JP3615064B2 - 汚染土壌浄化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は原位置における鉄粉注入による汚染土壌浄化方法に関し、さらに詳細に言えば、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の汚染物質を含んだ土壌を効果的に無害化するための鉄粉を地中へ注入して汚染土壌を浄化する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
トリクロロエチレンやテトラクロロエチレンなどの有機塩素系化合物は、脱脂性に富んでいるため、半導体工業やクリーニング工業等で広く使用されてきた。しかし、これら有機塩素系化合物が土壌や地下水を汚染すると、物質循環により最終的に人体に摂取され小児の白血病を誘発することなどが報告されているため、水質汚濁防止法等により環境基準や排出基準が定められている。
【0003】
また、土壌や地下水へ汚染物質が広がって行く際に影響する因子は、地下水位、地下水量、汚染物質の溶解度・揮発性・比重・粘性・表面張力、土壌への吸着率、土壌における水の透過性等いろいろあり、それら因子の状況により汚染の拡散の状況が異なる。そして、液状の汚染物質の場合、地下水と共に不透水層の上面を拡散して行く場合が多く、不透水層が切れている地点でより深部へ汚染が拡散して行くことが多い。
【0004】
原位置において有機塩素系化合物などの汚染物質に汚染された土壌または地下水から汚染物質を除去するには、地下水位より上部にある汚染物質に対しては、複数の垂直ボーリング孔を構築し、汚染物質の揮発性を利用してボーリング孔から吸引除去する土壌ガス吸引法(なお、この方法には、一方のボーリング孔から空気や蒸気を送り込み、汚染物質を積極的に気化させ、他方のボーリング孔より吸引除去するなどの方法も含む)が行われている。
【0005】
あるいは、地下水位より下部に位置する汚染物質に対しては、複数の垂直ボーリング孔を設置し、地下水を地上へ揚水し空気と接触させて曝気することで、地下水中に溶けこんだ汚染物質を除去する揚水曝気法などが行われている。さらに、土壌または地下水中の汚染物質を分解するには、微生物分解を用いた方法、あるいは特表平5−50152号公報、特表平6−506631号公報に開示されたような地中反応壁を用いた方法などがある。
【0006】
また、汚染土壌地にボーリング孔を掘り下げ、地表面を封じて地下に圧縮空気を吹き込み、地盤にフラクチャーを発生させ、この操作と同時又はこれに次いで地表面から圧縮空気で鉄粉を吹き込み、フラクチャーに鉄粉分散層を形成し、この鉄粉分散層に汚染された浸透水を通して、鉄粉と接触させて土壌および地下水中の重金属や有機ハロゲン化合物を無害化する方法も、特開平10−71386号として公開されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のこの種の方法では、以下のような問題があった。すなわち、土壌ガス吸引法や揚水曝気法は、地下水位の上部・下部のどちらかしか対応させることができなかった。しかも何れも対象汚染物質の揮発性の高さを利用した土壌の浄化技術であり、現地の透水性や地下構造物等の土質環境に影響を受けやすい。また、地中での汚染物質、特にトリクロロエチレンなどの有機塩素系化合物は水より比重が大であるから、深層にまで浸透しつつ、不透水層に沿って平面拡散する場合が多いので、従来の垂直ボーリング孔による場合では汚染物質との接点が局所的であり、汚染物質の吸引回収に多数の垂直ボーリング孔が必要であった。しかも、前記垂直ボーリングに用いられる地上設備は多くの場合垂直ボーリング孔一本毎に設ける必要があり、効率的な地中の汚染物質の除去は難しかった。
【0008】
また、汚染土壌の上に建築物や構造物があると、その下方をボーリングすることが困難で、浄化ができない場合が多かった。さらに除去された汚染物質を別途無害化処理する付加工程を必要とするなどの問題があった。これらの問題がある上で、かつ土壌ガス吸引法や地下水曝気法は原位置での土壌中汚染物質の完全な除去は困難であるという欠点があった。
【0009】
さらに、前記微生物分解を用いた方法では、土壌のもつ特性により全ての土壌に適用可能なわけではなく、また可能であったとしても微生物作用によるために浄化に長期間を必要とした。
【0010】
また、前記地中反応壁を用いた方法では、浄化の対象が地下水に限られており土壌の浄化を目的としていない。また、トレンチや暗渠を構築する必要があり、地下水位によっては深いトレンチが必要になる。さらに、鉄を拡散させたトレンチ内では、鉄と地下水中の炭酸イオンの反応により炭酸鉄が生成され透水層を閉塞させる現象がおきるので、定期的なトレンチ内鉄拡散物質の交換が必要であった。
【0011】
さらに、前記特開平10−71383号公報に開示された方法によれば、汚染物質を無害化するために別途付加工程は必要がなく、原位置で汚染物質を浄化することができるという効果はあるものの、圧縮空気や鉄粉ために、取扱に注意を要する圧力容器などの地上設備が必要であった。
【0012】
本発明の目的は、かかる従来の問題点を解決するためになされたもので、鉄粉の微粒子を水又は泥水と一緒に土壌や地下水中へ効率的に注入・撹拌・拡散することにより、土壌及び地下水中の汚染物質を原位置で浄化する方法を提供することにある。
【0013】
本発明の汚染土壌浄化方法は、所定量の鉄粉を水または泥水に混入して掘削用水を調整し、次いで、ビット先端のノズルから前記掘削用水を噴射しながら斜め方向にボーリングを行い、前記ボーリング時に前記ビットの後方に配置された回転工具を駆動させて前記水または泥水と一緒に前記掘削用水に含まれる鉄粉を地中に注入し、汚染浄化対象土壌に鉄粉拡散部を形成することを特徴とする。
さらに、前記掘削用水が、弱酸性を示す還元性物質を含むことが好適である。
また、所定量の鉄粉を水または泥水に混入して掘削用水を調整し、次いで、ビット先端に設けられ斜めに切截された形状を有する頭部の鋭角側に開口するノズルから前記掘削用水を噴射し、ボーリング角度を調整して水平方向及び/又は斜め方向にボーリングを行い、前記ボーリング時に前記水または泥水と一緒に前記掘削用水に含まれる鉄粉を地中に注入することを特徴とする。
【0014】
なお、ボーリングは汚染物質の存在状態により地下水面より上部及び/または下部の土壌に行われる。さらに、前記ノズルは固定された状態でも実施可能であるが、回転可能なビットでノズルを開口させて地中を推進することが好ましい。
【0015】
また、本発明の方法で用いる鉄粉は、浄化対象とする土壌の主な粒径が2mm〜0.15mmの場合、鉄粉の粒径は20μm〜5mm程度の細かさをもち、かつ多孔質で比表面積の大きな鉄粉が好適である。これは粒径が細かすぎると鉄粉は可燃性固体であるため取扱が難しくなるからであり、粒径が大きすぎると注入前に水槽で均一にスラリー化せず、土壌への安定した注入が困難になるためである。ちなみに、鉄粉は53μmより小さい粒度のものが50%以上含有すると、危険物(第2類危険物可能性固体)となる。
【0016】
なお、土壌への鉄粉の添加量は、対象となる汚染土壌の状況によっても異なるが、多くの場合、対象とする土壌及び地下水に対して0.1重量%〜10重量%の割合になるように注入・拡散するのが好ましい。なお、注入・拡散量が少なすぎると浄化期間が長くなり、多すぎるとコスト的に不利となる。
なお、浄化対象とする土壌の溶出pHは鉄粉の分解条件よりpH10以下であることが望ましい。土壌が強いアルカリ雰囲気であると、鉄粉の表面の活性度が低下し有機塩素系化合物の分解効率が低くなるためである。
また鉄粉の活性度を維持・促進するためにも、対象とする土壌・地下水の雰囲気が還元雰囲気である方が望ましい。これは鉄粉が還元雰囲気の方が効率よく有機塩素系化合物を分解するためである。
【0017】
さらに、本発明の汚染土壌浄化方法は、所定量の鉄粉を水または泥水に混入して掘削用水を調整し、次いで、ビット先端に設けられ斜めに切截された形状を有する頭部の鋭角側に開口するノズルから前記掘削用水を噴射しながら前記ビットの後方に設けた回転工具の駆動及び停止を行うことによりボーリング角度を調整して水平方向及び/又は斜め方向にボーリングを行い、前記ボーリング時に前記水または泥水と一緒に前記掘削用水に含まれる鉄粉を地中に注入することを特徴とし、これにより効率的に土壌中に鉄粉を拡散させることができる。
【0018】
前記回転工具は鉄粉を水や泥水を用いて広範囲に拡散させることを主目的とするものであり、スクリュー形、羽根車形など適宜のものが含まれる。そのうち、リーマを例示することができる。
【0019】
尚、本発明の浄化対象物質である有機塩素系化合物には、トリクロロエチレン(TCE)、テトラクロロエチレン(PCE)、1,1,1−トリクロロエタン(MC)などの揮発性有機塩素系化合物の揮発性有機化合物(CVOC)が含まれる。そして、土壌の浄化に鉄粉を用いる場合には、掘削用水に弱酸性の還元剤、例えば亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)を混合して鉄粉による揮発性有機塩素系化合物(CVOC)の分解を促進させることができる。
なお、以下において「水平ボーリング」なる名称を用いる場合は、斜め方向のボーリングを含むものとする。
【0020】
前記説明より明らかな如く、本発明の浄化手順は、まず所定量の鉄粉を水又は泥水に混入して掘削用水を調整する。次いでビット先端のノズルから前記の掘削用水を高圧で注入しながら水平方向及び/又は斜め方向に地中をボーリングする。この時に掘削用水に含まれた鉄粉を地中に注入する。あるいは、ビットの後方に回転工具を設けて、ボーリングの時に回転工具を駆動して掘削用水と土壌また地下水と撹拌し、対象となる土壌及び地下水中への鉄粉の拡散・混合を確実に行うのがよい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の鉄粉の地中への注入方法を図に示される実施形態についてさらに詳細に説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置などは特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0022】
図1には本発明の鉄粉の地中への注入方法の実施の形態を示し、図2は同実施の形態において用いられたビットの側面を示す。図3は鉄粉を注入した土壌の平面を示し、図4は同断面を示す。図5は地下水の流れ方向を示す土壌の断面を示し、図6は図5の平面を示す。
【0023】
図1及び図2に基づいて本発明の一実施の形態を説明する。地表19(GL)には、鉄粉を入れた貯溜槽1と、該貯溜槽1と通路3をへて連結された水槽(WT)2と、さらに、流賂5を経て水槽2と連結されたポンプユニット(PU)6が設置されている。なお、ポンプユニット6には、図示しないモータによって回転駆動されるタービンポンプを内蔵している。さらに、パワーユニットトラック13と、その近傍に回転駆動装置14が配置されている。
【0024】
先ず、前記貯溜槽1から通路3を経て水槽(WT)2に所定量の鉄粉を送ってスラリー状の掘削用水を調整する。前記ポンプユニット6は水槽2からスラリー状の掘削用水を汲み上げて、流路8を経て図示しない継ぎ手から図2に示す導管7に掘削用水を圧送する。なお、前記ポンプユニット6には、タービンポンプの他にプランジャポンプ、ピストンポンプ等適宜のものを用いることが可能であることは言うまでもない。
【0025】
前記導管7は、図2から明らかなようにロッド10に同心状に挿入されていて、導管7とロッド10との間に互いに相対回転を可能にする軸受部材11が所々に組み込まれている。このロッド10の先端には図2に示すようなビット12が取り付けられ、ロッド10の後端にはパワーユニットトラック13の近傍に配置された回転駆動装置14が接続されている。
【0026】
なお、前記パワーユニットトラック13には油圧モータ、電動モータなどの駆動装置(図示せず)が組み込まれている。このような構造のため、前記回転駆動装置14はパワーユニットトラック13により駆動されて前記ロッド10を回転させることができ、かつ地中への斜め方向のボーリング打ち込み角度を任意に設定する。
【0027】
前記ビット12はほぼ円筒形をなすとともに、斜めに切截された形状の楕円形の頭部12aを備える。さらに頭部12aの鋭角側に開口するノズル15が設けられている。このノズル15はビット12の内部において前述の導管7に接続している。
【0028】
本汚染土壌浄化方法によれば、前述のように貯溜槽1から通路3を経て水槽(WT)2に所定量の鉄粉を送ってスラリー状の掘削用水を調整する。次いで、ポンプユニット6を駆動して水槽2から前記スラリー状の掘削用水を吸い上げ、さらに掘削用水に高圧(通常10kg/cm2以上の送水圧)をかけて流路8からロッド10に内挿された導管7内に圧送して、ビット12の先端に設けられたノズル15から掘削用水16をジェット噴射させる。なお、前記ビット12は土壌に形成された貫入坑17から斜めに向けて掘削用水16を噴射しながら斜め方向のボーリングを開始する。
【0029】
前述のボーリングには、パワーユニットトラック13により回転駆動装置14を駆動して、図2に矢印Aに示すように、ロッド10とビット12を、それぞれの中心軸(C−C)を中心に回転させる。ノズル12の回転と共に高圧で噴射される掘削用水16は土壌をボーリングして図1、図2に示すようにボーリング孔25を所定の深さ(本実施の形態では地下水面WLより上方で、地下水のない不飽和層22)まで斜め方向にボーリングする。
【0030】
次いで矢印B方向に、すなわち地表(GL)19とほぼ平行に掘進し、図3、図4に示すようにボーリング孔25を掘削する。このボーリング孔25は掘削土を地上に排出することなく行われるのであり、長時間維持される必要のある井戸孔は構築されない。そして、同時に土中には鉄粉の拡散した部分(鉄粉拡散部分)26が土壌中に形成される。
【0031】
本実施形態では、ビット12には発信器(図示せず)が設けられていて、この発信器から発射される電波信号20を、地表19において検知器であるフローケータ21で検知してビット12のボーリング位置を確認し、所定のコースを外れている場合には、フローケータ21を移動させながら所定のコースに移動させる。あるいは前記フローケータ21により図3に示すように任意の方向に迂回させたり、あるいは図4に示すように任意の深さにボーリングする。
【0032】
また、図3に示すように、ボーリング方向を転換させて複数の鉄粉を注入した部分(鉄粉拡散部分)26を設けるには、ロッド10の回転を止めて回転駆動装置14の地中への斜め方向の挿入角度や向きを調整した上でビット12をそのまま押し込むと、ビット12の頭部12aが土壌に当接し、頭部12aの傾斜面は土圧によって矢印D方向に曲がってボーリングが行われる。このような操作を複数回繰り返す。また、図4に示すように深さ方向に鉄粉を注入した部分(鉄粉拡散部分)26を形成する場合も、同様の操作により行われる。
【0033】
前記鉄粉を注入した部分(鉄粉拡散部分)26では、浄化対象物質がトリクロロエチレン(TCE)、テトラクロロエチレン(PCE)である場合には、鉄粉は該浄化対象物質を還元分解して無害化する。また、浄化対象物質が1,1,1−トリクロロエタン(MC)、1,1,2−トリクロロエタン(1,1,2−TCA)、1,1,2,2−テトラクロロエタン(1,1,2,2−TeCA)である場合にも、鉄粉による分解が行われるが、1,1,2−トリクロロエタン(1,1,2−TCA)、1,1,2,2−テトラクロロエタン(1,1,2−TeCA)については、分解反応初期には鉄粉は還元剤としてはなく触媒として作用して脱塩化水素反応が進行し、浄化対象物質を無害化する。
【0034】
本実施形態では、従来のような長時間維持させる井戸孔を掘削する必要がないので、ベントナイトを用いて、ボーリング孔の孔壁を自立させることも必要がなく、単に水、又は泥水と鉄粉を注入拡散するだけで施工が可能となり、作業能率が良好で、きわめて低コストで鉄粉を地中に注入することができる。特に水平方向にボーリングするには従来の水平井戸孔を掘削する場合のような到達坑を不要とし、貫入坑からボーリングを開始するだけでよく、作業が容易になる。
また、本実施の形態を従来の垂直ボーリング工法と比較すると、掘削土の発生がなく建設残土の処理が不要になる。また、地上設備の移設がない等の大きな利点がある。
【0035】
本実施形態においては図5及び図6に示す変形例のように地下水面WLより下方の帯水層36に沿って水平方向にボーリングすることも可能であり、図5のように地表19(GL)に工場などの建物30やタンクが設置されている場所の下方の土壌であっても鉄粉を注入することができる。
【0036】
さらに、本実施形態によれば、地中に鉄粉としての鉄粉を拡散・混合させた部分(鉄粉拡散部分)26がバリアーとなり、汚染地帯35より地下水36の矢印方向の下流域へ汚染が拡散するのを防止する。また、その際には汚染の局部への注入と拡散阻止のためのバリアー(鉄粉拡散部分)26の施工を一個所の地上設備より実施することが可能である。なお、図5及び図6において、図1、図3と均等の部分には同一符号を付してある。
【0037】
また対象となる有機塩素系化合物が難分解性の場合、鉄粉の反応性を高めるため弱酸性を示す還元性物質を水槽(WT)2に添加し、鉄粉の効力を高めて土壌へ注入すると浄化の効果が高い。
【0038】
また、同様に有機塩素系化合物の種類や周囲の環境等によっては、予め鉄粉または2価の鉄塩を上記方法によって地下水中の汚染地域へ分散させ、また別系統により過酸化水素を注入しフェトン反応で地中の汚染物質を酸化分解処理することも可能である。ただしフェトン反応は瞬時にして進行する反応であり、地上の鉄スラリー製造水槽に過酸化水素を加えて本浄化法を実施することはできない。よって、過酸化水素の加え方は対象とする地域の地表よりの撒布、又は本ボーリング設備を2系統にする、又は地上の保管タンクを鉄スラリー製造水槽と過酸化水素槽との2基設け、定期的に切替ながら(又は管構造を2層にする)対象とする地域へ圧送する、等を行う必要がある。
【0039】
本実施形態の効果として、鉄粉を用いた場合における鉄粉の拡散、及び有機塩素系化合物の浄化を確認した。
この試験は、実際にトリクロロエチレンに汚染された土壌に対して、水平ボーリングによる鉄粉の撹拌・混合を行い、試験の前後で土壌サンプルを採取した。鉄粉は同和鉄粉工業株式会社製のE−200を用い、1%以上の鉄粉を土壌に撹拌・混合させた。サンプルの採取は、試験の前後において現地において垂直ボーリングを行い採取した。なお、採取場所は長さ2m、水平ボーリングの中心部から幅30cm以内の場所に対して、水平ボーリングにより鉄粉を拡散混合させた中心部より30cm以内のサンプルを採取した。
【0040】
前記のサンプル土壌採取により、処理前後の土壌の鉄濃度(mg/kg)及び処理前後の土壌トリクロロエチレン溶出量(mg/l)を求めたところ、処理前土壌は表1に、処理後土壌は表2に示すとおりであった。なお、処理後の土壌とは、処理施工後60日間後に採取したサンプル値である。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
上記実施例の水平ボーリングによる地中への鉄粉の添加により、処理前より平均で11,400mg/kg土壌中の鉄濃度が上昇しているのが分かり、地中へ鉄粉の拡散・混合ができたことが判明した。また、処理前には検出された土壌のトリクロロエチレン溶出量が、処理後には殆ど検出されていないことにより、本発明の方法が地中の有機塩素系化合物に対して有効であることが実証された。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の鉄粉の地中への注入方法によれば、鉄粉を水または泥水に混入させた掘削用水を噴射しながら水平方向及び/又は斜め方向にボーリングを進めることにより、次のような効果を奏する。
a)掘削時に水又は泥水と一緒に鉄粉を地中の所定個所へ効果的に注入・拡散・混合することができる。
b)掘削時に回転工具を使用することにより土壌中での鉄粉と泥水や地下水とを撹拌することができ、鉄粉の地中への注入が確実になり、汚染物質の浄化効果が大となる。しかも、鉄粉を土壌中に拡散した後には、何等の動力を必要とせず浄化効果を維持することができる。
c)従来の土壌ガス吸引法・揚水曝気法と異なり、汚染が認められる地下水位より上部、下部のどちらへも鉄粉を拡散・混合させることができる。
d)汚染物質が帯水層を通って水平に拡散している場合には、汚染物質が広がっていく地域に沿って効率的に鉄粉を注入・拡散・混合することができる。
e)汚染地域の浄化だけでなく、汚染地域からの汚染物質の拡散を防止することも可能である。
f)水平ボーリングにより地中に鉄粉の拡散層をつくり、該拡散層を通過させて汚染物質を分解することにより敷地外への汚染の拡散を防ぐので、従来の地中反応壁を用いる場合のような、トレンチの掘削、土壌と鉄粉との地上での混合、鉄粉のトレンチへの埋設などの施工が不要である。
g)地表に建築物が存在していても、その下に鉄粉を撒布することが可能になる。
h)長時間維持する必要のある井戸孔を掘削しないので、従来のようにベントナイトを用いてボーリング孔の孔壁を自立させる必要もなく、単に水、又は泥水と鉄粉を混入した掘削用水による有水ボーリングとなり、きわめて能率的に鉄粉を地中に注入することができる。
i)鉄粉は微粒子であるから、水でスラリー状になり、ポンプにより簡単に圧送することができる。その上、長期にわたって浄化効果を維持することができる。
j)一個所から所望の複数の個所へ鉄粉を注入することができから、鉄粉を貯溜するタンクやその他の地上設備を移設することなしに効率的な作業が可能となる。
k)汚染物質を現地で無害化できるので、二次廃棄物の発生がない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態である鉄粉の地中への注入方法の概略説明図であり、土壌を切断して示す。
【図2】図1の実施形態において用いられたビットの側面図である。
【図3】鉄粉を注入した土壌の平面図である。
【図4】図3の断面図である。
【図5】地下水の流れ方向を示す土壌の断面図である。
【図6】図5の平面図である。
【符号の説明】
12 ビット
15 ノズル
16 掘削用水
14 回転駆動装置
Claims (4)
- 所定量の鉄粉を水または泥水に混入して掘削用水を調整し、次いで、ビット先端のノズルから前記掘削用水を噴射しながら斜め方向にボーリングを行い、前記ボーリング時に前記ビットの後方に配置された回転工具を駆動させて前記水または泥水と一緒に前記掘削用水に含まれる鉄粉を地中に注入し、汚染浄化対象土壌に鉄粉拡散部を形成することを特徴とする汚染土壌浄化方法。
- 前記掘削用水が、弱酸性を示す還元性物質を含むことを特徴とする請求項1記載の汚染土壌浄化方法。
- 所定量の鉄粉を水または泥水に混入して掘削用水を調整し、次いで、ビット先端に設けられ斜めに切截された形状を有する頭部の鋭角側に開口するノズルから前記掘削用水を噴射し、ボーリング角度を調整して水平方向及び/又は斜め方向にボーリングを行い、前記ボーリング時に前記水または泥水と一緒に前記掘削用水に含まれる鉄粉を地中に注入することを特徴とする汚染土壌浄化方法。
- 所定量の鉄粉を水または泥水に混入して掘削用水を調整し、次いで、ビット先端に設けられ斜めに切截された形状を有する頭部の鋭角側に開口するノズルから前記掘削用水を噴射しながら前記ビットの後方に設けた回転工具の駆動及び停止を行うことによりボーリング角度を調整して水平方向及び/又は斜め方向にボーリングを行い、前記ボーリング時に前記水または泥水と一緒に前記掘削用水に含まれる鉄粉を地中に注入することを特徴とする汚染土壌浄化方法。
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