JP3832808B2 - 汚泥中のリン回収方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、汚泥中のリン回収方法に関し、特に、リンを含有する下水等の有機性汚水を生物学的な活性汚泥法により処理し、リンを効率的に除去し、回収するようにした汚泥中のリン回収方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、リンが含有する下水等の有機性汚水の処理方法として、活性汚泥を用いた生物学的処理方法が知られている。この生物学的処理方法は、活性汚泥微生物が汚水中の有機物やリンを含むミネラルを体内に取り込んで資化する同化作用を浄化の基本原理としている。
この過程において、活性汚泥微生物は汚水を浄化した結果、自己増殖することになるが、微生物の増加分が発生汚泥となって、水処理系の外に引抜かれて処理、処分されていた。このような生物学的なリンの除去方法では、汚泥の引抜き量により、リンの除去量が増減していた。また、近年では、発生汚泥を水処理系より引抜かず、活性汚泥微生物の細胞壁を破壊したり、消滅させて、その内容物を可溶化し、生物反応槽へ返送して処理する方法が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来のリンの除去方法では、リンの除去量を増やすために、汚泥の引抜き量を多くする必要があり、引抜いた汚泥の処理処分費が増大したり、最終処分地が不足するなど社会的問題になっていた。
そこで、効率良くリンを除去するために、活性汚泥を嫌気雰囲気に続いて好気雰囲気にして、リンを汚泥中へ過剰に取り込む、いわゆる生物脱リンと呼ばれる手法により、リン含有量の高い汚泥を作って水処理系から引抜き、濃縮、脱水、焼却、埋立て等の処分をしていた。
【0004】
この生物脱リンの方法においては、汚泥を濃縮、脱水する過程で、嫌気化するため、汚泥中に取り込んだリンが再放出され、リンの除去効率が低下するという問題があった。
【0005】
また、運転管理等の手法により、リンの再溶出量を極力少なくし、高濃度のリン含有汚泥を作り、場外に排出できたとしても、焼却の際に、リンが焼却炉の壁に付着したりして、炉を痛める等の問題を引き起こしていた。
また、別な方法として、発生汚泥を可溶化処理する場合には、リンを含有する汚泥が水処理系内で処理されるため、一切、リンが除去できないという問題があった。
【0006】
これらの問題を解決するために、発生汚泥中からリンを効率良く分離、除去せしめると共に、回収を行い、リンを肥料等に有効に利用するシステムの開発が望まれており、リンを有効利用するためには、肥料の利用に限らず、生物脱リンで得た汚泥に比して、高濃度にリンを含有する汚泥を作ることが重要である。
そこで、近年になって、汚泥中に取り込まれたリンを一旦放出させた後に、なるべくリンだけを回収する方法の開発が進められている。このような開発の中では、リン含有率の高い汚泥を作るために、発生汚泥から放出させるリンの量を多くすること、及びリン放出液から効率良く回収することが主眼に研究されている。
【0007】
しかし、図2(数値は仮想)に示すように、仮に、リンの放出率が100%であり、かつ放出後の溶液から100%のリンが回収できたとしても、固液分離が不十分でリン放出汚泥と水とが等分量(汚泥の濃縮倍率が2倍)にしか分離されなければ、リンは全体の50%しか回収できないことになる。
したがって、この種の研究では、リン溶解液をいかに多く集めるかが重要なポイントになる。しかし、従来の重力分離や機械分離では、投入汚泥の濃度が高く、効率的な分離が行えないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記従来の汚泥中のリン回収方法の有する問題点に鑑み、多くのリンを汚泥から分離して、飛躍的にリンの回収率を向上することができる汚泥中のリン回収方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の汚泥中のリン回収方法は、リンを含有する生活排水等の有機性汚水を活性汚泥で処理し、発生した汚泥を水処理系から除去して、汚水と汚泥を処理する汚泥中のリン回収方法において、前記水処理系から除去した汚泥を濃縮し、次に該汚泥からリンを放出させた後、該汚泥に水を加えることにより、汚泥と分離水との容積比が1:2乃至1:9になるようにして濃縮し、これにより生じた分離水からリンを主体とする汚泥を沈殿分離するようにしたことを特徴とする。
【0010】
この汚泥中のリン回収方法は、水処理系から除去した汚泥を濃縮し、次に該汚泥からリンを放出させた後、該汚泥に水を加えることにより、汚泥と分離水との容積比が1:2乃至1:9になるようにして濃縮し、これにより生じた分離水からリンを主体とする汚泥を沈殿分離するようにしているので、分離水量が増し、これにより、多くのリンを汚泥から分離してリンの回収率を向上することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の汚泥中のリン回収方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は、本発明の汚泥中からリンを回収する方法のフローを示す。
この実施例により、水処理系で発生した通常の汚泥や生物脱リン法により、リンを過剰に摂取した汚泥に対して、リンを放出、回収することができる。
【0013】
まず、最初に、最終沈殿池などより発生した汚泥を濃縮機1に投入する。
この濃縮機1としては、重力沈殿方式や機械濃縮方式を用いることができる。この第1段の濃縮工程での濃縮は、後段で添加する薬品の量を少なくしたり、加熱量を少なくするための前処理にあたる。
【0014】
この濃縮機1により分離された水は、リンの含有量が少ないため、生物反応槽(図示省略)へ返送して、汚水とともに処理を行うことができる。一方、濃縮機1により分離された汚泥を、次のリン放出槽2に供給する。
このリン放出槽2では、前述の濃縮汚泥に対して、酸を添加し、かつ加熱する、例えば80℃に加熱して濃縮汚泥よりリンを放出、溶解させる。このリンの放出は、酸あるいは加熱の単独処理においても可能であるが、上記の80℃程度の温度範囲であれば、温度より、酸による依存性が高くなる。しかし、本発明のように酸の添加と加熱との併用処理により、リンの放出に相乗的効果が期待されると共に、濃縮、分離しやすくなるという副次的効果が得られる。
【0015】
次に、リン放出槽2でリンを放出した汚泥を、第2段濃縮工程の濃縮機3に供給する。この第2段の濃縮機3において、リン放出汚泥をさらに濃縮し、水と分離するが、その直前に、当該汚泥に対して水を加えるようにする。
通常、汚泥を濃縮分離する過程では、前処理工程で汚泥を希釈することは、処理の目的から相反することであるが、リン放出汚泥量に比して、分離水量を多くすれば、リン放出汚泥とともに生物反応槽等に返流される水中のリンの量が少なくなり、汚泥からより多くのリンを分離することができる。
【0016】
この場合において、給水量を調整し、濃縮機3の処理で汚泥と水の分離容積比が、1:2乃至1:9程度となるようにすれば、最終的なリンの回収比率は、後に述べるアルカリ添加法の場合で、50%乃至70%が期待される。
【0017】
なお、濃縮機3にてさらに濃縮された濃縮汚泥は、リンが放出されているとともに、酸の添加及び加熱により、可溶化処理がなされているため、生物反応槽(生物処理槽)で処理することができる。
さらに、この濃縮汚泥は、生物反応槽で処理する以外に、脱水や焼却を行ったり、場外に排出して埋立てする等、別な方法で処分することができる。
なお、第1段の濃縮機1と第2段の濃縮機3とは、同一の濃縮機を使うことができる。
【0018】
次に、濃縮機3から排出された分離水からリンを回収する方法について説明する。リンが溶解した分離水に対して、アルカリを添加し、pHを中性域に戻すと、リンを主体とした汚泥を析出させることができる。
また、アルカリの代わりに鉄、アルミニウム、カルシウムなどの金属塩を添加する方法でも、リンを主体とした汚泥を析出させることができる。
このように、アルカリや金属塩を用いたリンの回収方法は、いずれの場合においても、給水による希釈率に関係なく、薬剤を添加することができるので、薬剤量が多くなることがない。
【0019】
濃縮機3から排出された分離水は沈殿槽4に供給される。この最後の沈殿槽4では、リンを主体とした汚泥を沈殿させる。ここで析出する汚泥は、元の発生汚泥量と比べ、1/10程度に減少しており、かつ、無機物が主体であるため、非常によく沈殿分離し、重力沈殿で十分な分離効果が得られる。
【0020】
本工程で得られた分離水は、水処理系へ返送して生物処理がなされると共に、分離汚泥は、系外に排出して、肥料等として有効に利用する。
【0021】
このように、汚泥から効率良くリンが回収できるので、汚泥処理工程でのリンの再放出を防止でき、また、汚泥はリンを放出しているため、生物反応槽や焼却設備に投入しても、何ら問題なく処理することができる。
さらに、回収したリン主体の汚泥は、リン鉱石と同等のリンを含有するため、肥料等として有効に利用することができる。
【0022】
【発明の効果】
本発明の汚泥中のリン回収方法によれば、水処理系から除去した汚泥を濃縮し、次に該汚泥からリンを放出させた後、該汚泥に水を加えることにより、汚泥と分離水との容積比が1:2乃至1:9になるようにして濃縮し、これにより生じた分離水からリンを主体とする汚泥を沈殿分離するようにしているので、分離水量が増し、これにより、多くのリンを汚泥から分離してリンの回収率を向上することができ、汚泥処理工程でのリンの再放出を防止できる。そして、このようにして回収したリンは、肥料等に有効に利用することができ、また、汚泥はリンを放出しているため、生物反応槽や焼却設備に投入しても、何ら問題なく処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の汚泥中のリン回収方法を実施するための処理フロー図である。
【図2】 従来の処理フロー図である。
【符号の説明】
1 第1段の濃縮機
2 リン放出槽
3 第2段の濃縮機
4 沈殿槽
Claims (1)
- リンを含有する生活排水等の有機性汚水を活性汚泥で処理し、発生した汚泥を水処理系から除去して、汚水と汚泥を処理する汚泥中のリン回収方法において、前記水処理系から除去した汚泥を濃縮し、次に該汚泥からリンを放出させた後、該汚泥に水を加えることにより、汚泥と分離水との容積比が1:2乃至1:9になるようにして濃縮し、これにより生じた分離水からリンを主体とする汚泥を沈殿分離するようにしたことを特徴とする汚泥中のリン回収方法。
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