JP3823935B2 - 軽量織物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、牽伸された短繊維束と開繊された合成繊維マルチフィラメント糸とを重ね合わせて実撚を与えながら巻き取る新規な長短複合紡績糸からなる軽量織物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、短繊維束とマルチフイラメント糸とを複合する方法としては、牽伸された短繊維束でほぼ集束状態のマルチフィラメント糸を包み込んで、ついで加撚して巻き取るか(1)、若しくは仮撚結束により巻付毛羽で糸を形成させる方法(2)、又は牽伸された繊維束を開繊されたマルチフィラメント糸で包み込んで、しかる後に加撚して巻き取るか(3)、若しくは仮撚結束により巻き付毛羽で糸を形成させる方法(4)が知られている。
【0003】
しかし、上記(1)の方法には牽伸された繊維束とマルチフィラメント糸との絡合性を良くする為に通常のステープルのみからなる紡績糸の撚数よりも多くの撚数を加えなければならない欠点があり、また上記(2)の方法には仮撚結束だけでは絡合性が悪く使いものにはならないため、糊着するか、融着するか又は甘撚をかけるかの方法をとらなければならないという欠点があった。
【0004】
さらに上記(3)の方法には加撚して巻き取られた糸は均斉であるもののヌメリ感やぎらつきを有しているという欠点があり、また上記(4)の方法にはマルチフィラメント糸が開繊されすぎてステープルが巻付毛羽としての役割を充分に果たすことができず、従って糸の長手方向における結束状態が一定とならないことが多かった。
【0005】
さらに、繊維束と嵩高加工糸を絡み合わせる方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。しかし、この方法には繊維束を一旦オーバーフィード状態にしなければならないこと、高速旋回流ジェットを用いていること等のため、ネップや斑が発生しやすく、糸面が悪くなるという欠点があった。
【0006】
さらに、フィラメント成分と短繊維成分とからなる複合糸において芯部にフィラメント成分、鞘部に短繊維成分を実撚状に配置したものが提案されている(例えば特許文献2,3参照)。しかし、この複合糸は異色染め分け時の霜降り感が良くなく、製織時のトラブル回数が多かった。
【0007】
【特許文献1】
特開昭49−101639号公報
【特許文献2】
特開昭59−30925号公報
【特許文献3】
特開昭61−239036号公報
【0008】
一方、天然繊維ライクな合成繊維使いの織物が開発されてはいるものの、その軽量化については、素材の特徴を失うことなく、衣料の快適性が得られ、かつ軽量化することについては、1つのハードルがあり、その実施化は極めて困難な状況であった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の従来の欠点を解消するために創案されたものであり、その目的は、短繊維の手触りの良さとマルチフィラメント糸の持つ均斉さおよび強さを生かし、毛羽数を減少させ、製織性を向上せしめ、フィラメントと短繊維を異色に染め分けたときの霜降り感を向上させ、ブラックフォーマル用深色加工を行なった場合に問題となるイラツキを減少させた新規な長短複合紡績糸使いの軽量織物を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、長短複合紡績糸からなる織物であり、通気度が50cc/cm2/sec以上であることを特徴とする軽量織物である。
【0011】本発明を構成する長短複合紡績糸の好ましい態様では、複合紡績糸の横断面の構成が、合成繊維マルチフィラメント群を海苔とし短繊維群を寿司飯として形成された巻き寿司状に両群により渦巻きが形成された長短複合紡績糸である。
【0012】
本発明を構成する織物の好ましい態様では、平織物の場合にあっては、経緯の平均込係数が35〜47、綾織物の場合にあっては、経緯の平均込係数が45〜60である。
【0013】
本発明を構成する複合紡績糸の好ましい態様では、複合紡績糸が合成繊維マルチフィラメント群と短繊維群とが開繊混合されている複合紡績糸である。
【0014】
本発明を構成する長短複合紡績糸の好ましい態様では、合成繊維マルチフィラメント群と短繊維群とが開繊混合された複合紡績糸であって、複合紡績糸の横断面の構成が、マルチフィラメント群を海苔とし短繊維群を寿司飯として形成された巻き寿司状に両群により渦巻きが形成されていることを特徴とする長短複合紡績糸である。
【0015】
本発明を構成する合成繊維マルチフィラメント群の好ましい態様では、合成繊維がポリエステル系繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリアクリルニトリル系繊維およびポリブチレンテレフタレート繊維からなる群から選択される少なくとも1つの繊維であり、特に合成繊維がポリエステル系繊維である。
【0016】
また、本発明を構成する長短複合紡績糸の好ましい態様では、合成繊維マルチフィラメント糸の繊度(デシテックス)が11〜110デシテックスであり、また、合成繊維マルチフィラメントを構成する単糸の繊度(デシテックス)が0.1〜6.6デシテックスである。
【0017】
また、本発明を構成する長短複合紡績糸の好ましい態様では、短繊維が羊毛、綿、絹、麻、合成繊維ステープル、レーヨンステープルおよびアセテートステープルからなる群から選択される少なくとも1つの繊維であり、特に短繊維が羊毛である。
【0018】
また、本発明を構成する長短複合紡績糸の好ましい態様では、短繊維の複合糸全体に対して占める割合が35〜95重量%であり、渦巻きが左巻きまたは右巻きである。
【0019】
本発明で言う平織物とは、三原組織の1つである平織りの組織で織られた織物を基本とするが、この平織の基本組織を変化させた組織、例えば畝織、七々子織で織られた織物も、平織物に含むものとする。
【0020】
本発明で言う綾織物とは、三原組織の1つである綾織の組織で織られた織物を基本とするが、この綾織の基本組織を変化させた組織、例えば急斜文織、緩斜文織などの組織で織られた織物も、綾織物に含むものとする。
【0021】
本発明の軽量織物の経緯の平均込係数は、平織物においては35〜47、好ましくは38〜45の範囲で製織構成され、綾織物においては45〜60、好ましくは48〜57の範囲で製織構成される。
【0022】
ここで、平織物においては、経緯の平均込係数が35を下回ると織物の透け感が大きくなり過ぎ、また、織物の実用性能が確保できなくなるので好ましくない。また、経緯の平均込係数が47を上回ると狙いの通気性が得られなくなるで好ましくない。綾織物においては、経緯の平均込係数が45を下回ると織物の実用性能が確保できなくなるので好ましくない。また、経緯の平均込係数が60を上回ると狙いの通気性が得られなくなるので好ましくない。
【0023】
経糸の込係数Tは織物幅10cmあたりの経糸本数/√番手、緯糸の込係数Wは織物幅10cmあたりの緯糸本数/√番手で求められ、本発明の軽量織物の経緯の平均込係数は(経糸の込係数T+緯糸の込係数W)/2で求められる。
【0024】
本発明の軽量織物の通気度は50cc/cm2/sec以上、好ましくは90cc/cm2/sec以上が好ましい。ここで通気度が50cc/cm2/secを下回ると通気による換気放熱が低下し、清涼感が得られないので好ましくない。
【0025】
通気度はフラジール形試験機で測定される。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の軽量織物及び長短複合紡績糸の製造方法を図を用いて説明する。尚、図は、説明のために用いるものである。
【0027】
本発明の軽量織物は、後述する長短複合紡績糸を経糸および/または緯糸に用い、平織物においては経緯の平均込係数が35〜47、綾織物においては経緯の平均込係数を45〜60の範囲になる様に製織することにより得られる。
【0028】
本発明に用いる長短複合紡績糸は、合成繊維マルチフィラメント群と短繊維群とが開繊混合された複合紡績糸であり、その横断面の構成は例えば図1に見られるように両群により巻き寿司状に渦巻きが形成されている。ここで横断面の構成が両群により巻き寿司状に渦巻きが形成されているとは、マルチフィラメント群を海苔とし、短繊維群を寿司飯としたとき、海苔を一面に広げてその上に均一に寿司飯を載せて海苔を外側にして海苔を巻いていくときに形成される巻き寿司状に渦巻きが横断面に形成されている状態を意味する。
【0029】
このような横断面の構造を形成した複合糸は、結果として、織物や編地にした場合にあっては、フィラメントと短繊維を異色に染め分けた時の霜降り感の向上、ブラックフォーマルの深色加工のイラツキ減少、あるいは、毛羽が少なく通気性に富んだ布帛が得られる。
【0030】
本発明の複合紡績糸を構成するマルチフィラメントに使用する合成繊維としては、ポリエステル系繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、及びポリブチレンテレフタレート繊維からなる群から選択される少なくとも1つの繊維を用いるのが好ましく、特にポリエステル系繊維が好ましい。
【0031】
本発明の複合紡績糸を構成する短繊維としては、羊毛、綿、絹、麻、合成繊維ステープル、レーヨンステープルおよびアセテートステープルからなる群から選択される少なくとも1つの繊維を用いるのが好ましく、特に羊毛が好ましい。
【0032】
本発明の複合紡績糸においてマルチフィラメント群と短繊維群とを開繊混合するのは、マルチフィラメント群と短繊維群の絡合性を高め、後加工性を向上させるためである。そして、この混合とは、フィラメントとステープル繊維とが混じり合って配置していることを意味するが、特にフィラメントとステープル繊維とに特異な配列、本発明の場合は巻き寿司状渦巻きの配列を横断面に形成させることが、混合する上で必要である。
【0033】
本発明の合成繊維マルチフィラメントの繊度(デシテックス)は11〜110デシテックスの範囲が好ましい。マルチフィラメントは短繊維群と混合されているわけであるが、混合によって得られる複合糸の太さが一定の範囲になければ市場性は得られがたい。11デシテックス未満であれば複合の効果が得られ難く、110デシテックスを超えるとウーリーなタッチが失われてしまうので、ウーリーなタッチで市場性に富んだ商品を得るには少なくともマルチフィラメントの繊度はこの範囲が好ましい。
【0034】
ウーリーなタッチを出すためにはマルチフィラメントの総繊度(デシテックス)を上記範囲にする以外に、個々のフィラメントの単糸繊度を、0.1〜6.6デシテックス、好ましくは0.2〜3.3デシテックスの範囲にするのが良い。この範囲にするのは、0.1デシテックス未満にあってはコシがなくなり、6.6デシテックスを超えると風合が硬くなりウーリー調からほど遠くなるからである。また、短繊維は、天然繊維以外でステープル繊維を用いる場合は、等長カット、不等長カットいずれでも良い。そしてステープル繊維の平均繊維長(mm)は、ウールの温かさを出すためには、50〜150mmの範囲にあることが好ましく、また綿の温かさを出すためには25〜50mmの範囲にあることが好ましい。
【0035】
本発明の複合紡績糸においては、短繊維が、前記複合紡績糸全体において占める割合が35〜95重量%にあることが好ましい。35重量%未満の場合は、短繊維とマルチフィラメントとの絡合性が悪くなり、95重量%を超えると斑の少ない均一な複合糸が得られにくくなるので好ましくない。
【0036】
本発明の複合紡績糸は、1mm以上の毛羽で200〜900ケ/10mの毛羽指数を有することが好ましく、さらにはこれに加えて5mm以上の毛羽が30ケ/10m以下であることがより好ましい。これは、ウーリーな風合を活かしながら製織性などの後加工性を高め、さらには製織時のネップの発生を抑制し商品の品位の向上を計るためである。ここでいう毛羽指数は、敷島紡績株式会社製のF−インデックステスターで測定される。
【0037】
本発明の複合紡績糸の横断面を見ると、マルチフィラメント群と短繊維群が巻き寿司のように渦巻き状に形態を整えているところが本発明の複合紡績糸の特徴である。渦まきの方向は、左又は右いずれであってもよい。これは、紡績段階における長繊維束と短繊維束の重ね合わせ位置をコントロールすることで達成できる。
【0038】
本発明の複合紡績糸は、絡合性に優れ、ウーリーなタッチを有し、織物や編地にした場合にあっては、フィラメントと短繊維を異色に染め分けた時の霜降り感の向上、ブラックフォーマル用途では深色加工時のイラツキの減少、あるいは、毛羽が少なく通気性に富んだ布帛が得られることから、メンズスーツやフォーマルドレス、高級婦人ドレスやブラウスに好適である。
【0039】
上述した、本発明の特異な断面形態を有する複合紡績糸の製造方法は、合成繊維マルチフィラメント糸を電気開繊して、ドラフトされている短繊維群とフロントローラの直前で重ね合わせて複合紡績糸を製造するに際し、前記重ね合わせ時点の短繊維フリースの最大開き幅Hと長繊維マルチフィラメントの最大開き幅hの関係が、Hの端点からhの端点までの距離がHの最大幅に対して10〜90%ずらして重ね合わせるようになっていることにより達成できる。
【0040】
本発明の複合紡績糸の製造方法では、合成繊維マルチフィラメント糸を電気開繊して、ドラフトされている短繊群とフロントローラの直前で重ね合わせる際に、合成繊維マルチフィラメントと短繊維フリースの供給軸をずらすことが重要である。
【0041】
合成繊維マルチフィラメントの最大開き幅hは、短繊維フリースの最大開き幅Hと同等かそれ以上とすることが好ましい。短繊維フリースの幅より小さくすると、フィラメントによる毛羽伏せ効果が低下し、製織性の低下ひいては布帛品位の低下をきたすので好ましくない。
【0042】
また、短繊維フリースの最大開き幅Hの90〜10%、好ましくは80〜20%の長さ分をマルチフィラメントの最大開き幅hとダブらせることが必要である。これによって出来あがった複合紡績糸の横断面は、長短両素材をそれぞれ海苔、寿司飯とした巻き寿司のように渦巻きを形成し、特異な糸構造と効果(毛羽の減少、製織性の向上、異色染め分け時の霜降り感の向上、深色加工時のイラツキの減少)が期待できる。ここで、マルチフィラメントの開き幅と短繊維フリースの開き幅にダブリがなくなり、あるいは両者が離れてしまうと、複合構造が変化して渦巻き状の糸構造が形成されず、上記目的とする糸の効果が得られなくなるので好ましくない。
【0043】
合成繊維マルチフィラメントと短繊維フリースの供給位置の決定は、出来あがる糸の構造形態に影響を与える。Z撚の糸を紡績する場合は、合成繊維マルチフィラメントを短繊維フリースに向かって右側にずらし、S撚の糸を紡績する場合は短繊維フリースの左側にずらす。これにより目的の糸構造がより安定して得られる。この場合、糸の横断面での渦巻きの方向はZ撚の場合は時計回り、S撚の場合は逆時計回りとなる。
【0044】
合成繊維マルチフィラメントと短繊維フリースの供給位置の決定は、開繊電極の位置あるいは開繊したフィラメントの専用ガイドを用いて調整が可能である。合成繊維マルチフィラメントの開繊幅の調整は開繊の電圧、供給テンション、フィラメントの専用ガイドの幅等の調整による。
【0045】
本発明の長短複合紡績糸は、例えば図2に示す装置を用いて製造することができる。すなわち図2によれば、その装置は、バックローラ1、クレードル2、フロントローラ3を順に配置し、フロントローラ3の下方にスネルワイヤ4およびさらに下方にリングとトラベラ5を備えた捲き取り装置を配置し、前記フロントローラ3の送り込み側の上方に上から静電気印加用の開繊電極6およびその下方に楕円上の環状ガイド7を設置している。
【0046】
複合紡績糸の製造は、まずパーン8に捲かれたマルチフィラメント糸Aを解除し、ガイド9を経て電極6で静電気を印加して開繊させ、続いて環状ガイド7を通して開繊幅および供給位置を規制しつつフロントローラ3に供給する。一方粗糸Bをバックローラ1に供給し、クレードル2、フロントローラ3間でドラフトし、フリース状の短繊維束Bとしてフロントローラ3に供給する。フロントローラ3に供給された開繊したマルチフィラメント糸Aとフリース状の短繊維束Bはフロントローラ3のニップ点で混合されるが、この時、短繊維フリースは最大開き幅の10〜90%の長さ分をマルチフィラメントの最大開き幅と重ね合わせて混合される。フロンローラ3を通過したマルチフィラメントと短繊維フリースは、加撚されることにより横断面が渦巻き状の特異な糸構造をなし、スネルワイヤ4を経てリングとトラベラ5により管糸10に捲き取られる。
【0047】
【実施例】
次に本発明の長短複合紡績糸の製造例を比較例とともに記載し、その効果を具体的に示す。
【0048】
実施例1
図2に示す装置に粗糸Bとして梳毛粗糸1/3.0Nmをバックローラ1から供給し、バックローラ1およびクレードル2とフロントローラ3との間で全ドラフト倍率17.1倍でドラフトした。一方マルチフィラメント糸Aとしてポリエステルフィラメント糸56デシテックス/24フィラメントを用い、ガイド9を経て電極6に供給した。電極6では前記マルチフィラメント糸Aに−3000Vを印加して開繊させ、次いで環状ガイド7を通して開繊幅を規制し、またドラフトされたフリース状の前記粗糸Bのフリース幅の50%がマルチフィラメント糸Aの開繊幅の一部と重なるように供給位置を規制しつつ、フロントローラ3に供給し、前記フロントローラ3でドラフトされたフリース状の前記粗糸Bと重ね合わせて混合し、撚数800T/M(Z)に加撚してポリエステル22/ウール78、番手1/40Nmの混繊糸を管糸10として捲き取った。
【0049】
この混繊糸の横断面を顕微鏡で観察したところ、図1に示すようにポリエステルフィラメントとウールはそれぞれを海苔と寿司飯にした巻き寿司のように、渦巻き状の分布を呈していた。また、この混繊糸を経糸(無糊)および緯糸に使用して平織物を製織して染色し、糸の毛羽指数、織物の通気度、異色染め分け時の霜降り感、深色加工時のイラツキ感、製織時のトラブル回数、織機の稼働率および仕上がった織物上のネップ数について調査した。その結果を表1に示す。
【0050】
比較例1
マルチフィラメント糸Aとして、実施例1で用いたのと同様のポリエステルマルチフィラメント糸56デシテックス/24フィラメントを開繊電極6および環状ガイド7を使用せずにガイド9から直接フロントローラ3にほぼ集束状態のまま供給し、フロントローラ3のニップ点で実施例1と同様条件でフロントローラ3に供給された前記粗糸Bのフリースの中央に位置するように、供給位置を規制しつつ重ね合わせ、その他は全て実施例1と同様の紡出条件によりコアヤーンを紡出した。このコアヤーンの横断面を顕微鏡で観察したところ集束したポリエステルフィラメントを芯とした二層構造を呈していた。
【0051】
比較例2
マルチフィラメント糸Aとして、実施例1で用いたのと同様のポリエステルマルチフィラメント糸56デシテックス/24フィラメントを環状ガイド7を使用して開繊幅と供給位置を規制せずに開繊電極6から直接フロントローラ3に供給し、フロントローラ3のニップ点で実施例1と同様条件でフロントローラ3に供給された前記粗糸Bのフリースと重ね合わせ、その他は全て実施例1と同様の紡出条件により混繊糸を紡出した。この混繊糸の横断面を顕微鏡で観察したところ、ポリエステルとウールが均一に混繊している部分と群混合を呈する部分が混在していた。
【0052】
上記各比較例で得られた糸を用いて、それぞれ上記実施例1と同様に平織物を製織して染色し、実施例1と同じ調査を行った。その結果を合わせて表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示す結果から明らかなように、本発明の実施例1で得られた巻き寿司状渦巻きが形成された長短複合紡績糸は、比較例1,2で得られた長短複合紡績糸に比べて5mm以上の毛羽数が少なく製織性が極めて良好で、通気度が高く、清涼感に富んだ織物となった。また、製織時のネップの発生が抑制されるため商品の品位が向上し、さらに、ポリエステルとウールを異色に染め分けた時の霜降り感が極めて良好であり、深色加工を施した場合のイラツキも大幅に良化した。
【0055】
尚、発明の評価に用いた測定方法は以下のとおりである。
【0056】
(毛羽指数の測定)
敷島紡績株式会社製のF−インデックステスターで測定した。
【0057】
(織物の通気度)
フラジール形試験機を用いて測定した。
【0058】
(糸断面の形状)
日立製作所(株)のS−3500N形走査型電子顕微鏡で観察した。
【0059】
(異色に染め分けた時の霜降り感および深色加工時のイラツキ感)
染色加工技術者の目視により判定した。
【0060】
(フィラメントによる毛羽伏せ効果)
製織時のトラブル回数、織機の稼働率による製織性評価および仕上がった織物上のネップ数により評価した。
(i)製織時のトラブル回数
実施例、比較例各々について製織中に発生する経糸および緯糸の糸切れによるトラブル回数を評価した。
(ii)織機の稼働率
(稼働可能時間−トラブルによる停台時間)/稼働可能時間で評価した。
稼働率80%以上を良、80%未満を不良とした。
(iii)仕上がった織物のネップ数
1m2に散見されるネップ数を計数した。
【0061】
(織物の通気度)
フラジール形試験機を用いて測定した。
【0062】
(織物の目付)
JIS L1096一般織物試験方法の附属書3に基づき測定した。
【0063】
(織物の滑脱抵抗力)
JIS L1096一般織物試験方法の縫目滑脱法 B法に基づき測定した。
【0064】
次に本発明の軽量織物の実施例を比較例とともに記載し、その効果を具体的に示す。
【0065】
実施例2
ポリエステル17/ウール83、撚数1200T/M(Z)、番手1/50Nmの本発明の複合紡績糸の染め糸を用いて、経緯の平均込係数が43の平織物を試織し、織物の通気度、織物の目付、織物の滑脱抵抗力を調査した。その結果を表2に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
表2に示す結果から明らかなように、本発明の実施例2で得られた織物は、軽量で通気度が高く、物性も安定した織物であった。
【0069】
実施例3
ポリエステル17/ウール83、撚数1200T/M(Z)、番手1/50Nmの本発明の複合紡績糸の染め糸を用いて、経緯の平均込係数が53の綾織物を試織し、織物の通気度、織物の目付、織物の滑脱抵抗力を調査した。その結果を表3に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
表3に示す結果から明らかなように、本発明の実施例3で得られた織物は、軽量で通気度が高く、物性も安定した織物であった。
【0073】
【発明の効果】
本発明の軽量織物は、新規な長短複合紡績糸と織物にする時の経緯の平均込係数の特別な領域の組み合わせにより構成されており、従来に見ない織物、すなわち、基素材の有する特徴を失うことなく、衣料とした時の着用快適感が得られ、かつ軽量である織物が得られる。更に用いられる長短複合紡績糸の横断面がマルチフィラメント群と短繊維群によって巻き寿司のように渦巻きを形成しているので、毛羽数が少なく、通気度に富んだ高品位の織物が達成できる。また、フィラメントとウールの複合形態が安定しているためフィラメントとウールを異色に染め分けた時の霜降り感が非常に良好で、深色加工を行ったときのイラツキ感も大幅に低減できるなど格別の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の長短複合紡績糸の横断面の形成構造を示す図である。
【図2】本発明の長短複合紡績糸の製造装置の概略図である。
【符号の説明】
1:バックローラ
2:クレードル
3:フロントローラ
4:スネルワイヤ
5:リングとトラベラ
6:開繊電極
7:環状ガイド
8:バーン
9:ガイド
10:管糸
Claims (15)
- 長短複合紡績糸からなる織物であり、通気度が50cc/cm2/sec以上であり、かつ長短複合紡績糸の横断面の構成が、合成繊維マルチフィラメント群を海苔とし短繊維群を寿司飯として形成された巻き寿司状に両群により渦巻きが形成されてなることを特徴とする軽量織物。
- 織物が平織物である請求項1に記載の軽量織物。
- 平織物の経緯の平均込係数が35〜47である請求項2に記載の軽量織物。
- 織物が綾織物である請求項1に記載の軽量織物。
- 綾織物の経緯の平均込係数が45〜60である請求項4に記載の軽量織物。
- 長短複合紡績糸が合成繊維マルチフィラメント群と短繊維群とが開繊混合されてなる請求項1に記載の軽量織物。
- 合成繊維マルチフィラメント群がポリエステル系繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリアクリルニトリル系繊維およびポリブチレンテレフタレート繊維からなる群から選択される少なくとも1つの繊維である請求項1に記載の軽量織物。
- 合成繊維マルチフィラメントがポリエステル系繊維である請求項1に記載の軽量織物。
- 長短複合紡績糸を形成する合成繊維マルチフィラメント糸の繊度(デシテックス)が11〜110デシテックスである請求項1に記載の軽量織物。
- 合成繊維マルチフィラメント群を形成する単糸の繊度(デシテックス)が0.1〜6.6デシテックスである請求項1に記載の軽量織物。
- 短繊維群を形成する短繊維が羊毛、綿、絹、麻、合成繊維ステープル、レーヨンステープルおよびアセテートステープルからなる群から選択される少なくとも1つの繊維である請求項1記載の軽量織物。
- 短繊維が羊毛である請求項1記載の軽量織物。
- 短繊維の複合紡績糸全体に対して占める割合が35〜95重量%である請求項1記載の軽量織物。
- 渦巻きが左巻きである請求項1記載の軽量織物。
- 渦巻きが右巻きである請求項1記載の軽量織物。
Priority Applications (7)
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---|---|---|---|
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