JP3832428B2 - 土壌、または、地下水処理方法 - Google Patents

土壌、または、地下水処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主にトリクロロエチレン等の有機塩素化合物を原位置で浄化する土壌、地下水処理方法に関し、より詳しくは原位置に生息する微生物に炭素源を添加する微生物処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の原位置微生物を用いた土壌、地下水処理方法は、微生物の炭素源(炭素源、電子供与体とも言われる)を液体で土壌、地下水中に添加するものであった。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−276894号公報
【特許文献2】
特開平11−90484号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これら従来の技術では、液体炭素が地下水の流れで移動し、目的とする汚染源から逸脱し、本来の目的を達成しないばかりか、添加した炭素源による二次汚染の課題があった。
【0005】
本発明はこれら従来の課題を効果的に解決するものであり、浄化目的の土壌、地下水位置に炭素源を固体として止め、長期間炭素を供給することにより、二次汚染を効果的に回避する土壌、地下水処理方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
これら従来の課題を解決するために本発明者らは鋭意研究の結果、以下の手段を用いることが本発明の課題を効果的に解決し得ることを見出し、本発明を完結するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の土壌、地下水処理方法は以下の主要な要件を具備するものである。
1.地上で固体かつ水に不溶な炭素源を液体に分散させた組成物を、土壌に設けた穴、または、溝を通じて土壌に添加する。
2.地上で固体かつ水に不溶な炭素源を液体に分散させた組成物を、地上に設けた、若しくは、予め設けられた穴、または、土壌に設けた溝を通じて地下水中に添加する地下水の処理方法。
3.地上に設けた穴、または、溝を通じて添加された地上で固体かつ水に不溶な炭素源を液体に分散させた組成物を地下水中または土壌中または土壌、地下水中両方で機械的に撹拌する。
4.土壌に設けた穴、若しくは、予め儲けられた穴、または、溝を通じて添加された地上で固体かつ水に不溶な炭素源を液体に分散させた組成物を地下中、または、土壌若しくは地下水中で機械的に撹拌する。
5.地上で固体かつ水に不溶な炭素源を液体に分散させた組成物を添加しながら土壌を掘進する。
6.地上で固体かつ水に不溶な炭素源を液体に分散させた組成物を添加しながら土壌を掘進し、該添加された炭素源を撹拌する。
7.地上で固体かつ水に不溶な炭素源を液体に分散させた組成物を、少なくとも2ヶ所以上の地点から土壌または地下水または土壌、地下水の両方へ添加する動作と、該添加した地点の土壌または地下水を撹拌する動作を具備する。
【0008】
さらに、液体として水を選択し、分散させる手段として乳化剤または増粘剤の使用または炭素現自身の比重を水の比重近傍に調整するこを選択し、炭素源として炭素数12以上のアルコールを選択するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる炭素源は、地上で固体かつ水に不溶であることが必須である。(以下単に炭素源と表現する。)
目的とする浄化位置で固体として存在する炭素源は、地下水の流れなどで容易に動くことはなく、浄化位置に生息する微生物により生分解反応を受け、長期間炭素を放出することになる。
【0010】
本発明に用いる炭素源の融点は一般に物質に固有の値であるが、複数の異なる融点の炭素源を混合することにより、任意の融点をもつ炭素源を作ることができる。
【0011】
地上から穴または溝を設け、本発明の炭素源を土壌、地下水中へ添加する手段としては土木工事に広く用いられる公知な手段を用いて容易になし得る。
【0012】
例示される該公知な手段としては、穴の場合はボーリングマシンを用いたボーリング手段、溝の場合はソイルセメント工法(特許第1954875号など)や地中鉛直遮水壁工法(特許第1575294号、第2698768号など)などが挙げられる。
【0013】
また流動性物質を土壌、地下水中へ添加する一般的なグラウト注入工法が容易に利用できる。
【0014】
例示される該公知な手段としては、二重管複合注入工法、二重管ダブルパッカ工法、エキスパッカ工法、スリーP工法、単管工法、三重管工法などが挙げられる。
【0015】
本発明に用いる炭素源は、目的とする浄化位置に達した後、できるだけ浄化位置で均一に分散させるため、地下水中または土壌中で機械的に撹拌することが好ましい。
【0016】
地下水中または土壌中で機械的に撹拌する方法としては特に限定するものではなく、添加された本発明の炭素源を機械的に分散しうる手段全てを指し、たとえば羽、スクリュー、リーマ形状などの回転工具を設けた撹拌軸を持つ掘削機などが挙げられる。
【0017】
本発明に用いる炭素源は、前記地上に設けた穴または溝から添加する方法以外に、掘進しながら同時に土壌中で添加することも可能であり、たとえば掘削軸の先端の掘削用のビット部などの近傍に炭素源添加用の穴または溝を設け、地上から炭素源をポンプなどを用いて供給し、該ビット部などの近傍に設けた穴または溝から土壌中へ添加する方法などが挙げられる。
【0018】
この方法を用いることで、炭素源添加用の穴または溝を掘る動作と炭素源を土壌中へ添加する動作が同時に達成可能となる。
【0019】
また本発明に用いる炭素源は、前記地上に設けた穴または溝から添加する方法以外に、掘進しながら同時に土壌中で添加し、同時に機械的に撹拌することも可能であり、たとえば掘削軸の先端に設けた掘削用のビット部と撹拌用の羽の近傍に炭素源添加用の穴または溝を設け、地上から炭素源をポンプなどを用いて供給し、該ビット部と羽の近傍に設けた穴または溝から土壌中へ添加し、同時に近傍に設けた撹拌羽などの撹拌手段により同時に土壌、地下水中で撹拌する方法などが挙げられる。
【0020】
この方法を用いることで、炭素源添加用の穴または溝を掘る動作と炭素源を土壌中へ添加する動作と添加後の炭素源を機械的に撹拌する動作が同時に達成可能となる。
【0021】
ここで掘進とは、何らかの機械的な力で土壌を掘削し、同時に土壌中を進むことの全ての概念を意味し、進む方向は垂直、水平、斜め方向が任意に選択可能であり、掘削する手段としては前記ビットなどが一般的であるがこれに限定するものではない。
【0022】
また、掘削動作としては掘削軸の回転が一般的ではあるがこれに限定するのもではなく、たとえば上限方向の動作や回転と上下方向の動作の複合動作なども含まれる。
【0023】
また、掘削用の羽とは、掘削動作が可能な全ての形状のものを指し、地上で予め固定された固定羽や地上および推進中は閉じており掘削を要する地点で任意に開閉が可能な開閉羽などが選択できる。
【0024】
本発明で形成する穴または溝の深さまたは掘進する深さは、汚染の分布や土質の状況に応じて任意に選択可能であり、選択可能な深さとは不飽和水層で止めるもの、不飽和水層を貫通し飽和水層へ達するもの、さらには該飽和水層をも貫通するものなどが例示され、特にボーリングによる穴の場合は、特定の層内を水平に掘進するもの、複数の層を斜めに貫通するものなどが例示できる。
【0025】
本発明に用いる炭素源は、生分解性を有し特定の値の炭素数と分子構造を有する特定の炭素源を選択して用い、さらには該炭素源を液体に分散させた状態で用いることが本発明最大の特長である。
【0026】
参考例として第一の炭素源は脂肪酸であり、炭素数が10以上であることが必須であり、より好ましくはアルキル基が直鎖状で一重結合のみから成る脂肪酸である。
【0027】
これらの脂肪酸は本質的に水に不溶であるが、炭素数が10未満では融点が低く地上(常温)で液体状態となり、土壌や地下水中へ容易に拡散し有機物の2次汚染の恐れが高いため好ましくなく、二重結合の存在はたとえ炭素数が10以上であっても融点の低下を一般的に招くため好ましくない。さらに、側鎖やベンゼン環などの存在は生分解性そのものを低下させるため、本発明の様な微生物を使った処理方法には好ましくない。
【0028】
以上の要件を満たす脂肪酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、リグノセリン酸、ベヘニン酸、およびこれら脂肪酸の混合物、塩、水素添加品などが例示される。
【0029】
混合物としては、単体脂肪酸を人為的に混合してもよく、また牛脂脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、なたね油脂肪酸などの天然混合物でもよい。
【0030】
さらには該脂肪酸を含有する牛脂、豚脂、カカオ脂、ヤシ油、パーム油、パーム核油、なたね由なども含まれる。
【0031】
選択される第二の炭素源は炭素数が12以上であることが必須であるアルコールであり、より好ましくはアルキル基が直鎖状で飽和型のアルコールである。
【0032】
これらのアルコールは本質的に水に不溶であるが、炭素数が12未満では融点が低く、常温で液体状態となり、土壌や地下水中へ容易に拡散し有機物の2次汚染の恐れが高いため好ましくなく、二重結合の存在はたとえ炭素数が12以上であっても融点の低下を一般的に招くため好ましくない。
【0033】
以上の要件を満たすアルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ベヘニルアルコール、およびこれらアルコールの混合物、塩などが例示される。
【0034】
混合物としては、単体アルコールを人為的に混合してもよく、また天然混合物でもよい。
【0035】
参考例として第三の炭素源は脂肪酸と1価アルコールのエステルであり、脂肪酸の炭素数が14以上かつ直鎖状で飽和型であることが必須であるが、アルコールについては特に炭素数の限定はない。
【0036】
脂肪酸の炭素数が14未満では融点が低く、常温で液体状態となり、土壌や地下水中へ容易に拡散し有機物の2次汚染の恐れが高いため好ましくなく、二重結合の存在はたとえ脂肪酸の炭素数が14以上であっても融点の低下を一般的に招くため好ましくない。さらに、側鎖やベンゼン環などの存在は生分解性そのものを低下させるため、本発明の様な微生物を使った処理方法には好ましくない。
【0037】
以上の要件を満たす脂肪酸としては、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸コレステリル、ステアリン酸バチル、ベヘニン酸オクチルドデシル、ベヘニン酸ベヘニル、およびこれらエステルの混合物や脂肪酸が2塩基酸であるフタル酸ジステアリルなどが例示される。
【0038】
参考例として第四の炭素源は脂肪酸と多価アルコールのエステルまたはその誘導体であり、脂肪酸の炭素数が14以上かつ直鎖状で飽和型であることが必須であるが多価アルコールの炭素数に特に限定はない。
【0039】
脂肪酸の炭素数が14未満では融点が低く、常温で液体状態となり、土壌や地下水中へ容易に拡散し有機物の2次汚染の恐れが高いため好ましくなく、二重結合の存在はたとえ脂肪酸の炭素数が14以上であっても融点の低下を一般的に招くため通常は好ましくない。さらに、側鎖やベンゼン環などの存在は生分解性そのものを低下させるため、本発明の様な微生物を使った処理方法には好ましくない。
【0040】
以上の要件を満たす脂肪酸としては、ソルビタンモノミリスチレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソリビタンモノベヘネート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、セスキステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、ヘキサステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット、およびこれらエステルの混合物や、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、グリセリンセチルエーテル、グリセリンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどのエーテル類が例示される。
【0041】
参考例として第五の炭素源は脂肪酸とグリセリンのエステルであり、脂肪酸の炭素数が16以上であることが必須であるがグリセリンの炭素数に特に限定はない。
【0042】
脂肪酸の炭素数が16未満では融点が低く、常温で液体状態となり、土壌や地下水中へ容易に拡散し有機物の2次汚染の恐れが高いため好ましくない。
【0043】
以上の要件を満たす脂肪酸としてはステアリン酸モノグリセライド、パルミチン酸ステアリン酸モノグリセライド、オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノジグリセライド、オレイン酸ステアリン酸モノジグリセライド、オレイン酸ステアリン酸モノグリセライド、ベヘニン酸モノグリセライド、モノステアリン酸テトラグリセル、トリステアリン酸テトラグリセル、ペンタステアリン酸テトラグリセル、モノステアリン酸ヘキサグリセル、ペンタステアリン酸ヘキサグリセル、モノステアリン酸デカグリセル、ジステアリン酸デカグリセル、トリステアリン酸デカグリセル、ペンタステアリン酸デカグリセル、ヘプタステアリン酸デカグリセル、デカステアリン酸デカグリセル、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン、モノステアリン酸ポロピレングリコール、およびこれらエステルの混合物などが例示される。
【0044】
参考例として第六の炭素源は脂肪アミンであり、アルキル基と1級アミン、2級アミン、3級アミン、ジアミン、アルキルアミン酢酸塩などからなる物質の総称であり、アルキル基の炭素数が12以上であることが必須である。
【0045】
より好ましくはアルキル基が直鎖状で飽和型である脂肪アミンであり、さらにより好ましくは2級アミンの場合は炭素数が16以上、3級アミンの場合は炭素数が22以上、ジアミンの場合は炭素数が16以上、アルキルアミン酢酸塩の場合は炭素数が14以上である脂肪アミンである。
【0046】
これら限定した炭素数未満では融点が低く、常温で液体状態となり、土壌や地下水中へ容易に拡散し有機物の2次汚染の恐れが高いため好ましくなく、二重結合の存在はたとえ炭素数が前記限定以上であっても融点の低下を一般的に招くため通常好ましくない。さらに、側鎖やベンゼン環などの存在は生分解そのものを低下させるため、本発明の様な微生物を使った処理方法には好ましくない。
【0047】
以上の要件を満たす脂肪アミンとしては、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、ステアリルアミン、ジパルミチルアミン、ジステアリルアミン、ジメチルベヘニルアミン、パルミチルプロピレンジアミン、ステアリルプロピレンジアミン、ミリスチルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノプロピルアミドおよびこれら脂肪アミンの混合物、塩などが例示される。
【0048】
参考例として第七の炭素源は脂肪酸アマイドであり、炭素数が12以上であることが必須である。
【0049】
炭素数が12未満では融点が低く、常温で液体状態となり、土壌や地下水中へ容易に拡散し有機物の2次汚染の恐れが高いため好ましくない。
【0050】
以上の要件を満たす脂肪酸アマイドとしては、ラウリン酸アマイド、ミリスチン酸アマイド、パルミチン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、ジパルミチルケトン、ジステアリルケトン、およびこれら脂肪酸アマイドの混合物などが例示される。
【0051】
参考例として第八の炭素源は生分解性樹脂であり、より好ましくは生分解性の優れたエステル結合を有する生分解性樹脂である。
【0052】
具体的な例としては、乳酸重合体、ヒドロキシ酪酸とヒドロキシ吉草酸の共重合体、ポリオール類と脂肪族ジカルボン酸との縮合重合物、ポリ(ε−カプロラクトン)などが例示される。
【0053】
該生分解樹脂は土壌、地下水中に存在する水分の存在下において、加水分解反応によりカルボン酸やアルコールを生成するが、これらカルボン酸やアルコールは何れも本発明の微生物反応に利用され得る炭素源となるものである。
【0054】
炭素以外の微生物の栄養塩(窒素、リンなど)は、本発明に用いる炭素源と別に添加、注入してもよいが、予め本発明の炭素源に混合して添加、注入することで、たとえ栄養塩が水溶性であっても、炭素源と同じ位置で固体状の炭素源によって固定化され、溶出を制御することができるため好ましい。
【0055】
これらの構成を実現するためには、例えば硫酸アンモニウム、リン酸ニ水素カリウムなどの窒素、リン源を所定量本発明で用いる炭素源と混合し、炭素源の融点近傍まで昇温した状態で押し出し造粒機などの通常の造粒手段により炭素源の中に窒素、リン源が分散した組成物を得ることができる。
【0056】
該組成物は、炭素源が少しずつ生分解されるにつれて、内部に存在する窒素、リン源が少しずつ表面に露出し、結果として炭素、窒素、リンの徐放体を形成することとなる。
【0057】
本発明で用いる特定の炭素数と構造を有する炭素源は、それ自身は水に不溶であるが生分解性が高く、生分解を受ける際に生成する生分解生成物を微量ずつ土壌。地下水環境へ放出する。
【0058】
これらの生分解生成物は通常元の炭素源より炭素数が少なく、水に易溶であるために浄化に寄与する微生物はこれら生分解生成物を容易に利用し、主に共代謝反応によりトリクロロエチレン等の汚染物質を脱塩素反応により無害化するものである。
【0059】
すなわち、本発明の土壌、地下水処理方法では、微生物反応の炭素源として特定の炭素数を有する特定構造の炭素源を選択的に用いることで、原位置の土着微生物の生分解反応を利用した極めて微量ずつ溶出する炭素源の徐放体として性質を利用したものであり、一度の添加で長期間炭素を微量ずつ放出するために、有機物による二次汚染の可能性が低く、従来技術で用いられていた液体状炭素源を定量添加し続ける必要がない。
【0060】
本発明の炭素源を液体に分散させることは、地上で固体である本発明の炭素源の流動性を高め、ポンプなどの公知な手段を用いての移動や土壌、地下水中への添加を容易にするために好ましい構成であり、その手段は本趣旨の基本要件を満たす限りにおいて任意である。
【0061】
用いる液体としては流動性を有するものであれば種類は問わないが、地下へ添加することの環境影響を鑑み溶剤系や有害物質、または微生物反応を阻害する可能性のある物質は好ましくなく、この観点から最も好ましい液体は水である。
【0062】
本発明の炭素源を液体に分散させる手段としては、炭素源の表面電荷を利用した電気的反発により液体中に均一に分散、保持させる手法、液体の粘性を上昇させ液体中に均一に分散、保持させる手法、または予め本発明で用いる炭素源に比重調整剤を添加することでその比重を分散させる液体の比重近傍に設定する手法が好ましい。
【0063】
これら三つの手法を液体として水を選択した場合に実現する手段としては、食品や化粧品の製造に広く用いられる乳化、分散、溶媒の造粘手段を用いることが好ましく、具体的には水に所定量の乳化剤、分散剤、界面活性剤、造粘剤などを添加した液体に本発明で用いる脂肪酸を添加、撹拌することで容易になしうるものである。
【0064】
該乳化剤、分散剤、界面活性剤、造粘剤としてはアラビアガム、アルギン酸およびそのエステル類、アルギン酸塩、エレミ樹脂、ガティガム、カラギナン、カラヤガム、カロブビーンガム、キサンタンガム、グァーガム、カルボキシメチルセルロース塩、セルロース、造粘多糖類、タマリンドガム、トラガントガム、デンプングリコール酸塩、デンプン酸塩、ファーセレラン、ブドウ糖、ブドウ糖多糖類、ポリビニルアルコール、プルラン、ペクチン、ポリアクリル酸塩、グルコース、スクロース、メチルセルロース、グリセリンエステル、サポニン、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンデシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、カプリン酸エチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、オクタン酸セチル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、イソノナン酸オクチル、イソノナン酸ドデシル、ステアリン酸グリセリン、パルミチン酸グリセリン、トリ(カプリル酸カプリン酸)グリセリン、モノステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、ステアリン酸プロピレングリコール、オレイン酸プロピレングリコール、ラウリン酸プロピレングリコール、ステアリン酸グリコール、ジオレイン酸グリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリコール、ラウリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ジメチルコンコポリオール、高吸水性ポリマー、炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム、アエロジル、炭酸マグネシウム、ドロマイト、ベントナイト、パーライト、バーキュライト、ロックウール、シリカゲル、シリカゾル、活性炭などが例示でき、これら例示される乳化剤、分散剤、界面活性剤、造粘剤を一種または複数種を混合して用いられる。
【0065】
これら乳化剤、分散剤、界面活性剤、造粘剤は水に対し0.2重量%から95重量%の割合で添加することで所定の効果を示すものであり、より好ましくは1重量%から60重量%の範囲で選択することが好ましい。この範囲以下の添加量では各添加剤の所定の効果は発現しないため好ましくなく、この範囲以上では添加、混合に特殊な混合方法を用いることが必要で、製造が著しく困難になるため好ましくない。
【0066】
また、該乳化剤、分散剤、界面活性剤、造粘剤を添加した液体に対する本発明で用いる炭素源の添加割合は1重量%から80重量%の範囲が好ましく、より好ましくは5重量%から55重量%の範囲である。この範囲以下の添加量では炭素源を添加する効果(水素供与体としての効果)が発現しないため好ましくなく、この範囲以上では添加、混合に特殊な混合方法を用いることが必要で、製造が著しく困難になるため好ましくない。
【0067】
また、該乳化剤、分散剤、界面活性剤、造粘剤を添加した液体が水溶液の場合、地上に設置した製氷機などで冷却することで粘性を水以上に有するスラリー状の氷水を容易に形成しうる。
【0068】
該氷水を土壌地下水中に添加することにより、添加後の時間経過とともに氷は徐々に溶解し、本発明で用いる炭素原のみが土壌、地下水中に残ることとなりより好ましい添加方法である。
【0069】
また予め本発明で用いる炭素源に比重調整剤を添加することでその比重を水の比重近傍に設定する場合、比重を上昇させる場合には炭酸カルシウム、タルク、マイカ、硫酸バリウム、酸化亜鉛などの無機材料が好適であり、比重を低下させる場合にはガラスバルーン、シリカバルーンなどの中空材料が好適である。
【0070】
比重調整剤の添加量は、比重調整剤自身の真比重から容易に計算で求める事ができるが、概ね本発明で用いる炭素源に対して10重量%から35重量%程度である。
【0071】
比重を水の比重近傍に調整することにより、厳密な比重の差から沈降や浮上現象が見られたとしても、簡単な撹拌手段などで容易に再分散が可能である。
【0072】
この手段を用いてより高い分散性を求める場合には、比重調整された本発明で用いる炭素源の粒径をできるだけ小さくすることにより、ストークスの法則が教える通り水中での沈降、浮上速度が小さくなり好適である。
【0073】
本発明の実施に寄与する微生物反応は酸素濃度が制限された状態での嫌気反応であり、化学的還元反応を利用した嫌気状態を向上させる別の手段を併用することは好ましい手段である。
【0074】
本発明は嫌気反応条件下で脱塩素反応(塩素、水素置換反応)が生物学的に起こる有機塩素化合物全てに適用可能であり、これら有機塩素化合物としてはジクロロメタン、コロロホルム、四塩化炭素、1、1−ジクロロエタン、1、2−ジクロロメタン、1、1、1−トリクロロエタン、1、1、1、2−テトラクロロエタン、1、1、2、2、−テトラクロロエタン、1、1−ジクロロエチレン、シスー1、2−ジクロロエチレン、トランスー1、2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1、3−ジクロロプロペン、1、3−ジクロロプロパン、PCB類、ダイオキシン類などが例示される。
【0075】
次に実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
地上から炭素源としてラウリン酸65重量%、ミリスチン酸35重量%混合物を85℃の条件で溶融、混合せしめ、直径1.5mmの噴出しノズルからスプレードライ工法により平均粒径1mmの均一混合物を得た。
【0076】
この混合物100重量部に対し、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩を25重量%添加した水155重量部を加え、ミキサー(回転数60rpm)で撹拌することでの本発明で用いる炭素源とカルボキシメチルセルロースナトリウム塩と水との混合液を得た。
【0077】
本混合液は該炭素源が均一に分散したゾル状態を示し、該炭素源の沈降、分離現象はみられず、また流動性は良好であった。
【0078】
該混合液45kgを予め掘られた井戸(直径20cm)に挿入された直径16cmのエンビ製パイプを通じて地下22mの帯水層(飽和水層)へポンプを用いて直接添加したが、連続添加は非常に容易であった。
【0079】
また該炭素源の消費量を調べる目的で、目開き0.5mmのメッシュ製円筒容器(直径5cm、長さ15cm)に該炭素源の混合物25gを入れ、地上から紐で吊り下げた状態で帯水層内へ添加した。(以下モニター用炭素源とする。)
次に、井戸の地上開口部に蓋を設けた状態で自然放置し、210日後に該混合液を添加した地点の帯水層の水質を分析した結果、初期に14.5mg/L存在していたトリクロロエチレンが0.4mg/Lに低下していた。
【0080】
これは、添加した混合液中の炭素源が生分解し、溶出した微量の有機物を炭素源として微生物がトリクロロエチレンを分解したものである。
【0081】
また、添加した地点から1.5mの地下水の流れに対して川下側に設けた観測用の井戸からは有機物(TOCで測定)の増加は認められず、本実施例の炭素源を添加したことによる有機物の2次汚染は認められなかった。
【0082】
一方、モニター用炭素源は約36%の減量を示し、この値から推定される該炭素源の寿命(炭素源が残存し浄化効果を発揮すると考えられる寿命)は約583日と計算され、地下水の流れで流出することなく、固体として原位置に止まりながら、極めて長期間に渡り浄化反応に寄与する(炭素を微量ずつ放出し続ける)土壌、地下水処理方法を提供することができた。
(実施例2)
地上から炭素源として牛脂脂肪酸60重量%、ステアリルアルコール15重量%、乳酸重合体ポリマー25重量%の混合物(平均粒径5mm)100重量部に対し、アラビアガム10重量%、アルギン酸ナトリウム15重量%、沈降性炭酸カルシウム5重量%を添加した水145重量部からなる混合液を得た。
【0083】
本混合液は該炭素源が均一に分散したゾル状態を示し、該炭素源の沈降、分離現象はみられず、流動性は良好であった。
【0084】
該混合液30Kgを予め掘られた井戸に挿入された直径15cmのエンビ製パイプを通じて、地下5.5mの不飽和水水層へ連続添加したが、添加はポンプを用いて容易に実施できた。
【0085】
さらに、前記井戸を通じて先端に撹拌用半径20cmの羽を有する撹拌軸を挿入し、地上から地下6.5mの位置まで撹拌軸を回転しながら推進し、すでに添加した本実施例の炭素源を土壌中で撹拌、分散させることができた。
【0086】
次に、105日後に該炭素源を添加した地点の不飽和水層の土壌をサンプリングし分析した結果、初期に8.9mg/L存在していたトリクロロエチレンが0.1mg/L以下に、初期に5.4mg/L存在していたテトラクロロエチレンが0.1mg/L低下していた。
【0087】
これは、添加した炭素源が生分解し、溶出した微量の有機物を炭素源として微生物がトリクロロエチレンおよびテトラクロロエチレンを分解したものである。
【0088】
また、添加した地点から1.5mの地下水の流れに対して川下側に設けた観測用の井戸からは有機物(TOCで測定)の増加は認められず、本実施例の炭素源を添加したことによる有機物の2次汚染は認められなかった。
(実施例3)
地上から炭素源として牛脂脂肪酸60重量%、ステアリルアルコール15重量%、比重調整剤として炭酸カルシウム25重量%の混合物(平均粒径2mm)を45重量%水に添加、分散させた混合液を調整した。
【0089】
該混合液を地上に設置した350Lの製氷機に入れ、撹拌しながら冷却(設定温度マイナス15℃)したところ、部分的に氷の析出を示す氷水状のスラリーが得られた。
【0090】
該スラリーは該炭素源が部分的に沈降、浮上現象を示したものの、ほぼ均一に分散した状態を示し、かつ流動性は良好であった。
【0091】
該スラリー65kgを予め掘られた井戸に挿入された直径15cmのエンビ製パイプを通じて、地下10.5mの飽和水層へ連続添加したが、添加はポンプを用いて容易に実施できた。
【0092】
さらに、前記井戸を通じて先端に撹拌用半径20cmの羽を有する撹拌軸を挿入し、地上から地下15mの位置まで撹拌軸を回転しながら推進し、すでに添加した本実施例の炭素源を飽和水層の地下水中で撹拌、分散させることができた。
【0093】
次に、90日後に該炭素源を添加した地点の飽和水層の地下水をサンプリングし分析した結果、初期に10.1mg/L存在していたトリクロロエチレンが0.1mg/L以下に、初期に8.2mg/L存在していたテトラクロロエチレンが1.3mg/L低下していた。
【0094】
これは、添加した炭素源が生分解し、溶出した微量の有機物を炭素源として微生物がトリクロロエチレンおよびテトラクロロエチレンを分解したものである。
【0095】
また、添加した地点から1.5mの地下水の流れに対して川下側に設けた観測用の井戸からは有機物(TOCで測定)の増加は認められず、本実施例の炭素源を添加したことによる有機物の2次汚染は認められなかった。
【0096】
また、事前の予備検討として、前記スラリー調整過程において冷却操作を行わない場合(スラリー状氷水を形成させない場合)の同様な試験を本実施例近傍の汚染地帯で行った結果、トリクロロエチレン等の低下率は本実施例の値の約1/4〜1/3であり、氷水状スラリーにする効果が明確に認められた。
(実施例4)
本実施例で用いた掘削用の掘削軸を図1に示す。
【0097】
図1において、11は掘削軸の本体であり原動機によって図中の矢印方向に回転運動するものである。12は掘削軸の先端に設けられた掘削用の羽、13は炭素源の導入管、14は炭素源の放出口である。
【0098】
まず地上から炭素源としてステアリン酸モノジグリセライド30重量%、ステアリン酸メチル30重量%、ラウリン酸25重量%、パーム油15重量%組成物(平均粒径1mm)100重量部に対し、キタンサンガムとカルボキシルメチルセルロースの等量混合物の18重量%の水溶液105重量部混合液を得た。
【0099】
本混合液は該炭素源が均一に分散したゾル状態を示し、該炭素源の沈降、分離現象はみられず、流動性は良好であった。
【0100】
本混合液80kgを地上に貯留し、ポンプを用いて図中13の炭素源の導入管へ導いた。
【0101】
同時に掘削軸11は回転しながら地上から羽12により掘削を開始し、帯水層直上の約12mの地点まで推進するとともに、導入管13を通じて導かれた本実施例で用いる炭素源を含む混合液は炭素源の放出口14から土壌中へ添加された。
その後掘削軸は逆回転をしながら地上へ引き抜かれることで、本実施例で用いる炭素源を円柱状に目的地に固体として止めることができた。
【0102】
次に、207日後に該炭素源を添加した地点の不飽和水層の土壌をサンプリングし分析した結果、初期に平均18.0mg/L存在していたトリクロロエチレンが0.2mg/Lに低下していた。
【0103】
これは、添加した炭素源が生分解し、溶出した微量の有機物を炭素源として微生物がトリクロロエチレンを分解したものである。
【0104】
また、添加した地点から1mの地下水の流れに対して川下側に設けた観測用の井戸からは有機物(TOCで測定)の増加は認められず、本実施例の炭素源を添加したことによる有機物の2次汚染は認められなかった。
(実施例5)
本実施例で用いた掘削用の掘削軸を図2に示す。
【0105】
図2において、21は掘削軸の本体であり原動機によって図中の矢印25方向に回転運動するものである。22は掘削軸の先端に設けられた掘削用の羽、23は炭素源の導入管、24は炭素源の放出口、26は撹拌用の羽であり、矢印27の方向に撹拌用の羽26を開閉できる。
【0106】
まず地上から炭素源としてステアリルアルコール45重量%、ミリスチン酸35重量%、硫酸アンモニウム(無水物)15重量%、リン酸ニ水素ナトリウム5重量混合物を、ダイス温度65℃に設定した押し出し造粒機を用いて長さ5mm、直径1mmのペレット状に造粒した炭素源混合物を得た。
【0107】
得られた混合物は、硫酸アンモニウムとリン酸ニ水素ナトリウムが前記炭素源によりカプセル状に覆われた構造をしていることがEDX解析の結果判明した。得られた混合物100重量部とブドウ糖、レシチン、アエロジルの等量混合物を18重量%水へ添加した混合液90重量部からなる炭素源混合液を得た。
【0108】
本混合液は該炭素源が均一に分散したゾル状態を示し、該炭素源の沈降、分離現象はみられず、流動性は良好であった。
【0109】
本混合液125kgを地上で貯留し、ポンプを用いて図中23の炭素源の導入管へ導いた。
【0110】
同時に掘削軸21は回転しながら地上から羽22により掘削を開始し、帯水層直下の約25mの地点まで推進するとともに、導入管23を通じて導かれた本実施例で用いる炭素源を含む混合液は炭素源の放出口24から土壌および地下水中へ添加された。
【0111】
地上から3mの地点で撹拌用の羽26は推進方向(掘削軸の長手方向)に対して直角に開き、放出口24から本実施例で用いる炭素源が土壌、地下水中へ添加された直後から撹拌動作を開始した。
【0112】
その後掘削軸は撹拌用の羽26を推進方向に対して平行に閉じ、逆回転をしながら地上へ引き抜かれることで本実施例で用いる炭素源を撹拌、分散された状態で目的地に固体として止めることができた。
【0113】
次に、200日後に該炭素源を添加した地点の不飽和水層の土壌および飽和水層の地下水をサンプリングし分析した結果、初期に平均32.1mg/L存在していたテトラクロロエチレンが0.1mg/L以下に低下していた。
【0114】
これは、添加した炭素源が生分解し、溶出した微量の有機物を炭素源として微生物がテトラクロロエチレンを分解したものである。
【0115】
また、添加した地点から1mの地下水の流れに対して川下側に設けた観測用の井戸からは有機物(TOCで測定)の増加は認められず、本実施例の炭素源を添加したことによる有機物の2次汚染は認められなかった。
(実施例6)
地上から炭素源としてパルミチン酸100重量部、ポリエチレングリコール33重量部、炭酸カルシウム45重量%、水12重量部からなる炭素源を含んだ混合液を得た。
【0116】
本混合液は該炭素源が均一に分散したゾル状態を示し、該炭素源の沈降、分離現象はみられず、流動性は良好であった。
【0117】
得られた混合液45kgを1m間隔の碁盤の目状に18地点の地表からポンプを用いて土壌へ添加を開始した。
【0118】
添加完了後、建設機械(バックホーおよびパワーシャベル)を用いて地上から4mの地点までの区間を機械的に撹拌し、添加した混合液を均一分散せしめ、該炭素源を目的地に固体として止めることができた。
【0119】
次に、175日後に該混合液を添加した地点の不飽和水層の土壌をサンプリングし分析した結果、初期に21.4mg/L存在していたトリクロロエチレンが0.4mg/Lに、初期に5.9mg/L存在していたテトラクロロエチレンが0.1mg/L以下に低下していた。
【0120】
これは、添加した炭素源が生分解し、溶出した微量の有機物を炭素源として微生物がトリクロロエチレンおよびテトラクロロエチレンを分解したものである。
【0121】
また、添加した地点から1.5mの地下水の流れに対して川下側に設けた観測用の井戸からは有機物(TOCで測定)の増加は認められず、本実施例の炭素源を添加したことによる有機物の2次汚染は認められなかった。
(実施例7)
実施例6で調整した混合液を地上に貯留した。
【0122】
次に貯留した該炭素源をポンプで掘進部分に供給しながら、ソイルセメント連続壁工法を用いてあらかじめテトラクロロエチレンおよびシス-1、2-ジクロロエチレンにより汚染されていることが判明している汚染地帯に図3に示す様な溝を形成した。
【0123】
図3において61は汚染地帯、62は汚染地帯の長手手方向に形成された3本の平行溝、63は該3本の平行溝と斜め(約45度)に交差する斜め溝、64は該3本の平行溝と直角方向に形成した直行溝である。
【0124】
各溝は全長14.5mから7m、幅70cm、深さ10.5m(飽和水層を貫通している)であり、ソイルセメント工法の特長であるカッターチェーンがキャタピラのごとく回転しながら掘進し、掘削された土壌は同時に本実施例の炭素源が供給、添加され後方(進行方向の反対側)へ埋め戻されるため、形成された溝は、現場の土壌と本実施例で用いる炭素源とが均一分散された壁となって存在し、該炭素源を目的地に固体として止めることができた。
【0125】
次に、205日後に該炭素源を含んだ混合液を添加した地点の不飽和水層の土壌および飽和水層の地下水をサンプリングし分析した結果、いずれの層においてもテトラクロロエチレンおよびシス-1、2-ジクロロエチレンの除去率は91%以上であった。
【0126】
これは、添加した炭素源が生分解し、溶出した微量の有機物を炭素源として微生物がテトラクロロエチレンおよびシス-1、2-ジクロロエチレンを分解したものである。
【0127】
また、該汚染地帯から1.5mの地下水の流れに対して川下側に設けた観測用の井戸からは有機物(TOCで測定)の増加は認められず、本実施例の炭素源を添加したことによる有機物の2次汚染は認められなかった。
【0128】
なお本実施例で用いた炭素源の添加量の値は、あらかじめ行った原位置の各種調査結果から得られたデータをもとに決定された一例であり、添加量はこの値に限定するものではなく、汚染物質の濃度、原位置の浄化に寄与する微生物の種類や活性、土質、地下水の流速および流向などの諸条件によって任意に決定しうることはいうまでもない。
【0129】
また本実施例では特に例示しなかったが、生物反応を促進したり本発明で用いる炭素源の分散性を向上させるための各種の添加剤を用いることは好ましい手段である。
【0130】
これら添加剤としては、窒素、リンの供給源としての肥料組成物、嫌状態を促進するための鉄、銅などの金属粉末、亜硫酸水素ナトリウム、水素ガスの添加など、分散剤としての各種界面活性剤などが例示される。
【0131】
また本実施例では特に添加しなかったが、炭素源の比重を上昇させ地下水深部への炭素源の供給を促進させるための比重調整剤の添加は任意になしうることは言うまでもない。
【0132】
これら比重調整剤としては炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、鉄化合物、銅化合物、マイカ、タルク、クレーなどが例示できる。
【0133】
また微生物反応を促進させるために、土壌、地下水を昇温させることは好ましく、任意になしうることは言うまでもない。
【0134】
土壌、地下水を昇温させる手段としては、土壌中に設けた電極から電流を流すことによるジュール発熱を利用する手段、石灰、酸化鉄に代表される土壌中、地下水中の水分と水和反応して発生する化学反応熱を利用する手段などが例示できる。
【0135】
【発明の効果】
以上のように本発明の土壌、地下水処理方法は、目的の土壌、地下水位置に炭素源を固体として止め、長期間炭素を微量づつ供給することにより、二次汚染を効果的に回避する土壌、地下水処理方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る土壌の掘削用の掘削軸を示す正面図
【図2】本発明の他の実施の形態に係る土壌の掘削用の掘削軸を示す正面図
【図3】本発明の一実施の形態に係る浄化用の溝を表す上面図
【符号の説明】
11 掘削軸の本体
12 掘削用の羽
13 炭素源の導入管
14 炭素源の放出口
21 掘削軸の本体
22 掘削用の羽
23 炭素源の導入管
24 炭素源の放出口
26 撹拌用の羽
61 汚染地帯
62 汚染地帯の長手手方向に形成された3本の平行溝
63 該3本の平行溝と斜め(約40度)に交差する斜め溝
64 該3本の平行溝と直角方向に形成した直行溝

Claims (9)

  1. 地上で固体かつ水に不溶な炭素源として炭素数12以上のアルコールを液体に分散させた組成物を、土壌に設けた穴、または、溝を通じて土壌に添加する土壌の処理方法。
  2. 地上で固体かつ水に不溶な炭素源として炭素数12以上のアルコールを液体に分散させた組成物を、地上に設けた、若しくは、予め設けられた穴、または、土壌に設けた溝を通じて地下水中に添加する地下水の処理方法。
  3. 液体が水である請求項1、2いずれかに記載の土壌、または、地下水の処理方法。
  4. 該分散させる手段が分散させる液体に乳化剤を添加することであ請求項1、2いずれかに記載の土壌、または、地下水の処理方法。
  5. 該分散させる手段が分散させる液体に増粘剤を添加することであ請求項1、2いずれかに記載の土壌、または、地下水の処理方法。
  6. 該分散させる手段が地上で固体かつ水に不溶な炭素源に比重調整剤を添加し、該炭素源の比重を分散させる液体の比重近傍に調整することであ請求項1、2いずれかに記載の土壌、または、地下水の処理方法。
  7. 該分散させる手段が地上で固体かつ水に不溶な炭素源と、水に添加した乳化剤または造粘剤とを水の氷点以下に冷却することで得られる氷水との混合物である請求項1、2いずれかに記載の土壌、または、地下水の処理方法。
  8. 比重調整剤の添加により比重を1.0近傍に調整した地上で固体かつ水に不溶な炭素源を水に分散させてなる請求項1、2いずれかに記載の土壌、または、地下水の処理方法。
  9. アルコールが飽和アルコールである請求項1、2いずれかに記載の土壌、または、地下水の処理方法。
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