JP3825936B2 - 光学薄膜の製造方法及びその薄膜形成装置 - Google Patents

光学薄膜の製造方法及びその薄膜形成装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、可視および紫外域用の光学部品に使用される反射防止膜、誘電体多層ミラーなどの光学薄膜およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、反射防止膜やミラーなどの光学薄膜を形成する場合、成膜材料を真空中で電子ビームなどで加熱し蒸発させて基板に付着させる真空蒸着法が主に使われてきた。
【0003】
一般に、反射防止膜、ミラーなどは、フッ化マグネシウム(MgF2 )のような屈折率の低い材料と、酸化ジルコニウム(ZrO2 )、酸化タンタル(Ta25 )、酸化チタン(TiO2 )などの屈折率の高い材料のいずれか一方、あるいはこれらを組み合わせた多層膜などによって構成され、要求される光学性能によって、層構成、膜厚などをさまざまに調整している。
【0004】
蒸着法は装置構成としてはシンプルで、大面積基板上に高速に成膜でき、生産性に優れた成膜方法であるが、膜厚の高精度制御、自動生産機開発が困難で、さらには基板温度が低い状況で成膜を行うと膜の強度が不足し、傷が付きやすく、また、膜と基板の密着性も低いなどの問題を生じていた。
【0005】
近年になり、より生産の効率化が求められてきていることから、これらの光学薄膜においても、真空蒸着法に比較して工程の省力化・品質の安定化、膜質(密着性、膜強度)などの面で有利なスパッタリング法によるコーティングの要求が高まってきた。
【0006】
スパッタリング法は、酸化ジルコニウム(ZrO2 )、酸化タンタル(Ta25 )、酸化チタン(TiO2 )、酸化アルミニウム(Al23 )などの酸化物誘電体薄膜の形成においては、低吸収、高屈折率薄膜が容易に形成できる。しかし、1.45以下という低い屈折率を持ち、多層光学薄膜の光学性能を大きく左右する重要な薄膜材料であるMgF2 ,AlF3 をはじめとしたフッ化物は低吸収薄膜が容易に形成できない問題点を有していた。
【0007】
これらフッ化物薄膜をスパッタリング法によって形成する方法として、例えば特開平4−289165号公報に示すようなものが知られている。すなわち、MgF2 などのアルカリ土類金属フッ化物膜をArなどの不活性ガスとCF4 などのフッ素系ガスとの混合ガスを用いてスパッタリングする方法である。
【0008】
また、特開平7−166344号公報に示すように、金属ターゲットを用い、Arなどの不活性ガスとCF4 などのフッ素系ガスとの混合ガスを用いてDCスパッタリングする方法が知られている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
最も一般的な低屈折率材料として用いられるMgF2 は、スパッタリング法によって成膜すると、スパッタ中にFが解離し、膜の組成が化学量論比から外れてMgリッチな膜となるために膜に紫外および可視域での吸収を生じてしまっていた。
【0010】
これを解決するために特開平4−289165号公報のようにフッ素系ガスを使用してFを補うスパッタリング方法が開示されている。
【0011】
特開平7−166344号公報によれば金属ターゲットを用いてDCスパッタリングすることで、基板シース電圧が減少し、陽イオンダメージを減少することが可能である。
【0012】
しかしながら、フッ素系ガスを導入し、フッ素原子を補っても、ターゲットからスパッタされて基板に入射する金属原子に比べ、プラズマ中で解離し、生成した活性なフッ素原子や、フッ素を含むガス分子の基板表面での滞留時間は短く、その結果、膜はフッ素が不足状態になってしまっていた。特に、スパッタレートを大きくすると、この傾向は強くなる。
【0013】
また、フッ素原子は、電子付着を起こしやすく、したがって負イオンになりやすい。このため、基板に形成されたシース電圧によって、フッ素負イオンは基板に入射できないため、フッ素の供給が不足し、やはり、フッ素の欠乏した膜となってしまう。
【0014】
さらには、ターゲット表面にフッ素が吸着し、ターゲット表面がフッ化した状態でスパッタを行うとターゲット表面で負イオンが形成され、負イオンとなった粒子が数百Vのターゲットシースで加速され、基板に入射する。このため、基板上に形成されたフッ化物薄膜にダメージを与え、F欠損の原因となっていた。ターゲットシースで加速された負イオンは通常他のガス分子との衝突で中性化するといわれており、基板にバイアスを印加するなどの方法では、ダメージを除去できない。
【0015】
このため、上記のスパッタリング方法では、基板に入射するフッ素原子が不足したり、結合状態が乱れ、成膜したMgF2 は吸収の大きい薄膜しか形成できなかった。AlF3 ,LiF2 などの金属フッ化物においてもほぼ同様に、フッ素が不足した薄膜しか形成できない。
【0016】
本発明の目的は、上述したような事情に鑑みてなされたもので、屈折率1.45以下という低い屈折率でしかも紫外および可視域での吸収のない膜を、スパッタリング法によって形成する光学薄膜の製造方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するための、本発明に係るフッ化物薄膜製造方法は、少なくともフッ素を含むガスが導入された真空容器内において、放電中に生成したイオンを金属ターゲットに衝突させ、このターゲットからスパッタされた粒子を対向配置された被処理物に堆積させて成膜するスパッタリングにおいて、基板表面の活性フッ素原子の滞留時間、反応性を高め、ストイキオメトリな金属フッ化物を形成できるように、基板近傍にH2 OガスまたはH2ガスを供給し、基板表面にH2O吸着層を形成しながらスパッタを行う。また、基板表面に形成されるシース電圧を抑え、陽イオンによるダメージを減少するため、ターゲットに印加するスパッタ電力は直流とし、異常放電によるゴミなどの混入をなくすために数10KHz程度の反転電圧を印加するか、もしくは数10KHzの高周波を重畳し、チャージをキャンセルしてスパッタを行う。さらに、ターゲット表面で生成した負イオンダメージを受ける条件で成膜する場合には、基板をターゲットと向き合う位置に保持しないようにしながら成膜を行う。
【0018】
上記方法によれば、基板表面に吸着したH2 O層の影響で、基板に到達した活性なフッ素原子や、フッ素分子がHFを形成し、基板表面に滞留する時間が長くなり、スパッタされて基板に到達した金属原子と効率よく反応し、金属フッ化物を形成できる。
【0019】
また、プラズマを形成するのは主に直流放電であるため、基板近傍の電子温度が高周波スパッタに比べ低く、DCスパッタに数10KHzの交流を印加してチャージをキャンセルできるため、異常放電を抑え、ゴミ、異物の混入のないフッ化物薄膜を陽イオンのダメージを与えずに形成することが可能となる。
【0020】
さらに、非常に低圧でスパッタする際に問題が生じやすい、ターゲットシース電圧で加速され基板に直接入射する負イオンの影響を除去し、ダメージによりフッ素が解離し、金属リッチなフッ化物薄膜になるのを抑え、低吸収なフッ化物薄膜を形成することが可能となる。
【0021】
本発明は上記の成膜方法およびその薄膜形成装置であって以下のようである。
【0022】
1.金属ターゲットを用い、少なくともフッ素を含むガスで反応性スパッタを行うことにより、基板上に金属フッ化薄膜を形成する薄膜形成方法において、フッ素を含むガスに加えてH2 OガスまたはH2ガスの両方もしくはいずれか一方を導入してスパッタを行うことを特徴とするフッ化物薄膜の形成方法。
【0023】
2.前記金属ターゲットに印加するスパッタ電力が、直流に500KHz以下の周波数の電圧を重畳してスパッタすることを特徴とする上記1に記載のフッ化物薄膜の形成方法。
【0024】
3.前記基板を前記金属ターゲット鉛直方向に投影した投影部の外に配置し、ターゲットシースで加速された負イオン、およびそのイオンがプラズマ中で中性化して生成した高エネルギー粒子が前記基板に直接入射しないようにしてスパッタを行うことを特徴とする上記1または2に記載のフッ化物薄膜の形成方法。
【0027】
.金属ターゲットを用い、少なくともフッ素を含むガスで反応性スパッタを行うことにより、基板上に金属フッ化物薄膜を形成する薄膜形成装置において、フッを含むガスおよびH2OガスまたはH2ガスの両方もしくはいずれか一方のガスを供給するガス供給装置、ターゲットに印加する直流電力供給装置、交流電圧重畳電力供給装置、および直流電源保護のための交流カットフィルタを有することを特徴とする薄膜形成装置。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下に実施例を3例挙げて、図面を参照しつつ実施形態を説明する。なお、本発明はこれら実施例に限定されず、種々の変形が可能であることは勿論である。
【0029】
【実施例】
実施例1
図1は、本発明の第1の実施例に係るDCマグネトロンスッパッタリング装置の断面図である。この図に示すように、スパッタリング装置は、内部をほぼ真空状態に維持する真空容器1が設けられている。この真空容器1の底部の中央部には、内部に磁石を収め、外部から供給される冷却水を内部を流通させてターゲットの冷却を行う冷却ボックス2が設けられている。この冷却ボックス2の上面には、カソード電極としてのパッキングプレート3が配置されており、このパキングプレート3の上面に高純度Mg金属ターゲット4が固定されている。ターゲット材料としては電気抵抗が低ければ、種々の金属、酸素添加金属もしくはフッ素添加金属などからなるターゲットであっても勿論よい。このターゲット4との間に所定の間隙をおいて外方に配置されたアノード電極5が真空容器1に固定されている。なお、アノード電極5とパッキングプレート3との間には、絶縁材6が配置されている。
【0030】
さらに、真空容器1の上面には、被処理物7が図示しない移動機構に被処理物支持機構8とロードロック室10との間をゲートバルブ9を介して移動自在に設けられている。被処理物7とターゲット4の間には、放電が安定するまで被処理物7に膜が付着しないよう、シャッター11が設けられている。このシャッターは図示しない移動機構により、高速で開閉可能となっている。なお、特に、符号を付さないが、真空容器11内の漏れを防止するため、適宜箇所には、シール部材が設けられている。
【0031】
被処理物7はターゲット4と相対しない位置に設置され、ターゲット表面で生成しターゲットシースで加速された負イオンの影響を直接受けないようにされている。
【0032】
また、スパッタガス導入ポート13、H2 Oガス導入ポート14より、マスフローコントローラを含むガス供給系によって、5%濃度にArで希釈したF2 ガスおよびH2 Oガスを導入可能な構成となっている。ここで、導入するガスは、流量、純度、圧力は高精度に制限され、一定値に保持できる。F2 を希釈する不活性ガスとしてはAr以外に、He,Ne,Kr,Xeなどのガスが、フッ素を含むガスとしてはF2 ガス以外にCF4 ,NF3 などのガスや、酸素、N2 Oなどの酸素を含む反応性ガスが必要に応じて切り替えて導入することが可能な構成となっており、フッ化物薄膜以外に酸化物薄膜なども形成できる。
【0033】
図示はしないが、F2 などの反応性の高いガスを流すため、排気するポンプは耐食性の高いものを用いるとともに、軸パージや、排気ガス希釈、排気ガス処理施設なども設置されていることは勿論である。
【0034】
ターゲット冷却水は図示しないチラーで所望の温度に調整され、流量も一定に保持してターゲット表面温度を一定に保つ構成としている。
【0035】
次に図の装置を用いて、石英ガラス基板上に低吸収で低屈折率を有するフッ化アルミニウム薄膜を形成する方法について、詳しく説明する。
【0036】
真空容器1を排気系12により真空に排気する。2×10-4Paにまで排気が完了したところで、F2 /Arガスを200sccm(F2 :10sccm)、およびH2 Oガスを20sccm導入し、パッキングプレート3に直流電源15より直流電圧500Wを印加すると、放電してF2 ,Arガスがイオン化し、磁石17による磁界がターゲット4の上方に形成されているため、磁界に電子がトラップされ、ターゲット表面にマグネトロンプラズマが発生する。放電によりターゲット表面にシースが形成され、プラズマ中の陽イオンがシースで加速されターゲット4に衝突し、ターゲット4からスパッタされたMg,F,MgFなどの粒子が放出される。
【0037】
本実施例では、異常放電が起こらない条件(ガス圧、流量、印加電力)を選択しており、放電が安定するまで、基板とターゲット間に配置されたシャッターは閉じておき、安定したところでシャッターを開け、被処理物7に薄膜を形成するようにしている。異常放電が生じる条件で成膜した場合、異物が膜に混入し、散乱の大きい膜となる。スパッタされた粒子はプラズマ中および基板表面で活性なF原子を含む分子と反応して、被処理物7にフッ化物薄膜が堆積する。成膜終了後、シャッターを閉じ、放電を停止する。ここで、基板をロードロック室10を介して、大気に搬出する。被処理物7についたMgF膜の分光特性を分光光度計により測定し、厚さ、吸収などを光学干渉法などにより算出した。
【0038】
スパッタされたMg原子は基板に入射するとほぼ100%の確率で付着するが、F2 分子、F原子などは基板表面に100%の確率では吸着せず、再離脱する。このため、F2 流量を増加しても、通常Al原子と結合するFの割合が減少するため、Fが不足した吸収の大きい膜となりやすい。
【0039】
成膜中にH2Oガス導入ポート14より、H2Oガスを基板表面近傍に導入するとH2Oガスの平衡蒸気圧が低いことから、基板表面にH2O吸着層が形成される。このような状態の基板表面にF,F2などのガスが吸着すると、HFを含む吸着層を形成する。このような基板表面に、スパッタされたMg原子が入射すると、ほぼストイキオメトリなMgF2膜が形成できることがわかった。
【0040】
得られた膜の分光特性を図2に示す。可視から紫外にわたって、吸収のない、低屈折率を有する薄膜が得られている。膜厚250nmのMgF2 薄膜の吸収は500nmで0.2%以下、屈折率は約1.37であった。
【0041】
2 Oガスを導入する場合、F2 ガスがH2 Oと反応してHFを生成しSUSチャンバーや、排気系オイル、排気ポンプなどを腐食してしまう。このため、H2 Oガスはできるだけ基板近傍にのみ供給し、H2 O吸着層を基板表面以外に形成しないように努める必要がある。
【0042】
また、基板ホルダー、SUSチャンバー表面も耐HF性を有する、フッ化物系薄膜などをあらかじめコーティングするなどしておくことが望ましい。
【0043】
本実施例では、ターゲット電圧が常時監視され、電圧の変動に応じて直流電源出力、反応性ガス流量を制御できる制御装置16が設置されている。この電圧を常時一定に保持して成膜することにより、成膜レートを一定にすることができ、シャッターの開閉時間を制御することで膜厚制御を行うことも可能となる。
【0044】
本実施例では、H2Oガスを導入したが、H2Oガスに代えてH2ガスを導入しても、プラズマ中でHF分子等が形成され、この分子は基板表面に吸着され易いため、同様の効果が得られる。
【0045】
本実施例では、ターゲット表面で生成し、ターゲットシースで加速された負イオンが基板に直接入射しない構成としているため、負イオンによるダメージのないフッ化物薄膜を形成することができる。特に、低いガス圧でスパッタを行うような場合、有効な手段となる。しかし、負イオンによるダメージはスパッタ中のガス圧、印加電力などにより、ほとんど影響を受けないレベルに抑えることも可能であり、ターゲット面と相対する位置においても、条件の最適化を図れば、低吸収なフッ化物薄膜を形成することは可能である。
【0046】
本実施例では、Mg金属ターゲットを用いたが、Al金属ターゲットを用い上記と同様、Ar,F2 、H2 Oガスを導入して反応性スパッタを行えば、低吸収のAlF3 薄膜を得ることができる。
【0047】
また、本例では、反応性ガスとして、Ar希釈のF2ガスを用いたが、フッ素を含むガスで、膜中に取り込まれにくく、取り込まれても光学特性に影響を及ぼさない元素を含むものであれば、使用可能である。特に、NF3 CF4,SF6などのガスは、使用環境の面から使いやすく、また、可視域の光学性能には影響が少なく、好適である。
【0048】
紫外域で低吸収の薄膜を形成する場合、不純物の混入を極力さけるために、不活性ガスで希釈したF2ガスが適している。しかし、MgF2 薄膜の場合には、NF3 ガスでもNが膜中にほとんど取り込まれないことから、実用上ほとんど問題なかった。
【0049】
実施例2
図3は、本発明の第2の実施例に係るDCマグネトロンスパッタリングターゲットの断面図である。本ターゲットはAl金属で製作しており、Ar,NF3ガス およびH2 Oガス供給用のガス吹き出し口13,14を設けている。
【0050】
真空容器1を排気系12により2×10-4Paにまで排気が完了したところで、Arガスを250sccm、NF3 ガスを50sccmおよびH2 Oガスを20sccm導入し、パッキングプレート3に直流電源15より電圧500Wを印加すると、放電してAr,NF3 ガスがイオン化し、磁石17による磁界がターゲット4の上方に形成されているため、磁界に電子がトラップされ、ターゲット表面にマグネトロンプラズマが発生する。放電によりターゲット表面にシースが形成され、プラズマ中の陽イオンがシースで加速されてターゲット4に衝突し、ターゲット4からスパッタされたAl,F,AlFなどの粒子が放出され、基板上で活性なF,F* などと反応しAlF3 を形成する。
【0051】
放電中生成されたプラズマによりNF3 ガスはN,F,NF,NF2 などに解離し、これらのイオンおよびNF3 イオンをも生成する。NイオンはAl反応し、AlNを形成する可能性があるが、フッ化反応の速度が速く、残留ガス分析装置で分析したところ、H2 Oを導入することでNO,NO2 ,N2 Oなどを形成してガス状態で除去されるため、ほとんど膜中に取り込まれないことがわかった。
【0052】
すなわち、H2 Oガスは、基板表面でHF含有吸着層を形成するばかりでなく、NF3 ガスのNを除去する効果も併せ持つことがわかった。この効果は、NF3 ガスを用いるときに有効であるばかりでなく、残留ガスとして成膜室内に残留するN2 ガスなどが膜に取り込まれるのを防止する効果もあり、可視から紫外にわたって、低吸収で、低屈折率の金属フッ化物薄膜を得ることができ、非常に有効である。
【0053】
また、本実施例に示すようなNF3 ガス流量では、DCのみ印加したのでは、ターゲット表面で、絶縁物のフッ化物を形成するため、ターゲット表面および近傍で異常放電が目立って発生するようになる。この異常放電は、絶縁物にチャージしたイオンもしくは電子による絶縁破壊であるが、この異常放電が発生すると、膜中に異物が混入し、表面の粗い膜となる。
【0054】
そこで、本例では交流発生器26により、20KHzの交流を直流電圧に重畳した。交流発生器26で、数〜数10KHzの交流を重畳することにより、チャージをキャンセルし、異常放電を防止することができる。重畳しない場合、膜中に混入した異物のため、散乱を生じて、可視域においてもロスの大きな膜となるが、高周波を重畳することで、この異物を完全に除去し、散乱のない、光学特性の優れたAlF3 薄膜を形成することができた。このような数KHz程度の高周波を重畳することで、異常放電を起こさずにスパッタできるフッ素を含むガス分圧の範囲を広くとることができ、さまざまな成膜条件で成膜が可能となる。
【0055】
ここで、重畳する高周波の周波数は20KHzとしたが、成膜条件にもよるが、数Hzから数MHzの高周波でも異常放電防止効果は得られる。しかしながら、10MHz以上の周波数では、基板セルフバイアス電圧が発生し、プラズマ中で生成した陽イオンにより衝撃を受け、ダメージを受けることがわかった。
【0056】
なお、高周波を重畳する場合、図示しないが、DC電源とターゲット間に重畳する周波数に応じたローパスフィルターを挿入し、DC電源に高周波電圧が影響しないようにする必要がある。
【0057】
図4に、13.5MHzの高周波を重畳して得られたAlF3 薄膜の分光特性を示す。紫外域でのロスが増加している。これは、高周波放電によって基板セルフバイアス電圧が増加し、基板に入射する陽イオンによって、膜がダメージを受け、結合状態の乱れ、F欠損を生じたものである。
【0058】
このようなダメージを除去するためには、500KHz以下という周波数の低い高周波を重畳することが望ましく、特に50KHz以下の周波数の電圧を重畳することが望ましい。
【0059】
高周波の重畳に代えて、図5に示すような数μSの時間だけ矩形的にプラズマ電位より高い電圧を数KHz〜数10KHzの周波数で印加しても、ターゲット電圧をイオンチャージをキャンセルできて、異常放電を抑えることができる。この場合の周波数も1MHz以下が望ましく、特に50KHz以下の周波数が適している。
【0060】
実施例3
本発明の第3の実施例としてエキシマレーザなどに用いられる光学部材上に形成された反射防止について述べる。
【0061】
図1に示すスパッタ装置を用い次のようにして反射防止膜を形成した。石英基板を真空槽内にセットし、真空槽内が2×10-4Paになるまで排気した後、酸素ガスおよびF2 (5%)/Arガスを0.4Pa/0.01Paの圧力になるまで導入し、DC電力を500W印加し20KHzの高周波を重畳し、Al23 薄膜を所定の厚さ成膜した。ついで、導入するガスをF2 (5%)/Arガスに切り替え、圧力が0.4Paになるように導入し、DC電力を500W印加し20KHzの高周波を重畳して、AlF3 薄膜を所定の厚さ成膜している。これを繰り返し、石英基板上にAl23 /AlF3 の交互層を設けた。得られた膜の構成を表1に、反射特性を図6に示した。
【0062】
【表1】
Figure 0003825936
本実施例で示した反射防止膜は、スパッタの特性として、高屈折率のAl23 が形成でき、さらに、低吸収、低屈折率のAlF3 の組み合わせによって、エキシマレーザ波長(248nm)において、0.1%以下の吸収率で、反射防止波長域も非常に広く、良好な性能を示している。
【0063】
本実施例では反射防止膜を示したが、反射防止膜に限定されるものではない。特に、スパッタで低吸収、低屈折率のフッ化物薄膜が形成できることで、スパッタで形成できる高屈折率、低吸収の酸化物薄膜との組み合わせが実現でき、非常に優れた光学特性を有する光学部品を提供することが可能となった。
【0064】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、AlF3 などのフッ化物薄膜を形成する際に、フッ化物を含むガスを導入するとともに、H2 Oガスを導入してスパッタすることで、可視域および紫外域で低吸収かつ低屈折率のフッ化物薄膜を安定して形成できる。
【0065】
また、ターゲットに印加するスパッタ電力として主に直流を用い、チャージアップによる異常放電を防止するために数10KHzの周波数で反転電位を重畳することにより、陽イオンのダメージを抑え、紫外域において低吸収のフッ化物薄膜を得ることができる。
【0066】
さらに、スパッタで可視から紫外域において、低吸収で低屈折率のフッ化物薄膜が形成できることから、スパッタの特徴である高屈折率の酸化物薄膜との交互層を形成することにより、非常に優れた光学性能を有する光学部品を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例による直流マグネトロンスパッタリング装置の断面図である。
【図2】第1の実施例によって得られたMgF2 膜の分光特性を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施例による低周波重畳直流マグネトロンスパッタリング装置の断面図である。
【図4】高周波重畳によって得られたAlF3 膜の分光特性を示す図である。
【図5】ターゲットに印加する矩形波形状を示す図である。
【図6】第3の実施例によって得られた反射防止特性を示す図である。
【符号の説明】
1 真空容器
2 冷却ボックス
3 パッキングプレート
4 ターゲット
5 アノード電極
6 絶縁材
7 被処理物
8 被処理物支持機構
9 ゲートバルブ
10 ロードロック室
11 シャッター
12 排気系
13 スパッタガス導入ポート
14 反応性ガス導入ポート
15 直流電源
16 演算、制御装置
17 磁石
26 交流発生機

Claims (4)

  1. 金属ターゲットを用い、少なくともフッ素を含むガスで反応性スパッタを行うことにより、基板上に金属フッ化薄膜を形成する薄膜形成方法において、フッ素を含むガスに加えてH2OガスまたはH2ガスの両方もしくはいずれか一方を導入してスパッタを行うことを特徴とするフッ化物薄膜の形成方法。
  2. 前記金属ターゲットに印加するスパッタ電力が、直流に500KHz以下の周波数の電圧を重畳してスパッタすることを特徴とする請求項1に記載のフッ化物薄膜の形成方法。
  3. 前記基板を前記金属ターゲット鉛直方向に投影した投影部の外に配置し、ターゲットシースで加速された負イオン、およびそのイオンがプラズマ中で中性化して生成した高エネルギー粒子が前記基板に直接入射しないようにしてスパッタを行うことを特徴とする請求項1または2に記載のフッ化物薄膜の形成方法。
  4. 金属ターゲットを用い、少なくともフッ素を含むガスで反応性スパッタを行うことにより、基板上に金属フッ化物薄膜を形成する薄膜形成装置において、フッ素を含むガスおよびH2OガスまたはH2ガス供給装置、金属ターゲットに印加する直流電力供給装置、交流電圧重畳電力供給装置、および直流電源保護のための交流カットフィルタを有することを特徴とする薄膜形成装置。
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