JP3826024B2 - アレーアンテナの制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数のアンテナ素子からなるアレーアンテナ装置の指向特性を変化させることができるアレーアンテナの制御方法に関し、特に、電子制御導波器アレーアンテナ装置(Electronically Steerable Passive Array Radiator (ESPAR) Antenna;以下、エスパアンテナという。)の指向特性を適応的に変化させることができるアレーアンテナの制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来技術のエスパアンテナは、例えば、従来技術文献1「T. Ohira et al., “Electronically steerable passive array radiator antennas for low-cost analog adaptive beamforming,” 2000 IEEE International Conference on Phased Array System & Technology pp. 101-104, Dana point, California, May 21-25, 2000」や特開2001−24431号公報において提案されている。このエスパアンテナは、無線信号が給電される励振素子と、この励振素子から所定の間隔だけ離れて設けられ、無線信号が給電されない少なくとも1個の非励振素子と、この非励振素子に接続された可変リアクタンス素子とから成るアレーアンテナを備え、上記可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変化させることにより、上記アレーアンテナの指向特性を変化させることができる。
【0003】
このエスパアンテナは、従来のディジタルビーム形成アンテナに比較して格段に簡易なハードウエア構成で可変指向性が得られるので、適応型アンテナの飛躍的な低コスト化や低消費電力化が期待できる。
【0004】
上記のエスパアンテナを制御するための方法として、例えば、特願2000−198560号の特許出願において、各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を最適化するために、ハミルトニアン法を用いて、指定した方位角のアンテナ利得を最大にするようなリアクタンス値を計算している(以下、第1の従来例という。)。しかしながら、この第1の従来例の方法では、受信信号の到来角度を予め与える必要があり、実用的ではなく、また、干渉波に対してヌルを向けることができないという問題点があった。
【0005】
この問題点を解決するために、例えば、特願2000−307548号の特許出願において、いわゆる「最急勾配法」を用いて、各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を順次所定のシフト量だけ摂動させ、各リアクタンス値に対する所定の評価関数値の傾斜ベクトルを計算し、計算された傾斜ベクトルに基づいて当該評価関数値が最大又は最小となるように、上記アレーアンテナの主ビームを所望波の方向に向けかつ干渉波の方向にヌルを向けるための各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を計算して設定する制御方法(以下、第2の従来例という。)が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この第2の従来例の制御方法を用いた場合において、最適解を追求することに比較的多くの試行を要するため、収束時間が長いという問題点があった。
【0007】
本発明の目的は以上の問題点を解決したエスパアンテナの制御方法を提供するものであって、従来例に比較して収束時間を大幅に短縮することができ、少ない計算量で、所望波に対して主ビームを向けかつ干渉波に対してヌルを向けるように適応制御することができるアレーアンテナの制御方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るアレーアンテナの制御方法は、無線信号を受信するための励振素子と、
上記励振素子から所定の間隔だけ離れて設けられた複数の非励振素子と、
上記複数の非励振素子にそれぞれ接続された複数の可変リアクタンス素子とを備え、
上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変化させることにより、上記複数の非励振素子をそれぞれ導波器又は反射器として動作させ、アレーアンテナの指向特性を変化させるアレーアンテナの制御方法において、
上記各可変リアクタンス素子が採り得るリアクタンス値の範囲を分割し、その分割後の各範囲の代表値をそれぞれ上記各可変リアクタンス素子に設定したときに、相手先の送信機から送信される無線信号に含まれる学習シーケンス信号を上記アレーアンテナにより受信したときの受信信号と、上記学習シーケンス信号と同一の信号パターンを有して発生された学習シーケンス信号との間の所定の相互相関係数を演算し、上記分割後の各範囲の代表値に対応する2つの相互相関係数のうち大きい相互相関係数に対応する上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を初期値として選択して設定する第1のステップと、
上記選択されたリアクタンス値に属する範囲を分割し、その分割後の各範囲の代表値をそれぞれ上記各可変リアクタンス素子に設定したときに上記相互相関係数を演算し、上記分割後の各範囲の代表値に対応する2つの相互相関係数のうち大きい相互相関係数に対応する上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を選択して設定する第2のステップとを含み、上記アレーアンテナの主ビームを所望波の方向に向けかつ干渉波の方向にヌルを向けるように制御することを特徴とする。
【0009】
上記アレーアンテナの制御方法において、好ましくは、上記第1のステップは、上記各可変リアクタンス素子が採り得るリアクタンス値の範囲を二分し、二分後の各範囲の中央値をそれぞれ上記各可変リアクタンス素子に設定したときに、相手先の送信機から送信される無線信号に含まれる学習シーケンス信号を上記アレーアンテナにより受信したときの受信信号と、上記学習シーケンス信号と同一の信号パターンを有して発生された学習シーケンス信号との間の所定の相互相関係数を演算し、上記二分後の各範囲の中央値に対応する2つの相互相関係数のうち大きい相互相関係数に対応する上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を初期値として選択して設定し、
上記第2のステップは、上記選択されたリアクタンス値に属する範囲を二分し、二分後の各範囲の中央値をそれぞれ上記各可変リアクタンス素子に設定したときに上記相互相関係数を演算し、上記二分後の各範囲の中央値に対応する2つの相互相関係数のうち大きい相互相関係数に対応する上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を選択して設定することを特徴とする。
【0010】
また、上記アレーアンテナの制御方法において、好ましくは、上記第2のステップの処理を所定の反復回数まで繰り返すステップをさらに含むことを特徴とする。
【0011】
さらに、上記アレーアンテナの制御方法において、好ましくは、上記第1のステップに代えて、所定の複数の放射パターンに対応する上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値をそれぞれ上記各可変リアクタンス素子に設定したときに上記相互相関係数を演算し、最大の相互相関係数を有する1つの放射パターンに対応する上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を初期値として選択して設定することを特徴とする。
【0012】
またさらに、上記アレーアンテナの制御方法において、上記複数の放射パターンは、好ましくは、
(a)上記励振素子から各非励振素子に向かう方向にそれぞれ最大利得を有する複数のセクタビームパターンと、
(b)上記励振素子から互いに隣接する各非励振素子間の中間位置に向かう方向にそれぞれ最大利得を有する複数のセクタビームパターンと、
(c)上記励振素子から互いに隣接しない1つ置きの複数の非励振素子に向かう方向にローブを有する複数の放射パターンと
のうちの少なくとも1組を含むことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態について説明する。
【0014】
図1は本発明に係る実施形態であるアレーアンテナの制御装置の構成を示すブロック図である。この実施形態のアレーアンテナの制御装置は、図1に示すように、1つの励振素子A0と、6個の非励振素子A1乃至A6とを備えたエスパアンテナで構成されたアレーアンテナ装置100と、適応制御型コントローラ20と、学習シーケンス信号発生器21と、適応制御型コントローラ20に接続された制御電圧テーブルメモリ30とを備えて構成される。
【0015】
ここで、適応制御型コントローラ20は、例えばコンピュータなどのディジタル計算機で構成され、復調器4による無線通信を開始する前に、相手先の送信機から送信される無線信号に含まれる学習シーケンス信号を上記アレーアンテナ装置100の励振素子A0により受信したときの受信信号y(t)と、上記学習シーケンス信号と同一の信号パターンを有して学習シーケンス信号発生器21で発生された学習シーケンス信号d(t)とに基づいて、後述する「高次元二分法」による適応制御処理を実行することにより上記アレーアンテナ装置100の主ビームを所望波の方向に向けかつ干渉波の方向にヌルを向けるための各可変リアクタンス素子12−1乃至12−6(以下、総称して、符号12を付す。)のリアクタンス値を計算して設定することを特徴としている。ここで、各可変リアクタンス素子12は、例えば可変容量ダイオードであり、適応制御型コントローラ20から逆バイアス電圧である制御電圧を示す制御電圧信号を各可変リアクタンス素子12に印加することにより、それらの各リアクタンス値を変化させて制御する。
【0016】
具体的には、適応制御型コントローラ20は、各可変リアクタンス素子12が採り得るリアクタンス値の範囲を二分し、二分後の各範囲の中央値をそれぞれ各可変リアクタンス素子12に設定したときに、相手先の送信機から送信される無線信号に含まれる学習シーケンス信号d(t)を当該アレーアンテナ装置100により受信したときの受信信号y(t)と、学習シーケンス信号発生器21で発生された学習シーケンス信号d(t)との間の所定の相互相関係数を演算し、二分後の各範囲の中央値に対応する2つの相互相関係数のうち大きい相互相関係数に対応する各可変リアクタンス素子12のリアクタンス値を初期値として選択して設定した後、選択されたリアクタンス値に属する範囲を二分し、二分後の各範囲の中央値をそれぞれ各可変リアクタンス素子12に設定したときに相互相関係数を演算し、二分後の各範囲の中央値に対応する2つの相互相関係数のうち大きい相互相関係数に対応する各可変リアクタンス素子12のリアクタンス値を選択して設定し、後者の処理を所定の反復回数まで繰り返すことにより、当該アレーアンテナ装置100の主ビームを所望波の方向に向けかつ干渉波の方向にヌルを向けるように制御する。
【0017】
なお、さらに好ましくは、各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を初期値として選択するときに、制御電圧テーブルメモリ30に格納された、後述する複数の放射パターンに対応する各可変リアクタンス素子12のリアクタンス値(制御電圧)をそれぞれ各可変リアクタンス素子12に設定したときに相互相関係数を演算し、最大の相互相関係数を有する1つの放射パターンに対応する各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を初期値として選択して設定する。
【0018】
図1において、アレーアンテナ装置100は、接地導体11上に設けられた励振素子A0及び非励振素子A1乃至A6から構成され、励振素子A0は、半径rの円周上に設けられた6本の非励振素子A1乃至A6によって囲まれるように配置されている。好ましくは、各非励振素子A1乃至A6は上記半径rの円周上に互いに等間隔を保って設けられる。各励振素子A0及び非励振素子A1乃至A6の長さは、例えば、所望波の波長λの約1/4になるように構成され、また、上記半径rもλ/4になるように構成される。本実施形態では、非励振素子の数を6本にしたが、それ以外の複数本でも構成することができる。励振素子A0の給電点は同軸ケーブル5を介して低雑音増幅器(LNA)1に接続され、また、非励振素子A1乃至A6はそれぞれ可変リアクタンス素子12に接続され、これら可変リアクタンス素子12のリアクタンス値は適応制御型コントローラ20からのリアクタンス値信号によって設定される。
【0019】
図2は、アレーアンテナ装置100の縦断面図である。励振素子A0は接地導体11と電気的に絶縁され、各非励振素子A1乃至A6は、可変リアクタンス素子12を介して、接地導体11に対して高周波的に接地される。可変リアクタンス素子12の動作を説明すると、例えば励振素子A0と非励振素子A1乃至A6の長手方向の長さが実質的に同一であるとき、例えば、可変リアクタンス素子12−1がインダクタンス性(L性)を有するときは、可変リアクタンス素子12−1は延長コイルとなり、非励振素子A1乃至A6の電気長が励振素子A0に比較して長くなり、反射器として働く。一方、例えば、可変リアクタンス素子12−1がキャパシタンス性(C性)を有するときは、可変リアクタンス素子12−1は短縮コンデンサとなり、非励振素子A1の電気長が励振素子A0に比較して短くなり、導波器として働く。また、他の可変リアクタンス素子12−2乃至12−6が接続された非励振素子A2乃至A6についても同様に動作する。
【0020】
ここで、各可変リアクタンス素子12−1乃至12−6は、上述のように、例えば可変容量ダイオードであって、それに印加する逆バイアス電圧を変化することによりリアクタンス値を変化させることができる。
【0021】
従って、図1のアレーアンテナ装置100において、各非励振素子A1乃至A6に接続された可変リアクタンス素子12−1乃至12−6のリアクタンス値を変化させることにより、アレーアンテナ装置100の平面指向性特性を変化させることができる。
【0022】
図1のアレーアンテナの制御装置において、アレーアンテナ装置100は無線信号を受信し、上記受信された信号は同軸ケーブル5を介して低雑音増幅器(LNA)1に入力されて増幅され、次いで、ダウンコンバータ(D/C)2は増幅された信号を所定の中間周波数の信号(IF信号)に低域変換する。さらに、A/D変換器3は低域変換されたアナログ信号をディジタル信号にA/D変換し、そのディジタル信号を適応制御型コントローラ20及び復調器4に出力する。
【0023】
次いで、適応制御型コントローラ20は、詳細後述するように、各可変リアクタンス素子12が採り得るリアクタンス値の範囲を二分し、二分後の各範囲の中央値をそれぞれ各可変リアクタンス素子12に設定したときに上記相互相関係数を演算し、二分後の各範囲の中央値に対応する2つの相互相関係数のうち大きい相互相関係数に対応する各可変リアクタンス素子12のリアクタンス値を初期値として選択して設定した後、選択されたリアクタンス値に属する範囲を二分し、二分後の各範囲の中央値をそれぞれ各可変リアクタンス素子12に設定したときに相互相関係数を演算し、二分後の各範囲の中央値に対応する2つの相互相関係数のうち大きい相互相関係数に対応する各可変リアクタンス素子12のリアクタンス値を選択して設定し、後者の処理を所定の反復回数まで繰り返すことにより、当該アレーアンテナ装置100の主ビームを所望波の方向に向けかつ干渉波の方向にヌルを向けるように制御する。一方、復調器4は、入力される受信信号y(t)に対して復調処理を行ってデータ信号である復調信号を出力する。なお、適応制御型コントローラ20において用いる相互相関係数Rは次式で定義される。
【0024】
【数1】
【0025】
ここで、上付き文字Hは複素共役転置を示す。この相互相関係数Rは、受信信号y(t)と、学習シーケンス信号d(t)との間の相互相関の度合いを示す係数であり、R=1であれば完全に一致する一方、R=0であれば、完全に不一致である。ここで、当該アレーアンテナ装置100の励振素子A0の単一ポートからの出力信号である受信信号y(t)は、調整可能なリアクタンス値の高次の非線形関数であることに留意する必要がある。
【0026】
さらに好ましくは、各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を初期値として選択するときに、制御電圧テーブルメモリ30に格納された、後述する複数の放射パターンに対応する各可変リアクタンス素子12のリアクタンス値(制御電圧)をそれぞれ各可変リアクタンス素子12に設定したときに相互相関係数を演算し、最大の相互相関係数を有する1つの放射パターンに対応する各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を初期値として選択して設定する。
【0027】
アレーアンテナ100で受信される無線信号を送信する送信局は、学習シーケンス信号発生器21で発生される所定の学習シーケンス信号と同一の信号パターンを有する学習シーケンス信号を含む所定のシンボルレートのディジタルデータ信号に従って、無線周波数の搬送波信号を、例えばBPSK、QPSKなどのディジタル変調法を用いて変調し、当該変調信号を電力増幅して受信局のアレーアンテナ装置100に向けて送信する。本実施形態においては、データ通信を行う前に、送信局から受信局に向けて学習シーケンス信号を含む無線信号が送信され、受信局では、適応制御型コントローラ20による適応制御処理が実行される。
【0028】
次いで、当該アレーアンテナ装置100に係る各種の信号の定式化について詳細に説明する。エスパアンテナであるアレーアンテナ装置100の受信信号y(t)は次式で表される。
【0029】
【数2】
y(t)=iTS(t)
【0030】
ここで、iは励振素子A0及び非励振素子A1乃至A6に誘起する電流分布を要素とする電流ベクトルであり、S(t)はアレーアンテナ装置100の受信信号ベクトルである。ここで、上添え字Tは転置を表す。
【0031】
電流ベクトルiは上記数2から分かるように、従来技術のアダティブアレーアンテナにおけるウエイトベクトルの役割を果たすが、エスパアンテナであるアレーアンテナ装置100においては電流分布を直接操作することができず、リアクタンス値を操作することにより間接的に電流分布を制御するため、電流ベクトルiはリアクタンス値の関数として次式のように表される。
【0032】
【数3】
i=vs(Z+X)−1u0
【0033】
ここで、Xは送信機の出力インピーダンスzs及び各素子のリアクタンス値を対角成分にもつ行列
【数4】
X=diag[zs,jx1,jx2,jx3,jx4,jx5,jx6]
であり、Zは素子間結合を含めたインピーダンス行列である。また、u0は単位ベクトル
【数5】
u0=[1,0,0,0,0,0,0,]
であり、xsは送信機の内部電圧(開放電圧)である。
【0034】
上記数4において各可変リアクタンス素子12のリアクタンス値を要素としてもつベクトルはリアクタンスベクトルと呼ばれ、次式のように表す。
【数6】
x=[x1,x2,x3,x4,x5,x6]
【0035】
次いで、このリアクタンスベクトルを制御する方法として、以下に詳述する高次元二分法を提案する。高次元二分法は、各可変リアクタンス素子12が採り得る値の範囲を二分し、それぞれの中央値にて相互相関係数Rを計算して高い相関が得られた側に最適解が存在すると判断する方法である。6素子それぞれに二分法を適用すると、適用前の1/26の領域を得る。この操作をリアクタンス値が二分割できなくなるまで繰り返し、最終的に得られたリアクタンス値の組を最終解とする。この高次元二分法における高次元とは、6個の可変リアクタンス素子12に対応する6個の次元であり、この6個の次元に対して各リアクタンス値の最適解を高次元二分法により求める。
【0036】
本発明者らが試作したアレーアンテナ装置100において可変リアクタンス素子12の可変容量ダイオードのリアクタンス値xmと制御電圧v及び電圧を操作するデジタル制御電圧値kvmには表1のような関係があり、この表1から求めたxmとkvmの関係式は次式で表される。
【0037】
【表1】
可変リアクタンス素子12の可変容量ダイオードにおけるxm及びkvmの関係
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
xm[Ω]: -4.77 -27.0 -49.2 -71.4 -93.6
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
v[V]: -0.5 *4.63 *9.75 *14.9 20
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
kvm: -2048 -1024 0 1023 2047
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
(注)*印は計算によって得た値である。
【0038】
【数7】
xm=−0.0217kvm−49.21(m=1,2,…,6)
【0039】
デジタル制御電圧値は−2048から2047までの整数値のみを採るので、kvmの範囲は4096=212となり1本の非励振素子(A1乃至A6のうちの1つ)に付き(12−1)回の二分法探索を行う。相互相関係数Rを計算するサンプル数をPとすると、6素子に対して二分法を適用する1巡回に付きP×2×6シンボルを要する。また、後述するように1順目には14シンボルを要する。したがって、14P+12P×10シンボルを上限として最終解を得ることができる。デジタル制御電圧値kvmの組を以降、
【数8】
kv=[kv1,kv2,kv3,kv4,kv5,kv6]
と定義する。
【0040】
高次元二分法によって得られる最終解は必ずしも最適解と一致するとは限らないが、システムの出力SINR要求諸元を満足する解ならば必ずしも最適解を必要としないという観点から収束速度に着目すると、高次元二分法は収束時間が比較的短いシステムにおいて有効である可能性がある。
【0041】
さらに、初期値の選択について詳細に説明する。高次元二分法では前述の手順で最終解が得られるが、単純に二分法を繰り返すだけでは、ヌル点が形成されにくい角度が存在することが分かった。それは各非励振素子A1乃至A6毎に相関が高い範囲を選択し、それらを組み合わせて次の領域とした場合には必ずしも干渉波到来方向にヌル点を形成していることにはならないからである。最初から最適解が存在する方向を誤ってしまうと、全く意味のない放射パターンを形成することになるため、その対策として最初にリアクタンス値の初期値を選択する方法を試みる。このために、以下に示す14個の初期値の放射パターンを用いる。
【0042】
まず、励振素子A0から非励振素子A1に向かう方向に最大利得を有する図6のセクタビームパターンはデジタル制御電圧値で次式で表される。
【数9】
kv=[2047,2047,-2048,-2048,-2048,2047]
従って、励振素子A0から各非励振素子A1乃至A6に向かう方向に最大利得を有するセクタビームパターンは6パターンあり、これらを使用する。
【0043】
次いで、励振素子A0から非励振素子A1,A2間の中間位置に向かう方向にそれぞれ最大利得を有するセクタビームパターンは図7のようになり、このセクタビームパターンはデジタル制御電圧値で次式で表される。
【数10】
kv=[2047,2047,-2048,-2048,-2048,-2048]
従って、励振素子A0から互いに隣接する各非励振素子(A1とA2,A2とA3,A3とA4,A4とA5,A5とA6,A6とA1)間の中間位置に向かう方向に最大利得を有するセクタビームパターンは6パターンあり、これらを使用する。
【0044】
さらに、図8に示すように、励振素子A0から互いに隣接しない1つ置きの3本の非励振素子A1、A3,A5に向かう方向に最大利得を有し、かつ当該1つ置きの3本の非励振素子A1,A3,A5の間に位置する3本の非励振素子A2,A4,A6に向かう方向にローブを有する放射パターンと、その放射パターンを60゜だけ回転させた放射パターンとの2つの放射パターンを使用する。これら14個の放射パターンを初期値として、表2のように14組のデジタル制御電圧値を用意して制御電圧テーブルメモリ30に予め格納する。この14組から最も高い相関が得られる組を初期値として選択して高次元二分法を開始する。
【0045】
【表2】
【0046】
表2において、放射パターン1乃至6は、励振素子A0から各非励振素子A1乃至A6に向かう方向に最大利得を有するセクタビームパターンであり、放射パターン7乃至12は、励振素子A0から互いに隣接する各非励振素子(A1とA2,A2とA3,A3とA4,A4とA5,A5とA6,A6とA1)間の中間位置に向かう方向に最大利得を有するセクタビームパターンであり、パターン13及び14はそれぞれ、励振素子A0から互いに隣接しない1つ置きの3本の非励振素子A1、A3,A5に向かう方向に最大利得を有し、かつ当該1つ置きの3本の非励振素子A1,A3,A5の間に位置する3本の非励振素子A2,A4,A6に向かう方向にローブを有する放射パターンと、その放射パターンを60゜だけ回転させた放射パターンである。
【0047】
なお、パターン13及び14はそれぞれ、励振素子A0から互いに隣接しない1つ置きの3本の非励振素子A1、A3,A5に向かう方向にローブを有する放射パターンと、その放射パターンを60゜だけ回転させた放射パターンであってもよい。
【0048】
次いで、図3乃至図5は、図1の適応制御型コントローラ20によって実行されるアレーアンテナ制御処理を示すフローチャートであり、図3乃至図5を参照して、適応制御型コントローラ20が上述した高次元二分法を用いて実行するアレーアンテナの制御処理について説明する。このアレーアンテナの制御処理は、図1の復調器4が無線通信を開始する前に、相手先の送信局からの学習シーケンス信号を含む無線信号を受信しているときに実行される。14個の初期値の放射パターンについて処理を実行するためのパラメータとしてxnoが用いられる(ただし、図3の処理に限る)。また、この高次元二分法では、ある初期値又は選択値を中央値として二分したときに、その中央値から+側への摂動と、−側への摂動とを実行して、各摂動に対する相互相関係数Rを演算し、より大きな相互相関係数Rを有するリアクタンス値を選択するので、1つの反復に対して、2つの処理×6素子分の合計12回の演算処理が必要となる。この演算処理に関するパラメータをxnoとし用いる(ただし、図4及び図5の処理に限る。)また、上記2つの処理に対応するパラメータとしてalt=0及びalt=1とする。さらに、反復回数パラメータをnとし、その上限値をupdateCountとする。またさらに、最大の相互相関係数値を格納するパラメータをRmax(xnomax)とし、そのときの演算処理パラメータをxnomaxとする。
【0049】
図3において、まず、ステップS1で初期化処理を実行し、具体的には、パラメータxno,jalt,及びRmax(xnomax)を0にリセットし、パラメータnを1にリセットする。次いで、ステップS2において、制御電圧テーブルメモリ30から放射パターン(xno)の制御電圧セットを読み出し、各可変リアクタンス素子12−1乃至12−6に制御電圧信号を出力し、ステップS3においてn=1であるか否かが判断され、YESのときはステップS4に進む一方、NOのときはステップS15に進む。ステップS4においてxno<13であるか否かが判断され、YESのときはステップS5に進む一方、NOのときはステップS9に進む。ステップS5において、受信信号y(t)を受信し、数1を用いて相互相関係数値R(xno)を演算し、ステップS6において次式の演算と更新を行う。
【0050】
【数11】
Rmax(xnomax)←max(Rmax(xnomax),R(xno))
【数12】
xnomax←argmax(Rmax(xnomax),R(xno))xno
【0051】
ここで、max(・)は複数の引数中の最大値を有する引数を示す関数であり、argmax(・)は複数の引数中の最大値を示す引数のその引数であるパラメータxnoを示す関数である。従って、パラメータRmax(xnomax)にはこれまでに計算された最大の相互相関係数の値が入力され、パラメータxnomaxにはそのときのパラメータxnoの値が入力されることになる。
【0052】
次いで、ステップS7においてパラメータxnoを1だけインクリメントし、ステップS8において制御電圧テーブルメモリ30から放射パターン(xno)の制御電圧セットを読み出し、各可変リアクタンス素子12−1乃至12−6に制御電圧信号を出力し、ステップS3に戻る。
【0053】
一方、ステップS9において受信信号y(t)を受信して、数1を用いて相互相関係数値R(xno)を演算し、ステップS10において、ステップS6と同様の演算と更新の処理を実行した後、ステップS11において制御電圧テーブルメモリ30から放射パターン(xnomax)の制御電圧セットを読み出し、各可変リアクタンス素子12−1乃至12−6に制御電圧信号を出力する。このステップS11の段階では、制御電圧テーブルメモリ30に格納された14個の放射パターンのうち最大の相互相関係数を有する放射パターンが選択され、それに対応する制御電圧セットが読み出されて設定される。
【0054】
次いで、次の反復のために、パラメータnを1だけインクリメントし、パラメータxnoを0にリセットする。そして、ステップS13においてn=2における摂動値を演算し、具体的には、初期値として選択された放射パターンのディジタル制御電圧値を中央値として、デジタル制御電圧値を二分し、二分後の各範囲の中央値をデジタル制御電圧値の摂動先値(+側と−側の2つ)として演算する。さらに、ステップS14において可変リアクタンス素子12−1に対して高次元二分法の−側の制御電圧を設定して制御電圧信号を出力し、ステップS3に戻る。
【0055】
ステップS3でNOであれば、ステップS15に進み、n>updateCount(処理終了条件)であるか否かが判断され、YESであれば当該制御処理を終了するが、NOであれば、図4のステップS21に進む。
【0056】
図4のステップS21においてxno<11であるか否かが判断され、ステップS22において次式の数13を用いて選択値からの摂動値Δを演算する
【0057】
【数13】
Δ=211−n
【0058】
ステップS23においてjalt=0であるか否かが判断され、YESのときはステップS24に進む一方、NOのときはステップS28に進む。ステップS24において受信信号y(t)を受信して、数1を用いて相互相関係数値Rを演算し、ステップS25において、適応制御型コントローラ20内の一時メモリである次候補テーブルに、現在処理中の可変リアクタンス素子12−INT{(xno+2)/2}(ここで、INTは引数の整数のみを示す関数である。)に対する現在の制御電圧を保存する。ここで、次候補テーブルは、6個のデジタル制御電圧値のベクトルからなり、現在処理中で最適な制御電圧の選択値を保存するためのテーブルである。ステップS26において、現在処理中の可変リアクタンス素子12−INT{(xno+2)/2}に対して高次元二分法の+側の制御電圧(=選択値+Δ)を設定して制御電圧信号を出力し、ステップS27においてパラメータxnoを1だけインクリメントし、パラメータjaltを1だけインクリメントした後、図3のステップS3に戻る。
【0059】
一方、ステップS28において受信信号y(t)を受信して、数1を用いて相互相関係数値Rを演算し、ステップS29において直前のS28の相互相関係数値Rは直前のS24の相互相関係数値Rよりも大きいか否かが判断され、YESのときはステップS30に進む一方、NOのときはステップS31に進む。ステップS30において次候補テーブルに現在処理中の可変リアクタンス素子12−INT{(xno+2)/2}に対する現在の制御電圧を保存し、ステップS31において次の可変リアクタンス素子12−[INT{(xno+2)/2}+1]に対して高次元二分法の−側の制御電圧(=選択値−Δ)を設定して制御電圧信号を出力する。さらに、ステップS32においてパラメータxnoを1だけインクリメントし、パラメータjaltを1だけデクリメントした後、図3のステップS3に戻る。
【0060】
図5は1つの反復中の最後の処理であり、図5のステップS41において、受信信号y(t)を受信して、数1を用いて相互相関係数Rを演算し、ステップS42において直前のS41の相互相関係数RはS24の相互相関係数Rよりも大きいか否かが判断され、YESのときはステップS43に進む一方、NOのときはステップS44に進む。ステップS43において次候補テーブルに現在処理中の可変リアクタンス素子12−INT{(xno+2)/2}に対する現在の制御電圧を保存し、ステップS44において次候補テーブル内の制御電圧セットに基づいて各可変リアクタンス素子12−1乃至12−6に制御電圧を設定する。次いで、ステップS45において、次の反復処理のための初期値設定処理を実行し、具体的には、パラメータxnoを0にリセットし、パラメータjaltを1だけデクリメントし、反復パラメータnを1だけインクリメントした後、ステップS46においてn≦updateCount(処理終了条件の否定)であるか否かが判断され、YESのときはステップS47に進む一方、NOのときはステップS48に進む。ステップS47において、次の反復処理のために、可変リアクタンス素子12−1に対して高次元二分法の−側の制御電圧を設定し、ステップS48において上記設定された制御電圧セットに基づいて制御電圧信号を出力した後、図3のステップS3に戻る。
【0061】
【実施例】
本発明者らは、実施形態に係るアレーアンテナ装置100の制御装置を試作してシミュレーションを行った、以下に、そのシミュレーションの内容とその結果を示す。
【0062】
まず、初期値選択の効果について説明する。初期値選択の例として、干渉波DOA(到来方位角)が105゜の場合及び30゜の場合について、それぞれヌル点形成の過程を図9及び図10に図示する。所望波DOAは0゜固定とする。干渉波DOAが105゜の場合には、図9のように初期値として表2のパターン1を選択し、デジタル制御電圧値の最終解として次式を得ている。
【0063】
【数14】
kv=[711,2039,-1528,-88,-1368]
【0064】
105゜を含む120゜近辺の到来角は、初期値の選択がなければヌル点が形成されにくい角度であったが、適当な初期値を選択することによって約18dBの出力SINR(信号対干渉雑音電力比)が得られている。
【0065】
干渉波DOAが30゜の場合には、図10のように表2のパターン13を初期値とし、次式を最終解としている。
【0066】
【数15】
kv=[-611,2044,-513,1506,-767,1296]
【0067】
ここで、出力SINRは約23dBを得ている。また、パターン13を初期値とした場合、多方向にヌル点が形成されやすい傾向が見受けられる。
【0068】
次いで、干渉波1波に対する干渉波抑圧性能について以下に説明する。高次元二分法によりエスパアンテナであるアレーアンテナ装置100を適応制御した場合の干渉波抑圧性能について、計算機シミュレーションによって収束特性を確認する。まず、到来する干渉波が1波の場合を想定する。所望波DOAは0゜固定とする。入力SIR(信号対干渉電力比)=0dB,入力SNR(信号対雑音電力比)=30dBとしている。所望波と干渉波が成す角度をθとし、当該角度θが30゜から180゜までの15゜間隔の角度を採った場合についてトレーニング信号d(t)のシンボル数と出力SINRの収束曲線を示す。サンプル数Pを700シンボル及び20シンボルとした場合について、それぞれ図11及び図12に図示して比較する。
【0069】
まず、サンプル数P=700シンボルの場合の特性を図11に示す。700シンボルは相互相関係数を計算する際に起こる、サンプル数不足のための計算誤差を極力抑えるために、十分に長いシンボル数という意味合いで採用した。
【0070】
図11から明らかなように、ほとんどの角度において6〜7回程度の反復で収束に近づいていることが分かる。また、初回の反復で初期値を与える操作をしている効果により5dB以上が得られていることが分かる。角度θ=45゜,60゜,165゜,180゜において2回目の反復で1回目の結果を下回っているのは、初回の初期値選択で、次隣接素子3方向にローブを有するパターンを選択した場合の特徴であり、2回目の反復でヌルが浅くなることが分かった。しかし6回程度の反復後には深いヌル点が形成されている。
【0071】
次に、サンプル数P=20シンボルの場合を図12に示す。ここでは、無線アドホックネットワーク実験の要求諸元をトレーニング信号長:1000シンボル、出力SINR:10dB以上と想定した。サンプル数Pはトレーニング信号長から計算して20シンボルを選択した。
【0072】
図12から明らかなように、まず、サンプル数P=20シンボルの場合にも、ほとんどの角度θにおいて1000シンボル以内に10dB以上のヌル点が形成されシステム要求諸元を満たしていることがわかる。収束傾向はサンプル数P=700シンボルの場合と同様であるが、相互相関係数を計算するサンプル数が少ないP=20シンボルの方が全体的に出力SINRが若干低い水準で収束している。これはサンプル数Pが少ないための計算誤りが収束の途中で発生し、選択すべき領域の反対を選択したためであると考えられる。
【0073】
角度θ=30゜,75゜,150゜などの収束曲線では、それとは逆に、サンプル数P=20シンボルの方が良くなっている個所があるが、これらの原因については、初期値の誤選択(原因1)、曲面のねじれ(原因2)、であると考えられる。角度θ=150゜については原因1、θ=30゜,75゜に関しては原因2が原因である。すなわち、初期値の誤選択とは最初に選択した領域が最終的に高相関が得られる領域と異なる場合である。曲面のねじれとは素子毎に選択した範囲を組み合わせて得られた領域が他の候補領域よりも低相関であった場合である。これらの原因に対する対策は現在のところ十分ではない。
【0074】
さらに、干渉波3波に対する統計的評価について以下に説明する。干渉波が3波到来する環境における高次元二分法の統計的性能評価を行う。所望波DOAは15゜固定とし、干渉波3波のDOAを無作為に選択して1000組用意する。この1000組のDOAを使用して図13及び図14のような累積確率密度分布(CDF: Cumulative Distribution Function)を計算する。CDFは1000組の干渉波DOA母集団に対する出力SINRが横軸の出力SINRを超える確率を示したものである。入力SIR=0dBとするために干渉波電力はそれぞれ所望波電力の1/3に設定した。
【0075】
さらに、サンプル数P=700シンボルの場合を図13に示す。トレーニング信号は最急勾配法で収束する時間として十分な長さに設定しており、高次元二分法の結果は最急勾配法を下回っている。これは最急勾配法が最適解近傍を追求したのに対して、高次元二分法は最急勾配法ほどの追求に至らなかったためと考えられる。
【0076】
一方、図14のサンプル数P=20シンボルの場合には、高次元二分法が最急勾配法の結果を上回っている。トレーニング信号は1000シンボルに設定している。すなわち1000シンボルという短いトレーニング信号では、最急勾配法が最適解まで到達することが困難であるのに対し、高次元二分法はより速く最適解方向又は局所解方向に向かっていると予想される。
【0077】
以上説明したように、本実施形態に係る高次元二分法は領域を二分して、高い相関が得られる側に最適解が存在すると判断する簡潔な方法であるが、比較的少ない反復にて最適解又は局所解への収束に近づくため、実際の無線アドホックネットワーク実験においてトレーニング信号が1000シンボル程度であった場合にも適用できる見通しを得た。また、干渉波が3波到来する環境における統計的評価を行ったことにより、高次元二分法は短いトレーニング信号に対して、より効果があることが明らかになった。すなわち、エスパアンテナ装置の制御方法において、従来例に比較して収束時間を大幅に短縮することができ、少ない計算量で、所望波に対して主ビームを向けかつ干渉波に対してヌルを向けるように適応制御することができる。
【0078】
以上の実施形態においては、各可変リアクタンス素子12が採り得るリアクタンス値の範囲を二分し、二分後の各範囲の中央値をそれぞれ各可変リアクタンス素子12に設定したときに、相手先の送信機から送信される無線信号に含まれる学習シーケンス信号をアレーアンテナにより受信したときの受信信号と、学習シーケンス信号と同一の信号パターンを有して発生された学習シーケンス信号との間の所定の相互相関係数を演算し、上記二分後の各範囲の中央値に対応する2つの相互相関係数のうち大きい相互相関係数に対応する各可変リアクタンス素子12のリアクタンス値を初期値として選択して設定した後、上記選択されたリアクタンス値に属する範囲を二分し、二分後の各範囲の中央値をそれぞれ各可変リアクタンス素子12に設定したときに上記相互相関係数を演算し、上記二分後の各範囲の中央値に対応する2つの相互相関係数のうち大きい相互相関係数に対応する上記各可変リアクタンス素子12のリアクタンス値を選択して設定する。しかしながら、本発明はこれに限らず、各可変リアクタンス素子12が採り得るリアクタンス値の範囲を分割し、その分割後の各範囲の代表値をそれぞれ各可変リアクタンス素子12に設定したときに、相手先の送信機から送信される無線信号に含まれる学習シーケンス信号をアレーアンテナにより受信したときの受信信号と、学習シーケンス信号と同一の信号パターンを有して発生された学習シーケンス信号との間の所定の相互相関係数を演算し、上記分割後の各範囲の代表値に対応する2つの相互相関係数のうち大きい相互相関係数に対応する各可変リアクタンス素子12のリアクタンス値を初期値として選択して設定した後、上記選択されたリアクタンス値に属する範囲を分割し、その分割後の各範囲の代表値をそれぞれ各可変リアクタンス素子12に設定したときに上記相互相関係数を演算し、上記分割後の各範囲の代表値に対応する2つの相互相関係数のうち大きい相互相関係数に対応する各可変リアクタンス素子12のリアクタンス値を選択して設定するように構成してもよい。
【0079】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明に係るエスパアンテナであるアレーアンテナ装置の制御方法において、各可変リアクタンス素子が採り得るリアクタンス値の範囲を分割し、その分割後の各範囲の代表値をそれぞれ各可変リアクタンス素子に設定したときに、相手先の送信機から送信される無線信号に含まれる学習シーケンス信号をアレーアンテナにより受信したときの受信信号と、学習シーケンス信号と同一の信号パターンを有して発生された学習シーケンス信号との間の所定の相互相関係数を演算し、分割後の各範囲の代表値に対応する2つの相互相関係数のうち大きい相互相関係数に対応する各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を初期値として選択して設定した後、選択されたリアクタンス値に属する範囲を分割し、その分割後の各範囲の代表値をそれぞれ各可変リアクタンス素子に設定したときに相互相関係数を演算し、上記分割後の各範囲の代表値に対応する2つの相互相関係数のうち大きい相互相関係数に対応する各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を選択して設定することにより、アレーアンテナの主ビームを所望波の方向に向けかつ干渉波の方向にヌルを向けるように制御する。
【0080】
ここで、好ましくは、各可変リアクタンス素子が採り得るリアクタンス値の範囲を二分し、二分後の各範囲の中央値をそれぞれ各可変リアクタンス素子に設定したときに、相手先の送信機から送信される無線信号に含まれる学習シーケンス信号をアレーアンテナにより受信したときの受信信号と、学習シーケンス信号と同一の信号パターンを有して発生された学習シーケンス信号との間の所定の相互相関係数を演算し、二分後の各範囲の中央値に対応する2つの相互相関係数のうち大きい相互相関係数に対応する各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を初期値として選択して設定した後、選択されたリアクタンス値に属する範囲を二分し、二分後の各範囲の中央値をそれぞれ各可変リアクタンス素子に設定したときに相互相関係数を演算し、二分後の各範囲の中央値に対応する2つの相互相関係数のうち大きい相互相関係数に対応する各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を選択して設定する。
【0081】
従って、従来例に比較して収束時間を大幅に短縮することができ、少ない計算量で、所望波に対して主ビームを向けかつ干渉波に対してヌルを向けるように適応制御することができる。
【0082】
また、上記の前者の処理に代えて、好ましくは、所定の複数の放射パターンに対応する上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値をそれぞれ上記各可変リアクタンス素子に設定したときに上記相互相関係数を演算し、最大の相互相関係数を有する1つの放射パターンに対応する上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を初期値として選択して設定する。従って、上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値の初期値を適切に選択でき、従来例に比較して収束時間を大幅に短縮することができ、少ない計算量で、所望波に対して主ビームを向けかつ干渉波に対してヌルを向けるように適応制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係るアレーアンテナの制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】 図1のアレーアンテナ装置100の詳細な構成を示す断面図である。
【図3】 図1の適応制御型コントローラ20によって実行されるアレーアンテナ制御処理の第1の部分を示すフローチャートである。
【図4】 図1の適応制御型コントローラ20によって実行されるアレーアンテナ制御処理の第2の部分を示すフローチャートである。
【図5】 図1の適応制御型コントローラ20によって実行されるアレーアンテナ制御処理の第3の部分を示すフローチャートである。
【図6】 図1のアレーアンテナの制御装置において用いる、初期値選択のための指向性パターンの第1の例である「素子方向に最大利得を有するセクタビームパターン」を示す指向特性図である。
【図7】 図1のアレーアンテナの制御装置において用いる、初期値選択のための指向性パターンの第2の例である「素子間方向に最大利得を有するセクタビームパターン」を示す指向特性図である。
【図8】 図1のアレーアンテナの制御装置において用いる、初期値選択のための指向性パターンの第3の例である「次隣接方向にローブを有する放射パターン」を示す指向特性図である。
【図9】 図1のアレーアンテナの制御装置のシミュレーション結果であって、所望波のDOAが0゜であり、干渉波のDOAが105゜のときの方位角に対する、初期値と最終設定値の相対利得を示すグラフである。
【図10】 図1のアレーアンテナの制御装置のシミュレーション結果であって、所望波のDOAが0゜であり、干渉波のDOAが30゜のときの方位角に対する、初期値と最終設定値の相対利得を示すグラフである。
【図11】 図1のアレーアンテナの制御装置のシミュレーション結果であって、相互相関係数を計算するサンプル数Pが700シンボルのときに、所望波と干渉波が成す角度θをパラメータとしたときの、サンプル数に対する出力SINRにおける干渉波抑圧性能を示すグラフである。
【図12】 図1のアレーアンテナの制御装置のシミュレーション結果であって、相互相関係数を計算するサンプル数Pが20シンボルのときに、所望波と干渉波が成す角度θをパラメータとしたときの、サンプル数に対する出力SINRにおける干渉波抑圧性能を示すグラフである。
【図13】 図1のアレーアンテナの制御装置で用いる高次元二分法と、従来例に係る最急勾配法のシミュレーション結果であって、相互相関係数を計算するサンプル数Pが700シンボルのときに、干渉波3波のDOA1000組を用いた場合における、出力SINRに対するCDF(累積確率密度分布)による統計的評価を示すグラフである。
【図14】 図1のアレーアンテナの制御装置で用いる高次元二分法と、従来例に係る最急勾配法のシミュレーション結果であって、相互相関係数を計算するサンプル数Pが20シンボルのときに、干渉波3波のDOA1000組を用いた場合における、出力SINRに対するCDF(累積確率密度分布)による統計的評価を示すグラフである。
【符号の説明】
A0…励振素子、
A1乃至A6…非励振素子、
1…低雑音増幅器(LNA)、
2…ダウンコンバータ、
3…A/D変換器、
4…復調器、
5…給電用同軸ケーブル、
11…接地導体、
12−1乃至12−6…可変リアクタンス素子、
20…適応制御型コントローラ、
21…学習シーケンス信号発生器、
30…制御電圧テーブルメモリ、
100…アレーアンテナ装置。
Claims (3)
- 無線信号を受信するための励振素子と、
上記励振素子から所定の間隔だけ離れて設けられた複数の非励振素子と、
上記複数の非励振素子にそれぞれ接続された複数の可変リアクタンス素子とを備え、
上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変化させることにより、上記複数の非励振素子をそれぞれ導波器又は反射器として動作させ、アレーアンテナの指向特性を変化させるアレーアンテナの制御方法において、
所定の複数の放射パターンに対応する上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値をそれぞれ上記各可変リアクタンス素子に設定したときに上記相互相関係数を演算し、最大の相互相関係数を有する1つの放射パターンに対応する上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値をそれぞれ初期値として選択して設定する第1のステップと、
上記選択された各可変リアクタンス素子のリアクタンス値に属する範囲をそれぞれ二分し、その二分後の各範囲の代表値をそれぞれ上記各可変リアクタンス素子に設定したときに上記相互相関係数を演算し、上記二分後の各範囲の代表値に対応する2つの相互相関係数のうち大きい相互相関係数に対応する上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を選択して設定する第2のステップと、
上記第2のステップの処理を所定の反復回数まで繰り返す第3のステップとを含み、
上記アレーアンテナの主ビームを所望波の方向に向けかつ干渉波の方向にヌルを向けるように制御することを特徴とするアレーアンテナの制御方法。 - 上記複数の放射パターンは、
(a)上記励振素子から各非励振素子に向かう方向にそれぞれ最大利得を有する複数のセクタビームパターンと、
(b)上記励振素子から互いに隣接する各非励振素子間の中間位置に向かう方向にそれぞれ最大利得を有する複数のセクタビームパターンと、
(c)上記励振素子から互いに隣接しない1つ置きの複数の非励振素子に向かう方向にローブを有する複数の放射パターンと
のうちの少なくとも1組を含むことを特徴とする請求項1記載のアレーアンテナの制御方法。 - 上記各範囲の代表値は、上記各範囲の中央値であることを特徴とする請求項1又は2記載のアレーアンテナの制御方法。
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