JP3826728B2 - 半導体ウエハ用研磨パッド及びこれを備える半導体ウエハ用研磨複層体並びに半導体ウエハの研磨方法 - Google Patents

半導体ウエハ用研磨パッド及びこれを備える半導体ウエハ用研磨複層体並びに半導体ウエハの研磨方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体ウエハ用研磨パッド及びこれを備える半導体ウエハ用研磨複層体並びに半導体ウエハの研磨方法に関する。更に詳しくは、研磨性能を低下させることなく、光を透過させることができる半導体ウエハ用研磨パッド及びこれを備える半導体ウエハ用研磨複層体並びにこれらを用いた半導体ウエハの研磨方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体ウエハの研磨において、研磨の目的が達成され、その研磨を終了する研磨終点の決定は経験的に得られた時間を基準として行うことができる。しかし、被研磨面を構成する材質は様々であり、これらによって研磨時間は全て異なる。また、被研磨面を構成する材質は今後様々に変化することも考えられる。更に、研磨に使用するスラリーや研磨装置においても同様である。このため様々に異なる研磨において各々から全て研磨時間を得ることは非常に効率が悪い。これに対して、近年、例えば、特開平9−7985号公報及び特開2000−326220号公報等に開示されているような、被研磨面の状態を直接観測できる光学的な方法を用いた光学式終点検出装置及び方法に関して研究が進められている。
この光学式終点検出装置及び方法では、一般に、例えば、特表平11−512977号公報等に開示されているような終点検出用の光が透過できる硬質で均一な樹脂からなるスラリー粒子の吸収、輸送という本質的な能力を持たない窓を研磨パッドに形成し、この窓のみを通して被研磨面を観測している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の研磨パッドでは窓が本質的にスラリーの保持、排出能力を有さないため、窓を設けることで研磨パッドの研磨性能の低下や不均一化を生ずることが危惧される。また、そのため窓を大きく(環状に設ける等)したり、窓の数を増やすことは困難である。
本発明は、上記問題を解決するものであり、光学式終点検出装置を用いた半導体ウエハの研磨において、研磨性能を低下させることなく、終点検出用光を透過させることができる半導体ウエハ用研磨パッド及びこれを備える半導体ウエハ用研磨複層体並びに半導体ウエハの研磨方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、光学式終点検出装置を用いた研磨に使用される半導体ウエハ用研磨パッドについて検討したところ、従来のように、本質的にスラリーの保持、排出能力を有しない硬質均一な樹脂でなくても、透光性を有する透光性部材を窓として用いれば十分な透光性を確保でき、更には、研磨終点の検出が可能であることを見出した。また、窓を構成するマトリックス材中に水溶性粒子を分散・含有させることで研磨時にはスラリーの保持、排出能力を有するものとすることができることを見出し本発明を完成させた。
【0005】
本発明の半導体ウエハ用研磨パッド(以下、単に「研磨パッド」ともいう)は、表裏に貫通する貫通孔を備える研磨パッド用基体と、該貫通孔内に嵌合された透光性部材とを備え、該透光性部材は少なくとも一部は架橋重合体である非水溶性マトリックス材と、該非水溶性マトリックス材中に分散された水溶性粒子とを含有してなり、上記架橋重合体は、架橋された1,2−ポリブタジエンであることを特徴とする
【0006】
上記「研磨パッド用基体」は、通常、その表面にスラリーを保持し、更には、研磨屑を一時的に滞留させることができるものである。この研磨パッド用基体の透光性の有無は問わない。また、その平面形状は特に限定されず、例えば、円形や多角形(四角形等)とすることができる。また、その大きさも特に限定されない。
【0007】
また、研磨パッド用基体の表面には、上記のようにスラリーを研磨時に保持し、研磨屑を一時的に滞留させるために、微細な穴(以下、「ポア」という)や溝が少なくともこの研磨時までに形成されることが好ましい。即ち、研磨パッド用基体には予めポア及び/又は溝が形成されていてもよく(例えば、発泡体等)、研磨時に脱離してポア及び/又は溝を形成できるものであってよい。この後者としては、マトリッス材中に所定形状の水溶性部材(粒子形状、線形状等)が分散されたものを用いることができる。このような研磨パッド用基体は水系媒体との接触により表面にポア及び/又は溝が形成される。
【0008】
研磨パッド用基体を構成する材料は特に限定されず、種々の材料を用いることができるが、特に所定の形状及び性状への成形が容易であり、適度な弾力性を付与できること等から有機材料を用いることが好ましい。この有機材料としては、後述する透光性部材を構成するマトリックス材として適用される種々の材料を用いることができる。但し、研磨パッド用基体を構成する材料と、透光性部材のマトリックス材を構成する材料とは同一であっても異なっていてもよい。
【0009】
上記「貫通孔」は、研磨パッド用基体の表裏に貫通し、透光性部材が嵌合されるためのものである(但し、研磨パッドの側端部においては貫通孔はその一部が開放されている)。この貫通孔は完全に透光性部材により充填されていてもよく(図1等)、また、一部のみが透光性部材により充填されていてもよい(図2等)。この貫通孔の形状は特に限定されず、例えば、その開口部の平面形状は円形、扇形(円形又は環形を所定角度分切り取った形状)、多角形(正方形及び台形等)及び環形等とすることができる。また、貫通孔の断面形状は、例えば、T字形、逆T字形、四角形もしくはその他の形状とすることができる(図1〜図7参照、尚、各図における上方が研磨面側であるものとする)。このうち、特にT字形とすることが好ましい。
【0010】
この貫通孔の1つの大きさも特に限定されないが、通常、開口部が円形である場合は直径が20mm以上(通常、研磨パッドの半径の2/3以下)であることが好ましく、環状の貫通孔である場合にはその幅が20mm以上(通常、研磨パッドの半径の2/3以下)であることが好ましく、四角形である場合は縦30mm以上(通常、研磨パッドの半径の2/3以下)且つ横10mm以上(通常、研磨パッドの半径の2/3以下)であることが好ましい。上記よりも各貫通孔が小さくなると終点検出用光等の光線を確実に透過させることが困難となる場合がある。その他、貫通孔の数も特に限定されない。
【0011】
上記「透光性部材」は、研磨パッドの一部に設けられた透光性を有する部位をいう。
この透光性部材の形状は特に限定されないが、研磨パッドの研磨面側の平面形状は通常貫通孔の形状に依存し、貫通孔の形状と、通常、同一であり、前述の円形や多角形等とすることができる。また、その断面形状は特に限定されず、通常、少なくともその一部が貫通孔内に嵌合される形状である。例えば、図1〜図8に示すような断面形状とすることができる。
【0012】
また、この透光性部材は薄肉化させなくてもよいが、薄肉化させることもできる。薄肉化するとは、研磨パッド用基体の最大厚さよりも透光性部材の厚さを薄くすること(例えば、図2、図4、図5、図6及び図8等)、及び、透光性部材の光が透過する一部を透光性部材自身において薄く成形すること(例えば、図7等)の両方を含む。
透光性部材中に光を透過させた場合、その光の強度は透過する透光性部材の厚さの2乗に比例して減衰する。従って、透光性部材を薄肉化することで、飛躍的に透光性を向上させることができる。例えば、光学式に終点検出を行う研磨に用いる研磨パッドにおいて、例えこの透光性部材が研磨パッドの他部と同じ厚さでは終点の検出に十分な強度の光が得られ難い場合であっても、薄肉化させることにより終点検出に十分な光の強度を確保することが可能とすることもできる。但し、この薄肉化させた透光性部材はその厚さが0.1mm以上(より好ましくは0.3mm以上、通常3mm以下)であることが好ましい。0.1mm未満では透光性部材の機械的強度を十分に確保することが困難となる傾向にある。
【0013】
尚、薄肉化により生じる貫通孔内の透光性部材が存在しない部位である凹部(図2参照)や、透光性部材の凹部(図7参照)は、研磨パッドの表裏どちらの側に形成されてもよいが、裏面に形成されることで研磨性能に影響なく透光性部材の厚さを薄くすることができる。
【0014】
この透光性部材の数は特に限定されず、1つであっても、2つ以上であってもよい。また、その配置も特に限定されない。例えば、1つの透光性部材を備える場合には図9及び図10のように配置することができる。更に、2つ以上の透光性部材を備える場合には同心円状(図11)等に配列することもできる。
【0015】
また、透光性部材が有する透光性とは、通常、透光性部材の厚さを2mmとした場合に、波長100〜3000nmの間のいずれかの波長における透過率が0.1%以上であるか、又は波長100〜3000nmの間のいずれかの波長域における積算透過率が0.1%以上であることが好ましい。この透過率又は積算透過率は1%以上であることが好ましく、2%以上であることがより好ましい。但し、この透過率又は積算透過率は必要以上に高い必要はなく、通常、50%以下であり、更には30%以下であってもよく、特に20%以下であってもよい。
【0016】
但し、光学式終点検出装置を用いた研磨に用いる研磨パッドにおいては、更に、特に終点検出用光としての使用頻度が高い領域である400〜800nmにおける透過率が高いことが好ましい。このため厚さを2mmとした場合に、波長400〜800nmの間のいずれかの波長における透過率が0.1%以上(より好ましくは1%以上、更に好ましくは2%以上、特に好ましくは3%以上、通常50%以下)であるか、又は波長400〜800nmの間のいずれかの波長域における積算透過率が0.1%以上(より好ましくは1%以上、更に好ましくは2%以上、特に好ましくは3%以上、通常50%以下)であることが好ましい。
但し、この透過率又は積算透過率は必要以上に高い必要はなく、通常、20%以下であり、更には10%以下であってもよく、特に5%以下であってもよい。
【0017】
尚、この透過率は厚さ2mmの試験片に所定の波長における吸光度が測定できるUV吸光度計等の装置を用いて、各波長における透過率を測定した時の値である。積算透過率についても、同様に測定した所定の波長域における透過率を積算して求めることができる。
【0018】
上記「非水溶性マトリックス材」(以下、単に「マトリックス材」ともいう)は透光性部材の形状を維持し、後述する水溶性粒子を透光性部材中に保持する役目を有する。
このマトリックス材としては、透光性を付与できる熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及びエラストマー等を単独又は組み合わせて用いることが好ましい。このマトリックス材は、透光性(可視光の透過の有無は問わない)を有すれば、それ自体が透明(半透明を含む)である必要はないが、透光性はより高いことが好ましく、更には透明であることがより好ましい。
【0019】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂{(メタ)アクリレート系樹脂等}、ビニルエステル樹脂(アクリル樹脂を除く)、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂等を挙げることができる。また、上記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン−ウレア樹脂及びウレア樹脂、ケイ素樹脂等を挙げることができる。
【0020】
更に、このようなエラストマーとしては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、その水素添加ブロック共重合体(SEBS)等のスチレン系エラストマー、ポリオレフィンエラストマー(TPO)、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)、ポリアミドエラストマー(TPAE)、ジエン系エラストマー(1,2−ポリブタジエン等)などの熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂系エラストマー、フッ素樹脂系エラストマー等を挙げることができる。また、ゴムとしては、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、イソブチレン・イソプレンゴム、アクリルゴム、アクロルニトリル・ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等を挙げることができる。
【0021】
これらのマトリックス材は、酸無水物基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基及びアミノ基等の少なくとも1種により変性されていてもよい。変性により後述する水溶性粒子や、砥粒、水系媒体等との親和性等を調節することができる。また、これらのマトリックス材は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
また、マトリックス材は架橋重合体であるか又は非架橋重合体であるかは特に限定されないが、その少なくとも一部(2種以上の材料の混合物からなり、その少なくとも1種の少なくとも1部が架橋重合体である場合、及び、1種の材料からなり、その少なくとも1部が架橋重合体である場合を含む)は架橋重合体である。
【0023】
マトリックス材の少なくとも一部が架橋構造を有することによりマトリックス材に弾性回復力を付与することができる。従って、研磨時に研磨パッドにかかるずり応力による変位を小さく抑えることができ、研磨時及びドレッシング時にマトリックス材が過度に引き延ばされ塑性変形によりポアが埋まることを防止できる。また、研磨パッド表面が過度に毛羽立つことも防止できる。このため、研磨時のスラリーの保持性が良く、ドレッシングによるスラリーの保持性の回復も容易であり、更には、スクラッチの発生も防止できる。
【0024】
上記のような架橋重合体は、1,2−ポリブタジエンを架橋させた重合体である。
【0025】
なお、本発明では、架橋重合体の中でも、十分な透光性を付与でき、多くのスラリーに含有される強酸や強アルカリに対して安定であり、更には、吸水による軟化も少ないことから、架橋された1,2−ポリブタジエンを用いるのである。また、この架橋された1,2−ポリブタジエンをブタジエンゴムやイソプレンゴム等の他のゴムとブレンドして用いることができる。更には、マトリクス材として1,2−ポリブタジエンを単独で使用することもできる。
【0026】
このような少なくとも一部が架橋重合体であるマトリックス材では、JIS K 6251に準じ、マトリックス材からなる試験片を80℃において破断させた場合に、破断後に残留する伸び(以下、単に「破断残留伸び」という)を100%以下にできる。即ち、破断した後の試験片の標線間合計距離が破断前の標線間距離の2倍以下であるマトリックス材である。この破断残留伸びは30%以下(更に好ましくは10%以下、とりわけ好ましくは5%以下、通常0%以上)であることがより好ましい。破断残留伸びが100%を超えて大きくなるにつれ、研磨時及び面更新時に研磨パッド表面から掻き取られた又は引き延ばされた微細片がポアを塞ぎ易くなる傾向にある。
【0027】
尚、破断残留伸びとは、JIS K 6251「加硫ゴムの引張試験方法」に準じて、試験片形状ダンベル状3号形、引張速度500mm/分、試験温度80℃で引張試験において試験片を破断させた場合に、破断して分割された試験片の各々の標線から破断部までの合計距離から、試験前の標線間距離を差し引いた伸びである。尚、試験温度については、実際の研磨において摺動により達する温度が80℃程度であるため、この温度で行っている。
【0028】
上記「水溶性粒子」は、透光性部材中に分散されている。また、前述の様に研磨時に外部から供給される水系媒体との接触によりポアを形成することができる粒子である。
この水溶性粒子の形状は特に限定されないが、通常、より球形に近いことが好ましく、更には球形であることが好ましい。また、各々の水溶性粒子はより形が揃っていることが好ましい。これにより形成されるポアの性状が揃い、良好な研磨を行うことができる。
【0029】
また、この水溶性粒子の大きさも特に限定されないが、通常、0.1〜500μm(より好ましくは0.5〜100μm、更に好ましくは1〜80μm)の粒径であることが好ましい。粒径が0.1μm未満であると、ポアの大きさが砥粒より小さくなることがあり、ポアに十分に砥粒が保持できないことが生じる場合があり好ましくない。一方、500μmを超えると、形成されるポアの大きさが過大となり透光性部材の機械的強度及び研磨速度が低下する傾向にある。
【0030】
更に、透光性部材中に含まれる水溶性粒子の量は、特に限定されないが、通常、マトリックス材と水溶性粒子との合計を100体積%とした場合に、水溶性粒子は5〜90体積%(より好ましくは15〜60体積%、更に好ましくは20〜40体積%)であることが好ましい。水溶性粒子の含有量が5体積%未満であると十分な量のポアが形成されず、研磨速度が低下する傾向にある。一方、90体積%を超えると、透光性部材の表面に露出している水溶性粒子だけでなく、内部に存在する水溶性粒子までが意図せずに溶解又は膨潤することを防止でき難くなる傾向にある。従って、研磨時に透光性部材の硬度及び機械的強度を適正な値に保持し難くなる。
【0031】
このような水溶性粒子としては特に限定されず、種々の材料を用いることができるが、例えば、有機系水溶性粒子及び無機系水溶性粒子を用いることができる。有機系水溶性粒子としては、デキストリン、シクロデキストリン、マンニット、糖類(乳糖等)、セルロース類(ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース等)、でんぷん、蛋白質、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキサイド、水溶性の感光性樹脂、スルフォン化ポリイソプレン、スルフォン化ポリイソプレン共重合体等から形成されたものを挙げることができる。更に、無機系水溶性粒子としては、酢酸カリウム、硝酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、リン酸カリウム、硝酸マグネシウム等から形成されたものを挙げることができる。これらの水溶性粒子は、上記各材料を単独又は2種以上を組み合わせて含有してもよい。更に、所定の材料からなる1種の水溶性粒子であってもよく、異なる材料からなる2種以上の水溶性粒子であってもよい。
【0032】
また、水溶性粒子は、透光性部材の表面に露出したもののみが水溶し、表出することなく透光性部材内に存在するものは吸湿及び膨潤しないことが好ましい。このため、水溶性粒子には最外部の少なくとも一部に吸湿を抑制するエポキシ樹脂、ポリイミド、ポリアミド及びポリシリケート等から構成される外殻を形成してもよい。
【0033】
この水溶性粒子は、ポアを形成する機能以外にも、透光性部材の押し込み硬さを、研磨パッドの他部と整合させる機能を有する。研磨パッドは、研磨時に付加する圧力を大きくし、研磨速度を向上させ、高い平坦性を得るためにショアーD硬度を研磨パッドの全体において35〜100とすることが好ましい。しかし、所望のショアーD硬度をマトリックス材の材質からのみ得るとは困難であることも多く、このような場合は、水溶性粒子を含有させることでポアを形成する以外にショアーD硬度を研磨パッドの他部と同程度に向上させることが可能となる。このような理由から水溶性粒子は、研磨パッド内において十分な押し込み硬さを確保できる中実体であることが好ましい。
【0034】
このような水溶性粒子を製造時にマトリックス材中に分散させる方法は特に限定されないが、通常、マトリックス材、水溶性粒子及びその他の添加剤等を混練して得る。この混練においては、マトリックス材は加工し易いように加熱されて混練されるが、この時の温度において水溶性粒子は固体であることが好ましい。固体であることにより、マトリックス材との相溶性に関わらず水溶性粒子を前記の好ましい平均粒径を呈する状態で分散させ易くなる。従って、使用するマトリックス材の加工温度により、水溶性粒子の種類を選択することが好ましい。
【0035】
また、透光性部材には、マトリックス材及び水溶性粒子以外にも製造時に必要に応じて添加されるマトリックス材と水溶性粒子との親和性並びに分散性を向上させるための相溶化剤(酸無水物基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、オキサゾリン基及びアミノ基等により変性された重合体、ブロック共重合体及びランダム共重合体等)、種々のノニオン系界面活性剤、及び、カップリング剤等やこれらの残差を含有していてもよい。
【0036】
更に、透光性部材だけでなく、本発明の研磨パッド全体には、従来よりスラリーに含有されている砥粒、酸化剤、アルカリ金属の水酸化物及び酸、pH調節剤、界面活性剤、スクラッチ防止剤等の少なくとも1種を透光性を維持できる範囲で含有させることができる。
これらの他、更に、充填剤、軟化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤等の各種の添加剤を含有させることができる。特に、充填材としては炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレー等の剛性を向上させる材料、及び、シリカ、アルミナ、セリア、ジルコニア、チタニア、二酸化マンガン、三酸化二マンガン、炭酸バリウム等の研磨効果を備える材料等を用いることができる。
【0037】
一方、本発明の研磨パッドの表面(研磨面)には使用済みスラリーの排出性を向上させる目的等で必要に応じて溝及びドットパターンを所定の形状で形成することができる。このような溝及びドットパターンを必要とする場合は、上記の透光性部材の薄肉化により生じる研磨パッドからの凹みを表面側に形成することで得ることもできる。
更に、この研磨パッドの形状は特に限定されないが、通常は、研磨パッド用基体の形状に依存し、例えば、円形(円盤状等)や多角形{四角形等(ベルト状、ローラー状)}とすることができる。また、その大きさも特に限定されないが、例えば、円盤状の場合には直径500〜900mmとすることができる。
【0038】
尚、本明細書でいう「スラリー」とは少なくとも砥粒を含有する水系分散体を意味するが、研磨の際に外部から供給されるのはスラリーであってもよく、また、砥粒等を含有しない水系媒体のみであってもよい。水系媒体のみが供給される場合は、例えば、研磨パッド内から放出された砥粒等と水系媒体とが研磨の過程で混合されることによりスラリーが形成される。
【0039】
本発明の半導体ウエハ用研磨複層体(以下、単に「研磨複層体」ともいう)は、本発明の半導体ウエハ用研磨パッドと、該半導体ウエハ用研磨パッドの裏面側に積層される支持層とを備え、積層方向に透光性を有することを特徴とする。
【0040】
上記「支持層」は、研磨パッドの研磨面とは反対面の裏面側に積層される層である。支持層の透光性の有無は問わないが、例えば、透光性部材の透光性と同等か又はそれを上回る透光性を有する材料からなる支持体を用いることで研磨複層体における透光性を確保することができる(この場合切り欠きは形成されていてもよいが、無くてもよい)。更に、透光性を有さない支持体を用いる場合には、光を通過させる一部を切り欠く等の方法により研磨複層体の透光性を確保できる。
【0041】
支持層の形状は特に限定されず、平面形状は、例えば、方形(四角形等)や円形等とすることができる。更に、通常、薄板状とすることができる。この支持層は、通常、研磨パッドと同じ平面形状とすることができる(切り欠きにより透光性を確保する部位を有する場合はその部位を除く)。
【0042】
更に、支持層を構成する材料は特に限定されず、種々の材料を用いることができるが、特に所定の形状及び性状への成形が容易であり、適度な弾力性を付与できること等から有機材料を用いることが好ましい。この有機材料としては、前述する透光性部材を構成するマトリックス材として適用される種々の材料を用いることができる。但し、支持層を構成する材料と、透光性部材のマトリックス材を構成する材料とは同一であっても異なっていてもよい。
【0043】
また、支持層の数は限定されず、1層であっても、2層以上であってもよい。更に、2層以上の支持層を積層する場合には各層は同じものであっても、異なるものであってもよい。また、この支持層の硬度も特に限定されないが、研磨パッドよりも軟質であることが好ましい。これにより、研磨複層体全体として、十分な柔軟性を有し、被研磨面の凹凸に対する適切な追随性を備えることができる。
【0044】
本発明の研磨パッド及びこれを備える研磨複層体は透光性部材を備えることによる透光性を有し、光を透過させることができる。このため、本発明の研磨パッド及びこれを備える研磨複層体を用いた研磨においては、光学的な方法を用いて被研磨面の研磨状況を観測することが可能である。即ち、例えば、光学式終点検出装置を用いたウエハの研磨に好適である。
【0045】
本発明の半導体ウエハの研磨方法は、本発明の研磨パッド又は研磨複層体を用いる半導体ウエハの研磨方法であって、該半導体ウエハの研磨終点の検出を光学式終点検出装置を用いて行うことを特徴とする。
【0046】
上記「光学式終点検出装置」は、研磨パッドの裏面側から透光性部材を通して研磨面側へ光を透過させ、被研磨体表面で反射された光から被研磨面の研磨終点を検出することができる装置である。その他の測定原理については、特に限定されない。
【0047】
本発明の半導体ウエハの研磨方法によると、研磨性能を低下させることなく終点検出を行うことができる。例えば、研磨パッド又は研磨複層体が円盤状である場合にこの円盤の中心と同心円状に透光性部材を環状に設けることで研磨終点を常時観測しながら研磨することも可能となる。従って、最適な研磨終点において確実に研磨を終えることができる。
本発明の半導体ウエハの研磨方法としては、例えば、図12に示すような研磨装置を用いることができる。即ち、回転可能な定盤2と、回転及び縦横への移動が可能な加圧ヘッド3と、スラリーを単位時間に一定量ずつ定盤上に滴下できるスラリー供給部5と、定盤の下方に設置された光学式終点検出部6とを備える装置である。
【0048】
この研磨装置では、定盤上に本発明の研磨パッド(研磨複層体)1を固定し、一方、加圧ヘッドの下端面に半導体ウエハ4を固定して、この半導体ウエハを研磨パッドに所定の圧力で押圧しながら押しつけるように当接させる。そして、スラリー供給部からスラリーを所定量ずつ定盤上に滴下しながら、定盤及び加圧ヘッドを回転させることで半導体ウエハと研磨パッドとを摺動させて研磨を行う。
【0049】
また、この研磨に際しては、光学式終点検出部から所定の波長又は波長域の終点検出用光R1を、定盤(定盤は自身が透光性を有するか、又は一部が切り欠かれることで終点検出用光が透過できる)の下方から透光性部材11を透過させて半導体ウエハの被研磨面に向けて照射する。そして、この終点検出用光が半導体ウエハの被研磨面で反射された反射光R2を光学式終点検出部で捉え、この反射光から被研磨面の状況を観測しながら研磨を行うことができる。
【0050】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[1]研磨パッドの製造
(1)透光性部材の製造
後に架橋されてマトリックス材となる1,2−ポリブタジエン(JSR株式会社製、品名「JSR RB830」)80体積%と、水溶性粒子としてβ−シクロデキストリン(横浜国際バイオ研究所株式会社製、品名「デキシーパールβ−100」)20体積%とを120℃に加熱されたニーダーにて混練した。その後、ジクミルパーオキサイド(日本油脂株式会社製、品名「パークミルD」)を、1,2−ポリブタジエンとβ−シクロデキストリンとの合計を100質量部として換算した0.2質量部を添加してさらに混練した後、プレス金型内にて170℃で20分間架橋反応させ、成形し、直径60cm、厚さ2mmの円盤形状の透光性部材のみからなる研磨パッドを得た。
【0051】
[2]透過率の測定
[1]の(1)で得られた透光性部材について、UV吸光度計(日立製作所株式会社製、形式「U−2010」)を用いて波長400〜800nmにおける透過率を異なる5地点において測定し、その平均値を算出した。その結果、5回の平均積算透過率は7%であった。また、633nm(一般的なHe−Neレーザーの波長)における透過率は6.5%であった。
【0052】
[3]研磨性能の測定
[1]の(1)で得られた透光性部材のみからなる研磨パッドを研磨機の定盤に装着し、定盤回転数50rpm、スラリー流量毎分100ccの条件において、熱酸化膜ウエハの研磨を行った。その結果、研磨速度は毎分980Åであった。また、市販の透光性を有さない発泡ポリウレタン製研磨パッド(ロデール・ニッタ社製、品名「IC1000」)を用いて、同様な条件で研磨を行ったところ、研磨速度は毎分950Åであった。
【0053】
この結果、[1]の(1)におけると同様にして所定の大きさに成形した透光性部材を、透光性を有さない発泡ポリウレタン製研磨パッドの一部に設けた貫通孔内に嵌合して得られる本発明の研磨パッドを得、この本発明の窓研磨パッドを用いて研磨を行った場合であっても、透光性を有さない発泡ポリウレタン製研磨パッドの研磨性能を低下させることはないことが分かる。
【0054】
【発明の効果】
本発明の研磨パッド及び研磨複層体並びに本発明の半導体ウエハの研磨方法によると、研磨性能を低下させることなく、光学式の終点検出を行うことができる。また、本発明の研磨パッド及び研磨複層体によると、その全体において常時研磨終点だけでなく、研磨状況の全てを光学的に観察することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】研磨パッド用基体及び透光性部材の形状及び各々の嵌挿状態の例を表す模式図である。
【図2】研磨パッド用基体及び透光性部材の形状及び各々の嵌挿状態の例を表す模式図である。
【図3】研磨パッド用基体及び透光性部材の形状及び各々の嵌挿状態の例を表す模式図である。
【図4】研磨パッド用基体及び透光性部材の形状及び各々の嵌挿状態の例を表す模式図である。
【図5】研磨パッド用基体及び透光性部材の形状及び各々の嵌挿状態の例を表す模式図である。
【図6】研磨パッド用基体及び透光性部材の形状及び各々の嵌挿状態の例を表す模式図である。
【図7】研磨パッド用基体及び透光性部材の形状及び各々の嵌挿状態の例を表す模式図である。
【図8】研磨パッド用基体及び透光性部材の形状及び各々の嵌挿状態の例を表す模式図である。
【図9】本発明の研磨パッドの一例の平面図である。
【図10】本発明の研磨パッドの他例の平面図である。
【図11】本発明の研磨パッドの一例の平面図である。
【図12】本発明の研磨パッド又は研磨複層体を用いる研磨装置を解説する模式図である。
【符号の説明】
1;研磨パッド(研磨複層体)、11;研磨パッド用基体、12;透光性部材、2;定盤、3;加圧ヘッド、4;半導体ウエハ、5;スラリー供給部、6;光学式終点検出部、R1;終点検出用光、R2;反射光。

Claims (5)

  1. 表裏に貫通する貫通孔を備える研磨パッド用基体と、該貫通孔内に嵌合された透光性部材とを備え、該透光性部材は少なくとも一部は架橋重合体である非水溶性マトリックス材と、該非水溶性マトリックス材中に分散された水溶性粒子とを含有してなり、上記架橋重合体は、架橋された1,2−ポリブタジエンであることを特徴とする半導体ウエハ用研磨パッド。
  2. 上記透光性部材は薄肉化されている請求項1に記載の半導体ウエハ用研磨パッド。
  3. 上記透光性部材は、厚さを2mmとした場合に波長400〜800nmの間のいずれかの波長における透過率が0.1%以上であるか、又は波長400〜800nmの間のいずれかの波長域における積算透過率が0.1%以上である請求項1又は2に記載の半導体ウエハ用研磨パッド。
  4. 請求項1乃至のうちのいずれか1項に記載の半導体ウエハ用研磨パッドと、該半導体ウエハ用研磨パッドの裏面側に積層される支持層とを備え、積層方向に透光性を有することを特徴とする半導体ウエハ用研磨複層体。
  5. 請求項1乃至のうちのいずれか1項に記載の半導体ウエハ用研磨パッド又は請求項記載の半導体ウエハ用研磨複層体を用いる半導体ウエハの研磨方法であって、該半導体ウエハの研磨終点の検出を光学式終点検出装置を用いて行うことを特徴とする半導体ウエハの研磨方法。
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