JP3828504B2 - 無線装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は無線装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、無指向性アンテナを備えた無線装置において、アンテナから送信される送信波の放射パターンは、そのアンテナの近傍に存在する散乱体の影響を受けて変化する。
【0003】
例えば、ユーザが携帯電話機で音声通話する場合には、ユーザは携帯電話機を自己の頭に密着させて使用するが、ユーザが携帯電話機を用いて電子メールで通信する場合には、ユーザと携帯電話機とはある程度離れる。即ち、携帯電話の使用状態によって、携帯電話機とユーザの人体との距離は異なる。このような場合に、ユーザが散乱体として作用し、この散乱体が送信波の放射パターンを変化させる。このため散乱体がない場合の所望の放射パターンが得られない。特に、散乱体が誘電体の場合には、散乱体はアンテナから放射される電磁波を吸収してしまうので、アンテナの放射効率を悪化させる。
【0004】
特許文献1に記載された無線装置は、無指向性アンテナおよび指向性アンテナの両方を有する。これらのアンテナの近傍に散乱体が存在しない場合には無指向性アンテナを選択し、一方で、アンテナの近傍に散乱体が存在する場合には指向性アンテナを選択する。これによって、送信波の放射パターンは、散乱体の影響を受けることなく、アンテナの選択によって変化する。従って、アンテナの放射効率は、散乱体に因る影響を受けない。
【0005】
また、特許文献2に記載された無線装置は、無給電素子内の可変容量ダイオードのキャパシタンスを変化させることによって、送信波の放射パターンを変化させる。従って、この無線装置においても、アンテナの放射効率は、散乱体に因る影響を受けない。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−261679公報
【特許文献2】
特開2001−24431公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1による無線装置はアンテナを複数必要とする。そのため無線信号を分配または切替える回路、複数の給電回路および給電線路が必要になる。よってそれらを構成する部品数が比較的多かった。部品数が多いことによって、無線装置は大型化し、並びに、その製造コストが増加するという問題が生じていた。特許文献2による無線装置は、無指向性アンテナとは別に、このアンテナと同程度の大きさおよび形状の無給電素子を必要とする。そのため無線装置の突出部が複数となる。そのため無線装置は大型化し、外観の意匠が制約され、機械的強度を上げるための製造コストが増加するという問題が生じていた。
【0008】
また、特許文献2による無線装置は、無指向性アンテナと無給電素子との間の電気的結合を用いている。よって、放射パターンを充分に変化させるためには、無指向性アンテナと無給電素子との間に送信波の半波長程度の間隔が必要となる。これは、無線装置の小型化の妨げとなっていた。
【0009】
そこで、本発明の目的は、放射効率などのアンテナ特性を劣化させることなく、従来よりも小型化することができ、製作コストが低廉な無線装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に従った実施の形態による無線装置は、ある周波数帯の信号が共振するスロットを有し、該スロットを境として隣り合う複数の地板領域を含む地板と、前記スロットに配置され、前記複数の地板領域間を短絡または開放するスイッチと、前記スイッチが前記複数の地板領域間を短絡すると前記スロットと第1の強さで電磁結合し、開放すると前記スロットと前記第1の強さよりも強い第2の強さで電磁結合するアンテナであって、前記スロットの共振周波数と等しい共振周波数を有するアンテナと、前記アンテナを介して信号を送信または受信する送受信器と、前記送受信器が送信または受信する信号に基づいて前記スイッチを制御する制御回路とを備えている。
【0011】
本発明に従った実施の形態による無線通信方法は、ある周波数帯の信号が共振するスロットを境として隣り合う複数の地板領域を含む地板と、前記スロットに配置され、前記複数の地板領域間を短絡または開放するスイッチとを備え、前記スロットの共振周波数と等しい共振周波数を有するアンテナを介して信号を送信または受信する無線装置を用いた無線通信方法において、
前記アンテナと前記スロットとを第1の強さで電磁結合させるために,前記スイッチが前記複数の地板領域間を短絡するステップと、前記アンテナと前記スロットとを前記第1の強さよりも強い第2の強さで電磁結合させるために、前記スイッチが前記複数の地板領域間を開放するステップとを備えている。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照し、本発明による実施の形態を説明する。これらの実施の形態は本発明を限定するものではない。
【0013】
本発明に係る実施の形態による無線装置は、アンテナとスロットとの電磁結合を利用することによって、送信波の放射パターンおよびアンテナの入力インピーダンスを変化させる。それにより、無線装置は、散乱体に影響されることなく送信波の放射パターンを変化させることができる。尚且つ、無線装置の通信品質は劣化しない。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明に係る第1実施の形態による無線装置100の概略図である。無線装置100は、地板10、スイッチ30、アンテナ40、送受信器50および制御回路60を備えている。地板10にはスロット20が設けられている。
【0015】
地板10は、金属等の導体から成り、送受信器50および制御回路60を実装する基板である。
【0016】
スロット20は細長い形状をした長方形の開口である。スロット20の幅は約λ/1000から約λ/10であり、その長さは約λ/2である。λは、無線装置100に用いられる無線周波数帯の中心周波数を有する電磁波がスロット20を伝搬するときの波長(以下、伝播波長という)である。地板10はスロット20を境界に第1の地板領域A1と第2の地板領域A2とに分割されているが、第1の地板領域A1と第2の地板領域A2とはスロット20の両端において接続している。
【0017】
本実施の形態においてスロット20は長手方向にほぼ直線状に延在しているが、スロット20は曲線状に延在してもよく、さらに、ジグザグ状に延在してもよい。
【0018】
スイッチ30は、スロット20の長手方向のほぼ中心に配置されている。スイッチ30が開閉することによって、第1の地板領域A1と第2の地板領域A2とを電気的に開放または短絡させることができる。図1に示されているスイッチ30は概念的なものであり、実際のスイッチ30の回路構成は、例えば、図5に示された構成を有する。
【0019】
アンテナ40は、地板10の表面または裏面のいずれか一方に配置され、かつ、スロット20の近傍に配置されている。アンテナ40は、空間中を伝搬してきた伝播波長λの電磁波を受信し、かつ、送受信器50から送信されてきた信号を空間中に伝播波長λの電磁波として放射する装置である。アンテナ40は、モノポールアンテナや逆Fアンテナなどの線状アンテナであってもよく、また、スロットアンテナやパッチアンテナなどの平面アンテナであってもよい。
【0020】
送受信器50は、アンテナ40に接続され、アンテナ40によって受信された信号を入力し、アンテナ40から送信する信号をアンテナ40へ出力する。また、送受信器50は、制御回路60に接続され、制御回路60に受信信号強度表示信号(以下、RSSI(Receiver Signal Strength Indicator)という)を与える。
【0021】
制御回路60は、送受信器50およびスイッチ30に接続され、スイッチ30を制御する回路である。制御回路60は、送受信器50からのRSSIに応じてスイッチ30を短絡または開放させる。例えば、制御回路60は、スイッチ30を切り替えるためにスイッチ30へ直流電圧を出力し、スイッチ30が切り替えられる前およびその後におけるそれそれのRSSIを比較する。この比較結果に基づいて、制御回路60は、RSSIを高くするようにスイッチ30を制御することができる。
【0022】
次に、無線装置100の動作を説明する。
【0023】
スイッチ30が開放されている場合には、スロット20の長手方向の長さがλ/2であるので、伝播波長λの電磁波がスロット20において共振する。アンテナ40においても伝播波長λの電磁波が共振する。アンテナ40はスロット20には位置されているので、このときにアンテナ40とスロット20とが強く電磁結合する。従って、アンテナ40とスロット20との両方から電磁波が放射され、その結果、無指向性の放射パターンが得られる。
【0024】
一方で、スイッチ30が閉じている場合には、スロット20の長手方向の長さが電気的にλ/4になる。従って、伝播波長λの電磁波はスロット20において共振しないので、アンテナ40とスロット20とは電磁結合しない。あるいは、それらの電磁結合は非常に弱い。これによって、アンテナ40のみから電磁波が放射される。アンテナ40は、上述の通り、地板10の表面または裏面のいずれか一方に設けられているので、指向性の放射パターンが得られる。
【0025】
本実施の形態は、スイッチ30を制御することによって、アンテナ40とスロット20との電磁結合の度合を変化させることができる。無指向性の放射パターンと指向性の放射パターンのいずれかの放射パターンを選択することができる。
【0026】
例えば、電磁波が様々な方向からアンテナ40に到来する場合には、スイッチ30を開放して放射パターンを無指向性にする。一方で、散乱体がアンテナ40の近傍に存在する場合には、スイッチ30を閉じることによって、放射パターンを指向性にする。これにより、無線装置100は、散乱体に対して電磁波を放射しないように放射パターンを選択することができる。
【0027】
本実施の形態によれば、アンテナ40の近傍に散乱体が存在する場合および存在しない場合のそれぞれにおいて、アンテナの利得および送信波の放射効率を向上させた放射パターンを得ることができる。その結果、RSSIがより高くなるように放射パターンを選択することができるので、無線装置の通信品質が向上する。
【0028】
本実施の形態において、アンテナ40は、地板10の表面および裏面のいずれか一方の面(以下、配置面という)に配置されている。よって、指向性の放射パターンを選択した場合には、放射パターンは配置面が向いている方向へ指向性を有する。これは、地板10の表面および裏面のうち配置面と反対の面に散乱体が接近することを想定しているからである。例えば、ユーザが携帯電話機で通話をするときには、通常、ユーザは自己の頭をスピーカまたはマイクが向いている面に近接させる。従って、アンテナ40は、地板に関し、マイクまたはスピーカの向きとは反対方向を向いている面に配置される(図11を参照)。
【0029】
このように、地板10の表面および裏面のうち散乱体が接近する面は、予測可能であるので、この予測に基づいて、アンテナ40の配置面を決定すればよい。
【0030】
本実施の形態による無線装置100は、アンテナを1本だけ備えている。よって、構成部品点数が増えず、無線装置を小型化することができる。また、無線装置100は、低コストで製造することができる。
【0031】
(第2の実施の形態)
図2は、本発明に係る第2実施の形態による無線装置200の概略図である。本実施の形態は、2周波共用スロット22および2周波共用アンテナ42を備えている点で第1の実施の形態と異なる。2周波共用スロット22および2周波共用アンテナ42は、互いに周波数帯の異なる電磁波のそれぞれが共振するように構成されている。これらの電磁波のうち、第1の周波数帯にある第1の電磁波の伝播波長をλとし、第2の周波数帯にある第2の電磁波の伝播波長をλとする。
【0032】
2周波共用スロット22は、スロット構成部22aとスロット構成部22bから成る。スロット構成部22aの一端にスロット構成部22bの中心が垂直に結合されている。それにより、スロット構成部22aおよび22bは一体の溝として2周波共用スロット22を構成する。
【0033】
スロット構成部22aおよび22bの長さをそれぞれLaおよびLbとする。λ=2*La、λ=2*(La+Lb/2)を満たすようにLaおよびLbは設計される。これにより、2周波共用スロット22において、第1および第2の電磁波の両方が共振することができる。
【0034】
本実施の形態において2周波共用スロット22は、図1に示すようにT字型に形成されている。しかし、2周波共用スロット22は、T字型に限定されず、互いに周波数帯の異なる電磁波が共振できればよい。例えば、2周波共用スロット22は、Y字状またはH字状等であってもよい。スロット20は、メアンダ状であってもよく、長手方向の辺を途中で折り曲げてL字型やコの字型などの形状にすることもできる。このようにスロット20を変形させることによって、無線装置の設計における自由度が大きくなる。さらに、スロット20の間隙に誘電体を設けることによってスロット20をより小さくすることができる。
【0035】
次に、スイッチ30の配置について説明する。スイッチ30が閉じたときに、第1の電磁波を効果的に打ち消すためには、スイッチ30は、スロット構成部22aの一端Eからλ/4だけ離れた位置(第1の位置とする)、即ち、スロット構成部22aの中心に配置する。一方で、第2の電磁波を効果的に打ち消すためには、スイッチ30は、スロット構成部22aの一端Eからλ/4だけ離れた位置(第2の位置とする)に配置する。1つのスイッチ30を用いて、第1および第2の電磁波の両方を最も効果的に打ち消すためには、第1の位置と第2の位置との中間にスイッチ30を配置すればよい。即ち、本実施の形態において、スイッチ30は、スロット構成部22aの一端Eから(λ+λ)/4だけ離れた位置(第3の位置とする)に配置されている。第3の位置は、スロット構成部22aの中心から約Lb/4だけスロット構成部22b側へずれた位置と換言できる。スイッチ30をこのように配置することによって、スイッチ30が閉じているときに、第1および第2の電磁波の両方を効果的に打ち消すことができる。
【0036】
スイッチ30を設ける位置は2周波共用スロット22の形状に応じて変更することができる。
【0037】
2周波共用アンテナ42は、空間中を伝搬してきた第1および第2の周波数帯の電磁波を受信し、かつ、送受信器50から送信されてきた第1または第2の周波数帯の信号を空間中に電磁波として放射する。2周波共用共振アンテナ42は、モノポールアンテナや逆Fアンテナなどの線状アンテナであってもよく、スロットアンテナやパッチアンテナなどの平面アンテナであってもよい。2周波共用アンテナ42の配置は、第1の実施の形態におけるアンテナ40と同じでよい。
【0038】
本実施の形態は、第1の実施の形態と同様の効果を有する。さらに、本実施の形態によれば、第1および第2の電磁波の両方について、無指向性と指向性のいずれかの放射パターンを選択することができる。その結果、第1および第2の電磁波の両方についてRSSIがより高くなるように放射パターンを選択することができるので、無線装置の通信品質が向上する。
【0039】
本実施の形態では、2周波共用スロットおよび2周波共用アンテナを用いたが、3周波以上の電磁波を共用することができるスロットおよびアンテナを用いてもよい。
【0040】
(第3の実施の形態)
図3は、本発明に係る第3実施の形態による無線装置300の概略図である。本実施の形態は、2周波共用アンテナ42および複数のスイッチ30a、30bを備えている点で第1の実施の形態と異なる。
【0041】
本実施の形態において、2周波共用アンテナ42は、第1および第3の周波数帯の電磁波を送信または受信する。第1の周波数帯にある第1の電磁波の伝播波長をλとし、第3の周波数帯にある第3の電磁波の伝播波長をλとする。λはλよりも小さい。
【0042】
スイッチ30a、30bは、いずれも第1の実施の形態におけるスイッチ30と同様の構成を有する。スイッチ30aは、アンテナ42の近傍にあるスロット20の一端E´からLc(Lc=λ/2)だけ離れた位置に配置されている。Lcは、スイッチ30bは、一端E´とスイッチ30aとの間のほぼ中心に配置されている。
【0043】
スロット20の長さはLa(La=λ/2)である。よって、スイッチ30aおよび30bの両方が開放されている場合(ケース1)には、スロット20において、第1の電磁波が共振する。これにより、スロット20とアンテナ42とは第1の周波数帯の信号に関して強く電磁結合する。従って、第1の周波数帯の信号の放射パターンは無指向性となり、第3の周波数帯の信号の放射パターンは指向性となる。
【0044】
スイッチ30aが閉じており、スイッチ30bが開放されている場合(ケース2)には、スロット20のうち、一端E´からスイッチ30aまでの部分において第3の電磁波が共振する。これにより、スロット20とアンテナ42とは第3の周波数帯の信号に関して強く電磁結合する。従って、第1の周波数帯の信号の放射パターンは指向性となり、第3の周波数帯の信号の放射パターンは無指向性となる。
【0045】
スイッチ30aおよび30bの両方が閉じている場合(ケース3)には、第1および第3の電磁波の両方ともに共振しない。これにより、スロット20とアンテナ42との電磁結合は第1および第3の周波数帯のいずれの信号に関しても弱くなる。従って、第1および第3の周波数帯の信号の放射パターンはいずれも指向性となる。
【0046】
本実施の形態は、第1の実施の形態と同様の効果を有する。さらに、本実施の形態によれば、上述のケース2のように、互いに周波数帯の異なる信号の一方のみを、スロットにおいて共振させることができる。従って、本実施の形態は、互いに周波数帯の異なる信号のうち一方のみの放射パターンを変更させることができる。
【0047】
(第4の実施の形態)
図4は、本発明に係る第4実施の形態による無線装置400の概略図である。本実施の形態は、可変整合回路70を備えている点で第1の実施の形態と異なる。可変整合回路70は、地板10に搭載され、アンテナ40と送受信器50との間に接続されている。
【0048】
アンテナ40の入力インピーダンスは、アンテナ40の近傍に散乱体が存在するか否か、あるいは、スイッチ30の開閉によって変動する。このような場合に、可変整合回路70は、制御回路60の制御を受けて自身のインピーダンスを変更する。それによって、可変整合回路70は、アンテナ40と送受信器50との間のインピーダンスを整合させることができる。
【0049】
次に、スイッチ30および可変整合回路70の回路構成を詳細に説明する。
【0050】
図5(A)は、スイッチ30の回路構成の具体例を示す図である。 スイッチ30は、3つのキャパシタC1、1つのインダクタL、2つのインダクタL1および可変容量ダイオードDから成る。端子aおよび端子bは、第1の基板領域および第2の基板領域に接続されている。端子cは制御回路60に接続されている。
【0051】
図5(B)は、端子aと端子bとの間に高周波信号が与えられた場合における図5(A)の等価回路を示している。図5(C)は、端子aと端子bとの間に直流信号が与えられた場合における図5(A)の等価回路を示している。高周波信号に対して、キャパシタC1は短絡され、インダクタL1は開放される(図5(B)参照)。よって、送信または受信される無線周波数帯の信号が制御回路60に入力されない。
【0052】
一方、直流信号に対しては、キャパシタC1は開放され、インダクタL1は短絡される(図5(C)参照)。よって、制御回路60が発生する直流電圧が無線送受信器50へ印加されない。
【0053】
可変容量ダイオードDは制御回路60によって印加される逆バイアス電圧に比例してキャパシタンスCを発生する。図5(B)に示す回路の端子aと端子bとの間のインピーダンスは、1/(jωC+1/jωL) と表せる。ここで、ωは角周波数、CおよびLは可変容量ダイオードDのキャパシタンスおよびインダクタンスである。
【0054】
制御回路60が可変容量ダイオードDに逆バイアス電圧を印加していないときに、jωC+1/jωL=0を満たすようにCおよびLを選択すると、端子aとbとの間のインピーダンスは無限大になる。即ち、スイッチ30は開放状態になる。
【0055】
制御回路60が可変容量ダイオードDに逆バイアス電圧を印加しているときに、C>>L となるようにキャパシタンスCおよびインダクタンスLを選択すると、端子aとbとの間のインピーダンスはほぼゼロになる。即ち、スイッチ30は短絡状態になる。このように、スイッチ30は高周波信号をスイッチングすることができる。
【0056】
図6(A)は可変整合回路70の回路構成の具体例を示す図である。可変整合回路70は、5つのキャパシタC1、4つのインダクタL1および2つの可変容量ダイオードD1、D2から成る。端子d1および端子d2は制御回路60に接続されている。端子e1および端子e2はアンテナ40に接続されている。端子f1および端子f2は送受信器50に接続されている。
【0057】
図6(B)は、端子e1、e2と端子f1、f2との間に高周波信号が与えられた場合における図6(A)の等価回路である。図6(C)は、端子d1と端子d2に直流信号が与えられた場合における図6(A)の等価回路である。高周波信号に対して、キャパシタC1は短絡され、インダクタL1は開放される(図6(B)参照)。よって、送信または受信される無線周波数帯の信号が制御回路60に入力されない。
【0058】
一方、直流信号に対しては、キャパシタC1は開放され、インダクタL1は短絡される(図6(C)参照)。よって、制御回路60が発生する直流電圧がアンテナ40または無線送受信器50へ印加されない。
【0059】
可変容量ダイオードD1およびD2は、制御回路60によって印加される逆バイアス電圧に比例してそれぞれキャパシタンスC´およびCを発生する。
【0060】
仮に、送受信器50が50Ω系の入出力線路で構成されているとする。図6(B)に示す破線Aからアンテナ40へのインピーダンスが50Ωでない場合であっても、キャパシタンスC´およびCを調節することにより破線Bからアンテナ40側を見たときのインピーダンスを50Ωにすることができる。これによって、アンテナ40と送受信器50とのインピーダンスを整合することができる。
【0061】
送受信器50が50Ω系以外の特性インピーダンスを有する入出力線路で構成されている場合であっても、可変整合回路70はアンテナ40と送受信器50とのインピーダンスを整合することができる。これにより、アンテナの設計の自由度が増える。例えば、アンテナを小型化または低姿勢化することができる。
【0062】
放射パターンの変更によりアンテナ40と送受信器50との間でインピーダンスの不整合が生じても、可変整合回路70はアンテナ40と送受信器50とのインピーダンスを整合することができる。その結果、無線装置の通信品質が向上する。
【0063】
第4の実施の形態において、可変整合回路70は第1の実施の形態に付加されている。しかし、可変整合回路70は第2または第3の実施の形態に付加されても第4の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0064】
次に、図7(A)から図10(B)は、アンテナ40の実施の形態を示す。これらの図面には、地板10、スロット20、スイッチ30およびアンテナ40のみが示され、他の構成要素は省略されている。
【0065】
図7(A)および図7(B)に示されているアンテナ40はモノポールアンテナ40aである。図7(A)は地板10の正面から見た図であり、図7(B)は地板10の右側面から見た図である。
【0066】
アンテナ40aはスロット20の長手方向に対して垂直に延びている。地板10の表面からアンテナ40aの高さは、約λ/100から約λ/10である。
【0067】
図8(A)および図8(B)に示されているアンテナ40は逆Fアンテナ40bである。図8(A)は地板10の正面から見た図であり、図8(B)は地板10の右側面から見た図である。
【0068】
アンテナ40bはスロット20の長手方向に対して垂直に延びている。地板10の表面からアンテナ40bの高さは、約λ/100から約λ/10である。
【0069】
図9(A)および図9(B)に示されているアンテナ40はスロットアンテナ40cである。図9(A)は地板10の正面から見た図であり、図9(B)は地板10の右側面から見た図である。
【0070】
スロットアンテナ40cは、スロット20に近接しており、スロット20の長手方向に対して平行に延びている。地板10の表面からアンテナ40cの高さは、約λ/100から約λ/10である。
【0071】
図10(A)および図10(B)に示されているアンテナ40はパッチアンテナ40dである。図10(A)は地板10の正面から見た図であり、図10(B)は地板10の右側面から見た図である。
【0072】
アンテナ40dは、スロット20に近接しており、地板10の表面に対して平行に面している。地板10の表面からアンテナ40cの高さは、約λ/100から約λ/10である。
【0073】
アンテナ40aからアンテナ40dのいずれかを第1から第4の実施の形態に用いることによって、第1から第4の実施の形態はそれぞれの効果を得ることができる。尚、第3の実施の形態においては、アンテナ42にアンテナ40aからアンテナ40dのいずれかを適用する。
【0074】
図11は、図1に示す無線装置の具体例として携帯無線機500を示す。携帯無線機500は、無線装置100が備えた構成要素、音声変復調器(PCM(Pulse Code Modulation))80、スピーカ90およびマイク92を備えている。
【0075】
音声変復調器80は、送受信器50、制御回路60、スピーカ90およびマイク92に接続されている。音声変復調器80は、アンテナ40で受信され送受信器50において復調された信号を音声信号に復調する。また、音声変復調器80は、音声信号を変調して送受信器50に送出する。さらに、音声変復調器80は、音声信号の変調または復調を実行していることを示す変復調表示信号を制御回路60へ送信する。変復調表示信号は、単なるデジタル値でよい。例えば、変復調表示信号は、音声信号の変調または復調を実行しているときにハイであり、これらを実行していないときにロウでよい。
【0076】
スピーカ90は音声変復調器80によって復調された電気的な音声信号を音声に変換する。マイク92は音声を電気的な音声信号に変換し、これを音声変復調器80に送出する。
【0077】
制御回路60は、音声変復調器80から変復調表示信号を受信した場合に音声通話中であると判断し、スイッチ30を短絡する。逆に、制御回路60は、音声変復調器80から変復調表示信号を受信していない場合に音声通話が行われていないと判断し、スイッチ30を開放する。
【0078】
次に、携帯無線機500の送信時の動作を説明する。
【0079】
マイク92がユーザから発せられた音声を受信し、これを電気的な音声信号へ変換する。音声変復調器80が音声信号を変調し、さらに送受信機50がこれを無線周波数に変調する。送受信機50は、無線周波数の信号をアンテナ40によって送信する。
【0080】
次に、携帯無線機500の受信時の動作を説明する。
【0081】
送受信器50がアンテナ40を介して信号を受信する。送受信器50はこの信号を復調し、さらに音声変復調器80が復調された信号を電気的な音声信号に復調する。スピーカ90はこの電気的な音声信号を音声に変換して、ユーザに対して出力する。
【0082】
このように、ユーザが携帯無線機500で音声通話しているときには、制御回路60はスイッチ30を短絡する。それによって、アンテナ40は地板10に関してユーザの頭部とは反対側に指向性になる。
【0083】
アンテナ40は、地板10に関し、スピーカ90およびマイク92が向いている向きとは反対方向に向いている面に設けられている。これによって、携帯無線機500がユーザの頭部付近に保持して使用されたときに、アンテナ40は地板10に関してユーザの頭部とは反対側に位置することになる。その結果、アンテナ40は地板10に関してユーザの頭部とは反対側に指向性を有する。よって、音声通話中に携帯無線機500からユーザの頭部へ電磁波が放射されない。従って、放射パターンが乱れず、アンテナの利得が低下しない。電磁波がユーザの頭部に吸収されず、放射効率が低下しない。
【0084】
一方で、音声通話以外の通信、例えば、電子メールで通信しているときには、音声変復調器80が音声を変調または復調しないので、スイッチ30が開放される。従って、アンテナ40およびスロット20が電磁結合され、アンテナ40およびスロット20は無指向性になる。無指向性の放射パターンによって、携帯無線機500が高速で移動しているときであっても通信が途切れることがない。
【0085】
このように、携帯無線機500は、音声通話の場合とそれ以外の場合との両方においてアンテナの利得および放射効率を向上させる放射パターンを得ることができる。その結果、携帯無線機500の通信品質が向上する。
【0086】
携帯無線機500は、無線装置100に代えて、第2から第4の実施の形態による無線装置200から400を適用しても同様の効果を得ることができる。
【0087】
第1から第4の実施の形態は、RSSIによって散乱体を検出している。携帯無線機500は音声通話中か否かによって散乱体を検出している。
【0088】
しかし、アンテナ40の配置面とは反対の地板10の面側を受像するカメラを設け、このカメラによって散乱体を検出してもよい。さらに、散乱体と地板10との間に生じる静電容量の検出、無線装置を包む筐体と散乱体との接触の検出、並びに、音や赤外線など散乱体が発生するエネルギーの検出によっても、散乱体を検出することができる。
【0089】
【発明の効果】
本発明による無線装置は、アンテナ特性を劣化させることなく、従来よりも小型化することができ、低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1実施の形態による無線装置の概略図。
【図2】本発明に係る第2実施の形態による無線装置の概略図。
【図3】本発明に係る第3実施の形態による無線装置の概略図。
【図4】本発明に係る第4実施の形態による無線装置の概略図。
【図5】スイッチ30の回路構成を示す図。
【図6】可変整合回路70の回路構成の一例を示す図。
【図7】アンテナ40の実施の形態を示す図。
【図8】アンテナ40の実施の形態を示す図。
【図9】アンテナ40の実施の形態を示す図。
【図10】アンテナ40の実施の形態を示す図。
【図11】図1に示す無線装置の具体例として携帯無線機を示す図。
【符号の説明】
100 無線装置
10 地板
20 スロット
30 スイッチ
40 アンテナ
50 送受信器
60 制御回路

Claims (10)

  1. ある周波数帯の信号が共振するスロットを有し、該スロットを境として隣り合う複数の地板領域を含む地板と、
    前記スロットに配置され、前記複数の地板領域間を短絡または開放するスイッチと、
    前記スイッチが前記複数の地板領域間を短絡すると前記スロットと第1の強さで電磁結合し、開放すると前記スロットと前記第1の強さよりも強い第2の強さで電磁結合するアンテナであって、前記スロットの共振周波数と等しい共振周波数を有するアンテナと、
    前記アンテナを介して信号を送信または受信する送受信器と、
    前記送受信器が送信または受信する信号に基づいて前記スイッチを制御する制御回路とを備えた無線装置。
  2. 前記スロットの長手方向の長さは、前記スロットを伝播する電磁波の略2分の1波長であり、
    前記スイッチは、前記スロットの長手方向に延びている辺の略中間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
  3. 前記スロットは、互いに周波数帯の異なる2つの信号のそれぞれが共振する2周波共用スロットであり、
    前記アンテナは、前記2つの信号のそれぞれが共振する2周波共用アンテナであることを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
  4. 前記スイッチは複数設けられており、
    前記制御回路は、複数の前記スイッチの内少なくとも1つを切り替えることによって、前記スロットにおいて共振する信号の周波数帯を変更することを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
  5. 前記スロットの長手方向の長さは第1の信号の約2分の1波長であり、
    複数の前記スイッチのうち第1のスイッチは、前記第1の信号よりも波長の短い第2の信号の約2分の1波長だけ前記スロットの前記一端から離れた位置に設けられ、
    複数の前記スイッチのうち第2のスイッチは、前記スロットの前記一端と第1のスイッチとのほぼ中間に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の無線装置。
  6. 前記アンテナと前記送受信器との間に接続され、前記アンテナと前記送受信器との間のインピーダンスを整合する可変整合回路と、
    前記制御回路は、前記可変整合回路のインピーダンスを制御することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の無線装置。
  7. 音声を入力し電気的な音声信号へ変換するマイクと、
    電気的な音声信号を音声に変換し、この音声を出力するスピーカと、
    前記マイクおよび前記スピーカに接続され、前記音声信号を変調または復調する場合に音声通話が行われていることを示す変復調表示信号を前記制御装置へ送信する音声変復調器とをさらに備え、
    前記制御回路は前記変復調表示信号を受信することによって前記スイッチを短絡または開放することを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
  8. 前記アンテナは、前記地板の面のうち、前記マイクまたは前記スピーカの向きとは反対方向に向いている面に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の無線装置。
  9. 前記制御回路は、受信信号強度表示信号に基づいて前記スイッチを制御することを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
  10. ある周波数帯の信号が共振するスロットを境として隣り合う複数の地板領域を含む地板と、前記スロットに配置され、前記複数の地板領域間を短絡または開放するスイッチとを備え、前記スロットの共振周波数と等しい共振周波数を有するアンテナを介して信号を送信または受信する無線装置を用いた無線通信方法において、
    前記アンテナと前記スロットとを第1の強さで電磁結合させるために前記スイッチが前記複数の地板領域間を短絡するステップと、
    前記アンテナと前記スロットとを前記第1の強さよりも強い第2の強さで電磁結合させるために、前記スイッチが前記複数の地板領域間を開放するステップとを備えた無線通信方法。
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