軸とし、太陽軸1を出力軸とする。キャリア支持軸6の回転は、キャリア5、遊星ローラ軸4から遊星ローラ2に伝達され、同遊星ローラ2が太陽軸の外輪7とリングローラ3との間を自転することによって増速され、外輪7からC型ばね8を経て太陽軸1に伝達される。
【0018】
上記増速運転時において、出力側の太陽軸1に過大な負荷トルクが掛かった場合には、入力側の上記キャリア支持軸6からの伝達トルクと上記負荷トルクとの差により4個のC型ばね8がほぼ同時に変形する。この変形中の時間遅れの間に太陽軸1に作用している過大な負荷トルクを、この変速機のフィードバック制御装置(図示せず)からの制御信号により減少せしめる。
【0019】
従って、太陽軸1側の負荷トルクの過大化が阻止され、外輪7と遊星ローラ2との間、あるいは遊星ローラ2とリングローラ3との間のローラ間に過大な接線力が発生するのが阻止され、これによってすべりの発生が回避される。また、フィードバック制御系は、応答性を上げても不安定化することが無くなる。
【0020】
図4〜図6には本発明の実施の第2形態に係るトラクションドライブ変速機が示されている。この実施形態においては、C型ばね8を各遊星ローラ2に組み込んでいる。即ち、図4〜図6において、遊星ローラ2は、外輪21とこの外輪21の内周に相対回転自在に嵌合された内輪22とに分割されている。
【0021】
そして、上記内輪22の外周に円周方向に等間隔に4箇所(複数個で可)刻設された半円状の嵌合溝22bとこれに対向して外輪21の内周に刻設された半円状の嵌合溝21aとの間に上記C型ばね8が一定の取付荷重で以って介装される。
【0022】
上記変速機を増速機として使用する際の運転時において、キャリア支持軸6に過大な負荷トルクが作用した場合には、同負荷トルクは遊星ローラ軸4から各C型ばね8に作用し、C型ばね8が撓むことによって、遊星ローラ2の外輪21とリングローラ3との間のすべりの発生が阻止される。
【0023】
上記2つの実施形態におけるC型ばね8は、上記のようなすべり阻止機能の他に入、出力軸の振動を減衰せしめる機能も有する。
【0025】
また、上記第1形態と第2形態とを組み合せ、C型ばね8を太陽軸1側及び遊星ローラ2側の双方に装備してもよい。
【0026】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されており、本発明によれば、入、出力軸に過大な負荷トルクが作用した際には太陽軸あるいは遊星ローラに組み込んだC型ばねの変形によりローラ間に過大な接線力が生ずるのが阻止され、同接線力によるローラ間におけるすべりの発生が回避される。これにより、従来のもののようなすべりの発生によるローラの焼付きや摩耗の発生を、フィードバック制御系の応答性を低下させることなく防止することができ、耐久性が大で、制御性能が良好な変速装置を提供することができる。
【0027】
また上記C型ばねは振動の減衰作用もなすので振動の少ない変速装置が得られるとともに、C型ばねは太陽軸あるいは遊星ローラに組み込むことができるので、小型コンパクトな構造で以って上記効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の第1形態に係る遊星ローラ式変速装置の太陽軸心線に沿う断面図。
【図2】図1のA−A矢視図。
【図3】上記第1形態における弾性部材(C型ばね)取付部の拡大図。
【図4】本発明の実施の第2形態を示す図1応当図。
【図5】図4のB−B矢視図。
【図6】上記第2形態における弾性部材(C型ばね)取付部の拡大図。
【図7】従来の遊星ローラ式変速装置を示す図1応当図。
【図8】図7のZ−Z矢視図。
【符号の説明】
1 太陽軸
2 遊星ローラ
3 リングローラ
4 遊星ローラ軸
5 キャリア
6 キャリア支持軸
7 太陽軸の外輪
8 C型ばね(弾性部材)
21 外輪(遊星ローラ)
22 内輪(遊星ローラ)
Claims (2)
- 太陽軸の外周とリングローラの内周との間に、円周方向等間隔に配設された複数個の遊星ローラを、キャリア支持軸に固着されたキャリアに遊星ローラ軸を介して軸支し、上記太陽軸とキャリア支持軸との間に動力を伝達するように構成された遊星ローラ式変速装置において、上記太陽軸の外周に、外周が上記遊星ローラに転接される外輪を相対回転自在に嵌合するとともに、上記太陽軸の外周と外輪の内周のそれぞれに互いに凹部で対向する半円状の嵌合溝の対を複数組刻設して各対の組の各嵌合溝の間にC型ばねを介装し、上記外輪、遊星ローラを経て上記太陽軸と上記キャリア支持軸間で動力を伝達するように形成したことを特徴とする遊星ローラ式変速装置。
- 太陽軸の外周とリングローラの内周との間に、円周方向等間隔に配設された複数個の遊星ローラを、キャリア支持軸に固着されたキャリアに遊星ローラ軸を介して軸支し、上記太陽軸とキャリア支持軸との間に動力を伝達するように構成された遊星ローラ式変速装置において、上記遊星ローラを、遊星ローラ軸に転動自在に支承される内輪と、同内輪の外周に相対回転自在に嵌合され、外周が上記リングローラに転接される外輪とに分割し、上記内輪の外周と外輪の内周のそれぞれに互いに凹部で対向する半円状の嵌合溝の対を複数組刻設して各対の組の各嵌合溝の間にC型ばねを介装し、上記遊星ローラの外輪、内輪を経て上記太陽軸と上記キャリア支持軸間で動力を伝達するように形成したことを特徴とする遊星ローラ式変速装置。
Priority Applications (1)
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JP01281096A JP3835847B2 (ja) | 1996-01-29 | 1996-01-29 | 遊星ローラ式変速装置 |
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JPH09203449A JPH09203449A (ja) | 1997-08-05 |
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JP01281096A Expired - Fee Related JP3835847B2 (ja) | 1996-01-29 | 1996-01-29 | 遊星ローラ式変速装置 |
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JP6398429B2 (ja) * | 2014-07-29 | 2018-10-03 | 株式会社ジェイテクト | 遊星ローラ式トラクションドライブ |
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1996
- 1996-01-29 JP JP01281096A patent/JP3835847B2/ja not_active Expired - Fee Related
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