JP3831280B2 - 排水用シールピット - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発電機等の機器冷却を行った冷却水を排出する際に用いられる排水用シールピットにおける泡発生防止技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
シールピットは、機器冷却水を河川や海等に排出する際に、シールレベル以上の水位を確保するために設ける堰である。
図4に、従来の代表的なシールピットの模式図を示す。
シールピット1の貯水槽3には、図示しない機器を冷却した排水が放水管2を介して貯水され、シールが行われる。また、貯水された排水の水面11は上昇して、最終的には堰止壁4を越える。そして、排水がオーバーフローして落下水流13となり滝落とし状態となって下流水面12に落下する。そして、下流水面12下の滝落とし部で、空気を巻き込んで泡を発生させることになる。ここで、H.W.L は下流水面12の上限を示し、L.W.L は下限を示している。なお、下流水面12が海水面であるときは、H.W.L とL.W.L は、主に満潮時と干潮時の水面レベルに対応する。
【0003】
ところで、ここでは図示しない冷却水ポンプ(排水ポンプ)は、1台運転のときもあれば、また、2台以上の同時運転を行うときもある。ここで、2台以上の同時運転の場合は、堰止壁4を越える滝落としの水流が倍加することになり、泡の発生もそれに応じて激しくなる。
従来は、この発生した泡を自然消滅させるため、泡が浮上して消滅するのに十分な距離の配管や開水路を設けて、河川や海等に接続して排水し、外部への泡の流出を防いでいた。
【0004】
あるいは特公平4-39521 号公報に記載されるように滝落し部に複数の越流堰を多段に設けて、上流水面が上昇したときに越流する水を分割して、越流時に空気と接触することのない流れの部分を形成することで、泡の発生を最小限にすることを目的とした技術も開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、シールピットの設置位置や設置スペースの制約等により、配管や開水路を泡が自然消滅するだけの十分な距離だけ確保することが困難な場合がある。このような場合、そのままでは、泡が冷却水とともに外部に排出され、環境上問題となる。
【0006】
また、特公平4-39521 号公報に記載された技術においては、上流水面が多段の越流堰の隙路に相当するレベルにあると、その隙路を流れる越流水には堰の幅全体で空気との接触があるため、少ないながらも泡の発生を抑えることができない場合もある。
本発明は、配管や開水路等の距離を十分にとれない場合においても、泡を外部に流出させないようにすることを可能とした排水用シールピットを提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下流に放流する排水を一時的に貯留し、シールレベル以上の水位を確保しつつ放流するようにした排水用シールピットであって、排水を堰き止めて貯留する堰止壁と、該堰止壁の前記シールレベル以上の位置に入水口を多段に配列してなり、下流側の下限水位よりも下側に出水口を没するように配置してなる多数の連絡管と、該連絡管の入水口のうち、所定の入水口に着脱自在に嵌装して入水を閉止してなる蓋と、を有することを特徴とする排水用シールピットによって上記課題を解決した。
【0008】
また、本発明は、前記堰止壁の上部側に、一時貯留した排水が上限水位を超えた際に、排水を下流側にオーバーフローさせるオーバーフロー管を有することを好適とすることを見出した。
さらに、本発明は、前記連絡管の出水口に対面する底版の嵩上げを行う底版嵩上げ架台を更に有することを好適とすることを見出したのである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の排水用シールピットについて、以下、順を追って説明する。なお、図4において既に説明した排水用シールピットの各部材には同一の番号を付し、再度の説明を省略する。
本発明では、まず、図3に示すように、堰止壁4の上部側に入水口を多段に配列してなり、出水口が下流側の下限水位よりも下側に没するように配置した多数の連絡管5を設置したことを特徴とする。なお、6は、連絡管を固定して保持する振れ止め板である。このように連絡管を配し、従来、滝のように落下していた水流を下流水面12より下の水面下にサイフォン流れとなるように導いて排出することで、水面への水流の衝突をなくして泡の発生を抑止することができるのである。
【0010】
ここで、多段に配列された連絡管5の内で、 その入水口が貯水槽の水面11以下に水没している連絡管を通じて流下する水は空気と接することなく下流側へ流れるために、 泡を生成することはない。また、入水口が貯水槽の水面11のレベルに相当する連絡管では入水口における水流に空気が混入することがあるが、従来の堰止壁の全幅で空気を巻き込んで泡を発生するのに比べると、 水流と空気との界面で小さい分泡の発生が少なくなる。
【0011】
また、本発明では、 図2に示すように連絡管5に蓋5aをすることのできる構造としているため、貯水槽の水面11のレベルに相当する位置に入水口を有する連絡管5に適宜蓋5aをすることで、貯水槽の水面レベル11を制御することができる。これにより、多段に設けられた連絡管5の入水口の一部を蓋することで、貯水槽の水面11のレベルを上下方向の入水口の開口の間に保持することが可能となる。また、水面11が変動する場合でも、その変動する水面位置での入水口の一部に蓋5aをしておいて、入水口から流下する水流に巻き込まれる空気の量を低減することもできる。
【0012】
たとえば図2に示すように入水口の一部に蓋5aを配置しておくことで、 図示しない冷却ポンプを1台運転している間にL.W.L(1)〜H.W.L(1)の間で水面11が変動したとき、L.W.L(1)の近傍の水位、あるいは、3段目と4段目の入水口の間のレベルに水面11があっても入水口から流下する水は空気と触れることがなく、下流側で泡の発生はない。また、4段目の入水口の開口部に相当するレベルに水面11がある場合には、各入水口での空気の巻き込みはあるが、 従来のような堰止壁の幅全体で空気を巻き込んで発生する泡に比べれば格段に泡の発生を抑えることができる。
【0013】
さらに、4段目の入水口よりも水面11が上昇した場合にも流下する水と空気との触れる界面がないため、泡の発生はない。
このように、図2に示すような蓋5aの配置とすることで冷却水ポンプの運転時に水面11の変動がある場合でも、泡の発生を極力低減することが可能となる。更に、 泡の発生状況を見ながら、 適宜蓋5aの開閉を遠隔で行うことにすれば、水面11を常時入水口の開口のないレベルに保持することもでき、 下流側での泡の発生を皆無とすることもできる。
【0014】
この目的のためには、 蓋5aとして開閉バルブを用いることができる。
連絡管5の入水口の配置とその入水口へ設置する蓋5aの配置は排水量と堰止壁の規模に応じて適宜設計することができる。
また、図1、2の例では、 冷却水ポンプを2台同時運転し冷却水量が増大したときのために、 堰止壁の高さを高くしておき、 各入水口と水面11とのヘッド高さを増大させることができる構造としている。こうすることで、2台運転時でも下流側へは連絡管5から排水されることになり、泡の発生を防ぐことができる。
【0015】
連絡管5の一部に汚れ等による抵抗が生じ、 通常の冷却水ポンプ2台運転時の水面11の水位変動L.W.L(2)〜H.W.L(2)から外れて更に水位が上昇してしまった場合のためにオーバーフロー管9が設けられており、 堰止壁の上端から水が溢れるのを防止している。このオーバーフロー管により余分な水はすべて下流側へ流下するので、水面11の上昇時においても堰止壁上部の幅で水が溢れて泡が発生するのに比べると水への空気の巻き込みを低減することができ、 泡の発生を著しく低減できる。
【0016】
さらに、本発明においては、蓋5aのない連絡管5中に巻き込んだ空気が、出水口から噴出して泡となることを防止するため、連絡管5の出水口に対面する底版の嵩上げを行う底版嵩上げ架台10を更に具備することを好適とする。この底版嵩上げ架台10によって、連絡管5の出水口と底版との距離を短くし、たとえ連絡管中に空気を巻き込んだ場合においても、巻き込んだ空気の水中への浸透深さを短くすることができ、泡の浮上距離が短くなるために、 泡の消滅を早期に達成できる。
【0017】
【実施例】
本発明の排水用シールピットを、海岸に立地した発電所の発電機の冷却排水に適用した。
ここで、連絡管は、 150mmφの塩化ビニル製とし、幅方向に 200mmピッチで30列、高さ方向に 250mm間隔で5段配列とした。また、堰止壁の高さは、冷却水の最大放水時にも溢れ出さないレベルに設定した。なお、放水流量は、最小流量時20,000m3 /h、最大流量時34,000m3 /hとして、シールピットから外海への排水を行った。なお、外海潮位の潮位差は約2mである。
【0018】
本発明のシールピットから外海までの距離を20mとしたが、放水流量の変化や外海潮位の潮位差の変動に対しても泡が流出してしまうこともなく、安定した排水を実現できた。
なお、従来の滝落とし方式のシールピットの場合では、泡を自然消滅させるためにシールピットから外海までの距離を、最低でも 100mとすることが必要であり、本発明の効果は明らかである。
【0019】
【発明の効果】
本発明の排水用シールピットの採用によって、泡の発生を有効に防止することが可能となり、シールピットの設置位置や設置スペースの制約を解消して外部に泡を流出させることのない排水用シールピットを実現することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の排水用シールピットの模式図である。
【図2】排水口の蓋の配置を例示して示す模式図である。
【図3】本発明の排水用シールピットに至る過程の段階の模式図である。
【図4】従来の排水用シールピットの模式図である。
【符号の説明】
1 シールピット
2 放水管
3 貯水槽
4 堰止壁
5 連絡管
5a 蓋
6 振れ止め板
9 オーバーフロー管
10 底版嵩上げ架台
11 (貯水槽内の)水面
12 下流水面(海水面)
13 落下水流
14 泡
H.W.L 上限水面
L.W.L 下限水面

Claims (3)

  1. 下流に放流する排水を一時的に貯留し、シールレベル以上の水位を確保しつつ放流するようにした排水用シールピットであって、排水を堰き止めて貯留する堰止壁と、該堰止壁の前記シールレベル以上の位置に入水口を多段に配列してなり、下流側の下限水位よりも下側に出水口を没するように配置してなる多数の連絡管と、該連絡管の入水口のうち、所定の入水口に着脱自在に嵌装して入水を閉止してなる蓋と、を有することを特徴とする排水用シールピット。
  2. 前記堰止壁の上部側に、一時貯留した排水が上限水位を超えた際に、排水を下流側にオーバーフローさせるオーバーフロー管を有することを特徴とする請求項1に記載の排水用シールピット。
  3. 前記連絡管の出水口に対面する底版の嵩上げを行う底版嵩上げ架台を更に有することを特徴とする請求項1または2に記載の排水用シールピット。
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