JP3833849B2 - 複合有機碍子または複合有機碍管の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、架空送電線、配電線、変電所、鉄道線路などで用いられる、絶縁性芯体上に有機高分子材料からなる絶縁性外皮を設けた複合有機碍子または複合有機碍管およびそれらの製造方法に関する。
なお、本発明における複合有機碍子または複合有機碍管は、機械的特性に優れたガラス繊維強化プラスチックなどの絶縁性芯体と、耐候性・絶縁性に優れたエチレンプロピレンゴム、シリコーンゴムなどを組み合わせたものを指し、また、特に断らない限り、複合有機碍子と複合有機碍管とを総称して複合有機碍子または単に碍子と表現する。
【0002】
【従来の技術】
近年では、碍子として、ガラス繊維強化プラスチック等の絶縁性芯体と、この外周に有機高分子材料を用いて成形した絶縁性外被を備えた構造の複合有機碍子が活用されてきている。有機高分子材料からなる絶縁性外皮は、従来より使用されている磁器に比べて、相対的に軽量で、耐衝撃性が高く、汚損に対しても強いという点で優れている。
【0003】
絶縁性外皮は、碍子の沿面絶縁距離を延長するため笠状に形成されており、通常、複数の笠が連続して設けられた形状となっている。複数の笠状の絶縁性外皮を成形するには、金型を用い、射出成形、トランスファー成形等により一括して複数の笠を成形するのが製造効率上優れた方法であるが、金型の合わせ面から余分な成形材料が飛び出して固化してできるバリ、あるいは金型の合わせ面のズレによって生じる段差が絶縁性外皮の長手方向の一端から他端に渡ってパーティングラインを形成してしまうという問題がある。
【0004】
碍子の長手方向両端に渡って連続して形成されたパーティングラインには、微小ではあってもバリ、あるいは段差に沿って粉塵、煤煙、海塩等の汚損物質が集積しやすくなる。碍子に一直線状に集積した汚損物質に雨などがあたると水分によってそれらの汚損物質から電解質が溶け出して導電路が形成されて、放電が発生する。放電が発生すると碍子が局所的に加熱され、あるいは浸食され、その度合いがひどい場合にはトラッキング破壊に至る場合がある。また、トラッキング破壊に至らない場合でも浸食が局所的に進行して芯体が露出し腐食すると機械的強度の低下や絶縁強度低下につながるため大きな問題となっている。
【0005】
このような問題を改善するために、パーティングラインをやすりで削り取り、絶縁性外被表面をできるだけ平滑にすることが考えられるが、手作業で仕上げなければならないため生産性に劣る。
【0006】
一方、パーティングラインが笠の周方向に形成された碍子も提案されている。これはパーティングラインが碍子の長手方向一端から他端に渡って連続した状態で形成されていないため放電現象を起こすような導電路を形成することはないが、笠をひとつひとつ作製しなければならず、さらに多数の笠を水密に接続するために細心の注意が必要となり、製造効率の低下は免れない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、パーティングラインの形成による上記の問題を解決した複合有機碍子の効率的な製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明においては、絶縁性芯体と、該絶縁性芯体の外周に有機高分子材料を金型キャビティに充填して成形される絶縁性外皮を備えた複合有機碍子であって、前記絶縁性外皮は、そのパーティングラインが複合有機碍子の長手方向に沿って、不連続に形成されるように設けられている複合有機碍子が提供される。
【0009】
また、本発明においては、絶縁性芯体と、該絶縁性芯体の外周に有機高分子材料を金型キャビティに充填して成形される絶縁性外皮を備えた複合有機碍管であって、前記絶縁性外皮は、そのパーティングラインが複合有機碍管の長手方向に沿って、不連続に形成され
るように設けられている複合有機碍管が提供される。
【0010】
これら複合有機碍子または碍管は、前記絶縁性外皮を前記絶縁性芯体の長手方向に多分割して成形する工程を有し、前記成形工程においては各金型合わせ面が前記絶縁性芯体の長手方向の軸線に平行であり、かつ少なくとも1組の隣り合う成形部分の金型合わせ面が前記軸線に垂直な面内で円周方向に所定角度ずらして製造することを特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1と図2に本発明複合有機碍子の一実施形態を示す。図1は複合有機碍子の正面図、図2はその断面図である。11は棒状の絶縁性芯体であり、上記芯体11の両端には把持金具14、14が取り付けられている。芯体11の外周には複数の笠状突起を有する絶縁性外皮12が形成されている。
【0012】
図3と図4に本発明複合有機碍管の一実施形態を示す。図3は複合有機碍管の正面図、図4はその断面図である。21は筒状の絶縁性芯体であり、上記芯体21の両端にはフランジ24、24が取り付けられている。芯体21の外周には笠状の絶縁性外皮22が形成されている。
【0013】
絶縁性外皮12、22の成形は、射出成形、トランスファー成形等により有機高分子材料を金型キャビティに充填して行う。有機高分子材料としては、例えばシリコーンゴム(SR)や、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)などのポリオレフィン系樹脂等が挙げられ、これらを単独でもしくは2種以上を混合して用いることができる。
【0014】
本発明の複合有機碍子では、絶縁性外皮12、22を成形する際に形成されるパーティングライン15、25が、複合有機碍子の長手方向に沿って不連続に形成されている。したがって、パーティングライン15、25に汚損物質が集積しても長手方向両端に渡って連続した導電路が形成されることがなく、本発明の複合有機碍子は長期間にわたって優れた耐トラッキング性、機械的強度、絶縁強度を維持することができる。
【0015】
このようにパーティングラインが複合有機碍子の長手方向に沿って、不連続に形成されるように絶縁性外皮を成形する方法としては、絶縁性外皮をその長手方向に2以上の成形部分に分割して成形し、その時に隣り合う成形部分で金型の合わせ面が同一平面にならないように、即ち、金型の合わせ面が連続しないように、金型または絶縁性芯体をその長手方向の軸線を中心に回転させて成形を行う方法がある。
【0016】
図1に示す複合有機碍子を例としてその製造工程を図5乃至図6により説明する。まず図5に示す一対の金型50を絶縁性芯体11の右半分側の周囲に配置して有機高分子材料を金型50のキャビティに充填し、絶縁性外皮A部12aを成形する。次いで、絶縁性芯体11を長手方向の軸線を中心に所定角度回転させた後、図6に示すように、金型51を露出している左側半分の絶縁性芯体11の周囲に配置し、絶縁性外皮A部12aと同様に絶縁性外皮B部12bを成形する。このようにすれば特別な工程、設備を必要とせずに、絶縁性外皮A部の成形により形成されたパーティングライン15aと、絶縁性外皮B部の成形によりできるパーティングライン15bとを不連続とすることができる。
【0017】
なお、金型50で絶縁性外皮12A部を成形したのち、金型51で絶縁性外皮12B部を形成すると、両外皮12A部と12B部との合わせ目に段差が生じることがある。もしも、12A部と12B部との合わせ目に段差が生じると、この段差にも上述したように汚損物質が集積することとなり、この段差を通じてパーティングライン15aとパーティングライン15bとが上下に連続することとなって、放電が発生する危険性がでてくる。
この金型50と金型51との合わせ目に段差を生じさせないためには、図6に示すように、金型50で成形した絶縁性外皮12の左端部12cの外径と、後で成形する金型51の右端部キャビティ51cの内径とを合わせ、かつ金型51の右側キャビティ51cで絶縁性外皮12の左端部12cを覆って、キャビティ内に有機高分子材料を充填することにより、絶縁性外皮12の下部12cと金型51で成形される絶縁性外皮12bの右端部12dとは、境目が分からない程度に密着または融着し、パーティングラインが残らないように成形することができる。
【0018】
図7および図8は、複合有機碍子12あるいは複合有機碍管22の絶縁性外皮をA部、B部、C部の3つに分割して成形した例を示すもので、このように、絶縁性外皮を二分割、三分割あるいは三分割以上に分割して成形してもよいことは勿論である。複数に分割して成形する場合でも、隣り合う成形部分のうち少なくとも一組の成形部分で互いに金型の合わせ面が長手方向に垂直な面内で円周方向に所定角度ずらして金型を配置するようにする。
なお、成形部分は2回以上に分けて成形してもよいし、複数の金型を用いて複数の成形部分を同時に成形するようにしてもよい。
【0019】
本発明の複合有機碍子は、絶縁性外皮の成形時に形成されるパーティングラインが複合有機碍子の長手方向に沿って、不連続に形成されて、かつ、複数の金型で絶縁性外皮を成形しても、その合わせ目に段差が生じないので、パーティングラインに汚損物質が集積しても碍子両端に渡って導電路が形成されず、初期の耐トラッキング性、機械強度、絶縁強度を長期間にわたって維持することができる。
【0020】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、複合有機碍子または有機複合碍管は、絶縁性外皮の成形時に形成されるパーティングラインが複合有機碍子の長手方向に沿って、不連続に形成されているので、パーティングラインに汚損物質が集積しても両端に渡って導電路が形成されず、初期の耐トラッキング性、機械強度、絶縁強度を長期間にわたって維持することができる。また、本発明の製造方法によれば特別な設備、装置、工程を必要とせずに、優れた複合有機碍子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明複合有機碍子の一実施形態である正面図。
【図2】本発明複合有機碍子の一実施形態である断面図。
【図3】本発明複合有機碍管の一実施形態である正面図。
【図4】本発明複合有機碍管の一実施形態である断面図。
【図5】本発明の複合有機碍子の製造方法を説明する説明図。
【図6】本発明の複合有機碍子の製造方法を説明する説明図。
【図7】本発明複合有機碍子の他の実施形態である正面図。
【図8】本発明複合有機碍管の他の実施形態である断面図。
【符号の説明】
11 絶縁性芯体
12 絶縁性外皮
14 把持金具
15 パーティングライン
21 絶縁性芯体
22 絶縁性外皮
24 把持金具
25 パーティングライン
50 金型
51 金型
Claims (1)
- 絶縁性芯体と、該絶縁性芯体の外周に有機高分子材料を金型キャビティに充填して成形される絶縁性外皮を備えた複合有機碍子または複合有機碍管の製造方法であって、前記絶縁性外皮を前記絶縁性芯体の長手方向に多分割して成形する工程を有し、前記成形工程においては各金型合わせ面が前記絶縁性芯体の長手方向の軸線に平行であり、かつ少なくとも1組の隣り合う成形部分の金型合わせ面が前記軸線に垂直な面内で円周方向に所定角度ずらしてなることを特徴とする複合有機碍子または複合有機碍管の製造方法。
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JP13204399A JP3833849B2 (ja) | 1998-05-19 | 1999-05-12 | 複合有機碍子または複合有機碍管の製造方法 |
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JP10-136594 | 1998-05-19 | ||
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JP13204399A Expired - Lifetime JP3833849B2 (ja) | 1998-05-19 | 1999-05-12 | 複合有機碍子または複合有機碍管の製造方法 |
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Cited By (1)
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CN102522164A (zh) * | 2011-12-16 | 2012-06-27 | 湖北鑫德赛绝缘技术有限公司 | 一种金具上模压成型或注射成型有整体屏障的绝缘子 |
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-
1999
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