JP6953197B2 - フッ化膜を有する光学素子の製造方法およびフッ化膜の製造方法 - Google Patents

フッ化膜を有する光学素子の製造方法およびフッ化膜の製造方法 Download PDF

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本発明は、フッ化膜を有する光学素子の製造方法およびフッ化膜の製造方法に関する。
フッ化アルミニウム(AlF)やフッ化マグネシウム(MgF)などのフッ化物は、可視光領域における光学素子(レンズやミラー)の反射防止膜として従来から用いられている。
これまで、フッ化物からなる反射防止膜は、主に、真空蒸着法によって成膜されてきた。真空蒸着法は、装置構成が単純であり、大きな面積の基板に対して高速に薄膜を成膜することができる生産性に優れた成膜方法である。しかしながら、真空蒸着法は、膜厚を高精度に制御することや自動生産機の開発などが難しく、膜と基板との密着性を強化したり膜吸収を低減させたりするためには基板を300℃程度まで加熱しなければならないという短所も有する。
そこで、フッ化膜の反射防止膜の成膜方法として、真空蒸着法と比較して、再現性、膜ムラの制御、低温成膜などの点で優れているスパッタリング法が注目されている。スパッタリング法は、プラズマ等の荷電粒子を利用し、且つ、材料を原子状態で飛ばして成膜するものである。スパッタリング法では、フッ化膜の反射防止膜を成膜する際に、スパッタ材料とフッ素との反応性や高エネルギー荷電粒子による基板へのダメージ(プラズマダメージ)を制御することが難しい。その結果、基板上にフッ化膜の反射防止膜を成膜した場合、バンドギャップに相当する波長より長波長側で吸収が発生してしまうという問題があった。
これらの問題を解決する技術として、特許文献1は、フルオロカーボン系ガスと酸素ガスを用いた反応性スパッタリング法によって、可視域において膜厚100nm当たり光損失が0.3%以下と少ないフッ化膜の製造方法について開示している。
特開2013−001972号公報
しかしながら、パーフルオロカーボン(PFC)系ガスやハイドロフルオロカーボン(HFC)系ガスと言ったフルオロカーボン系ガスは地球温暖化係数(GWP)が高いので、より地球環境に対する負荷が少ないフッ化膜の製造方法が望まれていた。また、パーフルオロカーボン(PFC)系やハイドロフルオロカーボン(HFC)系ガスを用いて反応性スパッタ法でフッ化膜を製造した場合、膜吸収が生じるという課題がある。
本発明の光学素子の製造方法は、金属ターゲットと反応性ガスを含む混合ガスを用いて、反応性スパッタにより基板上にフッ化膜を形成する光学素子の製造方法であって、前記混合ガスが、ハイドロフルオロオレフィンと酸素原子とを含むことを特徴とする。
本発明のフッ化膜の製造方法は、金属ターゲットと反応性ガスを含む混合ガスを用いて、反応性スパッタにより基板上にフッ化膜を形成するフッ化膜の製造方法であって、前記混合ガスは、ハイドロフルオロオレフィンと、酸素原子と、を含むことを特徴とする。
本発明のフッ化膜の製造方法は、温暖化係数が低くて安全かつ安価なハイドロフルオロオレフィンを含むガスと酸素を含むガスを用いることで、地球環境に対する影響を小さくしつつ、膜吸収を低減したフッ化物薄膜を製造することができる。
本発明のフッ化膜を有する光学素子の概略図である。 本発明のフッ化膜を製造する成膜装置の概略構成図である。 実施例1で製造したフッ化膜の波長依存特性を示す図である。 比較例1で製造したフッ化膜の波長依存特性を示す図である。
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
(光学素子)
本発明の光学素子は、カメラ、双眼鏡、顕微鏡、半導体露光装置等の光学機器に用いることができる。具体的には、本発明の光学素子は、レンズ、プリズム、反射鏡、回折格子等の光学機器を構成する光学素子に用いることができる。これらの中で、レンズ又はプリズムに好ましく用いることができる。
本発明の光学素子について、図1を用いて説明する。図1(a)に示すように、光学素子100は、基板101の上にフッ化膜102が設けられている。また、本発明の光学素子100は、図1(b)に示すように、基板101とフッ化膜102の間に高屈折率層103と低屈折率層104が交互に積層された交互層105を設けることができる。低屈折率層104には、屈折率が1.35以上1.75未満の低屈折率材料を用いることができる。具体的には、低屈折材料としては、酸化シリコン、酸化アルミニウム等を用いることができる。交互層104に含まれる高屈折率層103には、屈折率が1.75以上2.7以下の材料を用いることができる。具体的には、高屈折率材料としては、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化チタン、窒化シリコン等を用いることができる。
(基板)
基板101は、ガラス基板やプラスチック基板を用いることができる。基板101は、使用目的に応じた形状であれば良く、平面であっても良く、二次元あるいは三次元の曲面を有するものであっても良い。
(フッ化膜)
フッ化膜102としては、フッ化アルミニウム膜やフッ化マグネシウム膜を用いることができる。フッ化膜102としては、屈折率が低いフッ化マグネシウム膜を用いることが好ましい。フッ化マグネシウム膜は、フッ化マグネシウム(MgF)を主成分として含有する層であり、フッ化マグネシウムを80質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上含有するのがさらに好ましい。フッ化マグネシウム膜は、後述するようにスパッタ法で形成するため、層中にアルゴンを含有する場合がある。フッ化マグネシウム膜のd線(波長587.6nm)の屈折率は、1.40以下であることが好ましく、1.38以下であることがより好ましい。
フッ化膜は、光学素子に用いるだけでなく、撥水性や耐薬品性を持たせることを目的として基板上に設けることができる。
(成膜装置)
本発明のフッ化膜の製造方法で用いる成膜装置の概略図を図2に示す。
成膜装置には内部を真空状態に維持する成膜室1、成膜室1を排気する真空ポンプ等からなる排気手段2を設けている。成膜室1内の側面にはターゲットユニット3が設けてある。ターゲットユニット3には内部に磁石を収め、外部から供給される冷却水を内部に流通させてターゲットの冷却を行うことができる冷却ボックス4が設けられている。磁石はターゲット表面と平行な方向の磁場が形成されるよう配置する。冷却水は図示しないチラーで所望の温度に調整され、流量も一定に保持してターゲット表面温度を一定に保つ構成としている。この冷却ボックス4の下側にはカソード電極としてバッキングプレート5が配置されている。さらに、このバッキングプレート5の下側にターゲット6が固定されている。
またバッキングプレート5の周辺部では、絶縁材7を介してアノード電極8が設置されている。アノード電極8とカソード電極(バッキングプレート5)との間に直流電力を供給するために直流電源9が接続されている。また成膜室1には、ゲートバルブ10を介して、ロードロック室11が隣接して設けられている。ロードロック室11には成膜室1とは別に排気手段12がついている。さらにロードロック室11と成膜室1を自在に移動させることを可能とする移動機構13に連結された基板ホルダー14が設置してある。
基板ホルダー14には基板15を設置することができるようになっている。これにより、成膜室1内を大気に暴露することなく基板の搬入・搬出が可能な構成となっている。また、基板ホルダー14にはターゲット6の表面と基板ホルダー14の基板設置面との相対的な角度を可変にする回転機構と、基板ホルダーの自転機構(不図示)とが設けてある。そして基板ホルダー14とターゲット6の間には放電が安定するまで基板(レンズ)が成膜されないように遮蔽板16が設けられる。この遮蔽板16は開閉可能になっている。
さらに成膜室は、スパッタリングガス導入ポート17、反応性ガス導入ポート18、19よりマスフローコントローラを含むガス供給系によってガスを供給できるようになっている。スパッタリングガス導入ポート17からはスパッタリングガスとして不活性ガスAr、He、Ne、Kr、Xeを導入できるようになっている。反応性ガス導入ポート19からは反応性ガスとしてそれぞれハイドロフルオロオレフィン(HFO)ガス、O2を導入することができるようになっている。ここで導入するガスはマスフローコントローラやガス純化器によって流量、純度、圧力を高精度に制限できるようになっている。
(フッ化膜の製造方法及びフッ化膜を有する光学素子の製造方法)
次に、図2に示す成膜装置を用いて、フッ化膜の製造方法につい説明する。本発明のフッ化膜の製造方法においては、まず、成膜室1内のカソード電極にターゲット6を取り付けておく。ターゲット6は形成すべき薄膜の種類に応じて選択される。例えば、低屈折率のフッ化膜を成膜する場合、マグネシウム金属、アルミニウム金属などの金属ターゲットを用いることが好ましい。しかし、ターゲット材料としては電気抵抗が小さければ、金属以外のフッ素添加金属等を用いても良い。そして、成膜室1を閉じて、排気手段2を駆動して成膜室1内を1.0×10−3Pa程度の真空状態になるよう排気しておく。
事前準備が整った状態で、基板ホルダー14をロードロック室11に配置し、ゲートバルブ10を閉じた状態で、ロードロック室11を開いて、基板ホルダー14に基板15を取り付ける。基板15はフッ化カルシウム結晶、石英ガラス、シリコン、ガラス、樹脂などを用いる。図1に示す光学素子100を製造する場合には、基板15としてガラスやプラスチック等の基板101を用いる。また、基板ホルダー14は、ターゲット6面と基板ホルダー14の基板15設置面との相対的な角度を可変にする基板ホルダー14の回転機構(不図示)を使って、基板15面内の膜厚分布が一定になるよう予め位置を調整しておく。
次に、移動機構13を成膜室1の外に移動させた後にロードロック室11を閉じ、排気手段12を駆動してロードロック室内を1.0×10−3Pa程度の真空状態になるよう排気する。排気が完了したら、ゲートバルブ10を開いて、移動機構13により、基板ホルダー14を成膜室1内の成膜する際の位置へ移動させる。この位置は基板15面内の膜厚分布が一定になるよう考慮するとともに、ターゲット面の法線方向の投影面(図2の斜線で示す領域B)の外の領域(図2の領域A)に基板14面が配置されるようにする。通常の平行平板型マグネトロンスパッタリング装置で反応性スパッタを行う場合、反応ガスの影響でターゲット表面に薄いフッ化アルミニウム(AlF)、フッ化マグネシウム(MgF)等の化合物膜が形成される。この化合物膜が形成されたスパッタ面をスパッタリングすると負イオンが一部形成され、形成された負イオンはターゲット近傍に形成されるイオンシース電圧で加速され大きな運動エネルギーと方向性を持った負イオンとなる。この負イオンはターゲット表面にほぼ垂直な方向に加速されるため、基板をスパッタ面の法線方向の投影面内に配置してしまうと、大きな運動エネルギーを持った負イオンが基板と衝突し基板に大きなダメージを与えてしまう。ターゲット面の法線方向の投影面の外の領域に、基板14を配置とすると、負イオンが形成されても基板へのダメージを抑制することができる。
次に、基板に膜が成膜されないように遮蔽板16を閉じた状態で、スパッタリングガス導入ポート17より、Ar、He、Ne、Xe、Krのような不活性ガスを成膜室1内に導入する。バッキングプレート5に直流電源9より所定の直流電圧を印加すると、グロー放電を起こし、Arがイオン化する。電源は直流電源を用いることが好ましい。高周波の電源を使用すると、基板に大きなセルフバイアス電圧が発生する。このセルフバイアス電圧が発生すると、陽イオンがセルフバイアス電圧で加速され基板に入射し、基板にダメージを与えてしまう。
このプラズマは成膜室1内の圧力が0.1〜1.0Pa程度でも安定している。このような低い圧力でもプラズマが生成されるのは冷却ボックス4内に収められた磁石のマグネトロン効果により、電子が磁場に垂直な面内をサイクロトロン運動し、ターゲット6近傍の電子密度を上げることができるからである。また、磁石のマグネトロンには、ターゲット6近傍の電子密度を上げるとともに、基板15近傍の電子温度や電子密度を下げるため、荷電粒子の基板への入射を抑制し、基板15へのダメージを低減できるという効果もある。
次に反応性ガス導入ポート18、19より成膜室1内に下記に記載するハイドロフルオロオレフィンを含むガスと、酸素を含むガス(分子中に酸素原子を含むガス)を導入する。ハイドロフルオロオレフィン(HFO)は、ハイドロフルオロカーボン系ガス等の代替フロンよりも地球温暖化係数が圧倒的に低く地球環境に対する影響が小さいガスであり、かつ低毒性で安全なガスである。
ハイドロフルオロオレフィンとしては、地球温暖化係数が低く安全なので、炭素数が2以上5以下、は好ましくは炭素数2以上3以下のハイドロフルオロオレフィンを用いることが好ましい。炭素が5を超えるハイドロフルオロオレフィンは常温で液体として存在するので、成膜用のガスとして供給するためには、別途液体気化装置が必要となり、コストが高くなる。具体的には、ハイドロフルオロオレフィンとしては、HFO−R1234yf(化学式:CFCF=CH)、HFO−R1234ze(E)(化学式:trans−CFCH=CHF)、HFO−R1243zf(化学式:CFCH=CH)、HFO−R1123(化学式:CF=CHF)、HFO−R1132a(CH=CF)、HFO−R1141(化学式:CH=CHF)、HFO−R1225yc(化学式:CHFCF=CF)、HFO−R1225ye(E)(化学式:trans−CFCF=CHF)、HFO−R1225ye(Z)(化学式:cis−CFCF=CHF)、HFO−R1225zc(化学式:CFCH=CF)、HFO−R1234yc(化学式:CHFCF=CF)、HFO−R1234ye(E)(化学式:trans−CHFCF=CHF)、HFO−R1234ye(Z)(化学式:cis−CHFCF=CHF)、HFO−R1234zc(化学式:CHFCH=CF)、HFO−R1243ye(E)(化学式:trans−CHFCH=CHF)、HFO−R1243ye(Z)(化学式:cis−CHFCH=CHF)、HFO−R1243yf(化学式:CHFCF=CH)、HFO−R2223(化学式:CF=C=CHF)、HFO−R2214(化学式:CF=C=CF)を用いることができる。これらの中で、安全で低コストなので、HFO−R1234yf(化合物名:2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン、化学式:CFCF=CH)、HFO−R1234ze(E)(化合物名:(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロパ−1−エン、化学式:trans−CFCH=CHF)を用いることが好ましい。
酸素を含むガス(分子中に酸素原子を含むガス)としては、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、水蒸気を用いることができる。これらの中で、酸素を用いることが好ましい。酸素を含むガスを用いることで、酸素を含むガスから解離した酸素原子(O)とハイドロフルオロオレフィン(HFO)ガスが反応することでハイドロフルオロオレフィン(HFO)ガスに含まれるフッ素(F)を抽出してフッ化膜を製造することができる。また、酸素を含むガスを用いると、炭素(C)を酸素(O)と反応させて二酸化炭素や一酸化炭素にして排気することで、フッ化物薄膜中に不純物となる炭素(C)が混入し膜吸収が発生するのを抑制できる。
ハイドロフルオロオレフィン(HFO)ガスに酸素ガスを加えて放電すると、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)ガスやハイドロフルオロオレフィン(HFO)ガスから分解されてできた生成物がOによって酸化分解反応(燃焼反応)起こす。このような反応が起こると、反応活性なフッ素原子やフッ素を含むガス分子が作り出される。例えば、CFとOの反応を考えた場合、以下のような反応によってCOF、CO、CO、Fが生成される。
O+CF→COF+F (式1)
O+CF→CO+2F (式2)
→COF+F (式3)
→COF (式4)
O+COF→CO+F (式5)
このような酸化分解反応(燃焼反応)を利用すると、化学量論組成のフッ化膜となるのに十分な量の反応活性なフッ素原子やフッ素を含むガス分子を得ることができる。また、酸素ガスはハイドロフルオロオレフィン(HFO)ガスと反応してCOやCOF等の反応生成物となり、大部分が膜中に取り込まれずに排気される。排出されるCOとCOFの温暖化係数はそれぞれ1と1未満であるため、温暖化ガスを分解除去するような高価な排ガス処理装置が必須ではなくなる。また、これらのガスは、反応活性なガスであるため、排ガス処理装置として簡便な乾式除外装置で除外可能である。
ハイドロフルオロカーボン系ガスガスを用いてフッ化膜を製造する場合には、高速レートで成膜しようと投入電力を大きくして成膜した場合でも、パーフルオロカーボンガスやハイドロフルオロカーボン系ガスを使用した場合と比較して膜吸収が低減できる。この理由は、パーフルオロカーボン(PFC)ガスやハイドロフルオロカーボン系ガス(HFC)ガスを使用した場合と比較して、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)ガスを使用した場合の方が成膜中の電子温度が低くなるためと推察される。電子温度はターゲットからスパッタされて放出された二次電子が、プラズマ空間中の原子や分子と衝突し、アノード電極に流れて行く、一連の過程によって決定される。
ハイドロフルオロオレフィン(HFO)ガスは、パーフルオロカーボン(PFC)ガスやハイドロフルオロカーボン系ガス(HFC)ガスと異なり、二重結合を持っている。二重結合を構成しているπ結合は、σ結合よりも不安定で、反応性が高いため、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)ガス電子と非弾性衝突を起こしやすく、電子温度を下げる効果が働いていると考えられる。
フッ化膜を形成する成膜速度は、低吸収な膜と高成膜速度が実現できるので、0.01nm/s以上10.0nm/s以下であることが好ましく、0.01nm/s以上1.0nm/s以下であることがより好ましい。成膜速度が0.01nm/s未満だと成膜時間が長くなる。また、成膜速度が10.0nm/sを超える場合は、投入電力を大きくする必要がありプラズマのダメージが生じ易く膜の吸収が大きくなる。ターゲット6には、基板15のセルフバイアスの発生を防ぐので、直流電源9で直流電圧を印加することが好ましい。更に、ターゲット6には、異常放電を抑制して異物の混入の少ないフッ化膜を製造するため、直流電圧に10KHz以上500KHz以下の周波数の電圧を重畳することが好ましく、10KHz以上100KHz以下の周波数の電圧を重畳することがより好ましい。異常放電が発生すると、膜中に異物が混入したり、表面が粗い膜になったりする。交流電圧の周波数が10KHz未満だと、異常放電の低下の効果が小さい。交流電圧の周波数が500KHzを超えると、基板セルフバイアス電圧が発生して、陽イオンが基板に入射しダメージが生じるやすくなる。
スパッタリングガスと反応性ガスを導入した際の成膜圧力は、排気手段2とスパッタリングガス導入ポート、反応性ガス導入ポートガスに設けられた弁やマスフローコントローラを調整して、成膜室1内を0.1Pa以上3.0Pa以下に維持することが好ましい。3.0Paを超えると、表面が粗く低密度の膜になりやすく、0.1Pa未満だと放電が落ちやすくなる。放電電圧が安定したのを確認したら、遮蔽板16を開いて成膜を開始する。スパッタリングによりターゲット表面より放出されるスパッタ粒子は放出角度分布を持ち、種々の方向に放出されるので、スパッタ面の法線方向の投影面外に基板面が配置されていても、基板に膜が堆積する。この時、スパッタ粒子は基板表面で活性なフッ素原子を含むガスと反応して、フッ化膜が成膜される。
以上のように、安全で安価な地球温暖化係数が圧倒的に低いハイドロフルオロオレフィン(HFO)ガスと酸素ガスを用いることで、前段階の安全対策及び後処理工程が簡易で済み、フッ化物薄膜を低コストで成膜することができる。また、高速レートで成膜しようと投入電力を大きくして成膜する場合でも、膜吸収が低減することができる。このような膜は、基板上に単体又は積層体とされて光学部品の反射防止膜や増反射膜やフィルター等として機能し得るものである。
以下、実施例および比較例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
以下の実施例・比較例では下記の方法で、測定および評価を行った。
(屈折率・膜の光損失の測定方法)
屈折率は、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計U−4100を用いて、入射角度5度において、350〜800nmの波長範囲について測定した。
膜の光損失は、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計U−4100を用いて、入射角度5度で、350〜800nmの波長範囲について透過率Tと反射率Rを測定して下記の式を用いて計算した。膜の光損失Lの評価は、透過率Tと反射率Rの実験結果から以下の式(1)から求めた。
L=1−(T+R) 式(1)
(実施例1)
実施例1では、図2の成膜装置を用いて、ガラス基板上にフッ化マグネシウム膜を製造した。ターゲット6の材料として、マグネシウム金属を用い、基板15にはSiO基板(飯山特殊硝子社製、合成石英基板)を用いた。反応性ガスは、ハイドロフルオロオレフィンを含むガスとしてHFO−1234zeガス「(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロパ−1−エン:trans−CFCH=CHF)」を用いてた。また、酸素を含むガスとして、酸素を使用した。HFO−1234zeガスは、温暖化係数は1未満で、低毒性、28℃以下では不燃性のガスである。
まず、洗浄を行った基板15をロードロック室11に設置し、1×10−3Pa以下まで排気した。排気終了後ゲートバルブ10を通って基板ホルダー14で保持して基板15を成膜室1に搬送し、成膜室1内の成膜位置に配置した。この時、成膜時のターゲット6と基板15間の距離は、約80mmであった。次に、遮蔽板16を閉じ、スパッタリングガス導入ポート17よりアルゴンガスを300[SCCM]導入し、さらに反応性ガス導入ポート18、19からHFO−1234zeを20[SCCM]、酸素を50[SCCM]導入した。これらのガスを導入した際の成膜室の全圧は約0.7Paだった。また、ターゲット6にスパッタ電力として約6000W、50kHzのパルス電力を印加し、ターゲット6の表面にマグネトロンプラズマを発生させスパッタを開始した。この状態で、直流電源9に表示される電圧値と電流値は、それぞれ198[V]、30.3[A]であった。同時にターゲット表面の極性が反転する矩形電圧を5kHzで重畳し、ターゲット表面等のチャージをキャンセルし、安定して放電が維持できるようにした。しばらく放電を継続して、放電が安定した後に遮蔽板16を開け、成膜を開始した。
実施例1では、基板15をターゲット6の表面に対する垂直方向に投影した投影部(図2中の斜線部で示す領域)の外に配置する構成とした。このような構成で、ターゲット6の表面にある負イオンがカソード電圧によって加速されて基板15上のフッ化膜に衝突しないようにした。成膜速度は約0.3nm/secで成膜した。
図3に、実施例1で製造したフッ化マグネシウム膜の透過率、屈折率、及び光損失の波長依存特性の評価結果を示す。実施例1では、450〜800nmの可視域において、膜厚100nm当たり光損失が約0.1%以下で、500nm近傍における屈折率が1.39程度の低吸収で低屈折率なフッ化マグネシウム膜を作成した。
(比較例1)
比較例1は、実施例1と異なり、フッ素を含むガスとしてHFC−245fa(化学式:CHFCHCF)を用いた。また、HFC−245faの流量を15[SCCM]、HFC−245faと酸素の混合ガス中のHFC−245faの割合を30%にした以外は実施例1と同様に行った。
図4に、比較例1で製造したフッ化マグネシウム膜の反射率と光損失の波長依存特性の評価結果を示す。比較例1では、450〜800nmの可視域において、膜厚100nm当たり、光損失0.6%程度で、500nm近傍における屈折率が1.39程度の低吸収で低屈折率なフッ化マグネシウム膜を作成した。比較例1では、実施例1と比較して、透過率が低く光損失が大きて、膜吸収が増大していた。
(評価)
実施例1の膜では光損失が0.1%以下であった。比較例1の膜では光損失が0.6%以下であった。レンズ8枚で構成される光学系に、実施例1の膜を8枚のレンズの両面に付けた場合には、レンズを透過した光量の減衰率は約1.6%となる。これに対して、比較例1の膜を8枚のレンズに付けた場合には、レンズを透過した光量の減衰率は約9.6%となる。
本発明の実施例1の膜を付けたレンズを用いた光学系は、比較例1の膜を付けたレンズを用いた光学系と比較して、光量の減衰率を低くすることができる。
1 成膜室
2 排気系(成膜室)
6 ターゲット
9 直流電源
13 移動機構
14 基板ホルダー
15 基板
17 スパッタリングガス導入ポート
18 反応性ガス導入ポート
19 反応性ガス導入ポート

Claims (13)

  1. 金属ターゲットと反応性ガスを含む混合ガスを用いて、反応性スパッタにより基板上にフッ化膜を形成する光学素子の製造方法であって、
    前記混合ガス、ハイドロフルオロオレフィンと酸素原子とを含むことを特徴とする光学素子の製造方法。
  2. 前記ハイドロフルオロオレフィンは、炭素数が2以上5以下のハイドロフルオロオレフィンであることを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
  3. 前記ハイドロフルオロオレフィンは、((E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロパ−1−エン又は2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンであることを特徴とする請求項2に記載の光学素子の製造方法。
  4. 前記金属ターゲットがマグネシウム金属又はアルミニウム金属であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学素子の製造方法。
  5. 前記混合ガスが少なくとも酸素、二酸化炭素、一酸化炭素および水蒸気の中から選択されるいずれか1種を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学素子の製造方法。
  6. 前記基板がガラス基板又はプラスチック基板で、
    前記光学素子がレンズであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光学素子の製造方法。
  7. 前記フッ化膜を形成する成膜速度が、0.01nm/s以上10.0nm/s以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光学素子の製造方法。
  8. 前記金属ターゲットに印加する電圧は、直流電圧または、直流電圧に500KHz以下の周波数の電圧を重畳する電圧であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の光学素子の製造方法。
  9. 前記基板を前記金属ターゲットの表面に対する垂直方向に投影した投影部の外に配置して反応性スパッタを行うことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光学素子の製造方法。
  10. 金属ターゲットと反応性ガスを含む混合ガスを用いて、反応性スパッタにより基板上にフッ化膜を形成するフッ化膜の製造方法であって、
    前記混合ガス、ハイドロフルオロオレフィンと酸素原子とを含むことを特徴とするフッ化膜の製造方法。
  11. 前記ハイドロフルオロオレフィンは、((E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロパ−1−エン又は2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンであることを特徴とする請求項10に記載のフッ化膜の製造方法。
  12. 前記金属ターゲットがマグネシウム金属又はアルミニウム金属であることを特徴とする請求項10または11のいずれか一項に記載のフッ化膜の製造方法。
  13. 前記混合ガスが、少なくとも酸素、二酸化炭素、一酸化炭素および水蒸気の中から選択されるいずれか1種を含むことを特徴とする請求項11乃至12のいずれか一項に記載の光学素子の製造方法。
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